(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記一般式(1)
R
1nSiX
(4-n) (1)
(式中、R
1は同一又は異なる水素原子又は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価炭化水素基、Xはハロゲン原子、nは0〜3の整数であり、nが2又は3の時、R
1は互いに結合してこれらが結合するケイ素原子と共に炭素数2〜20の環を形成してもよい。)
で示されるハロシラン化合物と、下記一般式(2)
R
2R
3NH (2)
(式中、R
2、R
3は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価炭化水素基である。)
又は下記一般式(3)
【化1】
(式中、R
4はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の2価有機基である。)
で示されるアミノ基含有化合物を反応させ、シラザン化合物を製造する方法において、目的物と同じシラザン化合物を溶媒として用いることを特徴とするシラザン化合物の製造方法。
反応後、生成するアミノ基含有化合物のハロゲン化水素塩をアルカリ水溶液により溶解する工程、該アミノ基含有化合物をシラザン化合物を含む有機層から分離する工程を少なくとも含む請求項1〜3のいずれか1項記載のシラザン化合物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、撹拌を維持するためには大量の溶媒を使用しなければならず、また目的とするシラザン化合物を蒸留単離する場合には溶媒の分留工程が必要となり、煩雑な操作を必要とする。そのため、より効率的なシラザン化合物の製造方法が求められてきた。
本発明は、かかる要望に応えたもので、効率のよいシラザン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、ハロシラン化合物とアミノ基含有化合物を反応させてシラザン化合物を製造する方法において、上記反応により生成するシラザン化合物自身を溶媒として用いると、生成するアミノ基含有化合物のハロゲン化水素塩含有スラリーの流動性が向上し、その結果溶媒の使用量を減少することができ、しかも溶媒がシラザン化合物自身であるため、蒸留時の溶媒の分留工程が不要となり、効率よくシラザン化合物を製造することができることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
従って、本発明は下記に示すシラザン化合物の製造方法を提供する。
[1]
下記一般式(1)
R
1nSiX
(4-n) (1)
(式中、R
1は同一又は異なる水素原子又は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価炭化水素基、Xはハロゲン原子、nは0〜3の整数であり、nが2又は3の時、R
1は互いに結合してこれらが結合するケイ素原子と共に炭素数2〜20の環を形成してもよい。)
で示されるハロシラン化合物と、下記一般式(2)
R
2R
3NH (2)
(式中、R
2、R
3は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価炭化水素基である。)
又は下記一般式(3)
【化1】
(式中、R
4はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の2価有機基である。)
で示されるアミノ基含有化合物を反応させ、シラザン化合物を製造する方法において、目的物と同じシラザン化合物を溶媒として用いることを特徴とするシラザン化合物の製造方法。
[2]
前記シラザン化合物が、下記一般式(4)、
又は(5)
R
1nSi(NR
2R
3)
(4-n) (4)
(式中、R
1、R
2、R
3、nは上記と同様である。)
【化2】
(式中、R
1、R
4、nは上記と同様である。
)
で示されるシラザン化合物であることを特徴とする[1]記載のシラザン化合物の製造方法。
[3]
上記一般式(2)のR
2及びR
3が、
エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、又はデシル基である[1]又は[2]記載のシラザン化合物の製造方法。
[4]
反応後、生成するアミノ基含有化合物のハロゲン化水素塩をアルカリ水溶液により溶解する工程、該アミノ基含有化合物をシラザン化合物を含む有機層から分離する工程を少なくとも含む[1]〜[3]のいずれかに記載のシラザン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塗料添加剤、高分子変性剤、医薬品類や農薬類の合成中間体として有用なシラザン化合物を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のシラザン化合物の製造方法は、下記一般式(1)
R
1nSiX
(4-n) (1)
(式中、R
1は同一又は異なる水素原子又は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価炭化水素基、Xはハロゲン原子、nは0〜3の整数であり、nが2又は3の時、R
1は互いに結合してこれらが結合するケイ素原子と共に炭素数2〜20の環を形成してもよい。)
で示されるハロシラン化合物と、下記一般式(2)
R
2R
3NH (2)
(式中、R
2、R
3は水素原子又は炭素数1〜20の置換もしくは非置換の1価炭化水素基である。)
又は下記一般式(3)
【化5】
(式中、R
4はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の2価有機基である。)
で示されるアミノ基含有化合物を反応させ、シラザン化合物を製造する方法において、上記反応により生成するシラザン化合物自身を溶媒として用いるものである。
【0010】
ここで、上記一般式(1)、(2)におけるR
1、R
2、R
3は、水素原子又は炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基等の直鎖状のアルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、テキシル基、2−エチルヘキシル基等の分岐鎖状のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等が例示され、特にメチル基、エチル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が好ましい。また、炭化水素基の水素原子の一部又は全部が置換されていてもよく、該置換基としては、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、(イソ)プロポキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;シアノ基;アミノ基、炭素数2〜10のアシル基、トリクロロシリル基、各アルキル基又は各アルコキシ基が炭素数1〜5であるトリアルキルシリル基、ジアルキルモノクロロシリル基、モノアルキルジクロロシリル基、トリアルコキシシリル基、ジアルキルモノアルコキシシリル基もしくはモノアルキルジアルコキシシリル基が挙げられる。
【0011】
上記一般式(3)におけるR
4は、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜20の2価有機基であり、具体的にはメチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、メチルプロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、イソブチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、メチレンフェニレン基、メチレンフェニレンメチレン基等のアラルキレン基、3−オキサペンチレン基、3−アザペンチレン基、3−メチル−3−アザペンチレン基等の酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子含有アルキレン基が例示される。
【0012】
上記一般式(1)におけるハロゲン原子は、具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0013】
上記一般式(1)で示されるハロシラン化合物の具体例としては、ジメチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジエチルクロロシラン、エチルジメチルクロロシラン、ジエチルメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、トリプロピルクロロシラン、トリイソプロピルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン、ジt−ブチルメチルクロロシラン、トリt−ブチルクロロシラン、トリイソブチルクロロシラン、トリsec−ブチルクロロシラン、ヘキシルジメチルクロロシラン、テキシルジメチルクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、デシルジメチルクロロシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、シクロペンチルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、トリシクロペンチルクロロシラン、トリシクロヘキシルクロロシラン、ジメチルフェニルクロロシラン、メチルジフェニルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、t−ブチルジフェニルクロロシラン、ジt−ブチルフェニルクロロシラン、スチリルジメチルクロロシラン、2−シアノエチルジメチルクロロシラン、アセトキシプロピルジメチルクロロシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、クロロメチルジメチルクロロシラン、3−クロロプロピルジメチルクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルジメチルクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジメチルクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジメチルクロロシラン、ジクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、t−ブチルメチルジクロロシラン、ジt−ブチルジクロロシラン、ジイソブチルジクロロシラン、ジsec−ブチルジクロロシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、テキシルメチルジクロロシラン、オクチルメチルジクロロシラン、デシルメチルジクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、シクロペンチルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、ジシクロペンチルジクロロシラン、ジシクロヘキシルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、スチリルメチルジクロロシラン、2−シアノエチルメチルジクロロシラン、アセトキシプロピルメチルジクロロシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、クロロメチルメチルジクロロシラン、3−クロロプロピルメチルジクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルメチルジクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルメチルジクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、イソプロピルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、t−ブチルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、sec−ブチルトリクロロシラン、ヘキシルトリクロロシラン、テキシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、スチリルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、アセトキシプロピルトリクロロシラン、3−アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、クロロメチルトリクロロシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、1,2−ビス(ジメチルクロロシリル)エタン、1,2−ビス(メチルジクロロシリル)エタン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,6−ビス(ジメチルクロロシリル)ヘキサン、1,6−(メチルジクロロシリル)ヘキサン、1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサン、ビス(ジメチルクロロシリル)ノルボルナン、ビス(メチルジクロロシリル)ノルボルナン、ビス(トリクロロシリル)ノルボルナン、ジメチルブロモシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルブロモシラン、エチルジメチルブロモシラン、ジエチルメチルブロモシラン、トリエチルブロモシラン、ビニルジメチルブロモシラン、トリプロピルブロモシラン、トリイソプロピルブロモシラン、トリブチルブロモシラン、t−ブチルジメチルブロモシラン、ジt−ブチルメチルブロモシラン、トリt−ブチルブロモシラン、トリイソブチルブロモシラン、トリsec−ブチルブロモシラン、ヘキシルジメチルブロモシラン、テキシルジメチルブロモシラン、オクチルジメチルブロモシラン、デシルジメチルブロモシラン、オクタデシルジメチルブロモシラン、シクロペンチルジメチルブロモシラン、シクロヘキシルジメチルブロモシラン、トリシクロペンチルブロモシラン、トリシクロヘキシルブロモシラン、ジメチルフェニルブロモシラン、メチルジフェニルブロモシラン、トリフェニルブロモシラン、t−ブチルジフェニルブロモシラン、ジt−ブチルフェニルブロモシラン、スチリルジメチルブロモシラン、2−シアノエチルジメチルブロモシラン、アセトキシプロピルジメチルブロモシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルブロモシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルブロモシラン、ブロモメチルジメチルブロモシラン、3−ブロモプロピルジメチルブロモシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルジメチルブロモシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルジメチルブロモシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルジメチルブロモシラン、ジブロモシラン、メチルジブロモシラン、ジメチルジブロモシラン、エチルジブロモシラン、ジエチルジブロモシラン、ビニルメチルジブロモシラン、ジビニルジブロモシラン、プロピルメチルジブロモシラン、ジブチルジブロモシラン、t−ブチルメチルジブロモシラン、ジt−ブチルジブロモシラン、ジイソブチルジブロモシラン、ジsec−ブチルジブロモシラン、ヘキシルメチルジブロモシラン、テキシルメチルジブロモシラン、オクチルメチルジブロモシラン、デシルメチルジブロモシラン、オクタデシルメチルジブロモシラン、シクロペンチルメチルジブロモシラン、シクロヘキシルメチルジブロモシラン、ジシクロペンチルジブロモシラン、ジシクロヘキシルジブロモシラン、メチルフェニルジブロモシラン、ジフェニルジブロモシラン、t−ブチルフェニルジブロモシラン、スチリルメチルジブロモシラン、2−シアノエチルメチルジブロモシラン、アセトキシプロピルメチルジブロモシラン、3−アクリロキシプロピルメチルジブロモシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジブロモシラン、ブロモメチルメチルジブロモシラン、3−ブロモプロピルメチルジブロモシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルジブロモシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルメチルジブロモシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルメチルジブロモシラン、トリブロモシラン、メチルトリブロモシラン、エチルトリブロモシラン、ビニルトリブロモシラン、プロピルトリブロモシラン、イソプロピルトリブロモシラン、ブチルトリブロモシラン、t−ブチルトリブロモシラン、イソブチルトリブロモシラン、sec−ブチルトリブロモシラン、ヘキシルトリブロモシラン、テキシルトリブロモシラン、オクチルトリブロモシラン、デシルトリブロモシラン、オクタデシルトリブロモシラン、シクロペンチルトリブロモシラン、シクロヘキシルトリブロモシラン、フェニルトリブロモシラン、スチリルトリブロモシラン、2−シアノエチルトリブロモシラン、アセトキシプロピルトリブロモシラン、3−アクリロキシプロピルトリブロモシラン、3−メタクリロキシプロピルトリブロモシラン、ブロモメチルトリブロモシラン、3−ブロモプロピルトリブロモシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリブロモシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリブロモシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルトリブロモシラン、テトラブロモシラン、1,2−ビス(ジメチルブロモシリル)エタン、1,2−ビス(メチルジブロモシリル)エタン、1,2−ビス(トリブロモシリル)エタン、1,6−ビス(ジメチルブロモシリル)ヘキサン、1,6−(メチルジブロモシリル)ヘキサン、1,6−ビス(トリブロモシリル)ヘキサン、ビス(ジメチルブロモシリル)ノルボルナン、ビス(メチルジブロモシリル)ノルボルナン、ビス(トリブロモシリル)ノルボルナン等が例示される。
【0014】
また、上記一般式(2)で示されるアミノ基含有化合物の具体例としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、アリルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ベンジルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,6−ジアミノヘキサン、アニリン、トルイジン、キシリジン、ナフチルアミン、キシリレンジアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジアリルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジオクチルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチルアニリン、ジフェニルアミン等が例示される。
【0015】
また、上記一般式(3)で示されるアミノ基含有化合物の具体例としては、エチレンイミン、ピロリジン、ピペリジン、ピペコリン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、モルホリン、イミダゾール、トリアゾール、インドール等が例示される。
【0016】
本発明における目的物でもあり、反応に溶媒として用いられるシラザン化合物は、下記一般式(4)、(5)、(6)又は(7)で示されるシラザン化合物である。
R
1nSi(NR
2R
3)
(4-n) (4)
(式中、R
1、R
2、R
3、nは上記と同様である。)
【化6】
(式中、R
1、R
4、nは上記と同様である。)
【化7】
(式中、R
1、R
3は上記と同様であり、nは3である。)
【化8】
(式中、R
1、R
3は上記と同様であり、aは2〜20、好ましくは3〜10、より好ましくは3〜5の整数、nは2である。)
【0017】
本発明のハロシラン化合物の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、アミノ基含有化合物の反応に使用されるN−H結合1モルに対し、ハロシラン化合物のケイ素−ハロゲン原子結合換算で0.1〜4.0モル、特に0.2〜3.0モルの範囲が好ましい。
【0018】
本発明においては、上記一般式(1)で示されるハロシラン化合物と、上記一般式(2)又は上記一般式(3)で示されるアミノ基含有化合物を反応させる際に、反応により生成するシラザン化合物自身を溶媒として用いるものである。
【0019】
溶媒として使用されるシラザン化合物は、合成反応液から塩を除去したもの、蒸留生成したものいずれも使用可能であるが、得られるシラザン化合物の品質の点から蒸留生成したものを使用するのが好ましい。
【0020】
溶媒として使用されるシラザン化合物の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、アミノ基含有化合物の反応に使用されるN−H結合1モルに対し、0.1〜10モル、特に0.5〜5モルの範囲が好ましい。
【0021】
本発明のアミノ基含有化合物のシリル化反応においては、ハロゲン化水素が副生するが、これは上記一般式(2)又は上記一般式(3)で示されるアミノ基含有化合物自身を塩基として捕捉してもよく、他のアミン化合物を塩基として捕捉してもよい。他のアミン化合物としては上記一般式(2)又は上記一般式(3)で示されるアミノ基含有化合物の他、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリン、メチルイミダゾール、テトラメチルエチレンジアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等が例示される。
【0022】
他のアミン化合物の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、アミノ基含有化合物の反応に使用されるN−H結合1モルに対し、0.3〜10.0モル、特に0.5〜5.0モルの範囲が好ましい。
【0023】
上記反応は無触媒でも進行するが、反応速度を向上させる目的で触媒を用いることもできる。用いられる触媒としては、硫酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のスルホン酸化合物、塩酸、硝酸、及び上記酸の塩が例示される。
【0024】
触媒の使用量は特に限定されないが、反応性、生産性の点から、アミノ基含有化合物の反応に使用されるN−H結合1モルに対し0.0001〜0.1モル、特に0.001〜0.05モルの範囲が好ましい。
【0025】
上記反応の反応温度は特に限定されないが、0〜200℃、特に10〜180℃が好ましい。
【0026】
なお、本発明の目的を損なわない範囲でシラザン化合物自身以外の溶媒を添加することもできる。用い得る溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン系極性溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶媒等が例示される。これらの溶媒は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、その使用量はシラザン化合物溶媒1モルに対し、0.1〜10モル、特に0.5〜2モルが好ましい。
【0027】
反応終了後にはアミノ基含有化合物の塩酸塩が生じるが、これは反応液を濾過、又は水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等のアルカリ水溶液を添加し、分離する等の方法により除去できるが、アルカリ水溶液を添加するとアミノ基含有化合物のハロゲン化水素塩からアミノ基含有化合物が遊離し、アミノ基含有化合物が回収可能となるため、アルカリ水溶液を添加する方法を採用するのが好ましい。
【0028】
以上のようにして塩を除去した反応液からは、蒸留等の通常の方法で目的物を回収することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0030】
[実施例1]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、ジメチルジクロロシラン103.3g(0.8モル)、溶媒としてのビス(ジエチルアミノ)ジメチルシラン200g(0.99モル)、メタンスルホン酸0.38g(0.004モル)を仕込み、60℃に加熱した。内温が安定した後、ジエチルアミン245.6g(3.4モル)を3時間かけて滴下し、更にその温度で1時間撹拌した。室温まで冷却後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液400gを加え、有機層を分液、蒸留した。ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシランを沸点78℃/2.0kPaの留分として336.7g得た(ジメチルジクロロシラン換算での収率84%)。また、フラスコ内最大質量(20質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えた時のフラスコ内の総質量)に対するビス(ジエチルアミノ)ジメチルシランの収量は、フラスコ内最大質量1kgあたり144.0gであった。
【0031】
[比較例1]
溶媒をトルエン200gとした以外は実施例1と同様にして反応を行った。ジエチルアミン滴下途中で生成する塩により撹拌不能となり、トルエンを200g追加しなければならなかった。室温まで冷却後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液400gを加え、有機層を分液、蒸留した。トルエンを留去した後、ビス(ジエチルアミノ)ジメチルシランを沸点78℃/2.0kPaの留分として133.9g得た(ジメチルジクロロシラン換算での収率83%)。また、フラスコ内最大質量(20質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えた時のフラスコ内の総質量)に対するビス(ジエチルアミノ)ジメチルシランの収量は、フラスコ内最大質量1kgあたり116.5gであり、実施例1と比較して生産性が劣る結果となった。
【0032】
[実施例2]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、メチルフェニルジクロロシラン152.9g(0.8モル)、溶媒としてのビス(ジエチルアミノ)メチルフェニルシラン150g(0.57モル)、メタンスルホン酸0.38g(0.004モル)を仕込み、60℃に加熱した。内温が安定した後、ジエチルアミン245.6g(3.4モル)を3時間かけて滴下し、更にその温度で1時間撹拌した。室温まで冷却後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液400gを加え、有機層を分液、蒸留した。ビス(ジエチルアミノ)メチルフェニルシランを沸点126℃/0.4kPaの留分として325.9g得た(メチルフェニルジクロロシラン換算での収率83%)。
【0033】
[比較例2]
溶媒をキシレン150gとした以外は実施例2と同様にして反応を行った。ジエチルアミン滴下途中で生成する塩により撹拌不能となり、キシレンを180g追加しなければならなかった。室温まで冷却後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液400gを加え、有機層を分液、蒸留した。トルエンを留去した後、ビス(ジエチルアミノ)メチルフェニルシランを沸点82℃/1.0kPaの留分として174.0g得た(メチルフェニルジクロロシラン換算での収率82%)。
【0034】
[実施例3]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、メチルビニルジクロロシラン112.9g(0.8モル)、溶媒としてのビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン200g(0.93モル)、メタンスルホン酸0.38g(0.004モル)を仕込み、60℃に加熱した。内温が安定した後、ジエチルアミン245.6g(3.4モル)を3時間かけて滴下し、更にその温度で1時間撹拌した。室温まで冷却後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液400gを加え、有機層を分液、蒸留した。ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシランを沸点82℃/1.0kPaの留分として344.7g得た(メチルビニルジクロロシラン換算での収率83%)。
【0035】
[比較例3]
溶媒をトルエン200gとした以外は実施例3と同様にして反応を行った。ジエチルアミン滴下途中で生成する塩により撹拌不能となり、トルエンを200g追加しなければならなかった。室温まで冷却後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液400gを加え、有機層を分液、蒸留した。トルエンを留去した後、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシランを沸点82℃/1.0kPaの留分として140.4g得た(メチルビニルジクロロシラン換算での収率82%)。
【0036】
[実施例4]
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、トリエチルクロロシラン120.6g(0.8モル)、溶媒としてのジブチルアミノトリエチルシラン100g(0.41モル)、メタンスルホン酸0.38g(0.004モル)を仕込み、60℃に加熱した。内温が安定した後、ジブチルアミン217.0g(1.7モル)を3時間かけて滴下し、更にその温度で1時間撹拌した。室温まで冷却後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液200gを加え、有機層を分液、蒸留した。ジブチルアミノトリエチルシランを沸点86℃/0.4kPaの留分として304.5g得た(トリエチルクロロシラン換算での収率84%)。
【0037】
[比較例4]
溶媒をヘキサン100gとした以外は実施例4と同様にして反応を行った。ジブチルアミン滴下途中で生成する塩により撹拌不能となり、ヘキサンを100g追加しなければならなかった。室温まで冷却後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液200gを加え、有機層を分液、蒸留した。トルエンを留去した後、ジブチルアミノトリエチルシランを沸点86℃/0.4kPaの留分として161.1g得た(トリエチルクロロシラン換算での収率83%)。