【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成24年4月16日 A邸へプライバシーウォールを納品。 平成24年8月20日 B邸へプライバシーウォールを納品。 平成24年9月10日 C邸へプライバシーウォールを納品。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のように複数のパネルを横に並べて接合する場合、接着剤が固まるまでの間に、隣り合うパネル同士の縦方向、横方向、傾き、前後方向の位置ずれを調整する必要がある。また、パネルの位置調整が十分でない状態で接着剤が固まってしまうと、もう一度接着剤を除去しパネルの接合をやり直す必要がある。
【0008】
このように、接着剤が硬化するまでにパネルの位置調整作業を終える必要があり、作業が非常に難しい。またやり直しを伴うことがあるため、作業効率もよくない。最近では、住宅の庭の一部を高い塀で囲い、近隣等の外部からの視線を遮蔽できる庭空間を設けることが行われているが、このような塀は、背が高くなり(地盤面からの高さ2〜3m程度)、上記施工の調整がより難しく、煩雑になる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、接着剤を使用し力学的な高い構造耐力を維持しつつ、パネルの接合、設置作業を簡単かつ効率的に行うことができるパネルユニット接合構造、及びパネルユニットを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための
参考例は、複数のパネルユニットを連結して構成されるパネルユニット接合構造であって、各パネルユニットの端部の連結面には、互いに向かい合って嵌合する凹凸部が形成され、前記凹凸部には、パネルユニットの厚み方向に貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔に挿通されたボルトとナットによってパネルユニット同士が締結されるとともに、互いに向かい合って嵌合する凹凸部同士が当接して形成される継ぎ目に沿って、パネル表面側に開口する溝が形成され、当該溝に接着剤が充填されてパネルユニット同士が接着されている、パネルユニット接合構造である。
また、
参考例は、複数のパネルユニットを連結して構成されるパネルユニット接合構造であって、各パネルユニットの端部の連結面には、互いに向かい合って嵌合する凹凸部が形成され、前記凹凸部には、パネルユニットの厚み方向に貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔に締結部材が挿通されてパネルユニット同士が締結されるとともに、互いに向かい合って嵌合する凹凸部同士が当接して形成される継ぎ目に沿って、パネル表面側に開口する溝が形成され、当該溝に接着剤が充填されてパネルユニット同士が接着され、前記複数のパネルユニットは、外構塀または土留めの用途に利用される、パネルユニット接合構造である。
また、
参考例は、複数のパネルユニットを連結して構成されるパネルユニット接合構造であって、各パネルユニットの端部の連結面には、互いに向かい合って嵌合する凹凸部が形成され、前記凹凸部には、パネルユニットの厚み方向に貫通する貫通孔が形成され、当該貫通孔に締結部材が挿通されてパネルユニット同士が締結されるとともに、互いに向かい合って嵌合する凹凸部同士が当接して形成される継ぎ目に沿って、パネル表面側に開口する溝が形成され、当該溝に接着剤が充填されてパネルユニット同士が接着され、前記パネルユニットは、前記パネルユニットの下部に打設されたコンクリートによって保持されている、パネルユニット接合構造である。
【0011】
本発明によれば、パネルをユニット化し、隣り合うパネルユニットの凹凸部を嵌合させることでパネル同士のおよその位置決めが行われるので、パネルユニットの位置調整作業が簡単になる。また、締結部材でパネルユニット同士を締結してパネルユニットを一次固定し、このときパネルユニットの位置調整を行い、その後、接着剤によりパネルユニット同士を接着することができる。これにより、接着剤が硬化するまでの間にパネルユニットの位置調整作業を行う必要がないので、接着剤を用いて力学的な高い構造耐力を維持しつつ、パネルユニットの接合、設置作業を簡単かつ効率的に行うことができる。
【0012】
本発明は、複数のパネルユニットを連結して構成されるパネルユニット接合構造であって、各パネルユニットの端部の連結面には、互いに向かい合って嵌合する凹凸部が形成され、前記凹凸部には、
パネルユニットの厚み方向に締結部材が挿通されてパネルユニット同士が締結されるとともに、互いに向かい合って嵌合する凹凸部同士が当接して形成される継ぎ目に沿って、パネル表面側に開口する溝が形成され、当該溝に接着剤が充填されてパネルユニット同士が接着され、前記パネルユニットの端部の連結面には、互いに向かい合う凹凸部が当接したとき、前記溝を所定の幅に形成する突出部材が設けられている、パネルユニット接合構造である。かかる場合、一のパネルユニットの凹凸部を他のパネルユニットの凹凸部に押し込んで、突出部材に当接させるだけで、所定幅の溝を確保できる。このため、パネルユニットの接合、設置作業をより簡単に行うことができる。
【0013】
前記溝には、溝埋め部材が挿入されていてもよい。かかる場合、パネルユニット間の溝が埋められるため、連続するパネルユニットの表面の凹凸が減り、パネルユニット接合構造の外観仕上げを良好に行うことができる。
【0014】
前記溝埋め部材は、前記パネルユニットと同一素材であってもよい。かかる場合、連続するパネルユニットに外力が付与された場合に、溝のある部分にも他の部分と同様に外力が伝わり、応力が集中しないため、外力に対するパネルユニット接合構造の強度を向上できる。
【0015】
参考例として、前記貫通孔のパネル表面側には、前記締結部材をパネルユニットの表面より内側に収容するための座彫り穴が形成されていてもよい。かかる場合、締結部材による出っ張りがなくなるため、パネルユニット接合構造の外観仕上げが良好に行われる。
【0016】
参考例として、前記座彫り穴には、接着剤が充填されていてもよい。かかる場合、接着剤により締結部材の緩みを防止できるので、パネルユニットの接合強度を向上できる。
【0017】
参考例として、前記座彫り穴には、前記パネルユニットと同一素材の座彫り穴埋め部材が挿入されていてもよい。かかる場合、パネルユニットの表面に座彫り穴による凹みが無くなるため、パネルユニット接合構造の外観仕上げを良好に行うことができる。また、座彫り穴埋め込み部材が接着剤によりパネルユニットに固定されるので、外力が付与されても、座彫り穴部分に応力が集中することが抑制され、外力に対するパネルユニット接合構造の強度を向上できる。
【0018】
参考例として、前記パネルユニットが発泡材料により構成されていてもよい。
【0019】
別の観点による本発明は、上記パネルユニット接合構造を構成するパネルユニットである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、パネルユニット接合構造の力学的な構造耐力が確保され、パネルユニットの接合、設置作業を簡単かつ効率的に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係るパネルユニット接合構造1が使用される塀2を備えた建物3の一例を示している。
【0023】
塀2は、建物3の建設された敷地内の一角を囲むように形成されている。この塀2は、外部から敷地に向かう視線を遮るため、地盤面からの高さが地上から2000mm〜3000mm程度とし、平面視L型状に構成されている。
【0024】
塀2は、
図2に示すように内部に壁状のパネルユニット接合構造1を有し、そのパネルユニット接合構造1に表面仕上げEを施して形成されている。パネルユニット接合構造1の表面仕上げEには、例えば目地パネル仕上げ、タイル張り仕上げ、塗装仕上げなどが用いられる。
【0025】
パネルユニット接合構造1は、
図3及び
図4に示すように複数のパネルユニット10を立てた状態で横に並べ、それらを直接接合することによって構成されている。パネルユニット接合構造1の下部は、クラッシャーランA3及び捨てコンクリートA1上に形成された根巻きコンクリートA2によって固定されている。パネルユニット接合構造1がL字状に屈曲する場合には、2つの連結面(接合側面)の向きが90°異なるコーナーパネルユニット10aを介してパネルユニット10が連結される。なお、
図3及び
図4には、説明のため、表面仕上げを行う前のパネルユニット接合構造1を示している。
【0026】
パネルユニット10は、厚さ150mm〜200mm程度、幅400〜900mm程度、高さ2250〜2850mm程度の寸法で規格化した正面視で方形状を有している。パネルユニット10は、例えば、無機発泡材料の薄板を複数接着して積層することにより一体的に構成されている。
図5に示すようにパネルユニット10は、内部に複数本の支柱11を備えている。支柱11は、鋼材により構成されている。
【0027】
パネルユニット10の端部の連結面(接合側面)には、
図5に示すように他のパネルユニット10と互い向かい合って嵌合するL字型の凹凸部20が形成されている。すなわち、連結面に向かってパネルユニット10の厚み方向の中心より左側半分をパネルユニット先端より所定寸法だけ欠き込んで凹型を形成することで、パネルユニット10の厚み方向の中心より右側に凸型を形成している。パネルユニット10には、凹凸部20の凸部分20aをパネルユニット10の厚み方向に貫通する貫通孔22が形成されている。貫通孔22は、他のパネルユニット10と締結する締結部材としてのボルト23が挿通可能になっている。貫通孔22は、例えばボルト23の1〜2倍、好ましくは1.5〜2.0倍の直径を有している。貫通孔22は、
図6に示すようにパネルユニット10の長手方向に沿って複数か所に設けられている。
【0028】
図5に示すように貫通孔22の両端部には、締結部材であるボルト23とナット24を挿入して設置した状態で、パネル表面から突出しないようにボルト23とナット24をパネル表面の内側に収容する座彫り穴25が形成されている。座彫り穴25には、接着剤Bが充填されている。座彫り穴25の表面側には、座彫り穴埋め込み部材26が埋め込まれている。座彫り穴埋め込み部材26は、例えばパネルユニット10と同一材料の上述の無機発泡材料により構成され、接着剤Bによってパネルユニット10と接合されている。このとき、座彫り穴埋め込み部材26の表面とパネル表面とは、同一面に揃っている。
【0029】
コーナーパネルユニット10aは、通常のパネルユニット10を短くし、そのまま90°折り曲げた形状をしている。コーナーパネルユニット10aの端部の連結面についても上述した通常のパネルユニット10の端部の構成と同様である。コーナーパネルユニット10aの2つの連結面(接合側面)は、
図4における水平方向のパネルユニット10に当接するL字型の凹凸部20の凸部分20aがパネルユニット10の厚み方向の中心より右側となり、垂直方向のパネルユニット10に当接するL字型の凹凸部20の凸部分20aがパネルユニット10の厚み方向の中心より左側となる。 これにより、コーナーパネル10aには、連結面に向かってパネルユニットの中心により右側に凸部分20aが形成されるので、コーナーパネルユニット10aに水平方向、垂直方向に連結される通常のパネルユニット10の端部の形状(連結面に向かって凹凸部20の右側に凸部分20aがある形状)を共通にすることができる。この結果、プレハブ化したパネルユニット10の端部形状の品種を増やす必要がない。
【0030】
また、
図4のうち、パネルユニット接合構造1の端に位置するエンドパネルユニット10eは、凹凸のない平坦な先端部を有している。
【0031】
パネルユニット接合構造1は、隣り合うパネルユニット10の嵌合された凹凸部20同士の継ぎ目に、パネル表面に開口する溝30を有している。溝30には、接着剤Bが充填され、パネルユニット10同士を接着している。なお、本実施形態では、溝30の幅は、15mmであるが、溝30への接着剤Bの充填のための作業空間、埋め込み部材26の製作可能な幅以上の幅を確保していれば良く、意匠上、継ぎ目が目立つことがないように適宜決定すればよい。
【0032】
凹凸部20の凹部分20bには、嵌合する他のパネルユニット10の凹凸部20の凸部分20aが当接する突出部材31が設けられている。突出部材31は、
図6に示すようにパネルユニット10の長手方向の両端部に亘って連続的に形成されている。この突出部材31により、溝30の幅を一定に維持できる。突出部材31は、パネルユニット10の凹凸部20に一体的に形成されていてもよいし、パネルユニット10と同一素材の角柱を平らな凹部分20bに取り付けたものであってもよい。なお、
図6は、突出部材31とパネルユニット10が別体の場合を示している。
【0033】
図5に示すように溝30内には、接着剤Bが充填され、両側のパネルユニット10を接合している。溝30には、溝埋め部材32が埋め込まれている。溝埋め部材32は、パネルユニット10と同一材料の無機発泡材料により構成され、接着剤Bによってパネルユニット10と接合されている。このとき、溝埋め部材32の表面とパネル表面とは、同一面に揃っている。
【0034】
次に、以上のように構成されたパネルユニット10を接合する手順を、パネルユニット接合構造1の設置方法と併せて説明する。
【0035】
(地業、捨コンクリート床面の施工)
先ず、パネルユニット10の根巻コンクリートA2の打設のため、また、パネルユニット10の建込みのために、地盤面の掘削工事と地業工事を行う。すなわち、地盤面の掘削は、建物3の塀2を設置する位置に遣方芯出しを行って施工の基準線を示し当該基準線にしたがって地表面から所定深さを掘削し、掘削した地面の根切り底に砕石等で地業を施す(クラッシャーランA3を形成する。)。当該地業面に捨てコンクリートA1を打設して平滑な床面を形成する。
【0036】
次に、
図7及び
図8に示すように捨てコンクリートA1の床面に、パネルユニット10の建込位置のガイドとなる起立片と底片を有する断面L型の建込位置調整金具A4を、パネルユニット10の長さに応じて等間隔にビス等で固定する。建込位置調整金具A4は、床面において、2枚のパネルユニット10の継目1か所に対して1つの起立片が該継目の側面に当接される位置に固定される。コーナーパネルユニット10aには互いに直交方向に位置する2枚のパネルユニット10が各方向から連結され、各連結部の継目の側面に1つの起立片が当接される位置に固定される。
【0037】
(パネルユニットの建て込み施工)
次に、捨てコンクリートA1上にパネルユニット10を建て込んで並べて立て連続壁を形成する。建込の手順は、まず、平面視L型状の連続壁の角部として、コーナーパネルユニット10aを上述した建込位置調整金具A4の起立片の底片と反対側の面に当接させ、捨てコンクリートA1の床面に建て込む。次いでコーナーパネルユニット10aの各方向に順次パネルユニット10を1枚ずつ連結させていく。さらに連続壁の終端には、連結面の凹凸部20が形成されてないエンドパネルユニット10eを建て込む。ここで、パネルユニット10を倒れないように仮に自立させるためにパネルユニット10の端部に桟木を固定し、斜材として地中に控えを設ける。なお、コーナーパネルユニット10aを先行して建て込むことで各方向に連結するパネルユニット10、エンドパネルユニット10eの位置調整が容易になる。
【0038】
ここで、
図9に示すように隣り合うパネルユニット10の連結面(接合側面)の凹凸部20同士を嵌合する。このとき、一方のパネルユニット10の凸部分20aを他方のパネルユニット10に突出部材31に当接するまで押し込むことによって凹凸部20を嵌合する。このとき、凹凸部20同士の間の継ぎ目に所定幅の溝30が形成される。
【0039】
次に、
図10に示すように嵌合された凹凸部20の凸部分20aの貫通孔22にボルト23を挿入しナット24を仮締めして、パネルユニット10同士を仮に締結する。このとき、水準器等を使って、パネルユニット10の上下方向、前後方向、傾き方向の位置や姿勢を微調整しながらパネルユニット10同士を締結(本締め)し、パネルユニット10の位置を決定する。
【0040】
次に、
図11に示すようにボルト23及びナット24のある座彫り穴25に接着剤Bを充填する。次に、接着剤Bが硬化する前に、
図11及び
図12に示すように座彫り穴25に座彫り穴埋め込み部材26を、パネルユニット10の表面と座彫り穴埋め込み部材26の表面が面一に揃った状態になるまで挿入する。このとき、
図13(a)に示すように座彫り穴25に座彫り穴埋め込み部材26を挿入するに伴って接着剤Bが押し込まれ、
図13(b)に示すように座彫り穴埋め込み部材26や締結部材の周囲にも接着剤Bが回り込んで座彫り穴25全体に行き渡る。こうして、座彫り穴埋め込み部材26は、座彫り穴25に万遍なく充填された接着剤Bの接着力によりパネルユニット10に強く固着される。なお、貫通孔22への接着剤Bの充填は、締結部材(ボルト23及びナット24)の緩みを止めることにも寄与する。
【0041】
次に、
図5に示したように溝30に接着剤Bを充填して、隣り合うパネルユニット10同士を接着する。次に、接着剤Bが硬化する前に、
図14に示すように溝30に溝埋め部材32を、パネルユニット10の表面と溝埋め部材32の表面が面一に揃った状態になるまで挿入する。このとき、
図15(a)に示すように溝30に溝埋め部材32を挿入するに伴って接着剤Bが押し込まれ、
図15(b)に示すように溝埋め部材32の周囲に接着剤Bが回り込んで溝30全体に全体に行き渡る。こうして、座彫り穴埋め込み部材26とその両側のパネルユニット10は、溝30に万遍なく充填された接着剤Bの接着力により強く固着される。
【0042】
なお、接着剤Bには、セメダイン PM165-R(セメダイン社の登録商標)を使用してもよい。また、接着剤Bには、硬化後にある程度の弾性を維持するものが好ましい。硬化後の接着層にある程度の弾性が維持されれば、連続壁が変形したときにパネルユニット10等の接合部(継目、貫通孔)において亀裂が生じにくくなり、変形への復元力が大きくなるためより有利である。
【0043】
(根巻コンクリートによる基礎の施工)
所定の数のパネルユニット10が接合されると、次に、捨てコンクリートA1の床面に建て込んだパネルユニット10の脚元を挟んだ位置に型枠が仮設され、その型枠内に根巻きコンクリートA2が打設され、パネルユニット10の連続壁に連続基礎が形成される。連続基礎である根巻コンクリートA2の硬化養生が完了したら、型枠を脱型して、掘削した地盤に土を埋め戻す。
【0044】
(表面仕上げ)
その後、パネルユニット接合構造1の表面仕上げが行われるが、表面仕上げに先立ち、表面仕上げを施す壁面を整える作業を行う。まず、パネルユニット10の継目等の段差、凸凹を平滑にする。溝埋め部材32を嵌めて挿入した溝30に沿って目地テープを張り、座彫り穴埋め込み部材26を嵌めて挿入した座彫り穴25の段差等はサンドペーパー等で削りとるなどして、下地面を平滑に整える。その後、下地面にタイル材、パネル材の貼りこみや塗料吹付を行い、パネルユニット接合構造1の表面仕上げが行われ、塀2が完成する。
【0045】
本実施の形態によれば、隣り合うパネルユニット10の凹凸部20を嵌合させることでパネルユニット10がおよそ位置決めされるので、パネルの位置調整作業が簡単になる。また、ボルト23とナット24でパネルユニット10同士を締結してパネルユニット10の一次固定を行った後、接着剤Bでパネルユニット10同士を接着することができる。これにより、接着剤Bが硬化するまでにパネルユニット10の位置調整作業を行う必要がないので、接着剤Bを用いて力学的な高い構造耐力を維持しつつ、パネルユニット10の接合、設置作業を簡単かつ効果的に行うことができる。さらに、本実施の形態のパネルユニット10の連結部の構成を採用することによって、意匠的に美しいシンプルな連続壁を構成できる。
【0046】
パネルユニット10の端部の連結面には、互いに向かい合う凹凸部20が当接したとき、溝20を所定の幅に形成する突出部材31が設けられているので、一のパネルユニット10の凹凸部20を他のパネルユニット10の凹凸部20に押し込むだけで、一定幅の溝30を確保できる。このため、パネルユニット10の接合、設置作業をより簡単に行うことができる。
【0047】
溝30には、溝埋め部材32が挿入されているので、パネルユニット10の間の溝30が埋められ、連続するパネル表面の凹凸が減り、パネルユニット接合構造1に対する外観仕上げが良好に行われる。
【0048】
また、溝埋め部材32は、パネルユニット10と同一素材であり、接着剤Bによりパネルユニット10に接着されている。かかる場合、連続するパネルユニット10が溝埋め部材32を介して一体化するため、パネルユニット接合構造1に外力が付与された場合に、溝30のある部分に他の部分と同様に応力が伝わり、応力が集中しない。このため、外力に対するパネルユニット接合構造1の強度が向上し、例えば表面にひびができにくくなる。
【0049】
貫通孔22のパネル表面側には、締結部材であるボルト23とナット24をパネルユニットの表面より内側に収容するための座彫り穴25が形成されているので、ボルト23とナット24による出っ張りがなくなり、パネルユニット接合構造1の外観仕上げが良好に行われる。
【0050】
座彫り穴25には、接着剤Bが充填されているので、接着剤Bによりボルト23とナット24の緩みを防止でき、パネルユニット10の接合強度を向上できる。
【0051】
さらに座彫り穴25には、パネルユニット10と同一素材の座彫り穴埋め込み部材26が挿入されているので、座彫り穴25による凹凸が無くなり、パネルユニット接合構造1の外観仕上げを良好に行うことができる。また、外力が付与されても、座彫り穴25部分に応力が集中することが抑制されるので、外力に対するパネルユニット接合構造1の強度を向上できる。
【0052】
パネルユニット10は、発泡材料により構成されており、耐食性や、倒れた際の安全性が高い一方、圧縮耐力が小さく、ボルト23及びナット24によって強い締め付け力を付与することができない。かかる場合であっても、接着剤Bによりパネルユニット10同士を接着できるので、高い力学的構造耐力を維持できる。
【0053】
特に、パネルユニット10が比較的柔らかく容易に変形しやすい素材でできている場合(樹脂製や木製の圧縮強度が高くないパネル材、板材等)には、外力(風、小さな地震、交通振動)の作用で引張側に生じる曲げ応力によって、パネルユニット10自身が変形し、微細に動くとき、これに伴って、貫通孔22内で締結部材が微妙に動き、パネルユニット10間の継目の部分が開くなどする場合がある。このとき、パネルユニット10の接合部がずれて、パネルユニット10間の継目の表面仕上げ材(タイルの目地、塗料)に亀裂(微細な亀裂)が入りやすい。しかし、本発明に係るパネルユニット接合構造1では、締結部材の貫通孔22とパネルユニット10の継目に接着剤Bが充填されるので、硬化した接着剤Bの弾性によりパネルユニット10の連結部は、外力に抗って一体的に柔軟に挙動し、継目の部分が開くことを防止することができ、パネルユニット10の表面仕上げ材に亀裂が入ることがない。なお、締結部材の貫通孔22への接着剤Bの充填は、締結部材の緩みを止めることにも寄与する。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0055】
例えば以上の実施の形態において、例えば突出部材31は、パネルユニット10の長手方向の両端部にわたり形成されていたが、断続的に形成されていてもよい。また、突出部材31は、
図16に示すように凹凸部20の凹部分20b側ではなく、凸部分20aの先端側に設けてもよい。また、各パネルユニット10の凹凸部20はL字型であったが、L字型に限られず、向かい合って互いに嵌合するものであれば他の形状であってもよい。
図17及び
図18に示すように、一方の第1のパネルユニット10の凹凸部20の凸部分20aが厚み方向の中央(凹部分20bが厚み方向の両側)にあり、他方の第2のパネルユニット10の凹凸部分20の凸部分20aが厚み方向の両側(凹部分20bが厚み方向の中央)にあってもよい。そして、この場合に、突出部材31は、
図17に示すように第1のパネルユニット10の凹部分20bに設けられていてもよいし、
図18に示すように第2のパネルユニット10の凸部分20aの先端に設けられていてもよい。
【0056】
また、パネルユニット10は、本体内に支柱11を有するものであったが、他の構造を有するパネルにも本発明は適用できる。パネルユニット10は、発泡材料に限られず、樹脂、木、ALC等の他の材質のパネルにも本発明は適用できる。
【0057】
また、パネルユニット接合構造1は、塀2として用いられていたが、他の用途、例えば建物の壁構造、土留め等に用いてもよい。