特許第6163803号(P6163803)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6163803
(24)【登録日】2017年6月30日
(45)【発行日】2017年7月19日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20170710BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20170710BHJP
   C08G 59/20 20060101ALI20170710BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20170710BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20170710BHJP
【FI】
   C08L63/00 C
   C08K3/00
   C08G59/20
   C08J5/24CFC
   H05K1/03 610L
【請求項の数】9
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-51478(P2013-51478)
(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公開番号】特開2014-177530(P2014-177530A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年9月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 嘉生
(72)【発明者】
【氏名】中村 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】川合 賢司
【審査官】 藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−251133(JP,A)
【文献】 特開2002−012650(JP,A)
【文献】 特開2006−182900(JP,A)
【文献】 特開2001−077225(JP,A)
【文献】 特開2010−053334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
C08L 63/00
C08G 59/20
C08J 5/24
C08K 3/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂、(B)活性エステル型硬化剤(ただし、リン原子を含有する活性エステル硬化剤を除く。)及び(C)無機充填材を含有する樹脂組成物を用いて形成されたシート状積層材料であって、
前記樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(C)無機充填材の含有量が50質量%以上であり、
(C)無機充填材を100質量部とした場合、(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂が1〜20質量部であり、
(A)成分がフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、および脂環式エポキシ樹脂から選択され、
(A)成分のエポキシ当量が100〜1000であることを特徴とするシート状積層材料。
【請求項2】
(C)無機充填材の平均粒径が、0.01〜5μmである請求項1に記載のシート状積層材料。
【請求項3】
(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂を併用し、
(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂としてフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂又はヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂を含み、
他のエポキシ樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂を含み、
(C)無機充填材として平均粒径0.01〜5μmのシリカを含む、請求項1又は2記載のシート状積層材料。
【請求項4】
さらに(D)硬化促進剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載のシート状積層材料。
【請求項5】
さらに(E)高分子樹脂を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載のシート状積層材料。
【請求項6】
多層プリント配線板のビルドアップ層用シート状積層材料である請求項1〜5のいずれか1項記載のシート状積層材料。
【請求項7】
接着フィルム又はプリプレグである請求項1〜6のいずれか1項記載のシート状積層材料。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のシート状積層材料を熱硬化して絶縁層が形成された多層プリント配線板。
【請求項9】
請求項8記載の多層プリント配線板を用いることを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物に関する。さらに当該樹脂組成物を含有する、シート状積層材料、多層プリント配線板、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化が進み、多層プリント配線板においては、ビルドアップ層が複層化され、配線の微細化及び高密度化が求められている。
【0003】
これに対して様々な取組みがなされてきた。例えば、特許文献1には、(a)エポキシ樹脂、(b)活性エステル化合物、(c)トリアジン構造含有フェノール樹脂、(d)マレイミド化合物及び(e)フェノキシ樹脂を含有することを特徴とするエポキシ樹脂組成物が記載され、更に線膨張率を低下させる目的で無機充填材を含有させても良いことが記載されている。そして、該樹脂組成物を硬化して得られる硬化物は、該硬化物表面を粗化処理した粗化面の粗度が比較的小さい場合でも、めっきにより高い密着性を有する導体層を形成することができ、例えば、多層プリント配線板の絶縁層として使用した場合、該絶縁層上に形成する導体層の微細配線化に極めて有利な材料となり、さらに、該硬化物は低線膨張率性にも優れるため、導体層と絶縁層との線膨張率の差によるクラックも発生しにくい、ということが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−90238
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者等の知見によれば、更なる低熱膨張、高密着性、低誘電正接を図るために活性エステル化合物や大量の無機充填材を含む樹脂組成物を用いて多層プリント配線板を作製していたところ、これら樹脂組成物の硬化物のピール強度が低くなりやすく、樹脂組成物をシート状形態にしたときに脆くなりやすいことが分かってきた。
【0006】
従って、本発明が解決しようとする課題は、樹脂組成物の硬化物の誘電正接が低く、ピール強度が高くなり、かつシート状形態の可とう性に優れた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂、(B)活性エステル型硬化剤及び(C)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(C)無機充填材の含有量が50質量%以上であり、(C)無機充填材を100質量部とした場合、(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂が1〜20質量部であることを特徴とする樹脂組成物において、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含むものである。
〔1〕 (A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂、(B)活性エステル型硬化剤及び(C)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(C)無機充填材の含有量が50質量%以上であり、(C)無機充填材を100質量部とした場合、(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂が1〜20質量部であることを特徴とする樹脂組成物。
〔2〕 (A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂が、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂及びエステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂から選択される1種以上である〔1〕記載の樹脂組成物。
〔3〕 (A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂が、フタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂及び3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートから選択される1種以上から選択される1種以上である〔1〕又は〔2〕記載の樹脂組成物。
〔4〕 (A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量が、100〜1000である〔1〕〜〔3〕のいずれか記載の樹脂組成物。
〔5〕 (C)無機充填材の平均粒径が、0.01〜5μmである〔1〕〜〔4〕のいずれか記載の樹脂組成物。
〔6〕 (A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂を併用し、(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂としてグリシジルエステル型エポキシ樹脂を含み、他のエポキシ樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂を含み、(C)無機充填材としてシリカを含む、〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の樹脂組成物。
〔7〕 (A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂を併用し、(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂としてフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂又はヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂を含み、他のエポキシ樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂を含み、(C)無機充填材として平均粒径0.01〜5μmのシリカを含む、〔1〕〜〔6〕のいずれか記載の樹脂組成物。
〔8〕 さらに(D)硬化促進剤を含有する〔1〕〜〔7〕のいずれか記載の樹脂組成物。
〔9〕 さらに(E)高分子樹脂を含有する〔1〕〜〔8〕のいずれか記載の樹脂組成物。
〔10〕 多層プリント配線板のビルドアップ層用樹脂組成物である〔1〕〜〔9〕のいずれか記載の樹脂組成物。
〔11〕 〔1〕〜〔10〕のいずれか記載の樹脂組成物を含有することを特徴とするシート状積層材料。
〔12〕 〔1〕〜〔10〕のいずれか記載の樹脂組成物を含有する接着フィルム又はプリプレグ。
〔13〕 〔1〕〜〔10〕のいずれか記載の樹脂組成物を熱硬化して絶縁層が形成された多層プリント配線板。
〔14〕 〔13〕記載の多層プリント配線板を用いることを特徴とする半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂組成物を用いることにより、樹脂組成物の硬化物の誘電正接が低く、ピール強度が高くなり、かつシート状形態の可とう性に優れた樹脂組成物を提供できるようになった。さらに、本発明によれば、樹脂組成物の硬化物の耐熱性を向上させることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂、(B)活性エステル型硬化剤及び(C)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(C)無機充填材の含有量が50質量%以上であり、(C)無機充填材を100質量部とした場合、(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂が1〜20質量部であることを特徴とする樹脂組成物である。以下、樹脂組成物の配合成分について詳述する。
【0011】
<(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂>
本発明に使用するエステル骨格を有するエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではなく、分子内にカルボキシル基を有する化合物とエピクロロヒドリンを反応させることや、分子内にカルボキシル基を有する化合物とエポキシ樹脂を反応させることで得ることができる。とくに、エステル骨格を有するエポキシ樹脂としては、シート状形態の可とう性に優れた樹脂組成物を提供するという観点から、エステル骨格を2個以上有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0012】
エステル骨格を有するエポキシ樹脂の具体例としては、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ダイマー酸変性エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂が好ましく、ガラス転移温度が高く、硬化物の耐熱性を向上させることができる点で、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂がより好ましい。
【0013】
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、フタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、テレフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、イソフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、およびこれらの各種異性体などが挙げられ、耐熱性向上の点からフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0014】
フタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂は下記式(1)で表される。市販品としては、「エポミックR508」(三井化学(株)製)、「EX−721」(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0015】
【化1】
【0016】
ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、下記式(2)で表される。市販品としては、「エポミックR540」(三井化学(株)製)、「AK−601」(日本化薬株式会社製)、「EX−722L」(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0017】
【化2】
【0018】
テレフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、「EX−711」(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。
【0019】
ダイマー酸変性エポキシ樹脂としては、ダイマー酸のグリシジル変性化合物、ダイマー酸とビスフェノールA型ジグリシジルエーテルとの反応物等が挙げられる。ダイマー酸変性エポキシ樹脂は、下記式(3)で表される。市販品としては、「jER871」、「jER872」(三菱化学(株)製)、「YD−171」、「YD−172」(新日鐵化学(株)製)などが挙げられる。
【0020】
【化3】
〔式中、Rはグリシジル基、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル構造などが挙げられる。nはそれぞれ独立に3〜9の整数である。〕
【0021】
エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂としては、「セロキサイド2021P」(3',4'-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、下記式(4)、(株)ダイセル製)、「セロキサイド2081」、「セロキサイド2000」、「セロキサイド3000」などが挙げられる。
【0022】
【化4】
【0023】
エステル骨格を有するエポキシ樹脂のエポキシ当量は、とくに制限されないが、100〜1000が好ましく、110〜800がより好ましく、120〜600が更に好ましく、130〜400が特に好ましい。これにより、接着フィルム形態の際に可とう性を向上させることができる点、硬化物の架橋密度が十分となり耐熱性が向上できる点などが優れることになる。なお、エポキシ当量(g/eq)は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量であり、JIS K7236:2001に従って測定することができる。
【0024】
樹脂組成物中のエステル骨格を有するエポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物のシート状形態の可とう性を向上させ、かつピール強度を向上させるという観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、2〜15質量%が好ましく、3〜12質量%がより好ましい。
【0025】
本発明の樹脂組成物においては、本発明の効果が発揮される範囲で、必要に応じてエステル骨格を有するエポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂を併用しても良い。他のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂等が挙げられる。なかでも、ピール強度の向上の観点から、エステル骨格を有するエポキシ樹脂とビフェニル型エポキシ樹脂を併用することが好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0026】
エポキシ樹脂として、エステル骨格を有するエポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂を併用する場合、シート状形態の可とう性を得るという観点から、エポキシ樹脂全体の固形分を100質量部とした場合、エステル骨格を有するエポキシ樹脂が10〜100質量部であることが好ましく、15〜90質量部であることがより好ましく、20〜80質量部であることが更に好ましい。
【0027】
<(B)活性エステル型硬化剤>
本発明に使用する(B)活性エステル型硬化剤は、1分子中に活性エステル基を1個以上有する化合物であり、誘電正接を低くすることができる。ここで、「活性エステル基」とは、エポキシ樹脂と反応するエステル基を意味する。活性エステル型硬化剤は、エポキシ樹脂と反応することができ、1分子中に活性エステル基を2個以上有する化合物が好ましい。一般的には、フェノールエステル、チオフェノールエステル、N−ヒドロキシアミンエステル及び複素環ヒドロキシ化合物エステルからなる群より選択される、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が、活性エステル型硬化剤として好ましく用いられる。
【0028】
耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物と、ヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物とを縮合反応させたものから得られる活性エステル型硬化剤がより好ましい。フェノール化合物、ナフトール化合物及びチオール化合物とから選択される1種又は2種以上と、カルボン酸化合物とを反応させたものから得られる活性エステル型硬化剤が更に好ましい。カルボン酸化合物とフェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られる1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物が更に一層好ましい。少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物と、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物とを反応させたものから得られる芳香族化合物であり、かつ該芳香族化合物の1分子中に2個以上の活性エステル基を有する芳香族化合物が殊更好ましい。活性エステル型硬化剤は、直鎖状または多分岐状であってもよい。また、少なくとも2個以上のカルボン酸を1分子中に有する化合物が脂肪族鎖を含む化合物であれば樹脂組成物との相溶性を高くすることができ、芳香族環を有する化合物であれば耐熱性を高くすることができる。
【0029】
上記カルボン酸化合物としては、具体的には、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。なかでも耐熱性の観点からコハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、イソフタル酸、テレフタル酸がより好ましい。チオカルボン酸化合物としては、具体的には、チオ酢酸、チオ安息香酸等が挙げられる。
【0030】
上記フェノール化合物又はナフトール化合物としては、具体的には、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。なかでも耐熱性向上、溶解性向上の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、カテコール、α−ナフトール、β−ナフトール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが好ましく、カテコール、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックがより好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラックが更に一層好ましく、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ジシクロペンタジエニルジフェノールが殊更好ましく、ジシクロペンタジエニルジフェノールが特に好ましい。チオール化合物としては、具体的には、ベンゼンジチオール、トリアジンジチオール等が挙げられる。活性エステル型硬化剤は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0031】
活性エステル型硬化剤としては、具体的には、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル型硬化剤、ナフタレン構造を含む活性エステル型硬化剤、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル型硬化剤、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル型硬化剤が好ましく、なかでもナフタレン構造を含む活性エステル型硬化剤、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル型硬化剤がより好ましい。市販品としては、ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル型硬化剤として、EXB9451、EXB9460、EXB9460S、HPC8000−65T(DIC(株)製)、ナフタレン構造を含む活性エステル型硬化剤としてEXB9416−70BK(DIC(株)製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル型硬化剤としてDC808(三菱化学(株)製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル型硬化剤としてYLH1026(三菱化学(株)製)、などが挙げられる。
【0032】
ジシクロペンタジエニルジフェノール構造を含む活性エステル型硬化剤として、より具体的には下式(5)の化合物が挙げられる。
【0033】
【化5】
(式中、Rはフェニル基、ナフチル基であり、kは0又は1を表し、nは繰り返し単位の平均で0.05〜2.5である。)
【0034】
誘電正接を低下させ、耐熱性を向上させるという観点から、Rはナフチル基が好ましく、一方、kは0が好ましく、また、nは0.25〜1.5が好ましい。
【0035】
活性エステル型硬化剤の含有量は、硬化物の誘電正接を低下させつつ、ピール強度を向上させることができるという点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、1〜30質量%であることが好ましく、1.5〜20質量%であることがより好ましく、2〜10質量%がさらに好ましい。
【0036】
本発明の樹脂組成物においては、本発明の効果が発揮される範囲で、必要に応じてフェノール型硬化剤、シアネートエステル型硬化剤等の硬化剤を添加しても良い。硬化剤全体の固形分を100質量部とした場合、活性エステル型硬化剤の合計量が30〜100質量部であることが好ましく、50〜100質量部であることがより好ましい。
【0037】
本発明の樹脂組成物において、樹脂組成物の硬化物の機械強度や耐水性を向上させるという観点から、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数と、硬化剤の反応基の合計数との比が、1:0.2〜1:2が好ましく、1:0.3〜1:1.5がより好ましく、1:0.4〜1:1が更に好ましい。なお樹脂組成物中に存在するエポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、各エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。
【0038】
<(C)無機充填材>
本発明の樹脂組成物は、無機充填材を含有することにより、誘電正接や熱膨張係数を低下させることができる。無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウムなどが挙げられる。なかでも、無定形シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ、球状シリカ等のシリカが好ましく、とくに絶縁層の表面粗さを低下させるという点で溶融シリカ、球状シリカがより好ましく、球状溶融シリカが更に好ましい。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。市販されている球状溶融シリカとして、(株)アドマテックス製「SOC2」、「SOC1」等が挙げられる。
【0039】
無機充填材の平均粒径は、特に限定されないが、絶縁層表面が低粗度となり、微細配線形成を行うことを可能にするという観点から、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下が更に好ましく、1μm以下が更に一層好ましく、0.8μm以下が殊更好ましく、0.6μm以下が特に好ましく、0.4μm以下がとりわけ好ましい。一方、樹脂組成物を樹脂ワニスとした場合に、ワニスの粘度が上昇し、取り扱い性が低下するのを防止するという観点から、0.01μm以上が好ましく、0.03μm以上がより好ましく、0.05μm以上が更に好ましく、0.07μm以上が更に一層好ましく、0.1μm以上が殊更好ましい。上記無機充填材の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒度分布測定装置により、無機充填材の粒度分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材を超音波により水中に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒度分布測定装置としては、(株)堀場製作所製 LA−950等を使用することができる。
【0040】
無機充填材の含有量は、誘電正接を低下させる点や多層プリント配線板のクラックを防止するという点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、50質量%以上となる。本発明の樹脂組成物はシート状形態の可とう性に優れるため、無機充填材の含有量を60質量%以上又は70質量%以上とすることが出来る。一方、硬化物が脆くなるのを防止する点やピール強度低下を防止する点から、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましい。
【0041】
また、無機充填材とエステル骨格を有するエポキシ樹脂は、ピール強度の低下を防止し、シート状形態の可とう性を高めるために、(C)無機充填材を100質量部とした場合、(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂が1〜20質量部となり、好ましくは2〜17質量部、より好ましくは3〜14質量部、更に好ましくは4〜10質量部となる。
【0042】
無機充填材は、表面処理剤で表面処理することが好ましく、具体的には、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、スチリルシラン系カップリング剤、アクリレートシラン系カップリング剤、イソシアネートシラン系カップリング剤、スルフィドシラン系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物及びチタネート系カップリング剤より選択される1種以上の表面処理剤で表面処理することがより好ましい。これにより、無機充填材の分散性や耐湿性を向上させることが出来る。
【0043】
具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルジメトキシメチルシラン等のアミノシラン系カップリング剤、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン、グリシジルブチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン系カップリング剤、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、11−メルカプトウンデシルトリメトキシシラン等のメルカプトシラン系カップリング剤、p−スチリルトリメトキシシラン等のスチリルシラン系カップリング剤、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルジエトキシシラン等のアクリレートシラン系カップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネートシラン系カップリング剤、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィドシラン系カップリング剤、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、t-ブチルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、トリシラザン、シクロトリシラザン、2,2,4,4,6,6−ヘキサメチルシクロトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサオクチルジシラザン、1,3−ジエチルテトラメチルジシラザン、1,3−ジ−n−オクチルテトラメチルジシラザン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3−ジメチルテトラフェニルジシラザン、1,3−ジエチルテトラメチルジシラザン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジメチルジシラザン、1,3−ジプロピルテトラメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ジメチルアミノトリメチルシラザン、テトラメチルジシラザン等のオルガノシラザン化合物、テトラ-n-ブチルチタネートダイマー、チタニウム-i-プロポキシオクチレングリコレート、テトラ−n−ブチルチタネート、チタンオクチレングリコレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジヒドロキシチタンビスラクテート、ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等のチタネート系カップリング剤等が挙げられる。これらのなかでもアミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物が好ましい。市販品としては、信越化学工業(株)製「KBM403」(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM803」(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBE903」(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製「KBM573」(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業(株)製「SZ−31」(ヘキサメチルジシラザン)等が挙げられる。
【0044】
無機充填材を表面処理剤で表面処理する際の、該表面処理剤の量は、特に限定されないが、無機充填材100質量部に対して、表面処理剤を0.05〜5質量部で表面処理するのが好ましく、0.1〜4質量部で表面処理するのがより好ましく、0.2〜3質量部で表面処理するのが更に好ましく、0.3〜2質量部で表面処理するのが更に一層好ましい。
【0045】
また、表面処理剤で表面処理された無機充填材においては、該無機充填材の表面組成を分析することによって、炭素原子の存在を確認し、該無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を求めることができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて該無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所製「EMIA−320V」等を使用することができる。
【0046】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上や硬化物の湿式粗化工程後の算術平均粗さ、二乗平均平方根粗さを安定させるという点で、0.05mg/m以上が好ましく、0.1mg/m以上がより好ましく、0.15mg/m以上が更に好ましく、0.2mg/m以上が更に一層好ましい。一方、樹脂ワニスの溶融粘度や接着フィルム形態での溶融粘度の上昇を防止するという点で、1mg/m以下が好ましく、0.75mg/m以下がより好ましく、0.5mg/m以下が更に好ましい。
【0047】
表面処理剤で表面処理された無機充填材は、無機充填材を表面処理剤により表面処理した後、樹脂組成物に添加することが好ましい。この場合には、無機充填材の分散性をより一層高めることが出来る。
【0048】
表面処理剤で表面処理された無機充填材への表面処理方法は、特に限定されないが、乾式法や湿式法が挙げられる。乾式法としては、回転ミキサーに無機充填材を仕込んで、攪拌しながら表面処理剤のアルコール溶液又は水溶液を滴下又は噴霧した後、さらに攪拌し、ふるいにより分級する。その後、加熱により表面処理剤と無機充填材とを脱水縮合させることにより得ることができる。湿式法としては、無機充填材と有機溶媒とのスラリーを攪拌しながら表面処理剤を添加し、攪拌した後、濾過、乾燥及びふるいによる分級を行う。その後、加熱により表面処理剤と無機充填材とを脱水縮合させることにより得ることができる。さらに、樹脂組成物中に表面処理剤を添加するインテグラルブレンド法でも可能である。
【0049】
本発明の樹脂組成物の好適な一実施態様は、樹脂組成物の硬化物の誘電正接が低く、ピール強度が高くなり、かつシート状形態の可とう性に優れた樹脂組成物を提供するという点から、(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂、(B)活性エステル型硬化剤及び(C)無機充填材を含有する樹脂組成物であって、前記樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、(C)無機充填材の含有量が50質量%以上であり、(C)無機充填材を100質量部とした場合、(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂が1〜20質量部であり、(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂と他のエポキシ樹脂を併用し、(A)エステル骨格を有するエポキシ樹脂としてグリシジルエステル型エポキシ樹脂(より好ましくはフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂又はヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂)を含み、他のエポキシ樹脂としてビフェニル型エポキシ樹脂を含み、(C)無機充填材としてシリカ(より好ましくは平均粒径0.01〜5μmのシリカ)を含む樹脂組成物の態様が好ましい。
【0050】
<(D)硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物には、さらに硬化促進剤を含有させることにより、エポキシ樹脂と硬化剤を効率的に硬化させることができる。硬化促進剤としては、特に限定されないが、アミン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、ホスホニウム系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0051】
アミン系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、トリエチルアミン、トリブチルアミンなどのトリアルキルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−ウンデセン(以下、DBUと略記する。)などのアミン化合物などが挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0052】
グアニジン系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、ジシアンジアミド、1−メチルグアニジン、1−エチルグアニジン、1−シクロヘキシルグアニジン、1−フェニルグアニジン、1−(o−トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン、1−メチルビグアニド、1−エチルビグアニド、1−n−ブチルビグアニド、1−n−オクタデシルビグアニド、1,1−ジメチルビグアニド、1,1−ジエチルビグアニド、1−シクロヘキシルビグアニド、1−アリルビグアニド、1−フェニルビグアニド、1−(o−トリル)ビグアニド等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0053】
イミダゾール系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ[1,2−a]ベンズイミダゾール、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライド、2−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0054】
ホスホニウム系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n−ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4−メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0055】
金属系硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体などが挙げられる。有機金属塩としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0056】
本発明の樹脂組成物に硬化促進剤を配合する場合には、エポキシ樹脂と硬化剤の合計を100質量部とした場合、0.005〜1質量部の範囲が好ましく、0.01〜0.5質量部の範囲がより好ましい。この範囲内であると、熱硬化をより効率的にでき、樹脂ワニスの保存安定性も向上する。
【0057】
<(E)高分子樹脂>
本発明の樹脂組成物には、さらに(E)高分子樹脂を含有させることにより、硬化物の機械強度を向上させることができ、更に接着フィルムの形態で使用する場合のフィルム成型能を向上させることもできる。(E)高分子樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂を挙げることができ、特にフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。これらは各々単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。(E)高分子樹脂の重量平均分子量は8000〜200000の範囲であるのが好ましく、12000〜100000の範囲がより好ましく、20000〜60000の範囲が更に好ましい。なお本発明における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレンン換算)で測定される。GPC法による重量平均分子量は、具体的には、測定装置として(株)島津製作所製LC−9A/RID−6Aを、カラムとして昭和電工(株)社製Shodex K−800P/K−804L/K−804Lを、移動相としてクロロホルム等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0058】
本発明の樹脂組成物に(E)高分子樹脂を配合する場合には、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。この範囲内であると、フィルム成型能や機械強度向上の効果が発揮され、更に溶融粘度の上昇や湿式粗化工程後の絶縁層表面の粗度を低下させることができる。
【0059】
<他の成分>
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の成分を配合することができる。他の成分としては、ビニルベンジル化合物、アクリル化合物、マレイミド化合物、ブロックイソシアネート化合物のような熱硬化性樹脂、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー、ゴム粒子等の有機充填剤、オルベン、ベントン等の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、カーボンブラック等の着色剤、リン系化合物、金属水酸化物等の難燃剤、を挙げることができる。
【0060】
本発明の樹脂組成物は、上記成分を適宜混合し、また、必要に応じて三本ロール、ボールミル、ビーズミル、サンドミル等の混練手段、あるいはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の撹拌手段により混練または混合することにより調整することができる。また、上記成分を有機溶剤に溶解して樹脂組成物中に添加してもよいし、樹脂組成物中にさらに有機溶剤を加えることで樹脂ワニスとして調整することもできる。
【0061】
本発明においては、樹脂組成物の硬化物の誘電正接が低く、ピール強度が高くなり、かつシート状形態の可とう性に優れた樹脂組成物を提供できるので、多層プリント配線板の製造において、多層プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物として好適に使用することができる。更に、メッキにより導体層を形成するための樹脂組成物(メッキにより導体層を形成する多層プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物)として好適に使用することができ、更に多層プリント配線板のビルドアップ層用樹脂組成物として好適である。
【0062】
本発明の樹脂組成物の硬化物の誘電正接は、後述する〔誘電正接の測定〕に記載の測定方法により把握することができる。誘電正接は、電気信号ロスを軽減させるという点から、0.007以下が好ましい。誘電正接は低いほどよく、特に下限値は無いが、一般的に0.002以上、0.003以上などとなる。
【0063】
本発明の樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成し、その絶縁層表面を粗化処理し、メッキして得られる導体層と絶縁層とのピール強度は、後述する〔メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定〕に記載の測定方法により把握することができる。ピール強度は、絶縁層と導体層とを十分に密着させておくために0.45kgf/cm以上が好ましく、0.5kgf/cm以上がより好ましく、0.55kgf/cm以上が更に好ましい。ピール強度の上限値は高いほどよく、特に制限は無いが、一般的に1.5kgf/cm以下、1.2kgf/cm以下、1.0kgf/cm以下、0.8kgf/cm以下などとなる。
【0064】
本発明の樹脂組成物のガラス転移温度は、後述する〔ガラス転移温度の測定〕に記載の測定方法により把握することができる。ガラス転移温度は、耐熱性向上という点から、150℃以上が好ましく155℃以上がより好ましい。特に上限値は無いが、一般的に300℃以下となる。
【0065】
本発明の樹脂組成物は、多層プリント配線板の絶縁層用樹脂組成物として特に適した組成であるが、ソルダーレジスト、アンダ−フィル材、ダイボンディング材、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が必要とされる用途の広範囲に使用できる。また、本発明の樹脂組成物の形態としては、特に限定されないが、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料、回路基板(積層板用途、多層プリント配線板用途等)に適用することが出来る。本発明の樹脂組成物は、ワニス状態で回路基板に塗布して絶縁層を形成することもできるが、工業的には一般に、接着フィルム、プリプレグ等のシート状積層材料の形態で用いるのが好ましい。樹脂組成物の軟化点は、シート状積層材料のラミネート性の観点から40〜150℃が好ましい。
【0066】
<シート状積層材料>
(接着フィルム)
本発明の接着フィルムは、支持体上に樹脂組成物層が形成されたものであり、当業者に公知の方法、例えば、有機溶剤に樹脂組成物を溶解した樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーターなどを用いて、支持体に塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥させて樹脂組成物層を形成させることにより製造することができる。
【0067】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒等を挙げることができる。有機溶剤は2種以上を組みわせて用いてもよい。
【0068】
乾燥条件は特に限定されないが、樹脂組成物層への有機溶剤の含有量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。ワニス中の有機溶剤量、有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30〜60質量%の有機溶剤を含むワニスを50〜150℃で3〜10分程度乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0069】
接着フィルムにおいて形成される樹脂組成物層の厚さは、導体層の厚さ以上とするのが好ましい。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、樹脂組成物層は10〜100μmの厚さを有するのが好ましい。薄膜化の観点から、15〜80μmがより好ましい。
【0070】
支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィンのフィルム、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルのフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルムなどの各種プラスチックフィルムが挙げられる。また離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを使用してもよい。中でも、汎用性の点から、プラスチックフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。支持体及び後述する保護フィルムには、マッド処理、コロナ処理等の表面処理が施してあってもよい。また、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤で離型処理が施してあってもよい。
【0071】
支持体の厚さは特に限定されないが、10〜150μmが好ましく、25〜50μmがより好ましい。
【0072】
樹脂組成物層の支持体が密着していない面には、支持体に準じた保護フィルムをさらに積層することができる。保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、1〜40μmである。保護フィルムを積層することにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。接着フィルムは、ロール状に巻きとって貯蔵することもできる。
【0073】
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、本発明の樹脂組成物をシート状補強基材にホットメルト法又はソルベント法により含浸させ、加熱して半硬化させることにより製造することができる。すなわち、本発明の樹脂組成物がシート状補強基材に含浸した状態となるプリプレグとすることができる。シート状補強基材としては、例えば、ガラスクロスやアラミド繊維等のプリプレグ用繊維として常用されている繊維からなるものを用いることができる。そして支持体上にプリプレグが形成されたものが好適である。
【0074】
ホットメルト法は、樹脂組成物を有機溶剤に溶解することなく、支持体上に一旦コーティングし、それをシート状補強基材にラミネートする、あるいはダイコーターによりシート状補強基材に直接塗工するなどして、プリプレグを製造する方法である。またソルベント法は、接着フィルムと同様にして樹脂を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、このワニスにシート状補強基材を浸漬し、樹脂ワニスをシート状補強基材に含浸させ、その後乾燥させる方法である。また、接着フィルムをシート状補強基材の両面から加熱、加圧条件下、連続的に熱ラミネートすることで調製することもできる。支持体や保護フィルム等も接着フィルムと同様に用いることができる。
【0075】
<シート状積層材料を用いた多層プリント配線板>
次に、上記のようにして製造したシート状積層材料を用いて多層プリント配線板を製造する方法の一例を説明する。
【0076】
まず、シート状積層材料を、真空ラミネーターを用いて回路基板の片面又は両面にラミネート(積層)する。回路基板に用いられる基板としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等が挙げられる。なお、ここで回路基板とは、上記のような基板の片面又は両面にパターン加工された導体層(回路)が形成されたものをいう。また導体層と絶縁層とを交互に積層してなる多層プリント配線板において、該多層プリント配線板の最外層の片面又は両面がパターン加工された導体層(回路)となっているものも、ここでいう回路基板に含まれる。なお導体層表面には、黒化処理、銅エッチング等により予め粗化処理が施されていてもよい。
【0077】
上記ラミネートにおいて、シート状積層材料が保護フィルムを有している場合には該保護フィルムを除去した後、必要に応じてシート状積層材料及び回路基板をプレヒートし、シート状積層材料を加圧及び加熱しながら回路基板にラミネートする。本発明のシート状積層材料においては、真空ラミネート法により減圧下で回路基板にラミネートする方法が好適に用いられる。ラミネートの条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度(ラミネート温度)を好ましくは70〜140℃、圧着圧力(ラミネート圧力)を好ましくは1〜11kgf/cm(9.8×10〜107.9×10N/m)とし、圧着時間(ラミネート時間)を好ましくは5〜180秒とし、空気圧20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートするのが好ましい。また、ラミネートの方法は、バッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。真空ラミネートは、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、ニチゴー・モートン(株)製バキュームアップリケーター、(株)名機製作所製真空加圧式ラミネーター、(株)日立インダストリイズ製ロール式ドライコータ、日立エーアイーシー(株)製真空ラミネーター等を挙げることができる。
【0078】
シート状積層材料を回路基板にラミネートした後、室温付近に冷却してから、支持体を剥離する場合は剥離し、樹脂組成物を熱硬化して硬化物を形成することで、回路基板上に絶縁層を形成することができる。熱硬化の条件は、樹脂組成物中の樹脂成分の種類、含有量などに応じて適宜選択すればよいが、好ましくは150℃〜220℃で20分〜180分、より好ましくは160℃〜210℃で30〜120分の範囲で選択される。絶縁層を形成した後、硬化前に支持体を剥離しなかった場合は、必要によりここで剥離することもできる。
【0079】
また、シート状積層材料を、真空プレス機を用いて回路基板の片面又は両面に積層することもできる。減圧下、加熱及び加圧を行う積層工程は、一般の真空ホットプレス機を用いて行うことが可能である。例えば、加熱されたSUS板等の金属板を支持体層側からプレスすることにより行うことができる。プレス条件は、減圧度を通常1×10−2MPa以下、好ましくは1×10−3MPa以下の減圧下とする。加熱及び加圧は、1段階で行うことも出来るが、樹脂のしみだしを制御する観点から2段階以上に条件を分けて行うのが好ましい。例えば、1段階目のプレスを、温度が70〜150℃、圧力が1〜15kgf/cm2の範囲、2段階目のプレスを、温度が150〜200℃、圧力が1〜40kgf/cm2の範囲で行うのが好ましい。各段階の時間は30〜120分で行うのが好ましい。このように樹脂組成物層を熱硬化することにより回路基板上に絶縁層を形成することができる。市販されている真空ホットプレス機としては、例えば、MNPC−V−750−5−200(株)名機製作所製)、VH1−1603(北川精機(株)製)等が挙げられる。
【0080】
次いで、回路基板上に形成された絶縁層に穴開け加工を行ってビアホール、スルーホールを形成する。穴あけ加工は、例えば、ドリル、レーザー、プラズマ等の公知の方法により、また必要によりこれらの方法を組み合わせて行うことができるが、炭酸ガスレーザー、YAGレーザー等のレーザーによる穴あけ加工が最も一般的な方法である。穴あけ加工前に支持体を剥離しなかった場合は、ここで剥離することになる。
【0081】
次いで、絶縁層表面に粗化処理を行う。乾式の粗化処理の場合はプラズマ処理等が挙げられ、湿式の粗化処理の場合は膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理及び中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。湿式の粗化処理の方が、絶縁層表面に凸凹のアンカーを形成しながら、ビアホール内のスミアを除去することができる点で好ましい。膨潤液による膨潤処理は、絶縁層を50〜80℃で5〜20分間(好ましくは55〜70℃で8〜15分間)、膨潤液に浸漬させることで行われる。膨潤液としてはアルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が挙げられる。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。酸化剤による粗化処理は、絶縁層を60〜80℃で10〜30分間(好ましくは70〜80℃で15〜25分間)、酸化剤溶液に浸漬させることで行われる。酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等を挙げることができる。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5〜10重量%とするのが好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ドージングソリューション セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。中和液による中和処理は、30〜50℃で3〜10分間(好ましくは35〜45℃で3〜8分間)、中和液に浸漬させることで行われる。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューシン・セキュリガントPが挙げられる。
【0082】
次いで、乾式メッキ又は湿式メッキにより絶縁層上に導体層を形成する。乾式メッキとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式メッキとしては、無電解メッキと電解メッキとを組み合わせて導体層を形成する方法、導体層とは逆パターンのメッキレジストを形成し、無電解メッキのみで導体層を形成する方法、等が挙げられる。その後のパターン形成の方法として、例えば、当業者に公知のサブトラクティブ法、セミアディティブ法などを用いることができ、上述の一連の工程を複数回繰り返すことで、ビルドアップ層を多段に積層した多層プリント配線板となる。本発明においては、低粗度、高ピールであるため、多層プリント配線板のビルドアップ層として好適に使用することができる。
【0083】
<半導体装置>
本発明の多層プリント配線板を用いることで半導体装置を製造することができる。本発明の多層プリント配線板の導通箇所に、半導体チップを実装することにより半導体装置を製造することができる。「導通箇所」とは、「多層プリント配線板における電気信号を伝える箇所」であって、その場所は表面であっても、埋め込まれた箇所であってもいずれでも構わない。また、半導体チップは半導体を材料とする電気回路素子であれば特に限定されない。
【0084】
本発明の半導体装置を製造する際の半導体チップの実装方法は、半導体チップが有効に機能しさえすれば、特に限定されないが、具体的には、ワイヤボンディング実装方法、フリップチップ実装方法、バンプなしビルドアップ層(BBUL)による実装方法、異方性導電フィルム(ACF)による実装方法、非導電性フィルム(NCF)による実装方法、などが挙げられる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、「部」は質量部を意味する。
【0086】
<測定方法・評価方法>
まずは各種測定方法・評価方法について説明する。
【0087】
〔ピール強度測定用サンプルの調製〕
(1)内層回路基板の下地処理
内層回路を形成したガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.3mm、松下電工(株)製R5715ES)の両面をメック(株)製CZ8100にて1umエッチングして銅表面の粗化処理をおこなった。
【0088】
(2)接着フィルムのラミネート
実施例及び比較例で作成した接着フィルムを、バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP-500(名機(株)製商品名)を用いて、内層回路基板の両面にラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃、圧力0.74MPaで圧着することにより行った。
【0089】
(3)樹脂組成物の硬化
ラミネートされた接着フィルムからポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを剥離した後、100℃、30分続けて180℃、30分の硬化条件で樹脂組成物を硬化して絶縁層を形成した
【0090】
(4)粗化処理
絶縁層を形成した内層回路基板を、膨潤液である、アトテックジャパン(株)のジエチレングリコールモノブチルエーテル含有のスエリングディップ・セキュリガントP(グリコールエーテル類、水酸化ナトリウムの水溶液)に、60℃で10分間浸漬した。次に粗化液として、アトテックジャパン(株)のコンセントレート・コンパクトP(KMnO4:60g/L、NaOH:40g/Lの水溶液)に、80℃で20分間浸漬した。最後に中和液として、アトテックジャパン(株)のリダクションショリューシン・セキュリガントP(硫酸の水溶液)に40℃で5分間浸漬した。その後80℃で30分乾燥した。
【0091】
(5)セミアディティブ工法によるメッキ
この基板を、PdClを含む無電解メッキ用溶液に40℃で5分間浸漬し、次に無電解銅メッキ液に25℃で20分間浸漬した。150℃にて30分間加熱してアニール処理を行った後に、エッチングレジストを形成し、エッチングによるパターン形成の後に、硫酸銅電解メッキを行い、30μmの厚さで導体層を形成した。次に、アニール処理を190℃にて60分間行った。この基板を評価基板とした。
【0092】
〔メッキ導体層の引き剥がし強さ(ピール強度)の測定〕
評価基板の導体層に、幅10mm、長さ100mmの部分の切込みをいれ、この一端を剥がしてつかみ具(株式会社ティー・エス・イー、オートコム型試験機 AC−50C−SL)で掴み、室温中にて、50mm/分の速度で垂直方向に35mmを引き剥がした時の荷重(kgf/cm)を測定した。
【0093】
〔誘電正接の測定〕
各実施例および各比較例で得られた接着フィルムを190℃で90分熱硬化させて、PETフィルムを剥離してシート状の硬化物を得た。その硬化物を、幅2mm、長さ80mmの試験片に切断し、関東応用電子開発(株)製空洞共振器摂動法誘電率測定装置CP521およびアジレントテクノロジー(株)製ネットワークアナライザーE8362Bを使用して、空洞共振法で測定周波数5.8GHzにて誘電正接(tanδ)の測定を行った。2本の試験片について測定を行い、平均値を算出した。
【0094】
〔ガラス転移温度の測定〕
各実施例および各比較例で得られたで得られた接着フィルムを190℃で90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた。その硬化物を、幅約5mm、長さ約15mmの試験片に切断し、(株)リガク製熱機械分析装置(Thermo Plus TMA8310)を使用して、引張加重法で熱機械分析を行った。試験片を前記装置に装着後、荷重1g、昇温速度5℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定においてガラス転移温度を算出した。
【0095】
〔可とう性の評価〕
各実施例および各比較例で得られた接着フィルムを90度に折り曲げ、塗膜表面の観察をおこなった。そのときの表面状態を次の基準で判断した。
○:塗膜表面にクラックが見られない
×:塗膜表面に微小なクラックが見られた
【0096】
<実施例1>
グリシジルエステル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製「EX−721」、エポキシ当量154)10部、結晶性2官能エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量約185)15部、ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量269)15部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部を、ソルベントナフサ20部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへトリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC(株)製「LA−3018−50P」水酸基当量151)の固形分50%の2-メトキシプロパノール溶液10部、活性エステル型硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)10部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン、固形分10質量%のMEK溶液)1部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」、単位面積当たりのカーボン量0.39mg/m)150部、を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次いで、離型処理付きポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック(株)製「PET501010」、厚さ50μm)の離型面上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚みが30μmとなるように樹脂ワニスを均一に塗布し、80〜120℃(平均100℃)で4分間乾燥させて、接着フィルムを作製した。
【0097】
<実施例2>
実施例1のグリシジルエステル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製「EX−721」、エポキシ当量154)10部を、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製「EX−722L」、エポキシ当量151)10部に変更する以外は、実施例1と全く同様にして接着フィルムを作製した。
【0098】
<実施例3>
実施例1のグリシジルエステル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製「EX−721」、エポキシ当量154)10部を、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)製「YD172」、エポキシ当量600)10部に変更する以外は、実施例1と全く同様にして接着フィルムを作製した。
【0099】
<実施例4>
実施例1のグリシジルエステル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製「EX−721」、エポキシ当量154)10部を、グリシジルエステル型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「jER872」、一般式(3)のRがビスフェノールA型ジグリシジルエーテル構造、エポキシ当量650)10部に変更する以外は、実施例1と全く同様にして接着フィルムを作製した。
【0100】
<実施例5>
実施例1のグリシジルエステル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製「EX−721」、エポキシ当量154)10部を25部に変更し、更に結晶性2官能エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「YX4000HK」、エポキシ当量185)15部を0部に変更する以外は、実施例1と全く同様にして接着フィルムを作製した。
【0101】
<実施例6>
エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂((株)ダイセル製「セロキサイド 2021P」、エポキシ当量126)8部、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC(株)製「HP−7200H」、エポキシ当量275)12部、フェノキシ樹脂(三菱化学(株)製「YL7553BH30」、固形分30質量%のMEKとシクロヘキサノンの1:1溶液)10部を、ソルベントナフサ30部に撹拌しながら加熱溶解させた。室温にまで冷却後、そこへ活性エステル型硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)35部、硬化促進剤(4−ジメチルアミノピリジン、固形分5質量%のMEK溶液)2.4部、難燃剤(三光(株)製「HCA−HQ」、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10-ヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナンスレン-10-オキサイド、平均粒径2μm)2部、フェニルアミノシラン系カップリング剤(信越化学工業(株)製、「KBM573」)で表面処理された球形シリカ(平均粒径0.5μm、(株)アドマテックス製「SOC2」、単位面積当たりのカーボン量0.39mg/m)150部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂ワニスを作製した。次いで、実施例1と同様にして、接着フィルムを作製した。
【0102】
<比較例1>
実施例1のグリシジルエステル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製「EX−721」、エポキシ当量154)10部を、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製「828US」、エポキシ当量180)10部に変更する以外は、実施例1と全く同様にして接着フィルムを作製した。
【0103】
<比較例2>
実施例1のトリアジン骨格含有フェノール樹脂(DIC(株)製「LA3018−50P」、水酸基当量151の不揮発成分50%の2-メトキシプロパノール溶液)10部を20部に変更し、更に活性エステル型硬化剤(DIC(株)製「HPC8000−65T」、活性基当量約223の不揮発分65質量%のトルエン溶液)10部を0部に変更する以外は、実施例1と全く同様にして接着フィルムを作製した。
【0104】
<比較例3>
実施例1のグリシジルエステル型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス(株)製「EX−721」、エポキシ当量154)10部を35部に変更し、更に結晶性2官能エポキシ樹脂((株)製「YX4000HK」、エポキシ当量185)15部を0部に変更し、更にビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「NC3000L」、エポキシ当量269)15部を5部に変更する以外は、実施例1と全く同様にして接着フィルムを作製した。
【0105】
結果を表1に示す。
【0106】
【表1】
【0107】
表1の結果から、実施例の樹脂組成物は、硬化物の誘電正接が低く、ピール強度が高くなり、かつシート状形態の可とう性に優れていることが分かる。一方、比較例1ではエステル型骨格を有するエポキシ樹脂を用いていないため誘電正接が高くなり、可とう性も劣っている。比較例2では活性エステル型硬化剤を用いていないため、誘電正接が著しく高くなっている。比較例3ではエステル骨格を有するエポキシ樹脂の配合量が多く、ピール強度が低下している。