特許第6148845号(P6148845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本特殊陶業株式会社の特許一覧

特許6148845電極内蔵型セラミックス焼結体の製造方法
<>
  • 特許6148845-電極内蔵型セラミックス焼結体の製造方法 図000003
  • 特許6148845-電極内蔵型セラミックス焼結体の製造方法 図000004
  • 特許6148845-電極内蔵型セラミックス焼結体の製造方法 図000005
  • 特許6148845-電極内蔵型セラミックス焼結体の製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6148845
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】電極内蔵型セラミックス焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20170607BHJP
   H02N 13/00 20060101ALN20170607BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
   !H02N13/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-244186(P2012-244186)
(22)【出願日】2012年11月6日
(65)【公開番号】特開2014-93467(P2014-93467A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年10月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 弘徳
(72)【発明者】
【氏名】土田 淳
(72)【発明者】
【氏名】大久保 匠
(72)【発明者】
【氏名】管野 明
【審査官】 儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−176096(JP,A)
【文献】 特開2002−173378(JP,A)
【文献】 特開2003−258068(JP,A)
【文献】 特開2003−017552(JP,A)
【文献】 特開2002−008984(JP,A)
【文献】 特開2008−124265(JP,A)
【文献】 特開2008−028297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハを支持するための支持面を有するセラミックス焼結体と、前記セラミックス焼結体に埋設されている電極と、を備えている電極内蔵型セラミックス焼結体を製造する方法であって、
少なくとも1つのセラミックス成形体が他のセラミックス成形体との接合面において前記電極の形状に合わせた形状の溝を有するような複数のセラミックス成形体を準備する第1工程と、
前記第1工程により準備された前記複数のセラミックス成形体を、前記電極が前記溝により形成される空間に収容されるように重ね合わせた上で、当該重ね合わせ方向に加圧しながら前記電極の融点以下の温度で焼成かつ接合する第2工程と、を含んでおり、
前記第1工程が、前記空間の高さが前記電極の厚さの1〜(1/a)倍の範囲に含まれるような形状の溝を有する前記少なくとも1つのセラミックス成形体を準備する工程であり、aは前記セラミックス焼結体の理論密度に対する前記セラミックス成形体の密度の比率であり、
前記電極は、箔またはメッシュからなることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、
前記第1工程が、前記セラミックス成形体の焼成時における前記電極の熱膨張係数の値が前記セラミックス成形体の熱膨張係数の値より大きい場合、前記空間の幅が前記電極の幅のb倍以上の範囲に含まれるような形状の溝を有する前記少なくとも1つのセラミックス成形体を準備する工程であり、bは前記電極の熱膨張係数および前記セラミックス成形体の熱膨張係数の差と、前記セラミックス成形体の焼成温度との積であり、
前記セラミックス成形体の焼成時における前記電極の熱膨張係数の値が前記セラミックス成形体の熱膨張係数の値以下である場合、前記空間の幅が前記電極の幅と同じになるような形状の溝を有する前記少なくとも1つのセラミックス成形体を準備する工程であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の方法において、
前記第1工程が、CIPにしたがって前記複数のセラミックス成形体を作製する工程であることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置に使用される静電チャック、ヒータまたはサセプタ等、電極が内蔵または埋設されているセラミックス焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程で使用されるCVDもしくはPVD等の成膜装置またはエッチング装置においては、デポジッション用ガス、エッチング用ガスまたはクリーニング用ガスとして、塩素系またはフッ素系の腐食性ガスが使用されている。当該ガス環境下でシリコンウエハを所定位置に固定しながら適当な温度範囲に加熱するために用いられる静電チャック、ヒータおよびサセプタのそれぞれの構成として、耐食性が高くかつ緻密質なセラミックス焼結体の中に電極が内蔵されている構成が採用されている。
【0003】
電極内蔵型のセラミックス焼結体の製造方法として、(1)複数のCIP(コールドアイソスタテッィク)体の間にバルクの金属の電極を設置した上でホットプレス焼成する方法、(2)プレス体を用いてバルクの金属の電極を埋設しホットプレス焼成する方法、および(3)複数のグリーンシートのうち少なくとも1つに金属ペーストで電極が印刷され、当該複数のグリーンシートを積層して焼成する方法が提案されている(たとえば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2766443号公報
【特許文献2】特許第2690664号公報
【特許文献3】特許第3228581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、近年、半導体のデザインルールの厳密化または微細化が進んでいる。このため、成膜処理またはエッチング処理に際して、ウエハの近傍におけるプラズマ発生態様およびウエハの温度分布態様等の因子がより厳密に制御される必要性が高まっている。また、8インチ→12インチ→18インチというようにウエハの大型化が進み、これに伴いセラミックス焼結体の大型化も進んでいる。このため、従来技術の製造方法によれば、セラミックス焼結体に生じるうねりまたは反りに由来する内蔵電極のうねりまたは反りが、当該因子の厳密な制御の観点から無視できない程度に大きくなる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、セラミックス焼結体の大型化を図りながらも、内蔵電極の位置および姿勢の制御精度の向上を図りながら、電極内蔵型セラミックス焼結体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の方法は、ウエハを支持するための支持面を有するセラミックス焼結体と、前記セラミックス焼結体に埋設されている電極と、を備えている電極内蔵型セラミックス焼結体を製造する方法であって、少なくとも1つのセラミックス成形体が他のセラミックス成形体との接合面において前記電極の形状に合わせた形状の溝を有するような複数のセラミックス成形体を準備する第1工程と、前記第1工程により準備された前記複数のセラミックス成形体を、前記電極が前記溝により形成される空間に収容されるように重ね合わせた上で、当該重ね合わせ方向に加圧しながら前記電極の融点以下の温度で焼成かつ接合する第2工程と、を含んでおり、前記第1工程が、前記空間の高さが前記電極の厚さの1〜(1/a)倍の範囲に含まれるような形状の溝を有する前記少なくとも1つのセラミックス成形体を準備する工程であり、aは前記セラミックス焼結体の理論密度に対する前記セラミックス成形体の密度の比率であり、前記電極は、箔またはメッシュからなることを特徴とする。
【0009】
前記第1工程が、前記セラミックス成形体の焼成時における前記電極の熱膨張係数の値が前記セラミックス成形体の熱膨張係数の値より大きい場合、前記空間の幅が前記電極の幅のb倍以上の範囲に含まれるような形状の溝を有する前記少なくとも1つのセラミックス成形体を準備する工程であり、bは前記電極の熱膨張係数および前記セラミックス成形体の熱膨張係数の差と、前記セラミックス成形体の焼成温度との積であり、前記セラミックス成形体の焼成時における前記電極の熱膨張係数の値が前記セラミックス成形体の熱膨張係数の値以下である場合、前記空間の幅が前記電極の幅と同じになるような形状の溝を有する前記少なくとも1つのセラミックス成形体を準備する工程であることが好ましい。
【0010】
前記第1工程が、CIPにしたがって前記複数のセラミックス成形体を作製する工程であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電極内蔵型セラミックス焼結体の製造方法によれば、複数のセラミックス成形体が加圧焼成かつ接合される際、当該複数のセラミックス成形体に挟まれている電極は、少なくとも1つのセラミックス成形体が有する溝によって形成される空間に収容されている。このため、接合面における当該電極との接触の有無に由来するセラミックス焼結体の収縮率の高低差、ひいては塑性変形の発生が抑制される。よって、セラミックス焼結体の大型化を図りながらも、内蔵電極の位置および姿勢の制御精度の向上を図りながら、電極内蔵型セラミックス焼結体が製造されうる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の方法の製造対象の一例としての静電チャックの構成説明図。
図2】本発明のセラミックス焼結体の製造方法に関する説明図。
図3】セラミックス成形体の密度差の評価方法およびセラミックス焼結体に埋設されている電極のうねり評価方法に関する説明図。
図4】本発明のセラミックス焼結体の電極形状に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(電極内蔵型セラミックス焼結体の構成)
本発明の方法による製造対象としての電極内蔵型セラミックス焼結体は、例えば、静電チャックである。図1(a)に示されている静電チャックは、ウエハを支持するための支持面102を有する略平板状のセラミックス焼結体100と、当該セラミックス焼結体100に埋設されている電極200としての静電チャック電極とを備えている。電極200は、給電端子(図示略)を介して外部電源に接続されている。電極200の形状および端子の位置等の構成は任意に選択されうる。図1(b)に示されているように静電チャック電極200(2)よりも支持面102から遠くに他の電極としてのヒータ電極200(1)が埋設されていてもよい。
【0014】
静電チャックは、支持面102の反対側においてAlまたはCu等の金属製の冷却プレート(冷却装置)に接着され、半導体製造過程、特にウエハのエッチング処理に際して用いられる。冷却プレートには、冷却媒体が流される通路が形成されている。
【0015】
セラミックス焼結体100の材質は、ハロゲン系のガス(たとえばCF、SF、NF、ClF)に対する耐腐食性の向上を図る観点から選択される。アルミナ、窒化アルミニウム、酸化イットリウム、イットリウムおよびアルミニウムの複合酸化物、酸化マグネシウム、スピネル(MgAl)またはフッ化物が例としてあげられる。同じく耐腐食性の向上を図る観点からセラミックスは高純度であることが好ましい。たとえば、アルミナは99.4%以上の高純度であることが好ましい。窒化アルミニウムは95%以上の高純度であり、残部は3A族元素の酸化物が含まれることが好ましい。
【0016】
耐腐食性の観点からセラミックス焼結体100は緻密質であって、気孔率が低いこと(たとえば1%以下であること)が好ましい。
【0017】
電極200に用いられる金属は、融点はセラミックスの焼成温度以上であるという条件下で、セラミックスの種類および熱膨張に応じて適宜選択される。例えば、タングステン、モリブデン、これら合金、白金、チタン等が電極200に用いられる。セラミックスおよび電極200の熱膨張差は小さい方が好ましい。電極200は平面状に配置される構成であることが好ましい。電極200は、例えば箔またはメッシュであってもよく、線であってもよい。ただし、線の場合は同一平面状に配置されている構成であって、コイルのような3次元構造はとらない。
【0018】
電極200として箔が用いられる場合、無垢よりパンチングメタルのような抜けまたは貫通孔がある方が電極200のうねりまたは反りを低減させることができる。これは、焼成収縮量が制御されるようにセラミックス成形体10(個々の成形体が区分される場合のみ数字を添字として付す。)および電極200が組み合わせられても、ホットプレス焼成におけるセラミックス成形体の焼成収縮挙動および塑性変形が勘案された場合、プレス方向に当該収縮が生じ、かつ、粒子を移動させる方が好ましいからである。
【0019】
(電極埋設型セラミックス焼結体の製造方法)
本発明の静電チャックの製造方法の一実施形態について説明する。
【0020】
(第1工程)
原料となるセラミックス粉末に対してバインダー、可塑剤および分散剤が添加された上で、溶媒とともにボールミル等により混合されてスラリーが調整され、このスラリーを基にスプレードライ法により顆粒が生成される。原料には必要に応じて焼結助剤となる粉末が添加されてもよい。顆粒が所定圧力でCIPにより成形されることにより複数のセラミックス成形体10が作製される。
【0021】
セラミックス成形体10における空間的な密度分布は均一であることが好ましいため、CIPに際して圧力は高い方が好ましい。CIPに際して、ゴム袋もしくはゴム型に粉末を充填する方法または予め一軸加圧成形された成形体を充填するという方法が採用されてもよい。セラミックス成形体10の作製法としてはCIPのほか、当該成形体10の密度差が4.0[%]以下になるという条件が満たされる範囲で、予備成形およびCIPの組み合わせ等の他の方法が採用されてもよい。
【0022】
機械加工によりセラミックス成形体10の形状が整えられるとともに、例えば、図2(a)に示されているように、一のセラミックス成形体10(1)の片面(他のセラミックス成形体10(2)との接合面)に、電極200の形状に合わせた形状の溝20が形成される。セラミックス成形体10(1)および10(2)の接合面の両方に当該溝20が形成されてもよい。溝20がセラミックス成形体10の加工により形成されるのではなく、型の形状に応じて顆粒成形により溝20を片面に有するセラミックス成形体10が形成されてもよい。
【0023】
溝20の深さ(正確には電極200が収容される空間の高さ)の、電極200の厚さtに対する比率が、1.0〜1/aに調節されることが好ましい。「a」はセラミックス焼結体100の理論密度に対するセラミックス成形体10の密度の比率である。これは、セラミックス焼結体の面内におけるプレス方向に対する焼成収縮量の差を小さくするためである。計算上は溝200の深さをt/aとすれば面内の焼成収縮量は一定となるが、実際には、電極の変形または熱膨張が考慮されてt/aよりも浅くされてもよい。
【0024】
セラミックス成形体10の焼成時における電極200の熱膨張係数の値がセラミックス成形体10の熱膨張係数の値より大きい場合、溝20の幅(正確には電極200が収容される空間の幅)の、電極200の幅wに対する比率がb以上の範囲に調節されることが好ましい。「b」は電極200の熱膨張係数およびセラミックス成形体10の熱膨張係数の差と、セラミックス成形体10の焼成温度との積である。その一方、セラミックス成形体10の焼成時における電極200の熱膨張係数の値がセラミックス成形体10の熱膨張係数の値以下である場合、溝20の幅が電極200の幅wとほぼ同じ(たとえば1.0〜1.1倍の範囲)に調節されることが好ましい。
【0025】
(第2工程)
図2(b)に示されているように、セラミックス成形体10(1)および10(2)が、電極200が溝20により形成される空間に収容されるように重ね合わせられた上で、当該重ね合わせ方向に加圧しながら電極200の融点以下の温度で焼成かつ接合される。これにより、図1に示されているような電極内蔵型セラミックス焼結体が得られる。
【0026】
支持面102から異なる距離に複数の電極200がセラミックス焼結体100に埋設されている電極埋蔵型セラミックス焼結体も、同様の方法により製造されうる。すなわち、電極200の数Nより1つだけ多い複数のセラミックス成形体10(1),10(2),‥10(N+1)が作製される。接合対となるセラミックス成形体のうち一方又は両方には溝20が形成されている。そして、各電極200(k)(k=1〜N)がセラミックス成形体10(k)および10(k+1)の一方または両方に形成された当該溝20により画定される空間に収容されるように、複数のセラミックス成形体10(1),10(2),‥10(N+1)が重ね合わせられた状態で、加圧焼成かつ接合される。
【0027】
(実施例)
(実施例1)
高純度(99.9%以上)の窒化アルミニウム粉末に酸化イットリウム粉末が3重量%添加され、かつ、バインダー、可塑剤および分散剤が添加された上で、溶媒としてIPAとともにボールミル混合によりスラリーが調整された。このスラリーを基にスプレードライ法により顆粒が得られた。
【0028】
当該顆粒が150[MPa]の圧力でCIP成形され、さらに機械加工されることによりφ310×10[mm]の円盤形状に整えられた。セラミックス成形体10の生密度は1.99であり、セラミック焼結体100の理論密度に対する比率は「0.60」であった。円盤状のセラミックス成形体10(1)の片面が加工され、φ301[mm]、深さ0.12[mm]の溝が成形された。
【0029】
電極200として、φ300×0.1[mm]の円盤状のモリブデン箔のパンチングメタル(PM)が採用された。このモリブデン箔には、φ2[mm]の複数の貫通孔が角千鳥60°かつピッチ3.1[mm]で配置されている。開口率(無垢の円板面積に対する貫通孔の合計面積の比率)は37.7%である。
【0030】
CIP成形体10(1)の溝部20に電極200が配置され、その上に溝加工が施されていないφ310×10[mm]のCIP成形体10(2)が重ね合わされ、当該重ね合わせ方向に加圧されながらホットプレス焼成された。焼成条件として、雰囲気が窒素雰囲気であり、温度が1800[℃]であり、保持時間が6[hr]であり、かつ、プレス圧が5[MPa]に調節された。セラミックス焼結体100の表面(支持面102)と電極200との距離が1[mm]程度になるように、セラミックス焼結体100の片面が平面研削加工された。これにより、実施例1の電極埋蔵型セラミックス焼結体100が得られた。
【0031】
(実施例2)
電極200として、φ300[mm]であり、線径φ0.1[mm]の100メッシュのモリブデンメッシュ(M)(開口率は36.8%)が用いられた。そのほかは、実施例1と同様の製造条件下で実施例2の電極埋蔵型セラミックス焼結体100が得られた。
【0032】
(実施例3)
純度99.5%のアルミナ粉末に、バインダー、可塑剤および分散剤が添加された上で、溶媒として水とともにボールミル混合によりスラリーが調整された。このスラリーを基にスプレードライにより得られた顆粒のセラミックス成形体10の生密度は2.32であり、セラミックス焼結体100の理論密度に対する比率は「0.59」であった。焼成条件として、雰囲気が窒素雰囲気であり、温度が1500[℃]であり、保持時間が6[hr]であり、かつ、プレス圧が5[MPa]に調節された。そのほかは、実施例1と同様の製造条件下で実施例3の電極埋蔵型セラミックス焼結体100が得られた。
【0033】
(実施例4)
窒化アルミニウム顆粒が金型に充填されて20[MPa]の圧力で成形され、その上でさらに150[MPa]の圧力でCIP成形されることにより成形体10(1)および10(2)が作製された。そのほかは、実施例1と同様の製造条件下で実施例4の電極埋蔵型セラミックス焼結体100が得られた。
【0034】
(実施例5)
アルミナ顆粒が金型に充填されて20[MPa]の圧力で成形され、その上でさらに150[MPa]の圧力でCIP成形されることにより成形体10(1)および10(2)が作製された。そのほかは、実施例3と同様の製造条件下で実施例5の電極埋蔵型セラミックス焼結体100が得られた。
【0035】
(比較例)
(比較例1)
溝20が形成されていないセラミックス成形体10(1)および10(2)が、電極200(穴あきモリブデン箔)を挟んでいる状態でホットプレス焼成されたほかは、実施例1と同様の製造条件下で比較例1の電極埋蔵型セラミックス焼結体100が得られた。
【0036】
(比較例2)
溝20が形成されていないセラミックス成形体10(1)および10(2)が、電極200(モリブデンメッシュ)を挟んでいる状態でホットプレス焼成されたほかは、実施例2と同様の製造条件下で比較例2の電極埋蔵型セラミックス焼結体100が得られた。
【0037】
(比較例3)
金型に窒化アルミニウム顆粒が充填され、20[MPa]の圧力が加えられることにより、φ310[mm]かつt10[mm]のセラミックス成形体10(1)および10(2)が得られた。溝20が形成されていないセラミックス成形体10(1)および10(2)が、電極200(穴あきモリブデン箔)を挟んでいる状態でホットプレス焼成された。そのほかは、実施例1と同様の製造条件下で比較例3の電極埋蔵型セラミックス焼結体100が得られた。
【0038】
(比較例4)
溝20が形成されていないセラミックス成形体10(1)および10(2)が、電極200(穴あきモリブデン箔)を挟んでいる状態でホットプレス焼成された。そのほかは、実施例3と同様の製造条件下で比較例4の電極埋蔵型セラミックス焼結体100が得られた。この102面を研作加工し電極までの距離が約1mmとなる厚さまで加工した。
【0039】
(比較例5)
窒化アルミニウム顆粒が金型に充填されて20[MPa]の圧力で成形されることによりセラミックス成形体10(1)および10(2)が成形された。そのほかは、セラミックス成形体10(1)の片面に電極200の配置のための溝20が形成されたことを含め、実施例1と同様の製造条件下で比較例5の電極埋蔵型セラミックス焼結体100が得られた。
【0040】
(比較例6)
窒化アルミニウム顆粒が金型に充填されて50[MPa]の圧力で成形されることによりセラミックス成形体10(1)および10(2)が成形された。そのほかは、セラミックス成形体10(1)の片面に電極200の配置のための溝20が形成されたことを含め、実施例1と同様の製造条件下で比較例5の電極埋蔵型セラミックス焼結体100が得られた。
【0041】
(比較例7)
アルミナ顆粒が金型に充填されて20[MPa]の圧力で成形されることによりセラミックス成形体10(1)および10(2)が成形された。そのほかは、セラミックス成形体10(1)の片面に電極200の配置のための溝20が形成されたことを含め、実施例3と同様の製造条件下で比較例5の電極埋蔵型セラミックス焼結体100が得られた。
【0042】
(評価)
各実施例および各比較例のセラミックス成形体10と同一条件で作製されたセラミックス成形体のサンプルの図3(a)に斜線で示されている複数の略円柱状の試験片(φ20[mm]×10[mm])が切り出され、当該複数の試験片のそれぞれの密度の測定結果の最大値および最小値の差が当該成形体10の密度差として測定された。各試験片の密度は、その寸法および重量に基づいて算出された。当該領域の位置は、円盤状のセラミックス成形体100の中心位置(r=0)のほか、当該中心を基準とするr=0.45R(70[mm])および0.90R(140[mm])のそれぞれの円周上にある4方位に等角に配置されている位置である。「R」は成形体10の半径である。
【0043】
各実施例および各比較例の電極埋蔵型セラミックス焼結体100の図3(b)に示されている各位置において、支持面102から電極までの距離が渦電流膜厚計を用いて測定された。当該位置は、円盤状のセラミックス成形体100の中心位置(r=0)のほか、r=0.32R(50[mm])、0.65R(100[mm])および0.94R(145[mm])のそれぞれの円周上にあって8方位に等角に配置されている位置である。当該測定距離のばらつき(標準偏差)が、セラミックス焼結体100に埋設されている電極200の反りまたはうねりの尺度または程度として評価された。
【0044】
表1には、各実施例および各比較例の電極埋蔵型セラミックス焼結体100の素材、成形体10(1)および10(2)の成形条件、成形体10(1)および10(2)の密度差、電極200の種類、電極溝20の有無、ならびに電極200のうねりまたは反りの尺度または程度を表わす標準偏差の測定結果がまとめて示されている。
【0045】
【表1】
【0046】
表1によれば、実施例1、2および4の窒化アルミニウム焼結体100に埋設されている電極200のうねりは、比較例1〜3、5および6の窒化アルミニウム焼結体100に埋設されている電極200のうねりよりも小さい。実施例3および5のアルミナ焼結体100に埋設されている電極200のうねりは、比較例4および7のアルミナ焼結体100に埋設されている電極200のうねりよりも小さい。
【0047】
電極200の開口率が同程度であるにも関わらず、実施例2におけるメッシュ(M)の電極200の方が、実施例1および4における金属箔のパンチングメタル(PM)の電極200よりもうねりが小さい。実施例3におけるうねりが、実施例1、2および4より大きく、さらに比較例1、2および5と同程度であるのは、アルミナ焼結体100と、モリブデン電極200との熱膨張差が大きく、電極200がひずみやすいからである。
【0048】
(本発明の他の実施形態)
前記実施形態では図4(a)に示されているように、セラミックス成形体10(1)に円形状の溝20が形成され、略円形状の輪郭を有する電極200がこの溝20に配置されたが、溝20および電極200のそれぞれの形状および配置態様がセラミックス焼結体100の機能または用途等に応じて変更されてもよい。たとえば、図4(b)に示されているように電極200が一対の別個の櫛歯型電極により構成され、これに合わせてセラミックス成形体10(1)に一対の櫛歯型の溝20が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10‥セラミックス成形体、20‥溝、100‥セラミック焼結体、102‥支持面、200‥電極。
図1
図2
図3
図4