(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような燃焼圧センサ付きグロープラグ(以下、単にグロープラグともいう)では、ハウジングとヒータ部とを弾性的に連結部材で連結した場合、この連結部材でヒータ部を軸線方向後端側に向けて付勢した状態に組付けられることがある。具体的には、連結部材をハウジング及びヒータ部にそれぞれ溶接した場合には、溶接部(溶融部)の溶融凝固が影響して、ヒータ部を軸線方向後端側に向けて付勢する力が生じた状態となる。また、連結部材をハウジング及びヒータ部に、その先端側から外嵌して、連結部材をハウジング及びヒータ部に結合した場合には、連結部材の押し込みに伴う摩擦により、ヒータ部を軸線方向後端側に向けて付勢する力が生じた状態となる。
このような力がヒータ部に加わっていると、圧力センサの出力にヒータ部の変位する方向によるヒステリシスを生じる。また、この付勢力がオフセットとして、検知される燃焼圧の誤差となって現れる。
また、上述の付勢力は、グロープラグ毎のばらつきが大きく、燃焼圧センサ付きグロープラグ間でのセンサ感度のばらつきも大きくなる。
【0005】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、連結部材によるヒータ部を軸線方向後端側に向けて付勢する力の影響を軽減した燃焼圧センサ付きグロープラグ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その一態様は、軸線方向に延びる筒状のハウジングと、自身の先端部を上記ハウジングの先端から突出させて、上記軸線方向に変位可能に上記ハウジング内に配置され、通電により発熱する棒状のヒータ部と、上記ハウジング内に挿通され、自身の先端部で上記ヒータ部に電気的に接続し、上記ヒータ部と一体に結合されて上記軸線方向に変位可能とされ、上記軸線方向後端側に向けて延びる導通部材と、上記導通部材の後端部よりも上記軸線方向後端側に配置された金属製の端子部材と、上記導通部材の上記後端部と上記端子部材との間に配置され、これらを電気的に接続すると共に、
上記導通部材の上記後端部と一体に接続され、かつ、上記端子部材に溶接され、上記軸線方向に弾性変形可能な金属製の弾性接続部材と、溶接または圧入により上記ヒータ部及び上記ハウジングと結合して、上記ヒータ部を上記軸線方向に変位可能に、上記ハウジングと弾性的に連結する連結部材と、燃焼圧を検知する圧力センサであって、上記連結部材よりも上記軸線方向後端側に配置され、上記燃焼圧の変化に伴う上記ハウジングに対する上記ヒータ部の上記軸線方向の変位を検知する検知素子を有する圧力センサと、を備え、上記弾性接続部材は、
自身で発生する上記軸線方向先端側に向けて付勢する力で、上記ヒータ部及び上記導通部材を上記軸線方向先端側に向けて付勢してなる燃焼圧センサ付きグロープラグである。
【0007】
この燃焼圧センサ付きグロープラグは、導通部材の後端部と端子部材との間に配置され、これらを電気的に接続する弾性接続部材を備えている。そして、この弾性接続部材は、ヒータ部及び導通部材を軸線方向先端側に向けて付勢している。このため、この付勢によって、連結部材がヒータ部を軸線方向後端側に向けて付勢する力の少なくとも一部が相殺される。
これにより、圧力センサの出力にヒータ部の変位する方向によるヒステリシスを生じたり、検知される燃焼圧に誤差を生じるなど、溶接または圧入により連結部材をヒータ部及びハウジングに結合したことに起因して、連結部材に生じる軸線方向後端側に向けて付勢する力の影響を軽減することができる。
【0008】
さらに、上述の燃焼圧センサ付きグロープラグであって、前記弾性接続部材は、塑性変形により、前記軸線方向先端側に向けて付勢する力を生じてなる燃焼圧センサ付きグロープラグとすると良い。
【0009】
この燃焼圧センサ付きグロープラグでは、弾性接続部材の塑性変形により、軸線方向先端側に向けて付勢する力を生じている。弾性接続部材を塑性変形させることで、この変形の際に弾性接続部材に加えた軸線方向の変位の大きさによらず、弾性接続部材による付勢力の大きさをほぼ一定にでき、安定した大きさの付勢力を生じさせることができる。
【0010】
他の態様は、軸線方向に延びる筒状のハウジングと、自身の先端部を上記ハウジングの先端から突出させて、上記軸線方向に変位可能に上記ハウジング内に配置され、通電により発熱する棒状のヒータ部と、上記ハウジング内に挿通され、自身の先端部で上記ヒータ部に電気的に接続し、上記ヒータ部と一体に結合されて上記軸線方向に変位可能とされ、上記軸線方向後端側に向けて延びる導通部材と、上記導通部材の後端部よりも上記軸線方向後端側に配置された金属製の端子部材と、上記導通部材の上記後端部と上記端子部材との間に配置され、これらを電気的に接続すると共に、上記軸線方向に弾性変形可能な金属製の弾性接続部材と、溶接または圧入により上記ヒータ部及び上記ハウジングと結合して、上記ヒータ部を上記軸線方向に変位可能に、上記ハウジングと弾性的に連結する連結部材と、燃焼圧を検知する圧力センサであって、上記連結部材よりも上記軸線方向後端側に配置され、上記燃焼圧の変化に伴う上記ハウジングに対する上記ヒータ部の上記軸線方向の変位を検知する検知素子を有する圧力センサと、を備え、上記弾性接続部材は、上記ヒータ部及び上記導通部材を上記軸線方向先端側に向けて付勢してなる燃焼圧センサ付きグロープラグの製造方法であって、上記連結部材を、上記導通部材と一体に結合した上記ヒータ部及び上記ハウジングにそれぞれ溶接または圧入により結合する連結工程と、上記弾性接続部材を介して、上記導通部材の上記後端部に上記端子部材を接続する端子接続工程と、上記端子部材を上記軸線方向先端側に移動させ、上記弾性接続部材が上記導通部材を上記軸線方向先端側に向けて付勢する形態に上記弾性接続部材を変形させた状態で、上記端子部材を上記ハウジングに固定する端子固定工程と、を備える燃焼圧センサ付きグロープラグの製造方法である。
【0011】
この燃焼圧センサ付きグロープラグの製造方法では、連結工程と、端子接続工程と、端子固定工程とを備え、端子固定工程で弾性接続部材を、この弾性接続部材が導通部材を軸線方向先端側に向けて付勢する形態に変形させている。これにより、連結部材が軸線方向後端側に向けて付勢する力の影響を軽減した燃焼圧センサ付きグロープラグを適切に製造することができる。
【0012】
さらに、上述の燃焼圧センサ付きグロープラグの製造方法であって、前記端子固定工程は、前記弾性接続部材を塑性変形させて、前記軸線方向先端側に向けて付勢させる変形工程を含む燃焼圧センサ付きグロープラグの製造方法とすると良い。
【0013】
この燃焼圧センサ付きグロープラグの製造方法では、端子固定工程は弾性接続部材を塑性変形させる変形工程を含んでいる。これにより、安定した大きさの付勢力を生じさせた燃焼圧センサ付きグロープラグを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。まず、
図1〜
図3を参照して、本実施形態に係る燃焼圧センサ付きグロープラグ1の構造について説明する。
図1は、グロープラグ1全体の縦断面図である。また、
図2は、その圧力センサ部分を拡大した拡大断面図であり、
図3は、後端部分の拡大断面図である。
なお、これら
図1等において、グロープラグ1の軸線AXに沿う軸線方向HJのうち、ヒータ部130が配置された側(図中下側)を先端側GSとし、これと反対側(図中上側)を後端側GKとして説明する。
【0016】
グロープラグ1は、例えば、ディーゼルエンジンの燃焼室に取り付けられ、エンジン始動時の点火を補助する熱源として利用される。このグロープラグ1は、主にハウジング100と、ヒータ部130及びこれに導通する部材と、圧力センサ200と、端子アセンブリ250とからなる。具体的には、ハウジング100は、主体金具110、内筒190のフランジ部191及び先端部190s並びに先端キャップ150を含む。また、ヒータ部130は、これと一体とされた中軸120、端子ばね180及び外部接続端子160に導通している。なお、ハウジング100とヒータ部130とはメンブレン170で弾性的に連結されている。圧力センサ200は、センサ本体210のほか、伝達スリーブ220及び、センサ本体210をハウジング100(主体金具110)の内側に固定する内筒190の内筒本体192を含む。端子アセンブリ250は、外部接続端子160の周囲に配置され、端子カバー260で覆われている。
【0017】
さらに具体的には、このグロープラグ1のヒータ部130は、自身のヒータ先端部130sを先端キャップ150の先端150sから突出させて、軸線方向HJに変位可能にハウジング100である主体金具110、内筒190のフランジ部191及び先端部190s並びに先端キャップ150内に配置されている。ヒータ部130のヒータ先端部130sは燃焼室(図示しない)内に露出され、燃焼圧の変化に伴って、ヒータ部130が軸線方向HJに変位すると、この変位がヒータ部130に接合された伝達スリーブ220を介して、主体金具110内の内筒本体192に固定されたセンサ本体210に伝達される。これにより、グロープラグ1は、ディーゼルエンジン(内燃機関)の燃焼室の燃焼圧を検知することができる。
【0018】
ハウジング100の一部をなす主体金具110は、金属材からなり、軸線方向HJに自身の金具先端部110sから金具後端部110kまで延びる筒状をなす。この主体金具110内には軸孔110hが形成されている。また、主体金具110の軸線方向HJ後端側GKの外周面には、取り付け用の雄ネジ部111が形成されている。さらに、金具後端部110kには、径方向外側に向けて拡径した鍔状の鍔部112が形成されている。
【0019】
内筒190のうち、内筒本体192は、略円筒状をなし、主体金具110の軸孔110h内のうち軸線方向HJ先端側GSに、同心状に配置されている。この内筒本体192の軸線方向HJ先端側GSには、径方向外側に突出して、主体金具110の金具先端部110sと同外径でハウジング100の一部をなす鍔状のフランジ部191が形成されており、このフランジ部191は、主体金具110の金具先端部110sに溶接されている。また、内筒190の後端部190kには、環状をなすセンサ本体210の外周部212が溶接されている。
【0020】
先端キャップ150は、金属材からなり、その後端側GKには、円筒状の円筒部151が設けられている。この円筒部151は、内筒190の先端部190sに外嵌され、内筒190のフランジ部191に溶接されている。
なお、円筒部151の内側には、内筒190の先端部190sとヒータ部130のシースチューブ131とを連結する連結部材であるメンブレン170が収容されている。すなわち、先端キャップ150は、ヒータ部130、中軸120及び圧力センサ200を、主体金具110及び内筒190内に収容し、さらに、メンブレン170を内筒190の先端部190s及びヒータ部130のシースチューブ131に溶接により連結した後に、内筒190の先端部190sに外嵌され、フランジ部191に溶接されている。
また、先端キャップ150の先端側GSには、先端150sに向かって縮径する形状のテーパ部152が形成されている。グロープラグ1を内燃機関に取り付けた際には、テーパ部152が、内燃機関のプラグ取り付け孔の所定のシート面に密接し、燃焼室内からの気密が確保される。
以上のように、主体金具110、内筒190のフランジ部191及び先端部190s並びに先端キャップ150は一体とされて、グロープラグ1のハウジング100をなしている。
【0021】
ヒータ部130は、シースチューブ131、発熱コイル132及び制御コイル133を備え、図示しない絶縁粉末を封入したシースヒータである(
図1参照)。
シースチューブ131は、ニッケル合金やステンレス鋼等によって形成され、軸線方向HJに自身のチューブ先端部131sからチューブ後端部131kまで延び、チューブ先端部131sが半球状に閉塞した筒状チューブである。
また、シースチューブ131内の先端部分には、チューブ先端部131sに接合された発熱コイル132と、この発熱コイル132の後端に直列接続された制御コイル133とが配置され、これらの周囲に酸化マグネシウム粉末等の絶縁粉末が充填されている。さらに、シースチューブ131内には、次述する中軸120の軸線方向HJ先端側GSの略半分が挿入され、その先端の中軸先端部120sは、制御コイル133の後端に導通している。
【0022】
中軸120は、炭素鋼またはステンレス鋼材等からなり、軸線方向HJに自身の中軸先端部120sから中軸後端部120kまで延びる棒状をなす。この中軸120のうち、中軸先端部120sを含む軸線方向HJ先端側GSの略半分は、発熱コイル132、制御コイル133と共にシースチューブ131内に挿入され、図示しない絶縁粉末によって固定されて、ヒータ部130と中軸120が一体にされている。なお、シースチューブ131のチューブ後端部131kと中軸120との間は、環状ゴム140により間隔が保たれ絶縁されると共に、気密に封止されている(
図2参照)。
【0023】
メンブレン170は、ステンレス鋼やニッケル合金等によって形成された軸線方向HJに弾性を有する部材であり、その先端部170sが径小とされ、後端部170kが径大とされた二段円筒状をなす。この径大の後端部170kは、内筒190の先端部190sに溶接部w3で溶接され、一方、径小の先端部170sは、伝達スリーブ220のスリーブ先端部220sよりも軸線方向HJ先端側GSでシースチューブ131の外周面に溶接部w4で溶接されている。
これにより、メンブレン170を介して、ヒータ部130のシースチューブ131とハウジング100(内筒190の先端部190s)とが導通される。加えて、ヒータ部130と内筒190の先端部190sが、メンブレン170で弾性的に連結されることで、ヒータ部130は、ハウジング100に保持され、かつ、このメンブレン170の弾性によって、軸線方向HJの変位が許容されている。そして、次述するように、ヒータ部130の軸線方向HJの変位は、ヒータ部130と一体とされた伝達スリーブ220によってセンサ本体210に伝達される。
【0024】
圧力センサ200のうち、伝達スリーブ220は、金属材によって形成された略円筒状をなし、ヒータ部130のシースチューブ131に外嵌すると共に、中軸120のうちシースチューブ131の外部に露出した略中央部分まで延びている。伝達スリーブ220は、その先端のスリーブ先端部220sで、シースチューブ131の外周面に溶接され、ヒータ部130と一体にされて、このヒータ部130と共に、ハウジングの内筒190内に収容されている。また、伝達スリーブ220の後端部220kは、環状をなすセンサ本体210の内周部211に結合されている。ヒータ部130の軸線方向HJの変位は、この伝達スリーブ220によってセンサ本体210の内周部211に伝達される。
【0025】
センサ本体210は、ピエゾ抵抗型素子からなる圧力検知素子215を、金属材からなる環状のダイアフラム体214のダイアフラム部213上に配設してなる。このセンサ本体210は、伝達スリーブ220によって伝達されたヒータ部130の軸線方向HJの変位によってダイアフラム部213を撓ませることにより燃焼圧の検知を行う。
このセンサ本体210のダイアフラム体214は、略円筒状をなす内周部211及び外周部212とこれらの間に架け渡され薄肉とされた環状のダイアフラム部213とからなり、内周部211の内側には、中軸120が環状の隙間を介して挿通されている。また、外周部212は内筒190の後端部190kに結合され、内周部211は伝達スリーブ220の後端部220kに結合されている。
【0026】
また、環状のダイアフラム部213上には、複数の圧力検知素子215が貼設されている。この圧力検知素子215は、ダイアフラム部213が撓むことにより歪み、その歪みの度合いによって自身の抵抗値が変化する。
【0027】
また、
図3に示すように、ハウジング100のうち主体金具110の金具後端部110kには、筒状をなす金属製の端子カバー260が、その先端部260sを金具後端部110kの鍔部112に突き当てて外嵌され、溶接されている。
そして、この端子カバー260の内側には、外部からヒータ部130への給電を受け入れる金属製の外部接続端子160及びこれを取り囲んで配置された端子アセンブリ250が配置されており、これらは、その一部を、端子カバー260の後端部260kから軸線方向HJ後端側GKに突出させた状態で収容されている。なお、外部接続端子160には、上記給電のための接続に用いる接続孔160hが形成されている。
【0028】
端子アセンブリ250内には、その形態を詳述しないが、圧力検知素子215より出力される信号を外部回路に出力するための図示しない出力端子部及び配線が設けられている。また、端子アセンブリ250の内側には、中軸120の中軸後端部120kと、外部接続端子160と、これらを導通し略S字状に屈曲した端子ばね180とが配置されている。
【0029】
端子ばね180は、中軸120の中軸後端部120k及び外部接続端子160の端子先端部160sに電気的に接続すると共に、ヒータ部130及び中軸120の軸線方向HJの変位に伴って、軸線方向HJに変形可能な金属製のばねである。なお、端子ばね180は、その先端部180sが中軸120の中軸後端部120kに溶接されている。一方、外部接続端子160は、端子アセンブリ250内の軸線AX上に配置されると共に、外部接続端子160と端子アセンブリ250との間に介在させた接着剤により、外部接続端子160の固定及び、外部接続端子160と端子アセンブリ250との間の封止が行われている。
なお、端子カバー260の後端部260kは縮径され、これにより、段部261が形成されている。端子アセンブリ250も同様に、後端部250kが縮径した形態とされ、端子カバー260の段部261に、端子アセンブリ250の外周に形成された肩部251が係合している。
また、外部接続端子160の軸線方向HJ先端側GSには、径方向外側に向けて拡径した拡径部161が形成され、この拡径部161は、端子アセンブリ250の内側に形成された段部252に係合している。
【0030】
ところで、前述したように、ヒータ部130が軸線方向HJに変位可能となるように、ヒータ部130のシースチューブ131とハウジング100をなす内筒190の先端部190sとは、メンブレン170によって弾性的に連結されている。しかるに、このメンブレン170を、内筒190及びヒータ部130に、溶接するにあたり、このメンブレン170が、ヒータ部130を軸線方向HJ後端側GKに向けて付勢した状態に組付けられてしまう。溶接部w3及び溶接部w4の溶融凝固が影響して、ヒータ部130を軸線方向HJ後端側GKに向けて付勢する力が生じると考えられる。
【0031】
そして、このような付勢力がヒータ部130に加わっていると、ヒータ部130の変位する方向によって圧力センサ200(センサ本体210の圧力検知素子215)の出力の特性が異なるヒステリシスを生じると共に、この付勢力が、圧力センサ200により検知される燃焼圧の誤差(オフセット)となって現れる。
【0032】
そこで、本実施形態のグロープラグ1では、中軸120の中軸後端部120kと外部接続端子160の端子先端部160sとの間を前述の端子ばね180で接続し、この端子ばね180を軸線方向HJに圧縮するように変形させて、ヒータ部130及び中軸120を軸線方向HJ先端側GSに向けて付勢している。そして、この付勢により、メンブレン170がヒータ部130を軸線方向HJ後端側GKに向けて付勢する力の少なくとも一部を相殺している。
特に本実施形態では、この端子ばね180を圧縮して塑性変形させてあり、付勢力を塑性変形の変位の大きさに拘らず、ほぼ一定としている。
【0033】
本実施形態のグロープラグ1において、外部接続端子160が本発明における端子部材に相当し、端子ばね180が弾性接続部材に相当する。また、中軸120が導通部材に相当する。また、メンブレン170が連結部材に相当する。
【0034】
以上で説明したように、本実施形態のグロープラグ1では、中軸120の中軸後端部120kと外部接続端子160との間に配置され、これらを電気的に接続する端子ばね180を備えている。そして、この端子ばね180は、ヒータ部130及び中軸120を軸線方向HJ先端側GSに向けて付勢している。このため、この付勢によって、メンブレン170がヒータ部130を軸線方向HJ後端側GKに向けて付勢する力の少なくとも一部が相殺される。
これにより、圧力センサ200の出力にヒータ部130の変位する方向によるヒステリシスを生じたり、検知される燃焼圧に誤差を生じるなどの、メンブレン170に生じる軸線方向HJ後端側GKに向けて付勢する力の影響を軽減することができる。
【0035】
また、本実施形態のグロープラグ1では、端子ばね180の塑性変形により、軸線方向HJ先端側GSに向けて付勢する力を生じている。端子ばね180を塑性変形させることで、この変形の際に端子ばね180に加えた軸線方向HJの変位の大きさによらず、端子ばね180による付勢力の大きさをほぼ一定にでき、安定した大きさの付勢力を生じさせることができる。
【0036】
次いで、
図4〜
図8を参照して、本実施形態に係るグロープラグ1の製造方法について説明する。
図4は、一体とされたヒータ部130及び中軸120の外側に、内筒190の内筒本体192、伝達スリーブ220及びセンサ本体210からなる圧力センサ200を被せ、さらにこれらを主体金具110の軸孔110h内に収容した状態のグロープラグ1の半完成品1Aを示す。この半完成品1Aでは、ヒータ部130のヒータ先端部130sが、内筒190の先端部190sから軸線方向HJ先端側GSに突出する一方、中軸120の中軸後端部120kが主体金具110の金具後端部110kから軸線方向HJ後端側GKに突出している。また、伝達スリーブ220のスリーブ先端部220sが、内筒190の先端部190sから軸線方向HJ先端側に突出している。
この半完成品1Aについて、まず、主体金具110の金具先端部110sと内筒190のフランジ部191とをレーザ溶接する。次いで、伝達スリーブ220のスリーブ先端部220sを、ヒータ部130のシースチューブ131の外周面にレーザ溶接する。
【0037】
次いで、内筒190の先端部190sに、軸線方向HJ先端側GSからメンブレン170を被せて、
図5に示す半完成品1Bを得る。
そして、この半完成品1Bについて、まず、溶接部w3において、メンブレン170の後端部170kを内筒190の先端部190sにレーザ溶接する。次いで、溶接部w4において、メンブレン170の先端部170sをヒータ部130のシースチューブ131の外周面にレーザ溶接する。
以上により、メンブレン170を介して、ヒータ部130とハウジング100(内筒190の先端部190s)とが連結され、ヒータ部130が、ハウジング100に弾性的に、かつ、軸線方向HJに変位可能に保持される(連結工程)。
【0038】
次いで、メンブレン170を溶接した後、内筒190の先端部190sに先端キャップ150を外嵌して、
図6に示す半完成品1Cを得る。
そして、この半完成品1Cについて、内筒190のフランジ部191と先端キャップ150の円筒部151とを溶接する。なお、これにより、ハウジング100をなす主体金具110、内筒190のフランジ部191及び先端部190s並びに先端キャップ150がすべて一体に結合される。
【0039】
次いで、
図7に示すように、外部接続端子160の端子先端部160sに一体に接続された端子ばね180の先端部180sを、中軸120の中軸後端部120kにレーザ溶接して、半完成品1Dとする。これにより、端子ばね180を介して、中軸120の中軸後端部120kと外部接続端子160とを導通させる(端子接続工程)。
【0040】
次いで、外部接続端子160及び端子ばね180の周りに端子アセンブリ250を被せ、さらに端子アセンブリ250の外側に端子カバー260を被せて、この端子カバー260の先端部260sを金具後端部110kの鍔部112に突き当てる。これにより、端子カバー260の段部261に肩部251で係合する端子アセンブリ250も軸線方向HJ先端側GSに移動する。さらに、端子アセンブリ250の段部252に拡径部161で係合する外部接続端子160も軸線方向HJ先端側GSに移動し、端子ばね180が圧縮され塑性変形される(変形工程)。この塑性変形により、端子ばね180は、その軸線方向HJの変位によらず、中軸120をほぼ一定(例えば、20N)の力で軸線方向HJ先端側GSに向けて付勢する。その後、端子カバー260の先端部260sを金具後端部110kにレーザ溶接して、外部接続端子160を端子アセンブリ250及び端子カバー260を介して、ハウジング100である主体金具110の金具後端部110kに固定する(端子固定工程)。
【0041】
次いで、外部接続端子160と端子アセンブリ250との間に後端側GKから接着剤を注入し、固定及び封止を行う。
以上により、グロープラグ1が完成する。
【0042】
このように、本実施形態のグロープラグ1の製造では、連結工程(
図5参照)と、端子接続工程(
図7参照)と、端子固定工程(
図8,
図3参照)とを備え、端子固定工程において、端子ばね180を、この端子ばね180が中軸120を軸線方向HJ先端側GSに向けて付勢する形態に変形させている。これにより、メンブレン170が軸線方向HJ後端側GKに向けて付勢する力の影響を軽減したグロープラグ1を適切に製造することができる。
【0043】
さらに、本実施形態のグロープラグ1の製造方法では、端子固定工程は端子ばね180を塑性変形させる変形工程を含んでおり、この塑性変形により、軸線方向HJ先端側GSに向けて付勢させている。これにより、安定した大きさ(例えば、ほぼ20N一定)の付勢力を生じさせたグロープラグ1を製造することができる。
【0044】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態では、グロープラグ1は、ヒータ部130として、シースヒータを備えたいわゆるメタルグロープラグを例示した。しかし、グロープラグとしては、これに限られず、ヒータ部として、セラミックヒータを備えたいわゆるセラミックグロープラグを用いても良い。
また、実施形態では、主体金具110、内筒190のフランジ部191及び先端部190s並びに先端キャップ150でハウジング100を構成し、このハウジング100のうち、内筒190の先端部190sとヒータ部130のシースチューブ131の外周面とを連結部材であるメンブレン170で溶接により連結した。しかし、ハウジングの構成はこれに限られず、例えば、連結部材を主体金具に溶接するなど、連結部材とハウジングとの間の連結箇所は、ハウジングの構成に合わせて、適宜変更できる。
【0045】
また、実施形態では、端子アセンブリ250の外側に被せられた端子カバー260を、金具後端部110kの鍔部112に突き当てて溶接したが、端子カバー260を鍔部112に突き当てずに金具後端部110kに固着するようにして端子ばね180を圧縮させる構成を採っても良い。
さらに、実施形態では、圧力検知素子215としてピエゾ抵抗型素子を用いたが、圧力検知素子としては、圧電素子等を用いることもできる。
【0046】
(変形形態)
また、上述の実施形態では、連結部材であるメンブレン170をヒータ部130のシースチューブ131の外周面、及び、ハウジング100のうち内筒190の先端部190sに溶接したグロープラグ1を示した。しかし、メンブレン170のヒータ部130及びハウジング100への結合の手法は、これに限られず、圧入によって、メンブレン170をヒータ部130及びハウジング100に結合することもできる。
本変形形態のグロープラグは、具体的には、
図4に示したグロープラグ1の半完成品1Aを準備した後、半完成品1Aにおけるシースチューブ131に、その先端側GSからメンブレン170の先端部170sを締まりばめに外嵌(メンブレン170の先端部170sにシースチューブ131を圧入)する(
図5参照)。さらに、ハウジング100をなす内筒190の先端部190sに、メンブレン170の後端部170kを締まりばめに外嵌(メンブレン170の後端部170kに内筒190の先端部190sを圧入)する。
その後、実施形態1と同様の工程(
図6〜
図8参照)を経て、グロープラグの完成品を得ることができる。
【0047】
この変形形態のグロープラグでは、メンブレン170をヒータ部130のシースチューブ131、及び、ハウジング100をなす内筒190に対して外嵌固定することにより、メンブレン170とヒータ部130との摩擦によって、ヒータ部130を軸線方向HJ後端側GKに向けて付勢する力が生じたままとなりやすい。
しかるに、この変形形態においても、実施形態のグロープラグ1と同様に、中軸120の中軸後端部120kと外部接続端子160との間に配置され、これらを電気的に接続する端子ばね180を備えており、この端子ばね180は、ヒータ部130及び中軸120を軸線方向HJ先端側GSに向けて付勢している。このため、この付勢によって、実施形態と同様に、メンブレン170がヒータ部130を軸線方向HJ後端側GKに向けて付勢する力の少なくとも一部が相殺され、メンブレン170に生じる軸線方向HJ後端側GKに向けて付勢する力の影響を軽減することができる。
なお、メンブレン170の先端部170sとシースチューブ131、及び、メンブレン170の後端部170kと内筒190の先端部190sとの結合にあたり、一方を溶接、他方を圧入(外嵌)により行っても良い。