特許第6148014号(P6148014)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JSR株式会社の特許一覧

特許6148014ゴム組成物およびその製造方法並びにタイヤ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148014
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびその製造方法並びにタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 15/00 20060101AFI20170607BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20170607BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20170607BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20170607BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   C08L15/00
   B60C1/00 A
   C08J3/20 ZCEQ
   C08K3/36
   C08L9/00
【請求項の数】12
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-557988(P2012-557988)
(86)(22)【出願日】2012年2月15日
(86)【国際出願番号】JP2012053507
(87)【国際公開番号】WO2012111697
(87)【国際公開日】20120823
【審査請求日】2014年7月3日
【審判番号】不服2015-21562(P2015-21562/J1)
【審判請求日】2015年12月4日
(31)【優先権主張番号】特願2011-32112(P2011-32112)
(32)【優先日】2011年2月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078754
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 正彦
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 毅
(72)【発明者】
【氏名】岡田 公二
【合議体】
【審判長】 加藤 友也
【審判官】 原田 隆興
【審判官】 上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−179754(JP,A)
【文献】 特開2004−182894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 15/00
B60C 1/00
C08J 3/20
C08K 3/36
C08L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練することを特徴とするゴム組成物の製造方法。
【請求項2】
前記共役ジエン系重合体(A)と、前記フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、前記共役ジエン系重合体(B)とを混練することを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記共役ジエン系重合体(A)と前記共役ジエン系重合体(B)との質量比(共役ジエン系重合体(A)/共役ジエン系重合体(B))が、97/3〜60/40であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
前記共役ジエン系重合体(A)の一分子の一箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であり、
前記共役ジエン系重合体(B)の一分子の複数箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
前記フィラー(C)を構成するシリカの割合が、前記共役ジエン系重合体(A)と共役ジエン系重合体(B)とを含有するゴム成分100質量部に対して10〜120質量部であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のゴム組成物の製造方法。
【請求項6】
シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練することにより得られることを特徴とするゴム組成物
【請求項7】
前記共役ジエン系重合体(A)と、前記フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、前記共役ジエン系重合体(B)とを混練することにより得られることを特徴とする請求項6に記載のゴム組成物。
【請求項8】
前記共役ジエン系重合体(A)と前記共役ジエン系重合体(B)との質量比(共役ジエン系重合体(A)/共役ジエン系重合体(B))が、97/3〜60/40であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
前記共役ジエン系重合体(A)の一分子の一箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であり、
前記共役ジエン系重合体(B)の一分子の複数箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項10】
前記フィラー(C)を構成するシリカの割合が、前記共役ジエン系重合体(A)と共役ジエン系重合体(B)とを含有するゴム成分100質量部に対して10〜120質量部であることを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項11】
シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを含有するゴム成分に、少なくとも、シリカを含有するフィラー(C)が添加されてなることを特徴とするゴム組成物。
【請求項12】
請求項6〜請求項11のいずれかに記載のゴム組成物から得られるトレッドを有することを特徴とするタイヤ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびその製造方法並びにタイヤに関し、更に詳しくは、例えばタイヤのトレッド用に用いられるゴム組成物およびその製造方法、並びに当該ゴム組成物よりなるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のタイヤのトレッド用に用いられるゴム組成物としては、共役ジエン系ゴムよりなるゴム成分と共に、補強剤としてカーボンブラックが配合されてなるものが知られている。
また、近年においては、自動車に対する低燃費化の要請が高まってきていることから、このような要請に応じるべく、タイヤの転がり抵抗を低減させることを目的として、シリカがフィラーとして用いられてきている。
そして、フィラーとしてシリカが配合されてなるゴム組成物においては、シリカ同士が凝集しやすく、組成物中において均一に分散させることが困難であることから、このような問題を解決すべく、種々の提案がなされている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−350603号公報
【特許文献2】特開2006−063209号公報
【特許文献3】特開2010−254791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、本発明者らはフィラーとしてシリカが配合されてなるゴム組成物について研究を重ねた結果、組成物中におけるシリカの分散性が過度に大きくなることによっては、ゴム組成物よりなるゴム弾性体に十分な反発弾性が得られなくなってしまう、という問題が生じることが明らかとなった。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するゴム弾性体を得ることのできるゴム組成物およびその製造方法を提供することにある。
また本発明の他の目的は、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のゴム組成物の製造方法は、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練することを特徴とする。
【0007】
本発明のゴム組成物の製造方法においては、前記共役ジエン系重合体(A)と、前記フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、前記共役ジエン系重合体(B)とを混練することが好ましい。
【0008】
本発明のゴム組成物の製造方法においては、前記共役ジエン系重合体(A)と前記共役ジエン系重合体(B)との質量比(共役ジエン系重合体(A)/共役ジエン系重合体(B))が、97/3〜60/40であることが好ましい。
【0010】
本発明のゴム組成物の製造方法においては、前記共役ジエン系重合体(A)の一分子の一箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であり、
前記共役ジエン系重合体(B)の一分子の複数箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
【0011】
本発明のゴム組成物の製造方法においては、前記フィラー(C)を構成するシリカの割合が、前記共役ジエン系重合体(A)と共役ジエン系重合体(B)とを含有するゴム成分100質量部に対して10〜120質量部であることが好ましい。
【0012】
本発明のゴム組成物は、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練することにより得られることを特徴とする。
【0013】
本発明のゴム組成物は、前記共役ジエン系重合体(A)と、前記フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、前記共役ジエン系重合体(B)とを混練することにより得られることが好ましい。
【0014】
本発明のゴム組成物においては、前記共役ジエン系重合体(A)と前記共役ジエン系重合体(B)との質量比(共役ジエン系重合体(A)/共役ジエン系重合体(B))が、97/3〜60/40であることが好ましい。
【0016】
本発明のゴム組成物においては、前記共役ジエン系重合体(A)の一分子の一箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であり、
前記共役ジエン系重合体(B)の一分子の複数箇所におけるシリカに対して結合反応性を有する基が、それぞれ独立に、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
【0017】
本発明のゴム組成物においては、前記フィラー(C)を構成するシリカの割合が、前記共役ジエン系重合体(A)と共役ジエン系重合体(B)とを含有するゴム成分100質量部に対して10〜120質量部であることが好ましい。
【0018】
本発明のゴム組成物は、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する共役ジエン系重合体(B)とを含有するゴム成分に、少なくとも、シリカを含有するフィラー(C)が添加されてなることを特徴とする。
【0019】
本発明のタイヤは、上記のゴム組成物から得られるトレッドを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のゴム組成物においては、フィラー(C)を構成するシリカと共に、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する重合体(B)とが含有されており、これらの共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とが両者の関係から、共役ジエン系重合体(A)がシリカの分散性を大きくするよう作用し、その一方で重合体(B)がシリカの分散性が過度に大きくなることを抑制するように作用することとなるため、その混合割合によってシリカの分散性を制御することができることから、ゴム組成物から得られるゴム弾性体における転がり抵抗と反発弾性とのバランスの観点から、シリカの分散性を良好なものとすることができる。
従って、本発明に係るゴム組成物によれば、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するゴム弾性体を得ることができる。
【0021】
本発明のゴム組成物の製造方法によれば、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)およびシリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する重合体(B)を含有するゴム成分と、フィラー(C)を構成するシリカとを混練するため、共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とが両者の関係から、共役ジエン系重合体(A)がシリカの分散性を大きくするよう作用し、その一方で重合体(B)がシリカの分散性が過度に大きくなることを抑制するように作用することとなるため、その混合割合によってシリカの分散性を制御することができる。
また、本発明のゴム組成物の製造方法においては、共役ジエン系重合体(A)と、フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、重合体(B)を混練することにより、ゴム組成物から得られるゴム弾性体における転がり抵抗と反発弾性とのバランスの観点からのシリカの分散性をより一層良好なものとすることができるため、得られるゴム弾性体が、より一層、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するものとなる。
【0022】
本発明のタイヤは、トレッドが本発明に係るゴム組成物よりなるものであるため、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
本発明のゴム組成物は、シリカに対して結合反応性を有する基(以下、「特定官能基」ともいう。)を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカに対して結合反応性を有する基(特定官能基)を重合体一分子の複数箇所に有する重合体(B)とを含有するゴム成分に、少なくとも、シリカを含有するフィラー(C)が添加されてなることを特徴とするものである。
ここに、「シリカに対して結合反応性を有する」とは、シリカと化学結合(共有結合、水素結合、分子極性による相互作用を含む)を形成する作用を有することを示す。
また、「重合体一分子の一箇所」の代表例としては、重合体一分子の末端のうちの1つ、すなわち重合体分子の片末端が挙げられる。
【0025】
本発明のゴム組成物は、共役ジエン系重合体(A)と、重合体(B)と、フィラー(C)とを混練することにより得られる、具体的には当該ゴム組成物を構成する各要素を混練することによって得られる組成物(未加硫ゴム組成物)であり、例えば加硫などの架橋処理をすることにより、ゴム弾性体を形成するものである。
【0026】
本発明のゴム組成物において、共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とはゴム成分を構成するものであるが、このゴム成分においては、必須成分としての共役ジエン系重合体(A)および重合体(B)の他、任意成分が含有されていてもよい。
【0027】
本発明のゴム組成物においては、ゴム成分を構成する、共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)との質量比(共役ジエン系重合体(A)/重合体(B))は、97/3〜60/40であることが好ましく、より好ましくは96/4〜65/35であり、特に好ましくは95/5〜70/30である。
【0028】
質量比(共役ジエン系重合体(A)/重合体(B))において、共役ジエン系重合体(A)が過大、すなわち重合体(B)が過小である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体が反発弾性の小さいものとなるおそれがある。一方、共役ジエン系重合体(A)が過小、すなわち重合体(B)が過大である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体の転がり抵抗が大きいものとなるおそれがある。
【0029】
(共役ジエン系重合体(A))
共役ジエン系重合体(A)は、重合体(B)と共にゴム成分を構成するものであり、共役ジエン系重合体をベースポリマーとし、このベースポリマーの重合体一分子の一箇所のみ、好ましくは分子片末端一箇所に特定官能基が導入されてなるものである。
この共役ジエン系重合体(A)は、重合体一分子の一箇所に、1個の特定官能基が導入されてなるものであってもよく、また2個以上の特定官能基が導入されてなるものであってもよい。
ここに、重合体一分子の一箇所に2個以上の特定官能基が導入されてなる共役ジエン系重合体とは、2個以上の特定官能基がそれぞれ独立に存在する構成のもの(具体的には、例えば一の特定官能基が他の特定官能基の置換基として存在する構成のもの、あるいは、一つの特定官能基が他の特定官能基と炭素数5以内の炭化水素化合物に由来の基を挟んで隣り合って存在する構成のもの)が挙げられる。
【0030】
共役ジエン系重合体(A)における特定官能基は、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることが好ましい。
【0031】
共役ジエン系重合体(A)としては、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基から選ばれる少なくとも1種の官能基とが組み合わされて導入されてなるものが好ましい。
【0032】
共役ジエン系重合体(A)のベースポリマーとなる共役ジエン系重合体(以下、「ベース用重合体」ともいう。)は、共役ジエン化合物に由来の構造単位を有するものであり、この共役ジエン化合物に由来の構造単位と共に、芳香族ビニル化合物に由来の構造単位が含有されてなるものであってもよい。
【0033】
ここに、ベース用重合体が芳香族ビニル化合物に由来の構造単位を含有するものである場合においては、芳香族ビニル化合物に由来の構造単位の含有割合は10〜40質量%であることが好ましい。
芳香族ビニル化合物に由来の構造単位の含有割合が過小である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体がドライグリップ性能および耐摩耗性が小さいものとなるおそれがある。一方、芳香族ビニル化合物に由来の構造単位の含有割合が過大である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体が転がり抵抗の大きいものとなるおそれがある。
【0034】
ベース用重合体中の共役ジエン化合物に由来の構造単位を得るための共役ジエン化合物としては、脂肪族共役二重結合を有する直鎖状または分岐状の化合物が用いられ、ベース用重合体が芳香族ビニル化合物に由来の構造単位を含有するものである場合においては、芳香族ビニル化合物と共重合可能な化合物が用いられる。
具体的には、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどを好適に用いることができる。また、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが好ましい。
【0035】
また、ベース用重合体が芳香族ビニル化合物に由来の構造単位を含有するものである場合において、当該芳香族ビニル化合物に由来の構造単位を得るための芳香族ビニル化合物としては、炭素環あるいは複素環を有する芳香族基に結合した1個以上のビニル基を有する化合物またはその誘導体が用いられる。
具体的には、例えばスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、ジビニルベンゼン、tert−ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4−ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N−ジメチルアミノエチレンスチレン、2−t−ブチルスチレン、3−t−ブチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、ジフェニルエチレンなどを好適に用いることができる。また、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、スチレンが好ましい。
【0036】
このようなベース用重合体は、溶液重合法によって製造されたものであることが好ましい。また、溶液重合法としては、リビングアニオン重合法が好ましい。
ベース用重合体を溶液重合法によって製造することにより、後述する手法によるベース用重合体に対する特定官能基の導入が容易となる。
【0037】
ベースポリマーの重合体一分子の一箇所に特定官能基を導入する方法としては、種々の手法を用いることができるが、その一例としては、例えばベース用重合体をリビングアニオン重合法によって生成し、具体的にはn−ブチルリチウムなどの一官能性の重合開始剤を用いてリビングアニオン重合を行い、重合停止剤として特定官能基を導入するための化合物(以下、「官能基導入用化合物」ともいう。)を用いる手法を挙げることができる。
【0038】
官能基導入用化合物としては、例えば、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(t−ブチルジメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(t−ブチルジメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(t−ブチルジメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(t−ブチルジメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(t−ブチルジメチルシリル)アミノプロピルジメチルメトキシシラン、N,N−ビス(t−ブチルジメチルシリル)アミノプロピルジメチルエトキシシラン、およびこれらの化合物のうちのアミノ部位が複数のトリアルキルシリル基で保護されている化合物において、複数のトリアルキルシリル基の一部がメチル基、エチル基、プロピル基あるいはブチル基で置換されてなる化合物;
【0039】
ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−エチルメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−エチルメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエチルメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルジエチルメトキシシラン、3−エチルメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−メチル−3−エチルアミノプロピルエチルジメトキシシラン、ビス−(3−ジメチルアミノプロピル)−ジメトキシシラン、ビス−(3−エチルメチルアミノプロピル)−ジエトキシシラン、ビス−[(3−ジメチルアミノ−3−メチル)プロピル]−ジメトキシシラン、ビス−[(3−エチルメチルアミノ−3−メチル)プロピル]−ジメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルエチルジエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルエチルジエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエチルエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルジエチルエトキシシラン、3−エチルメチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−エチルメチルアミノプロピルエチルジエトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、3−ジ(メトキシメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジ(メトキシエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジ(メトキシメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジ(メトキシエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジ(エトキシエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジ(エトキシメチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジ(エトキシエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジ(エトキシメチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリメトキシシリル)−2−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(メチルジエトキシシリル)−3−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(エチルジメトキシシリル)−4−プロパンアミン;
【0040】
N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、およびこれらの化合物のうちのアミノ部位が複数のトリアルキルシリル基で保護されている化合物において、複数のトリアルキルシリル基の一部がメチル基、エチル基、プロピル基あるいはブチル基で置換されてなる化合物;
【0041】
N−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−[3−(メチルジメトキシシリル)−プロピル]−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−[3−(メチルジメトキシシリル)−プロピル]−N,N’−ジエチル− N’−トリメチルシリル−p−フェニレンジアミン、N−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−p−フェニレンジアミン、N−[3−(ジエトキシメチルシリル)−プロピル]−N−エチル−N’−(2−エトキシエチル)−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−[3−(トリプロポキシシリル)−プロピル]−N−プロピル−N’−(2−エトキシエチル)−N’−トリエチルシリル−p−フェニレンジアミン、N−[2−(ジエトキシメチルシリル)−1−メチルエチル]−N−エチル−N’−(2−ジエチルアミノ−エチル)−N’−トリエチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−N−エチル−N’−(2−ジエチルアミノエチル)−N’−トリエチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリメトキシシリル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(ジメトキシメチルシリル)−エチル]−N−エチル−N’,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−N,N’,N’−トリメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)−プロピル]−N−エチル−N’,N’−ジメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−N,N’,N’−トリエチル−2−メチルプロパン−1,3−ジアミン、N−[3−(ジメトキシメチルシリル)−プロピル]−2,N,N’,N’−テトラメチルプロパン−1,3−ジアミン、N−(2−ジメチルアミノエチル)−N’−[2−(トリメトキシシリル)−エチル]−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(ジエトキシプロピルシリル)−エチル]−N’−(3−エトキシプロピル)−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリメトキシシリル)−エチル]−N’−メトキシメチル−N,N’−ジメチルエタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリメトキシシリル)−エチル]−N,N’−ジメチル−N’−(2−トリメチルシリルエチル)−エタン−1,2−ジアミン、N−[2−(トリエトキシシリル)−エチル]−N,N’−ジエチル−N’−(2−ジブチルメトキシシリルエチル)−エタン−1,2−ジアミン、
【0042】
1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−(3−メチルジメトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、3−[3−(トリメチルシリルエチルアミノ)−1−ピロリジニル]−プロピル−メチルジエトキシシラン、3−[3−(トリメチルシリルプロピルアミノ)−1−ピロリジニル]−プロピル−トリエトキシシラン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリブトキシシラン、4−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジニル)ブチルトリエトキシシラン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、2−(トリエトキシシリル)−1,4−ジエチルピペラジン、2−(ジメトキシメチルシリル)−1,4−ジメチルピペラジン、2−(3−トリエトキシシリル−プロピル)−1,4−ジエチルピペラジン、2−(3−ジメトキシメチルシリル−プロピル)−1,4−ジメチルピペラジン、3−ピペリジノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペリジノプロピルトリエトキシシラン、3−ピペリジノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ピペリジノプロピルエチルジメトキシシラン、3−ピペリジノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ピペリジノプロピルエチルジエトキシシラン、3−(3−トリメチルシリル−1−イミダゾリジニル)プロピルエチルジエトキシシラン、3−(3−トリメチルシリル−1−イミダゾリジニル)プロピルトリエトキシシラン、1−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−3−メチルイミダゾリジン、1−[3−(ジエトキシエチルシリル)−プロピル]−3−エチルイミダゾリジン、1−(2−エトキシエチル)−3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−イミダゾリジン、2−(トリメトキシシリル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ジエチルイミダゾリジン、2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(エチルジメトキシシリル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル−ジメチルアミン、2−(3−ジエトキシエチルシリル−プロピル)−1,3−ジエチルイミダゾリジン、2−[3−(2−ジメチルアミノエチル)−2−(3−エチルジメトキシシリル−プロピル)−イミダゾリジン−1−イル]−エチル−ジメチルアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール、
【0043】
3−(3−トリメチルシリル−1−ヘキサヒドロピリミジニル)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(3−トリメチルシリル−1−ヘキサヒドロピリミジニル)プロピルトリエトキシシラン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、1−[3−(ジメトキシメチルシリル)−プロピル]−3−メチルヘキサヒドロピリミジン、3−[3−(トリブトキシシリル)−プロピル]−1−メチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、3−[3−(ジメトキシメチルシリル)−プロピル]−1−エチル−1,2,3,4−テトラヒドロピリミジン、2−{3−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−テトラヒドロピリミジン−1−イル}−エチルジメチルアミン、5−(トリエトキシシリル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(ジエトキシエチルシリル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、5−(トリメトキシシリル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、5−(エチルジメトキシシラニル)−1,3−ビス−トリメチルシラニルヘキサヒドロピリミジン、5−(3−トリエトキシシリル−プロピル)−1,3−ジプロピルヘキサヒドロピリミジン、5−(3−ジエトキシエチルシリル−プロピル)−1,3−ジエチルヘキサヒドロピリミジン、5−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ビス−(2−メトキシエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、5−(3−エチルジメトキシシリル−プロピル)−1,3−ビス−(2−トリメチルシリルエチル)−ヘキサヒドロピリミジン、
【0044】
3−モルホリノプロピルトリメトキシシラン、3−モルホリノプロピルトリエトキシシラン、3−モルホリノプロピルメチルジメトキシシラン、3−モルホリノプロピルエチルジメトキシシラン、3−モルホリノプロピルメチルジエトキシシラン、3−モルホリノプロピルエチルジエトキシシラン、3−ヘキサメチレンイミノプロピルトリメトキシシラン、3−ヘキサメチレンイミノプロピルトリエトキシシラン、3−ヘキサメチレンイミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ヘキサメチレンイミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−ヘキサメチレンイミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ヘキサメチレンイミノプロピルエチルジエトキシシラン、3−ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−ジ(t−ブチルジメチルシリル)アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリメトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(メチルジエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(エチルジメトキシシリル)−1−プロパンアミン、 [(3−メチル−3−エチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[(3−メチル−3−エチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルトリメトキシシラン、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルトリエトキシシラン、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノプロピルメチルジエトキシシラン、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノエチルトリメトキシシラン、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノエチルトリエトキシシラン、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノエチルメチルジメトキシシラン、P,P−ビス(トリメチルシリル)ホスフィノエチルメチルジエトキシシラン、
【0045】
3−ジメチルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエチルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、3−エチルメチルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−エチルメチルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジエチルフォスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルエチルジメトキシシラン、3−ジエチルフォスフィノプロピルエチルジメトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルジメチルメトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルジエチルメトキシシラン、3−ジエチルフォスフィノプロピルジメチルメトキシシラン、3−ジエチルフォスフィノプロピルジエチルメトキシシラン、3−エチルメチルフォスフィノプロピルメチルジメトキシシラン、3−エチルメチルフォスフィノプロピルエチルジメトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ジエチルフォスフィノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルエチルジエトキシシラン、3−ジエチルフォスフィノプロピルエチルジエトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルジメチルエトキシシラン、3−ジメチルフォスフィノプロピルジエチルエトキシシラン、3−ジエチルフォスフィノプロピルジメチルエトキシシラン、3−ジエチルフォスフィノプロピルジエチルエトキシシラン、3−エチルメチルフォスフィノプロピルメチルジエトキシシラン、3−エチルメチルフォスフィノプロピルエチルジエトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルメリルジメトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルメリルジエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトエチルトリメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトエチルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトエチルメチルジメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトエチルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0046】
これらのうちでは、N,N−ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、1−(3−トリエトキシシリルプロピル)−2,2,5,5−テトラメチル−1−アザ−2,5−ジシラシクロペンタン、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N−[3−(トリメトキシシリル)−プロピル]−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、N−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−N,N’−ジエチル−N’−トリメチルシリル−エタン−1,2−ジアミン、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン、N−[2−(トリメトキシシリル)−エチル]−N,N’,N’−トリメチルエタン−1,2−ジアミン、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、2−(トリメトキシシリル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、2−(3−トリメトキシシリル−プロピル)−1,3−ジメチルイミダゾリジン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]トリメチルシリルアミン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾール、ビス−(3−ジメチルアミノプロピル)−ジメトキシシラン、[3−(ジエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリメトキシシラン、3−ジフェニルフォスフィノプロピルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリメトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルトリエトキシシラン、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシランが好ましい。
【0047】
また、前述の官能基導入用化合物のうちのトリメチルシリル基を有するものについては、そのトリメチルシリル基の全てあるいは一部が、得られるヒドロカルビルオキシシリル基において水素置換されていてもよい。また、水素置換されたもののうちのオニウム生成剤の作用によってオニウムになりうる基(以下、「オニウム形成基」ともいう。)については、オニウム塩構造を形成していてもよい。オニウム形成基としては、例えばアミノ基に代表される窒素含有官能基、ホスフィノ基に代表されるリン含有基、チオール基に代表される硫黄含有基などが挙げられる。
【0048】
ここに、オニウム生成剤としては、例えばハロゲン化ケイ素化合物、ハロゲン化スズ化合物、ハロゲン化アルミニウム化合物、ハロゲン化チタン化合物、ハロゲン化ジルコニウム化合物、ハロゲン化ゲルマニウム化合物、ハロゲン化亜鉛化合物、ハロゲン化ガリウム化合物等のハロゲン化金属、硫酸エステル、リン酸エステル、炭酸エステル、硝酸エステル、弗酸、塩酸、臭酸、沃酸、硫酸、硝酸、炭酸、燐酸等の無機酸、フッ化カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム等の無機酸塩、カルボン酸、スルホン酸等の有機酸などが用いられる。
【0049】
オニウム生成剤の具体例としては、四塩化ケイ素、四塩化スズ、トリメチルシリルクロライド、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、四塩化チタン、チタノセンジクロライド、四塩化ジルコニウム、ジルコノセンジクロライド、四塩化ゲルマニウム、三塩化ガリウム、塩化亜鉛、硫酸ジエチル、硫酸ジメチル、ラウレス硫酸マグネシウム、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレシル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、ニトロセルロース、ニトログリセリン、ニトログリコール、蟻酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、マロン酸、アクリル酸、クロトン酸、コハク酸、グルタル酸、イタコン酸、酒石酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、β−メルカプトプロピオン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、弗酸、塩酸、臭酸、沃酸、硫酸、硝酸、炭酸、燐酸、フッ化カリウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラ−
n−ブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0050】
共役ジエン系重合体(A)は、ゴム組成物から得られるゴム弾性体のコールドフロー性の観点から、多官能変性剤(以下、「カップリング用多官能化合物」ともいう。)によってカップリングされてなるものであってもよい。
共役ジエン系重合体(A)をカップリング用多官能化合物によってカップリングされたものとするカップリング反応は、ベースポリマーに特定官能基を導入する以前あるいは導入した後に行ってもよく、また特定官能基を導入するための反応と同時に行ってもよい。
【0051】
カップリング用多官能化合物としては、(a)イソシアナート化合物および/またはイソチオシアナート化合物、(b)アミド化合物および/またはイミド化合物、(c)ピリジル置換ケトン化合物および/またはピリジル置換ビニル化合物、(d)ケイ素化合物、(e)エステル化合物、(f)ケトン化合物、および(g)スズ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0052】
上記(a)のイソシアナート化合物としては、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアナート(C−MDI)、イソホロンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、1,3,5−ベンゼントリイソシアナートなどが好適例として挙げられる。
また、上記(a)のイソチオシアナート化合物としては、フェニル−1,4−ジイソチオシアナートなどが好適例として挙げられる。
上記(b)のアミド化合物としては、コハク酸アミド、フタル酸アミド、N,N,N’,N’−テトラメチルフタル酸アミド、オキサミド、N,N,N’,N’−テトラメチルオキサミドなどが好適例として挙げられる。
また、上記(b)のイミド化合物としては、コハク酸イミド、N−メチルコハクイミド、マレイミド、N−メチルマレイミド、フタルイミド、N−メチルフタルイミドなどが好適例として挙げられる。
上記(c)のピリジル置換ケトン化合物としては、ジベンゾイルピリジン、ジアセチルピリジンなどが好適例として挙げられる。
また、上記(c)のピリジル置換ビニル化合物としては、ジビニルピリジンなどが好適例として挙げられる。
上記(d)のケイ素化合物としては、ジブチルジクロロケイ素、メチルトリクロロケイ素、メチルジクロロケイ素、テトラクロロケイ素、トリエトキシメチルシラン、トリフェノキシメチルシラン、トリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、4,5−エポキシヘプチルメチルジメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイドなどが好適例として挙げられる。
上記(e)のエステル化合物としては、アジピン酸ジエチル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、マレイン酸ジエチルなどが好適例として挙げられる。
上記(f)のケトン化合物の具体例としては、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラエチル(4,4’−ジアミノ)−ベンゾフェノン、N,N−ジメチル−1−アミノベンゾキノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノベンゾキノン、N,N−ジメチル−1−アミノアントラキノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノアントラキノンなどが好適例として挙げられる。
上記(g)のスズ化合物としては、テトラクロロスズ、テトラブロムスズ、トリクロロブチルスズ、トリクロロメチルスズ、トリクロロオクチルスズ、ジブロムジメチルスズ、ジクロロジメチルスズ、ジクロロジブチルスズ、ジクロロジオクチルスズ、1,2−ビス(トリクロロスタニル)エタン、1,2−ビス(メチルジクロロスタニルエタン)、1,4−ビス(トリクロロスタニル)ブタン、1,4−ビス(メチルジクロロスタニル)ブタン、エチルスズトリステアレート、ブチルスズトリスオクタノエート、ブチルスズトリスステアレート、ブチルスズトリスラウレート、ジブチルスズビスオクタノエート、ジブチルスズビスステアレート、ジブチルスズビスラウレートなどが好適例として挙げられる。
これらの化合物は、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0053】
このような共役ジエン系重合体(A)においては、共役ジエン化合物に由来の構造単位中の1,2−ビニル結合の含有量が30〜70mol%であることが好ましい。
1,2−ビニル結合の含有量が過小である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体におけるウェットグリップ性能と転がり抵抗とのバランスが悪化するおそれがある。
一方、1,2−ビニル結合の含有量が過大である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体の耐摩耗性が著しく小さいものとなるおそれがある。
【0054】
ここに、共役ジエン化合物に由来の構造単位中の1,2−ビニル結合の含有量は、500MHz、H−NMRスペクトルから算出することができる。
【0055】
共役ジエン系重合体(A)の含有割合は、ゴム成分100質量%において、30〜95質量%であることが好ましい。
【0056】
(重合体(B))
重合体(B)は、共役ジエン系重合体(A)と共にゴム成分を構成するものであり、特定官能基を重合体一分子の複数箇所、すなわち分子中における複数箇所に有するものである。
この重合体(B)は、重合体一分子の複数箇所において、各々、1個の特定官能基が導入されてなるものであってもよく、また2個以上の特定官能基が導入されてなるものであってもよい。
ここに、重合体一分子の一箇所に2個以上の特定官能基が導入されてなる重合体とは、2個以上の特定官能基がそれぞれ独立に存在する構成のもの(具体的には、例えば一つの特定官能基が他の特定官能基の置換基として存在する構成のもの、あるいは、一つの特定官能基が他の特定官能基と炭素数5以内の炭化水素化合物に由来の基を挟んで隣り合って存在する構成のもの)が挙げられる。
【0057】
重合体(B)における特定官能基は、ヒドロカルビルオキシシリル基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、チオール基、エポキシ基、チオエポキシ基、オキセタン基およびヒドロカルビルチオ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基であることが好ましい。これらのうちでは、ヒドロカルビルオキシシリル基が好ましい。
【0058】
この重合体(B)は、ベースポリマーに複数個の特定官能基が導入されてなるものであるが、重合体一分子中の複数箇所に特定官能基が導入されていれば、その導入箇所はいずれであってもよく、複数の特定官能基は、分子末端、分子側鎖あるいは分子内のいずれに導入されていてもよいが、少なくとも一方の分子末端に導入されていることが好ましく、特に両方の分子末端に導入されていることが好ましい。
【0059】
重合体(B)のベースポリマーとしては、共役ジエン化合物に由来の構造単位を含有する共役ジエン系重合体が好ましい。
重合体(B)のベースポリマーとなる共役ジエン系重合体としては、共役ジエン系重合体(A)のベースポリマーとして用いることのできる共役ジエン系重合体として例示した重合体を用いることができる。
【0060】
ここに、重合体(B)のベースポリマーが共役ジエン系重合体である場合には、当該重合体(B)においては、共役ジエン化合物に由来の構造単位中の1,2−ビニル結合の含有量が30〜70mol%であることが好ましい。
1,2−ビニル結合の含有量が過小である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体におけるウェットグリップ性能と転がり抵抗とのバランスが悪化するおそれがある。
一方、1,2−ビニル結合の含有量が過大である場合には、ゴム組成物から得られるゴム弾性体の耐摩耗性が著しく小さいものとなるおそれがある。
【0061】
重合体(B)の好ましい具体例としては、共役ジエン系重合体(A)におけるベースポリマーと同一種類のベースポリマーを有し、かつ当該共役ジエン系重合体(A)を構成する特定官能基と同一種類の特定官能基が導入されてなる構成のものが挙げられる。
【0062】
ベースポリマーの重合体一分子の複数箇所に特定官能基を導入する方法としては、種々の手法を用いることができるが、その一例としては、例えばベース用重合体をリビングアニオン重合法によって生成し、具体的には多官能性の重合開始剤を用いてリビングアニオン重合を行い、重合停止剤として特定官能基を導入するための化合物官能基導入用化合物を用いる手法を挙げることができる。
【0063】
リビング重合に用いる多官能性の重合開始剤としては、例えばトリオクチルアミンの存在下においてジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとを反応させることによって得られる二官能性アニオンリビング重合開始剤(ジリチウム系多官能開始剤)などが挙げられる。
【0064】
特定官能基を導入するための化合物としては、共役ジエン系重合体(A)に係るベースポリマーに特定官能基を導入するための官能基導入用化合物として用いることのできる化合物として例示した化合物を用いることができる。
【0065】
また、特定官能基を導入するための化合物としては、共役ジエン系重合体(A)に係る官能基導入用化合物として例示した化合物の他、例えば1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジエチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジプロピルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジブチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジメトキシアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジエトキシアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジプロポキシアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、1−(4−N,N−ジブトキシアミノフェニル)−1−フェニルエチレン、tert−ブトキシジメチルシリルスチレンおよびイソプロポキシジメチルシリルスチレンなどを用いることもできる。これらのうちでは、ゴム組成物から得られるゴム弾性体において省燃費性を著しく改良できるという観点から、1−(4−N,N−ジメチルアミノフェニル)−1−フェニルエチレンが好ましい。
【0066】
重合体(B)は、ゴム組成物から得られるゴム弾性体のコールドフロー性の観点から、カップリング用多官能化合物によってカップリングされてなるものであってもよい。
重合体(B)をカップリング用多官能化合物によってカップリングされたものとするカップリング反応は、特定官能基を導入する以前あるいは導入した後に行ってもよく、また特定官能基を導入するための反応と同時に行ってもよい。
【0067】
カップリング用多官能化合物としては、共役ジエン系重合体(A)をカップリングするためのカップリング用多官能化合物として用いることのできる化合物として例示した化合物を用いることができる。
【0068】
重合体(B)の含有割合は、ゴム成分100質量%において、1〜40質量%であることが好ましい。
【0069】
本発明のゴム組成物において、ゴム成分には、必須成分である共役ジエン系重合体(A)および重合体(B)の他、任意成分が含有されていてもよいが、任意成分としては、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、合成イソプレンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、エチレン−α−オレフィン−ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴムおよびハロゲン化ブチルゴム、並びにこれらの混合物などの、タイヤ用ゴム組成物として使用可能な公知の他のゴム成分などが挙げられる。これらのうちでは、ゴム組成物から得られるゴム弾性体において、耐摩耗性を維持しつつ、ウェットグリップ性能と転がり抵抗とのバランスを高次に達成できるという理由から、天然ゴムあるいはブタジエンゴムを含むことが好ましい。
【0070】
ゴム成分における任意成分の含有割合は、ゴム成分100質量%において、45質量%以下であることが好ましい。
【0071】
(フィラー(C))
フィラー(C)は、シリカを必須成分として含有するものであり、この必須成分としてのシリカと共に、任意成分が含有されていてもよい。
【0072】
フィラー(C)を構成するシリカとしては、一般的に充填剤として用いられているシリカを用いることができるが、ゴム組成物から得られるゴム弾性体の転がり抵抗および反発弾性の観点から、一次粒子径が50nm以下である合成ケイ酸が好ましい。
【0073】
フィラー(C)を構成するシリカの含有割合は、共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とを含有するゴム成分100質量部に対して、10〜120質量部であることが好ましく、より好ましくは20〜100質量部である。
シリカ(C)の含有割合が過小である場合および過小である場合には、いずれの場合においても、ゴム組成物から得られるゴム弾性体において、硬度と転がり抵抗とのバランスが悪化するおそれがある。
【0074】
フィラー(C)においては、必須成分であるシリカの他、任意成分が含有されていてもよいが、任意成分としては、例えば酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機水酸化物、炭酸マグネシウム等の炭酸塩類などが挙げられ、これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
本発明のゴム組成物においては、必須成分である、共役ジエン系重合体(A)、重合体(B)およびフィラー(C)の他、必要に応じて、任意成分が含有されていてもよい。
任意成分の具体例としては、前述のゴム成分に係る任意成分に加え、例えばカーボンブラックなどの補強剤、オイルなどの軟化剤、シランカップリング剤、ワックス、老化防止剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄などの加硫剤または架橋剤、加硫促進剤などが挙げられる。
【0076】
以上のような本発明のゴム組成物は、未加硫ゴム組成物であり、例えば加硫などの架橋処理をすることによってゴム弾性体が形成されるものであるが、シリカを含有するフィラー(C)と共に、ゴム成分として、共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とが含有されており、これらの共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とが両者の関係から、共役ジエン系重合体(A)がシリカの分散性を大きくするよう作用し、その一方で重合体(B)がシリカの分散性が過度に大きくなることを抑制するように作用することとなるため、その混合割合によってシリカの分散性を制御することができる。そのため、ゴム組成物から得られるゴム弾性体における転がり抵抗と反発弾性とのバランスの観点から、シリカの分散性を良好なものとすることができる。
従って、本発明のゴム組成物によれば、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するゴム弾性体を得ることができる。
【0077】
このような本発明のゴム組成物は、例えばプラストミルを用い、必須成分である、共役ジエン系重合体(A)、重合体(B)およびフィラー(C)と共に、必要に応じて任意成分を混合して混練することによって製造することができる。
【0078】
本発明のゴム組成物の製造方法は、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の一箇所のみに有する共役ジエン系重合体(A)と、シリカに対して結合反応性を有する基を重合体一分子の複数箇所に有する重合体(B)と、シリカを含有するフィラー(C)とを混練することを特徴とするものであるが、この混練に際しては、共役ジエン系重合体(A)と、フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、重合体(B)とを混練することが好ましい。
具体的には、先ず、共役ジエン系重合体(A)、フィラー(C)および必要に応じて任意成分とを混練した後、その混練物に重合体(B)を添加して更に混練する。
【0079】
本発明のゴム組成物の製造方法においては、共役ジエン系重合体(A)と、フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、重合体(B)とを混練することにより、ゴム組成物から得られるゴム弾性体における転がり抵抗と反発弾性とのバランスの観点からのシリカの分散性をより一層良好なものとすることができるため、得られるゴム弾性体が、より一層、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性を有するものとなる。
【0080】
また、本発明のゴム組成物の製造方法は、共役ジエン系重合体(A)と、フィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、重合体(B)とを混練する手法に限定されず、例えば必須成分である、共役ジエン系重合体(A)、重合体(B)およびフィラー(C)と共に、必要に応じて任意成分を一斉に混練する手法であってもよい。
【0081】
また、本発明に係るゴム組組成物から得られるゴム弾性体は、タイヤ(具体的にはタイヤのトレッド)として好適に用いられる。
このような本発明に係るゴム組成物から得られるトレッドを有するタイヤ、すなわち本発明のタイヤには、転がり抵抗が小さく、優れた反発弾性が得られる。
【0082】
ここに、本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。
すなわち、例えば本発明のゴム組成物(未加硫ゴム組成物)を、形成すべきタイヤの形状(具体的には、トレッドの形状)に応じて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、未架橋(未加硫)タイヤを形成する。この未架橋(未加硫)タイヤを加硫機中で加熱加圧することによって本発明に係るゴム組成物よりなるタイヤが製造される。
【実施例】
【0083】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例および比較例において、各種物性値の測定法は以下の通りである。
【0084】
(1)共役ジエン系重合体における芳香族ビニル化合物としてのスチレンに由来の構造単位の含有割合(以下、「結合スチレン含量」ともいう。):
重クロロホルムを溶媒として用い、500MHz、H−NMRスペクトルから算出した。
【0085】
(2)共役ジエン系重合体における共役ジエン化合物に由来の構造単位中の1,2−ビニル結合の含有量(以下、「ビニル結合含量」ともいう。):
500MHz、H−NMRスペクトルから算出した。
【0086】
(3)共役ジエン系重合体におけるガラス転移温度(Tg):
ASTM D3418に準拠して示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。
【0087】
(4)共役ジエン系重合体に係るベース用重合体の分子量:
下記の条件にて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC−8120GPC」(東ソー株式会社製)によって測定を行い、得られたGPC曲線の最大ピーク頂点に相当する保持時間から、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0088】
(GPC条件)
・カラム;商品名「GMHHXL」(東ソー社製)2本
・カラム温度;40℃
・移動相;テトラヒドロフラン
・流速;1.0ml/分
・サンプル濃度;10mg/20ml
【0089】
(5)共役ジエン系重合体におけるムーニー粘度:
JIS K6300に準拠し、Lローターを用い、予熱1分間、ローター作動時間4分間、温度100℃の条件で測定した。
【0090】
(共役ジエン系重合体の合成例1;共役ジエン系重合体(A)の合成)
先ず、窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、溶媒としてシクロヘキサン2750g、ビニル結合含量調整剤としてテトラヒドロフラン50g、単量体としてスチレン125gおよび1,3−ブタジエン375gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、重合開始剤としてn−ブチルリチウム5.8mmolを含むシクロヘキサン溶液を添加することによって重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達したことを確認した後、重合転化率が99%に達した時点から更に5分間重合させた後、得られた反応溶液、すなわち共役ジエン化合物(1,3−ブタジエン)と芳香族ビニル化合物(スチレン)とからなる共重合体(ベース用重合体)を含有するポリマー溶液から、分子量測定用(ベース用重合体の分子量測定用)として10gをサンプリングした。
【0091】
次いで、サンプリングをした後のポリマー溶液に、官能基導入剤(官能基導入用化合物)としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間かけて反応させた。その後、得られたポリマー溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2gを添加し、更に水酸化ナトリウムでpHを9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことによって脱溶媒処理した後、110℃に調温された熱ロールによって乾燥処理することにより、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と1級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A1)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A1)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0092】
(共役ジエン系重合体の合成例2;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジン4.96mmolを用いたこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と3級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A2)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A2)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0093】
(共役ジエン系重合体の合成例3;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシラン4.96mmolを用いたこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と2級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A3)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A3)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0094】
(共役ジエン系重合体の合成例4;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、N,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン4.96mmolを用いたこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と1級アミノ基と2級アミノ基を一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A4)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A4)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0095】
(共役ジエン系重合体の合成例5;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、[3−(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシラン4.96mmolを用いたこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と3級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A5)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A5)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0096】
(共役ジエン系重合体の合成例6;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、S−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolを用いたこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基とチオール基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A6)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A6)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0097】
(共役ジエン系重合体の合成例7;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン4.96mmolを用いたこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、ヒドロカルビルオキシシリル基と1級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体、およびヒドロカルビルオキシシリル基と2級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体との混合物(以下、「共役ジエン系重合体(A7)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A7)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0098】
(共役ジエン系重合体の合成例8;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、官能基導入用化合物としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolに代えて、テトラエトキシシラン4.96mmolおよびN−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール4.96mmolを用い、これらをテトラエトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールの順で添加したこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と1級アミノ基とを一方の分子末端に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A8)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A8)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0099】
(共役ジエン系重合体の合成例9;共役ジエン系重合体(A)の合成)
共役ジエン系重合体の合成例1において、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加する前に、四塩化ケイ素2.69mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて5分間かけて混合したこと以外は当該共役ジエン系重合体の合成例1と同様の手法により、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と1級アミノ基とを一方の分子末端に有すると共に、オニウム塩構造が形成されてなる共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(A9)」ともいう。)を得た。
得られた共役ジエン系重合体(A9)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量、ガラス転移温度およびムーニー粘度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表2に示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1において、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(1)」はN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(2)」は1−[3−(トリエトキシシリル)−プロピル]−4−メチルピペラジンであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(3)」は3−(4−トリメチルシリル−1−ピペラジノ)プロピルトリエトキシシランであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(4)」はN,N’,N’−トリス(トリメチルシリル)−N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシランであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(5)」は[3−(ジメチルアミノ)プロピル]トリエトキシシランであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(6)」はS−トリメチルシリルメルカプトプロピルメチルジエトキシシランであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(7)」はN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(8)」はテトラエトキシシランであり、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(9)」はN−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールである。
【0102】
【表2】
【0103】
(共役ジエン系重合体の合成例10;共役ジエン系重合体(B)の合成)
先ず、窒素置換された内容積5リットルのオートクレーブ反応器に、溶媒としてシクロヘキサン2750g、ビニル結合含量調整剤としてテトラヒドロフラン50g、単量体としてスチレン125gおよび1,3−ブタジエン375gを仕込んだ。反応器内容物の温度を10℃に調整した後、重合開始剤(ジリチウム系多官能開始剤)として、トリオクチルアミンの存在下においてジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとを反応させることによって得られる二官能性アニオンリビング重合開始剤2.9mmolを添加することによって重合を開始した。重合は断熱条件で実施し、最高温度は85℃に達した。
重合転化率が99%に達したことを確認した後、重合転化率が99%に達した時点から更に5分間重合させた後、得られた反応溶液、すなわち共役ジエン化合物(1,3−ブタジエン)と芳香族ビニル化合物(スチレン)とからなる共重合体(ベース用重合体)を含有するポリマー溶液から、分子量測定用(ベース用重合体の分子量測定用)として10gをサンプリングした。
【0104】
次いで、サンプリングをした後のポリマー溶液に、官能基導入剤(官能基導入用化合物)としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン4.96mmolを含むシクロヘキサン溶液を加えて15分間かけて反応させた。その後、得られたポリマー溶液に2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール2gを添加し、更に水酸化ナトリウムでpHを9に調整した熱水を用いてスチームストリッピングを行うことによって脱溶媒処理した後、110℃に調温された熱ロールによって乾燥処理することにより、特定官能基として、ヒドロカルビルオキシシリル基と1級アミノ基とを分子末端の各々に有する共役ジエン系重合体(以下、「共役ジエン系重合体(B1)」ともいう。)を得た。
【0105】
得られた共役ジエン系重合体(B1)について、結合スチレン含量、ビニル結合含量およびガラス転移温度を測定した。結果を、特定官能基を導入する前の重量平均分子量、すなわちベース用重合体の重量平均分子量と共に、表4に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
表3において、「ジリチウム系多官能開始剤」はトリオクチルアミンの存在下においてジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとを反応させることによって得られる二官能性アニオンリビング重合開始剤を示す。また、同表において、「ヒドロカルビルオキシシラン化合物(1)」はN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを示す。
【0108】
【表4】
【0109】
〔実施例1〕
温度制御装置を付属したプラストミル(内容量250cc)を用い、充填率72%、回転数60rpm、温度120℃の混練条件により、共役ジエン系重合体(A1)80質量部、ブタジエンゴム「BR01」(JSR社製)20質量部、伸展油「SNH46」(三共油化工業社製)45質量部、カーボンブラック6.7質量部、シリカ「ニプシルAQ」(東ソー・シリカ社製,一次平均粒子径15nm)84質量部、シランカップリング剤「Si−69」(デグサ社製)10質量部、ステアリン酸2.4質量部、老化防止剤「ノクラック810NA」(大内新興化学工業社製)1.2質量部および酸化亜鉛(亜鉛華)3.6質量部を混練した後、トルクがピークを超えたところで共役ジエン系重合体(B1)20質量部を混練(第1段目の混練)した。その後、第1段目の混練によって得られた混練物を室温まで冷却した後、更に、加硫促進剤「ノクセラ−CZ」(大内新興化学工業社製)1.8質量部、加硫促進剤「ノクセラ−D」(大内新興化学工業社製)1.8質量部、イオウ1.8質量部を添加し、回転数60rpm、温度80℃の混練条件によって混練(第2段目の混練)することにより、ゴム組成物(以下、「ゴム組成物(1)」ともいう。)を得た。
得られたゴム組成物(1)を成型し、加硫プレスによって温度条件160℃で所定時間 加硫することにより、ゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(1)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(1)について、下記の特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(1)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0110】
(1)反発弾性:
トリプソ式反発弾性試験(東洋精機製作所製)を用い、50℃の条件で測定した。
表5には比較例1に係るゴム弾性体の値を100としたときの指数が示されており、その指数によれば、数値が大きいほど反発弾性が大きく良好であることが示される。
(2)ウェットスキッド抵抗性(0℃tanδ):
動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を用い、引張動歪0.14%、角速度100ラジアン毎秒、温度0℃の条件で測定した。
表5には比較例1に係るゴム弾性体の値を100としたときの指数が示されており、その指数によれば、数値が大きいほどウェットスキッド抵抗性が大きく良好であることが示される。
(3)低ヒステリシスロス特性(70℃tanδ):
動的スペクトロメーター(米国レオメトリックス社製)を使用し、引張動歪0.7%、角速度100ラジアン毎秒、温度70℃の条件で測定した。
表5には比較例1に係るゴム弾性体の値を100としたときの指数が示されており、その指数によれば、数値が大きいほど低ヒステリシスロス特性が大きく良好であることが示される。
【0111】
〔実施例2〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A2)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(2)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(2)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(2)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(2)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(2)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0112】
〔実施例3〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A3)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(3)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(3)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(3)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(3)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(3)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0113】
〔実施例4〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A4)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(4)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(4)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(4)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(4)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(4)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0114】
〔実施例5〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A5)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(5)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(5)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(5)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(5)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(5)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0115】
〔実施例6〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A6)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(6)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(6)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(6)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(6)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(6)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0116】
〔実施例7〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A7)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(7)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(7)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(7)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(7)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(7)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0117】
〔実施例8〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A8)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「混練ゴム組成物(8)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(8)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(8)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(8)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(8)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0118】
〔実施例9〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)に代えて、共役ジエン系重合体(A9)を用いたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(9)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(9)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(9)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(9)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(9)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0119】
〔実施例10〕
温度制御装置を付属したプラストミル(内容量250cc)を用い、充填率72%、回転数60rpm、温度120℃の混練条件により、官能基導入共役ジエン系重合体(A1)80質量部、ブタジエンゴム「BR01」(JSR社製)20質量部、共役ジエン系重合体(B1)20質量部、伸展油「SNH46」(三共油化工業社製)45質量部、カーボンブラック6.7質量部、シリカ「ニプシルAQ」(東ソー・シリカ社製,一次平均粒子径15nm)84質量部、シランカップリング剤「Si−69」(デグサ社製)10質量部、ステアリン酸2.4質量部、老化防止剤「ノクラック810NA」(大内新興化学工業社製)1.2質量部および酸化亜鉛(亜鉛華)3.6質量部を混練(第1段目の混練)した。その後、第1段目の混練によって得られた混練物を室温まで冷却した後、更に、加硫促進剤「ノクセラ−CZ」(大内新興化学工業社製)1.8質量部、加硫促進剤「ノクセラ−D」(大内新興化学工業社製)1.8質量部、イオウ1.8質量部を添加し、回転数60rpm、温度80℃の混練条件によって混練(第2段目の混練)することにより、ゴム組成物(以下、「ゴム組成物(10)」ともいう。)を得た。
得られたゴム組成物(10)を成型し、加硫プレスによって温度条件160℃で所定時間加硫することにより、ゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(10)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(10)について、下記の特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(10)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0120】
〔実施例11〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)の配合量を97質量部としたこと、および共役ジエン系重合体(B1)の配合量を3質量部としたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(11)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(11)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(11)」ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(11)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(11)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0121】
〔実施例12〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)の配合量を65質量部としたこと、および共役ジエン系重合体(B1)の配合量を35質量部としたこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「ゴム組成物(12)」ともいう。)を得、そのゴム組成物(12)からゴム弾性体(以下、「ゴム弾性体(12)」)ともいう。)を得た。
得られたゴム弾性体(12)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
ここに、ゴム組成物(12)において、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有割合は70質量部である。
【0122】
〔比較例1〕
実施例1において、共役ジエン系重合体(A1)の配合量を100質量部としたこと、および共役ジエン系重合体(B1)を用いなかったこと以外は実施例1と同様の手法によってゴム組成物(以下、「比較用ゴム組成物(1)」ともいう。)を得、その比較用ゴム組成物(1)からゴム弾性体(以下、「比較用ゴム弾性体(1)」ともいう。)を得た。
得られた比較用ゴム弾性体(1)について、実施例1と同様にして特性評価を行った。結果を表5に示す。
【0123】
【表5】
【0124】
表5において、「製造方法」に係る「a」は、共役ジエン系重合体(A)とフィラー(C)とを混練した後、得られた混練物と、重合体(B)とを混練することによってゴム組成物を製造する手法を示し、また「b」は、共役ジエン系重合体(A)と重合体(B)とフィラー(C)とを一同に混練することによってゴム組成物を製造する手法を示す。