特許第6210485号(P6210485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6210485
(24)【登録日】2017年9月22日
(45)【発行日】2017年10月11日
(54)【発明の名称】軸受機構
(51)【国際特許分類】
   F16C 25/08 20060101AFI20171002BHJP
   F16C 35/12 20060101ALI20171002BHJP
   B23B 19/02 20060101ALI20171002BHJP
【FI】
   F16C25/08 Z
   F16C35/12
   B23B19/02 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-135944(P2013-135944)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-10648(P2015-10648A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】並木精密宝石株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 保幸
(72)【発明者】
【氏名】津川 美沙子
【審査官】 岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特表平11−505589(JP,A)
【文献】 特開平11−082499(JP,A)
【文献】 特開平01−092005(JP,A)
【文献】 実開平02−102018(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 25/08
B23B 19/02
F16C 35/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪と、該外輪の内周側に複数の転動体を介することで回転可能に支持された内輪と、該内輪の内周側に支持された回転軸とを備え、前記外輪と前記内輪のうちの一方の輪を軸方向へ移動不能に支持するとともに他方の輪を軸方向へ加圧することで、これら外輪と内輪の間に予圧を発生させるようにした軸受機構において、
前記回転軸の外周部には、前記他方の輪に対し軸方向に圧接されるように遠心ばねが設けられ、この遠心ばねは、径外方向側の部分の体積が、径内方向側の部分よりも大きくなるように形成されており、前記回転軸に対し環状に装着される筒部と、該筒部の軸方向の中央寄りから径外方向へ突出した突出部とを備え、前記回転軸と一体に回転した際の遠心力によって前記筒部の軸方向の中央寄りを弾性的に拡径させながら、同筒部を軸方向へ弾性的に収縮するように構成されており、前記筒部の端面の外径側を、内径側よりも軸方向に凹ませたことを特徴とする軸受機構。
【請求項2】
前記突出部は、周方向に間隔を置いて並ぶ複数の分割突起から環状に構成されていることを特徴とする請求項記載の軸受機構。
【請求項3】
前記筒部の周壁に、周方向に隣り合う前記分割突起の間に対応して、該周壁を径方向へ貫通する貫通部を設けたことを特徴とする請求項記載の軸受機構。
【請求項4】
前記回転軸の外周部に、軸方向へ不動なスラスト受部材を設け、このスラスト受部材と前記他方の輪との間に、前記遠心ばねを挟むようにしたことを特徴とする請求項1〜何れか1項記載の軸受機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、工作機械等のように、低速回転で高負荷になり高速回転では低負荷になる軸受の構造として好適な軸受機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、高速回転軸の軸受としてボールベアリングを適用する場合には、その回転軸のラジアル方向及び軸方向の剛性を高めて、回転精度を向上するために、ボールベアリングに予圧が付与される。この予圧は、ボールベアリングを構成する外輪と内輪のうちその一方を固定し、他方を軸方向へ加圧することで、内外輪間に予め圧力を保持するものである。予圧を付与する方式としては、図13に示すように、隣接するベアリング110,110について、外輪同士111,111を当接させるとともに内輪112,112間に隙間sを設けた状態で、これら内輪112,112を軸方向の両側から挟むように加圧した定位置予圧方式や、図14に示すように、隣接するベアリング210,210の外輪211,211間にばね213を設け、該ばね213により外輪211,211を付勢するようにした定圧予圧方式等がある。
【0003】
ところで、フライス加工等の一般的な機械加工においては、低回転で切込みを深くした重負荷加工を行い、高回転では切込みを浅くした軽負荷加工を行う傾向がある。重負荷加工の場合は、回転軸が負荷に負けて、加工精度に悪影響が生じないように、前記予圧を付加して、ベアリングの内外輪間の剛性を高める必要がある。また、軽負荷加工では、高い剛性を必要とせず、ベアリング寿命の短縮を避ける等の観点から、前記予圧を適宜に低減することが好ましい。
そこで、例えば、特許文献1に記載された発明では、重負荷加工を行う場合と軽負荷加工を行う場合とに応じて、油圧により予圧を変化させるようにしている。
しかし、前記従来技術では、油圧配管や、油圧を発生及び制御する装置等が必要であり、高コストなシステムになってしまう。
【0004】
また、他の従来技術として、特許文献2に記載された発明では、ベアリング(2)の軸方向の一方側に皿バネ(11)を設けるとともに、その他方側には二つのスペーサ(4,5)及びこれらスペーサ(4,5)間に位置するピース(6)を設けている。そして、低速回転時は、皿バネ(11)によってベアリング(2)の内輪(2a)に予圧を与え、高速回転時は、遠心力によりピース(6)を前記二つのスペーサ(4,5)の間に楔状に食い込ませて、これらスペーサ(4,5)を軸方向へ移動させて内輪(2a)に圧接するとともに皿バネ(11)の付勢力に対抗させ、内外輪間の予圧を低減するようにしている。
しかしながら、この従来技術においては、高速回転時の遠心力によりピース(6)を二つのスペーサ(4,5)間に楔状に食い込ませるようにしているため、このピース(6)が、低速回転時にスペーサ(4,5)間から離脱せず、元の低予圧状態に戻せなくなるおそれがある。また、ベアリング(2)の両側に可動する皿バネ(11)やピース(6)、スペーサ(4,5)等を有する複雑な構造であるため、より簡素な構造が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−196034号公報
【特許文献2】特開平11−239902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来事情に鑑みてなされたものである。その課題とする処は、簡素な構造であり、軸受に加える予圧を、回転軸の回転速度に応じた適切な大きさに自動調整することができ、作動性も良好な軸受機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための一手段は、外輪と、該外輪の内周側に複数の転動体を介することで回転可能に支持された内輪と、該内輪の内周側に支持された回転軸とを備え、前記外輪と前記内輪のうちの一方の輪を軸方向へ移動不能に支持するとともに他方の輪を軸方向へ加圧することで、これら外輪と内輪の間に予圧を発生させるようにした軸受機構において、前記回転軸の外周部には、前記他方の輪に対し軸方向に圧接されるように遠心ばねが設けられ、この遠心ばねは、前記回転軸と一体に回転した際の遠心力によって弾性的に拡径しながら軸方向へ弾性的に収縮するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上説明したように構成されているので、簡素な構造であり、軸受に加える予圧を、回転軸の回転速度に応じた適切な大きさに自動調整することができ、作動性も良好な軸受機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る軸受機構の一例を示す断面図である。
図2】同軸受機構における遠心ばねの一例を示す斜視図である。
図3図2の遠心ばねについて、(a)は正面図を示し、(b)は側面図を示す。
図4】本発明に係る軸受機構の作用を模式的に示す断面図である。
図5】遠心ばねの他例を示す斜視図である。
図6図5の遠心ばねについて、(a)は正面図を示し、(b)は側面図を示す。
図7図6(a)の(VII)‐(VII)線に沿う断面図を示す。
図8】遠心ばねの他例を示す斜視図である。
図9図8の遠心ばねについて、(a)は正面図を示し、(b)は側面図を示す。
図10図9(a)の(X)‐(X)線に沿う断面図を示す。
図11】本発明に係る軸受機構を適用したスピンドル装置の一例を示す外観斜視図である。
図12】本発明に係る軸受機構を適用したスピンドル装置の他例を示す外観斜視図である。
図13】定位置予圧方式を適用した従来の軸受機構の一例を示す断面図である。
図14】定圧予圧方式を適用した従来の軸受機構の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態の第一の特徴は、外輪と、該外輪の内周側に複数の転動体を介することで回転可能に支持された内輪と、該内輪の内周側に支持された回転軸とを備え、前記外輪と前記内輪のうちの一方の輪を軸方向へ移動不能に支持するとともに他方の輪を軸方向へ加圧することで、これら外輪と内輪の間に予圧を発生させるようにした軸受機構において、前記回転軸の外周部には、前記他方の輪に対し軸方向に圧接されるように遠心ばねが設けられ、この遠心ばねは、前記回転軸と一体に回転した際の遠心力によって弾性的に拡径しながら軸方向へ弾性的に収縮するように構成されている。
この構成によれば、低速回転では、前記他方の輪が遠心ばねによって軸方向に加圧されるため、外輪と内輪の間に予圧を発生させることができる。
高速回転では、遠心ばねが遠心力によって弾性的に拡径しながら軸方向へ弾性的に収縮するため、前記他方の輪に対する加圧を弱めて、外輪と内輪の間の予圧を減少させることができる。
また、低速回転に戻った際には、弾性的に拡径及び収縮していた遠心ばねが、元の状態に復元して、縮径するとともに軸方向へ伸びるため、再度、外輪と内輪の間の予圧を増加させることができる。
【0011】
第二の特徴としては、前記遠心ばねは、径外方向側の部分の体積が、径内方向側の部分よりも大きくなるように形成されている。
この構成によれば、遠心ばねに作用する遠心力を増大して、遠心ばねを効果的に拡径及び収縮させることができる。
【0012】
第三の特徴としては、前記遠心ばねは、前記回転軸に対し環状に装着される筒部と、該筒部の軸方向の中央寄りから径外方向へ突出した突出部とを備え、前記回転軸と一体に回転した際の遠心力によって前記筒部の軸方向の中央寄りを弾性的に拡径させながら、同筒部を軸方向へ弾性的に収縮させる。
この構成によれば、突出部により遠心力を増加して、筒部を効果的に拡径させながら軸方向に収縮させることができる。
【0013】
第四の特徴としては、前記突出部は、周方向に間隔を置いて並ぶ複数の分割突起から環状に構成されている。
この構成によれば、遠心力により突出部に生じる周方向の引張応力を低減して、筒部の拡径及び収縮を効果的に行うことができる。
【0014】
第五の特徴としては、前記筒部の周壁に、周方向に隣り合う前記分割突起の間に対応して、該周壁を径方向へ貫通する貫通部を設けた。
この構成によれば、遠心力により筒部に生じる周方向の引張応力を低減して、筒部の拡径及び収縮をいっそう効果的に行うことができる。
【0015】
第六の特徴としては、前記筒部の端面の外径側を、内径側よりも軸方向に凹ませた。
この構成によれば、遠心力により筒部の軸方向の中央側が径外方向へ膨れた際に、同筒部の端面が傾いて、筒部の端面の外径側が内径側よりも軸方向へ突出するのを防ぎ、筒部全体としての軸方向寸法を効果的に収縮させることができる。
【0016】
第七の特徴としては、前記回転軸の外周部に、軸方向へ不動なスラスト受部材を設け、このスラスト受部材と前記他方の輪との間に、前記遠心ばねを挟むようにした。
この構成によれば、低速回転の際に、遠心ばねの一端側がスラスト受部材により軸方向に動かないよう固定されているため、同遠心ばねの他端側を前記他方の輪に対し安定的に圧接することができる。
【0017】
次に、上記特徴を有する本実施の形態の好ましい実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0018】
本実施の形態の好ましい一例である軸受機構1は、図1に示すように、略円筒状のハウジング10と、該ハウジング10の内部に固定された複数の軸受20a,20b,20cと、これら軸受20a,20b,20cの中心側に挿入されて回転自在な回転軸30と、軸受20aに対し軸方向に圧接された遠心ばね40と、該遠心ばね40を軸方向において軸受20aの逆側から受けるスラスト受部材50とを具備し、回転軸30が回転した際の遠心力により遠心ばね40を弾性的に変形させて、該遠心ばね40に圧接される軸受20a,20b,20cの予圧を自動調整する。
【0019】
ハウジング10は、金属製の略円筒状の部材であり、その内周面に段付き状に拡径された円筒状の軸受保持部11を有する。この軸受保持部11には、後述する筒状スペーサ61及び複数(図示例によれば3つ)の軸受(20a,20b,20c)が挿入され、その挿入方向において、筒状スペーサ61の端部が、ハウジング10内の段部12に当接する。
また、ハウジング10における前記挿入方向と逆側の端部側には、環状の固定スリーブ62が螺合接続されている。この固定スリーブ62は、前記段部12との間に、筒状スペーサ61、及び複数の軸受20a,20b,20cの外輪21を挟み込んで、これらが軸方向へ移動しないように保持している。
なお、図示例以外の他例としては、前記筒状スペーサ61を省いて、複数の軸受20a,20b,20cの外輪21を、段部12と固定スリーブ62の間に、直接挟持する構造としてもよい。
【0020】
軸受20a,20b,20cの各々は、無端環状の外輪21と、該外輪21内で転動可能に保持された複数の転動体22と、これら転動体22の周方向の間隔を略一定に保持するリテーナ23と、これら転動体22によって回転するように外輪21の中心部側に保持された無端環状の内輪24とを具備し、外輪21と転動体22との接触角をラジアル方向に対し傾斜させたアンギュラ玉軸受を構成している。
これら複数の軸受20a,20b,20cのうち、遠心ばね40側から数えて一番目の軸受20aは、接触角αを反遠心ばね40側(図1中の左側)に有するように構成され、二番目の軸受20bは、接触角αを遠心ばね40側に有するように構成される。このような関係は、背反組合せと呼称される場合がある。
また、遠心ばね40側から数えて三番目の軸受20cは、接触角αを遠心ばね40側に有するように構成される。軸受20bと軸受20cの関係は、並列組合せと呼称される場合がある。
そして、軸受20aの内輪24と、軸受20bの内輪24との間には、軸受20aに予圧を発生させるための微小な隙間sが設けられる。
【0021】
また、回転軸30は、円柱状又は円筒状の長尺体であり、軸受20a,20b,20cの内輪24と一体的に回転するように該内輪24に圧入されている。
この回転軸30の外周部には、軸受20a,20b,20c側の部分を縮径してなる環状の段部31が形成される。この段部31には、軸受20cの内輪24の端面が接触している。
【0022】
なお、図1中の符号63は、固定スリーブ62と回転軸30の隙間から軸受側へ異物等が侵入するのを防止する環状の蓋部材であり、固定スリーブ62と回転軸30の隙間を覆うようにして、回転軸30の外周面に固定されている。
【0023】
また、遠心ばね40は、弾性変形可能な硬質合成樹脂材料から成形され、回転軸30に対し環状に装着される筒部41と、該筒部41の軸方向の中央寄りから径外方向へ突出した突出部42とを一体に有する。そして、この遠心ばね40は、回転軸30と一体に回転した際の遠心力によって筒部41の軸方向の中央寄りを弾性的に拡径させながら、同筒部41を軸方向へ弾性的に収縮させる。
【0024】
筒部41は、回転軸30に対し環装され緩圧入される筒状の部材であり、軸方向の両端部が、軸受20aの内輪24とスラスト受部材50との間に挟まれて、回転軸30と一体的に回転する。
この筒部41の周壁には、該周壁を径方向へ貫通する貫通部41a(図2及び図3(a)参照)が設けられる。この貫通部41aは、図示例によれば、軸方向へ長尺な長孔であり、周方向に所定間隔を置いて複数設けられる。各貫通部41aは、後述する突出部42の分割突起42a間の隙間に対応して位置する。
また、筒部41の軸方向の両端面には、該筒部41の全周にわたって、その外径側を内径側よりも軸方向へ凹ませるように、面取り部41bが形成される。この面取り部41bは、図示例によれば、C面取り状(図1図3参照)に形成されるが、他例としては、R面取り状や、外径側が徐々に凹む他の形状等とすることが可能である。
【0025】
突出部42は、図示例によれば、筒部41の軸方向の略中央部分に位置し、周方向に所定間隔を置いて並ぶ複数(図示例によれば、六つ)の分割突起42aから略環状に構成される(図2及び図3(b)参照)。
各分割突起42aは、図3(a)に示す正面視形状において、径外方向へゆくにしたがって周方向へ徐々に拡大する略扇形状に形成されている。
【0026】
また、スラスト受部材50は、金属材料等から筒状に形成され、軸受20aの内輪24との間に、遠心ばね40の筒部41を挟むようにして配置される。
このスラスト受部材50は、遠心ばね40の筒部41を介して軸受20aに予圧を発生させるように、筒部41を軸方向に加圧した状態で、回転軸30の外周面に固定される。このスラスト受部材50を回転軸30に固定する手段は、圧入や螺合、凹凸嵌合等とすることができる。
【0027】
次に、上記構成の軸受機構1について、特徴的な作用効果を詳細に説明する。
先ず、回転軸30の回転が停止している場合や、回転軸30が比較的低速で回転している際には、遠心ばね40に遠心力がほとんど作用しない。この状態では、製造段階において、スラスト受部材50が筒部41を軸方向に加圧し、さらに筒部41が軸受20aの内輪24を軸方向に加圧した状態が維持され、この加圧力によって、軸受20aにおける内輪24と外輪21の間の予圧が保持される。
この状態は、例えば、軸受機構1を工作機械等に用いた場合に、切込みを深くした低速回転の重負荷加工に適している。
【0028】
また、回転軸30が比較的高速で回転している際には、遠心ばね40に作用する遠心力が増大し、遠心ばね40の筒部41が突出部42より遠心方向へ引っ張られて略樽型に弾性変形する。より詳細に説明すれば、図4に示すように、回転軸30と一体的に回転する突出部42の遠心力によって、筒部41の軸方向の中央側が径外方向へ引っ張られ、筒部41は、軸方向の中央側を拡径するようにして略樽型に弾性変形するとともに、軸方向の全長を収縮させる。
なお、図4は、本願発明の作用をわかり易く説明するために、遠心ばね40を極端に変形させた状態を示しており、遠心ばね40の実際の変形度合を示すものではない。
【0029】
前記弾性変形の際、筒部41の周壁における外径側は、その内径側に対し、相対的に軸方向へ伸びようとするが、該周壁の端面に面取り部41bを有するため、筒部41の軸方向の最大寸法は、増大することなく収縮する。
したがって、筒部41から内輪24へ加わる軸方向の圧力が弱まり、軸受20aにおける内輪24と外輪21の間の予圧が減少する。
この状態は、例えば、軸受機構1を工作機械等に用いた場合に、切込みを浅くして高速回転の低負荷加工に適しており、軸受寿命の低下を防ぐことができる。
【0030】
よって、上記構成の軸受機構1によれば、軸受20aに付与される予圧を、回転数に応じて無段階に増減させて、適正な圧力に自動調整することができる。
しかも、従来技術のように、油圧装置や、軸受両側のピース及び皿バネ等を有することがなく、簡素な構造とすることができる上、作動性も良好である。
さらに、遠心ばね40の材質や、遠心ばね40の各部の厚み、質量等を適宜に調整することで、軸受20aに予め付与される予圧の大きさや、回転数に応じた予圧の変化率等を容易に調整することができる。
【0031】
なお、上記構成の軸受機構1は、遠心ばね40を他の形状のものに置換することが可能である。次に、遠心ばねの変形例について説明する。以下に示す遠心ばねは、上記遠心ばね40の構成の一部を変更したものであるため、その変更分について主に詳述し、略同一の部分は同一の符号を用いて重複する説明を省略する。
【0032】
図5図7に示す遠心ばね40'は、上述した遠心ばね40の各分割突起42aを、分割突起42a'に置換した構成とされる。
各分割突起42a'は、径外方向へ行くにしたがって軸方向の厚みを略一定に維持しながら周方向の寸法を徐々に増大し、更に最大径の近傍では径方向の厚みを一定に維持しながら軸方向の寸法を両側へ増大した形状を呈する。
【0033】
また、図8図10に示す遠心ばね40"は、上述した遠心ばね40の各分割突起42aを、分割突起42a"に置換した構成とされる。
各分割突起42a"は、径外方向へ行くにしたがって、周方向の寸法を徐々に増大しながら軸方向の寸法も徐々に増大した形状を呈する。
【0034】
よって、軸受機構1における遠心ばね40を、遠心ばね40'又は遠心ばね40"に置換した構成によれば、各分割突起42a',42a"が遠心方向寄りで体積を大幅に増大する形状であるため、この分割突起42a',42a"による遠心力を増大して、筒部41の径方向及び軸方向の変形量も増加させることができ、その結果として、軸受20aの予圧を、回転数に応じて、より大きく増減させることができる。
【0035】
そして、上記構成の軸受機構1は、図11及び図12に示すように、スピンドル装置A,Bを構成する。
図11に示すスピンドル装置Aは、略筒状のハウジング10内に、上記構成の軸受機構1を具備し、上記回転軸30(図1参照)に連続する回転駆動部a1を外部に露出している。
図12に示すスピンドル装置Bは、スピンドル装置Aよりも径の大きなスピンドル装置を構成しており、略筒状のハウジング10内に、上記構成の軸受機構1を具備し、上記回転軸30(図1参照)に連続する回転駆動部b1を外部に露出している。
【0036】
なお、上記実施例では、軸受20aの内輪24を軸方向へ加圧して予圧が付与されるようにしたが、他例としては、軸受20aの外輪21を軸方向へ加圧して予圧が付与される構成とすることも可能である。この場合、具体的には、軸受20a一つのみ、又は軸受20aと軸受20cの二つを、図1において左右反対向きに配設し、軸受20aの内輪24と軸受20bの内輪24を隙間なく当接させるとともに、軸受20aの外輪21と軸受20bの外輪21の間には隙間を設ける。
あるいは、軸受20aと軸受20bの間に遠心ばね40を配置し、軸受20aの内輪24と軸受20bの内輪24との間に当接するスリーブを設ける。
【0037】
また、上記実施例の軸受20a,20b,20cでは、アンギュラ玉軸受を構成したが、他例としては、円すいころ軸受や深溝軸受等とすることも可能である。
【0038】
また、遠心ばね40,40',40"の筒部41に設けた貫通部41aは、図示例によれば貫通状の長孔としたが、他例としては、筒部41の周壁に形成される複数の切欠やスリット等とすることも可能である。
【0039】
また、遠心ばね40,40',40"は、回転軸30と一体に回転した際の遠心力によって弾性的に拡径しながら軸方向へ弾性的に収縮する構成とすれば、図示例のものに限定されず、例えば、筒部41に対し軸方向に並ぶ複数の突出部42を有する態様や、遠心ばね40から突出部42を省き筒部41のみによって弾性変形する態様等とすることも可能である。
【0040】
また、上記実施例によれば、遠心ばね40の軸方向の一端側をスラスト受部材50により受けながら同遠心ばね40の他端側を内輪24に圧接するようにしたが、他例としては、遠心ばね40の前記一端側を回転軸30に挿入されるピン状部材によって受ける態様や、遠心ばね40を回転軸30の外周面に凹凸状に嵌合させ軸方向に位置決めするとともに該遠心ばね40を内輪24に圧接した態様等とすることも可能である。
【0041】
また、上記実施例によれば、遠心ばね40の筒部41と突出部42を硬質合成樹脂材料から一体に成形したが、他例としては、筒部41と突出部42を別体にするとともに突出部42を金属材料等の高重量材料から形成して、より遠心力が作用し易い態様とすることも可能である。
【符号の説明】
【0042】
1:軸受機構
10:ハウジング
20a,20b,20c:軸受
21:外輪
22:転動体
23:リテーナ
24:内輪
30:回転軸
40,40',40":遠心ばね
41:筒部
42:突出部
42a,42a',42a":分割突起
50:スラスト受部材
A,B:スピンドル装置
s:隙間
図1
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