(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態について、
図1〜
図11を参照して説明する。
図1に示すように、洗濯乾燥機1(衣類乾燥機に相当)は、外箱2、水槽3、回転槽4、モータ5および扉6を備えている。なお、本実施形態において、外箱2に対して扉6側を洗濯乾燥機1の前側とする。洗濯乾燥機1は、洗濯機能およびヒートポンプ方式の乾燥機能を有している。洗濯乾燥機1は、回転槽4の回転軸が設置面に対して水平または若干傾斜したいわゆるドラム式洗濯乾燥機である。
【0010】
本実施形態において、洗濯乾燥機1は、主要行程として、衣類を洗剤洗いする洗い行程と、洗剤洗いされた衣類をすすぎ洗いするすすぎ行程と、洗濯行程後の濡れた衣類を脱水する脱水行程と、脱水行程後の衣類を乾燥させる乾燥行程とを備えている。洗濯乾燥機1では、各行程を単独で実行することも可能であるが、各行程を一連で実行することも可能である。使用者は、洗濯運転、乾燥運転、および洗濯乾燥運転の中から任意の運転を選択することができる。
【0011】
外箱2は、鋼板などによってほぼ矩形の箱状に形成されている。水槽3は、外箱2の内部に収容され、外槽として機能する。回転槽4は、水槽3の内部に収容され、内槽として機能する。水槽3および回転槽4は、衣類を収容する乾燥室として機能するとともに洗濯槽を兼用する。すなわち、洗濯槽兼乾燥室を構成する水槽3および回転槽4は、洗濯行程の際には洗濯槽として機能し、乾燥行程の際には乾燥室として機能する。
【0012】
水槽3および回転槽4は、いずれも円筒状に形成されている。水槽3は、円筒状の一方の端部に開口部7が形成され、他方の端部に水槽端板8が設けられている。開口部7は、傾斜した水槽3において水槽端板8よりも上側に位置している。同様に、回転槽4は、円筒状の一方の端部に開口部9が形成され、他方の端部に回転槽端板10が設けられている。開口部9は、傾斜した回転槽4において回転槽端板10よりも上側に位置している。回転槽4の開口部9は、水槽3の開口部7に周囲を覆われている。
【0013】
水槽3は、排気口11および給気口12を有している。排気口11は、水槽3の筒状部分を構成する周壁にあって上部前寄り部分に設けられている。給気口12は、水槽端板8にあって、水槽端板8の中心よりやや上寄り部分に設けられている。排気口11および給気口12は、水槽3の内部と外部とを連通している。
【0014】
また、水槽3は、重力方向の下方に位置する底部の後端側に排水部13を有している。排水部13は、排気口11および給気口12の下方に位置している。排水部13は、排水口14、排水弁15および排水ホース16から構成されている。排水弁15が開放されることにより、水槽3内の水は、排水口14から排水弁15および排水ホース16を経由して洗濯乾燥機1の外部へ排出される。
【0015】
回転槽4は、複数の孔17および複数の連通口18を有している。孔17および連通口18は、回転槽4の内部と外部とを連通している。孔17は、回転槽4の円筒状の筒状部分を構成する周壁の全域に形成されている。連通口18は、回転槽端板10の全域に形成されている。孔17および連通口18は、洗濯行程および脱水行程において主に水が出入りする通水孔として機能し、乾燥行程において空気が出入りする通風孔として機能する。なお、
図1では、簡単のため複数の孔17および連通口18のうち一部のみを示している。また、詳細は図示しないが、回転槽4には、筒状部分の内側に複数のバッフルが設けられている。バッフルは、回転槽4の内側に収容された洗濯物を撹拌する。
【0016】
モータ5は、水槽3の外側にあって水槽端板8に設けられている。モータ5は、例えばアウターロータ型のDCブラシレスモータである。モータ5の軸部19は、水槽端板8を貫いて水槽3の内側へ突出し、回転槽端板10の中心部に固定されている。これにより、モータ5は、水槽3に対して回転槽4を相対的に回転させる。この場合、軸部19、回転槽4の回転軸、および水槽3の中心軸は、それぞれ一致している。
【0017】
扉6は、図示しないヒンジを介して外箱2の外面側に設けられている。扉6は、ヒンジを支点に回動し、外箱2の前面に形成された図示しない開口部を開閉する。外箱2に形成された開口部は、ベローズ20によって、水槽3の開口部7に接続されている。衣類などの洗濯物は、扉6を開放した状態で、開口部7、9を通して回転槽4内に出し入れされる。外箱2の前面上部には操作パネル21が設けられており、これは
図4に示す表示部21aおよび操作部21bを有する。
【0018】
洗濯乾燥機1は、
図4に示す制御装置22や表示部21a、操作部21bおよび
図2に示す給水装置23を備えている。制御装置22は、詳細は図示しないが、マイクロコンピュータなどから構成されており、洗濯乾燥機1の作動全般を制御する。表示部21aおよび操作部21bは、
図4に示すように、制御装置22に接続されている。表示部21aは、液晶表示パネルなどから構成され、各種設定事項、運転内容などを表示する。操作部21bは、各種キーから構成されている。使用者は、操作部21bを操作することによって運転コースの選択など各種設定を行う。
【0019】
給水装置23は、
図2に示すように、給水ケース24、給水弁25および給水ホース26などから構成されている。給水弁25は、制御装置22に接続され、制御装置22の制御を受けて開閉駆動される。給水ホース26は、一端が給水弁25に接続され、他端が水道などの外部の水源に接続されている。制御装置22は、給水弁25を開閉駆動することにより、水源からの水を、給水ホース26、給水弁25および給水ケース24を介して水槽3内へ供給する。
【0020】
洗濯乾燥機1は、
図3にも示すように循環風路27を備えている。循環風路27は、水槽3の外側において、排気口11と給気口12とを繋いでいる。具体的には、循環風路27は、排気ダクト28、フィルタ装置29、接続ダクト30、熱交換部31および給気ダクト32から構成されている。
【0021】
排気ダクト28は、
図1にも示すように、水槽3の排気口11とフィルタ装置29とを接続している。排気ダクト28は、例えば蛇腹状のホースで構成されている。フィルタ装置29は、外箱2の内側上部にあって、水槽3および回転槽4の上方に設けられている。フィルタ装置29内には、フィルタ33が設けられている。排気口11から排気された空気は、フィルタ装置29のフィルタ33を通過する際に、リントなどの異物が取り除かれる。
【0022】
フィルタ装置29は、接続ダクト30を介して熱交換部31の上流側に接続されている。熱交換部31は、外箱2の内側下部にあって、フィルタ装置29、水槽3および回転槽4の下方に設けられている。熱交換部31は、内部を通過する空気を除湿および加熱することで乾燥した温風を生成する。熱交換部31内には、蒸発器34および凝縮器35が設けられている。蒸発器34は、乾燥運転時における熱交換部31内の空気の流れに対して、凝縮器35よりも上流側に設けられている。蒸発器34および凝縮器35は、熱交換部31の外側に設けられた圧縮機36および減圧装置37とともに、ヒートポンプユニット38を構成する。熱交換部31内を通る空気は、蒸発器34によって冷却され、これにより除湿される。蒸発器34によって除湿された空気は、その後、凝縮器35によって加熱されて温風になる。
【0023】
ヒートポンプユニット38(ヒートポンプに相当)は、圧縮機36(コンプレッサに相当)を基準とした冷媒の流れ方向に対して順に凝縮器35、減圧装置37および蒸発器34を接続して構成されている。蒸発器34および凝縮器35は、例えば微小な間隔で設けられた多数のフィンを有する管で構成されており、この管の内部に冷媒を流すことで、フィン間を通る空気と冷媒との熱交換を行う。蒸発器34および凝縮器35は、熱交換器として機能する。
【0024】
圧縮機36は、圧送により冷媒を凝縮器35へ供給する。圧縮機36は、制御装置22に接続され、制御装置22の制御により駆動される。圧縮機36の駆動源となるモータ39(
図5参照)は、単相誘導モータにより構成されている。従って、圧縮機36は、いわゆるACコンプレッサからなるものである。圧縮機36は、インバータ制御により、その回転速度(モータの駆動周波数)を変更可能に構成されている(可変速運転)。制御装置22は、圧縮機36の回転速度を変更することで、圧縮機36から吐出される冷媒の供給圧力を変化させ、これにより凝縮器35の加熱能力および蒸発器34の冷却能力を変化させる。減圧装置37は、凝縮器35から出た高圧で液状の冷媒を、減圧して低圧の気液混合状態にする。減圧装置37は、例えば制御装置22の制御を受けて絞り開度が調整可能ないわゆる電動膨張弁などで構成されている。
【0025】
熱交換部31の下流側は、給気ダクト32を介して水槽3の給気口12に接続されている。熱交換部31と給気ダクト32との接続部分には、送風機40が設けられている。送風機40は、ヒートポンプユニット38とで乾燥手段に相当する乾燥装置41を構成している。送風機40は例えばターボファンなどで構成されている。送風機40は、制御装置22の制御によって回転数が変更可能に構成されている。送風機40は、熱交換部31内の空気を吸い込み、給気ダクト32側へ吐出する。これにより、
図1〜
図3の矢印で示すように、水槽3および循環風路27を循環する空気の流れが生じる。この場合、循環風路27内の空気の流れについて見ると、排気口11が最上流側となり、給気口12が最下流側となる。
【0026】
この構成において、乾燥運転のために圧縮機36および送風機40を駆動させると、熱交換部31内で除湿および加熱された温風は、送風機40の送風作用により、給気ダクト32を介して給気口12から水槽3内へ供給される。その後、温風は、主に連通口18から回転槽4内へ入り、回転槽4内の洗濯物から湿気を奪った後、主に孔17から回転槽4の外側へ出る。そして、湿気を含んだ空気は、排気口11から循環風路27に吸い込まれる。循環風路27に吸い込まれた空気は、まず排気ダクト28およびフィルタ装置29を通過する。このとき、衣類から出て空気中に含まれるリントは、フィルタ装置29内に設けられたフィルタ33によって捕集される。その後、接続ダクト30を介して熱交換部31へ流れる。このように、乾燥行程は、ヒートポンプユニット38および送風機40からなる乾燥装置41が作動することによって、水槽3と循環風路27との間で空気を循環させ、その空気を循環風路27内で除湿および加熱することにより行われる。
【0027】
図4に示すように、制御装置22には、モータ5に流れる電流を検出する電流センサ42、モータ5の回転速度を検出するモータ回転センサ43および水槽3内の水位を検出する水位センサ44が接続され、それらの検出信号が入力される。また、制御装置22には、モータ5、圧縮機36および送風機40の回転速度に係るデータテーブルなどが記憶された不揮発性記憶手段(EEPROMやフラッシュメモリなど)が設けられている。制御装置22は、入力された各種の検出信号、予め記憶されている制御プログラム、上記データテーブルなどに基づいて、各種の制御を実行する。
【0028】
圧縮機36のモータ39をインバータ制御するインバータ装置としては、例えば特開2010−57216号公報に記載されているような構成を用いることが好ましい。以下、モータ39を駆動するインバータ装置51について、
図5を参照して説明する。なお、前述した
図4においては、インバータ装置51の図示は省略している。また、本実施形態では、モータ39およびインバータ装置51により、圧縮機36を駆動するコンプレッサ駆動装置52が構成される。
【0029】
図5に示すように、直流電源53は、商用電源(AC100V 50/60Hz)である交流電源54から与えられる交流電力を直流電力に変換する。直流電源53は、リアクトル(図示略)、ダイオードをブリッジ状に接続してなる整流回路55および平滑用のコンデンサ56を備えている。直流電源53には、電流検出回路57を負側に介して、例えばIGBTやMOSFETなどの6個のスイッチング素子を3相ブリッジ接続した3アームの(3相の)インバータ回路58が接続されている。
【0030】
インバータ回路58は、直流電源53から与えられる直流電圧を3相の交流電圧に変換して出力する。電流検出回路57は、1つまたは複数のシャント抵抗を備えた構成を採用することができる。すなわち、電流検出回路57としては、3つのアームに流れる電流を個別に検出する構成でもよいし、任意の2つのアームに流れる電流を個別に検出する構成でもよいし、3つのアームに流れる電流を合わせて検出する構成(ワンシャント電流検出)でもよい。
【0031】
モータ39は、補助巻線にコンデンサが配置された単相交流電源によって動作する通常のコンデンサラン型の単相誘導モータから、コンデンサを排除した構成となっている。従って、モータ39の主巻線59mおよび補助巻線59aは、巻数や線径が異なる、いわゆる不平衡の状態である。主巻線59mおよび補助巻線59aの各一方の端子は、それぞれモータ39の主巻線端子Mおよび補助巻線端子Aとなっている。主巻線59mおよび補助巻線59aは、直列接続されており、それらの相互接続ノード(中性点)、つまり主巻線59mおよび補助巻線59aの各他方の端子はモータ39の共通端子Cとなっている。
【0032】
インバータ回路58の3相の出力端子のうち、U相の出力端子Uはモータ39の端子Cに、V相の出力端子Vはモータ39の端子Mに、W相の出力端子Wはモータ39の端子Aに接続されている。なお、本実施形態では、インバータ回路58の各相のうち、U相が第1の相に相当し、V相が第2の相に相当し、W相が第3の相に相当する。
【0033】
インバータ制御回路60(駆動制御回路に相当)は、電流検出回路57から与えられる検出信号に基づいて、インバータ回路58の各アームに流れる電流(各相電流)を検出する。インバータ制御回路60は、各相電流の検出結果、制御装置22から与えられる回転速度指令などに基づいて、モータ39への印加電圧を指令するためのパルス幅変調された駆動信号(PWM信号)を生成する。なお、上記駆動信号の生成は、都度演算または予めメモリなどに記憶されたデータを利用して行われる。生成された駆動信号は、駆動回路61を介してインバータ回路58の各スイッチング素子のゲートに与えられる。
【0034】
このような構成により、モータ39の端子M、AおよびCに、インバータ回路58の各相の出力電圧が供給され、モータ39が駆動される。また、上記構成において、インバータ制御回路60は、モータ39(圧縮機36)の回転速度(回転数)に応じて、インバータ回路58の各相出力の電圧波形を切り替えるようになっている。ただし、本実施形態では、モータ39の回転速度が駆動周波数に追従して変化する点を考慮し、インバータ制御回路60は、モータ39の回転速度に代えて駆動周波数を用いて、上記電圧波形の切り替えを行う。
【0035】
具体的には、インバータ制御回路60は、各相出力の電圧波形を、駆動周波数が比較的低い低速領域では第1パターンに設定し、駆動周波数が比較的高い高速領域では第2パターンに設定する。本実施形態では、モータ39の駆動周波数として、4つの設定値F1、F2、F3、F4(ただし、F1<F2<F3<F4)が設けられている(
図9〜
図11参照)。上記した低速領域とは、モータ39の起動時(駆動周波数がゼロのとき)から駆動周波数が設定値F2以下のときである。また、高速領域とは、駆動周波数が設定値F3以上のときである。
【0036】
続いて、インバータ回路58の各相出力の電圧波形およびモータ39への印加電圧の波形の各種パターンについて
図6〜
図8を参照しながら説明する。なお、
図6〜
図8に示す各波形は、インバータ回路58に与えられる直流電圧のピーク値(主回路電圧)を「1」として正規化されている。また、
図6〜
図8に示す各相出力の電圧波形は、実際にはPWM制御されたパルス状の波形(方形波)であるが、連続的な(アナログ的な)波形として表現している。
【0037】
モータ39の駆動周波数が低速領域であるときには、インバータ回路58の各相の端子U〜Wから、
図6または
図7に示すような波形(第1パターン)の電圧が出力される。なお、インバータ回路58におけるスイッチング動作によって、
図6、
図7および後述する
図8などに示すような波形を生成する手法は、周知であるため、ここではその説明を省略する。また、
図6〜
図8では、U相出力を実線、V相出力を一点鎖線、W相出力を幅広の破線、主巻線59mへの印加電圧を二点鎖線、補助巻線59aへの印加電圧を幅狭の破線で示している。
【0038】
図6の場合、モータ39の端子Mおよび端子Cの間(主巻線59mの端子間)に、主回路電圧と同等のp−p値(正の最大値から負の最大値までの値)の正弦波状の電圧が印加される。また、モータ39の端子Aおよび端子Cの間(補助巻線59aの端子間)に、主巻線59mの端子間に印加される電圧と同様の正弦波状であり、且つ位相が90度(電気角)異なる電圧が印加される。この場合、モータ39の主巻線59mおよび補助巻線59aの各端子間に印加される電圧の最大値(波高値)は「0.5」であり、実効値は約「0.35」となる。
【0039】
また、
図7の場合、モータ39の主巻線59mの端子間に、主回路電圧の√2倍のp−p値の正弦波状の電圧が印加される。また、モータ39の補助巻線59aの端子間に、主巻線59mの端子間に印加される電圧と同様の正弦波状であり、且つ位相が90度異なる電圧が印加される。この場合、モータ39の主巻線59mおよび補助巻線59aの各端子間に印加される電圧の最大値は約「0.7」であり、実効値は「0.5」となる。このように、モータ39の駆動周波数が低速領域であるときには、モータ39の主巻線59mおよび補助巻線59aに対し、2相の交流電圧が印加される。
【0040】
図8は、モータ39の駆動周波数が高速領域であるときにおける
図6相当図である。モータ39の駆動周波数が高速領域であるときには、インバータ回路58の各相の端子U〜Wから、
図8に示すような波形(第2パターン)の電圧が出力される。すなわち、このとき、端子Uおよび端子Vから、主回路電圧と同等のp−p値であり、且つ互いに逆位相の正弦波状の電圧が出力される。また、端子Wは、開放状態(スイッチング素子が上下ともオフした状態)であり、端子Wから電圧は出力されない。
【0041】
これにより、モータ39の主巻線59mの端子間に、主回路電圧の2倍のp−p値の正弦波状の電圧が印加される。なお、モータ39の補助巻線59aの端子間には、電圧は印加されない。この場合、モータ39の主巻線59mの端子間に印加される電圧の最大値(波高値)は「1」であり、実効値は約「0.7」となる。このように、モータ39の駆動周波数が高速領域であるときには、モータ39の主巻線59mに対し、単相の交流電圧が印加される。
【0042】
インバータ制御回路60は、駆動周波数が設定値F2およびF3の間を遷移する際、つまり駆動周波数が設定値F2より高く且つ設定値F3未満であるときの任意のタイミングで、上記電圧波形の切り替えを行う。これにより、モータ39の主巻線59mには、その起動時から駆動周波数が設定値F2以下に設定されているときに2相の交流電圧(
図6または
図7参照)が印加され、駆動周波数が設定値F3以上に設定されているときに単相の交流電圧(
図8参照)が印加される。なお、本実施形態では、上記任意のタイミングは、主巻線59mに流れる電流がゼロになるときとしている。主巻線59mに流れる電流は、例えば電流検出回路57から与えられる検出信号に基づいて求めることができる。
【0043】
従って、モータ39の主巻線59mに印加される電圧の実効値(コイル電圧とも称す)は、駆動周波数に応じて、
図9に示すように推移する。
図9では、主回路電圧を二点鎖線で示すとともに、2相および単相を切り替える本実施形態の構成におけるコイル電圧を実線で示している。また、
図9では、常に2相の交流電圧が印加される場合のコイル電圧を破線で示すとともに、常に単相の交流電圧が印加される場合のコイル電圧を一点鎖線で示している。
【0044】
以上説明した本実施形態の構成によれば、次のような作用および効果が得られる。
インバータ制御回路60は、モータ39の起動時から駆動周波数が設定値F2以下に設定されているとき(低速領域)には、2相の交流電圧がモータ39の主巻線59mおよび補助巻線59aに印加されるように、インバータ回路58の各相出力の電圧波形を設定する。これにより、従来技術と同様に、単相誘導モータであるモータ39を、所望する回転方向へと回転を開始するように、安定して起動することができる。
【0045】
モータ39が、ある程度の回転速度で回転をしている場合、補助巻線59aへの電圧印加を停止しても、その回転を維持することが可能である。そこで、本実施形態では、インバータ制御回路60は、駆動周波数が設定値F3以上に設定されているとき(高速領域)には、単相の交流電圧がモータ39の主巻線59mに印加されるように、インバータ回路58の各相出力の電圧波形を設定する(切り替える)。このようにすれば、モータ39が高速で回転される際、2相の交流電圧よりも最大値が大きい単相の交流電圧が主巻線59mに印加され、常に2相の交流電圧を印加する従来技術に比べて、主巻線59mに印加される電圧の実効値が高くなる。
【0046】
以下、このような本実施形態により、モータ39を高速領域で駆動する場合に得られる効果について、常に2相の交流電圧を印加する従来技術と対比して説明する。
図10および
図11は、モータの回転速度および出力トルクの関係を示している。なお、この場合、モータの制御は、駆動周波数および印加電圧を比例させる(V/Fを一定にする)V−F制御を採用している。
【0047】
従来技術の構成により、
図11に示すような負荷曲線(特性)を持つ圧縮機(コンプレッサ)のモータを駆動する場合、駆動周波数の設定値がF3からF4に切り替えられても(高くされても)、モータの回転速度が上昇しない(変化しない)。従来技術のように常に2相の交流電圧を印加する場合、モータの主巻線に印加される電圧の実効値が「0.35」または「0.5」と低くなるため、モータを高速で運転する際に十分な出力トルクが得られず、このような問題が生じる。
【0048】
これに対し、本実施形態の構成により、上記した従来技術の場合と同様の特性を持つ圧縮機36のモータ39を駆動する場合、駆動周波数の設定値がF2からF3に移行するときに電圧波形が単相に切り替えられる。そのため、駆動周波数の設定値がF3およびF4のときには、単相の交流電圧により主巻線59mに印加される電圧の実効値が「0.7」と高められ、モータ39を高速で運転する際に十分な出力トルクが得られる。従って、本実施形態の構成によれば、
図10に示すように、駆動周波数の設定値がF3からF4に切り替えられると、それに応じてモータ39(圧縮機36)の回転速度が上昇する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態の構成によれば、圧縮機36のモータ39として単相誘導モータを採用するとともに、そのモータ39を3相のインバータ回路58により駆動する構成とした上で、次のような制御が行われる。すなわち、インバータ制御回路60は、モータ39の回転速度(駆動周波数)が低速領域であるときには2相の交流電圧が主巻線59mおよび補助巻線59aに印加され、高速領域であるときには単相の交流電圧が主巻線59mに印加されるようにインバータ回路58の動作を制御する。これにより、圧縮機36ひいては洗濯乾燥機1の製造コストを安くすることができるとともに、圧縮機36の安定した起動の実現および高速運転を可能とすることができるという優れた効果が得られる。
【0050】
なお、本実施形態の構成では、モータ39の駆動周波数が高速領域であるときには、補助巻線59aへの電圧印加が行われないため、補助巻線59aはモータ39の出力トルクに寄与しない。しかし、補助巻線59aは、元々、モータ39の安定した起動を実現するために設けられたものであり、それにより得られる出力トルクは、主巻線59mに比べて小さい。従って、本実施形態の構成によれば、高速領域において補助巻線59aから得られるトルクが無いという点を差し引いても、従来技術に比べると、高速領域における出力トルクを高くすることができるため、前述したような効果が得られる。
【0051】
また、インバータ制御回路60は、モータ39の主巻線59mに流れる電流がゼロであるタイミングで、インバータ回路58の各相出力の電圧波形の切り替えを行う。モータ39の主巻線59mに流れる電流は、モータ39の出力トルクに最も寄与するものである。そのため、上記したように、主巻線59mに流れる電流がゼロであるときに電圧波形の切り替えが行われれば、波形切り替え時における出力トルクの変動が最小限に抑えられる。従って、本実施形態のように、インバータ回路58の各相出力の電圧波形を切り替える構成であっても、その切り替え時におけるモータ39の回転速度の変動を極力小さく抑えることが可能となる。
【0052】
(第2の実施形態)
インバータ制御回路60は、モータ39の駆動周波数が高速領域であるときに主巻線59mに対して単相の交流電圧が印加されるようにインバータ回路58の動作を制御すればよく、その際におけるインバータ回路58の各相出力の電圧波形は、適宜変更することができる。以下、モータ39の駆動周波数が高速領域であるときにおけるインバータ回路58の各相出力の電圧波形を変更した第2の実施形態について
図12を参照して説明する。
【0053】
本実施形態では、モータ39の駆動周波数が高速領域であるときには、インバータ回路58の各相の端子U〜Wから、
図12に示すような波形(第2パターン)の電圧が出力される。すなわち、このとき、端子Uから、主回路電圧と同等のp−p値の方形波状の電圧が出力される。また、端子Vから、主回路電圧の2倍のp−p値を持つ正弦波状の波形を次のように変形した波形の電圧が出力される。すなわち、端子Vから出力される電圧は、上記正弦波状の波形のうち正側の部分はそのままとし、負側の部分を、最大値(=主回路電圧)分だけ正方向にシフトした波形である。なお、端子Wは、第1の実施形態と同様に、開放状態であり、端子Wから電圧は出力されない。
【0054】
このように各相出力の電圧波形を変更した場合でも、第1の実施形態と同様に、モータ39の主巻線59mの端子間に、主回路電圧の2倍のp−p値の正弦波状の電圧が印加される。従って、本実施形態によっても、第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。さらに、本実施形態によれば、次のような効果も得られる。すなわち、この場合、端子Uからは、方形波状の電圧が出力される。そのため、U相のスイッチング素子は、ほとんどの期間において、オン固定またはオフ固定状態となる。これに対し、第1の実施形態では、U相のスイッチング素子は、PWM制御により正弦波状の電圧を出力するべく、常にスイッチング動作される。従って、本実施形態によれば、第1の実施形態に比べ、U相のスイッチング素子におけるスイッチング損失が低減されるという効果が得られる。
【0055】
(その他の実施形態)
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
洗濯乾燥機1は、水槽3および回転槽4が縦軸状に配置されるいわゆる縦軸形であってもよい。
コンプレッサ駆動装置52は、乾燥機能を備えた洗濯乾燥機1に限らず、ヒートポンプ式の乾燥機能を有する衣類乾燥機にも適用可能である。
【0056】
インバータ制御回路60は、ホールセンサなどの回転速度検出器を用いて検出されるモータ39の回転速度の検出値、ベクトル制御演算などにより推定されるモータ39の回転速度の推定値などに応じて各相出力の電圧波形を切り替える構成でもよい。
インバータ制御回路60は、主巻線59mに流れる電流が所定電流未満であるときに電圧波形の切り替えを行ってもよい。このようにしても、主巻線59mに流れる電流が所定電流未満に抑えられる分だけ、電圧波形の切り替え時におけるモータ39の回転速度の変動を小さく抑えることができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。