【実施例】
【0164】
以下は、本発明を実施するための具体的な態様の例である。これらの実施例は例示のみを目的として提供され、本発明の範囲を限定することは全く意図していない。用いている数字(例えば、量、温度など)に関して正確であるように努力は払っているが、ある程度の実験的誤差および偏差は当然ながら許容されるべきである。
【0165】
本発明の実施には、別に指定する場合を除き、当技術分野の範囲内にある、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学の従来の方法を用いるものとする。そのような手法は、文献中に十分に説明されている。例えば、T.E. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties (W.H. Freeman and Company, 1993);A.L. Lehninger, Biochemistry (Worth Publishers, Inc., current addition);Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd Edition, 1989);Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.);Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition (Easton, Pennsylvania: Mack Publishing Company, 1990);Carey and Sundherg Advanced Organic Chemistry 3
rd Ed (Plenum Press) Vols. A and B (1992)を参照のこと。
【0166】
実施例1:RNase-Ig融合遺伝子の構築
マウスRNase1を、ESTライブラリー(Dr. C. Raine, Albert Einstein School of Medicine, Bronx, NYによる。彼は本発明者らの研究室にMTAを交わさずにクローンを送ってきた)から完全長cDNAとして増幅した。用いた配列特異的な5'および3'プライマーは、公開配列によるものとした。クローンの配列を配列解析によって確かめた。Genebankアクセッション番号はNCBI geneID 19752である。完全長ヒトRNase1は、ヒト膵臓全RNA由来のランダムプライマー法およびオリゴdTプライマー法によるcDNA(Ambion/Applied Biosystems, Austin, TX)から単離した。
【0167】
完全長クローンを単離した上で、マウスIgG2a(SEQ ID NO:114)またはヒトIgG1(SEQ ID NO:110)のFcドメインとの融合遺伝子を作り出すためのプライマーを設計した。Fc尾部のアミノ末端で融合する5'配列用に2種類のプライマーを設計した;第1のものはマウス(またはヒト)RNase由来のネイティブなリーダーペプチドを組み入れ、一方、第2のものは、RNaseを本発明者らが既にクローニングして他の発現試験のために用いているヒトVKIIIリーダーペプチドと融合させる目的で、AgeI部位を、RNaseのアミノ末端に、予想されるシグナルペプチド切断部位の箇所で付着させた。マウスRNaseに関して、第1のプライマーの配列は以下である:
mribNL5'
30mer(ネイティブなリーダーおよびHindIII+Kozakを有するRNase 5')
【0168】
第2のプライマーは、既存のリーダー配列とRNaseの5'末端の成熟配列との間に、予想されるリーダーペプチド切断部位の箇所またはその近傍に遺伝子融合連結部を作り出す。
27mer(RNase5'成熟配列(リーダーなし、AgeI部位を有する)
【0169】
RNaseのカルボキシ末端およびFc尾部のアミノ末端の箇所でのマウスIgG2aに対する融合のための3'プライマーの配列は、以下の通りである:
mrib3NH2
28mer(mIgG2aとの融合用のXhoI部位を有する、RNase3'末端)。
【0170】
-Ig尾部はRNase酵素ドメインに対してアミノ末端側にある-Ig-RNase融合遺伝子を作り出すために、さらに2つのオリゴ体を設計した。
mrib5X
リンカーaaおよびFcドメインのカルボキシ末端との融合用のXbaI部位を有する、36merのRNase5'末端
mrib3X
2つの終止コドンおよびFcドメインのカルボキシ末端との融合用のXbaI部位を有する、31merのRNase3'末端
【0171】
実施例2:モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマからの抗RNAまたは抗DNA scFvの単離
H564と命名された抗RNAハイブリドーマを用いて、RNAに特異的なV領域を単離した。採取の前に、H564抗RNAハイブリドーマ細胞を、グルタミン、ピルビン酸、DMEM非必須アミノ酸およびペニシリン-ストレプトマイシンを加えたRPMI 1640培地(Invitrogen/Life Technologies, Gaithersburg, Md.)中で数日間、対数期増殖に保った。遠心によって培地から細胞をペレット化し、2×10
7個の細胞をRNAの調製に用いた。QIAGEN RNAeasyキット(Valencia、Calif.)全RNA単離用キットおよびQIAGEN QIAshredderをキットに添付の製造元の指示に従って用いて、RNAをハイブリドーマ細胞から単離した。4マイクログラム(4μg)の全RNAを、逆転写によってcDNAを調製するためのテンプレートとして用いた。そのRNA、300ngのランダムプライマーおよび500ngのOligo dT(12-18)および1μlの25mM dNTPを混ぜ合わせ、80℃で5分間変性させ、その後に酵素を添加した。Superscript III逆転写酵素(Invitrogen, Life Technologies)を、酵素とともに提供された第二鎖緩衝液および0.1M DTTの存在下で総容量25μlのRNA+プライマー混合物に添加した。逆転写反応は50℃で1時間進行させた。
【0172】
逆転写酵素反応で生成されたcDNAをQIAquick PCR精製キット(QIAGEN, Valencia CA)によって精製し、ターミナルトランスフェラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)を製造元の指示に従って用いてポリ-G配列による尾部を付した。尾部付きcDNAをQIAquick PCR精製によって再び精製し、キットに備えられた30ulの溶出用緩衝液(EB緩衝液)中に溶出させた。H564抗体の軽鎖および重鎖用の可変領域をPCRによって増幅するために、2マイクロリットルの尾部付きcDNAをテンプレートとして、ポリ-Cドメインを含むアンカー-尾部(anchor-tail)5'プライマー、および定常領域に特異的な縮重3'プライマーとともに用いた。増幅および制限酵素消化の後に、リンカー配列に対する2つのV領域の三者間ライゲーションによってscFvが組み立てられるように、制限酵素部位を有する2つの可変鎖を設計した。
【0173】
2つのV領域の間に挿入する(gly4ser)4ペプチドリンカーは、分子を二等分したそれぞれをコードする重複プライマーを用いる重複伸長PCRによる、このリンカー配列の増幅によって組み入れた。PCR断片をアガロースゲル電気泳動によって単離し、ゲルから適切なバンドを切り出すことによって断片を単離して、増幅されたDNAをQIAquickゲル抽出キット(QIAGEN, Valencia, CA)を用いて精製した。H564ハイブリドーマからのscFv派生物を、より大規模な-Ig融合遺伝子のいずれかの末端と付着させることができると考えられるVH-リンカー-VL融合遺伝子として組み立てた。V.sub.Hドメインはリーダーペプチドを有しないように増幅したが、V.sub.Lとの融合用の5' AgeI制限部位、およびリンカードメインとの融合用の3'末端でのBglII制限部位は含めた。
【0174】
scFv-Igは、scFv HindIII-XhoI断片を、ヒトIgG1ヒンジ領域、CH2領域およびCH3領域を含むpDG中に挿入することによって組み立て、それを制限酵素HindIIIおよびXhoIで消化した。ライゲーションの後に、ライゲーション産物のDH5-α細菌への形質転換導入を行った。このscFv-Ig cDNAを、96℃での10秒間の変性、50℃での30秒間のアニーリングおよび72℃での4分間の伸長による25サイクルのプログラムを用いる、PE 9700 thermocyclerでのサイクルシークエンス法に供した。シークエンシング用プライマーは、pDG順方向および逆方向プライマー、ならびにIgG定常領域部分の中のヒトCH2ドメイン(CH2 domain human)とアニーリングする内部プライマーとした。シークエンシング反応は、Big Dye Terminator Ready Sequencing Mix v3.1(PE-Applied Biosystems, Foster City, Calif.)を製造元の指示に従って用いて行った。その後にAutoseq G25カラム(GE Healthcare)を用いて試料を精製し、溶出液をSavant減圧乾燥器の中で乾燥させ、Template Suppression Reagent(PE-ABI)中で変性させた上で、ABI 310 Genetic Analyzer(PE-Applied Biosystems)で分析した。配列を編集し、変換した上で、ベクターNtiバージョン10.0(Informax/Invitrogen, 、North Bethesda, Md.)を用いて解析した。
【0175】
ヒトRNaseI-hIgG1(SEQ ID NO:125〜127)融合遺伝子の構築
ヒトRNase1(SEQ ID NO:113)を、Ambion/Applied Biosystems(Austin, TX)から入手したヒト膵臓全RNAからPCR増幅によって単離した。4マイクログラム(4μg)の全RNAを、逆転写によってcDNAを調製するためのテンプレートとして用いた。そのRNA、300ngのランダムプライマーおよび500ngのOligo dT(12-18)および1ulの25mM dNTPを混ぜ合わせ、80℃で5分間変性させ、その後に酵素を添加した。Superscript III逆転写酵素(Invitrogen, Life Technologies)を、酵素とともに提供された第二鎖緩衝液および0.1M DTTの存在下で総容量25μlのRNA+プライマー混合物に添加した。逆転写反応は50℃で1時間進行させた。反応物をQIAquick PCR精製カラムによってさらに精製し、cDNAを40マイクロリットルのEB緩衝液中に溶出させて、その後にPCR反応に用いた。2マイクロリットルのcDNA溶出液を、ヒトRNase1に特異的な50pmolの5'および3'プライマーを含むPCR反応物に添加し、45マイクロリットルのPCR high fidelity supermix(Invitrogen, Carlsbad, CA)を0.2mlのPCR反応チューブに添加した。PCR反応はC1000サーマルサイクラー(BioRad, Hercules CA)を用いて行った。反応には、95Cでの2分間の初期変性段階、その後に94℃、30秒間の変性、50℃、30秒間のアニーリングおよび68℃、1分間の伸長段階を34サイクル、その後に最終的な72℃での4分間の伸長を含めた。野生型尾部を単離した上で、断片をpCR2.1ベクター中にTOPOクローニングし;QIAGEN spin plasmid miniprepキットを製造元の指示に従って用いてDNAを調製した。ABI Dye Terminator v3.1 ready reaction mixを製造元の指示に従って用いて、プラスミドDNAの配列を決定した。
【0176】
実施例3:ヒトおよびマウス-Fcドメインの単離、ならびにコード配列中への突然変異の導入
マウス-Fcドメイン(SEQ ID NO:114)およびヒト-Fcドメイン(SEQ ID NO:110)の単離のために、以下の通りにマウスまたはヒトの組織からRNAを導き出した。マウス脾臓からRPMI培地中の単細胞浮遊液を作製した。または、Lymphocyte Separation Media(LSM)Organon Teknika(Durham, NC)を用いて新鮮な全血からヒトPBMCを単離し、バフィコートを製造元の指示に従って採取して、PBS中で細胞を3回洗浄した後に用いた。遠心によって培地から細胞をペレット化し、2×10
7個の細胞をRNAの調製に用いた。QIAGEN RNAeasyキット(Valencia, Calif.)全RNA単離キットおよびQIAGEN QIAshredderカラムをキットに添付の製造元の指示に従って用いて、RNAを細胞から単離した。1マイクログラム(4μg)の全RNAを、逆転写によってcDNAを調製するためのテンプレートとして用いた。このRNA、300ngのランダムプライマーおよび500ngのOligo dT(12-18)および1μlの25mM dNTPを混ぜ合わせ、80℃で5分間変性させ、その後に酵素を添加した。Superscript III逆転写酵素(Invitrogen, Life Technologies)を、酵素とともに提供された第二鎖緩衝液および0.1M DTTの存在下で総容量25μlのRNA+プライマー混合物に添加した。逆転写反応は50℃で1時間進行させた。cDNAをQIAquick(QIAGEN)PCR精製カラムを用いて精製し、40マイクロリットルのEB緩衝液中に溶出させた後に、PCR反応に用いた。
【0177】
野生型のマウスおよびヒト-Fcドメインを、上記のcDNAをテンプレートとして用いるPCR増幅によって単離した。以下のプライマーを野生型配列の初期増幅のために用いたが、所望の所望の突然変異性変化がヒンジドメインに組み入れられた:
【0178】
PCR反応は、C1000サーマルサイクラー(BioRad, Hercules CA)またはEppendorfサーマルサイクラー(ThermoFisher Scientific, Houston TX)を用いて行った。反応には、95℃での2分間の初期変性段階、それに続く94℃、30秒間の変性、50℃、30秒間のアニーリングおよび72℃、1分間の伸長段階による34サイクルと、それに続く最終的な72℃での4分間の伸長を含めた。野生型尾部を単離した上で、断片をpCR2.1ベクター中にTOPOクローニングし、QIAGEN spin plasmid miniprepキットを製造元の指示に従って用いてDNAを調製して、ABI Dye Terminator v3.1シークエンシング反応を製造元の指示に従って用いてクローンの配列を決定した。
【0179】
正しいクローン由来のDNAを、マウスIgG2aまたはヒト-IgG1のコード配列中の所望の位置に突然変異を導入するための重複伸長PCRにおけるテンプレートとして用いた。PCR反応は、テンプレートとしての完全長野生型クローン(1マイクロリットル)、各方向から所望の突然変異部位までの、およびそれを含む-Fcドメインの各部分のPCRを行うための50pmolの5'および3'プライマー、ならびにPCR hi fidelity Supermix(Invitrogen, Carlsbad CA)を50マイクロリットルの反応容量中に用い、短い増幅サイクルを用いて設定した。重複PCR突然変異誘発の一例として、P331S突然変異をヒト-IgG1に導入するために用いたプライマーの組み合わせは以下の通りであった:
【0180】
5'サブフラグメントは完全長野生型クローンをテンプレートとして用いて増幅し、ここで5'プライマーはhIgG1-5scc:
とし、一方、3'プライマーはP331AS:
とした。3'サブフラグメントは完全長野生型クローンをテンプレートとして用いて増幅し、ここで5'プライマーはP331S:
とし、一方、3'プライマーはmahIgG1S:
とした。
【0181】
サブフラグメントを増幅し、アガロースゲル電気泳動によって単離した上で、それらをQIAquickゲル精製カラムによって精製し、30マイクロリットルのEB緩衝液中に製造元の指示に従って溶出させた。続いて2回のPCRを、2つのサブフラグメントを新たな反応における重複テンプレートとして用いて行った。サイクラーを休止させ、5'(hIgG1-5scc、上記参照)および3'(mahIgG1S、上記参照)フランキングプライマーを反応物(各50pmol)に添加した。続いてPCR増幅を、野生型分子に関して上述した条件で34サイクル行った。完全長断片をゲル電気泳動によって単離して、配列解析のためにpCR2.1ベクター中にTOPOクローニングした。続いて、正しい配列を有するクローン由来の断片を、本明細書に記載の各種のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を作り出すために、発現ベクター中にサブクローニングした。
【0182】
実施例4:安定なCHO細胞株における、RNase-Ig(SEQ ID NO 124、125、126、127、174(ヌクレオチド)または160、161、162、163、175(アミノ酸))、DNase-Ig(SEQ ID NO 118、119、120、121、122、123、186(ヌクレオチド)またはSEQ ID NO 154、155、156、157、158、159、187(アミノ酸))、多サブユニットIg融合構築物(SEQ ID NO:115、116、117、172、176、178、180(ヌクレオチド)またはSEQ ID NO 151、152、153、173、177、179、181(アミノ酸))およびH564 scFv-Ig融合タンパク質の発現
本実施例は、本明細書に記載の各種の-Ig融合遺伝子の真核細胞株における発現、ならびに 発現された融合タンパク質のSDS-PAGEおよびIgGサンドイッチELISAによる特性決定について例証する。
【0183】
正しい配列を有する-Ig融合遺伝子断片を哺乳動物発現ベクターpDG中に挿入し、陽性クローン由来のDNAを、QIAGENプラスミド調製キット(QIAGEN, Valencia, Calif.)を用いて増幅した。続いて組換えプラスミドDNA(100μg)を、AscIによる消化によって非必須領域で線状化し、フェノール抽出によって精製して、組織用培地Excell 302(カタログ番号14312-79P、JRH Biosciences, Lenexa, Kans./SAFC)中に再懸濁させた。トランスフェクション用の細胞であるCHO DG44細胞を対数増殖下に保ち、10
7個ずつの細胞を各トランスフェクション反応のために採取した。線状化されたDNAを、エレクトロポレーションのために、総容量0.8ml中のCHO細胞に添加した。
【0184】
-Ig融合タンパク質の安定した産生は、CMVプロモーターの制御下にあるRNase-Ig cDNAを含む選択可能かつ増幅可能なプラスミドpDGの、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内へのエレクトロポレーションによって達成された。このpDGベクターは、プラスミドに対する選択圧を高めるために減弱化されたプロモーターを有する、DHFR選択マーカーをコードするpcDNA3の改変された型である。Qiagen maxiprepキットを用いてプラスミドDNAを調製し、精製されたプラスミドを唯一のAscI部位で線状化した後に、フェノール抽出およびエタノール沈殿を行った。サケ精子DNA(Sigma-Aldrich, St. Louis, Mo.)を担体DNAとして添加し、100μgずつのプラスミドおよび担体DNAを用いて、10
7個のCHO DG44細胞にエレクトロポレーションによってトランスフェクトした。本明細書中で以後「Excell 302完全」培地と称する、グルタミン(4mM)、ピルビン酸、組換えインスリン、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび2×DMEM非必須アミノ酸(すべてLife Technologies, Gaithersburg, Md.から)を含むExcell 302培地(JRH Biosciences)中で、細胞を対数期になるまで増殖させた。トランスフェクトされていない細胞用の培地にも、HT(ヒポキサンチンおよびチミジンの100×溶液から希釈)(Invitrogen/Life Technologies)を含めた。選択下でのトランスフェクション用の培地には、50nMから1μMまでの範囲にわたるさまざまなレベルのメトトレキサート(Sigma-Aldrich)を選択剤として含めた。エレクトロポレーションは280ボルト、950マイクロファラッドで行った。トランスフェクトされた細胞を非選択培地中に一晩おいて回復させた後に、96ウェル平底プレート(Costar)中への選択的プレーティングを、細胞125個/ウェルから細胞2000個/ウェルまでのさまざまな系列希釈で行った。細胞クローニング用の培地は、50nMメトトレキサートを含むExcell 302完全培地とした。クローン増殖が十分になったところで、マスターウェルからの培養上清の系列希釈物を、-IgGサンドイッチELISAを用いることによって-Ig融合タンパク質の発現に関してスクリーニングした。手短に述べると、NUNC immulon IIプレートを、PBS中の7.5マイクログラム/mlのF(ab'2)ヤギ抗マウスIgG(KPL Labs, Gaithersburg, MD)により、4℃で一晩かけてコーティングした。プレートをPBS/3% BSA中でブロックし、培養上清の系列希釈物を室温で2〜3時間インキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween 20中で3回洗浄して、それぞれPBS/1.0% BSA中に1:3500とした西洋ワサビペルオキシダーゼ結合F(ab'2)ヤギ抗マウスIgG2a(Southern Biotechnologies)およびヤギ抗マウスIgG(KPL)を混合したものとともに室温で1〜2時間インキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween 20中で4回洗浄し、SureBlue Reserve、TMB基質(KPL Labs, Gaithersburg, MD)によって結合を検出した。等容量の1N HClの添加によって反応を停止させ、プレートの450nMでの読み取りをSpectramax Proプレートリーダー(Microdevices, Sunnyvale CA)で行った。融合タンパク質の産生が最も高度であったクローンをT25フラスコ内で、続いてT75フラスコ内で増やして、凍結のため、および融合タンパク質の産生規模拡大のために十分な数の細胞を得た。優れた上位4つのクローンからの培養物における産生レベルを、メトトレキサート含有培地中での累進増幅によってさらに高めた。DHFRプラスミドが増幅された細胞のみが生存しうるように、細胞の連続継代のたびに、Excell 302完全培地に含めるメトトレキサートの濃度を徐々に高めた。RNaseIg CHOトランスフェクト体からの、増幅されていないマスターウェルの上位4つの産生レベルは、30〜50マイクログラム/ml培養物の範囲であった。増幅された培養物は、産生レベルを決定するために現在アッセイしているところである。
【0185】
RNase-Igを発現するCHO細胞から上清を収集し、0.2μmのPES expressフィルター(Nalgene, Rochester, N.Y.)に通して濾過した上で、プロテインA-アガロース(IPA 300架橋アガロース)カラム(Repligen, Needham, Mass.)に通過させた。カラムをカラム洗浄用緩衝液(90mM Tris塩基、150mM NaCl、0.05%アジ化ナトリウム、pH 8.7)で洗浄し、結合したタンパク質を0.1Mクエン酸緩衝液、pH 3.0を用いて溶出させた。画分を収集し、Nanodrop(Wilmington DE)マイクロサンプル分光光度計を用いて280nMでタンパク質濃度を決定するとともに、0.1Mクエン酸緩衝液、pH 3.0を用いて空試験も行った。融合タンパク質を含む画分をプールした上で、エンドトキシン混入の恐れを減らすために、centricon濃縮器を用いたPBS中での連続スピンの後に0.2μmのフィルターデバイスに通して濾過することによって緩衝液交換を行った。Vector Nti Version 10.0ソフトウエアパッケージ(Informax, North Bethesda, Md.)中のタンパク質分析ツール、およびオンラインのExPasyタンパク質分析ツールから予測された切断部位を用いて、消衰係数は1.05と求められた。
【0186】
実施例5:RNaseIg融合タンパク質のSDS-PAGE分析
精製されたRNase-Ig(SEQ ID NO:115)を、SDS-ポリアクリルアミドゲル上での電気泳動によって分析した。融合タンパク質試料をジスルフィド結合の還元を伴うおよび伴わないSDS試料用緩衝液中で煮沸し、SDS 10% Tris-BISゲル(カタログ番号NP0301、Novex, Carlsbad, Calif.)に適用した。各精製タンパク質の5マイクログラムずつをゲル上にローディングした。電気泳動後に、クーマシーブルー染色(Pierce Gel Code Blue Stain Reagent、カタログ番号24590、Pierce, Rockford, Ill.)および蒸留水中での脱染によってタンパク質を可視化した。分子量マーカーを同じゲル上に含めた(Kaleidoscope Prestained Standards, カタログ番号161-0324、Bio-Rad, Hercules, Calif)。他の試料の泳動は以下の通りに行った:サンプリング緩衝液(5% 2-メルカプトエタノールを伴うおよび伴わない、62.5mM Tris-HCl、pH6.8、2% SDS、10%グリセロール、0.01%ブロモフェノールブルー)中のRNase-Ig融合タンパク質を4〜12%のプレキャストゲル(Bio-RAD)上にローディングした。色素がゲルを泳動して流出するまで、ゲルの泳動を100ボルトで行った。室温で一晩かけてゲルをGelCode Blue(Thermo scientific)中で染色し、続いて水で洗浄した。
【0187】
図3は、RNase-Ig融合タンパク質をマウスIgGと比較して示している。トランスフェクトされたCHO細胞の上清から、RNase-Igを、プロテインAセファロースとの結合およびそれからの溶出によって精製した。SDS-PAGEゲルは、RNase-Igが還元された場合にはおよそ50kDaであって、還元されていない場合にはおよそ110kDaであることを示している。
【0188】
実施例6:マウス血清中のRNase-Igの検出
SREDアッセイ
2%アガロースゲルを、蒸留水を用いて調製した。ポリ-IC(Sigma)を蒸留水中に3mg/mlで溶解させて、ゲルプレートを以下の通りに調製した:1.5mlの反応緩衝液(0.2M Tris-HCl pH 7.0、40mM EDTAおよび0.1mg/ml臭化エチジウム)、1mlのポリ-ICおよび0.5mlの水をチューブに入れ、50℃に5分間維持した。3mlのアガロース(50℃に保つ)をチューブに添加した。この混合物を直ちにガラスプレート上に注いだ。ゲルへの穿孔によってサンプリングウェルを作製した。2μlの各血清試料をウェル中にローディングし、湿潤チャンバー内でゲルを37℃で4時間インキュベートした。続いてゲルを、緩衝液(20mM酢酸ナトリウムpH5.2、20mg/ml臭化エチジウム)中にて氷上で30分間インキュベートし、UV下で読み取りを行った。
【0189】
図4は、RNase-Ig融合タンパク質(SEQ ID NO:150)(この実験では、トランスフェクトされたCOS細胞の上清から、プロテインAセファロースとの結合およびそれからの溶出によって精製)の静脈内注射後の3匹のマウス(410、413および418)によるRNase活性を示している。標準物質を一番上の列に用いた。マウス410(矢印参照)に対する2週間後の2回目の注射に留意されたい。3匹のマウスのそれぞれからの2μlの血清を、0.5mg/mlポリ-Cを含む1%アガロースゲル上にローディングした。湿潤チャンバー内でゲルを37℃で4時間インキュベートし、続いて20mM酢酸ナトリウムおよび20ug/ml臭化エチジウムを含む緩衝液中に30分間浸漬させた。RNase活性は、中央ウェルの周りのサイズおよび強度に反映される。このデータは、RNase-Ig融合タンパク質がマウス血清中で、延長した半減期を有することを示している。
【0190】
実施例7:マウス血清中のRNA特異的抗体を測定するための抗RNA ELISAの使用
96ウェルプレート(Nunc、Thermal fisher scientific)を、50μg/mlのポリ-L-リジン(Sigma)により、一晩かけてコーティングした。0.05% Tweenを含むPBSで5回洗浄した後に、プレートをPBS中の10μg/mlの酵母RNAによって4℃で一晩かけてコーティングした。5回洗浄した後に、1% BSAを含むPBSにより、室温で2時間かけてプレートをブロックした。1:50に希釈した血清試料をプレートに添加し、4℃で一晩インキュベートした。ハイブリドーマH564(抗RNA)培地を、1:300からの2倍系列希釈を用いて、標準物質として用いた。検出抗体はアルカリホスファターゼと結合させた抗マウスIgG(Jackson Lab)とし、これをプレートに1:5000で添加して室温で1時間おいた。ホスファターゼ基質(Sigma)を現像用緩衝液(ThermoFisher Scientific)中に溶解させ、プレートに50μl/ウェルで添加した。Spectramax Plusプレートリーダー(Microdevices, Sunnyvale, CA)を用いて、試料の405nmでの読み取りを行った。
【0191】
図5は、RNase-Ig融合タンパク質(SEQ ID NO:150)の静脈内注射の前および後の、マウス410の抗RNA抗体のELISA力価の結果を示している。事前にコーティングしたポリ-L-リジン(50μg/ml)プレートを10ug/mlの酵母RNAによってコーティングした。血清(1:50)をプレート上にローディングし、4℃で一晩インキュベートした。検出抗体は抗マウスIgG-アルカリホスファターゼ(Jackson Labs)を1:5000にて室温で1時間とし、続いてホスファターゼ基質を添加して405nmで読み取りを行った。このデータは、RNase-Igの注射が抗RNA抗体の力価の低下を引き起こし、それが3週間にわたって持続したことを示している。
【0192】
図6は、RNase-Ig融合タンパク質(SEQ ID NO:150)の注射の前後3週間以内の、マウス413の抗RNA抗体のELISA力価の結果を示している。実験はマウス410に関して記載した通りに行った。抗RNA抗体の力価は、RNase-Igの注射後に低下した。
【0193】
実施例8:ヒトPBMCによるIFN-α産生は、インビトロの培養物に対するRNaseIg添加によって阻害される
RNase-Ig(SEQ ID NO:150)の添加は、SLE患者(J11)からの血清+核抽出物(NE)によって形成された免疫複合体を用いて刺激したヒト末梢血単核細胞からのインターフェロン-αの誘導を消失させた。手短に述べると、ELISAプレートを50マイクロリットルの1:2500捕捉抗体(抗IFNα、PBL 21112-1, Piscataway, NJ)によってコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween 20で洗浄し、PBS/1% BSA中に室温で2時間おいてブロックし、PBS/0.05% Tween-20で洗浄した上で、IFN-αの標準的な希釈物または血清試料の系列希釈物とともに室温で2時間インキュベートした。プレートを洗浄し、PBS/1% BSA中の1:2000検出抗体(PBL 31101-2, Piscataway, NJ)とともにインキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween-20中で洗浄し、PBS/1% BSA中に1:12,000とした50マイクロリットルのロバ抗ウサギHRP(Jackson Immunoresearch, Westgrove, PA)とともにインキュベートした。プレートを5回洗浄し、その後にTMB基質を添加した。1/2容量の2N H2S04の添加によって反応を停止させ、試料の450nmでの読み取りをSpectramax Proプレートリーダー(MicroDevices, Sunnyvale, CA)で行った。その結果は
図7に示されており、これはRNase-Igの添加が、SLE患者(J11)からの血清+核抽出物によって形成された免疫複合体を用いて刺激したヒト末梢血単核細胞からのインターフェロン-αの誘導を消失させたことを示している。
【0194】
実施例9:TLR7.1×RNaseA二重トランスジェニックマウスの表現型
本発明者らは、RNaseAを過剰発現するマウス(RNaseTg)を作製した。このヌクレアーゼはRNaseTgマウスにおいて高レベルで発現される(
図8参照)。本発明者らは、血清中のRNaseを定量するための一元放射拡散(SRED)法(左のパネル)、およびはるかにより定量的なELISAを開発した(
図9参照)。本発明者らは、RNaseA TgをTLR7.1 Tgマウスと交配させて二重Tg(DTg)を作製した。TLR7.1マウスはTLR7のコピーを8〜16個有しており、悪性度が非常に高い急速進行性のループス様疾患を発症し、3カ月齢の時点で死亡し始め、生存期間中央値は6カ月である。予備分析において、本発明者らは、DTgマウスが改善の徴候を示すか否かを調べるために、DTgおよび同腹仔対照を3カ月齢まで育てた(bled)。
図8に示されているように、DTgマウスは、それらの血清中のRNaseのレベルが非常に高かった(比活性993U/mgの本発明者らの標準物質に基づけば、13U/mlを上回るRNaseに相当)。
図9に示されているように、TgおよびDTgマウスにおけるRNaseA濃度をELISAアッセイによっても測定した。RNaseA TgマウスおよびTLR7.1×RNaseA Dtgマウスは、RNaseAの血清中濃度が1〜2ng/mlであった。
【0195】
RNaseA ELISAのための詳細な方法(実施例9、図9)
1.プレートを抗RNaseA Abcam Ab(ab6610)でコーティングする:4C中に2.5〜10ug/ml O/N。
2.0.05% Tween/1×PBSでプレートを3回洗浄する。
3.PBS中の1% BSAにより、少なくとも1時間かけてブロックする。
4.0.05% Tween/1×PBSによってプレートを3回洗浄する。
5.試料をローディングする。試料の希釈度は1:50。
6.室温で2時間インキュベートする。
7.0.05% Tween/1×PBSによってプレートを3回洗浄する。
8.ビオチン標識抗RNaseAbの希釈度1:4500(2.2ug/ml)の希釈物を調製する。室温で1時間放置する(Rockland 200-4688:10mg/ml)。
9.プレートを3回洗浄する。
10.StrepAV HRP(Biolegend 405210)を1:2500に希釈する。ホイルで覆い、室温で25〜30分間放置する。
11.6回洗浄し、洗浄の間には液体をウェル中で少なくとも30秒間静置する。
12.BD OptEIA基質A+Bを1:1で添加する。色調が5〜10分で最大になるまで待つ。一番上のウェルの標準物質が1.0を上回らないようにする。80ulを添加する(カタログ番号:51-2606KC;試薬A、51-2607KC;試薬B)
13.反応を停止させるために1M硫酸40ulを添加する。
【0196】
製品/試薬の情報:
RNaseA Ab:ab6610(90mg/ml)
ELISA緩衝液:PBS中の1% BSA
ELISA洗浄用緩衝液:0.05% Tween/1×PBS
抗RNaseAビオチン結合Ab:Rockland:200-4688(10mg/ml)
Strep AV HRP:Biolegend 405210
BD OptEIA試薬AおよびB:51-2606KCおよび51-2607KC
【0197】
実施例10.TLR7.1トランスジェニックマウス系統の生存曲線
DTgとTLR7.1同腹仔対照との間には、生存に関して高度の有意差が認められた。
図10に示されているように、10カ月の時点でTLR7.1マウスの61%が死亡したのに対して、DTgマウスは31%が死亡した。このデータは、RNaseAの過剰発現が強い治療効果を発揮したことを示している。TLR7.1マウスが早発性に死亡した理由は完全には明らかでないが、重症貧血、血小板減少および糸球体腎炎が役割を果たした可能性が考えられる。DTgマウスにおいて、赤血球数および血小板数がRNaseA発現によって良い影響を受けたか否かを明らかにするために、本発明者らは血算を行ったが、TLR7.1マウスとDTgマウスとの間に差は見いだされなかった。対照的に、DTgマウスでは腎臓の組織病理に有意な改善が認められた。本発明者らは、DTgマウスにおいてIgGおよびC3の沈着減少を観察した。メサンギウムにおける炎症を反映するPAS染色も、DTgマウスではTLR7.1同腹仔対照と比較して低下していた。本発明者らが今回、腎臓のマクロファージ浸潤を抗MAC-2(ガレクチン3)抗体(Lyoda et al. Nephrol Dial Transpiat 22: 3451, 2007)を用いて比較したところ、mac-2陽性細胞はDTgマウスの糸球体の方が非常に少なかった。各群当たり5匹ずつのマウスにおいてマウス1匹当たり20個の糸球体で算定したところ、単独TgおよびDTgに関する平均+/-SEはそれぞれ3.8+/-1.1および1.4+/-0.2であり、p=.05であった。加えて、本発明者らは糸球体係蹄サイズも定量し、DTgマウスにおける糸球体係蹄サイズの有意な減少を観察した(単独TgおよびDTgにおいてそれぞれ179+/-41および128+/-16.8um2、p=0.037)。以上を要約すると、TLR7.1×RNaseA DTgマウスはそれらの単独Tg TLR7.1同腹仔よりも長く生存し、かつそれらの腎臓における炎症および傷害はより軽度である。
【0198】
実施例11.TLR Tgマウスの脾臓におけるIRGの分析
TLR7.1 TgマウスおよびTLR7.1×RNaseA DTgマウスの脾臓におけるインターフェロン応答遺伝子(IRG)の分析により、DTgマウスにおいてIRF7遺伝子の発現が有意に低いことが示された(p=0.03)。MX1およびVIG1を含む他のいくつかのIRGは、Tgマウスと比較してDTgマウスの方が低値であったが、その差は有意ではなかった。
図11参照。定量的PCRを以下の通りに行った:RNeasy miniキット(Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いてマウス脾臓から全RNAを単離し、Turbo DNA-free(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いてDNaseを処理した上で、RNA-to-cDNAキット(Applied Biosystems)により、ランダムプライマーを用いて第一鎖cDNAを生成させた。単離されたRNAに関して、NanoDrop(Thermo Scientific, Waltham, MA, USA)を用いた測定では、260/280値は1.7〜2.0の間であった。cDNAを1ng/ul全RNAに相当するよう希釈し、1つの反応につき8ulを用いた。参照遺伝子(18s)および関心対象の遺伝子(GOI)用のプライマーを合成し(IDT, Coralville, Iowa, USA)、分子グレードの水(molecular grade water)を用いてqPCR用に適切な濃度に希釈した。プライマーのBLASTの結果から、参照遺伝子またはGOIのみに対する特異的な配列相同性が示されている。SensiMix SYBR low-ROX master mix(Bioline, London, UK)に対するテンプレートおよびプライマーの1:1混合物を用いて、ABI Fast7500システムで、2つずつの反応物(20ul)を進行させた。年齢を一致させた野生型B6マウスを各GOIに関する変化倍数を求めるためのベースラインとして用いる2
-ddCT法を用いて、相対的定量の算出を行った。反応物に関する解離曲線から、各遺伝子に関して単一の融解ピークが示されている。標準曲線からは、各遺伝子に関して同程度の増幅効率が示され、テンプレート濃度はプライマーセットのそれぞれに関して直線範囲(linear dynamic range)内にあった。
【0199】
実施例12.ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を作製するための構造
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を、単酵素構造または多酵素構造の所望の構造および機能的活性が組み入れられるように、シャトリング(shuttling)およびドメイン交換のための適合性制限酵素部位を有するモジュール式カセットとして設計した。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の種々の態様の模式的構造は
図12に図示されている。プライマーは表1に示されている。代表的なハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は表2に示されている。
【0200】
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の作製のための一般的アプローチ
QIAgen RNAeasyキット(Valencia, CA)および細胞溶解物を均質化するためのQIAshredderキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、ヒト膵臓RNA(Ambion)または正常ヒト末梢血リンパ球(およそ5×10e6個)由来のヒトPBMC RNAからヒトcDNAを単離した。ヒトPBMCは、D-PBS中に1:1に希釈したヘパリン添加ヒト血液から単離し、LSM Lymphocyte Separation Medium(MP Biomedicals, Irvine, CA)のFicoll勾配上に重層させた。
【0201】
マウス脾臓RNAは、およそ5×10e6個の脾細胞から、QIAgen RNAeasyキット(Valencia, CA)を用いて単離した。遠心によって培地から細胞をペレット化し、5×10e6個の細胞をRNAの調製に用いた。QIAGEN RNAeasyキット(Valencia、Calif.)全RNA単離用キットおよびQIAGEN QIAshredderをキットに添付の製造元の指示に従って用いて、RNAを細胞から単離した。1〜2マイクログラム(1〜2μg)の全RNAを、逆転写によってcDNAを調製するためのテンプレートとして用いた。そのRNA、300ngのランダムプライマーおよび500ngのOligo dT(12-18)および1μlの25mM dNTPを混ぜ合わせ、80℃で5分間変性させて、その後に酵素を添加した。Superscript III逆転写酵素(Invitrogen, Life Technologies)を、酵素とともに提供された5×第二鎖緩衝液および0.1M DTTの存在下で総容量25μlのRNA+プライマー混合物に添加した。逆転写反応は50℃で1時間進行させた。
【0202】
10〜100ngのcDNAを、関心対象のヌクレアーゼ遺伝子(RNaseA、RNase1、DNase1、Trex1、DNase1L3など)に特異的なプライマーを用いるPCR増幅反応に用いた。初期クローニング反応のために、関心対象の遺伝子をコードする完全長cDNAまたは短縮産物を単離するためのプライマーを設計した。完全長PCR断片または短縮したPCR断片をアガロースゲル電気泳動によって単離し、ヌクレオチド、プライマーおよび望まれない増幅産物を除去するためにQiagen QIAquickカラムを用いて精製した。精製した断片をpCR2.1 TOPOクローニングベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)中にクローニングし、TOP10コンピテント細菌への形質転換導入を行った。単離したコロニーを摘出して、50ug/mlカルベニシリンを含むLuria Broth培地に入れ、プラスミドを単離するために一晩増殖させた。TOPOクローンを、EcoRI(NEB, Ipswich, MA)制限酵素による消化および消化断片のアガロースゲル電気泳動により、正しいサイズのインサートに関してスクリーニングした。ABI Ready Reaction Mix v 3.1を用いて陽性クローンのDNA配列解析を行い、ABI 3730 XL DNAシーケンサーを用いて解析した。正しいクローンが得られたところで、さらなる配列改変物を設計し、所望のアレルまたは発現カセットを作製するためにPCR反応を行った。短縮産物およびアレルは、遺伝子中の特定の位置への突然変異の導入のために重複プライマーを用いるPCR突然変異誘発によって作製した。リンカーは、内部重複プライマーを用いる重複PCR、および追加配列を各末端に付着させるためのPCRの連続実施によって合成した。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、いくつかの互換的カセットの連鎖として組み立てられた。好ましい態様の分子は、既定のリーダーペプチド、ヌクレアーゼカセット、いくつかの異なるポリペプチドリンカーから選択されたものをコードする任意選択的なカセット、終止コドンまたはリンカーのいずれかをCH3ドメインのカルボキシル末端に有する-Ig Fcドメインカセットを含み、さらにresolvICase型分子の場合には、第2のリンカーカセットとそれに続く第2のヌクレアーゼカセットを含む。
図12はこれらのハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のカセット型構造、および各位置に挿入される可能性のある配列の例を図示している。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子が組み立てられたところで、メトトレキサートによるDHFRに関する選択を用いて、それらを、COS7または他の細胞における一過性発現、およびCHO DG44細胞における安定した発現のために適切な哺乳動物発現プラスミドpDGに移行させる。
【0203】
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の一過性発現
COS-7細胞に対して、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子遺伝子のインサートを含む発現ベクターpDGを一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの前日に、細胞を、4ml DMEM(ThermoFisher/Mediatech cell gro)+10% FBS組織培地中にて、60mmディッシュ当たり4×10e5個で播種した。DMEM基本培地に4.5g/Lのグルコース、ピルビン酸ナトリウム、L-グルタミン4mM、および非必須アミノ酸を加えた。ウシ胎仔血清(Hyclone, Logan, UT ThermoFisher Scientific)を、最終容量比10%となるように培地に添加した。細胞を37℃、5% CO2にて一晩インキュベートしたところ、トランスフェクションの日の集密度はおよそ40〜80%となった。Qiagen(Valencia, CA)QIAprep miniprepキットを製造元の指示に従って用いてプラスミドDNAを調製し、50ulのEB緩衝液中に溶出させた。Nanodrop 1000(ThermoFisher Scientific, Wilmington DE)分光光度計を用いてDNA濃度を測定した。プラスミドDNAは、Polyfect(Qiagen, Valencia, CA)トランスフェクション試薬を製造元の指示に従って用い、60mmディッシュ当たり2.5ugのプラスミドDNA、および150ulの無血清DMEMトランスフェクション用カクテル中の15ulのpolyfect試薬を用いてトランスフェクトした。複合体の形成後に、反応物を血清およびすべての添加物を含む1mlの細胞増殖培地中に希釈して、3mlの新たなDMEM完全培地を含むプレートに滴下した。一過性トランスフェクション物を48〜72時間インキュベートした後、さらなる分析のために培養上清を採取した。
【0204】
関心対象のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を発現する、安定したCHO DG44トランスフェクト体の作製
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の安定した産生は、CMVプロモーターの制御下にあるヌクレアーゼ-Ig cDNAを含む選択可能かつ増幅可能なプラスミドpDGの、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞内へのエレクトロポレーションによって達成された。このpDGベクターは、プラスミドに対する選択圧を高めるために減弱化されたプロモーターを有する、DHFR選択マーカーをコードするpcDNA3の改変された型である。Qiagen maxiprepキットを用いてプラスミドDNAを調製し、精製されたプラスミドを唯一のAscI部位で線状化した後に、フェノール抽出およびエタノール沈殿を行った。サケ精子DNA(Sigma-Aldrich, St. Louis, Mo.)を担体DNAとして添加し、100μgずつのプラスミドおよび担体DNAを用いて、10
7個のCHO DG44細胞にエレクトロポレーションによってトランスフェクトした。本明細書中で以後「Excell 302完全」培地と称する、グルタミン(4mM)、ピルビン酸、組換えインスリン、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび2×DMEM非必須アミノ酸(すべてLife Technologies, Gaithersburg, Md.から)を含むExcell 302培地(JRH Biosciences)中で、細胞を対数期になるまで増殖させた。トランスフェクトされていない細胞用の培地にも、HT(ヒポキサンチンおよびチミジンの100×溶液から希釈)(Invitrogen/Life Technologies)を含めた。選択下でのトランスフェクション用の培地には、50nMから1μMまでの範囲にわたるさまざまなレベルのメトトレキサート(Sigma-Aldrich)を選択剤として含めた。エレクトロポレーションは280ボルト、950マイクロファラッドで行った。トランスフェクトされた細胞を非選択培地中に一晩おいて回復させた後に、96ウェル平底プレート(Costar)中への選択的プレーティングを、細胞125個/ウェルから細胞2000個/ウェルまでのさまざまな系列希釈で行った。細胞クローニング用の培地は、50nMメトトレキサートを含むExcell 302完全培地とした。クローン増殖が十分になったところで、マスターウェルからの培養上清の系列希釈物を、-IgGサンドイッチELISAを用いることによってハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の発現に関してスクリーニングした。手短に述べると、NUNC immulon IIプレートを、PBS中の7.5マイクログラム/mlのF(ab'2)ヤギ抗マウスIgG(KPL Labs, Gaithersburg, MD)または2ug/mlのヤギ抗ヒトもしくは抗マウスIgG(Jackson Immunoresearch, WestGrove PA)により、4℃で一晩かけてコーティングした。プレートをPBS/2〜3% BSA中でブロックし、培養上清の系列希釈物を室温で2〜3時間インキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween 20中で3回洗浄して、それぞれPBS/1.0% BSA中に1:3500とした西洋ワサビペルオキシダーゼ結合F(ab'2)ヤギ抗マウスIgG2a(Southern Biotechnologies)およびヤギ抗マウスIgG(KPL)を混合したものとともに、または1:2500とした西洋ワサビペルオキシダーゼ結合F(ab')2ヤギ抗ヒトIgG1(Jackson Immunoresearch, WestGrove, PA)中にて、室温で1〜2時間インキュベートした。プレートをPBS/0.05% Tween 20中で4回洗浄し、SureBlue Reserve、TMB基質(KPL Labs, Gaithersburg, MD)によって結合を検出した。等容量の1N HClの添加によって反応を停止させ、プレートの450nMでの読み取りをSpectramax Proプレートリーダー(Microdevices, Sunnyvale CA)で行った。融合タンパク質の産生が最も高度であったクローンをT25フラスコ内で、続いてT75フラスコ内で増やして、凍結のため、および融合タンパク質の産生規模拡大のために十分な数の細胞を得た。優れた上位4つのクローンからの培養物における産生レベルを、メトトレキサート含有培地中での累進増幅によってさらに高めた。DHFRプラスミドが増幅された細胞のみが生存しうるように、細胞の連続継代のたびに、Excell 302完全培地に含めるメトトレキサートの濃度を徐々に高めた。
【0205】
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を発現するCHO細胞から上清を収集し、0.2μmのPES expressフィルター(Nalgene, Rochester, N.Y.)に通して濾過した上で、プロテインA-アガロース(IPA 300架橋アガロース)カラム(Repligen, Needham, Mass.)に通過させた。カラムをカラム洗浄用緩衝液(90mM Tris塩基、150mM NaCl、0.05%アジ化ナトリウム、pH 8.7)で洗浄し、結合したタンパク質を0.1Mクエン酸緩衝液、pH 3.0を用いて溶出させた。画分を収集し、Nanodrop(Wilmington DE)マイクロサンプル分光光度計を用いて280nMでタンパク質濃度を決定するとともに、0.1Mクエン酸緩衝液、pH 3.0を用いて空試験も行った。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を含む画分をプールした上で、エンドトキシン混入の恐れを減らすために、centricon濃縮器を用いたPBS中での連続スピンの後に0.2μmのフィルターデバイスに通して濾過することによって緩衝液交換を行った。
【0206】
実施例13.hRNase1-G88D-hIgG1[SCCH-P238S-K322S-P331S]に関する酵素反応速度の分析
ヌクレアーゼ分子に関して実施例12に記載した通りに、ランダムプライマー法によるcDNAおよびPCR増幅によって、ヒト膵臓RNAからヒトRNase1配列を単離した。PCRプライマーの表に列記されたプライマーセットからの以下のプライマーを、1つの反応につき50pmolで用いた。
【0207】
細胞質内阻害因子に対する酵素の耐性を変化させる88位での突然変異を導入するためのPCR反応および重複PCR反応に以下の2つのプライマーを用いて、突然変異型のヒトRNaseG88Dを作り出した。
【0208】
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子に関して上述した通りに、野生型および突然変異型のヒトRNase1の両方を単離してクローニングした。野生型配列は、上記に列記したうちの最初の2つのプライマーを用いてクローニングした。RNase断片のTOPOクローニングを行って配列を決定した上で、AgeI-XhoIカセットを、ヒトVK3LPインサートおよびヒトIgG1-WTカセットを既に含むpDG発現ベクターに移行させた。構築物を消化によって確かめ、プラスミドDNAを一過性トランスフェクション用に調製した。小規模の一過性トランスフェクション物によって機能を確認した上で、さらなるインビトロ分析のために十分な量を発現させる目的で、これらの分子をCHO DG44に安定的にトランスフェクトした。野生型ヒトRNase1融合タンパク質は表2に示されており、hVK3LP-hRNase1-WT-hIgG1-WT(SEQ ID NO:163)である。同様に、野生型ヒトRNase1を、hRNaseカセットとhIgG1 Fcドメインとの間に挿入された(gly4ser)4(SEQ ID NO:125もしくはSEQ ID NO:161)または(gly4ser)5(SEQ ID NO:126もしくはSEQ ID NO:162)リンカードメインとの融合遺伝子としても発現させた。表2に列記されているように、ヒトRNase1のG88D突然変異体を、hVK3LP-hRNase-G88D-hIgG1-WT(SEQ ID NO:124もしくは160)またはhIgG1-SCCH-P238S-K322S-P331S(SEQ ID NO:174もしくは175)と命名された融合遺伝子としても発現させた。
【0209】
突然変異型hRNase1-G88D-hIgG1[SCCH-P238S-K322S-P331S](SEQ ID NO:175)に関する酵素反応速度のラインウィーバー・バーク(Lineweaver Burk)プロットは、
図13に示されている。この二価RNase-Ig融合タンパク質の機能的特徴をさらに明確にするために、本発明者らはミカエリス定数Kmの予備的決定を行った。精製ヒトRNase1-Ig融合タンパク質の酵素反応速度を、RNase Alert Substrate(Ambion/IDT, San Diego, CA.)を製造元の指示に従って用いてアッセイし、Spectramax M2マイクロプレートリーダー(Molecular Devices, Sunnyvale, CA)を用いて蛍光をアッセイした。蛍光データを30分間のインキュベーションの過程にわたり30秒間隔で収集し、SoftmaxProソフトウエア(Molecular Devices)を用いて解析した。種々の基質濃度での反応速度を測定し、そのデータをラインウィーバー・バークプロットの形で示している。
【0210】
実施例14.ヒト単球株に対するhRNase1-hIgGの結合の分析
野生型または突然変異型Fc含有分子のFcRを介した結合を評価するために、プロテインAにより精製したハイブリッド型ヌクレアーゼ分子であるhRNase1-hIgG1-WTを、ヒト単球細胞株THP-1またはU937とともにインキュベートした。
図14は、これらの2つの細胞株に対するhRNase1-WT-hIgG1-WT(SEQ ID NO:161)の結合パターンを示している。細胞をPBS/2% FBS中の5ug/mlの精製融合タンパク質とともに氷上で45分間インキュベートし、PBS/2% FBS中で3回洗浄して、1:200のFITC-ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的)(Jackson Immunoresearch, WestGrove, PA)とともに氷上で45分間インキュベートした。細胞をPBS/2% FBS中で2回洗浄し、FACS Canto(BD, Franklin Lakes, NJ)フローサイトメーターおよびFlowJoソフトウエア(TreeStar, Ashland, OR)を用いるフローサイトメトリーによって分析した。
【0211】
実施例15.ヒト単球株に対するhRNase1-hIG1の結合のIVIgによる遮断
THP-1細胞またはU937細胞を、96ウェルプレートのウェル全体にわたって10mg/mlから出発して10倍系列希釈を行ったIVIgとともにあらかじめインキュベートした。細胞(ウェル1個当たりおよそ1×10e6個)は氷上で45分インキュベートした。あらかじめ結合した細胞を2回洗浄し、各ウェルに対してAF750結合hRNase1-WT-hIgG1-WT(SEQ ID NO:161)をおよそ5ug/mlで添加した。結合反応物を氷上で45分間インキュベートし、PBS/2% FBS中で2回洗浄して、上記の通りにフローサイトメトリーによって分析した。IVIgは標識ヌクレアーゼ融合タンパク質の結合を部分的に遮断することができたが、10mg/mlでも、バックグラウンドを上回る残留結合が依然として検出可能であった。
図15は、hRNase1-WT-hIgG1-WT(SEQ ID NO:161)によるU937細胞およびTHP-1細胞との結合に対するヒトIVIgの遮断活性を示している。
【0212】
実施例16.Trex1-Ig活性アッセイ
以下に列記するプライマーを用いて、マウスcDNAからマウスTrex1をクローニングした:
【0213】
94C 30秒間;50C 60秒間;68C 90秒間による増幅を35サイクル行う増幅プロフィールで、50pmolの各プライマーを総容量50ul中で用いて、PCR反応を行った。プロトタイプヌクレアーゼ融合遺伝子のクローニングに関して前述した通りに、PCR産物をpCR2.1ベクター中にクローニングし、TOPOクローンをスクリーニングした。配列を確かめた上で、カセットを、mIgG尾部と融合させたpDG発現ベクター中にサブクローニングするか、または種々の長さのリンカーを有するTrex1-lnk分子を構築するために(g4s)nリンカーの1つと共クローニングした。プロトタイプヌクレアーゼ融合遺伝子に関して記載した通りに、プラスミド単離物を上記の通りにCOS細胞に一過性にトランスフェクトするとともに、安定したCHOトランスフェクト体を作製した。
【0214】
Trex1Igをコードする融合遺伝子は以下の通りに構築した:これらの遺伝子は、ヒトVK3リーダーペプチドを、COOH末端が72アミノ酸短縮したマウスTrex1(細胞内の核標的指向性配列を除去するため)と融合させ、それを(gly4ser)4(SEQ ID NO:130)または(gly4ser)5リンカー(SEQ ID NO:131)と融合させ、それをBalb/c IgG2aアレルのIgGc配列に比していくつかの変化を組み入れたマウスIgG2a/cアレルと融合させたものを組み入れている。
【0215】
20mM Tris(pH7.5)、5mM MgCl
2、2mM DTTを含む30ulの反応物におけるTrex1-Igのエキソヌクレアーゼ活性を、36merオリゴヌクレオチドを基質として用いて測定した。インキュベーション反応を37℃で20〜30分間進行させた。試料を23%ポリアクリルアミドDNAゲル上での電気泳動に一晩にわたって供した。0.5ug/ml臭化エチジウムを含むTBE緩衝液中でゲルをインキュベートした。UVトランスイルミネーターによってDNAを可視化し、臭化エチジウムフィルターを装着したKodak EDAS 290デジタルカメラを用いて写真を撮影して、Kodak Molecular Imagingソフトウエアを用いて解析した。mTrex1-(g4s)4-mIgG2a-c(SEQ ID NO:166)およびmTrex1-(g4s)5-mIgG2a-c(SEQ ID NO:167)を産生したCOSに関するtrex1活性アッセイの結果は、
図16に示されている。
【0216】
実施例17.COS-7の一過性トランスフェクションによって産生されたmTrex1-Ig単一ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子のウエスタンブロット
COS-7細胞に対して、Trex1-Igをコードするハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を含むプラスミドを、以下の通りに一過性にトランスフェクトした:これらの遺伝子は、ヒトVK3リーダーペプチドを、COOH末端が72アミノ酸短縮したマウスTrex1(核膜標的指向性配列を除去するため)と融合させ、それを(gly4ser)4または(gly4ser)5リンカーと融合させ、それをBalb/c IgG2aアレルのIgGc配列に比していくつかの変化を組み入れたマウスIgG2a/cアレルと融合させたものを組み入れている。COS上清を72時間後に採取し、0.5〜1.0mlの試料(実験による)を、100ulのプロテインA-アガロースビーズにより、4℃で一晩かけて免疫沈降させた。プロテインAビーズを遠心し、PBS中で2回洗浄した後に、還元性SDS-PAGEローディング緩衝液中に再懸濁させた。試料を100Cで5分間熱処理し、プロテインAビーズを遠心してペレット化させて、試料用緩衝液を10% SDS-PAGEゲル上にローディングした。試料の電気泳動を150ボルトで1.5〜2時間行い、ニトロセルロースメンブレンへのゲルのブロッティングを30mAmpで1時間行った。ウエスタンブロットをTBS/5%脱脂乳中に一晩おいてブロックした。ブロットを1:2500のHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)結合ヤギ抗マウスIgG2a/c(Fc特異的、KPL)とともに室温で1.5時間インキュベートし、PBS/0.5% Tween20中で5回またはそれ以上の回数洗浄した上で、ECL試薬を用いてブロットの現像を行った。
図17は、mTrex1-(g4s)4(SEQ ID NO:166)または(g4s)5-mIgG2a-c(SEQ ID NO:167)融合タンパク質を発現するCOS7培養上清からの免疫沈降物のウエスタンブロットを示している。
【0217】
実施例18.DNase1L3Ig CHO由来の融合タンパク質のエキソヌクレアーゼ活性
DNase1L3を、そのネイティブなリーダーペプチド配列を含むmDNase1L3をクローニングするための以下のプライマー対を用いて、マウス脾臓cDNAからクローニングした。
【0218】
または、ネイティブなリーダーの代わりにヒトVK3リーダーペプチドを付着させる、以下のプライマー対を用いるPCR反応を設定した。
【0219】
94C 30秒間;50C 60秒間;68C 90秒間による増幅を35サイクル行う増幅プロフィールで、50pmolの各プライマーを総容量50ul中で用いてPCR反応を行った。プロトタイプヌクレアーゼ融合遺伝子のクローニングに関して前述した通りに、PCR産物をpCR2.1ベクター中にクローニングし、TOPOクローンをスクリーニングした。配列を確かめた上で、カセットを、mIgG尾部と融合させたpDG発現ベクター中にサブクローニングした。プロトタイプヌクレアーゼ融合遺伝子に関して記載した通りに、プラスミド単離物を上記の通りにCOS細胞に一過性にトランスフェクトするとともに、安定したCHOトランスフェクト体を作製した。
【0220】
DNase1L3Ig(SEQ ID NO:185)CHOクローンからのタンパク質抽出物におけるエキソヌクレアーゼ活性を、20mM Tris(pH7.5)、5mM MgCl
2、2mM DTTおよび基質を含む30ulの反応物において測定した。インキュベーションは37℃で20〜30分間とした。続いて試料をアガロースDNAゲル上で一晩かけて泳動させた。臭化エチジウムを含むTBE緩衝液中でゲルをインキュベートした。DNAをUV下で可視化出した。クロマチン消化分析の結果は
図18に示されている。
【0221】
実施例19.CHO上清の容量増加に伴うエキソヌクレアーゼ活性に関する用量のタイトレーション
図19は、DNase1L3Ig融合タンパク質(SEQ ID NO:183または185)を発現するCOS上清から得たエキソヌクレアーゼ消化パターンのタイトレーション分析を示している。核DNA分解アッセイを以下の通りに行った:HeLa細胞をDMEM培地中で培養し、NP-40溶解を用いて10e5個の細胞から核を単離した。10mM Hepes(pH 7.0)、50mM NaCl、2mM MgCl
2、2mM CaCl
2および40mM b-グリセロリン酸を含む200ulの反応緩衝液中に核を希釈させた。DNase1L3をトランスフェクトしたCOS細胞からの図に表記された培養上清の容量中で、核を37℃で3時間インキュベートした。QiAmp blood DNA minikitを用いて核DNAを単離した。DNAを1.5%アガロースゲル電気泳動によって分析した。対照反応物に関しては、ヌクレアーゼ活性を阻害するためにヘパリンを250i.u./mlで用いた。
【0222】
実施例20.DNase1-Ig単一および二重酵素ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の構築および発現
ヒトDNase1分子またはDNase1様分子の天然のアレルが報告されている。A114F突然変異が、ヒトDNase1様酵素の天然変異体に存在すること、およびこの配列変化を含む酵素のアクチン耐性をもたらすことが以前に報告されている。Pan, CQ, Dodge TH, Baker DL, Prince WE, Sinicropi DV, and Lazarus RA. J Biol Chem 273: 18374-18381, (1998);Zhen A, Parmelee D, Hyaw H, Coleman TA, Su K, Zhang J, Gentz R, Ruben S, Rosen C, and Li Y. Biochem and Biophys Res Comm 231: 499-504 (1997);およびRodriguez AM, Rodin D, Nomura H, Morton CC, Weremowicz S, and Schneider MC. Genomics 42: 507-513 (1997)を参照のこと、これらはすべて参照により本明細書に組み入れられる。
【0223】
同様に、G105R突然変異は、一部の集団または全集団において多型性であり、かつ自己免疫に関連する、ヒトDNase1をコードする遺伝子における一塩基多型として最近報告されている(Yasuda T, Ueki M, Takeshita H, Fujihara J, Kimura-Kataoka K, Lida R, Tsubota E, Soejima M, Koda Y, Dato H, Panduro A. Int J Biochem Cell Biol 42(7): 1216-1225 (2010)を参照のこと、これは参照により本明細書に組み入れられる)。この位置でのアレル変異体は、野生型に比して高い活性を保有するDNase1アイソフォームをもたらした。別の天然の多型性突然変異(R21S)も、より高い活性を付与することが報告されている(Yasuda、前記を参照)。
【0224】
SLE患者ではDNase1活性のレベルが有意に低いことが報告されている(Martinez-Valle F, Balada E, Ordi-Ros J, Bujan-Rivas S, Sellas-Femandez A, Vilardell-Tarres M. Lupus 18(5): 418-423 (2009)を参照のこと、これは参照により本明細書に組み入れられる)。
【0225】
それ故に、天然の酵素変異体は、これらのアイソフォームがヒト集団に存在するために、患者に投与された場合に免疫原性がより低い可能性がある。本発明者らは、A114Fに類似したアレルのアクチン耐性特性と、G105Rのようなアレルの酵素活性上昇との組み合わせにより、インビトロおよびインビボで臨床活性の改善を示す可能性のあるヒトDNase1の新規アレル変異体が作製されるであろうと推論した。本発明者らの知る限り、本発明者らの報告は、G105RおよびA114Fという2つの天然の変異体の組み合わせによって作製されたDNase1のこの新たな突然変異型に関する初の報告である。
【0226】
ヒトDNase1を、以前の記載の通りに、ランダムプライマー法によるcDNA逆転写および以下のプライマーセットを用いるPCRによって、ヒト膵臓RNA(Ambion)から単離した:
【0227】
または、3'DNaseカセットを、以下のプライマー対を用いるPCRによって増幅した:
【0228】
PCR反応は、Platinum PCR Supermixを以前の記載の通りに用い、総容量50ul中で50pmolの各プライマー、2ulのcDNAを用いて行った。増幅プロフィールは94C 30秒間;55C 30秒間;68C 90秒間を35サイクルとした。
【0229】
野生型遺伝子をPCRによって増幅した上で、断片をゲル電気泳動に供し、850bp断片をQIAquickカラム精製によって精製した。他の構築物に関して記載した通りに、断片をpCR2.1中にクローニングし、製造元の指示に従ったTOPOクローニングによって形質転換を行った。配列を確かめた上で、PCRプライマーを、比活性を改善し、かつアクチンの阻害活性に対する耐性を改善することが報告されているDNase1の天然のアレルを含むサブフラグメントの作製のために用いた。これらのサブフラグメントは重複配列を含んでおり、そのため所望のアレル変異を含む完全なDNase1サブクローンの増幅が可能であった。60mmディッシュ中にて、Polyfect(Qiagen, Valencia, CA)トランスフェクション試薬を用いて、COS7細胞を一過性にトランスフェクトした。プラスミドDNAは、Qiagen QIAprep miniprepキットを製造元の指示に従って用いて調製した。プラスミドを50ulのEB緩衝液中に溶出させた。DNA濃度をNanodropを用いて測定し、2.5ugのプラスミドDNAに相当するアリコートを各トランスフェクション反応に用いた。各DNaseIg(SEQ ID NOS:118、119、120、121、122または123)またはRNase-Ig-DNase(SEQ ID NO:115、116、117)発現カセットを、pcDNA3.1の派生物である哺乳動物発現ベクターpDG中に挿入した。トランスフェクトされた細胞を37℃、5% CO2にて72時間インキュベートし、その後にさらなる分析のために培養上清を採取した。培養上清採取し、残りの細胞を溶液から遠心沈降させて、液体を新たなチューブに移した。
【0230】
COS-7細胞に対して、ヒトDNase1の野生型(SEQ ID NO:118)または天然のDNase1突然変異アレル(G105Rおよび/またはA114F)(SEQ ID NO:115、116または117)を野生型ヒトIgG1 Fcドメインと融合させたものを含むプラスミドを一過性にトランスフェクトした。このヒンジ-CH2-CH3カセットは、このドメイン内の最初のシステインを消失させる単一のC→S突然変異をヒンジ領域に含むが、これは抗体の軽鎖中に存在するその対合パートナーが存在しないことが原因でそれが非対合性になるためである。加えて、より複雑な多ヌクレアーゼ融合タンパク質も、COS細胞の一過性トランスフェクション物によって発現された。一過性トランスフェクト体からの上清に対してウエスタンブロット分析を行った。
図20に示されている分子は、ヒトDNase1がヒトIgG1野生型Fcドメイン(SEQ ID NO:154、155、156もしくは159)と融合したものを含むか、またはヒトRNase1(野生型)がヒトIgG1のSCCヒンジ-CH2-CH3 Fcドメインと融合し、その後にリンカードメインをプロテアーゼ切断から保護するN結合型グリコシル化部位を含む新規リンカーが続き、さらに野生型(SEQ ID NO:153)もしくは突然変異アレル(SEQ ID NO:151もしくは152)型のヒトDNase1を分子のカルボキシ末端に有するものを含む。COS上清を72時間後に採取し、0.5〜1.0mlの試料(実験による)を、100ulのプロテインA-アガロースビーズにより、4℃で一晩かけて免疫沈降させた。プロテインAビーズを遠心し、PBS中で2回洗浄した後に、還元性または非還元性のLDS試料用緩衝液であるNuPAGEゲル用のSDS-PAGEローディング緩衝液中に再懸濁させた。試料を製造元の指示に従って加熱し、プロテインAビーズを遠心してペレット化させて、試料用緩衝液を5〜12%のNuPAGE勾配ゲル上にローディングした。試料の電気泳動を150ボルトで1.5〜2時間行い、ニトロセルロースメンブレンへのゲルのブロッティングを30mAmpで1時間行った。ウエスタンブロットをTBS/5%脱脂乳中に一晩おいてブロックした。ブロットを1:2500のHRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)結合ヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的、Jackson Immunoresearch)またはヤギ抗マウスIgGとともに室温で1.5時間インキュベートし、PBS/0.5% Tween20中で5回またはそれ以上の回数洗浄した上で、ECL試薬を用いてブロットの現像を行った。
【0231】
実施例22.ヌクレアーゼ酵素活性に関するCOS上清のスクリーニング
図21は、hDNase1IgおよびhRNase1-Ig-hDNase1融合タンパク質を発現する採取したCOS上清に対する、SREDによるRNase活性アッセイ(SRED)分析の結果を示している。
【0232】
hDNaseIg単一または多重特異的ヌクレアーゼの一過性トランスフェクション物からのCOS上清を、以下の通りにヌクレアーゼ活性に関してアッセイした。2%アガロースゲルを、蒸留水を用いて調製した。ポリ-C(Sigma)を蒸留水中に3mg/mlで溶解させて、ゲルプレートを以下の通りに調製した:1.5mlの反応緩衝液(0.2M Tris-HCl pH 7.0、40mM EDTAおよび0.1mg/ml臭化エチジウム)、1mlのポリ-Cおよび0.5mlの水をチューブに入れ、50Cに5分間維持した。3mlのアガロース(50Cに保つ)をチューブに添加した。この混合物を直ちにガラスプレート上に注いだ。ゲルへの穿孔によってサンプリングウェルを作製した。およそ2μlの各試料をローディングし、湿潤チャンバー内でゲルを37℃で4時間インキュベートした。続いてゲルを、緩衝液(20mM酢酸ナトリウムpH5.2、20mg/ml臭化エチジウム)中にて氷上で30分間インキュベートした。UVトランスイルミネーター上でのゲルの写真を、臭化エチジウムフィルターを装着したKodak DC290デジタルカメラを用いて撮影し、Kodak Molecular Imagingソフトウエアを用いて解析した。
【0233】
図22は、トランスフェクトされた細胞からのCOS上清に対して行ったDNaseヌクレアーゼ活性アッセイの結果を表示している合成図を示している。DNase1野生型および突然変異型Ig融合タンパク質の以下のクローンをトランスフェクトしてから72時間後に培養上清を採取した:(1)090210-8=hDNase1-WT-hIgG1 WT(SEQ ID NO:154);(2)090210-9=hDNase1-G105R;A114F-hIgG1 WT(SEQ ID NO:159);(3)091210-8=hRNase1-WT-hIgG1-WT-DNase1-G105R;A114F(SEQ ID NO:151)、および(4)091210-14=hRNase-WT-hIgG1-WT-DNase1-A114F(SEQ ID NO:152)。
【0234】
発現された-Ig融合タンパク質のプロテインAアガロースビーズに対する結合を促進するために、上清のpHは炭酸水素緩衝液によって0.0に調整した。
図23のパネルAは、プラスミドDNA消化のゲル電気泳動分析を示している:プロテインAアガロースのスラリー(試料当たり50ul)をPBS中で洗浄し、-Ig融合タンパク質を免疫沈降させるための100ulの培養上清とともに4℃で一晩インキュベートした。免疫沈降物を750ulのPBS中で4〜5回洗浄し、およそ3500rpmで遠心した後に、PBSを吸引した。最終的なプロテインA沈降物を、1.5ugのプラスミドDNA(pDG発現ベクター)を含む、20mM Tris ph7.5、2mM CaCl2および2mM MgCl2を含む50ulの反応緩衝液中に再懸濁させた。反応物を37℃で30分間インキュベートし、65℃で5分間加熱して、反応物中に存在するDNAを、1.5% TBE-アガロースゲル上でのアガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0235】
パネルBは、DNase Alert Kit(IDT/Ambion)を用いて同じ培養上清に対して行った、ヌクレアーゼ活性アッセイの結果を示している。凍結乾燥させたDNase Alert Substrate(50pmol)を含む反応チューブを、キットに付属して供給される5ulのヌクレアーゼ非含有ddH2O、5ulの10×DNase alert緩衝液によって再懸濁させて、40ulのプロテインAスラリーを以下の通りに免疫沈降させた:これらの免疫沈降のためには、50ulのプロテインAアガロースビーズを50ulの培養上清とともに一晩インキュベートした。続いて試料を0.75mlのPBSで5回洗浄した。最終的なプロテインA沈降物を80ulのヌクレアーゼ非含有ddH2O中に再懸濁させて、40ulのスラリー(沈降物の半分)を反応チューブに移した。モックトランスフェクションを行ったIPおよびddH2Oを用いる陰性対照も設定した。キットに備えられたDNase1(2単位)を含む陽性対照も設定した。反応物を37℃で1時間インキュベートして、蛍光を可視化するために短波長UV透過照明に曝露させた。DNA消化の相対量が蛍光の度合いによって指し示される。
【0236】
実施例22.DTgマウスにおけるmac-2陽性細胞の検討
早期ループスによる死亡は通常、腎炎、または腎炎を治療するための免疫抑制に起因する感染が原因である。このため、あらゆる新たな治療法にとって極めて重要なアウトカムは、腎炎の改善である。ヒトでの試験はタンパク尿およびクレアチニンの定量に限られるが、マウスでは組織学的検査および免疫細胞化学検査によって腎臓の炎症および損傷の正確な評価を得ることができる。本発明者らは、TLR7.1×RNase二重トランスジェニック(DTg)マウスで、抗RNA抗体がより少なく、B細胞活性化がより低下しており、免疫沈着物がより少なく、かつPASで陽性染色される糸球体がより少ないことを報告している。本発明者らはさらに、抗Mac-2(ガレクチン3)抗体を用いて腎臓のマクロファージ浸潤を比較した(Iyoda et al. Nephrol Dial Transplant 22: 3451, 2007)。単独Tgまたは二重Tgから入手した腎臓からの凍結切片を、記載の通りに(Iyoda et al)、Mac-2陽性マクロファージの数ならびに糸球体サイズに関して検討した。無作為に選択した20個の糸球体(腎臓の外側から内側に)を陽性細胞に関して算定した。DTgにおける糸球体内のmac-2陽性染色細胞は、単独Tgマウスと比較してはるかに少なかった(データ非提示)。各群でn=4〜5であるパイロット試験においてマウス1匹当たり20個の糸球体を算定した結果により、平均+/-SEは単独TgおよびDTgに関してそれぞれ3.8+/-1.1および1.4+/-0.2であり、p=0.05であることが明らかになった。加えて、本発明者らは糸球体係蹄サイズも定量し、DTgマウスにおける糸球体係蹄サイズの有意な減少を観察した(単独TgおよびDTgにおいてそれぞれ179.4+/-41および128+/-16.8um2、p=0.037)。
【0237】
実施例23.精製マウスRNaseA-Ig融合タンパク質のKm
二価RNase-Ig融合タンパク質(SEQ ID NO:150)の機能的特徴をさらに明確にするために、本発明者らはミカエリス定数Kmの決定を行った。
図23に示されているように、この酵素は高い親和性を有し、暫定的Kmは280nMである(これと比較して、ポリCを基質として用いた場合のRNaseAのKmは34nMである(delCardayre et al, Prot Eng 8:261, 1995))。
図23は、RNase Alert Substrate(Ambion/IDT)を用いてアッセイし、Spectramax M2マイクロプレートリーダーによって定量した酵素反応速度を示している。データはSoftmax Proソフトウエア(Molecular Devices)を用いて解析した。種々の基質濃度での反応速度を測定し、そのデータをラインウィーバー・バークプロットとして示している。容量に関して補正した見かけのKmは280nMである。
【0238】
実施例24.抗RNA抗体に関する564Igi Tgマウスの分析
564 Igi Tgマウス:Dr. Imanishi-Karaは、H564ハイブリドーマ由来のVDJ遺伝子を内因性のIgh遺伝子座およびIgk遺伝子座の中で再編成させて、B6をバックグラウンドとする564Igiマウスを作製した。これらのマウス由来の血清は固定細胞の細胞質および核小体を染色し、このことは際立った抗RNA特異性を指し示している。この知見に一致し、かつ本特許出願に特に関連することとして、これらのマウスをTRL7欠損性にすると抗体産生は抑制され、このことは抗体産生を刺激するものがまさにRNAであることを指し示している。このマウス系統は遅発性糸球体腎炎を発症する。本発明者らは、H564に関してトランスジェニック性であるマウス、さらには564Ig導入遺伝子およびRNase導入遺伝子を共発現する二重トランスジェニックマウスにおける抗RNA抗体の発現を分析した。
図24は、これらのトランスジェニックマウスの加齢に伴う継続的間隔でのマウス血清中の抗RNA抗体のレベルを比較している。
【0239】
Gavalchin, J., R.A. Seder, and S.K. Datta. 1987. The NZB X SWR model of lupus nephritis. I. Cross-reactive idiotypes of monoclonal anti-DNA antibodies in relation to antigenic specificity, charge, and allotype. Identification of interconnected idiotype families inherited from the normal SWR and the autoimmune NZB parents. J. Immunol. 138:128-137;およびBerland, R., L. Fernandez, E. Kari, J.H. Han, I. Lomakin, S. Akira, H.H. Wortis, J.F. Kearney, A.A. Ucci, and T. Imanishi-Kari. 2006. Toll-like receptor 7-dependent loss of B cell tolerance in pathogenic autoantibody knockin mice. Immunity 25:429-440を参照。
【0240】
実施例25.ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の生物活性のインビトロ評価
1つまたは複数のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を、例えば、上記の実施例に以前に記載したように、アフィニティークロマトグラフィーまたはイオン交換クロマトグラフィーによって精製する。ある場合には、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子はポリペプチドである。ある場合には、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、表2からの1つまたは複数の配列を含む。ある場合には、分子はSEQ ID NO:161、162または163である。ある場合には、分子はSEQ ID NO:145およびSEQ ID NO:149を含む。ある場合には、分子はSEQ ID NO:151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、166、167、169、170、171、173、175、177、179、181、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205または207である。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、本明細書に開示されたもののいずれか、および、例えば、ヌクレアーゼドメインを選び、それをFcドメインと連結すること;または例えば、ヌクレアーゼドメインを選び、それをリンカードメインとともにFcドメインと連結することによって、本明細書に開示された配列(表2参照)から構築することができる任意のものでありうる。さまざまなリンカードメイン(例えば、本明細書に記載されたもの)を、Fcドメインおよび/またはヌクレアーゼドメインを連結するために用いることができる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40またはそれ以上のアミノ酸の長さであるリンカードメインを用いることができる。分子を、それらが所望のヌクレアーゼ機能を有することを確かめるための定性的アッセイを用いて、インビトロでのヌクレアーゼ比活性に関してアッセイする。続いて一般には、RNaseまたはDNase Alert Kit試薬などの基質、および時間の関数として読み取りを行うように設定された蛍光プレートリーダーを利用する蛍光に基づく速度論的アッセイによって、比活性が決定される。加えて、一般には、タンパク質溶液を、検出限界が0.06EU/mlである、Cape Cod,Inc.(E. Palmouth, MA)のPyrotellカブトガニアメーバ様細胞溶解物(Limulus Amebocyte Lysate)(LAL)キットなどの市販のキットを用いて、溶液をエンドトキシン混入に関して検査する。続いて分子を、生物活性に関する種々のインビトロアッセイを用いてアッセイする。
【0241】
一連のインビトロアッセイにより、培養物中の分子の存在下または非存在下における、さまざまな刺激に応答したヒトPBMCによるサイトカイン産生に対する分子の効果が測定されるであろう。正常ヒトPBMCまたは患者ヒトPBMC(およそ1×10e6個の細胞)を、アッセイに応じて24、48または96時間培養する。PBMCを、TLRリガンド、共刺激(costimulatory)抗体、免疫複合体、および正常血清または自己免疫性血清などの刺激の存在下で培養する。サイトカイン産生に対する分子の効果を、IL-6、IL-8、IL-10、IL-4、IFN-γ、TNF-αに対するBiolegend(San Diego, CA)による抗体ペアキットなどの市販の試薬を用いて測定する。サイトカイン産生に対する分子の効果を判定するために、インビトロ培養物からの培養上清を、24、48時間の時点またはより以後の時点で採取する。IFN-α産生は、例えば、PBLインターフェロンの供給元(Piscataway, NJ)などから入手しうる抗ヒトIFN-α抗体および標準曲線試薬を用いて測定される。類似した一群のアッセイを、ヒトリンパ球の部分集団(単離された単球、B細胞、pDC、T細胞など)を用いて行い;例えば、Miltenyi Biotech(Auburn, CA)から入手しうる市販の磁性ビーズを利用した単離用キットなどを用いて精製する。
【0242】
加えて、CD5、CD23、CD69、CD80、CD86およびCD25などのリンパ球活性化受容体の発現に対する分子の効果を、刺激後のさまざまな時点で評価する。これらの分子が免疫細胞活性化と関連のある種々の受容体の発現にどのようにして影響するかを明らかにするために、PBMCまたは単離された細胞部分集団を多色フローサイトメトリーに供する。
【0243】
別の一群のアッセイは、インビトロでの種々のリンパ球部分集団の増殖に対するこれらの分子の効果を測定するものと考えられる。これらのアッセイは、例えば、刺激の前にヒトPBMCのCFDA-SE染色(Invitrogen, Carlsbad, CA)を利用する。5mMのCFSEを、10e7〜10e8個のPBMCまたは精製された細胞サブセットとともにPBS/0.5% BSA中に1:3000に希釈し、標識反応物を37Cで3〜4分間インキュベートした後に、残りのCFSEを除去するためにRPMI/10% PBS中で数回洗浄する。続いて、CFSE標識細胞をさまざまな刺激(TLRリガンド、共刺激抗体など)および分子とともに共培養反応物中で4日間インキュベートし、その後に、色素と結合させた、細胞部分集団に特異的な抗体を用いるフローサイトメトリーによって細胞増殖について分析する。
【0244】
DCおよびマクロファージへの単球のインビトロ成熟に対するこれらの分子の効果も、正常PBMC試料および患者PBMC試料の両方を用いて評価する。
【0245】
ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の有効性は、本明細書に開示されたハイブリッド型ヌクレアーゼ分子で処理した細胞によるアッセイの結果を、対照製剤で処理した細胞によるアッセイの結果と比較することによって実証される。処理の後に、上記のさまざまなマーカー(例えば、サイトカイン、細胞表面受容体、増殖)のレベルは一般に、有効な分子で処理した群において、処理の前に存在したマーカーレベルに比して、または対照群において測定されたレベルに比して改善する。
【0246】
実施例26:ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の、それを必要とする哺乳動物に対する投与
哺乳動物(例えば、マウス、ラット、齧歯動物、ヒト、モルモット)を試験に用いる。哺乳動物に対して、表2からの1つもしくは複数の配列を含む1つもしくは複数のハイブリッド型ヌクレアーゼ分子、または対照を、(例えば、静脈内に)投与する。ある場合には、分子は SEQ ID NO:161、162または163である。ある場合には、分子はSEQ ID NO:145およびSEQ ID NO:149を含む。ある場合には、分子はSEQ ID NO:151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、166、167、169、170、171、173、175、177、179、181、187、189、191、193、195、197、199、201、203、205または207である。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、本明細書に開示されたもののいずれか、および、例えば、ヌクレアーゼドメインを選び、それをFcドメインと連結すること;または例えば、ヌクレアーゼドメインを選び、それをリンカードメインとともにFcドメインと連結することによって、本明細書に開示された配列(表2参照)から構築することができる任意のものでありうる。さまざまなリンカードメイン(例えば、本明細書に記載されたもの)を、Fcドメインおよび/またはヌクレアーゼドメインを連結するために用いることができる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40またはそれ以上のアミノ酸の長さであるリンカードメインを用いることができる。ある場合には、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子を薬学的に許容される担体と製剤化する。ある場合には、分子を、上記の薬学的組成物の項に記載したように、薬学的組成物として製剤化する。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、RNaseおよび/またはDNaseを標的とする。
【0247】
有用と考えられる場合には、多回投与を用いる。IFN-αレベル、IFN-α応答性遺伝子レベル、自己抗体の力価、腎臓の機能および病態、ならびに/または循環血中の免疫複合体レベルに対する効果を、哺乳動物においてモニターする。同様の試験を、異なる治療プロトコールおよび投与経路(例えば、筋肉内投与など)を用いて行う。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の有効性は、本明細書に開示されたハイブリッド型ヌクレアーゼ分子によって治療された哺乳動物におけるIFN-αレベル、IFN-α応答性遺伝子レベル、自己抗体の力価、腎臓の機能および病態、ならびに/または循環血中の免疫複合体レベルを、対照製剤によって治療された哺乳動物と比較することによって実証される。
【0248】
一例においては、治療を必要とするヒト対象を選択するかまたは同定する。対象は、例えば、SLEの原因または症状を減少させることを必要としてもよい。対象の同定は、臨床の場において行われてもよく、または他の場所、例えば、対象の家庭で、対象自らが自己検査キットを用いることによって行われてもよい。
【0249】
ゼロ時間の時点で、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の適した初回用量を対象に投与する。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、本明細書に記載の通りに製剤化する。初回投与からある期間、例えば、7日間、14日間および21日間の後に、例えばIFN-αレベル、IFN-α応答性遺伝子レベル、自己抗体の力価、腎臓の機能および病態、ならびに/または循環血中の免疫複合体レベルなどを測定することによって、対象の状態を評価する。他の関連した基準を測定することもできる。投薬の回数および強度を、患者の必要性に応じて調整する。
【0250】
治療の後に、対象のIFN-αレベル、IFN-α応答性遺伝子レベル、自己抗体の力価、腎臓の機能および病態、ならびに/または循環血中の免疫複合体レベルは、治療の前に存在したレベルに比して、または同程度に罹患しているが治療されていない/対照対象におけるレベルに比して低下する、ならびに/または改善する。
【0251】
別の例においては、治療を必要とする齧歯動物対象を選択するかまたは同定する。対象の同定は研究室の場であってもよく、または他の場所であってもよい。
【0252】
ゼロ時間の時点で、ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子の適した初回用量を対象に投与する。ハイブリッド型ヌクレアーゼ分子は、本明細書に記載の通りに製剤化する。初回投与からある期間、例えば、7日間、14日間および21日間の後に、例えばIFN-αレベル、IFN-α応答性遺伝子レベル、自己抗体の力価、腎臓の機能および病態、ならびに/または循環血中の免疫複合体レベルなどを測定することによって、対象の状態を評価する。他の関連した基準を測定することもできる。投薬の回数および強度を、対象の必要性に応じて調整する。
【0253】
治療の後に、対象のIFN-αレベル、IFN-α応答性遺伝子レベル、自己抗体の力価、腎臓の機能および病態、ならびに/または循環血中の免疫複合体レベルは、治療の前に存在したレベルに比して、または同程度に罹患しているが治療されていない/対照対象におけるレベルに比して低下する、ならびに/または改善する。
【0254】
本発明を、好ましい態様およびさまざまな代替的態様を参照しながら、詳細に示し、説明してきたが、関連した技術分野の当業者には、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、形態および詳細のさまざまな変更を行いうることが理解されるであろう。
【0255】
本明細書の本文中に引用された参考文献、交付済み特許および特許出願はすべて、目的を問わず、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0256】
【表1】
【0257】
【表2】