(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記酸性緩衝溶液が、酢酸及び酢酸ナトリウムの混合溶液、又は、フタル酸水素カリウム及び水酸化ナトリウムの混合溶液である、請求項1〜4の何れかに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、「置換基を有していてもよい」とは、「無置換の、または、置換基を有する」の意味である。また、一般式中に含まれるアルキル基や芳香族炭化水素環基等の有機基が置換基を有する場合、当該置換基を有する有機基の炭素数には、置換基の炭素数を含まないものとする。例えば、炭素数3〜12の芳香族炭化水素環基が置換基を有する場合、炭素数3〜12の芳香族炭化水素環基の炭素数には、このような置換基の炭素数を含まないものとする。
【0026】
ここで、本発明の製造方法は、特に限定されることなく、光学フィルムや光学異方体の製造に用いうる重合性化合物の中間体化合物の製造に用いることができる。また、本発明の化合物及びかかる化合物を含む混合物は、特に限定されることなく、光学フィルムや光学異方体の製造に用いうる重合性化合物の中間体化合物の製造に用いることができる。さらに、本発明の化合物及びかかる化合物を含む混合物は、特に限定されることなく、本発明の製造方法内で生成されうる。
【0027】
(化合物の製造方法)
以下、本発明の化合物の製造方法として、大別して2通りの製造方法A及びBを説明する。製造方法A及びBは、特定構造のヒドロキシ化合物を、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド及び/又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸によりエステル化して特定構造のモノエステル化合物を含む反応生成物を得る工程(即ち、以下に詳述する工程(A1)又は工程(B1))を出発点とする点で共通するが、得られた反応生成物から所望の品質の中間体化合物を得るまでの各処理工程において異なる。以下、各製造方法A及びBについてそれぞれ説明する。
【0028】
<製造方法A>
製造方法Aは、有機溶媒中、式:Q−OH(式中、Qは置換基を有していてもよい有機基を表す。)で表されるヒドロキシ化合物と、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド及び/又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とを反応させて得た、下式(I):
【化6】
(式中、Aは水酸基または、塩素原子を表し、Qは置換基を有していてもよい有機基を表す。)で表されるモノエステル化合物、並びに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド及び/又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含む反応生成物を得る工程(A1)と、反応生成物を酸性緩衝溶液と混合する工程(A2)を含むことを特徴とする。これらの工程を経て、上記式(I)中、Aが水酸基である目的とする中間体化合物を含む混合物を得ることができる。
【0029】
―工程(A1)―
工程(A1)では、有機溶媒中で1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドと特定構造のヒドロキシ化合物とを、任意で、塩基の存在下で反応させて、特定構造のヒドロキシ化合物をエステル化する。
【0030】
[有機溶媒]
有機溶媒としては、特に限定されることなく、既知の有機溶媒を用いることができる。特に、有機溶媒としては、親水性有機溶媒を使用することが好ましい。ここで、本明細書において、親水性有機溶媒とは、25℃の水100gに対する溶解度が、10(g/100g−H
2O)を超える有機溶媒をいう。親水性有機溶媒としては、具体的には、N‐メチル‐2‐ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−イミダゾリジノン、及びγ−ブチロラクトン等の非プロトン性極性溶媒;並びに、テトラヒドロフラン及びジオキサン等のエーテル系溶媒;が挙げられる。これら2種類以上を混合して使用しても構わない。これらの中でも、N‐メチル‐2‐ピロリドン(NMP)及びテトラヒドロフラン(THF)がより好ましい。
【0031】
[ヒドロキシ化合物]
式:Q−OH(式中、Qは置換基を有していてもよい有機基を表す。)で表されるヒドロキシ化合物としては、有機基Qが、下記式(II)で表されるヒドロキシ化合物が好ましい。
【化7】
(式中、Rは水素原子あるいはメチル基を表し、Y
1は、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−、又は−C(=O)−NR
1−を表す。ここで、R
1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。G
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の鎖状脂肪族基を表す。〔該鎖状脂肪族基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
2−C(=O)−、−C(=O)−NR
2−、−NR
2−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、R
2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。〕A
1は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の2価の芳香族炭化水素環あるいは置換基を有していてもよい炭素数3〜12の2価の環状脂肪族基を表す。nは0または1を表す。)
【0032】
[1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド]
工程(A1)で用いる1,4−シクロヘキサンジカルボン酸としては、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましく、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドとしては、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドが好ましい。1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドは、それぞれ単独で、或いは両者を混合して用いることができるが、何れかを単独で使用することが好ましい。
【0033】
[塩基]
工程(A1)では、任意で、有機溶媒中に塩基を配合することができる。かかる塩基としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン等が挙げられる。塩基の存在下にてエステル化反応することで、上記特定構造のヒドロキシ化合物のエステル化効率を向上させることができる。
【0034】
[縮合剤]
工程(A1)では、任意で、縮合剤を使用することができる。かかる縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩及び、ビス(2、6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド等が挙げられる。中でも、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩が好ましい。
【0035】
[エステル化反応]
そして、工程(A1)におけるエステル化反応により上記式(I)で表されるモノエステル化合物に加えて、下記式(V)で表されるジエステル化合物が生成される。
【化8】
式中、Qは置換基を有していてもよい有機基を表し、好ましくは、上記式(II)で表される有機基である。
さらに、反応生成物中には、未反応の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、及び/又は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドが残留しうる。
【0036】
そして、エステル化反応に当たり、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドの何れかを単独で、上記特定構造のヒドロキシ化合物と反応させる場合には、ヒドロキシ化合物1モルに対して、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドの何れかを0.8モル以上10モル以下使用することが好ましい。また、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドの混合物を上記ヒドロキシ化合物と反応させる場合には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドの混合物の合計量と、ヒドロキシ化合物の使用量との比率が、それぞれ上記数値範囲内であり、更に、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドの合計モル量が、ヒドロキシ化合物1モルに対して、0.8モル以上10モル以下となるようにすることが好ましい。
【0037】
さらに、エステル化反応にて、上述した塩基を使用する場合には、ヒドロキシ化合物1モルあたり、0.05モル以上5モル以下の塩基を使用することが好ましい。また、エステル化反応にて、上述した縮合剤を使用する場合には、ヒドロキシ化合物1モルあたり、縮合剤を0.5モル以上10モル以下使用することが好ましい。
【0038】
エステル化反応時の温度は、好ましくは、−20℃以上120℃以下である。エステル化効率の観点から、好適な温度条件は、使用する原材料、すなわち1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は、1,4−シクロヘキサンジカルボンジクロライドを用いるかに応じて異なる。例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を使用する場合には、反応温度を−10度以上80度以下とすることがより好ましい。また、1,4−シクロヘキサンジカルボンジクロライドを使用する場合には、反応温度を40℃以下とすることがより好ましい。
また、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボンジクロライドの混合物を用いる場合は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を用いる場合と同様である。
そして、エステル化反応の時間は、好ましくは1分〜72時間であり、より好ましくは1〜48時間であり、さらに好ましくは1〜24時間である。
【0039】
―工程(A2)―
工程(A2)では、工程(A1)で得られた反応生成物を、酸性緩衝溶液と混合する。かかる工程により、工程(A1)で得られた反応生成物中に含まれる未反応物である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド及び/又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を酸性緩衝溶液由来の水相中に溶解し、その一方で、Aが水酸基である上記式(I)で表されるモノエステル化合物を析出させることができる。なお、工程(A1)にて、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドを用いた場合には、工程(A1)にて得られた反応生成物中に、Aが塩素原子である式(I)で表わされるモノエステル化合物が含有されている。ここで、Aが塩素原子である式(I)で表わされるモノエステル化合物は、「‐C(=O)‐Cl」構造を有する。かかる構造を有するモノエステル化合物を含む反応生成物を、工程(A2)にて酸性緩衝溶液と混合すると、「‐C(=O)‐Cl」構造の加水分解反応が生じてカルボキシル基に誘導される。その結果、工程(A2)において、Aが水酸基である上記式(I)で表されるモノエステル化合物、すなわち、目的とする中間体化合物を析出させることができる。
【0040】
[酸性緩衝溶液]
酸性緩衝溶液は、pH5.0以上6.0以下であることが好ましい。反応生成物中に残存する1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び/又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドを良好に溶解することができるからである。さらに、酸性緩衝溶液としては、pHが上記範囲内である限りにおいて特に限定されることはないが、中でも、酢酸及び酢酸ナトリウムの混合溶液、又は、フタル酸水素カリウム及び水酸化ナトリウムの混合溶液を用いることが好ましく、酢酸及び酢酸ナトリウムの混合溶液を用いることがより好ましい。混合溶液を緩衝溶液とする場合における混合比率は、pHが上記好適範囲内となる限りにおいて特に限定されることなく、あらゆる比率とすることができる。
なお、本明細書において「緩衝溶液」とは、緩衝能を有する溶液を意味する。
また、本明細書において酸性緩衝溶液の「pH」は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0041】
[混合]
工程(A2)における酸性緩衝溶液の使用量は、特に限定されることなく、例えば、工程(A1)で使用したヒドロキシ化合物100質量部当たり100質量部以上5000質量部以下とすることができる。
また、工程(A2)の混合時間は、好ましくは1分〜24時間であり、より好ましくは1分〜12時間であり、さらに好ましくは1分〜3時間である。
【0042】
―工程(A1−1)―
任意で、上述した工程(A1)と(A2)との間に、工程(A1)で得られた反応生成物に対して水と混合する工程(工程A1−1)を実施することができる。かかる工程によれば、上記式(I)中、Aが塩素原子の場合、酸クロライドの「‐C(=O)‐Cl」構造を加水分解反応によりカルボキシル基に誘導することが可能となる。また、残存した未反応の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドの「‐C(=O)‐Cl」構造も同様に加水分解反応によりカルボキシル基に誘導することが可能となる。その結果、工程(A2)で使用する酸性緩衝溶液の使用量を削減し、中間体化合物の製造効率を一層向上させることが可能となる。
【0043】
[水]
工程(A1−1)で加える水としては、特に限定されることなく、蒸留水、イオン交換水等を用いることができる。
【0044】
[混合]
工程(A1−1)における水の使用量としては、特に限定されることなく、工程(A1)で使用したヒドロキシ化合物100質量部当たり10質量部以上5000質量部以下とすることができる。
また、工程(A1−1)の混合時間は、好ましくは1分〜24時間であり、より好ましくは1〜12時間であり、さらに好ましくは1〜6時間である。
【0045】
[固液分離と洗浄]
工程(A1−1)で、反応生成物と水とを混合した後に、混合溶液中に含まれる固形分を回収し、回収した固形分を洗浄してもよい。固形分の回収方法は、特に限定されることなく、例えばろ過、デカンテーション等が挙げられる。好ましくは、ろ過により固形分を回収する。そして、回収した固形分は、特に限定されることなく、例えば、緩衝溶液、水、水‐メタノール溶媒等により洗浄する。好ましくは、水又は水‐メタノール溶媒を用いて洗浄を行い、水‐メタノール溶媒を使用する際は、混合質量比が1:1である水‐メタノール溶媒を用いて洗浄を行うのが特に好ましい。なお、本工程で洗浄に緩衝溶液を用いる場合には、かかる緩衝溶液としては、特に限定されることなく、一般的な緩衝溶液や、上述した工程(A2)にて挙げた酸性緩衝溶液を使用することができる。ここで、本明細書において「洗浄」とは、固形分と溶媒とを接触させる操作を意味する。そして、洗浄した固形分は、例えば、真空乾燥機等の一般的な乾燥手段を用いて乾燥することができる。
【0046】
なお、上記工程(A1−1)の後に上記工程(A2)を実施する場合には、任意で、上記洗浄を経て得られた固形分(固体)を、任意の溶媒中に溶解させて溶解状態として、工程(A2)を実施することができる。固体の溶解に用いる溶媒としては、特に限定されることなく、一般的な有機溶媒や、上述した親水性有機溶媒を用いることができる。特に、親水性有機溶媒を用いることが好ましい。また、工程(A1)で使用した有機溶媒と、本溶解に用いる有機溶媒とは、同一であっても異なっていても良い。
【0047】
―固液分離工程―
上記工程(A2)にて析出させた上記式(I)で表されるモノエステル化合物を含むスラリーについて、例えばろ過、又はデカンテーション等を行った固形分を回収する。好ましくは、ろ過により、目的とする中間体化合物を含む混合物を回収する。さらに、得られた固形分は、上記工程(A1−1)における洗浄操作にて説明した方法と同様の一般的な方法にて、洗浄及び乾燥させて、目的の中間体化合物及びかかる中間体化合物を含む混合物を得ることができる。
【0048】
<製造方法B>
製造方法Bは、有機溶媒中、式:Q−OH(式中、Qは置換基を有していてもよい有機基を表す。)で表されるヒドロキシ化合物と、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とを反応させることにより、下式(I):
【化9】
(式中、Aは水酸基または、塩素原子を表し、Qは前記と同じ意味を表す。)で表されるモノエステル化合物、並びに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド及び/又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含む反応溶液を得る工程(B1)、前記反応溶液に、塩基性化合物及び水を混合して析出物を得る工程(B2)、及び、前記工程(B2)で得られた析出物を固体状態のまま、又は、溶解状態として、酸性水溶液と混合する工程(B3)を含むことを特徴とする。これらの工程を経て、上記式(I)中、Aが水酸基である目的とする中間体化合物を含む混合物を得ることができる。
なお、上記式(I)中におけるQは、製造方法Aと同じく、上記式(II)で表される有機基であることが好ましい。
【0049】
―工程(B1)―
工程(B1)は、工程(A1)と同様の工程である。したがって、工程(B1)では、工程(A1)について上述した、有機溶媒、ヒドロキシ化合物、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドを用いて、さらに、必要に応じて、上述したものと同じ塩基、縮合剤、その他添加剤等を用いて、エステル化反応を行うことができる。また、エステル化反応の条件も、上記工程(A1)について説明した通りの条件とすることができる。工程(B1)により、上記式(I)で表される特定構造のモノエステル化合物、並びに、残留した未反応物である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド及び/又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含む反応生成物が得られる。
【0050】
―工程(B2)―
工程(B2)では、工程(B1)で得た反応溶液に対して、塩基性化合物及び水を混合して析出物を得る。これにより、反応溶液中に含まれる未反応物であるシクロヘキサンジカルボン酸及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドをイオン化して、水相中に溶解することができ、その一方で、下式(VI)で表されるモノエステル化合物を析出させることができる。
【化10】
〔式中、Qは上述した式(II)と同じ有機基を表す。Bは、工程(B2)で添加する、後述する塩基性化合物の残基であり、アルカリ金属原子または、アルカリ土類金属原子を表し、nは0または1を表す。〕
【0051】
[塩基性化合物]
塩基性化合物としては、特に限定されることなく、未反応物であるシクロヘキサンジカルボン酸、及び/又は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドと、酸−塩基反応をすることができる化合物であればよい。かかる塩基性化合物としては、アルカリ金属の水素化物、アルカリ土類金属の水素化物、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属のアルキルオキシ化物及び、アルカリ土類金属のアルキルオキシ化物等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属を有する塩基性化合物が挙げられる。好ましくは、アルカリ金属の水素化物、アルカリ土類金属の水素化物、アルカリ金属の水酸化物及び、アルカリ土類金属の水酸化物等のアルカリ金属原子又はアルカリ土類金属原子を有する塩基性無機化合物である。具体的には、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、t−ブトキシナトリウム及び、t−ブトキシカリウム等が挙げられる。中でも、水酸化ナトリウムが好ましい。
【0052】
[水]
工程(B2)で混合する水としては、特に限定されることなく、蒸留水、イオン交換水等を用いることができる。
【0053】
[混合]
塩基性化合物及び水を工程(B1)で得られた反応溶液に対して混合するに当たり、予め塩基性化合物を水に溶解して塩基性水溶液を調製し、調製した塩基性水溶液を反応溶液に対して混合することができる。
工程(B2)における塩基性化合物の使用量としては、工程(B1)で使用したシクロヘキサンジカルボン酸、及び/又は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド1モルに対して、0.1モル以上3モル以下とすることができる。
工程(B2)における水の使用量としては、特に限定されることなく、工程(B1)で使用したヒドロキシ化合物100質量部当たり200質量部以上5000質量部以下とすることができる。
また、工程(B2)の混合時間は、好ましくは1分〜72時間であり、より好ましくは1分〜5時間であり、さらに好ましくは10分〜5時間である。
【0054】
[固液分離及び洗浄]
工程(B2)の後に、任意で、混合後の反応生成物を、溶液から分離する固液分離工程を行うことができる。固液分離方法としては、特に限定されることなく、例えばろ過、又はデカンテーション等が挙げられる。さらに、得られた固形分は、上記工程(A1−1)における洗浄操作にて説明した方法と同様の一般的な方法にて、洗浄及び乾燥させることができる。
【0055】
―工程(B3)―
工程(B3)では、工程(B2)で得られた析出物を酸性水溶液に接触させる。その際には、析出物をそのまま酸性水溶液に分散させても良く、析出物を溶媒中に溶解させた溶液状態として、酸性水溶液と混合しても構わない。かかる工程により、工程(B2)で生成された上記式(VI)で表される化合物中で、記号Bで示した塩基性化合物の残基が酸性水溶液中で脱離し、下記式(VII)で表される中間体化合物が生成する。
【化11】
(式中、Qは上述した式(II)と同じ有機基を指す。)
【0056】
[酸性水溶液]
酸性水溶液としては、特に限定されることなく、一般的な酸性水溶液や、酸性緩衝溶液などを用いることができる。一般的な酸性水溶液としては塩酸水溶液等の鉱酸、又はクエン酸水溶液等の有機酸を水に溶解させた溶液が挙げられる。
ここで、酸性水溶液は、酸解離定数pKaが6.5以下、好ましくは6.0以下、さらに好ましくは5.0以下の酸性水溶液でありうる。なお、酸性水溶液の酸解離定数pKaは、25℃、水中における酸解離定数pKaを意味し、解離性基を複数有する酸である場合には、第1解離定数を意味する。例えば、25℃、水中における塩酸のpKaは−3.7であり、クエン酸のpKaは2.9である(日本化学会編、「化学便覧 基礎編II 改定4版」、丸善出版、1993年9月30日、II-318、322頁)。
酸性緩衝溶液としては、pHが5.0以上6.0以下である、酸性緩衝溶液を使用することができる。好ましくは、製造方法Aで酸性緩衝溶液として例示したものと同じものを使用することができる。
【0057】
[混合]
工程(B3)では、特に限定されることなく、例えば、有機溶媒中に工程(B2)にて得られた析出物を溶解させて溶解状態として、或いは、析出物を溶解状態とすることなく、固体状態のまま、酸性水溶液を混合させる。かかる工程によれば、下記式(VII)で表される中間体化合物残留した未反応物である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド、及び/又は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を水相中に溶解させて、除去することができる。
ここで、析出物を溶解状態とするために用いる有機溶媒としては、特に限定されることなく、例えば、上述した一般的な有機溶媒や、親水性の有機溶媒を用いることができる。そして、本工程において使用する有機溶媒と工程(B1)でのエステル化反応の際に使用する有機溶媒とは、同一であっても異なっていても良い。
【0058】
[固液分離及び洗浄]
工程(B3)の後に、任意で、混合後の反応生成物を、溶液から分離する固液分離する工程を行うことができる。固液分離方法としては、特に限定されることなく、例えばろ過、又はデカンテーション等が挙げられる。さらに、得られた固形分を、上記工程(A1−1)における洗浄操作にて説明した方法と同様の一般的な方法により洗浄及び乾燥させて、目的の中間体化合物を含む混合物を得ることができる。
【0059】
(化合物)
下記式(III)で表される本発明の化合物は、高品質な中間体化合物の前駆体として有用である。
【化12】
【0060】
ここで、式中、Rは水素原子あるいはメチル基を表す。
【0061】
そして、Y
1は、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
1−C(=O)−、又は、−C(=O)−NR
1−を表す。さらに、R
1は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0062】
さらに、G
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の2価の鎖状脂肪族基を表す。ここで、該鎖状脂肪族基には、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR
2−C(=O)−、−C(=O)−NR
2−、−NR
2−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在することは無い
。また、R
2は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
かかる2価の鎖状脂肪族基の具体例としては、アルキル基、及びアルケニル基が挙げられる。
アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルペンチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基等が挙げられる。なお、置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基の炭素数は、1〜12であることが好ましく、4〜10であることが更に好ましい。
アルケニル基としては、炭素数2〜20のアルケニル基が挙げられ、具体的には、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等が挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の炭素数は、2〜12であることが好ましい。
アルキニル基としては、炭素数2〜20のアルキニル基が挙げられ、具体的には、エチニル基、プロピニル基、2−プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、2−ペンチニル基、ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2−オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7−デカニル基等が挙げられる。
これらの中でも、G
1は、アルキル基であることが好ましく、置換基を有さないn‐ヘキシル基であることがより好ましい。
【0063】
なお、G
1が、置換基を有するアルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基である場合には、好ましい置換基として、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、−CH
2CF
3等の、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜12のフルオロアキル基等が挙げられる。これらの中でも、上述したアルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、−CH
2CF
3等の、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜12のフルオロアキル基が好ましい。
なお、G
1の炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は炭素数2〜20のアルキニル基は、上述した置換基から選ばれる複数の置換基を有していてもよい。G
1が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は互いに同一でも相異なっていてもよい。
【0064】
さらに、A
1は置換基を有していてもよい炭素数3〜12の2価の芳香族炭化水素環あるいは置換基を有していてもよい炭素数3〜12の2価の環状脂肪族基を表す。
2価の芳香族炭化水素環は、無置換の2価の芳香族炭化水素環基、又は、置換基を有する2価の芳香族炭化水素環基でありうる。そして、2価の芳香族炭化水素環基は、炭素数が3〜12である、炭化水素により形成された芳香環構造を有する2価の芳香族基である。2価の芳香族炭化水素環基の具体例としては、1,4−フェニレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,6−ナフチレン基、4,4’−ビフェニレン基等が挙げられる。
2価の環状脂肪族基は、炭素数が3〜12である、無置換の2価の環状脂肪族基、又は、置換基を有する2価の環状脂肪族基でありうる。
2価の環状脂肪族基としては、シクロペンタン−1,3−ジイル、シクロヘキサン−1,4−ジイル、1,4−シクロヘプタン−1,4−ジイル、シクロオクタン−1,5−ジイル等のシクロアルカンジイル基;デカヒドロナフタレン−1,5−ジイル、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル等のビシクロアルカンジイル基等が挙げられる。
中でも、A
1は置換基を有さない1,4−フェニレン基であることが好ましい。
そして、上述した2価の芳香族炭化水素環基及び2価の環状脂肪族基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜5のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;等が挙げられる。なお、上述した芳香族炭化水素環基及び環状脂肪族基は、上述した置換基から選ばれる複数の置換基を有していてもよい。置換基を複数有する場合は、各置換基は同一でも相異なっていてもよい。
【0065】
そして、Bはアルカリ金属原子または、アルカリ土類金属原子を表す。アルカリ金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、及びカリウム原子が好ましく、アルカリ土類金属原子としては、カルシウム原子が好ましく、中でも、ナトリウム原子が特に好ましい。Bがナトリウム原子であれば、上記式(III)で表される中間体化合物の前駆体となる化合物の析出性が向上し、収率を向上させることにより、中間体化合物の製造効率を向上させることができるからである。また、固液分離及び洗浄段階において、ろ過性、洗浄液の液切れが良く、中間体化合物の製造効率を一層高めることが可能であるからである。
【0066】
さらに、上記式(III)において、nは0または1を表す。特に、nは1であることが好ましい。
【0067】
よって、上記式(III)で表される化合物は、下式(VIII)にて表される化合物であることが好ましく、さらに、下式(VIII)において、Bがナトリウム原子であることが好ましい。
【化13】
【0068】
[生成方法]
上記式(III)或いは式(VIII)で表されうる本発明の化合物は、特に限定されることなく、例えば、上述した本発明の製造方法Bの工程(B2)にて生成される。上記式(III)或いは式(VIII)で表されうる本発明の化合物の製造に用いられる各種化合物及び溶媒としては製造方法Bに関して上述したものを用いることができ、製造条件も、製造方法Bについて上述した製造条件とすることができる。
【0069】
(混合物)
本発明の混合物は、上述した本発明の上記式(III)で表される本発明の化合物と、下記式(IV)で表される化合物とを含有する混合物である。
【化14】
式(IV)中、R、Y
1、G
1、及びA
1は、上述した式(III)と同じ基又は結合を表す。また、nは式(III)と同じ値である。さらに、これらの基又は結合の具体例及び好適例は、上記式(III)に関して記載したものと同じである。よって、上記式(IV)により表される化合物は、下式(IX)にて表される化合物であることが好ましい。
【化15】
【0070】
さらに、本発明の混合物は、化合物(IV)の含有量が、化合物(III)と化合物(IV)との合計含有量に対して、50モル%以下であることを特徴とする。さらに、本発明の混合物は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、及び/又は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドの含有量が、混合物全体の5モル%未満であることを特徴とする。
【0071】
本発明の混合物に含有される上記式(IV)で表される化合物は、特に限定されることなく、例えば、上述した製造方法Aの工程(A1)及び製造方法Bの工程(B1)におけるエステル化反応により生成されうる。本発明の混合物は、上記式(IV)で表される化合物の含有量が化合物(III)と化合物(IV)との合計含有量に対して、50モル%以下であるので、高品質であり、工業的生産規模で重合性化合物を製造する際に必要とされる中間体化合物の供給源として好適に使用することができる。
さらに、本発明の混合物において、上記式(IV)で表される化合物の含有量は、上記合計含有量に対して、40モル%以下であることが好ましく、30モル%以下であることがより好ましく、20モル%以下であることが更に好ましい。
【0072】
また、本発明の混合物は、未反応残留物である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、及び/又は、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドの含有量が、混合物全体の5モル%未満であるため、高品質であり、工業的生産規模で光学フィルムや光学異方体を製造する場合に用いうる重合性化合物を製造する際に好適に用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例に従う製造方法により得られた各種化合物の含有量を以下の方法により測定した。そして、測定値に基づいて各実施例に従う製造方法の製造効率、及びかかる製造方法により得られた中間体化合物の品質を以下の方法で評価した。
なお、実施例で使用した酸性緩衝溶液のpHは、ポータブル型pHメーターD−71型(株式会社堀場製作所製)により測定した。
【0074】
<各種化合物の含有量>
下記の方法に従って、実施例で得られた混合物中における中間体化合物(1)及び化合物(2)の含有量を測定した。
[中間体化合物(1)及び化合物(2)の含有量]
実施例で得られた混合物中における中間体化合物(1)の含有量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。検量線は、99.5%以上の高純度な中間体化合物(1)を使用して、既知の濃度溶液を3種類調整して標準物質とした。この濃度の異なる3種類の標準物質をオートサンプラーにより一定量分析した結果を基に、横軸がHPLCのピーク面積、縦軸が濃度の検量線を作成して定量を実施した。その他の化合物も同様にして、化合物ごとに定量を行った。
高速液体クロマトグラフィーの条件を以下に示す。
測定装置:アジレント社製LC1260型
カラム:XDB−C8 直径4.6mm×長さ250mm (Agilent社製 990967−906)
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル/0.1wt%トリフルオロ酢酸溶液=60/40(質量比)から95/5(質量比)まで分析初期から20分かけてグラジエントさせ、その後5分間移動相組成比を維持したまま分析した(合計25分間の分析を実施した)。
<製造方法の製造効率>
上記により得られた含有量の測定値に基づいて、材料として用いた化合物(A)を基準として、中間体化合物(1)の収率をモル%換算で算出した。中間体化合物(1)の収率が高ければ、高効率で中間体化合物(1)を製造できたことを意味する。
<中間体化合物の品質>
実施例で得られた中間体化合物(1)の品質は、中間体化合物(1)及び化合物(2)の合計含有量に対する化合物(2)の割合(モル%)、及び実施例で得られた混合物中におけるシクロヘキサンジカルボン酸の含有量により評価した。混合物中におけるシクロヘキサンジカルボン酸量は、実施例で得られた混合物を、
13C−NMR分析(500MHz、DMF(ジメチルホルムアミド)−d
7、23度)し、混合物中におけるシクロヘキサンジカルボン酸の含有量が、上記測定条件における
13C−NMRによる検出限界量未満(即ち、5モル%未満)であることを確認した。即ち、混合物中に未反応物の残留物が「無い」として評価した。混合物中において、未反応物であるシクロヘキサンジカルボン酸の含有量が無い、或いは、少ない場合には、高品質の中間体化合物(1)が得られたことを意味する。
【0075】
(実施例1)
中間体化合物(1)及び化合物(2)を含有する混合物1を、以下のスキームに従って製造した。なお、以下のスキーム中、「NMP」は、N−メチル−2−ピロリドンを、「AcOH/AcONa Buffer」は、酢酸‐酢酸ナトリウム緩衝溶液をそれぞれ意味する。
<工程(A1)>
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸41.2g(239mmol)と、親水性有機溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gとを加えて溶液を得た。得られた溶液に、式(A)で表されるヒドロキシ化合物である4−(6−アクリロイルオキシ−ヘクス−1−イルオキシ)フェノール(DKSH社製)12.64g(47.83mmol)、塩基である4−(ジメチルアミノ)ピリジン643mg(5.26mmol)を加えた。この溶液に、縮合剤である1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩11.0g(57.4mmol)を1時間かけてゆっくり滴下した。その後全容を15時間撹拌して、室温(JIS Z 8703)にてエステル化反応を行った。
<工程(A2)>
工程(A1)にて得られた反応液に、1mol/L酢酸‐酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH:5.5)500mlを、酸性緩衝溶液としてゆっくり滴下した。なお、酸性緩衝溶液は、溶液中における酢酸イオン総量の濃度が1mol/Lとなるように調製した。滴下終了後、そのまま1時間撹拌しスラリーを得た。
<ろ過工程>
得られたスラリーをろ過して、ろ物(固体)をメタノール/水=1/1(質量比)の混合溶媒で洗浄した。洗浄後の固体を真空乾燥機で乾燥させて、白色固体として混合物1を18.10g得た。
<評価>
得られた白色固体(結晶)を上述の方法に従うHPLCにて分析し、検量線に従ってモノエステルである中間体化合物(1)とジエステルである化合物(2)の定量を行ったところ、混合物1中には、中間体化合物(1)が13.33g(31.85mmol)、化合物(2)が4.77g(7.18mmol)含まれていた。また、得られた白色固体を上記に従って
13C−NMR分析して、混合物1中にシクロヘキサンジカルボン酸が実質的に含有されないことを確認した。また、上記に従って、化合物(A)を基準とした中間体化合物(1)の収率を算出したところ、66.6モル%であった。
【0076】
(実施例2)
trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸に代えて、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドを原料として用いる合成方法に変更することで反応液を得て、中間体化合物(1)及び化合物(2)を含有する混合物2を製造した。反応スキームは以下の通りであった。なお、以下のスキーム中、「THF」はテトラヒドロフランを意味する。
<工程(A1)>
まず、温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド10.0g(47.83mmol)と親水性有機溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)100mlを加えた。そこへ、ヒドロキシ化合物である4−(6−アクリロイルオキシ−ヘクス−1−イルオキシ)フェノール(DKSH社製)12.04g(45.55mmol)を加え、反応器を氷浴に浸して反応液内温を0℃とした。次いで、塩基であるトリエチルアミン4.83g(47.83mmol)を、反応液内温を10℃以下に保持しながら、5分間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、全容を10℃以下に保持しながら1時間さらに攪拌した。
<工程(A2)>
工程(A1)にて得られた反応液に、酸性緩衝溶液として、実施例1と同様にして調製した1mol/L酢酸‐酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH:5.5)150mlをゆっくり滴下した。滴下終了後、そのまま2時間撹拌しスラリーを得た。<ろ過工程>
得られたスラリーをろ過して、ろ物(固体)をメタノール/水=1/1(質量比)の混合溶媒で洗浄した。洗浄後の固体を真空乾燥機で乾燥させて、白色固体として混合物2を17.09g得た。
<評価>
得られた白色固体(結晶)について、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
(実施例3)
中間体化合物(1)及び化合物(2)を含有する混合物3を、以下のスキームに従って製造した。本実施例では、実施例1の工程(A1)と同様の工程(B1)と、以下に詳述する工程(B2)(B3)、並びに、第1、第2のろ過及び洗浄工程を経て混合物3を製造した。なお、以下のスキーム中、「NaOHaq.」は、水酸化ナトリウム水溶液を、「HClaq.」は、塩酸水溶液を、それぞれ意味する。
<工程(B1)>
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸41.2g(239mmol)と、親水性有機溶媒であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gを加えて溶液を得た。得られた溶液に、式(A)で表されるヒドロキシ化合物である4−(6−アクリロイルオキシ−ヘクス−1−イルオキシ)フェノール(DKSH社製)12.64g(47.83mmol)、塩基である4−(ジメチルアミノ)ピリジン643mg(5.26mmol)を加えた。この溶液に、縮合剤である1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩11.0g(57.4mmol)を1時間かけてゆっくり滴下した。その後全容を15時間撹拌して、室温(JIS Z 8703)にてエステル化反応を行った。
<工程(B2)>
工程(B1)で得られた反応液に対して、別途調製した、塩基性化合物である水酸化ナトリウム2.4g(60mmol)と蒸留水165mlからなる塩基性水溶液をゆっくり滴下した。その後2時間撹拌を行い、析出物を得た。
<第1ろ過及び洗浄工程>
工程(B2)で得た析出物を、ろ過により回収し、ろ物を水で洗浄して固体を得た。得られた固体を真空乾燥機で乾燥させて、化合物(1’)を含む白色固体18.9gを得た。得られた白色固体について、赤外分光分析により赤外線吸収スペクトルを取得した。結果を
図2に示す。波数1550cm
-1付近に生成するカルボン酸アニオン(COO
-)のピーク(
図2においては、波数1553.77cm
-1のピーク)を検出することにより、白色固体中に化合物(1’)が含まれることを確認した。また、比較のため、本実施例にかかる製造方法により得られた混合物3についても、赤外線吸収スペクトルを取得した。結果を
図1に示す。
図1より明らかなように、混合物3の赤外線吸収スペクトルには、波数1550cm
-1付近にピークが確認されず、混合物3にはカルボン酸アニオン(COO
-)が含有されなかったことが分かる。
<工程(B3)>
上記第1ろ過及び洗浄工程にて得られた白色固体18.9gを親水性有機溶媒であるテトラヒドロフラン50gに再溶解して溶液を得た。この溶液に対して、酸性水溶液である1.0mol/Lの濃度の塩酸水溶液70gをゆっくりと滴下して、滴下終了後1時間撹拌して固体を析出させた。なお、滴下に用いた塩酸水溶液のpHを、ポータブル型pHメーターD−71型(株式会社堀場製作所製)を用いて測定したところ、pH=1であった。
<第2ろ過及び洗浄工程>
上記工程(B3)で析出させた固体をろ過して、ろ物を水で洗浄した。得られた固体を真空乾燥機で乾燥させて白色固体として混合物3を17.96g得た。
<評価>
得られた白色固体(結晶)について、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
(実施例4)
中間体化合物(1)及び化合物(2)を含有する混合物4を、以下のスキームに従って製造した。本実施例では、工程(B3)にて使用する酸性水溶液として、塩酸水溶液70gに代えて、実施例1と同様にして調製した1mol/L酢酸‐酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH:5.5)100mlを用いた以外は実施例3と同様の操作を行った。
<第2ろ過及び洗浄工程>
第2ろ過及び洗浄工程にて、実施例3と同様の操作を行ったところ、白色固体として得られた混合物4は、18.04gであった。
<評価>
得られた白色固体(結晶)について、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例5)
本実施例では、主として、工程(B1)をtrans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドを用いる合成方法に変更した点、工程(B2)で用いる塩基性化合物及び蒸留水の量を少なくした点、及び工程(B3)にて用いる酸性水溶液の使用量を少なくした点において実施例3と異なる処理をして、混合物5を製造した。反応スキームは以下の通りであった。
<工程(B1)>
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド10.0g(47.83mmol)とテトラヒドロフラン(THF)50mlを加えた。そこへ、ヒドロキシ化合物である4−(6−アクリロイルオキシ−ヘクス−1−イルオキシ)フェノール(DKSH社製)12.04g(45.55mmol)を加え、反応器を氷浴に浸して反応液内温を0℃とした。次いで、塩基であるトリエチルアミン4.83g(47.83mmol)を、反応液内温を10℃以下に保持しながら、5分間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、全容を10℃以下に保持しながら1時間さらに攪拌した。
<工程(B2)>
工程(B1)で得られた反応液に対して、別途調製した、塩基性化合物である水酸化ナトリウム0.48g(12mmol)と蒸留水40mlからなる塩基性水溶液をゆっくり滴下した。その後2時間撹拌を行った後、ろ過を行い、析出物を回収した。
<第1ろ過及び洗浄工程>
工程(B2)で得た析出物をろ過し、ろ物をメタノール/水=1/1(質量比)の混合溶媒で洗浄して固体を得た。得られた固体を真空乾燥機で乾燥させて、化合物(1’)を含む白色固体17.85gを得た。得られた白色固体について、実施例3と同様の赤外線分光分析を行い、白色固体中に化合物(1’)が含まれることを確認した。
<工程(B3)>
上記第1ろ過及び洗浄工程にて得られた白色固体17.85gを親水性有機溶媒であるテトラヒドロフラン50gに再溶解した。この溶液に対して、酸性水溶液である0.5mol/Lの濃度の塩酸水溶液50gをゆっくりと滴下して、滴下終了後1時間撹拌して固体を析出させた。
<第2ろ過及び洗浄工程>
上記工程(B3)で析出させた固体をろ過して、ろ物をメタノール/水=1/1(質量比)の混合溶媒で洗浄した。得られた固体を真空乾燥機で乾燥させて白色固体として混合物5を17.07g得た。
<評価>
得られた白色固体(結晶)について、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例6)
本実施例では、工程(B3)にて用いる酸性水溶液として、塩酸水溶液に代えて1mol/L酢酸‐酢酸ナトリウム緩衝溶液を用いた以外は、実施例5と同様の操作を行い、混合物6を製造した。以下、実施例5と異なる操作を行った工程及び異なる量の生成物について操作を行った工程について説明する。反応スキームは以下の通りであった。
<工程(B3)>
実施例5と同様の第1ろ過及び洗浄工程にて得られた白色固体17.85gをテトラヒドロフラン50gに再溶解した。この溶液に実施例1と同様にして調製した酢酸‐酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH:5.5)100mlをゆっくり滴下して、滴下終了後、1時間分撹拌して固体を析出させた。
<第2ろ過及び洗浄工程>
上記工程(B3)で析出させた固体をろ過して、ろ物をメタノール/水=1/1(質量比)の混合溶媒で洗浄した。得られた固体を真空乾燥機で乾燥させて白色固体として混合物6を17.04g得た。
<評価>
得られた白色固体(結晶)について、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
(実施例7)
本実施例では、工程(B2)で用いる、塩基性化合物である水酸化ナトリウム及び蒸留水の添加量を変更した点以外は実施例3と同様の操作を行い、混合物7を製造した。以下、実施例3と異なる操作を行った工程及び異なる量の生成物について操作を行った工程について説明する。反応スキームは以下の通りであった。
<工程(B2)>
実施例3と同様の工程(B1)で得られた反応液に対して、別途調製した、塩基性化合物である水酸化ナトリウム18g(450mmol)と蒸留水500mlからなる塩基性水溶液をゆっくり滴下した。その後2時間撹拌を行った後、ろ過を行い、析出物を回収した。
<第1ろ過及び洗浄工程>
工程(B2)で得た析出物をろ過し、ろ物をメタノール/水=1/1(質量比)の混合溶媒で洗浄して固体を得た。得られた固体を真空乾燥機で乾燥させて、化合物(1’)を含む白色固体18.9gを得た。得られた白色固体について実施例3と同様の赤外分光分析を行い、化合物(1’)が含まれることを確認した。
<工程(B3)>
上記第1ろ過及び洗浄工程にて得られた白色固体18.9gを親水性有機溶媒であるテトラヒドロフラン50gに再溶解し溶液を得た。この溶液に対して、1.0mol/Lの濃度の塩酸水溶液70gをゆっくりと滴下して、滴下終了後1時間撹拌して固体を析出させた。
<第2ろ過及び洗浄工程>
上記工程(B3)で析出させた析出した固体をろ過して、ろ物をメタノール/水=1/1(質量比)の混合溶媒で洗浄した。得られた固体を真空乾燥機で乾燥させて白色固体として混合物7を17.95g得た。
<評価>
得られた白色固体(結晶)について、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
(実施例8)
本実施例では、工程(B3)にて用いる酸性水溶液として、塩酸水溶液に代えて1mol/L酢酸‐酢酸ナトリウム緩衝溶液を用いた以外は、実施例7と同様の操作を行い、混合物8を製造した。以下、実施例7と異なる操作を行った工程について説明する。反応スキームは以下の通りであった。
<工程(B3)>
実施例7と同様の上記第1ろ過及び洗浄工程により得られた固体18.9gを親水性有機溶媒であるテトラヒドロフラン50gに再溶解した。この溶液に対して、実施例1と同様にして調製した酢酸‐酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH:5.5)100mlをゆっくり滴下して、滴下終了後、1時間分撹拌して固体を析出させた。
<第2ろ過及び洗浄工程〜評価>
上記工程(B3)で析出させた固体に対して、実施例7と同様の操作を行い、混合物8を18.11g得て、得られた混合物8について、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例9)
本実施例では、工程(B2)で用いる塩基性化合物及び蒸留水の量を表1に示すように変更した以外は実施例5と同様の操作を行い、混合物9を製造した。反応スキームは実施例5と同様であり、以下の通りであった。
<工程(B2)>
実施例5と同様の工程(B1)で得られた反応液に対して、別途調製した、塩基性化合物である水酸化ナトリウム2.4g(60mmol)と蒸留水50mlからなる塩基性水溶液をゆっくり滴下した。その後2時間撹拌を行った後、ろ過を行い、析出物を回収した。
<第1ろ過及び洗浄工程>
工程(B2)で得た析出物をろ過し、ろ物をメタノール/水=1/1(質量比)の混合溶媒で洗浄した。得られた固体を真空乾燥機で乾燥させて、化合物(1’)を含む白色固体18.1gを得た。得られた白色固体について、実施例3と同様の赤外線分光分析を行い、白色固体中に化合物(1’)が含まれることを確認した。
<工程(B3)〜評価>
上記第1ろ過及び洗浄工程にて得られた白色固体18.1gについて、実施例5と同様の処理を行い、混合物9を17.16g得て、得られた混合物9について、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例10)
本実施例では、工程(B3)にて用いる酸性水溶液として、塩酸水溶液に代えて1mol/L酢酸‐酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH:5.5)100mlを用いた以外は、実施例9と同様の操作を行い、混合物10を17.19g得た。そして、得られた混合物10について、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。反応スキームは以下の通りであった。
【0085】
(実施例11)
本実施例では、実施例1と同様の工程(A1)を行った後に、下記の工程(A1−1)を行い、混合物11を製造した。反応スキームは以下の通りであった。
<工程(A1−1)>
実施例1と同様の工程(A1)にて得られた溶液に、蒸留水500mlをゆっくり滴下した。その後30分間撹拌を行った後、ろ過を行い、ろ物をメタノール/水=1/1(質量比)の混合溶媒で洗浄した。得られた固体を真空乾燥機で乾燥させて、中間体化合物(1)を含む白色固体18.43gを得た。
<工程(A2)>
工程(A1−1)で得られた白色固体18.43gをテトラヒドロフラン50gに再溶解した。この溶液に対して、実施例1と同様にして調製した1mol/L酢酸‐酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH:5.5)500mlをゆっくり滴下して、滴下終了後、1時間分撹拌し、固体を析出させた。
<ろ過工程>
析出させた固体をろ過して、ろ物をメタノール/水=1/1(質量比)の混合溶媒で洗浄した。洗浄後の固体を真空乾燥機で乾燥させて白色固体として混合物11を18.03g得た。
<評価>
得られた白色固体(結晶)について、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例12)
本実施例は、以下に記載するように、主として、工程(A1)をtrans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドを用いる合成方法とした点、工程(A1−1)にて、滴下する蒸留水の量を50mlに変更した点、さらに、工程(A2)にて使用する酸性緩衝溶液の量を少なくした点にて、実施例11と異なる処理を行って、混合物12を得た。得られた混合物12については、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。反応スキームは以下の通りであった。
<工程(A1)>
温度計を備えた3口反応器に、窒素気流中、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド10.0g(47.83mmol)と親水性有機溶媒であるテトラヒドロフラン(THF)50mlとを加えた。そこへ、ヒドロキシ化合物である4−(6−アクリロイルオキシ−ヘクス−1−イルオキシ)フェノール(DKSH社製)12.04g(45.55mmol)を加え、反応器を氷浴に浸して反応液内温を0℃とした。次いで、塩基であるトリエチルアミン4.83g(47.83mmol)を、反応液内温を10℃以下に保持しながら、5分間かけてゆっくり滴下した。滴下終了後、全容を10℃以下に保持しながら1時間さらに攪拌した。
<工程(A1−1)>
上記工程(A1)にて得られた溶液に、蒸留水50mlをゆっくり滴下した。その後30分間撹拌を行った後、ろ過を行い、ろ物をメタノール/水=1/1(質量比)の混合溶媒で洗浄した。得られた固体を真空乾燥機で乾燥させて、中間体化合物(1)を含む白色固体17.50gを得た。
<工程(A2)>
工程(A1−1)で得られた白色固体17.50gをテトラヒドロフラン50gに再溶解した。この溶液に対して実施例1と同様にして調製した1mol/L酢酸‐酢酸ナトリウム緩衝溶液(pH:5.5)100mlをゆっくり滴下して、滴下終了後、1時間分撹拌し固体を析出させた。
<ろ過工程>
析出させた固体をろ過して、ろ物をメタノール/水=1/1(質量比)の混合溶媒で洗浄した。洗浄後の固体を真空乾燥機で乾燥させて白色固体として混合物12を17.16g得た。
【0087】
表1において、
「CYDA」は、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を、
「CYDA−Cl」は、trans−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライドを、
「NMP」は、N‐メチル‐2‐ピロリドンを、
「THF」は、テトラヒドロフランを、
「AcOH/AcONa」は酢酸‐酢酸ナトリウム水溶液を、
それぞれ意味する。
【0088】
【表1】
【0089】
以上、実施例1〜12について詳述したように、上記スキーム中一般式(A)で示す特定構造を有するヒドロキシ化合物を特定のジカルボン酸エステル化合物でエステル化して、特定構造のモノエステル化合物を含む反応生成物を得る工程と、得られた反応生成物と、少なくとも、酸性緩衝溶液、又は塩基性化合物とを混合する工程とを含む本発明の製造方法によれば、得られる混合物中におけるジエステル化合物及び未反応物の含有量が少なく、中間体化合物が高品質であったことが分かる。また、実施例1〜12に詳述した各製造方法では、各工程における操作の操作性が良好であり、製造効率に優れていた。さらに、実施例1〜12に詳述した各製造方法によれば、高い収率で中間体化合物が得られており、製造効率に優れていたことが分かる。
また、特に実施例3〜10にかかる本発明の製造方法では、特に、第2ろ過及び洗浄工程におけるろ過性に優れており、高い製造効率で中間体化合物(1)を含む混合物を製造することができた。
さらに、実施例3〜10にかかる本発明の製造方法では、途中段階で化合物(1’)を経て、高品質な中間体化合物を製造することができた。
【解決手段】有機溶媒中、式:Q−OH(式中、Qは置換基を有していてもよい有機基を表す。)で表されるヒドロキシ化合物と、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド及び/又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とを反応させて、下記式(I)で表されるモノエステル化合物(式中、Aは水酸基または、塩素原子を表し、Qは前記と同じ意味を表す。)、並びに、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド及び/又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含む反応生成物を得る工程(A1)と、反応生成物を酸性緩衝溶液と混合する工程(A2)を含む、化合物の製造方法。