(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6219195
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】蓋付きケース
(51)【国際特許分類】
H05K 5/06 20060101AFI20171016BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20171016BHJP
【FI】
H05K5/06 A
H01M2/10 E
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-33722(P2014-33722)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-159213(P2015-159213A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(72)【発明者】
【氏名】高辻 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】大野 倫伸
【審査官】
久松 和之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−44246(JP,A)
【文献】
特開2009−37973(JP,A)
【文献】
特開2013−208883(JP,A)
【文献】
特開2000−6247(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00 − 5/06
B29C 65/00 − 65/82
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の周壁を有するケース本体と、このケース本体の周壁の開口端面に熱溶着してなる熱可塑性樹脂製の蓋体と、前記ケース本体の周壁の開口端面と前記蓋体との間に配置されて、前記ケース本体の開口端面と前記蓋体との接合面を熱溶着して、前記蓋体を前記周壁の開口端面に固着してなる前記周壁の厚さよりも細い発熱線とを備え、
前記発熱線が、前記周壁の開口端面と前記蓋体との間の接合面に配置してなる溶着線と、この溶着線に通電する通電線とを有し、
前記周壁は、前記通電線の挿入孔を内面と外面との間に設けており、
この挿入孔は前記周壁の開口端面に開口され、
さらに、前記周壁は、前記挿入孔に挿入される前記通電線の一部を前記周壁の外側に露出させる露出開口を設けており、
前記通電線が前記露出開口から前記周壁の外部に露出され、前記通電線の露出部に電極が接触されて、電極が前記発熱線に通電して、前記蓋体が前記周壁の開口端面に溶着されるようにしてなることを特徴とする蓋付きケース。
【請求項2】
請求項1に記載される蓋付きケースであって、
前記ケース本体の周壁の開口端面に、2本の発熱線が配置されて、2本の発熱線でもって前記周壁の開口端面の全周を前記蓋体に熱溶着しており、
2本の発熱線は両端をL字状に折曲して折曲片を通電線としており、
前記挿入孔には2本の発熱線の通電線が挿入され、2本の発熱線の通電線をひとつの露出開口から前記周壁の外部に露出させてなることを特徴とする蓋付きケース。
【請求項3】
請求項2に記載される蓋付きケースであって、
前記蓋体が、2本の発熱線の通電線を挿入してなる挿入孔の開口部と対向する位置に溶着突出部を有し、この溶着突出部が、2本の発熱線の通電線と溶着線との境界にできる谷部に挿入されて、前記蓋体が前記周壁に熱溶着されてなることを特徴とする蓋付きケース。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載される蓋付きケースであって、
前記ケース本体が、周壁の開口端面に前記発熱線の溶着線を案内する嵌着溝を設ける形状に熱可塑性樹脂を成形してなることを特徴とする蓋付きケース。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載される蓋付きケースであって、
前記ケース本体が周壁の底面を底プレート部で閉塞する形状に成形され、前記周壁の開口端面に前記蓋体が水密構造に熱溶着されて内部を水密構造に密閉してなることを特徴とする蓋付きケース。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載される蓋付きケースであって、
前記周壁の厚さが1mm以上であって5mm以下である蓋付きケース。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載される蓋付きケースであって、
前記ケース本体が内部に二次電池を収納してなる電池ケースであることを特徴とする蓋付きケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋付きケースに関し、とくに、ジュール熱で発熱する発熱線を介して蓋をケース本体の開口部に熱溶着してなる蓋付きケースに関する。
【背景技術】
【0002】
ケース本体の周壁の開口端面と、この周壁の開口部を閉塞するように配置している蓋体との間に発熱線を挟むように配置して、発熱線のジュール熱で周壁と蓋体との接触面を溶融させて、蓋体を周壁の開口端面に熱溶着してなる蓋付きケースは開発されている。(特許文献1、2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−16061号公報
【特許文献2】実用新案登録第3064180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これ等の公報に記載される蓋付きケースは、周壁の開口端面に沿って2本の発熱線を配置して、開口端面に密着して発熱線を挟着するように蓋体を配置している。この蓋付きケースは、蓋体を周壁の開口端面に押圧する状態で、発熱線の両端に一対の電極を接触し、電極を介して発熱線に通電して、発熱線の発熱で蓋体を周壁の開口端面に熱溶着する。電極を介して通電される発熱線がジュール熱で発熱して、周壁の開口端面と蓋体との接合部分を溶融して熱溶着させるからである。
【0005】
特許文献1の蓋付きケースは、
図6のように発熱線に通電するために、発熱線の両端部を周壁から外側に引き出している。発熱線は、引き出し部を電極に接続して通電される。この構造の蓋付きケースは、蓋体を周壁の開口端面に熱溶着する状態で、発熱線の両端が周壁の外部から引き出されて突出する欠点がある。さらに、
図7の断面図に示すように、発熱線61が周壁62の外側にある薄い溶着ライン部Aを横切って外部に引き出されるので、この部分の強度が著しく低下する欠点がある。このため、使用状態において引き出し部63が動かされると、溶融ライン部Aが極めて破損しやすい欠点がある。さらに困ったことに、蓋体を周壁の開口端面に熱溶着される蓋付きケースは、防水構造とする用途に適しているが、外側の溶融ライン部Aが発熱線1の近傍で破損されると、破損部から隣接する発熱線の間に空気の侵入路が発生して、防水構造を確保できなくなる欠点がある。
【0006】
特許文献2の蓋付きケースは、発熱線の両端部を周壁から外部に引き出さない構造とするために、
図8の平面図に示すように、周壁82の一部であって、発熱線81の両端部を配置する部分に、電極用突出部84を周壁82の内側に突出して設けている。発熱線81は、コ字状に折曲加工しているU曲部を端部に設けて、U曲部の先端直線部を互いに接近して同一平面で平行姿勢として電極用突出部84の上面に配置している。先端直線部を電極に接触できるように、蓋体85には貫通孔86を設けている。この蓋付きケースは、蓋体85を周壁82に熱溶着するときに、蓋体85を周壁82の開口端面に押圧する状態で、蓋体85の貫通孔86に電極(図示せず)を挿入し、電極を両方の発熱線81の先端直線部に接触して通電し、発熱線81をジュール熱で発熱させて蓋体85と周壁82とを熱溶着する。この構造は、発熱線の両端を周壁から外部に引き出す必要がなく、蓋体を安定して周壁に熱溶着できる。ただ、この蓋付きケースは、周壁の内側に電極用突出部を設けるので、溶着のために周壁の内容積が小さくなる。内容積が小さくなるので、たとえば、所定の容量の二次電池等の収納物を入れる状態で、外形が大きくなる欠点がある。
【0007】
本発明は、さらに以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、発熱線の先端を周壁の外部に引き出すことなく、また周壁に発熱線に通電する電極用突出部設けて部分的に厚く成形することなく、蓋体を周壁の開口端面に確実に安定して熱溶着できる蓋を熱溶着してなる蓋付きケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の蓋付きケースは、熱可塑性樹脂製の周壁を有するケース本体と、このケース本体の周壁の開口端面に熱溶着してなる熱可塑性樹脂製の蓋体と、ケース本体の周壁の開口端面と蓋体との間に配置されて、ケース本体の開口端面と蓋体との接合面を熱溶着して、蓋体を周壁の開口端面に固着してなる周壁の厚さよりも細い発熱線とを備える。発熱線は、周壁の開口端面と蓋体との間の接合面に配置してなる溶着線と、この溶着線に通電する通電線とを有する。周壁には、通電線の挿入孔を内面と外面との間に設けている。挿入孔は周壁の開口端面に開口している。さらに、周壁は、挿入孔に挿入される通電線の一部を周壁の外側に露出させる露出開口を設けている。通電線は露出開口から周壁の外部に露出される。通電線の露出部に電極が接触され、電極で通電される発熱線の発熱で蓋体と周壁の開口端面は溶着されている。
【0009】
以上のケースは、蓋体を熱溶着する発熱線の先端部を周壁から外部に引き出すことなく、また、従来のケースのように、発熱線の端部であって、電極を接続する部分に、電極用突出部を設けて周壁を厚く成形することなく、蓋体を周壁の開口端面に確実に安定して熱溶着できる特徴がある。それは、発熱線の通電線を挿入する挿入孔を周壁の内面と外面との間に設けて、この挿入孔を周壁の開口端面に開口して、溶着線に連続する通電線を周壁の内部に配置できる構造とし、さらにまた、通電線に電極を接続するために、周壁の外部には通電線の一部を露出させる露出開口を設けて、この露出開口から通電線に電極を接続して、発熱線に通電して発熱させるからである。開口端面に蓋体を熱溶着している周壁は、発熱線の太さよりも厚く、発熱線の両側を蓋体に熱溶着している。このケースは、開口端面に配置される発熱線の両側で蓋体を熱溶着する。周壁の厚さよりも細い発熱線は、周壁の内面と外面との表面の間に設けられた挿入孔に挿入される。周壁内に挿入された通電線は、電極に接続されて溶着線に通電する。したがって、通電線に電極を接続する部分で、通電線の一部を露出開口で周壁の外側に露出させている。露出開口で周壁の外部に露出する通電線は、露出開口に挿入される電極に接続されて、発熱線に通電する。通電線は溶着部に連続しているので、挿入孔を開口端面に開口して、溶着線を開口端面に配置して、通電線は挿入孔に挿入される。周壁の内部に挿入される通電線は外部に引き出されることがなく、露出開口から周壁の外部に露出する。したがって、以上のケースは、通電線を周壁から外部に引き出すことなく、発熱線に通電して周壁の開口端面を蓋体に熱溶着できる。また、通電線を周壁の内面と外面との間に配置するので、従来のように周壁を厚くすることなく、通電線に電極を接続できる。したがって、従来のケースのように周壁に電極用突出部を設けて局部的に厚く成形しないにもかかわらず、周壁に熱溶着される蓋体によって、発熱線の境界部分をも周壁と蓋体との間に埋設して、発熱線を理想的な状態で周壁と蓋体との内部に固定できる。
【0010】
また、本発明の蓋付きケースは、ケース本体の周壁の開口端面に、2本の発熱線を配置し、2本の発熱線でもって周壁の開口端面の全周を蓋体に熱溶着し、2本の発熱線の両端をL字状に折曲して、折曲片を通電線とし、ひとつの挿入孔に2本の発熱線の通電線を挿入して、2本の発熱線の通電線をひとつの露出開口から周壁の外部に露出できる。
【0011】
また、本発明の蓋付きケースは、蓋体が、2本の発熱線の通電線を挿入している挿入孔の開口部と対向する位置に溶着突出部を有し、この溶着突出部が、2本の発熱線の通電線と溶着線との境界にできる谷部に挿入されて、蓋体を周壁に熱溶着することができる。
【0012】
また、本発明の蓋付きケースは、ケース本体の周壁を、開口端面に発熱線の溶着線を案内する嵌着溝を設ける形状に熱可塑性樹脂を成形できる。
【0013】
また、本発明の蓋付きケースは、ケース本体を、周壁の底面を底プレート部で閉塞する形状に成形して、周壁の開口端面に蓋体を水密構造に熱溶着して内部を水密構造に密閉できる。
【0014】
また、本発明の蓋付きケースは、周壁の厚さを1mm以上であって5mm以下とすることができる。
【0015】
また、本発明の蓋付きケースは、ケース本体の内部に二次電池を収納している電池ケースとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の蓋付きケースによれば、発熱線の先端を周壁の外部に引き出すことなく、また周壁に発熱線に通電する電極用突出部を設けて部分的に厚く成形することなく、蓋体を周壁の開口端面に確実に安定して熱溶着できる蓋を熱溶着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例にかかる蓋付きケースの分解斜視図である。
【
図3】
図1に示す蓋付きケースの周壁の横断面図である。
【
図4】
図1に示す蓋付きケースの周壁の縦断面図である。
【
図5】
図1に示す蓋付きケースの周壁の一部拡大斜視図である。
【
図7】
図6に示す蓋付きケースの一部拡大断面図である。
【
図8】従来の他の蓋付きケースの蓋を除いたケース本体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための蓋付きケースを例示するものであって、本発明は蓋付きケースを以下のものに特定しない。
【0019】
図1と
図2に示す蓋付きケースは、底プレート11の周囲に周壁2を設けているケース本体7と、このケース本体7の周壁2の開口部を閉塞するように、周壁2の開口端面8に熱溶着している蓋体5と、この蓋体5とケース本体7の周壁2の開口端面8との間に配置されて、蓋体5を周壁2の開口端面8に熱溶着している発熱線1とを備える。
【0020】
発熱線1は、通電されてジュール熱で発熱する金属線で、たとえば、ステンレス線などの抵抗線が使用される。発熱線1は、電気抵抗と流れる電流の二乗との積に比例する熱量で発熱する。たとえば線径を0.3mm〜1.0mmとするSUS304のステンレス線の発熱線1は、5A〜30Aの電流を約10秒間通電して、周壁2の開口端面8を蓋体5との境界部分を溶融して熱溶着できる。
【0021】
発熱線1は、開口端面8に配置されて、周壁2の開口端面8を蓋体5に熱溶着する溶着線1Aと、この溶着線1Aに通電する通電線1Bとからなる。
図1の蓋付きケースは、周壁2の開口端面8に、2本に分割された発熱線1を配置して、開口端面8の全周に溶着線1Aを配置している。発熱線1は、両端部をL字状に折曲加工して、折曲片を通電線1Bとしている。この形状の発熱線1は、所定の長さの線材を折曲加工して製作できるので、安価に多量生産できる特徴がある。ただ、図示しないが、発熱線は開口端面の全周に配置されるループ状に形成された溶着線の途中の対向する2カ所に通電線を連結する形状とすることもできる。発熱線1は断面形状を円形とする線材で製作される。ただ、発熱線は、断面形状を四角形とする線材で製作することもできる。
【0022】
ケース本体7と蓋体5は、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン等の熱可塑性樹脂を成形して製作される。熱可塑性樹脂のケース本体7と蓋体5は、発熱線1に加熱されて溶融して、蓋体5をケース本体7の周壁2の開口端面8に熱溶着している。
【0023】
ケース本体7は、四角形の底プレート11の周囲に周壁2を連結する形状にプラスチックを成形して製作される。周壁2は、発熱線1の発熱で開口端面8を蓋体5に熱溶着している。電池パックに使用される蓋付きケースは、周壁2の内側に二次電池12を収納して、周壁2の開口部に蓋体5を熱溶着して防水構造に閉塞される。
【0024】
ケース本体7は、成形する工程において、周壁2の開口端面8に沿って、発熱線1の溶着線1Aを中央部に沿って配置する嵌着溝13を設けている。電池パックに使用される蓋付きケースは、周壁2の厚さを例えば、1mmよりも厚くして、5mm以下として、外形を小さくしている。ただ、周壁2は使用される用途に最適な厚さに成形される。発熱線1は周壁2の厚さよりも細く、嵌着溝13の両側を溶融して開口端面8を蓋体5に熱溶着している。
図3の周壁2は、開口端面8の中央部に沿って嵌着溝13を設けて、嵌着溝13の外側と内側に凸条14を設けている。
図3の周壁2は、外側の凸条14Aを内側の凸条14Bよりも幅広くして、蓋体5の内面に確実に熱溶着している。このケース本体7は、発熱線1を嵌着溝13に案内して、開口端面8の定位置に位置ずれしないように配置して、発熱線1の両側で開口端面8を蓋体5に熱溶着できる。
【0025】
嵌着溝13の横幅は溶着線1Aの太さにほぼ等しく、溶着線1Aを定位置に配置する。嵌着溝13の深さは、蓋体5に設けた位置決め凸条15をここに挿入して、位置決め凸条15の先端面を発熱線1の溶着線1Aに接触させる深さとしている。製造工程で成形される開口端面8の嵌着溝13は、発熱線1の発熱で溶融されて周壁2の開口端面8を蓋体5の位置決め凸条15に熱溶着する状態でほとんど消失して、開口端面8を蓋体5に接合する。
【0026】
図2と
図3の断面図に示す周壁2と蓋体5は、蓋体5に位置決め凸条15を設けて、この位置決め凸条15を周壁2の嵌着溝13に挿入して、溶着線1Aの発熱で、蓋体5を周壁2に熱溶着するので、蓋体5を正確な位置に配置して周壁2に確実に熱溶着できる。ただ、本発明の蓋付きケースは、必ずしも蓋体に位置決め凸条を設けることなく、蓋体の内面を直接に溶着線に接触させて熱溶着することもできる。
【0027】
ケース本体7は、周壁2内に発熱線1の通電線1Bを挿入する挿入孔9を設けている。
図4の周壁2は、挿入孔9を垂直方向に延びるように設けている。挿入孔9は、周壁2の内面と外面との間に設けられて、ここに挿入される通電線1Bを周壁2の内部に配置する。さらに、挿入孔9は、その上端を開口端面8に開口している。この挿入孔9は、上端の開口部から挿入される通電線1Bを周壁2の内部に配置する。
図1のケース本体7は、底プレート11に対して垂直方向に延びるように挿入孔9を設けている。ただ、挿入孔9は、図示しないが、底プレート11に対して傾斜する方向に設けることもできる。
【0028】
図3ないし
図5に示す周壁2は、2本の通電線1Bを周壁2の長手方向に並べて配置できる形状の挿入孔9を設けている。この挿入孔9は、2本の通電線1Bを周壁2の表面と平行な面内に2列に並べて配置する。挿入孔9に挿入される通電線1Bは、先端部を周壁2の外部に露出している。周壁2は、挿入孔9に挿入される通電線1Bを露出させる露出開口10を、周壁2の外側にのみ開口して、周壁2の内側は開口しない。周壁2は、露出開口10の内側を閉塞しているが、露出開口10の内側は、電極の先端面を通電線1Bに電気接続して通電し、発熱させる状態で開口されない厚さに成形している。露出開口10は、挿入孔9の先端部を露出させる位置に設けられて、通電線1Bの先端部を周壁2の外側にのみ露出させる。露出開口10は、2本の通電線1Bを周壁2の表面と平行な面内に2列に配置して露出させる。周壁2の表面と平行な面内に配置される2本の通電線1Bは、電極の先端の平面状の接触面を露出開口10に挿入して電気接続される。
【0029】
図4と
図5の周壁2は、2本に分割された各々の発熱線1の通電線1Bを挿入するので、2本の通電線1Bを挿入できる形状の挿入孔9を設けている。ただ、本発明の蓋付きケースは、発熱線を必ずしも2本に分割する必要はなく、ループ状の溶着線の対向位置に1本の通電線を連結する形状とすることもできるので、この発熱線を挿入する挿入孔は、1本の通電線を挿入する形状に成形される。
【0030】
蓋体5は、外周縁に沿って、周壁2の嵌着溝13に挿入される位置決め凸条15を成形工程で設けて、この位置決め凸条15を周壁2の嵌着溝13に案内して、ケース本体7の定位置に配置する。周壁2の嵌着溝13には発熱線1の溶着線1Aが配置されるので、ここに挿入される位置決め凸条15は、発熱線1の発熱で溶融されて、確実に周壁2の開口端面8に熱溶着される。
【0031】
さらに、蓋体5は、
図4に示すように、2本の発熱線1の通電線1Bを挿入している挿入孔9の開口部と対向する位置に、溶着突出部16を成形する工程で設けている。
図4は、蓋体5をケース本体7溶着する以前の状態を示している。溶着突出部16は、成形された蓋体5を、ケース本体7の定位置に配置する状態で、2本の発熱線1の通電線1Bと溶着線1Aとの境界にできる谷間17に挿入される。この状態で、発熱線1に通電して発熱させて、蓋体5を周壁2に熱溶着する状態では、溶融されて2本の発熱線1の谷間17に侵入して、谷間17にできる空隙を完全に閉塞して水密構造に密閉する。
【0032】
以上の蓋体5は、外周を周壁2の開口端面8に熱溶着する状態で、2本の発熱線1の境界部分にできる谷間17に、溶着突出部16を溶融して侵入させるので、蓋体5をより理想的な状態で周壁2の開口端面8に熱溶着する。この蓋付きケースは、より完全な水密構造として、蓋体5を周壁2に熱溶着できる。このため、蓋付きケースを理想的な水密構造にできる。
【0033】
以上の蓋付きケースは、以下の工程で組み立てられる。
(1)ケース本体7の内部に二次電池12や回路基板(図示せず)などの収納物を入れる。
(2)ケース本体7の周壁2の開口端面8に発熱線1を配置する。
発熱線1は、周壁2に設けた嵌着溝13に溶着線1Aを案内し、発熱線1の通電線1Bを周壁2の挿入孔9に挿入して、通電線1Bを周壁2内に配置する。
挿入孔9に挿入された通電線1Bは露出開口10から周壁2の外部に露出する。
(3)周壁2の開口端面8を閉塞する位置に蓋体5を配置する。
この状態で、蓋体5の位置決め凸条15は周壁2の嵌着溝13に案内されて、蓋体5はケース本体7の定位置に配置される。
(4)蓋体5をケース本体7の周壁2に押圧する状態で、ケース本体7の両側にある露出開口10に一対の電極を挿入し、電極を発熱線1の通電線1Bに電気接続する状態で、電極を介して発熱線1に通電して、発熱線1をジュール熱で発熱して、蓋体5を周壁2の開口端面8に熱溶着する。発熱する発熱線1は、蓋体5と周壁2の開口端面8の両方を溶融して溶着する。この状態で、蓋体5は周壁2の開口端面8に接合される。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の蓋付きケースは、ケース本体の周壁と蓋体との間に配置している発熱線に通電し、発熱線の発熱で蓋体をケース本体の周壁に熱溶着して、周壁の開口部を蓋体で閉塞する電池パックなどの用途に有効に使用される。とくに、蓋体をケース本体の周壁に水密構造に密閉する状態で熱結合される電池パックなどに最適である。
【符号の説明】
【0035】
1…発熱線 1A…溶着線 1B…通電線
2…周壁
5…蓋体
7…ケース本体
8…開口端面
9…挿入孔
10…露出開口
11…底プレート
12…二次電池
13…嵌着溝
14…凸条 14A…外側の凸条 14B…内側の凸条
15…位置決め凸条
16…溶着突出部
17…谷間
61…発熱線
62…周壁
63…引き出し部
81…発熱線
82…周壁
84…電極用突出部
85…蓋体
86…貫通孔