(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記統計情報生成手段は、地図上の区間ごとに前記運転情報を分割し、区間ごとに分割された運転情報を用いて区間ごとの時系列パターンを算出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態として示す運転支援システムは、例えば
図1に示すように構成されている。
図1に示すように、この運転支援システムは、運転情報取得部1、車両位置情報取得部2、統計情報生成部3、地図情報生成部4、地図情報参照部5、運転支援部6、及び、地図情報記憶部7を含む。
【0011】
なお、運転支援システムの一部は、実際にはROM、RAM、CPU等にて構成されているが、当該CPUがROMに格納された運転支援用のプログラムに従って処理をすることによって実現できる機能をブロックとして説明する。
【0012】
運転情報取得部1は、運転者状態情報取得部11、車両周囲情報取得部12、車両情報取得部13のうち、一つがあればよい。運転者状態情報取得部11は、運転者の状態を検出する。車両周囲情報取得部12は、車両周囲の環境情報を取得する。車両情報取得部13は、車両情報として運転者の操作量及び車両挙動を検出する。運転者状態情報取得部11は、取得した運転情報を車両位置情報取得部2、統計情報生成部3及び運転支援部6に供給する。
【0013】
車両位置情報取得部2は、車両の位置情報を取得する。この車両位置情報取得部2は、例えば、GPSアンテナ及びGPS用の演算機器等からなる。車両位置情報取得部2は、運転情報取得部1から取得した運転情報としての車両の挙動に基づいて、車両の位置情報を演算してもよい。車両位置情報取得部2は、取得した車両の位置情報を運転支援部6、地図情報生成部4及び地図情報参照部5に供給する。
【0014】
統計情報生成部3は、運転情報取得部1から供給された運転情報を時系列パターンとして統計処理して、統計情報を生成する。
【0015】
地図情報生成部4は、車両位置情報取得部2から得られる運転情報を取得した時の車両の位置情報と、統計情報生成部3により生成された統計情報とを関連付けて地図情報を生成する。すなわち、地図情報生成部4は、位置情報に基づき統計情報生成部3で生成される統計情報を地図情報とする。
【0016】
地図情報記憶部7には、データベースとして道路地図データが格納されている。地図情報記憶部7は、地図情報生成部4から送られる地図情報を書き込むことができる地図情報更新部71を備える。地図情報更新部71は、既存の地図情報を地図情報生成部4により生成された地図情報に更新する。
【0017】
地図情報参照部5は、車両位置情報取得部2によって取得された位置情報に基づいて、地図情報記憶部7に記憶された地図情報を参照して読み出す。これにより、地図情報参照部5は、地図情報記憶部7に蓄えられたデータのうち、現在の車両位置に記憶された運転に関する統計情報を引き出す。
【0018】
運転支援部6は、地図情報参照部5によって得られた統計情報(地図情報)に基づいて、運転支援を行う。また、運転支援部6は、地図情報のみならず、運転情報取得部1によって得られるリアルタイムの運転情報に基づいて、運転支援を行ってもよい。この運転支援は、運転者に対して運転に有用な情報を提供することを含む。また、運転支援部6は、統計情報及び運転情報に基づいて、車両の制御を行ってもよい。
【0019】
つぎに、上述した運転支援システムにおいて、運転情報取得部1及び車両位置情報取得部2による情報取得処理の詳細について説明する。
【0020】
車両位置情報取得部2は、車載のナビゲーションシステムや、運転者の持つ携帯電話などに搭載されているGPS(Global Positioning System)の信号を利用する。車両位置情報取得部2は、位置情報として、GPSで緯度経度、高度などを取得する以外に、車載ナビゲーションシステムなどが持つ地図情報を位置情報としてもよい。公知のナビゲーションシステム用地図として、例えば、地図上で一定間隔のメッシュ状に区切られた区画の番号や、道路をリンクとして表現した際のリンク番号、交差点や分合流地点をリンク同士の接点であるノードとして表現し、そのノード番号などを地図情報として持つ地図が知られている。車両位置情報取得部2は、車載GPSにより車両位置の緯度経度を検出した後に、当該地図情報と車両位置をマッチングし、マッチング後のメッシュ番号やリンク番号、ノード番号を、位置情報として緯度経度に加えてもよい。
【0021】
運転者状態情報取得部11は、運転者の状態として顔の動きを検出する。運転者状態情報取得部11は、例えば運転席前方に設置された撮像装置により運転者の頭部を含む映像を取得し、この映像情報を顔動き検出装置に入力する。顔の動き検出装置としては、公知の認識手法を利用すればよい。例えば特開2005−196567に示された技術を利用可能である。この顔向き検出装置により、運転者状態情報取得部11は、頭部の姿勢角を取得する。また、運転者状態情報取得部11は、頭部の姿勢角以外に、撮像した映像に基づいて、運転者の視線や瞬き、口の動きや表情、顔や頭部を触る手の動きなどを検出し、運転者の状態情報として利用してもよい。更に、運転者状態情報取得部11は、運転者の体の動きとして、シート座面・背面・サイドサポートなどの体圧分布値を用いても良い。更に、運転者状態情報取得部11は、運転者の生体信号として、血圧や呼吸、心拍、発汗、筋電位などを利用したり、脳血流などにより簡易的に計測される脳活動量を利用してもよい。運転者状態情報取得部11は、生体情報と、視線、表情、体温など複数の計測値とを組み合わせ、公知の算出技術を用いて眠気やイライラ、覚醒度、緊張度、リラックスの度合いを運転者の状態を示す情報として算出し、取得しても良い。
【0022】
車両周囲情報取得部12は、車両周囲の環境情報として、自車両周囲の物体まで
の距離や物体形状などの観測値を取得する。このために、車両周囲情報取得部12は、例えば、レーンキープシステムや車間維持制御システムなどのセンサであるレーザーセンサやミリ波レーダー、超音波センサといった測距センサを利用する。また、
車両周囲情報取得部12は、ビデオカメラなど撮像装置の動画や静止画を用い、路面に描かれている白線や停止線、横断歩道、進路を示す矢印などの位置や、車線内の自車両の横位置や前方車線の曲率、信号機や道路標識、歩行者や自転車、周囲を走行する車両など、車を運転する際に運転者が注意を向ける対象を検出し、それら検出値や検出対象の形状や色、自車両との相対距離(位置)などを車両周囲の環境情報として取得してもよい。また、
車両周囲情報取得部12は、後述するように、センサ値や画像をもとに、渋滞の車列の中や、人ごみの中、閑散とした道路や住宅街の狭い生活道路といった、運転に関連する場の雰囲気を時系列データ化できれば、車両周囲の環境情報として取得してもよい。
【0023】
車両情報取得部13は、運転者の操作量や車両挙動の情報を取得する。車両情報取得部13は、例えば、操舵角、アクセル開度、ブレーキ操作量、方向指示器スイッチ信号、ワイパースイッチ信号、車速、前後加速度、上下加速度、左右加速度、ヨーレイト、ロールレイト、ピッチングレイトなどを取得する。車両情報取得部13は、センサや操作機器から直接信号を取得してもよく、また車両CANのような車載ネットワークに流れる信号を取得してもよい。車両挙動の検出に関し、例えば車体ヨーレイトは、車体に設けたヨーレイトセンサによって検出するのが最も直感的な方法である。しかし、直接に車両ヨーレイトを検出する以外にも、例えば操舵角と車両の速度を検出し、その結果に基づいて車両ヨーレイトを推定してもよい。車両ヨーレイトを推定する場合、ヨーレイトセンサの代わりに操舵角センサと車速センサを設ける。このように、車両情報取得部13は、直接に車両情報を検出せずに、演算による推定値としての車両情報を取得してもよい。
【0024】
また、運転情報取得部1及び車両位置情報取得部2で取得する情報は、車両CANに流れている情報のように車両に標準装備されているセンサ機器の情報以外に、車両の利用者が後から車載したセンサ機器の情報を利用しても良い。運転者状態情報取得部11において上述した運転者の生体信号を計測するセンサ機器などのように、例えば、既存のGPSやジャイロセンサを搭載するナビゲーションシステムや、車載ビデオカメラ、加速度センサやGPSを備えた携帯電話などのモバイル機器、既存のドライブレコーダーなどを車両に設置して、それらの機器が搭載するセンサの出力情報を利用しても良い。
【0025】
運転情報取得部1により取得する運転情報には、車速や舵角、車間距離といった1次元の情報が含まれる。運転情報には、1次元情報のほかに、多次元時系列情報が含まれる。例えば、運転情報には、カメラ画像やミリ波レーダーのように“面”で計測される情報が含まれる。更に、運転情報には、レーザーレーダーのような走査型センサにより“線(点列)”で計測される情報が含まれる。更に、運転情報には、車両四隅に設置した超音波センサや筋電位のように複数個で一式として扱われ、“複数点”に関連を持たせて計測される情報が含まれる。更に、カメラ画像などは、色、輝度、濃度といった情報や、テクスチャ情報、輪郭(エッジ)など物体形状特徴の情報、というように、画面を構成する1ピクセルの中にも意味が異なる複数の情報を持っている。
【0026】
本実施形態の運転支援システムは、上述の複数の1次元時系列情報や多次元時系列情報を、同じ交通環境において同じ地点で同じ時間に取得された情報として、各情報間の関連性を保った状態で統計処理を行うという特徴を有する。
【0027】
図2及び
図3は、運転情報取得部1により取得する情報が“面”で車外を撮像するカメラ映像100の場合に、静止画として映像を切り出し、それぞれの静止画から特徴量101を抽出して時系列化する処理のイメージ図である。色の特徴量やテクスチャ特徴量を抽出する場合は、運転情報取得部1は、
図2に示すように、カメラ映像100を分割したセルごとに特徴量101を算出し、時間軸に沿ってセルごとの特徴量の時間変化を時系列データとする。色の特徴量に関して、色空間としてRGB色空間やCIE−XYZ色空間、L*a*b*色空間など公知の色空間を利用してもよい。また、色の特徴量としてセルごとに、色ヒストグラムや、色空間における色分布の統計量である色モーメント(平均、分散、共分散、非対称性など)、などを利用してもよい。
【0028】
また、運転情報取得部1は、画像全体の特徴量を算出できる。さらに、運転情報取得部1は、画像をセルに分割して各領域の特徴量を計算した上で、領域に着目し、テクスチャ特徴量を利用してもよい。テクスチャ特徴量としては、規則的なテクスチャを記述する構造特徴(モルフォロジ演算、隣接グラフなどによる量)や、画像輝度の統計的分布で記述する統計特徴(フーリエ・パワースペクトル、濃度共起行列、マルコフランダムフィールド、フラクタルモデル、Gabor変換やWavelet変換など各種多重解像度特徴量など)といった公知の認識手法を利用すればよい。運転情報取得部1は、画像全体の色特徴量やテクスチャ特徴量を算出し、時系列データとして利用する。これにより、交通環境が人や自転車、他車両によって混雑している状態や空いている状態、壁や障害物が迫っている狭い道や山道、同じような景色が続く高速道路など、情報取得地点における交通環境(雰囲気)の時間変化を、時系列データとして統計的に蓄積・利用することができる。
【0029】
さらに、運転情報取得部1は、
図3に示すように物体形状の特徴量102を検出してもよい。運転情報取得部1は、走行車線内の自車両の横位置や前方車線の曲率、停止線や横断歩道などの路面表示、信号機や道路標識、歩行者や自転車、周囲を走行する他車両など、車を運転する際に運転者が注意を向ける対象を検出する。さらに、運転情報取得部1は、検出対象との相対距離(位置関係)やその形状、色などを検出する。運転情報取得部1は、車を運転する際に運転者が注意を向ける対象の形状や色などを、物体形状の特徴量102として取得する。
【0030】
運転情報取得部1は、対象を検出する過程で求める物体形状の特徴量102の変化や対象の動き(位置の時間変化)を、時系列データとして利用してもよい。特定対象の検出や形状特徴量の検出方法は、公知の認識手法を利用すればよい。例えば、大域形状特徴量として領域特徴量(Zemike moment、2D Angular Radial Transformation(ART)など)や輪郭特徴量(Fourier Descriptor、Curvature Scale Space、Edge Direction Histogramなど)を、局所特徴量として(Color)SIFTやSpin Images、Video Googleといった特徴量や、Bag-of-featuresアプローチなどを利用して、特定の対象物や形状特徴量を検出すればよい。
【0031】
運転情報取得部1は、
図4に示すような処理によって、取得した運転情報を時系列データに変換する。
【0032】
まず、ステップS1において、運転情報取得部1及び車両位置情報取得部2は、運転情報取得時の車両の位置情報と共に運転情報を取得する。
【0033】
次のステップS2において、運転情報取得部1は、取得した運転情報を時系列データ化する。CAN信号など取得時点で時系列化の処理が必要ない情報については、ステップS2をスキップして、ステップS3へ進めてもよい。上述した映像などが運転情報である場合には、運転情報取得部1は、運転情報から特徴量などを算出し、算出情報の時間変化を時系列データとする。
【0034】
次のステップS3において、ステップS2にて得られた各特徴量の時系列データのセットと、車両位置情報とを関連付ける。
【0035】
次のステップS4において、運転情報取得部1は、ステップS3において車両の位置情報と関連づけられた多次元の時系列データとしての運転情報を、統計情報生成部3に送信する。
【0036】
車両周囲情報取得部12として車外を撮像するカメラ映像を使用した場合、ステップS1において、運転情報取得部1によって、車両周囲の映像を、撮像時の車両の位置情報と共に取得する。
【0037】
次のステップS2において、運転情報取得部1は、取得した映像から特徴量を抽出する。映像には様々な情報が含まれているため、例えば一定のサンプル時間ごとに静止画として映像を切り出し、上述した公知の画像認識手法により特徴量を抽出する。運転情報取得部1は、抽出した各特徴量ごとの時間変化を、時系列データとする。
【0038】
次のステップS3において、得られた各特徴量の時系列データのセットと、映像の撮像位置情報(車両位置情報)とを関連付ける。
【0039】
次のステップS4において、運転情報取得部1は、統計情報生成部3に、映像の位置情報と関連づけられた各特徴量のセットを、多次元の時系列データとして送る。
【0040】
ここで、運転情報が車外を撮像するカメラ映像である一例として説明したが、これに限定されるものではない。他の多次元の時系列データについても、各次元ごとの観測値を時系列データとするだけでなく、複数次元の観測値から一つの時系列データを算出したり、特徴量などを抽出してその時間変化を時系列データとして利用してもよい。例えば、車間維持制御システムなどで利用されている走査型測距センサのレーザーレーダーを利用した場合は、観測される走査角度ごとの距離データに加えて、レーザーレーダー観測値から公知の認識手法を用いて算出される他車両の相対位置データを時系列データとして利用してもよい。
【0041】
つぎに、統計情報生成部3による統計状態の生成処理、及び、地図情報生成部4及び地図情報更新部71による地図情報の更新処理について説明する。
【0042】
統計情報の生成処理及び地図情報の更新処理は、例えば
図5に示すような処理により実現できる。
【0043】
先ず、ステップS11において、統計情報生成部3は、運転情報取得部1によって時系列処理され、車両位置情報と関連付けられた運転情報を取得する。
【0044】
次のステップS12において、統計情報生成部3は、ステップS11にて取得した運転情報の時系列データについて、変化が大きい時点を時系列パターンの境界として分節化する。
【0045】
次のステップS13において、統計情報生成部3は、データベースとしての地図情報記憶部7から地図情報として既に記憶されている運転情報の時系列パターンを読み出す。
【0046】
次のステップS14において、統計情報生成部3は、ステップS13にて分節化した運転情報の時系列パターンと尤度が高く類似している時系列パターンが、既に地図情報記憶部7に記憶されているか否かを判断する。類似した時系列パターンが既に地図情報記憶部7に存在する場合は、運転情報を地図情報生成部4に供給して、ステップS15に処理を進める。一方、分節化した運転情報の時系列パターンと尤度が高く類似した時系列パターンが存在しない場合は、ステップS17に処理を進める。
【0047】
ステップS15において、統計情報生成部3、地図情報更新部71は、新たに取得した運転情報を加えて統計処理を行い、地図情報記憶部7に記憶した時系列パターンを更新する。
【0048】
一方、ステップS17において、統計情報生成部3は、新たに取得した運転情報と他の記憶されている運転情報の時系列パターンをもとに統計処理を行う。これにより、統計情報生成部3は、新規に運転情報の時系列パターンを生成する。
【0049】
ステップS16において、統計情報生成部3は、更新された又は新たに生成された運転情報の時系列パターンを統計情報として地図情報生成部4に送信する。
【0050】
図6は、多次元の運転情報の時系列データを分節化するイメージ図である。統計情報生成部3は、取得した時系列データの次元数に関わらず、データA,B,C,D,E間の関係性を維持した状態でまとめて処理し、その変化が大きい時点を時系列パターンの境界として分節化する。
図6の一例では、t1〜t2,t2〜t3,t4〜t5,t6〜t7,t8以降、に運転情報の時系列データA,B,C,D,Eを区分して分節化している。
【0051】
図7は、運転情報から時系列パターンを算出する手法の一例として、分節化された時系列の運転情報(segment)を階層的クラスタリング手法によってクラスに分類する場合の木構造のイメージ図である。時系列パターンは、分節化された各時系列の運転情報を(a)、(b)のように、クラスごとに統計処理し、各クラスの統計的な時系列パターンとして求めてもよい。また、クラスの中から代表的な分節化された時系列の運転情報を一つ選び、時系列パターンとしてもよい。
【0052】
発明者らはこれまでに、連続多次元の時系列観測データから、そのデータを構成するパターンを抽出する方法と、パターンによる時系列観測データの認識(コード化・抽象化)方法、パターンからの時系列データの生成(推定)方法を発見し、それら認識・生成方法を用いてシステムの制御を行うための1つの手段として、例えば特許第4027838号を考案している。
【0053】
本実施形態の統計情報生成部3及び地図情報生成部4において、この手法をパターンの抽出・認識手法として利用してもよい。分節化した時系列データからのパターン抽出手法として、隠れマルコフモデル(HMM)という確率統計モデルを用いている。そのほかに、本実施形態においては、ニューラルネットワークや遺伝的アルゴリズムを用いた手法でも、閾値や特徴平面を利用して識別する線形判別関数を用いた手法を用いてもよい。公知のパターン識別手法やデータ集合のクラスタリング手法を用いてもよい。教師あり、教師なしの機械学習や、群平均やウォード法といった公知の階層的クラスタリング手法を利用してもよい。
【0054】
つぎに、地図情報生成部4及び地図情報記憶部7で行われる処理の内容を、
図8のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
ステップS21において、地図情報生成部4は、運転情報取得部1で取得した運転情報、当該運転情報を取得した車両の位置情報、時系列パターン(運転パターン情報)を取得する。
【0056】
ステップS22において、地図情報生成部4は、ステップS21にて取得した運転情報を時系列のパターンへ変換し、運転情報を時系列で記述する。
【0057】
ステップS23において、地図情報生成部4は、ステップS22にて時間軸で記述された運転情報の列において、時間的に前の運転情報のパターンから時間的に後の運転情報のパターンへの遷移確率を算出する。
【0058】
ステップS24において、地図情報生成部4は、ステップS23で求めた遷移確率と共に運転情報の時系列パターンを、地図空間上の位置に関連付けて地図情報とし、地図情報記憶部7に記憶する。
【0059】
地図情報は、統計処理された運転情報の時系列パターンと位置情報とを関連付けて記憶させている。このため、車両位置情報取得部2によって得られる車両位置情報と、地図情報参照部5によって得られる統計情報としての運転情報の時系列パターンとの両方の情報を組み合わせている。これにより、地図空間上の特定の区間・地点において、車両挙動や運転操作、運転者の状態、交通環境などがどのように時間変化するのか、統計的な時系列パターンとして知ることができる。
【0060】
また、統計処理を行った運転情報の時系列パターンを地図情報として扱っている。これにより、運転情報取得部1が取得したデータの全てをそのまま記録する必要がなくなる。このため、地図情報記憶部7の記録データ容量を節約でき、効率的に情報を蓄えることができる。
【0061】
さらに、ある時系列パターンから他の時系列パターンへの時間的、空間的遷移を遷移確率として求め、地図情報として時系列パターンに関連付けて記憶させている。このため、観測される運転情報や位置情報をもとに遷移する確率の高い運転情報の時系列パターンを判別することが可能になる。
【0062】
図9は、統計情報生成部3、地図情報更新部71で行われる、区間ごとの統計情報生成の処理の内容を示すフローチャートである。
【0063】
ここで、
図5では、時系列処理され位置情報と関連付けられた運転情報をステップS11で取得し、ステップS12で取得した時系列の運転情報を分節化し、ステップS13以降で時系列パターン化の処理を行っている。時系列パターン化の処理にあたっては、運転情報の取得場所に関係なく、全ての分節化された運転情報をもとに時系列パターンの抽出を行う。その後、
図8によって説明したように、地図情報生成部4において、時系列の運転情報を遷移確率と共に地図空間上の位置に関連付けて地図情報としている。地図上の情報取得された区間に関係なくまとめて時系列パターンを算出することで、時系列パターンの数を抑制するなど数をコントロールすることができ、演算量やデータ容量を節約することができる。
【0064】
これに対し、
図9の処理は、ステップS11で取得した時系列の運転情報を、統計情報生成部3によって、ステップS41で地図上の区間ごとに分割する。分割する区間は、道路上の一定距離ごとに区切ってもよい。また、道路区画や道路種別など走路線形に応じて区切ってもよい。更に、ナビゲーション用の地図が持つリンクやメッシュごとに区切ってもよく、緯度経度、一定範囲のエリアで区切ってもよい。
【0065】
統計情報生成部3は、区間ごとに分割された運転情報をステップS12で分節化した後、ステップS42に進む。ステップS42以降のステップでは、地図情報生成部4は、世の中全ての時系列パターンを対象とせず、区間ごとで時系列パターンの読み出し、更新、新規生成処理を行う。
【0066】
ステップS43では、統計情報生成部3は、区間ごとに算出され、既に地図空間上に関連付けられている区間ごとの時系列パターンを地図情報生成部4へ送信する。
【0067】
以上のように、運転情報を取得された地図上の区間ごとに分割し、分割された運転情報をもとに区間ごとに、運転情報の時系列パターンを算出する。これにより、その区間特有の運転情報の時系列パターンを抽出することができる。
【0068】
なお、運転情報を統計処理して時系列パターンを算出して更新するタイミングは、運転情報を収集するにつれて逐次更新、あるいは一定周期で更新、収録した運転情報が一定量蓄積された時点で更新、あるいは運転者が任意に設定したタイミングであってもよい。また、時系列パターンを算出して更新に使用する運転情報は、収録開始時から最新の情報まで全ての運転情報で統計処理してもよく、一定期間に収録された運転情報で統計処理してもよい。
【0069】
更に、第1実施形態として示す運転支援システムは、
図10に示すように、地図情報参照部5及び運転支援部6によって次の情報提供又は運転操作を予測してもよい。
【0070】
先ず、ステップS61において、地図情報参照部5は、車両位置情報取得部2において得られる車両位置情報に基づき、地図情報記憶部7に蓄えられたデータの中からその位置に記憶された運転に関する統計情報を引き出す。
【0071】
次のステップS62において、地図情報参照部5は、現在位置における運転情報の時系列パターンを獲得する。
【0072】
次のステップS63において、地図情報参照部5は、ステップS62にて獲得した運転情報の時系列パターンから、次に遷移する運転情報の時系列パターンを確率的に予測する。
【0073】
次のステップS64において、地図情報参照部5は、ステップS63にて確率的に予測された次に遷移する統計的な運転情報の時系列パターンと、運転情報取得部1によって得られるリアルタイムの情報、両方の情報を利用して運転者へ情報提供や操作支援などの運転支援を行う。
【0074】
以上のように、運転支援システムは、運転情報取得部1によってリアルタイムに観測される運転情報と、地図情報参照部5によって得られる統計情報とを利用することにより、現在の運転状態を時系列パターンに置き換えて記述することができる。そして、当該時系列パターンの遷移確率に基づいて、時間的に次に遷移する確率が高い運転情報の時系列パターンを判別することが可能になる。これにより、車両が次に遭遇する交通環境の運転情報を時系列パターンとして確率的に予測することができる。
【0075】
一方、車両位置情報取得部2によってリアルタイムに観測される車両位置情報と、地図情報参照部5によって得られる統計情報とを利用している。これにより、現在の車両が存在する場所に関連付けられている運転情報の時系列パターンを取得することができる。これにより、現在の車両が存在する場所が普段はどのような交通環境なのかを情報提供して、運転支援をすることができる。
【0076】
さらには、空間的に隣の場所・区間が普段はどのような交通環境なのかについても情報提供して、運転支援をすることができる。さらに、現在の車両が存在する場所に関連付けられている時系列パターンの遷移確率に基づいて、時間的に次に遷移する確率が高い時系列パターンを判別することが可能になる。普段この場所を通った車両が次に遭遇する交通環境の運転情報を確率的に予測することも可能になるということである。
【0077】
運転支援部6は、事前に運転情報の時系列パターンに対応する音声情報や視覚情報、操作情報を設定する。運転支援部6は、運転者へ提供できるようにスピーカなどの音声出力装置あるいはモニタなどの視覚情報提示装置、あるいはハンドルやアクセル、ブレーキの操作量や操作力を制御出力できるパワーアシスト装置を含む。運転支援部6は、前述の予測される時系列パターンから安全のための運転操作量を生成し、運転支援手段を利用して運転者に対して操作量を提示してもよい。さらに、運転支援部6は、複雑な交通環境への気構えとなる情報を事前に提示してもよい。さらに、運転支援部6は、より楽に走行するための経路変更の情報や、進路変更のタイミングの提示や操作量のアシストなど、といった運転支援を行うことが可能になる。
【0078】
以上のように、第1実施形態として示す運転支援システムは、運転情報を時系列パターンとして統計処理して、車両位置情報と関連付けて地図情報を生成し、既存の地図情報を更新する。この運転支援システムによれば、統計処理された運転情報の時系列パターンを位置情報と関連付けて地図情報として用いるため、地図上の区間・地点における車両挙動や運転操作、運転者の状態、交通環境などの動的な時間変化を記述・記憶することができる。そのため、運転支援システムによれば、自車両や周囲の他車両が動くことによって時間変化する動的な交通環境に関して、運転者へ情報提供したり操作支援などの運転支援を行うことが可能になる。
【0079】
運転支援システムは、地図情報として時系列パターンが記憶されていることを利用することで、現在の車両が存在する場所に関連付けられている時系列パターンを取得することができる。これにより、運転支援システムは、車両が存在する場所が普段はどのような交通環境なのかを情報提供することができる。
【0080】
例えば、走行軌跡が車線内に留まっていない時系列パターンが得られた場合、車線間を交差する車両が多いことがわかる。このため、運転支援システムは、「車線変更を行う車両に注意」と運転者に対して情報提供することが可能になる。空間的に次の区間の時系列パターンとして、車線間を交差する車両が多いとわかれば、「この先、車線変更を行う車両に注意」と運転者に対して情報提供することが可能になる。運転者の状態として、顔の動きや視線を横に向けるパターンが多く得られる場合、車速などの車両情報の時系列パターンと合わせることで運転者に対して「わき見運転注意」、「追突注意」といった情報を提供することが可能になる。さらに、血圧や心拍、表情をもとに運転者のイライラ状態や緊張状態、眠気度合いを時系列パターンとして得ることで、「車間距離をとりましょう」「運転お疲れ様です。一休みしましょう」といった情報提供が可能になる。
【0081】
運転支援システムは、上述した情報提供を、音声情報やディスプレイへの視覚情報として提供するだけでなく、運転操作量としてペダル操作量などを制御することで、運転者の運転を安全側へ誘導・アシストすることも可能である。さらに、運転支援システムは、車両情報から、停止や停止状態から発進する際の加減速度、一時停止交差点の停止位置や動き出し方、制限速度に対する巡航速度、道路線形に対する操舵量といった時系列パターンを得ることで、運転者への運転操作量支援や、自動運転車両の制御目標値として利用することも可能になる。
【0082】
また、運転支援システムによれば、運転情報を、当該情報取得された地図上の区間ごとに分割し、分割された情報をもとに区間ごとに時系列パターンを算出する。これにより、運転支援システムは、その区間特有の運転情報の時系列パターンを抽出することができる。
【0083】
更にまた、この運転支援システムによれば、地図上の区間に関わりなく運転情報の時系列パターンを算出して、当該時系列パターンが、予め設定された複数の時系列パターンのうち何れの時系列パターンに相当するかを判別する。これにより、場所ごとに個別の運転情報の時系列パターンを算出する場合に比べて時系列パターンの数を抑制することができ、演算量やデータ容量を節約することができる。
【0084】
[第2実施形態]
つぎに、第2実施形態に係る運転支援システムについて説明する。なお、上述の第1実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0085】
第2実施形態として示す運転支援システムは、例えば
図11に示すように構成されている。この運転支援システムは、第1実施形態として示した運転支援システムに対し、地図情報生成部4に統合パターン生成部41が設けられている点で異なる。
【0086】
この運転支援システムにおいて、運転情報取得部1は、運転者の操作量及び車両挙動、運転者の状態、車両周囲の環境情報のうち複数の情報を取得する。統合パターン生成部41は、運転情報取得部1により取得された各運転情報を用いて算出される各時系列パターンを、同じ交通環境で取得された時系列パターンとして関連付ける。
【0087】
統合パターン生成部41は、例えば
図12に示すような処理を行う。例えば、運転情報取得部1によって、車両情報、運転者状態情報、車両周囲情報を取得する場合における統合パターン生成部41の処理を説明する。
【0088】
ステップS31、ステップS33、ステップS35において、運転情報取得部1及び車両位置情報取得部2は、同時に車両情報、運転者状態情報、車両周囲情報の各運転情報を位置情報と共に取得する。
【0089】
ステップS32、ステップS34、ステップS36において、運転情報取得部1は、それぞれ車両情報、運転者状態情報、車両周囲情報ごとに時系列パターンに変換し、各情報を運転パターンの時系列で記述する。
【0090】
ここで、車両情報、運転者状態情報、車両周囲情報はそれぞれ、同じ地点で同じ瞬間に同じ交通環境で取得された運転情報であり、本来は各情報間に関連性を持っている。情報間の関連性とは、同じ種類の情報における時間的な遷移確率で表される関連性ではなく、同じ地点で同じ瞬間に同じ交通環境で取得されることによる、異なる種類の運転情報の間に存在する関連性(因果律、相関関係)である。
【0091】
次のステップS37において、統合パターン生成部41は、
図13に示すように、異なる運転情報のパターン同士の関連性(因果律、相関関係)を表現することができる。
図13は、統合パターン生成部41で行われる処理フローの説明のためのイメージ図である。なお、
図13の説明は後述する。このとき、統合パターン生成部41は、各分節点において条件付き確率を算出する。
【0092】
次のステップS38において、統合パターン生成部41は、ステップS37にて算出された条件付き確率と共に各運転情報の時系列パターンをセットにし、地図上の位置に関連付けて、地図情報記憶部7に記憶させる。
【0093】
車両情報と車両周囲情報を取得している場合を一例として、異なる運転情報の時系列パターン同士の関連性(因果律、相関関係)を統計モデルによって表現する手法について説明する。運転情報取得部1によって車両情報、車両周囲情報ごとに時系列パターンに変換し、各情報を時系列パターンで記述すると、
図13のように分節点の位置が異なる。各分節点における車両情報と車両周囲情報の遷移を条件付き確率として記述し、異なる運転情報の時系列パターン同士の関連性を表現する。
【0094】
ある分節点において、車両情報の時系列パターンλiと車両周囲情報の時系列パターンωjの状態から、車両情報の時系列パターンλkと車両周囲情報の時系列パターンωlの状態へ遷移する確率をP(λk、ωl|λi、ωj)として表現する。この遷移確率は、次の式1のように求めることができる。
【数1】
【0095】
ここで、n(λi、ωj)は、車両情報の時系列パターンと車両周囲情報の時系列パターンの組み(λi、ωj)がデータ中に現れた回数である。n(λi、ωj、λk、ωl)は、時系列パターンの組み(λi、ωj)から(λk、ωl)へ遷移した回数を表す。
【0096】
統合パターン生成部41は、時系列パターンの組(λi、ωj)の交通環境の状態から、確率P(λk、ωl|λi、ωj)が最大となる(λk、ωl)を求めることによって、車両情報や車両周囲情報を推定することができる。これは、運転者が経験に基づいて、感じ取った車両情報、車両周囲情報から未来の交通環境を予測する状態に似ている。したがって、運転支援システムは、運転者が認知しやすい情報を提示できる。
【0097】
現在の車両情報がλ[k]、車両周囲情報がω[k]であるときに、次の車両情報、車両周囲情報の予測は、次の式2ように求めることができる。
【数2】
【0098】
以上のように、第2実施形態として示した運転支援システムによれば、各運転情報を用いて算出される各時系列パターンを、同じ交通環境で取得された時系列パターンとして関連付ける。すなわち、同じ交通環境で収集された運転情報に基づく2つ以上の時系列パターンを関連付けて記憶させる。
【0099】
これにより、運転支援システムによれば、交通環境に対応した運転操作や、交通環境と運転者の状態といった情報間の関係性を保った状態で情報を蓄積することができる。異なる種類の運転情報の時系列パターンを条件付き確率で関連付けることで、一部の運転情報が観測できない場合でも、観測できる運転情報を元に、時間的に次の状態の予測、関連付けられている運転情報の推定、同じ交通環境下で同時に起きているはずだが観測できない運転情報の予測ができ、運転者に対して運転支援ができる。
【0100】
[第3実施形態]
つぎに、第3実施形態に係る運転支援システムについて説明する。なお、上述の実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0101】
第3実施形態として示す運転支援システムは、例えば
図14に示すようなネットワークシステムにより実現される。
【0102】
図14に示す運転支援システムは、自車両車載機器201が車外の各種機器との間で情報を授受する通信機能を備えている。この通信機能は、基地局202、インフラ機器203、他車両車載機器204、モバイル機器205と通信可能である。この通信機能は、例えば移動体通信サービスのパケット通信や無線LANのような無線通信を介して、電話回線やインターネット回線を経由して情報を授受する。なお、運転支援システムの構成要素間を無線化して、例えば基地局202を車外のデータセンターとして備え、全ての演算処理を自車両車載機器201のみで行うことなく、基地局202と分担してもよい。
【0103】
この運転支援システムは、
図15に示すように、自車両車載機器201と基地局202を通信回線でつないだ構成を示している。この運転支援システムは、第1実施形態における運転支援システムに対して、自車両車載機器201に備えられた通信部201a、一時記憶部201b、基地局202に備えられた通信部202aを含む。
【0104】
この運転支援システムは、自車両車載機器201とデーターサーバーなどの車外の演算機器とつなぐことによって、車載器のみで全ての演算処理を行う必要が無くなり、通信負荷や演算量を考慮して、演算処理の分担を最適に行うことができるようになる。
【0105】
なお、自車両車載機器201と車外と情報を授受する通信部201aは、必ずしも常時通信可能である必要はない。例えば、一定間隔で通信したり、通信回線の状況が良いときのみ通信したり、車速ゼロのアイドリング時に通信したり、電気自動車の充電中に通信したり、走行開始時や走行終了後に通信接続したり、運転者が通信を許可したときのみ通信したりしてもよい。更には、通信回線が不通の間は収録される運転情報を蓄積しておき、通信接続時に、分割あるいは一括で情報を授受しても良い。
【0106】
そのため、通信部201aは、必ずしも移動体通信サービスのパケット通信や無線LANのような無線通信を行う必要はなく、車両駐車時に有線で情報の授受を行ってもよい。
【0107】
また、自車両車載機器201において着脱可能な記憶メディアを搭載し、走行中は記憶メディアに運転情報を蓄積する。そして、車両の所有者が記憶メディアを着脱して、手動で運転情報のアップロード、地図情報のダウンロードを行ってもよい。
【0108】
また、通信部201a、202aは、ETCなどで利用される路側機DSRC(スポット通信:5.8GHz帯狭域通信(DedicatedShortRangeCommunication))やVICS(登録商標)(道路交通情報通信システム:VehicleInformationandCommunicationSystem)、FM多重放送、デジタル放送、電波ビーコン、光ビーコンなど、インフラ機器203として整備されている通信機器による情報配信を利用してもよい。
【0109】
また、通信部201aは、路上に設置されている交通環境の撮像装置(交通監視カメラ)やセンサーの情報をやり取りし、運転情報取得部1で取得する情報としてもよい。例えば路上に設置されているセンサからは、移動体では収集できない定点観測された交通情報などを取得することができる。
【0110】
さらに、通信部201aは、路車間の情報のやり取りに限らず、他車両車載機器204と車車間の情報通信を行ってもよい。更に、通信部201aは、歩行者や自転車に乗っている人が持つモバイル機器205と、人車間で情報の授受を行ってもよい。自車両以外の他車両の走行データを取得することにより、車載センサの数が豊富な車両から少ない車両へ取得される運転情報を提供したり、同一環境における相対的な位置関係などを情報に含めることができる。
【0111】
これにより、より豊富な情報で交通環境を記述することができたり、自車両が走行したことが無い場所の情報や、自車両の走行範囲よりも広範囲の地図情報作成が可能になる。また、車車間で情報交換することにより、相手の運転パターンを知ることができ、その結果、自分自身の運転行動を変更したり、他車両へ働きかけて交通環境を好転させることが可能になる。
【0112】
更に、通信部201aは、歩行者や自転車に乗っている人が持つモバイル機器205と人車間で情報の授受を行う。これにより、車両以外の移動体の存在や動きを情報として利用できたり、歩行者や自転車側と車両側でそれぞれのパターン情報を授受でき、これにより、相手の動きの予測や、予測に基づく事故や危険の回避を行うことができる。
【0113】
なお、
図14中には、車両として自車両車載機器201を搭載する車両と他車両車載機器204を搭載する車両の二台のみを図示しているが、本実施形態では、図示しない他の車両も、通信経路を介して、基地局(データセンター)202と情報の送信または受信を行うことができ、その数を制限するものではない。同様に、インフラ機器203やモバイル機器205も一つのみを図示しているが、図示しない他の機器も、通信経路を介して複数の機器や車両と情報の送信受信を行ない、その数を制限するものではない。
【0114】
以上のように、第3実施形態として示す運転支援システムによれば、車両外の通信装置と情報を授受する通信部201aを有し、運転情報取得部1によって通信部201aにより取得された情報を運転情報として利用できる。これにより、運転支援システムは、自車両車載機器201によって他車両の走行データを取得することができ、まだ走行したことが無い場所など、広範囲の地図情報作成、利用が可能になる。
【0115】
また、運転支援システムは、路上に設置されている交通環境の撮像装置やセンサーの情報を収集することが可能になる。さらに、運転支援システムは、自車両車載機器201をサーバー環境など車外の演算機器と通信可能とすることによって、自車両車載機器201で全ての演算処理をする必要が無くなり、通信負荷や演算量を考慮して、処理を最適に分担することができるようになる。
【0116】
[第4実施形態]
つぎに、第4実施形態に係る運転支援システムについて説明する。なお、上述の実施形態と同様の部分については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
【0117】
第4実施形態として示す運転支援システムは、例えば
図16に示すように、上述した実施形態の運転支援システムに対して、属性付与部8を有する。属性付与部8は、運転情報取得部1により取得された運転情報に属性を付与する。そして、統計情報生成部3は、属性付与部8により付与された属性ごとに、運転情報を時系列パターンとして統計処理を行う。
【0118】
属性付与部8が付与する属性は、運転情報取得時の状況を分類する情報である。属性は、例えば、時間に関する属性(日付、時刻、時間帯、曜日、月、四半期、季節、など)や、走行環境に関する属性(渋滞、人ごみ、巡航、ストップアンドゴー、住宅街、スクールゾーン、山間部、など)、クルマの使用用途に関する属性(通勤、仕事、レジャー、長距離旅行、など)、クルマの乗員に関する属性(1人、複数、家族、高齢、運転初心者、など)である。属性付与部8は、運転情報取得時に自動的に運転情報に属性を付与してもよく、運転者のスイッチ操作に応じて運転情報に属性を付与しても良い。
【0119】
この運転支援システムは、例えば
図17に示す処理を行って、属性を付与した運転情報に統計処理を行う。
【0120】
運転支援システムの統計情報生成部3は、ステップS11にて取得する属性が付与された時系列の運転情報を、ステップS51で属性ごとに分類する。統計情報生成部3は、属性ごとに分類された運転情報をステップS12にて分節化する。
【0121】
その後、統計情報生成部3は、ステップS52において、属性と共に地図情報として記憶されている時系列パターンを読み出す。以降のステップS14、ステップS15、ステップS17では、属性に関係なく、上述した実施形態と同様に時系列パターンの更新又は時系列パターンの新規生成を行う。
【0122】
次のステップS53において、算出された時系列パターンに対し、演算処理前に付与されていた属性と共に新たな属性情報を付与して、地図情報生成部4へ送信する。
【0123】
以上のように、第4実施形態として示す運転支援システムによれば、運転情報に属性を付与し、当該属性ごとに運転情報を時系列パターンとして統計処理を行うので、時間的に変化する情報を属性ごとに取得して運転支援のために提供できる。例えば、地図上の同じ場所であっても、属性としての時間帯ごと、季節ごと、曜日ごと、天候ごとに、交通環境の状態が変化する場所の特徴をより細かく記述することができ、交通環境を形成している属性ごとにその場所の特徴を記述することができる。
【0124】
そのため、例えば、運転者に関する運転スキルなどごとに運転情報の時系列パターンを抽出することができ、運転スキルに応じた情報提供や操作支援といった運転支援を行うことができる。また、例えば「月曜から金曜の朝の時間帯は渋滞している」といった時間帯によって変化する交通環境の情報を取得することが可能になり、その情報を運転者へ提供できる。これによって、いつもと違う時間帯に通る場合でも、初めて通る場所であっても運転者が事前に回避ルートを選択したりすることが可能になる。
【0125】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【0126】
特願2012−158314号(出願日:2012年7月17日)の全内容は、ここに援用される。