(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体燃料粉砕装置が供給する微粉燃料を用いるボイラにおいては、運転負荷を増加させる際に、運転負荷を増加させる指令を行ってから、指令に応じた運転負荷となるまでに要する時間を短縮することが求められている。微粉燃料を用いるボイラの運転負荷は、固体燃料粉砕装置からボイラに排出される微粉燃料の量(排炭量)に応じて変化するので、運転負荷を増加させる指令に伴って固体燃料の供給量を増加させた後、指令に応じた排炭量となるまでに要する時間(出炭遅れ時間)を短縮することが求められる。特許文献1には、回転式分級器の回転数を調整することで、固体燃料の供給量を増加させてから、ボイラに供給される微粉燃料の量が増加するまでに要する時間を短縮する技術が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、回転式分級器の回転数を下げてやや粗い(粒径の大きい)微粉燃料を供給させることで排炭量を増加させるため、適切でない粒径の微粉燃料がボイラに供給されてしまう可能性がある。また、特許文献1では、固体燃料を乾燥させ、十分に粉砕するまでに要する時間を短くすることに関する対策がなされていない。特に、固体燃料として水分を多く含む高水分炭を用いる場合、固体燃料を乾燥させるのに要する熱量が多くなり、出炭遅れ時間が長くなってしまうという問題が顕著である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、固体燃料の供給量を増加させてからボイラに供給される微粉燃料の量が増加するまでに要する出炭遅れ時間を短縮した固体燃料粉砕装置および固体燃料粉砕方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を採用する。
本発明に係る固体燃料粉砕装置は、駆動部からの駆動力により回転する回転テーブルと、前記回転テーブルに固体燃料を供給する燃料供給部と、前記回転テーブル上の前記固体燃料を粉砕するローラと、前記ローラにより粉砕された前記固体燃料を所定粒径より小さい微粉燃料に分級する分級部と、前記ローラにより粉砕された前記固体燃料を前記分級部へ供給するための酸化性ガスを送風する送風部と、前記燃料供給部が前記回転テーブルに供給する前記固体燃料の供給量および前記送風部が送風する前記酸化性ガスの温度を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記酸化性ガスの温度を所定温度上昇させた後に前記固体燃料の供給量を所定量増加させるよう前記燃料供給部および前記送風部を制御する。
【0009】
本発明に係る固体燃料粉砕装置によれば、回転テーブルに供給される固体燃料の供給量を増加させる場合に、供給量を増加させる前に予め酸化性ガスの温度が所定温度上昇している。そのため、適切な所定温度を設定することにより、固体燃料の供給量が増加することに伴って増加する固体燃料を乾燥させるのに要する熱量を十分に確保し、出炭遅れ時間を短縮することができる。
【0010】
また、本発明の第1態様の固体燃料粉砕装置は、前記分級部にて分級された前記微粉燃料をボイラに供給する供給流路を備え、前記制御部は、前記供給流路に供給される前記微粉燃料を含む一次空気の温度が、前記供給量の増加が開始されてから所定期間に渡って上昇するように前記送風部を制御する。
このようにすることで、微粉燃料を含む一次空気の温度を一時的に上昇する程度にまで熱量を増加させ、出炭遅れ時間を短縮することができる。
【0011】
また、本発明の第2態様の固体燃料粉砕装置は、前記送風部が、第1温度の第1酸化性ガスを供給する第1ガス供給部と、前記第1温度より低温の第2温度の第2酸化性ガスを供給する第2ガス供給部とを有し、前記制御部が、前記第1ガス供給部が供給する前記第1酸化性ガスの供給量と前記第2ガス供給部が供給する前記第2酸化性ガスの供給量とを調整することにより、前記送風部が送風する前記酸化性ガスの温度を制御する。
【0012】
このようにすることで、第1温度の第1酸化性ガスの供給量と第1温度より低温の第2温度の第2酸化性ガスの供給量とを適切に調整し、粉砕された固体燃料を分級部へ供給するための酸化性ガスの温度を所定温度上昇させることができる。
【0013】
また、本発明
に係る固体燃料粉砕装置は、前記制御部が、前記所定温度を前記所定量に応じて設定する。
このようにすることで、固体燃料の増加量(所定量)に応じた適切な熱量が確保できるように所定温度が設定される。
【0014】
また、本発明の第4態様の固体燃料粉砕装置は、前記送風部から送風される前記酸化性ガスに不活性ガスを混合させる不活性ガス供給部を備える。
このようにすることで、粉砕された固体燃料と混合する酸化性ガスの温度が高く、固体燃料の自然発火の危険がある場合に、酸化性ガス中の酸素濃度を低めて自然発火の危険を抑制することができる。
【0015】
本発明に係る固体燃料粉砕方法は、回転テーブルに固体燃料を供給する燃料供給工程と、該燃料供給工程により前記回転テーブルに供給された前記固体燃料をローラにより粉砕する粉砕工程と、分級部により、該粉砕工程により粉砕された前記固体燃料を所定粒径より小さい微粉燃料に分級する分級工程と、前記粉砕工程により粉砕された前記固体燃料を前記分級部へ供給するための酸化性ガスを送風する送風工程と、を備え、前記送風工程は、前記燃料供給工程にて供給される前記固定燃料の供給量が所定量増加する場合に、該供給量の増加に先立って前記酸化性ガスの温度を
前記所定量に応じて設定される所定温度上昇させる。
【0016】
本発明に係る固体燃料粉砕方法によれば、回転テーブルに供給される固体燃料の供給量を増加させる場合に、供給量を増加させる前に予め酸化性ガスの温度が所定温度上昇している。そのため、適切な所定温度を設定することにより、固体燃料の供給量が増加することに伴って増加する固体燃料を乾燥させる熱量を十分に確保し、出炭遅れ時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、固体燃料の供給量を増加させてからボイラに供給される微粉燃料の量が増加するまでに要する出炭遅れ時間を短縮した固体燃料粉砕装置および固体燃料粉砕方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態の固体燃料粉砕装置および固体燃料粉砕方法について、図面を参照して説明する。
本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、ミル10と、給炭機20(燃料供給部)と、送風部30と、制御部40とを備えている。制御部40は、給炭機2がミル10に供給する固体燃料(石炭等)の供給量および送風部30が送風する空気(酸化性ガス)の温度を制御するように構成されている。
【0020】
制御部40は、給炭機2がミル10に供給する固体燃料の供給量を増加させる際に、送風部30が送風する空気の温度を上昇させた後に、固体燃料の供給量を増加させるよう給炭機2および送風部30を制御する。
このようにすることで、固体燃料の供給量が増加することに伴って増加する固体燃料を乾燥させるのに要する熱量を十分に確保し、出炭遅れ時間を短縮することができる。
【0021】
以下、固体燃料粉砕装置100を構成する各部と、固体燃料粉砕装置100から供給される微粉燃料を用いて燃焼を行って蒸気を発生させるボイラ200について説明する。
【0022】
固体燃料粉砕装置100が備えるミル10は、略円筒形状の中空のハウジング11と、ハウジング11内の下部に配置され、上下方向に延在する軸線周りに回転可能に取り付けられた回転テーブル12と、回転テーブル12の外周部に押圧され回転テーブル12と協働して固体燃料を粉砕するローラ13と、回転テーブル12を回転させる駆動部14を備える。
【0023】
また、ミル10は、ハウジング11内の上部に配置された分級部16と、ハウジング11の上端を貫通するように取り付けられ上部から投入される固体燃料を回転テーブル12の中央に供給する固体燃料投入部17とを備える。ハウジング11の下端部は流路50に連通しており、流路50からハウジング11の下端部に一次空気(一次酸化性ガス)が流入する。
【0024】
図1では、ローラ13が1つのみ示されているが、回転テーブル12の外周部を押圧するように、周方向に一定の間隔を空けて、複数のローラ13が配置される。例えば、外周部上に120°の角度間隔を空けて、3つのローラ13が配置される。この場合、3つのローラ13が回転テーブル12の外周部と接する部分(押圧する部分)は、回転テーブル12の中心からの距離が等距離となる。
【0025】
回転テーブル12の外側の複数箇所には、流路50から流入する一次空気をハウジング11内の回転テーブル12の上方の空間に流出させる酸化性ガス吹出口(不図示)が設けられている。酸化性ガス吹出口の上方にはベーン(不図示)が設置されており、ベーンは酸化性ガス吹出口から吹き出した一次空気に旋回力を与える。ベーンにより旋回力が与えられた一次空気は、旋回する速度成分を有する気流となって回転テーブル12上で粉砕された固体燃料をハウジング11の上方の分級部16へ導く。なお、一次空気に混合した固体燃料の粉砕物のうち、粒径の大きいものは分級部16まで到達することなく落下して回転テーブル12に再び戻される。
【0026】
分級部16は、略円筒形状のハウジング11の円筒軸を中心に回転するブレードを備えている。分級部16に到達した固体燃料の粉砕物は、回転するブレードと一次空気の流れにより生ずる遠心力と求心力の相対的なバランスにより、所定粒径より小さい微粉燃料のみがブレードの内部に流入し、出口18から流出する。出口18は供給流路60に連通している。出口18には温度センサ90が設けられている。温度センサ90は、出口18における一次空気の温度を検出し、制御部40に通知する。
分級部16のブレードは、モータ19により駆動力を与えられ、ハウジング11の円筒軸を中心に回転する。モータ19の回転は、制御部40からの指示によって制御される。
【0027】
固体燃料粉砕装置100が備える給炭機20は、ホッパ21と、搬送部22と、モータ23とを有する。搬送部22は、モータ23から与えられる駆動力によってホッパ21の下端部から排出される固体燃料を搬送し、ミル10の固体燃料投入部17に導く。制御部40は、モータ23への回転数指令を調整することにより、搬送部22が固体燃料を搬送する速度を制御することができる。ミル10に単位時間当たりに供給される固体燃料の量(給炭量)は、搬送部22が固体燃料を搬送する速度に比例したものとなる。
従って、制御部40は、搬送部22が固体燃料を搬送する速度を制御することにより、給炭量を調整することができる。
【0028】
固体燃料粉砕装置100が備える送風部30は、熱ガス送風機30aと、冷ガス送風機30bを備えている。熱ガス送風機30aおよび冷ガス送風機30bは、それぞれローラ13により粉砕された固体燃料を分級部16へ供給するための一次空気を送風する装置である。
熱ガス送風機30a、は熱交換器から供給される熱ガス(第1酸化性ガス)を吸入して送風する送風機である。また、冷ガス送風機30は、常温の外気である冷ガス(第2酸化性ガス)を吸入して送風する送風機である。
【0029】
制御部40は、熱ガス送風機30aの送風量と、冷ガス送風機30bの送風量をそれぞれ制御し、流路50に供給される一次空気の流量および温度を調整することができる。制御部40は、各送風機が備えるファンの回転数を調整することにより、それぞれの送風量を制御することができる。
流路50には、流路50を流通する一次空気の温度を検出する温度センサ70が設けられている。温度センサ70が検出する温度は、制御部40に伝達されるようになっている。したがって、制御部40は、流路50を流通する一次空気の温度が目標温度となるように、熱ガス送風機30aの送風量と、冷ガス送風機30bの送風量をそれぞれ制御することができる。
【0030】
固体燃料粉砕装置100は、窒素ガス供給部(不活性ガス供給部)80を備えている。窒素ガス供給部80は、窒素ガス供給源81と調整弁82とを有している。制御部40は、調整弁82を制御することにより、流路50に供給される一次空気に混入させる窒素ガス(不活性ガス)の量を調整することができる。一次空気に混入させる窒素ガス(不活性ガス)の量を調整することにより、一次空気に含まれる酸素の濃度を調整することができる。
【0031】
次に、固体燃料粉砕装置100から供給される微粉燃料を用いて燃焼を行って蒸気を発生させるボイラ200について説明する。
ボイラ200は、火炉210と、バーナ部220と、エコノマイザ230とを備えている。
【0032】
バーナ部220は、供給流路60から供給される微粉燃料を含む一次空気と、熱交換器(不図示)から供給される2次空気とを用いて微粉燃料を燃焼させる装置である。微粉燃料の燃焼は火炉210内で行われ、高温の燃焼ガスは、エコノマイザ230を通過した後にボイラ200の外部に排出される。
【0033】
ボイラ200から排出された燃焼ガスは、熱交換器(不図示)に送られ、外気との熱交換が行われる。熱交換器において燃焼ガスとの熱交換により加熱された外気は、前述した熱ガス送風機30aに送られる。
エコノマイザ230において加熱された水は、蒸発器(不図示)および過熱器(不図示)によって更に加熱されて蒸気となり、蒸気タービン(不図示)に送られる。
【0034】
ボイラ200から排出される前の燃焼ガスは、エコノマイザ230の上流側において抽気され、調整弁240に送られる。エコノマイザ230の上流側において抽気される燃焼ガスは、例えば、550℃程度の温度となっている。
また、ボイラ200から排出される前の燃焼ガスは、エコノマイザ230の下流側において抽気され、調整弁250に送られる。エコノマイザ230の下流側において抽気される燃焼ガスは、例えば、350〜400℃程度の温度となっている。
【0035】
エコノマイザ230の上流側および下流側で抽気される燃焼ガスの流量は、制御部40が調整弁240および調整弁250の開度を制御することにより、調整される。調整弁240および調整弁250を通過した燃焼ガスは、サイクロン260に送られる。サイクロン260は、燃焼ガスに含まれる粒子状物質等を除去し、調整弁270に燃焼ガスを送る。そして、調整弁270の開度に応じた流量の燃焼ガスが熱ガス送風機30aに送られる。
【0036】
制御部40は、エコノマイザ230の上流側で抽気される燃焼ガスの流量と、エコノマイザ230の下流側で抽気される燃焼ガスの流量とを調整することにより、例えば、350℃〜550℃の範囲で、サイクロン260に送られる燃焼ガスの温度を調整することができる。
また、制御部40は、調整弁270の開度を制御することにより、熱交換器(不図示)により加熱された外気に混入させる高温(350℃〜550℃の範囲)の燃焼ガスの流量を調整することができる。
【0037】
次に、ボイラ負荷が変更される場合に固体燃料粉砕装置100が実行する動作について
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の一実施形態の固体燃料粉砕装置100が実行する動作を示すフローチャートである。
図2に示す各処理は、制御部40が記憶部(不図示)に記憶された制御プログラムを読み出して実行することにより行われる。固体燃料粉砕装置100が実行する動作を説明する際に、
図3〜
図8を参照しながら説明する。
【0038】
ステップS201で、制御部40は、外部からボイラ200の負荷を変更するための変更指令を受信したかどうかを判定し、変更指令を受信した場合に処理をステップS202に進める。ボイラ負荷の変更指令は、本実施形態の固体燃料粉砕装置100およびボイラ200を備えるプラント全体を制御する主制御装置から受信する指令である。
【0039】
ステップS202で、制御部40は、ボイラ負荷の変更指令が、ボイラ負荷を増加させるための増加指令であるかどうかを判定し、増加指令である場合はステップS203に処理を進め、ボイラ負荷を減少させるための減少指令である場合はステップS206に処理を進める。
【0040】
ここで、ステップS203〜ステップS205の処理は、ボイラ200の負荷を増加させるために固体燃料粉砕装置100が実行する処理である。一方、ステップS206〜ステップS208の処理は、ボイラ200の負荷を減少させるために固体燃料粉砕装置100が実行する処理である。
固体燃料粉砕装置100は、ボイラ200の負荷を増加させるためにボイラ200に供給する単位時間あたりの微粉燃料の量(排炭量)を増加させ、ボイラ200の負荷を減少させるためにボイラ200に供給する単位時間あたりの微粉燃料の量(排炭量)を減少させる。
【0041】
ステップS203で、制御部40は、送風量の増加指示を熱ガス送風機30aに送信し、熱ガス送風機30aの送風量を増加させる。熱ガス送風機30aの送風量を増加させることにより、流路50からミル10に導かれる一次空気の温度を所定温度上昇させることができる。
ここで、制御部40は、熱ガス送風機30aが増加させる送風量を、例えば、温度センサ70が検知する現在の一次空気の温度と、ボイラ200の負荷の増加量とに基づいて設定される目標温度との差分となる温度(所定温度)に基づいて設定する。
【0042】
図6に示すように、制御部40は、時刻t0より早いタイミングから熱ガスの送風量をQhg0から一定の増加率で増加させ、時刻t1より早いタイミングで送風量がQhg1となるように熱ガス送風機30aを制御する。このようにすることで、
図5に示すように、ミル10に流入する一次空気の温度が時刻t0から一定の上昇率で上昇し、時刻t1で一次空気の温度がTin1となる。
制御部40が時刻t0より早いタイミングから熱ガスの送風量を増加させているのは、熱ガス送風機30aから送風された熱ガスを含む一次空気がミル10に到達するまでの時間遅れを埋め合わせるためである。
【0043】
制御部40は、熱ガスの送風量がQhg1となった後、時刻t2より早いタイミングで熱ガスの送風量がQhg3となるように、熱ガス送風機30aを制御する。その後、制御部40は、熱ガスの送風量をQhg3からQhg2まで減少させ、その後は送風量Qhg2が維持されるように熱ガス送風機30aを制御する。
【0044】
一方、
図7に示すように、制御部40は、時刻t1より遅いタイミングから冷ガスの送風量をQcg0から一定の増加率で増加させ、時刻t2と時刻t3の間のタイミングで冷ガスの送風量がQcg1となるように冷ガス送風機30bを制御する。
【0045】
以上のように熱ガス送風機30aおよび冷ガス送風機30bを制御することで、
図5に示すミル入口温度は、時刻t1におけるTin1から時刻t2におけるTin3まで一定の上昇率で上昇し、その後時刻t3におけるTin2まで低下する。時刻t3以降は、ミル入口温度がTin2に維持される。
【0046】
図4には、温度センサ90が検出するミル10の出口18における一次空気の温度(ミル出口温度)が示されている。
図4に示すように、ミル出口温度Toutは、時刻t0におけるTout0から時刻t1におけるTout1まで上昇し、その後は時刻t2に至るまでTout1が維持される。時刻t2におけるTout1は時刻t3に至るまで一定の低下率で低下し、Tout0となる。
【0047】
ここで、ミル出口温度Toutは、ボイラ200のバーナ部220に供給される微粉燃料の温度に対応するものである。ボイラ200における燃焼効率を一定に保つためには、一定の温度の微粉燃料を供給するのが望ましい。そこで、時刻t0以前と時刻t3以降では、Tout0が維持されるようにしている。一方、給炭量(固体燃料の供給量)を増加させてからボイラに供給される微粉燃料の量(排炭量)が増加するまでに要する出炭時間遅れを短縮するには、ミル10に供給される一次空気の温度を上昇させるのが望ましい。
そこで本実施形態では、制御部40が、出炭時間遅れを短縮するために時刻t0から時刻t3に至るまでの所定期間に渡って一時的にミル出口温度が上昇するように送風部30を制御する。
【0048】
なお、制御部40は、時刻t1から時刻t2の期間でのミル出口温度Tout1と時刻t0以前のミル出口温度Tout0の差分が、5℃〜10℃となるように熱ガス送風機30aを制御する。
また、制御部40は、ミル10に供給される一次空気が高温となってミル10の内部またはミル10からボイラ200に至る供給流路60で自然発火することを避けるために、窒素ガス供給部80を制御して流路50に供給する窒素ガスの流量を調整する。流路50に窒素ガスを供給し、一次空気に含まれる酸素濃度を低濃度(例えば、酸素と炭素のモル比が0.12より小さい濃度)とすることにより、微粉燃料が自然発火する危険が抑制される。
【0049】
ステップS204で、制御部40は、モータ23の回転数を上昇させる回転数指令をモータ23に送信し、モータ23の回転数を上昇させる。モータ23の回転数が上昇することにより、搬送部22が単位時間あたりにホッパ21からミル10の固体燃料投入部17に導く固体燃料の供給量(給炭量)が所定量増加する。
図3に示すように、制御部40は、時刻t1における給炭量Qc1を一定の増加率で増加させ、時刻t2おける給炭量をQc2とする。
【0050】
ステップS204で、制御部は、時刻t1より遅いタイミングから冷ガスの送風量をQcg0から一定の増加率で増加させ、時刻t2より遅いタイミングで送風量がQcg1となるように冷ガス送風機30bを制御する。冷ガス(常温の外気)の送風量を増加させているのは、給炭量が増加するのに比例するように、ミル10に供給する一次空気の供給量を増加させるためである。
【0051】
このように、制御部40は、ステップS203〜ステップS205の処理において、給炭量の増加が開始される時刻t1においてミル入口温度(ミル10に供給される一次空気の温度)が予め上昇するように送風部30を制御する。また、制御部40は、ミル入口温度を上昇させた後に給炭量を増加させるよう給炭機20を制御する。
このようにすることで、制御部40は、給炭量が増加する時点で、増加する給炭量に応じた熱量がミル10に十分に供給されるように固体燃料粉砕装置100を制御することができる。
【0052】
ステップS206で、制御部40は、モータ23の回転数を低下させる回転数指令をモータ23に送信し、モータ23の回転数を低下させる。モータ23の回転数が低下することにより、搬送部22が単位時間あたりにホッパ21からミル10の固体燃料投入部17に導く固体燃料の供給量(給炭量)が減少する。
【0053】
ステップS207で、制御部40は、送風量の減少指示を熱ガス送風機30aに送信し、熱ガス送風機30aの送風量を減少させる。熱ガス送風機30aの送風量を減少させることにより、流路50からミル10に導かれる一次空気の温度を所定温度低下させることができる。
ここで、制御部40は、熱ガス送風機30aが減少させる送風量を、例えば、温度センサ70が検知する現在の一次空気の温度と、ボイラ200の負荷の減少量とに基づいて設定される目標温度との差分となる温度に基づいて設定する。
【0054】
ステップS204で、制御部は、冷ガスの送風量を減少させるように冷ガス送風機30bを制御する。冷ガスの送風量を減少させているのは、給炭量が減少するのに比例するように、ミル10に供給する一次空気の供給量を減少させるためである。
【0055】
制御部40は、ステップS205またはステップS208の処理が終了すると、
図2に示す処理を終了させ、再び
図2に示す処理をステップS201から開始する。
【0056】
図8は、燃料の供給量の時間経過を示すグラフであり、本実施形態による排炭量の時間経過と本実施形態の比較例による排炭量の時間経過を示している。
図8において、実線は、給炭機20がミル10に供給する固体燃料の供給量(給炭量)の時間経過を示している。前述したように、給炭機20は、時刻t1から時刻t2に至るまで給炭量を増加させ、時刻t2以降は一定の給炭量を維持している。
【0057】
図8において2点鎖線は、本実施形態の比較例の排炭量を示すものである。本実施形態の比較例は、
図6に点線で示すように、時刻t0より遅いタイミングで熱ガス送風量の増加を開始させる例である。同様に、比較例は、
図7に示すように、時刻t0より遅いタイミングで冷ガス送風量の増加を開始させる冷である。この比較例によれば、
図5に点線で示すように、時刻t1におけるミル入口温度がTin0となっており、本実施形態での時刻t1におけるミル入口温度Tin1よりも低い。従って、比較例によれば、給炭量の増加が開始される時刻t1における一次空気の温度が給炭量の増加が開始される以前の温度と同じTin0となっている。
このような比較例によれば、
図8に示すように、給炭量の増加が開始される時刻t1においてミル10に供給される熱量が十分でなく、出炭遅れ時間が長くなってしまう。
それに対して、本実施形態によれば、
図8に点線で示すように、給炭量の増加を開始させる時刻t1の時点でミル10に供給される熱量が十分となっているため、比較例よりも出炭遅れ時間が短くなっている。
【0058】
次に、本実施形態の固体燃料粉砕装置100が行う固体燃料粉砕方法について説明する。本実施形態の固体燃料粉砕方法は、制御部40が固体燃料粉砕装置100を制御することにより実行される。
本実施形態の固体燃料粉砕方法は、給炭機20が回転テーブル12に固体燃料を供給する燃料供給工程と、ローラ13が回転テーブル12に供給された固体燃料を粉砕する粉砕工程と、分級部16が粉砕された固体燃料を所定粒径より小さい微粉燃料に分級する分級工程と、送風部30が粉砕された固体燃料を分級部16へ供給するための一次空気を送風する送風工程とを備える。
送風工程(
図2のステップS203)は、
図2で説明したように、回転テーブル12に供給される固体燃料の単位時間あたりの供給量が所定量増加する場合に、供給量の増加に先立って一次空気の温度を所定温度上昇させる。
【0059】
次に、以上で説明した本実施形態の固体燃料粉砕装置100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の固体燃料粉砕装置100によれば、回転テーブル12に供給される固体燃料の供給量を増加させる場合に、供給量を増加させる前に予め一次空気(酸化性ガス)の温度が所定温度上昇している。そのため、適切な所定温度を設定することにより、固体燃料の供給量が増加することに伴って増加する固体燃料を乾燥させるのに要する熱量を十分に確保し、出炭遅れ時間を短縮することができる。
【0060】
また、本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、分級部16にて分級された微粉燃料をボイラ200に供給する供給流路60を備え、制御部40は、供給流路60に供給される微粉燃料を含む一次空気の温度が、供給量の増加が開始されてから所定期間に渡って上昇するように前記送風部を制御する。
このようにすることで、微粉燃料を含む一次空気の温度を一時的に上昇する程度にまで熱量を増加させ、出炭遅れ時間を短縮することができる。
【0061】
また、本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、送風部30が、第1温度の熱ガス(第1酸化性ガス)を供給する熱ガス送風機30a(第1ガス供給部)と、第1温度より低温の第2温度の冷ガス(第2酸化性ガス)を供給する冷ガス送風機30b(第2ガス供給部)とを有する。そして、制御部40が、熱ガス送風機30aが供給する熱ガスの供給量と冷ガス送風機30bが供給する冷ガスの供給量とを調整することにより、送風部30が送風する一次空気の温度を制御する。
【0062】
このようにすることで、第1温度の熱ガスの供給量と第1温度より低温の第2温度の冷ガスの供給量とを適切に調整し、粉砕された固体燃料を分級部16へ供給するための一次空気の温度を所定温度上昇させることができる。
【0063】
また、本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、制御部40が、時刻t1におけるミル入口温度Tin1と時刻t0におけるミル入口温度Tin0との差分の温度(所定温度)を、時刻t2における給炭量Qc2と時刻t1における給炭量Qc1との差分の量(所定量)に応じて設定する。
このようにすることで、固体燃料の増加量(所定量)に応じた適切な熱量が確保できるように所定温度が設定される。
【0064】
また、本実施形態の固体燃料粉砕装置100は、送風部30から送風される一次空気に窒素ガス(不活性ガス)を混合させる窒素ガス供給部(不活性ガス供給部)80を備える。
このようにすることで、粉砕された固体燃料と混合する一次空気の温度が高く、固体燃料の自然発火の危険がある場合に、一次空気中の酸素濃度を低めて自然発火の危険を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態の固体燃料粉砕方法によれば、回転テーブル12に供給される固体燃料の供給量を増加させる場合に、供給量を増加させる前に予め一次空気の温度が所定温度上昇している。そのため、適切な所定温度を設定することにより、固体燃料の供給量が増加することに伴って増加する固体燃料を乾燥させる熱量を十分に確保し、出炭遅れ時間を短縮することができる。
【0066】
上記の実施形態において、送風部30が備える熱ガス送風機30aおよび冷ガス送風機30bは、それぞれファンの回転数により熱ガスおよび冷ガスの送風量を調整することが可能なものであったが、他の態様の送風部を用いるようにしてもよい。
例えば、一定の風量を送風可能な送風機と、送風機により送風される空気の流路上に設けられるダンパとから構成される送風部を用いるようにしてもよい。この場合、制御部40は、ダンパの開度を調整することにより、送風量を制御する。
【0067】
上記の実施形態の固体燃料粉砕装置100は、固体燃料として水分を多く含む高水分炭を用いる場合に、特に好適である。一方、固体燃料として水分が少ない低水分炭を用いる場合には、給炭量を増加させる場合であっても、給炭量の増加に先立って酸化性ガスの温度を予め上昇させておく必然性は少ない。そこで、本実施形態の変形例として、制御部40が入力部(不図示)を介して操作者からの制御モードの入力を受け付け、固体燃料として高水分炭を用いるのに適した高水分炭モードと、固体燃料として高水分炭以外の低水分炭等を用いる通常モードのいずれかで固体燃料粉砕装置100を制御するようにしてもよい。
【0068】
制御部40は、操作者が高水分炭モードを設定した場合には、
図2に示す通りの処理を行い、ボイラ負荷の増加指令がなされた場合に、熱ガス送風機30aの送風量を増加させた後(ステップS203の後)に給炭量を増加させる(ステップS204)。一方、制御装置40は、操作者が通常モードを設定した場合には、ボイラ負荷の変更指令が増加指令であるか否かに拘わらず
図2に示すステップS206〜ステップS208の処理を行うものとする。
【0069】
このような変形例によれば、固体燃料粉砕装置100の操作者は、操作部を介して高水分炭モードまたは通常モードのいずれかを入力することにより、固体燃料に含まれる水分量に応じた適切な動作を固体燃料粉砕装置100に実行させることができる。