(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来の圧力センサの検出感度は、圧電素子の形状、透孔又は凹部の容積、透孔又は凹部と外気との間を出入りする流量等によって決定され、特に圧電素子の形状によって大きく左右され易い。しかしながら、圧電素子は、圧電体の両面に電極膜等を具備する両面電極構造とされているので、その構造上、厚みが増してしまい大きな変形量を確保することが難しい。従って、共振周波数を低下させつつ感度を増大させることが困難であり、例えば1Hz以下等の低周波帯域において所望の感度を確保することが難しいものであった。
【0006】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、圧力変動の検出を精度良く行うことができると共に、圧力変動を感度良く検出することができる圧力センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る圧力センサは、内部にキャビティが形成され、前記キャビティの内部と外部とを連通する連通開口が形成された中空のセンサ本体と、レバー本体と、前記レバー本体と前記センサ本体とを接続すると共に前記レバー本体を片持ち状態で支持する複数のレバー支持部と、を有し、前記連通開口を覆うように配置され、且つ前記キャビティと前記センサ本体の外部との圧力差に応じて撓み変形するカンチレバーと、前記センサ本体に形成された検出電極と、前記レバー本体に形成された本体抵抗部と、前記レバー支持部に形成されたレバー抵抗部と、を有し、前記本体抵抗部及び前記レバー抵抗部の抵抗値変化に基づいて前記カンチレバーの変位を検出する変位検出部と、を備え、前記レバー支持部には、前記レバー抵抗部を、前記検出電極に直列に電気接続される第1抵抗部と、該第1抵抗部よりも隣接する他の前記レバー支持部寄りに位置する第2抵抗部とに区画し、且つ前記第1抵抗部と前記第2抵抗部とを電気的に切り離す区画部が形成され、前記第1抵抗部は、前記本体抵抗部を経由した第1経路と、前記第2抵抗部を経由した第2経路と、の並列経路を介して前記検出電極に電気接続されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る圧力センサによれば、センサ外部の圧力が変動すると、キャビティの内部と外部との間に圧力差が生じ、この圧力差に応じてカンチレバーが撓み変形する。この変形後、時間の経過と共に、カンチレバーと連通開口との隙間(ギャップ)を通じて圧力伝達媒体がキャビティの内部と外部との間を流動するので、キャビティの内部と外部との圧力が徐々に均衡状態となる。そのため、カンチレバーの撓みが徐々に小さくなり、最終的には元の状態に復元変形する。従って、変位検出部により、カンチレバーの変位(撓み変位)を検出することで、その検出結果から圧力変動を検出することができる。
【0009】
具体的に変位検出部は、レバー本体に形成された本体抵抗部及びレバー支持部に形成されたレバー抵抗部の抵抗値変化に基づいて、カンチレバーの変位を検出する。この際、レバー抵抗部は、区画部によって第1抵抗部と第2抵抗部とに区画されている。そして、第1抵抗部は、本体抵抗部を経由した第1経路と、第2抵抗部を経由した第2経路と、の並列経路を介して検出電極に電気接続されている。
従って、変位検出部は、第1経路の抵抗値変化、及び第2経路の抵抗値変化に基づいてカンチレバーの変位を検出する。
【0010】
ところで、カンチレバーは、レバー本体を片持ち状態で支持する複数のレバー支持部を中心に撓み変形するので、複数のレバー支持部はレバー本体よりも積極的に変位する。従って、感度に大きく寄与する応力検知部位は、レバー支持部における第1抵抗部及び第2抵抗部となる。これに対して、レバー本体における本体抵抗部は、感度への寄与度(貢献度)が小さい応力検知部位となる。
【0011】
従って、区画部によってレバー抵抗部を第1抵抗部及び第2抵抗部に区画したうえで、第1抵抗部を、第1経路及び第2経路の並列経路を介して検出電極に電気接続することで、感度への貢献度が小さい本体抵抗部の影響をできるだけ小さくしつつ、感度に大きく寄与する第2抵抗部を積極的に利用することができる。
つまり、並列経路を構成することで、検出電極間の抵抗を下げ、検出電極間における全抵抗に対して第1抵抗部の抵抗比率を高めることができるので、感度を高くすることができる。
【0012】
従って、感度良くカンチレバーの変位を検出することができる。これにより、センサ感度を向上でき、圧力変動の検出を精度良く行うことができる高性能な圧力センサとすることができる。その結果、例えば1Hz以下の低周波数帯域の圧力変動であっても感度良く検出することができ、検出できる下限周波数を下げることができる。
【0013】
(2)前記区画部は、隣り合う前記レバー支持部にそれぞれ形成され、隣り合う前記レバー支持部の前記第1抵抗部同士は、前記本体抵抗部を経由した前記第1経路と、前記第2抵抗部及び前記カンチレバーの基端部側を経由した前記第2経路と、の並列経路により互いに電気接続された状態で前記検出電極に電気接続されても良い。
【0014】
この場合には、変位検出部は、第1経路の抵抗値変化(一方のレバー支持部の第1抵抗部と、本体抵抗部と、他方のレバー支持部の第1抵抗部との抵抗値変化)、及び第2経路の抵抗値変化(一方のレバー支持部の第1抵抗部及び第2抵抗部と、他方のレバー支持部の第1抵抗部及び第2抵抗部との抵抗値変化)に基づいてカンチレバーの変位を検出する。
【0015】
このように、隣り合うレバー支持部の第1抵抗部同士を、第1経路及び第2経路の2つの並列経路により電気接続することで、感度への貢献度が小さい本体抵抗部の影響をできるだけ小さくしつつ、感度に大きく寄与する第2抵抗部を積極的に利用することができる。つまり、このように並列経路を構成することで、検出電極間の抵抗を下げ、検出電極間における全抵抗に対して第1抵抗部の抵抗比率を高めることができるので、感度を高くすることができる。
【0016】
特に、隣り合うレバー支持部の第1抵抗部同士を、第1経路及び第2経路の並列経路により電気接続しているので、これら両経路の工夫により感度向上に向けて複数の手法を選択することが可能である。
例えば、第2経路側の工夫により検出電極に直列に接続される第1抵抗部の影響をできるだけ大きくすることで、検出電極間における全抵抗に対して第1抵抗部の抵抗比率を高め、それにより感度を高めることが可能である。または、第1経路側の工夫により本体抵抗部の抵抗値を上げることで、感度に大きく寄与する第2抵抗部の影響をより大きくして、第1抵抗部同士を電気接続している並列経路部分の感度を高くし、その結果、検出電極間の全体の感度を高めることが可能である。
このように、感度向上に向けて複数の手法を選択することができるので、設計の自由度を高めることができ、各種の用途に利用し易い圧力センサとすることができる。
【0017】
(3)前記区画部は、前記レバー支持部の支持幅に沿った前記第1抵抗部の第1幅が、前記レバー支持部の支持幅に沿った前記第2抵抗部の第2幅よりも幅狭となるように、前記第1抵抗部及び前記第2抵抗部を区画しても良い。
【0018】
この場合には、第1抵抗部の抵抗値を第2抵抗部の抵抗値よりも大きくすることができるので、検出電極間における全抵抗に対して、検出電極に直列に接続される第1抵抗部の抵抗比率をさらに高めることができる。従って、センサ感度をより向上することができる。
【0019】
(4)前記区画部は、前記レバー抵抗部に溝状に形成された区画溝であっても良い。
【0020】
この場合には、例えばレバー抵抗部を形成した後に、溝加工等により区画溝を形成することで、第1抵抗部及び第2抵抗部を確実に電気的に切り離した状態で容易に形成することができる。従って、圧力センサをより効率良く製造し易い。
【0021】
(5)前記第2抵抗部には、前記第1抵抗部よりも電気抵抗率が小さい導電体が形成されていても良い。
【0022】
この場合には、第2抵抗部の抵抗値を第1抵抗部の抵抗値よりも小さくすることができるので、相対的に第1抵抗部の抵抗値を大きくして、検出電極間における全抵抗に対して、第1抵抗部の抵抗比率をさらに高めることができる。従って、センサ感度をさらに向上することができる。
【0023】
(6)前記本体抵抗部には、該本体抵抗部の抵抗を増大させる抵抗増大部が形成されていても良い。
【0024】
この場合には、レバー本体における本体抵抗部の抵抗値を大きくすることができるので、第1経路よりも第2経路をさらに優先的に利用でき、感度に大きく寄与する第2抵抗部の影響をより大きくすることができる。これにより、例えば第1抵抗部同士を電気接続している並列経路部分の感度を高くすることができ、検出電極間の全体の感度を高めることができる。その結果、センサ感度をさらに向上することができる。
【0025】
(7)前記抵抗増大部は、前記本体抵抗部に溝状に形成され、且つ前記本体抵抗部を流れる電流の送電距離を増大させるように形成された溝部であっても良い。
【0026】
この場合には、前記本体抵抗部を流れる電流の送電距離を増大できるので、その分だけ本体抵抗部の抵抗値を大きくすることができる。また、例えば本体抵抗部を形成した後に、溝加工等により溝部を容易に形成できるので、圧力センサの製造効率を向上し易い。
【0027】
(8)前記抵抗増大部は、前記本体抵抗部に溝状に形成され、且つ前記本体抵抗部を流れる電流の流れを妨げるように形成された溝部であっても良い。
【0028】
この場合には、前記本体抵抗部を流れる電流の流れを妨げることができるので、その分だけ本体抵抗部の抵抗値を大きくすることができる。また、例えば本体抵抗部を形成した後に、溝加工等により溝部を容易に形成できるので、圧力センサの製造効率を向上し易い。
【0029】
(9)前記抵抗増大部は、絶縁層であっても良い。
【0030】
この場合には、本体抵抗部に例えば機械的加工によって抵抗増大のための溝加工や孔加工を施す必要がなく、半導体製造技術等を利用して絶縁層を形成すれば良いので、機械的加工によるカンチレバーの剛性低下を防ぐことができ、より高品質な圧力センサにし易い。また、機械的加工が不要となるので、圧力センサの製造効率を向上することができる。
【0031】
(10)前記カンチレバーの基端部側には、隣り合う前記レバー支持部の間に形成された基端抵抗部と、前記基端抵抗部の抵抗を調整する抵抗調整部と、が設けられていても良い。
【0032】
この場合には、基端抵抗部の抵抗(電気抵抗値)を調整できるので、感度に大きく寄与する第2抵抗部の抵抗比率を調整することができる。そのため、例えば検出電極に直列に電気接続される第1抵抗部の影響が大きくなるように調整して、検出電極間における全抵抗に対する第1抵抗部の抵抗比率を高めてセンサ感度を向上させることが可能である。或いは、第2抵抗部の影響が大きくなるように調整して、第2経路全体の感度を高くして、検出電極間の全体の感度を向上させることも可能である。
このように、例えば第1経路及び第2経路の2つの並列経路により互いに電気接続された第1抵抗部同士間における全体の電気抵抗値を調整することができる。従って、感度調整だけでなく、例えば変位検出部が有するブリッジ回路に対するバランス調整等を行うことができる。
【0033】
(11)前記センサ本体の外部に露出するように配置されると共に、レファレンス抵抗部が形成されたレファレンス部を備え、前記変位検出部は、前記本体抵抗部及び前記レバー抵抗部の抵抗値変化と、前記レファレンス抵抗部の抵抗値変化との差分に基づいて前記カンチレバーの変位を検出しても良い。
【0034】
この場合には、温度変化等の環境変化や振動等の外乱に起因する感度変動を相殺することができ、圧力変動の検出をさらに高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る圧力センサによれば、圧力変動の検出を精度良く行うことができると共に、圧力変動を感度良く検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る圧力センサの第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0038】
図1〜3に示すように、本実施形態の圧力センサ1は、所定の周波数帯域の圧力変動を検出するセンサであり、圧力伝達媒体(例えば空気等の気体)が存在する空間等に配置されて使用される。
圧力センサ1は、例えばSOI基板5を利用して形成された直方体状の外形を有するセンサ本体2と、先端部3aが自由端とされ、基端部3bが片持ち支持されたカンチレバー3と、カンチレバー3の変位(撓み変位)を検出する変位検出部4と、を備えている。
【0039】
なお、本実施形態では、圧力センサ1の厚み方向に沿ったカンチレバー3側を上方、その反対側を下方といい、圧力センサ1の平面視で縦方向(長手方向)をL1(以下、縦方向L1)、圧力センサ1の平面視で縦方向L1に直交する横方向(短手方向)をL2(以下、横方向L2)という。
また、SOI基板5は、シリコン支持層5a、シリコン酸化膜等の電気的絶縁性を有する酸化層5b、及びシリコン活性層5cを熱的に張り合わせた基板とされている。
【0040】
センサ本体2は、例えばSOI基板5におけるシリコン支持層5aで形成されている。具体的には、センサ本体2は底壁部2a及び周壁部2bを有し、上方に開口する中空の有底筒状に形成されている。センサ本体2の内部空間は、キャビティ(空気室)10として機能し、上方に開口した部分がキャビティ10の内部と外部とを連通する連通開口11として機能する。
【0041】
酸化層5bは、センサ本体2の周壁部2bの開口端縁上に全周に亘って環状に形成されている。シリコン活性層5cは、センサ本体2を上方から塞ぐように酸化層5b上に形成されている。このシリコン活性層5cには、該シリコン活性層5cを厚さ方向に貫通する平面視コ形状(C形状)のギャップ12が形成されている。これにより、シリコン活性層5cには、環状の枠部13とカンチレバー3とが形成されている。
【0042】
上記ギャップ12は、平面視で連通開口11の内側に位置する領域内(キャビティ10の内部に連通する領域内)に形成され、そのギャップ幅Gは、例えば数百nm〜数十μmの微小幅とされている。
【0043】
カンチレバー3は、基端部3bが枠部13を介してセンサ本体2における周壁部2bの開口端の内側に一体的に接続され、且つ先端部3aが自由端とされた片持ち梁構造とされ、連通開口11を覆うように配置されている。
なお、枠部13は、酸化層5b上に全周に亘って環状に形成されていると共に、一部が連通開口11を覆うように周壁部2bよりもカンチレバー3側に突出している。これにより、枠部13の一部は連通開口11を覆っている。
【0044】
カンチレバー3について詳細に説明する。
カンチレバー3は、レバー本体20と、該レバー本体20を片持ち状態で支持する2つのレバー支持部21A、21Bと、を備えている。そして、カンチレバー3は、基端部3bを中心としてキャビティ10の内部と外部との圧力差(すなわち、ギャップ12を介してキャビティ10の内部と外部との間を流通可能な圧力伝達媒体による圧力の差)に応じて撓み変形する。
【0045】
カンチレバー3の基端部3bには、該カンチレバー3を厚さ方向に貫通する平面視コ形状(C形状)の補助ギャップ22が形成されている。この補助ギャップ22は、カンチレバー3の基端部3bにおいて圧力センサ1の横方向L2の中央部に配置されている。これにより、カンチレバー3は基端部3bを中心として撓み変形し易い構造とされている。
【0046】
2つのレバー支持部21A、21Bは、補助ギャップ22を挟んで横方向L2に並ぶように配置され、レバー本体20と枠部13とを接続すると共にレバー本体20を片持ち状態で支持している。従って、カンチレバー3は、これらレバー支持部21A、21Bを中心に撓み変形する。
なお、2つのレバー支持部21A、21Bの横方向L2に沿った支持幅は、同等とされている。従って、カンチレバー3が撓み変形した際、一方のレバー支持部21Aに作用する単位面積当たりの応力と、他方のレバー支持部21Bに作用する単位面積当たりの応力とは同等とされている。
【0047】
上述したカンチレバー3及び枠部13が形成されたシリコン活性層5cには、ピエゾ抵抗(抵抗素子)30がシリコン活性層5cの全面に亘って形成されている。このピエゾ抵抗30は、例えばリン等のドープ剤(不純物)がイオン注入法や拡散法等の各種の方法によりドーピングされることで形成されている。
【0048】
ピエゾ抵抗30のうち、レバー本体20に形成されている部分は、レバー本体20の撓み量に応じて抵抗値が変化する本体抵抗部31として機能する。また、ピエゾ抵抗30のうち、レバー支持部21A、21Bに形成されている部分は、レバー支持部21A、21Bの撓み量に応じて抵抗値が変化するレバー抵抗部32として機能する。さらに、ピエゾ抵抗30のうち、カンチレバー3の基端部3b側であって2つのレバー支持部21A、21Bの間に形成されている部分は、基端抵抗部33として機能する。
【0049】
さらに、ピエゾ抵抗30の上面には、ピエゾ抵抗30よりも電気抵抗率が小さい導電性材料(例えばAU等)からなる検出電極35が形成されている。この検出電極35は、平面視でカンチレバー3を囲む枠状に形成され、枠部13の上方に配置されている。
なお、ピエゾ抵抗30及び検出電極35の上面に図示しない絶縁膜を保護膜として被膜することで、外部との電気的な接触を防止することが好ましい。
【0050】
レバー支持部21A、21Bには、上記レバー抵抗部32を第1抵抗部32aと第2抵抗部32bとに区画し、これら第1抵抗部32aと第2抵抗部32bとを電気的に切り離す区画溝(区画部)40が形成されている。
ここで、一方のレバー支持部21Aに形成された区画溝40について詳細に説明する。
【0051】
区画溝40は、レバー支持部21Aにおける横方向L2の中央部分に配置され、縦方向L1に沿って延びた直線状に形成されている。この際、区画溝40は、レバー支持部21Aにおける縦方向L1の中間部から、カンチレバー3の基端部3bに向かって直線状に延びると共に、検出電極35を横方向L2に分断するようにセンサ本体2の側方まで達するように形成されている。
【0052】
このように区画溝40が形成されているので、レバー抵抗部32は横方向L2に区画され、上記第1抵抗部32aと、第1抵抗部32aよりも他方のレバー支持部21B寄りに位置する上記第2抵抗部32bとに電気的に切り離されている。
また、レバー支持部21Aにおける横方向L2の中央部分に区画溝40が配置されているので、横方向L2に沿った第1抵抗部32aの第1幅W1と、横方向L2に沿った第2抵抗部32bの第2幅W2とは同等のサイズとされている。
【0053】
なお、図示の例では、区画溝40は酸化層5bに達する深さとされている。但し、この場合に限られるものではなく、例えばカンチレバー3を厚さ方向に貫通しても良い。いずれにしても、少なくとも酸化層5bに達する深さまで区画溝40を形成することが好ましい。さらに、区画溝40は、レバー支持部21Aにおける縦方向L1の中間部よりも、レバー本体20側に向けてさらに延びていても構わない。
【0054】
他方のレバー支持部21Bについても、上述と同様に区画溝40が形成されている。従って、他方のレバー支持部21Bにおけるレバー抵抗部32は、区画溝40によって、第1抵抗部32aと、第1抵抗部32aよりも一方のレバー支持部21A寄りに位置する第2抵抗部32bと、に電気的に切り離されている。
【0055】
ところで、2つのレバー支持部21A、21Bに形成された区画溝40は、上述したようにそれぞれ検出電極35を横方向L2に分断するようにセンサ本体2の側方まで達するように形成されている。従って、検出電極35は、これら区画溝40を挟んで横方向L2に電気的に切り離されている。
【0056】
検出電極35のうち、一方のレバー支持部21Aにおける第1抵抗部32a側に位置する部分は、第1抵抗部32aに直列に電気接続される第1検出電極35Aとして機能する。また、検出電極35のうち、他方のレバー支持部21Bにおける第1抵抗部32a側に位置する部分は、第1抵抗部32aに直列に電気接続される第2検出電極35Bとして機能する。
【0057】
また、枠部13には、カンチレバー3の先端部3a側に位置する部分に、第1検出電極35Aと第2検出電極35Bとを電気的に切り離す電極溝41が形成されている。この電極溝41は、ギャップ12とセンサ本体2の側方との間に亘って縦方向L1に沿って延びた直線状に形成され、例えば酸化層5bに達する深さとされている。
【0058】
このように電気的に切り離された第1検出電極35A及び第2検出電極35Bには、本体抵抗部31及びレバー抵抗部32の抵抗値変化に基づいてカンチレバー3の変位を検出する検出回路50が接続されている。
これにより、検出回路50を通じて、第1検出電極35A及び第2検出電極35B間に所定電圧が印加されると、この電圧印加に起因する電流は、第1検出電極35Aから一方のレバー支持部21Aの第1抵抗部32a及び他方のレバー支持部21Bの第1抵抗部32aを経由して、第2検出電極35Bに流れる。
【0059】
従って、検出回路50は、第1検出電極35A及び第2検出電極35B間における全体の電気抵抗値Rの変化を、カンチレバー3の変位(撓み変形に伴う変位)に応じて変化する電気的な出力信号(センサ信号)として取り出すことが可能とされている。従って、この出力信号に基づいてカンチレバー3の変位を検出でき、圧力変動を検出することが可能となる。
【0060】
よって、上述した検出電極35、本体抵抗部31、レバー抵抗部32及び検出回路50は、第1検出電極35A及び第2検出電極35B間における電気抵抗値Rの抵抗値変化に基づいてカンチレバー3の変位を検出する変位検出部4として機能する。
【0061】
特に、2つのレバー支持部21A、21Bにおけるレバー抵抗部32は、それぞれ第1抵抗部32a及び第2抵抗部32bに区画されている。
従って、
図4に示すように、2つのレバー支持部21A、21Bの第1抵抗部32a同士は、本体抵抗部31を経由した第1経路S1と、第2抵抗部32b及び基端抵抗部33を経由した第2経路S2と、の並列経路により互いに電気接続されている。
従って、第1検出電極35A及び第2検出電極35B間における上記電気抵抗値Rは、下記の式1で表される。
【0062】
なお、一方のレバー支持部21Aにおける第1抵抗部32aに着目すると、第1経路S1及び第2経路S2の並列経路を介して、第1検出電極35Aと第2検出電極35Bとの間に電気接続された状態にもなっている。他方のレバー支持部21Bにおける第1抵抗部32aについても同様である。
【0064】
式1において、R1は一方のレバー支持部21Aにおける第1抵抗部32aの電気抵抗値を示す。R2は一方のレバー支持部21Aにおける第2抵抗部32bの電気抵抗値を示す。R3は他方のレバー支持部21Bにおける第2抵抗部32bの電気抵抗値を示す。R4は他方のレバー支持部21Bにおける第1抵抗部32aの電気抵抗値を示す。R5は本体抵抗部31の電気抵抗値を示す。R6は基端抵抗部33の電気抵抗値を示す。
【0065】
なお、レバー支持部21A、21Bにおける第1抵抗部32aは、第1検出電極35A及び第2検出電極35Bに対して直列に接続されているので、式1から明らかなように、電気抵抗値(R1、R4)が変化すると、全体の電気抵抗値Rの変化に大きく影響を与え易い。
【0066】
上記検出回路50は、
図5に示すように、ブリッジ回路(ホイートストンブリッジ回路)51と、基準電圧発生回路52と、作動増幅回路53と、を備えている。
【0067】
ブリッジ回路51は、カンチレバー3全体のセンサ抵抗55及び第1固定抵抗56が直列接続された枝辺と、第2固定抵抗57及び第3固定抵抗58が直列接続された枝辺と、が基準電圧発生回路52に対して並列に接続されている。
なお、センサ抵抗55の電気抵抗値は上述した電気抵抗値Rである。各固定抵抗56、57、58の電気抵抗値は、それぞれ電気抵抗値Rb、Rc、Rdとされている。
【0068】
ブリッジ回路51において、センサ抵抗55と第1固定抵抗56との接続点(中点電圧E1)は、作動増幅回路53の反転入力端子(−端子)に接続され、第2固定抵抗57と第3固定抵抗58との接続点(中点電圧E2)は、作動増幅回路53の非反転入力端子(+端子)に接続されている。
【0069】
基準電圧発生回路52は、ブリッジ回路51に対して所定の基準電圧Vccを印加する。作動増幅回路53は、中点電圧E1と中点電圧E2との間の電位差を検出し、この電位差を所定増幅率にて増幅して出力する。この電位差は、電気抵抗値Rの変化に応じた値、すなわちカンチレバー3の変位に基づいた値となる。
【0070】
(圧力センサの作動)
次に、上述した圧力センサ1を利用して、圧力変動を検出する場合について説明する。
【0071】
はじめに、
図6に示す時刻t1以前の期間Aのように、キャビティ10の外部の圧力(以下、外気圧Poutと称する)と、キャビティ10の内部の圧力(以下、内気圧Pinと称する)との圧力差がゼロである場合には、
図7Aに示すように、カンチレバー3は撓み変形しない。これにより、検出回路50から出力される出力信号(センサ信号)は所定値(例えばゼロ)である。
【0072】
そして、
図6に示す時刻t1以降の期間Bのように、例えば外気圧Poutがステップ状に上昇すると、キャビティ10の外部と内部との間に圧力差が生じるので、
図7Bに示すようにカンチレバー3はキャビティ10の内部に向けて撓み変形する。
すると、カンチレバー3の撓み変形に応じて、レバー本体20に形成された本体抵抗部31、及びレバー支持部21A、21Bに形成されたレバー抵抗部32に歪が生じ、それにより全体の電気抵抗値Rが変化するので、
図6に示すように出力信号が増大する。
【0073】
さらに、外気圧Poutの上昇以降、ギャップ12を介してキャビティ10の外部から内部へと圧力伝達媒体が流動するので、
図6に示すように、内気圧Pinが時間の経過と共に外気圧Poutよりも遅れながら、且つ外気圧Poutの変動よりも緩やかな応答で上昇する。
これにより、内気圧Pinが外気圧Poutに徐々に近づくので、キャビティ10の外部と内部との圧力が均衡状態になりはじめ、カンチレバー3の撓みが徐々に小さくなり、
図6に示すように出力信号が徐々に低下する。
【0074】
そして、内気圧Pinが外気圧Poutに等しくなると、
図7Cに示すように、カンチレバー3の撓み変形が解消されて元の状態に復帰し、
図6に示す時刻t2以降の期間Cのように出力信号が再び所定値(例えばゼロ)になる。
【0075】
このように、変位検出部4により、カンチレバー3の変位に基づいた出力信号の変動をモニタすることで、圧力変動を検出することができる。
特に、SOI基板5のシリコン活性層5cを利用して半導体プロセス技術によりカンチレバー3を形成できるので、従来の圧電素子に比べて薄型化(例えば数十〜数百nm)し易い。従って、微小な圧力変動の検出を精度良く行うことができる。
【0076】
さらに本実施形態の圧力センサ1では、
図4に示すように、2つのレバー支持部21A、21Bの第1抵抗部32a同士が、第1経路S1及び第2経路S2の2つの並列経路により互いに電気接続されている。
従って、変位検出部4は、第1経路S1の抵抗値変化(式1におけるR1、R4、R5の抵抗値変化)、及び第2経路S2の抵抗値変化(式1におけるR1、R2、R3、R4、R6の抵抗値変化)に基づいてカンチレバー3の変位を検出する。
【0077】
ところで、カンチレバー3は、2つのレバー支持部21A、21Bを中心に撓み変形するので、これら2つのレバー支持部21A、21Bはレバー本体20よりも積極的に変位する。従って、感度に大きく寄与する応力検知部位は、レバー支持部21A、21Bにおける第1抵抗部32a及び第2抵抗部32bとなる。これに対して、レバー本体20における本体抵抗部31は、感度への寄与度(貢献度)が小さい応力検知部位となる。
なお、カンチレバー3の基端部3bはさらに撓み変形し難いので、基端抵抗部33はさらに感度への寄与度(貢献度)が小さい応力検知部位となる。
【0078】
従って、2つのレバー支持部21A、21Bの第1抵抗部32a同士を、第1経路S1及び第2経路S2の2つの並列経路により電気接続することで、感度への貢献度の低い本体抵抗部31の影響をできるだけ小さくし、且つ感度に大きく貢献する第2抵抗部32bを積極的に利用することができる。
【0079】
つまり、第1検出電極35A及び第2検出電極35B間における全抵抗(電気抵抗値R)に対して、第1抵抗部32a(電気抵抗値R1、R4)の抵抗比率を高めて、両検出電極35A、35B間の感度を高めることができる。或いは、第2抵抗部32b(電気抵抗値R2、R3)の影響を大きくすることで、第1抵抗部32a同士を電気接続している並列経路部分の感度を高くし、結果的に両検出電極35A、35B間の感度を高めることができる。
【0080】
よって、感度、すなわち抵抗変化率△R/R(△Rは抵抗変化分)を高めることができ、カンチレバー3の変位を感度良く検出することができる。これにより、センサ感度を向上でき、圧力変動の検出を精度良く行うことができる高性能な圧力センサ1とすることができる。
その結果、例えば1Hz以下の低周波数帯域の圧力変動であっても感度良く検出することができ、検出できる下限周波数を下げることができる。
【0081】
さらに、2つのレバー支持部21A、21Bの第1抵抗部32a同士を、第1経路S1及び第2経路S2の2つの並列経路により電気接続しているので、これら両経路S1、S2の工夫により感度向上に向けて複数の手法を選択することが可能である。
【0082】
例えば、第2経路S2側の工夫により、第1検出電極35A及び第2検出電極35Bに直列に接続される第1抵抗部32aの影響をできるだけ大きくすることで、両検出電極35A、35B間における全抵抗(電気抵抗値R)に対して第1抵抗部32aの抵抗比率を高め、それにより感度を高めることが可能である。
または、第1経路S1側の工夫により、本体抵抗部31の電気抵抗値(R5)を上げることで、感度に大きく寄与する第2抵抗部32bの影響をより大きくして、第1抵抗部32a同士を電気接続している並列経路部分の感度を高くする。それにより、両検出電極35A、35B間の全体の感度を高めることが可能である。
【0083】
このように、感度向上に向けて複数の手法を選択することができるので、設計の自由度を高めることができ、各種の用途に利用し易い圧力センサ1とすることができる。
【0084】
以上のことから、本実施形態の圧力センサ1によれば、圧力変動の検出を精度良く行うことができると共に、検出できる下限周波数を下げることができ、且つ低周波帯域の圧力変動を感度良く検出できる高性能なセンサとすることができる。
【0085】
そして、本実施形態の圧力センサ1は、上記の作用効果を奏功できるため、以下の各種用途に適用することができる。
例えば、自動車用ナビゲーション装置に適用することが可能である。この場合、例えば圧力センサ1を利用して高低差に基づく気圧差を検出できるので、高架道路と高架下道路とを正確に判別してナビゲーション結果に反映させることができる。
【0086】
また、携帯用ナビゲーション装置に適用することも可能である。この場合、例えば圧力センサ1を利用して高低差に基づく気圧差を検出できるので、ユーザが建物内の何階に位置しているのかを正確に判別してナビゲーション結果に反映させることができる。
【0087】
更には、室内の気圧変化を検出することが可能であるので、例えば建物や自動車の防犯装置に適用することも可能である。特に、1Hz以下の周波数帯域の圧力変動であっても感度良く検出することができるので、ドアや引き戸の開閉等に基づく圧力変動であっても検出することが可能であり、防犯装置等の適用に好適である。
【0088】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0089】
図8に示すように、本実施形態の圧力センサ60は、第1抵抗部32aの第1幅W1が第2抵抗部32bの第2幅W2よりも幅狭となるように、区画溝40が第1抵抗部32a及び第2抵抗部32bを区画している。
【0090】
このように構成された圧力センサ60によれば、第1抵抗部32aの電気抵抗値(R1、R4)を第2抵抗部32bの電気抵抗値(R2、R3)よりも大きくすることができるので、第1検出電極35A及び第2検出電極35B間における全抵抗(電気抵抗値R)に対して、第1検出電極35A及び第2検出電極35Bに直列に接続される第1抵抗部32aの抵抗比率をさらに高めることができる。
従って、センサ感度をより向上することができると共に、低消費電力化を図ることができる。
【0091】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0092】
図9及び
図10に示すように、本実施形態の圧力センサ70は、第2抵抗部32b上に第1抵抗部32aよりも電気抵抗率が小さい導電体71が形成されている。図示の例では、導電体71は、ピエゾ抵抗30よりも電気抵抗率が小さい検出電極35から第2抵抗部32b上に延びた導体パターンとされている。
但し、この場合に限定されるものではなく、検出電極35とは異なる材料で導電体71を形成しても構わない。
【0093】
このように構成された圧力センサ70によれば、第2抵抗部32bの電気抵抗値(R2、R3)を第1抵抗部32aの電気抵抗値(R1、R4)よりも小さくすることができるので、相対的に第1抵抗部32aの電気抵抗値(R1、R4)を大きくすることができる。
従って、第1検出電極35A及び第2検出電極35B間における全抵抗(電気抵抗値R)に対して、これら第1検出電極35A及び第2検出電極35Bに直列に接続される第1抵抗部32aの抵抗比率をさらに高めることができる。従って、センサ感度をより向上することができる。
【0094】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第4実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第4実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0095】
図11に示すように、本実施形態の圧力センサ80は、レバー本体20に形成された本体抵抗部31に、該本体抵抗部31の抵抗を増大させる溝部(抵抗増大部)81が形成されている。
【0096】
溝部81は、レバー本体20における横方向L2の中央部に配置され、縦方向L1に沿って延びた直線状に形成されている。この際、溝部81の一方の端部は補助ギャップ22に接続され、溝部81の他方の端部はギャップ12に対して離間している。
従って、本体抵抗部31を流れる電流は、
図11に示す矢印のように溝部81を迂回するように流れるので、その分だけ距離が長くなる。そのため、本体抵抗部31の電気抵抗値(R5)をさらに大きくすることができる。
【0097】
なお、溝部81は、例えば酸化層5bに達する程度の深さで形成されている。但し、この場合に限定されるものではなく、レバー本体20を貫通するように溝部81を形成しても構わない。
【0098】
このように構成された圧力センサ80によれば、本体抵抗部31の電気抵抗値(R5)をさらに大きくすることができるので、第1経路S1よりもさらに第2経路S2を優先的に利用することができ、感度に大きく寄与する第2抵抗部32bの影響をより大きくすることができる。
これにより、第1抵抗部32a同士を電気接続している並列経路部分の感度を高くすることができ、第1検出電極35A及び第2検出電極35B間の感度を高めることができる。その結果、センサ感度をより向上することができると共に、低消費電力化を図ることができる。
【0099】
なお、溝部81の数や形成位置は、上述した場合に限定されるものではない。例えば、
図12に示すように、2本の溝部81を横方向L2に間隔をあけて平行に配置しても良い。
図示の例では、2本の溝部81の両端部は、補助ギャップ22及びギャップ12のいずれに対しても離間するように配置されている。この場合であっても、2本の溝部81が本体抵抗部31を流れる電流の流れ(
図12に示す矢印)を妨げるので、本体抵抗部31の電気抵抗値(R5)をさらに大きくすることができる。従って、同様の作用効果を奏功することができる。
【0100】
さらに、本体抵抗部31の抵抗を増大させる手段としては、上述した溝部81のように機械的加工を必要とするものに限られない。
例えば、
図13に示すように、本体抵抗部31に絶縁層(電気絶縁領域)となる非ドープ部(抵抗増大部)82を設けても良い。なお、図面を見易くするために、非ドープ部82にはハッチングを施している。
【0101】
図示の例では、非ドープ部82は、横方向L2に長軸を有する平面視楕円状に形成され、且つ横方向L2に沿った長さがカンチレバー3の幅よりも長く形成されている。また、非ドープ部82は、レバー本体20における縦方向L1の中央部分に配置されている。
これにより、本体抵抗部31を流れる電流は、
図13に示す矢印のように、補助ギャップ22と非ドープ部82との間の狭小部分を抜けるように流れる。
【0102】
従って、この場合であっても、非ドープ部82によって、本体抵抗部31を流れる電流の流れを妨げることができるので、本体抵抗部31の電気抵抗値(R5)をさらに大きくすることができ、同様の作用効果を奏功することができる。
【0103】
特に、この場合には、溝部81のように機械的加工を行う必要がなく、例えばピエゾ抵抗30を形成する際に、ドープする領域とドープしない領域とを選択して区分けするだけの簡便な作業で非ドープ部82を形成できるので、圧力センサ80を効率良く製造することができる。さらに、機械的加工が不要となるので、カンチレバー3の剛性低下を防ぐことができ、より高品質な圧力センサ80にし易い。
【0104】
なお、非ドープ部82の形状は、上述した場合に限定されるものではなく、例えば
図14に示すように、補助ギャップ22に接するように形成しても良い。
この場合には、本体抵抗部31を流れる電流が、
図14に示す矢印のように非ドープ部82を迂回するように流れるので、その分だけ距離を長くすることができる。従って、同様に本体抵抗部31の電気抵抗値(R5)をさらに大きくすることができる。
【0105】
(第5実施形態)
次に、本発明に係る第5実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第5実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0106】
図15及び
図16に示すように、本実施形態の圧力センサ90は、第1実施形態における圧力センサ1に加え、レファレンス用センサ91をさらに備えている。
【0107】
レファレンス用センサ91は、例えば圧力センサ1と共通のSOI基板5を利用して、圧力センサ1と一体的に形成されている。なお、レファレンス用センサ91は、圧力センサ1とほぼ同一の外形形状で形成され、圧力センサ1に対して縦方向L1に連なるように形成されている。しかも、図示の例では、圧力センサ1とレファレンス用センサ91とは、横方向L2に沿った仮想面Mに対して対称配置されるように形成されている。
但し、この場合に限定されるものではなく、圧力センサ1及びレファレンス用センサ91の配置関係は自由に変更して構わない。
【0108】
圧力センサ1がキャビティ10を有しているのに対して、レファレンス用センサ91はキャビティ10を有していない。但し、キャビティ10を有していない点が異なるが、レファレンス用センサ91は、キャビティ10以外の圧力センサ1の各構成部材を同様に有している。
【0109】
すなわち、レファレンス用センサ91におけるシリコン活性層5c及び酸化層5bには、ギャップ12、補助ギャップ22及び検出電極35が同様に形成されていると共に、圧力センサ1のピエゾ抵抗30と同一のレファレンス用のピエゾ抵抗(レファレンス抵抗部)92が形成されている。
これにより、レファレンス用センサ91は、ピエゾ抵抗92が形成されたレファレンス部93を有している。
【0110】
レファレンス部93は、ギャップ12及び補助ギャップ22によって平面視で圧力センサ1のカンチレバー3と同様の外形形状を有している。但し、レファレンス用センサ91はキャビティ10を有していないので、レファレンス部93はレバーではなく、シリコン支持層5a、酸化層5b及びシリコン活性層5cが一体化した構造とされている。なお、レファレンス部93は、上面が外部に露出した状態となっているため、例えば温度等の周囲環境の影響を受ける。
【0111】
また、このレファレンス部93には、カンチレバー3と同様に区画溝40が形成され、これにより圧力センサ1が有する各抵抗部(第1抵抗部32a、第2抵抗部32b、基端抵抗部33、本体抵抗部31)を同様に備えている。
【0112】
上記のように構成されているので、本実施形態の圧力センサ90によれば、圧力センサ1のセンサ出力とレファレンス用センサ91のセンサ出力との差分をとることで、温度等の周囲環境の影響をキャンセルすることができ、外気圧Pout(外部圧力)の変動に起因する出力のみを得ることができる。
【0113】
具体的に本実施形態の変位検出部4は、
図17に示すブリッジ回路96を備えた検出回路95を備えている。
【0114】
ブリッジ回路96は、圧力センサ1全体のセンサ抵抗55及びレファレンス用センサ91全体のセンサ抵抗97が直列接続された枝辺と、第2固定抵抗57及び第3固定抵抗58が直列接続された枝辺と、が基準電圧発生回路52に対して並列に接続されている。
なお、センサ抵抗97の電気抵抗値は、カンチレバー3と同様に電気抵抗値Rである。
【0115】
ブリッジ回路96は、上述のように圧力センサ1とレファレンス用センサ91とを直列接続する回路部分を有しているので、その回路における中点電圧E1は圧力センサ1におけるセンサ抵抗55の抵抗値、及びレファレンス用センサ91におけるセンサ抵抗93の抵抗値の差分に応じた電圧となる。
【0116】
作動増幅回路53は、中点電圧E1と中点電圧E2との間の電位差を出力するが、中点電圧E2の電圧は固定抵抗によって決定されるので一定電圧である。
従って、中電電圧E1の変動分が、中点電圧E1と中点電圧E2との間の電位差となって現れるので、作動増幅回路53からの出力に基づいて、温度等の周囲環境の影響がキャンセルされた外気圧Poutの変動を高精度に検出することができる。従って、所望の周波数帯域の圧力変動をさらに高精度に検出することができる。
【0117】
(第6実施形態)
次に、本発明に係る第6実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第6実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0118】
図18に示すように、本実施形態の圧力センサ100は、一方のレバー支持部21Aのみに区画溝40が形成され、他方のレバー支持部21Bには区画溝40が形成されていない。これにより、一方のレバー支持部21A及び他方のレバー支持部21Bは、共通の構造ではなく、非対称の構造とされている。
【0119】
一方のレバー支持部21Aには区画溝40が形成されているので、区画溝40によってレバー抵抗部32が、第1検出電極35Aに対して直列に電気接続される第1抵抗部32aと、他方のレバー支持部21B寄りに位置する第2抵抗部32bとに区画されている。
これに対して、他方のレバー支持部21Bには区画溝40が形成されていないので、レバー抵抗部32の全体は第2検出電極35Bに電気接続されている。
【0120】
なお、他方のレバー支持部21Bに区画溝40が形成されていないので、一方のレバー支持部21Aにおける第2抵抗部32bは、第2検出電極35Bに電気接続された状態となっている。
従って、一方のレバー支持部21Aにおける第1抵抗部32aに着目すると、この第1抵抗部32aは、本体抵抗部31及び他方のレバー支持部21Bにおけるレバー抵抗部32を経由した第1経路S1と、一方のレバー支持部21Aにおける第2抵抗部32bを経由した第2経路S2と、の並列経路を介して第1検出電極35Aと第2検出電極35Bとの間に電気接続されている。
【0121】
従って、第1検出電極35A及び第2検出電極35B間における全体の電気抵抗値Rは、下記の式2で表される。なお、式2において、R11は他方のレバー支持部21Bにおけるレバー抵抗部32全体の電気抵抗値を示す。
【0123】
このように構成された圧力センサ100であっても、第1実施形態と同様に、検出電極35間の感度を高めることができ、同様の作用効果を奏功することができる。
特に、他方のレバー支持部21Bに区画溝40を形成していないので、その分だけレバー支持部21Bの剛性を高めることができ、カンチレバー3を長期に亘ってより安定して撓み変形させることができる。従って、圧力センサ100の作動の信頼性をさらに向上させることができる。
さらに、他方のレバー支持部21Bに区画溝40を形成しない分、構成の簡略化を図ることができると共に、製造プロセスが容易となる。従って、歩留まりの向上に繋がるうえ、製造効率の向上にも繋げることができる。
【0124】
(第7実施形態)
次に、本発明に係る第7実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第7実施形態においては、第6実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0125】
図20に示すように、本実施形態の圧力センサ110は、一方のレバー支持部21Aにおける第1抵抗部32aの第1幅W1が第2抵抗部32bの第2幅W2よりも幅狭となるように、区画溝40が第1抵抗部32a及び第2抵抗部32bを区画している。
【0126】
このように構成された圧力センサ110によれば、第2実施形態と同様に、第1抵抗部32aの電気抵抗値(R1)を第2抵抗部32bの電気抵抗値(R2)よりも大きくすることができるので、第1検出電極35A及び第2検出電極35B間における全抵抗(電気抵抗値R)に対して第1抵抗部32aの抵抗比率をさらに高めることができる。
従って、本体抵抗部31(R5)の影響を小さくすることができ、センサ感度をより向上することができる。
【0127】
(第8実施形態)
次に、本発明に係る第8実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第8実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0128】
図21に示すように、本実施形態の圧力センサ120は、2つのレバー支持部21A、21Bに加え、新たに1つのレバー支持部21Cを備え、合計3つのレバー支持部21A、21B、21Cを備えている。
【0129】
新たなレバー支持部21Cは、カンチレバー3における横方向L2の中央部に配置されている。これにより、このレバー支持部21Cは、レバー支持部21Aとレバー支持部21Bとの間に配置されている。
また、補助ギャップ22は2つ形成され、新たなレバー支持部21Cとレバー支持部21Aとの間、及び新たなレバー支持部21Cとレバー支持部21Bとの間にそれぞれ配置されている。これにより、3つのレバー支持部21A、21B、21Cは、補助ギャップ22を挟んで横方向L2に一列に並ぶように配置されている。なお、3つのレバー支持部21A、21B、21Cの横方向L2に沿った支持幅は、互いに同等とされている。
【0130】
新たなレバー支持部21Cには、レバー支持部21A、21Bと同様に区画溝40が形成されている。従って、新たなレバー支持部21Cにおけるレバー抵抗部32は、区画溝40によってレバー支持部21A寄りに位置する第3抵抗部32cと、レバー支持部21B寄りに位置する第4抵抗部32dと、に区画されている。
なお、新たなレバー支持部21Cに形成された区画溝40は、検出電極35を横方向L2に分断するようにセンサ本体2の側方まで達するように形成されている。従って、ピエゾ抵抗30のうち、レバー支持部21A、21Bとの間に形成されていた基端抵抗部33は、区画溝40によってレバー支持部21A寄りに位置する第1基端抵抗部33aと、レバー支持部21B寄りに位置する第2基端抵抗部33bと、に区画されている。
【0131】
従って、レバー支持部21Aにおける第2抵抗部32bは、第1基端抵抗部33aを介して第3抵抗部32cに電気的接続されている。同様に、レバー支持部21Bにおける第2抵抗部32bは、第2基端抵抗部33bを介して第4抵抗部32dに電気的接続されている。
【0132】
さらに、本実施形態の本体抵抗部31は、新たなレバー支持部21Cが形成されたことに伴って、第1本体抵抗部31a及び第2本体抵抗部31bを備えている。
第1本体抵抗部31aは、レバー支持部21Aにおける第1抵抗部32aと新たなレバー支持部21Cにおける第3抵抗部32cとを電気接続している。第2本体抵抗部31bは、レバー支持部21Bにおける第1抵抗部32aと新たなレバー支持部21Cにおける第4抵抗部32dとを電気接続している。
【0133】
従って本実施形態の圧力センサ120は、
図22に示すように、レバー支持部21Aと新たなレバー支持部21Cとの間で形成される並列回路と、レバー支持部21Bと新たなレバー支持部21Cとの間で形成される並列回路とが、直列に接続された回路構成を具備している。
つまり、レバー支持部21A、21Bの第1抵抗部32a同士は、第1本体抵抗部31a及び第2本体抵抗部31bを経由した第1経路S1と、レバー支持部21Aにおける第2抵抗部32b、第1基端抵抗部33a、第3抵抗部32c、第2基端抵抗部33b、第4抵抗部32d及びレバー支持部21Bにおける第2抵抗部32bを経由した第2経路S2と、の並列経路により互いに電気接続されている。
【0134】
従って、本実施形態では、第1検出電極35A及び第2検出電極35B間における全体の電気抵抗値Rは、下記の式3で表される。
【0136】
なお、式3において、R1〜R4は第1実施形態と同様である。R5は第1本体抵抗部31aの電気抵抗値を示す。R6は第1基端抵抗部33aの電気抵抗値を示す。R7は第3抵抗部32cの電気抵抗値を示す。R8は第4抵抗部32dの電気抵抗値を示す。R9は第2本体抵抗部31bの電気抵抗値を示す。R10は第2基端抵抗部33bの電気抵抗値を示す。
【0137】
このように構成された圧力センサ120によれば、第1実施形態に対して比較した場合、並列回路がさらに追加された回路構成となるので、第1経路S1及び第2経路S2の経路長を長くすることができる。従って、センサ感度を低下させることなく、さらなる消費電力化を図り易い。
【0138】
(第9実施形態)
次に、本発明に係る第9実施形態について図面を参照して説明する。なお、この第9実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0139】
図23及び
図24に示すように、本実施形態の圧力センサ130は、レバー支持部21A、21Bの間に位置する基端抵抗部33の抵抗を調整する調整膜(抵抗調整部)131を備えている。
調整膜131は、カンチレバー3の基端部3b側であって、レバー支持部21Aとレバー支持部21Bとの間に配置され、検出電極35の一部とされている。この調整膜131は、例えばレーザ照射等により任意の領域をトリミング可能な膜とされている。
【0140】
第1検出電極35Aと第2検出電極35Bとの間に印加電圧が印加されると、電圧印加に起因する電流は、レバー支持部21Aの第2抵抗部32bから、ピエゾ抵抗30の一部である基端抵抗部33及び調整膜131を経由してレバー支持部21Bにおける第2抵抗部32bに流れる。
従って、調整膜131をトリミングすることで、基端抵抗部33を流れる電流の流れ易さを変更することができ、結果的に基端抵抗部33の電気抵抗値(R6)を調整することができる。
【0141】
従って、本実施形態では、第1検出電極35A及び第2検出電極35B間における全体の電気抵抗値Rは、下記の式4で表すことができ、基端抵抗部33の電気抵抗値(R6)を可変とすることができる。
【0143】
なお、図示の例では、調整膜131が、横方向L2に間隔をあけてライン状に4か所トリミングされている場合を例にしている。また、センサ本体2には、レバー支持部21Aに形成された区画溝40と、レバー支持部21Bに形成された区画溝40と、を繋ぐように横方向L2に沿って延びたライン状の連結溝132が形成されている。これにより、調整膜131の範囲を所望のサイズに設定することができる。但し、連結溝132は形成しなくても良い。
【0144】
このように構成された圧力センサ130によれば、調整膜131を利用して、基端抵抗部33の電気抵抗値(R6)を調整できるので、感度に大きく寄与する第2抵抗部32bの抵抗比率を調整することができる。そのため、例えば検出電極35に直列に電気接続される第1抵抗部32aの影響が大きくなるように調整して、検出電極35間における全抵抗(電気抵抗値R)に対する第1抵抗部32aの抵抗比率を高めてセンサ感度を向上させることが可能である。或いは、第2抵抗部32bの影響が大きくなるように調整して、第2経路S2全体の感度を高くして、検出電極35間の全体の感度を向上させることも可能である。
【0145】
従って、第1経路S1及び第2経路S2の並列経路により互いに電気接続された第1抵抗部32a同士間における全体の電気抵抗値Rを調整することができ、感度調整だけでなく、例えば変位検出部4が有するブリッジ回路51に対するバランス調整等を行うことができる。
【0146】
なお、ピエゾ抵抗30のうち、基端抵抗部33に相当する部分のドーピング濃度自体を予め変更しておき、例えば調整膜131を僅かにトリミングした場合であっても、効果的に電気抵抗値(R6)の調整を行えるようにしても構わない。これにより、トリミング可能範囲を実質的に拡大することができ、抵抗値調整をより広い範囲で容易に行い易くなる。
【0147】
なお、上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0148】
なお、上記各実施形態では、2つのレバー支持部21A、21Bを有するカンチレバー3を例に挙げて説明したが、レバー支持部21A、21Bの数は2つに限定されるものではなく、第8実施形態のように3つ備えていても構わないし、さらに複数(例えば4つや6つ等)備えていても構わない。
特に、レバー支持部を4つ以上の偶数個備えた場合、少なくとも互い隣り合うレバー支持部において、第1抵抗部同士が第1経路及び第2経路の2つの並列経路で電気接続されるように構成することも可能である。