特許第6219273号(P6219273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6219273リチウム二次電池用負極、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池用負極の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6219273
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池用負極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20171016BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20171016BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20171016BHJP
   H01M 2/26 20060101ALI20171016BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20171016BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20171016BHJP
【FI】
   H01M4/13
   H01M4/38 Z
   H01M4/139
   H01M2/26 A
   H01M10/052
   H01M10/058
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-516785(P2014-516785)
(86)(22)【出願日】2013年5月20日
(86)【国際出願番号】JP2013063890
(87)【国際公開番号】WO2013176068
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2016年3月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-116793(P2012-116793)
(32)【優先日】2012年5月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古結 康隆
(72)【発明者】
【氏名】別所 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】島田 隆司
【審査官】 赤樫 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−235617(JP,A)
【文献】 特開平08−102333(JP,A)
【文献】 特開2007−328932(JP,A)
【文献】 特開2005−085633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
H01M 2/26
H01M 4/64− 4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極集電体と、
前記負極集電体の表面の一部の領域の上に配された負極活物質層と、
前記負極集電体の表面の前記負極活物質層が配されていない領域である非配置領域の上に配された、金属リチウムを含むリチウム層と、
前記負極集電体の前記非配置領域に抵抗溶接された負極リードをさらに備え、
前記リチウム層が、前記負極リードと、前記負極集電体との間の少なくとも一部に配されている、
リチウム二次電池用負極。
【請求項2】
前記リチウム層の厚みが、0.1μm以上、30μm以下である、請求項1記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項3】
前記負極活物質層が、ケイ素を含む、請求項1または2のいずれかに記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項4】
前記リチウム層の一部が、前記負極活物質層の上に配されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項5】
前記非配置領域が、前記負極集電体の長手方向における端部に位置する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用負極と、
正極と、
前記正極と前記リチウム二次電池用負極との間に配されたセパレータと、
非水電解質と、
を備える、リチウム二次電池。
【請求項7】
前記正極は、
正極集電体と、
前記正極集電体の上に配された正極活物質層と、
を有し、
前記非配置領域に隣接する部分が、前記正極活物質層と対向していない、請求項6に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
負極集電体の表面の一部の領域の上に負極活物質層を形成する工程と、
前記負極活物質層の表面上と、前記負極集電体の表面の前記負極活物質層が設けられていない領域である非配置領域上とに、リチウム層を形成する工程と、
抵抗溶接法によって、前記リチウム層の上から前記非配置領域の上に負極リードを接合する工程と、
を備える、リチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項9】
前記リチウム層を気相法により形成する、請求項8に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用負極、リチウム二次電池、及びリチウム二次電池用負極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話、ノートパソコン、PDAなどの電子デバイスに、リチウム二次電池が広く使用されている。リチウム二次電池の負極活物質としては、黒鉛材料が広く使用されている。
【0003】
近年、リチウム二次電池の高容量化などを目的として、ケイ素などのリチウムと合金化する材料を負極活物質として用いることが検討されている。例えば、特許文献1には、ケイ素を含んだ負極活物質層を備えた負極が開示されている。
【0004】
しかしながら、リチウムと合金化する材料は、初回の充電によって吸蔵したリチウムをその後の放電時に放出しにくい。このため、リチウムと合金化する材料を負極活物質として用いたリチウム二次電池では、初回充放電効率が低くなりやすく、2回目以降の充放電容量が低くなる場合がある。
【0005】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1には、負極活物質層の表面に気相法により金属リチウムを堆積させて、負極活物質層に予めリチウムを吸蔵させておくことなどが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−85633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況下、リチウムと合金化する材料を負極活物質として用いたリチウム二次電池の充放電容量をさらに高めたいという要望がある。
【0008】
本発明は、リチウム二次電池の充放電容量を高めることを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のリチウム二次電池用負極は、負極集電体と、負極活物質層と、リチウム層とを備える。負極活物質層は、負極集電体の表面の一部の領域の上に配されている。リチウム層は、負極集電体の表面の負極活物質層が配されていない領域である非配置領域の上に配されている。リチウム層は、金属リチウムを含む。
【0010】
本発明のリチウム二次電池は、本発明のリチウム二次電池用負極と、正極と、非水電解質と、セパレータとを備える。セパレータは、正極と前記リチウム二次電池用負極との間に配されている。
【0011】
本発明のリチウム二次電池用負極の製造方法では、負極集電体の表面の一部の領域の上に負極活物質層を形成する。負極活物質層の表面上と、負極集電体の表面の負極活物質層が設けられていない領域である非配置領域上とに、リチウム層を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、リチウム二次電池の充放電容量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態におけるリチウム二次電池用負極の略図的断面図である。
図2】本発明の一実施形態におけるリチウム二次電池用負極の略図的平面図である。
図3】本発明の一実施形態におけるリチウム二次電池用負極の製造方法に用い得る真空蒸着装置の模式図である。
図4】本発明の一実施形態におけるリチウム二次電池用負極の製造方法を説明するための略図的分解平面図である。
図5】本発明の一実施形態におけるリチウム二次電池用負極の製造方法を説明するための略図的断面図である。
図6】本発明の一実施形態におけるリチウム二次電池の略図的断面図である。
図7】本発明の一実施形態におけるリチウム二次電池を充放電する前の負極、正極、及びセパレータの略図的断面図である。
図8】本発明の一実施形態におけるリチウム二次電池を充放電した後の負極、正極、及びセパレータの略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0015】
また、実施形態などにおいて参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態などにおいて参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率などが異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率などは、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0016】
(リチウム二次電池用負極1の構成)
図1及び図2に示されるリチウム二次電池用負極1は、二次電池に組み込まれる前の負極である。このため、リチウム二次電池用負極1は、充放電に供されていない状態の負極である。
【0017】
リチウム二次電池用負極1は、負極リード13と、負極板15とを備える。負極板15は、負極集電体10と、負極活物質層11と、リチウム層12とを備える。
【0018】
負極集電体10は、例えば、リチウム二次電池に使用される公知の導電性材料により構成することができる。好ましい負極集電体10としては、例えば、無孔の導電性基板が挙げられる。好ましい負極集電体10の形態としては、箔、シート、フィルムなどが挙げられる。好ましい負極集電体10の材質としては、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、銅、銅合金などが挙げられる。負極集電体10の厚みは、1μm〜500μm程度の範囲にあることが好ましく、1μm〜50μm程度の範囲にあることがより好ましく、10μm〜40μm程度の範囲にあることがさらに好ましく、10μm〜30μm程度の範囲にあることが特に好ましい。負極集電体10の厚みがこのような範囲にある負極1を用いることにより、リチウム二次電池の充放電容量をより高め得る。
【0019】
負極活物質層11は、負極集電体10の表面10a、10bの一部の領域10a1、10b1の上に配されている。なお、本発明において、負極活物質層は、負極集電体の片面側にのみ配されていてもよい。
【0020】
負極集電体10の表面10a、10bには、負極集電体10の表面10a、10bの負極活物質層11が配されていない領域である非配置領域10a2、10b2が含まれる。非配置領域10a2、10b2は、負極集電体10の長手方向における端部に位置している。
【0021】
負極活物質層11は、負極活物質を含む。負極活物質は、例えば、リチウム二次電池に使用される公知の負極活物質であってよい。好ましい負極活物質としては、例えば、カーボン系活物質、合金系活物質、カーボン系活物質と合金系活物質との混合物などが挙げられる。
【0022】
好ましいカーボン系活物質としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化性炭素などが挙げられる。
【0023】
合金系活物質は、負極電位下で、充電時にリチウムと合金化することによりリチウムを吸蔵し、かつ放電時にリチウムを放出する。好ましい合金系活物質としては、例えば、ケイ素を含むケイ素系活物質、錫を含む錫系活物質などが挙げられる。合金系活物質としては、ケイ素系活物質がより好ましい。
【0024】
好ましいケイ素系活物質としては、例えば、ケイ素、ケイ素化合物、これらの部分置換体及び固溶体などが挙げられる。好ましいケイ素化合物としては、例えば、ケイ素酸化物、ケイ素炭化物、ケイ素窒化物、ケイ素合金などが挙げられる。
【0025】
好ましいケイ素酸化物としては、例えば、SiO(0.05<a<1.95)で表される酸化ケイ素などが挙げられる。好ましいケイ素炭化物としては、例えば、SiC(0<b<1)で表される炭化ケイ素などが挙げられる。好ましいケイ素窒化物としては、例えば、SiN(0<c<4/3)で表される窒化ケイ素などが挙げられる。ケイ素合金は、ケイ素と少なくとも1種の異種元素(A1)との合金である。異種元素(A1)としては、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Cu、Zn、Ge、In、Sn、Tiなどが挙げられる。ケイ素やケイ素化合物の部分置換体は、ケイ素またはケイ素化合物に含まれるケイ素の一部が、少なくとも1種の異種元素(A2)で置換された化合物である。異種元素(A2)としては、B、Mg、Ni、Ti、Mo、Co、Ca、Cr、Cu、Fe、Mn、Nb、Ta、V、W、Zn、C、N、Snなどが挙げられる。ケイ素化合物としては、ケイ素酸化物が好ましい。
【0026】
好ましい錫系活物質としては、例えば、錫、錫酸化物、錫窒化物、錫合金、錫化合物、これらの固溶体などが挙げられる。好ましい錫酸化物としては、例えば、SnO(0<d<2)、SnOなどが挙げられる。好ましい錫合金としては、例えば、Ni−Sn合金、Mg−Sn合金、Fe−Sn合金、Cu−Sn合金、Ti−Sn合金などが挙げられる。好ましい錫化合物としては、例えば、SnSiO、NiSn、MgSnなどが挙げられる。錫系活物質としては、錫酸化物が好ましい。
【0027】
リチウム二次電池の充放電容量をより高めるためには、負極活物質層は、合金系活物質を含むことが好ましく、ケイ素を含むことがより好ましい。
【0028】
負極活物質層11は、1種類のみの負極活物質を含んでいてもよいし、複数種類の負極活物質を含んでいてもよい。
【0029】
負極活物質の平均粒子径は、1μm〜100μm程度の範囲にあることが好ましい。
【0030】
負極活物質層11は、結着剤や導電剤などをさらに含むことが好ましい。好ましい結着剤の具体例としては、例えば、カルボキシメチルセルロースやスチレンブタジエンゴムなどが挙げられる。
【0031】
負極リード13は、負極集電体10の非配置領域10a2に接続されている。負極リード13を構成する材料は、導電性を有する材料であれば、特に限定されない。負極リード13は、例えば、ニッケル、ニッケル合金、銅、及び銅合金の少なくとも1種を含むことが好ましい。好ましいニッケル合金としては、例えば、ニッケル−ケイ素合金、ニッケル−錫合金、ニッケル−コバルト合金、ニッケル−鉄合金、ニッケル−マンガン合金などが挙げられる。好ましい銅合金としては、銅−ニッケル合金 、銅−鉄合金、銅−銀合金、銅−りん合金、銅−アルミニウム合金、銅−ケイ素合金、銅−錫合金、銅−ジルコニア合金、銅−ベリリウム合金などが挙げられる。負極集電体10と負極リード13との接合強度を高めるためには、負極リード13は、ニッケル、銅、銅−ニッケル合金などを含むことが好ましい。また、負極リード13は、銅とニッケルとのクラッド材により構成されていてもよい。負極リード13は、これらの材料を一般的なリードの形態に成形することにより製造することができる。
【0032】
以下、本実施形態においては、負極リード13と負極集電体10との一方がニッケルを含み、他方が銅を含む例について説明する。
【0033】
負極集電体10と負極リード13とは、負極集電体10と負極リード13とが対向する領域の一部において接合されている。具体的には、負極集電体10と負極リード13とが対向する領域に、負極集電体10と負極リード13との接合部14が間隔をおいて複数設けられている。これら複数の接合部14によって、負極集電体10と負極リード13とが電気的に接続されている。
【0034】
リチウム層12は、非配置領域10a2、10b2の上と、負極活物質層11の上とに跨がって配されている。すなわち、リチウム層12の一部は、負極集電体10の非配置領域10a2、10b2の上に配されており、他の一部は、負極活物質層11の上に配されている。表面10a側においては、リチウム層12は、非配置領域10a2と負極リード13との間の領域のうち、接合部14が位置する領域を除いた領域の少なくとも一部の上に設けられている。表面10b側においては、リチウム層12は、接合部14に対応した部分を除いた略全面の上に配されている。
【0035】
なお、リチウム層の非配置領域の上に位置する部分と、負極活物質層の上に位置する部分とは、互いに隔離されていてもよい。
【0036】
本発明において、リチウム層は、非配置領域の上に配されてさえすればよい。リチウム層は、負極集電体の表面の負極活物質層が配されていない領域の上にのみ配されていてもよいし、負極集電体の表面の負極活物質層が配されていない領域の上に配されていると共に、負極活物質層の上にも配されていてもよい。
【0037】
リチウム層12は、金属リチウムを含む。リチウム層12は、実質的に金属リチウムにより構成されていることがより好ましい。リチウム層12は、負極活物質層11の単位面積あたりの不可逆容量に相当する量以上の金属リチウムを含むことが好ましい。
【0038】
リチウム層12の厚みは、特に限定されない。リチウム層12から負極活物質層11に対して十分な量のリチウムを供給させることによりリチウム二次電池の充放電容量をより高めるためには、リチウム層12の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。但し、リチウム層12が厚すぎると、負極活物質層11の厚みを薄くする必要があるため、リチウム二次電池の充電容量がかえって低くなってしまう場合がある。従って、リチウム層12の厚みは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【0039】
(負極1の製造方法)
次に、図1図5を参照しながら、負極1の製造方法の一例を説明する。
【0040】
まず、帯状の負極集電体10の領域10a1,10b1の上に負極活物質層11を形成する。負極集電体10の領域10a1,10b1の上に負極活物質層11を形成する方法は、特に限定されない。例えば、まず、上記の負極活物質、結着剤、及び溶媒を含む負極合剤スラリーを用意する。その負極合剤スラリーを負極集電体10の表面10a,10bの上に間欠的に塗布し、乾燥、圧延することにより負極活物質層11を形成することができる。このとき、非配置領域10a2,10b2が、負極集電体10の長手方向における端部に位置するように負極合剤スラリーを塗布する。もっとも、負極集電体の表面の負極活物質層が形成されていない領域が、例えば、負極集電体の表面の中央部に位置するように負極合剤スラリーを塗布してもよい。
【0041】
次に、負極活物質層11の表面上と、負極集電体10の非配置領域10a2,10b2の上とに跨がるように、リチウム層12を形成する。リチウム層12の形成は、例えば、気相法などにより行うことができる。リチウム層12の形成は、例えば、図3に示されるような真空蒸着装置40を用いた真空蒸着法により行うことができる。
【0042】
真空蒸着装置40は、真空チャンバ41を有する。真空チャンバ41内には、巻き出しローラ43及び巻き取りローラ45が設けられている。巻き出しローラ43には、負極集電体10と、負極集電体10の上に配された負極活物質層11とを備えるシート17が巻き取られている。巻き取りローラ45には、巻き出しローラ43から巻き出され、案内ローラ46、キャン44及び案内ローラ47を経由したシート17が供給される。シート17は、巻き取りローラ45によって巻き取られる。
【0043】
真空チャンバ41内において、キャン44に対向するように、例えば金属リチウムなどにより構成されたリチウム源50が配されている。このリチウム源50がヒーターにより加熱されることによって、シート17のキャン44の上に位置する部分の上に、リチウムの蒸気が供給される。供給されたリチウムは、シート17上において、図示しない冷却機構により冷却される。これにより、シート17のキャン44の上に位置する部分の上に、リチウム層12が形成されていく。従って、巻き取りローラ45によって巻き取られるシート17においては、負極活物質層11の上を含め、負極集電体10の表面の実質的に全体の上にリチウム層12が形成されている。
【0044】
なお、キャン44とリチウム源50との間に配された遮蔽板51は、ヒーターを昇温している間や、リチウム層12を形成した後のヒーターを降温している間に、不要なリチウムが飛散するのを遮るために設けられている。
【0045】
真空チャンバ41内の圧力、巻き取りローラ45による巻き取り速度、リチウム源50などは、適宜設定することができる。
【0046】
次に、図4に示されるように、負極集電体10の非配置領域10a2の上に負極リード13を配置する。具体的には、負極リード13の長手方向と、負極集電体10の長手方向とが直交するように、負極リード13を配置する。もっとも、本発明においては、例えば、負極リードの長手方向と、負極集電体の長手方向とが平行となるように配置してもよい
【0047】
負極リード13を配置する位置は、リチウム二次電池の電極群の形態(捲回型、扁平型、積層型など)、リチウム二次電池の形態(角型、円筒型、扁平型、ラミネートフィルムパック型、コイン型など)、リチウム二次電池の設計(寸法、容量、用途など)などの条件に応じて適宜選択することができる。
【0048】
次に、負極集電体10の非配置領域10a2の上に、リチウム層12の上から負極リード13を接合する。負極リード13と負極集電体10との接合は、例えば、抵抗溶接法によって行うことができる。抵抗溶接法によれば、負極リード13と負極集電体10との間にリチウム層12が介在している場合であっても、負極リード13と負極集電体10とを好適に接合することができる。
【0049】
負極リード13と負極集電体10との抵抗溶接法による接合は、例えば、以下の要領で行うことができる。すなわち、図5に示されるように、リチウム層12が設けられた負極集電体10と負極リード13とを抵抗溶接機の端子16a,16bで挟んだ状態で加圧しながら、端子16aと端子16bとの間に電圧を印加する。これにより、端子16aと端子16bとの間に位置する負極リード13、リチウム層12、負極集電体10及びリチウム層12に電流が流れる。ここで、負極リード13、リチウム層12、負極集電体10及びリチウム層12それぞれの接触界面の電気抵抗は高い。このため、端子16a、16b間に電流が流れると負極リード13、リチウム層12、負極集電体10及びリチウム層12が発熱する。リチウム層12に含まれるリチウムの融点は、約180℃と低い。例えば、リチウムは、負極集電体10や負極リード13を構成している銅及びニッケルなどよりも融点が低い。よって、負極集電体10や負極リード13を構成している銅やニッケルよりも融点の低いリチウムが負極集電体10や負極リード13に先だって融解し、リチウムの融液が生成する。これにより、銅及びニッケルの融点が低下するため、負極集電体10と負極リード13との接合が、低温にて進行するものと考えられる。よって、端子16a、16b間に加える電力の電圧値を低くすることができる。従って、非配置領域10a2,10b2にリチウム層12を予め形成しておくことにより、負極リード13と負極集電体10との接合が容易になる。また、負極集電体10と負極リード13とが接合しやすくなるため、負極リード13と負極集電体10との接続の信頼性を高めることができる。さらに、負極集電体と負極リードとの接合に先立って、負極集電体の負極リードを接合しようとする部分からリチウム層を除去する必要が必ずしもない。従って、負極1の製造コストを低くすることができる。
【0050】
なお、銅とニッケルとは、合金を形成するため、負極集電体10及び負極リード13の一方が銅を含み他方がニッケルを含む場合、接合部14は、銅とニッケルの合金を含む。一方、リチウムは、銅及びニッケルと合金を形成しない。このため、リチウムは、接合部14には実質的に含まれていない。接合の際に生じたリチウムの融液は、接合部14の外に追い出される。
【0051】
端子16a,16bの先端径や、端子16a,16bの間に流れる電流値は、それぞれ、負極集電体10及び負極リード13の厚み、材質、大きさなどによって、適宜選択することができる。端子16a,16bは、銅製であることが好ましい。端子16a,16bの先端径は、1mm〜5mm程度の範囲にあることが好ましい。端子16a,16bの間に流れる電流値は、100A〜5000A程度の範囲にあることが好ましい。
【0052】
負極集電体10と負極リード13との接合は、超音波溶接法によって行うこともできる。超音波溶接においても、超音波の照射によって、負極リード13、リチウム層12、負極集電体10が発熱し、リチウム層12が負極リード13及び負極集電体10に先だって溶融する。この際に生じるリチウム融液によって負極リード13と負極集電体10との接合が助長される。その結果、接合部14が好適に形成される。
【0053】
(リチウム二次電池30)
次に、負極1を用いたリチウム二次電池30について説明する。図6及び図7に示されるように、リチウム二次電池30は、負極1と、正極2と、セパレータ3と、図示しない非水電解質とを備える。
【0054】
正極2は、正極板22と、正極リード23とを備える。正極板22は、正極集電体20と、正極活物質層21とを備える。
【0055】
正極集電体20は、例えば、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、アルミニウム合金などの導電性材料により構成することができる。正極集電体20としては、例えば、多孔性または無孔の導電性基板を使用できる。多孔性の導電性基板としては、例えば、メッシュ体、ネット体、パンチングシート、ラス体、多孔質体、発泡体、不織布などを用いることができる。無孔の導電性基板としては、例えば、箔、フィルムなどを用いることができる。
【0056】
正極集電体20の厚みは、特に制限されないが、例えば1μm〜500μm程度の範囲にあることが好ましく、1μm〜50μm程度の範囲にあることがより好ましく、10μm〜30μm程度の範囲にあることがさらに好ましい。
【0057】
正極活物質層21は、正極集電体20の少なくとも一方の主面の上に設けられている。本実施形態では、具体的には、正極活物質層21が、正極集電体20の両主面上に設けられているが、正極活物質層は、正極集電体の片方の主面上のみに設けられていてもよい。
【0058】
正極活物質層21は、正極活物質を含む。好ましい正極活物質としては、例えば、リチウム含有複合金属酸化物、オリビン型リン酸リチウムなどが挙げられる。
【0059】
リチウム含有複合金属酸化物は、リチウムと遷移金属元素とを含む金属酸化物または金属酸化物中の遷移金属元素の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。好ましい遷移金属元素としては、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Crなどが挙げられる。これらの中でも、Mn、Co、Niなどが好ましい。好ましい異種元素としては、Na、Mg、Zn、Al、Pb、Sb、Bなどが挙げられる。これらの中でも、Mg、Alなどが好ましい。
【0060】
好ましいリチウム含有複合金属酸化物の具体例としては、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1−m、LiCo1−m、LiNi1−m、LiMn、LiMn2−m(前記各式中、Aは、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、Na、Mg、Zn、Al、Pb、Sb及びBからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を示す。0<l≦1.2、m=0〜0.9、n=2.0〜2.3である。)などが挙げられる。
【0061】
好ましいオリビン型リン酸リチウムの具体例としては、LiXPO、LiXPOF(前記各式中、Xは、Co、Ni、Mn及びFeからなる群から選ばれた少なくとも1つの元素を示す。)などが挙げられる。
【0062】
なお、正極活物質におけるリチウムのモル比は、正極活物質を作製した直後の値である。正極活物質におけるリチウムのモル比は、リチウム二次電池30の充放電によって増減する。
【0063】
正極活物質は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0064】
正極活物質層21は、導電剤、結着剤などをさらに含んでいてもよい。
【0065】
好ましい導電剤としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維、アルミニウムなどの金属粉末類、フッ化カーボンなどが挙げられる。導電剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0066】
好ましい結着剤としては、樹脂材料などを用いることができる。結着剤の具体例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリビニルピロリドン、スチレンブタジエンゴム、変性アクリルゴム、カルボキシメチルセルロース、2種類以上のモノマーの共重合体などが挙げられる。モノマーとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、アクリル酸、ヘキサジエンなどが挙げられる。結着剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0067】
正極活物質層21は、例えば、正極合剤スラリーを正極集電体20の表面上に塗布することにより得られた塗膜を乾燥し、圧延することにより得られる。正極合剤スラリーは、例えば、正極活物質、導電剤、結着剤などを有機溶媒に溶解、分散させることにより調製することができる。好ましい有機溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアミン、アセトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0068】
正極リード23は、正極集電体20の正極活物質層21からの露出部に接合されている。正極リード23の正極集電体20とは反対側は、正極端子33に接続されている。正極リード23は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金などにより構成することができる。好ましいアルミニウム合金としては、例えば、アルミニウム−ケイ素合金、アルミニウム−鉄合金、アルミニウム−銅合金、アルミニウム−マンガン合金、アルミニウム−マグネシウム合金、アルミニウム−亜鉛合金などが挙げられる。なお、正極集電体20と正極リード23との接合は、例えば、抵抗溶接法、超音波溶接法などにより行うことができる。
【0069】
セパレータ3は、正極2と負極1との間に配されている。セパレータ3としては、所定のイオン透過度、機械的強度、絶縁性などを併せ持つシートなどを用いることができる。セパレータ3としては、微多孔膜、織布、不織布などの多孔質シートを用いることが好ましい。セパレータ3の材料としては、各種樹脂材料を用いることができる。耐久性、シャットダウン機能などを考慮すると、セパレータ3の材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンが好ましい。
【0070】
セパレータ3の厚みは、10μm〜300μm程度の範囲にあることが好ましく、10μm〜30μm程度の範囲にあることがより好ましく、10μm〜25μm程度の範囲にあることがさらに好ましい。セパレータ3の空孔率は、30%〜70%程度の範囲にあることが好ましく、35%〜60%程度の範囲にあることがより好ましい。なお、本発明において、空孔率とは、セパレータ3の体積に対する、セパレータ3が有する細孔の総容積の百分率である。
【0071】
セパレータ3には、リチウムイオン伝導性を有する非水電解質が含浸されている。非水電解質は、溶質(支持塩)と非水系溶媒とを含む。
【0072】
好ましい溶質としては、LiClO、LiBF、LiPF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、LiBCl、ホウ酸塩類、イミド塩類などが挙げられる。溶質は、0.5モル/L〜2モル/Lの濃度で非水溶媒に溶解されていることが好ましい。
【0073】
好ましい非水系溶媒としては、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステルなどが挙げられる。好ましい環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートなどが挙げられる。好ましい鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートなどが挙げられる。好ましい環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンなどが挙げられる。非水系溶媒は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0074】
非水電解質は、添加剤をさらに含んでもよい。好ましい添加剤としては、フッ化エチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジビニルエチレンカーボネートなどのリチウム二次電池30の充放電効率を向上させ得る添加剤、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテルなどのリチウム二次電池30を不活性化し得る添加剤などが挙げられる。添加剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を混合しても用いてもよい。
【0075】
負極1と正極2とは、セパレータ3を介在させた状態で巻回され、セパレータ3と共に捲回型電極群36を構成している。この捲回型電極群36は、長手方向の両端部に上部絶縁板31及び下部絶縁板32が装着された状態で、円筒型の電池ケース35内に収容されている。正極2の正極リード23及び負極1の負極リード13が、それぞれ所定の箇所に接続されている。非水電解質は、電池ケース35内に含まれている。電池ケース35の開口部分には、正極端子33を支持する封口板34が装着されている。電池ケース35の開口端部が、封口板34に向けてかしめ付けられ、電池ケース35が封口されている。
【0076】
上部絶縁板31、下部絶縁板32及び封口板34は、例えば、それぞれ電気絶縁性材料により構成することができる。電気絶縁性材料は、例えば、樹脂材料、ゴム材料などであることが好ましい。電池ケース35は、長手方向の一方の端部に開口を有する有底円筒状部材である。電池ケース35及び正極端子33は、それぞれ、鉄、ステンレス鋼などの金属材料により構成することができる。
【0077】
なお、リチウム二次電池30は、捲回型電極群36を含む円筒形電池であるが、本発明において、リチウム二次電池の形状は、特に限定されない。本発明のリチウム二次電池は、角形電池、扁平電池、コイン電池、ラミネートフィルムパック電池などであってもよい。また、捲回型電極群に代えて、積層型電極群、扁平状電極群としてもよい。
【0078】
図7は、リチウム二次電池30を充放電する前の負極、正極、及びセパレータの一部分の略図的断面図である。図7に示されるように、リチウム二次電池30を充放電する前の負極1においては、負極活物質層11と、負極集電体10の非配置領域10a2,10b2との両方の上に、リチウム層12が設けられている。すなわち、負極活物質層11の上、及び負極リード13が配された部分の上を含め、負極集電体10の実質的に全体の上にリチウム層12が設けられている。
【0079】
リチウム二次電池30を充放電すると、充電時に、リチウム層12に含まれていたリチウムの少なくとも一部が負極活物質層11に吸蔵される。具体的には、負極活物質層11の上に配されたリチウム層12に含まれていたリチウムは、負極活物質層11に吸蔵されていく。また、負極集電体10の非配置領域10a2,10b2の上に配されていたリチウム層12に含まれていたリチウムは、近接する負極活物質層11の端部から負極活物質層11に吸蔵されていく。このため、リチウム二次電池30を充放電させることにより、負極活物質層11におけるリチウム濃度を高めることができる。よって、2回目以降の充放電時に正極2から供給されるリチウムが負極1により補足されて放出されなくなることを抑制することができる。従って、負極1を用いることにより、リチウム二次電池30の充放電容量を高め得る。
【0080】
なお、リチウム層12が含んでいたリチウムの量によっては、図8に示されるように、リチウムが負極活物質層11に吸蔵されることによりリチウム層12の少なくとも一部が消失したり、リチウム層12の少なくとも一部の厚みが充放電前と比べて小さくなってしまったりすることもある。
【0081】
ところで、リチウム二次電池において、負極活物質層の正極活物質層と対向していない部分には、充電時においても、正極活物質層からリチウムが供給されにくい。このため、充電後においても、負極活物質層の正極活物質層と対向していない部分は、正極活物質層と対向している部分と比べて、電位が低い。よって、負極活物質層の正極活物質層と対向している部分から、正極活物質層と対向していない部分に、リチウムが移動しやすい。このため、負極活物質層の正極活物質層と対向していない部分に隣接する、正極活物質層と対向している部分のリチウム濃度が低くなる。一方、負極活物質層の正極活物質層と対向していない部分におけるリチウム濃度は高められるものの、この部分は電池反応に寄与しない。従って、負極活物質層の一部が正極活物質層と対向していない場合には、負極活物質層の正極活物質層と対向している部分から、正極活物質層と対向していない部分に移動したリチウムに相当する大きさだけ電池容量が低下する場合がある。
【0082】
リチウム二次電池30においては、負極集電体10の非配置領域10a2,10b2の上にリチウム層12が設けられている。このリチウム層12の非配置領域10a2,10b2に位置する部分から、負極活物質層11の正極活物質層21と対向していない部分にリチウムが供給される。このため、負極活物質層11の正極活物質層21と対向している部分11bと、正極活物質層21と対向していない部分11aとの電位差が小さくなる。よって、正極活物質層21と対向している部分11bから正極活物質層21と対向していない部分11aに移動するリチウムの量が少ない。従って、電池反応に寄与する、負極活物質層11の正極活物質層21と対向している部分11bのリチウム濃度が低下することが効果的に抑制されている。よって、負極1を用いることにより、リチウム二次電池30の充放電容量を効果的に高めることができる。また、リチウム二次電池30の充放電サイクル特性を高め得る。
【0083】
なお、負極集電体10の非配置領域10a2,10b2の上の一部のみにリチウム層12が配されている場合であっても、リチウム層12から負極活物質層11の正極活物質層21と対向していない部分11aにリチウムが移動する。このため、負極活物質層11の正極活物質層21と対向している部分11bのリチウムを、充放電に有効に寄与させることができる。よって、このような場合であっても、リチウム二次電池30の充放電容量及び充放電サイクル特性を高め得る。
【0084】
上述のように、初回の充電時にリチウム層12の少なくとも一部が消失したり、薄くなったりする場合がある。しかしながら、非配置領域10a2,10b2と負極リード13との間に位置し・BR>トいるリチウム層12は充電時に消失したり、薄くなったりしにくい。これは、負極リード13と、負極集電体10との間は、空間が狭いことから、この間に位置するリチウム層12に含まれるリチウムは、リチウム二次電池30の充放電過程において、負極活物質層11側に移動しにくいためであると考えられる。また、負極リード13と負極集電体10との間の領域がテープや接着剤によって封止されている場合は、リチウム層12のリチウムがより移動しにくくなるため、リチウム層12がより薄くなりにくいと考えられる。
【0085】
リチウム二次電池30は、例えば、従来のリチウム二次電池と同様の用途に使用でき、特に、携帯用電子機器の電源として有用である。携帯用電子機器としては、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、モバイル機器、携帯情報端末(PDA)、携帯用ゲーム機器、ビデオカメラなどが挙げられる。また、リチウム二次電池30としては、ハイブリッド電気自動車、電気自動車、燃料電池自動車などの主電源及び補助電源、電動工具、掃除機、ロボットなどの駆動用電源、プラグインHEVの動力源などとしての利用も期待される。
【0086】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0087】
(実施例1)
(1)正極活物質の作製
NiSO水溶液に、Ni:Co=8.5:1.5(モル比)となるように硫酸コバルトを加えて、金属イオン濃度が2mol/リットルの水溶液を調製した。この水溶液に、撹拌下、2mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に滴下して中和することにより、Ni0.85Co0.15(OH)で示される組成を有する三元系の沈殿物を共沈法により生成させた。得られた沈殿物をろ過することにより分離した後、水洗し、80℃で乾燥させることにより、複合水酸化物を得た。
【0088】
得られた複合水酸化物を、大気中にて900℃で10時間加熱し、Ni0.85Co0.15で示される組成を有する複合酸化物を得た。次に、この複合酸化物に対して、Ni及びCoの原子数の和とLiの原子数とが等量になるように水酸化リチウム1水和物を加え、大気中にて800℃で10時間加熱することにより、LiNi0.85Co0.15で示される組成を有するリチウムニッケル含有複合金属酸化物を得た。このリチウムニッケル含有複合金属酸化物を正極活物質として用いた。正極活物質の二次粒子の体積平均粒径は、10μmであった。
【0089】
(2)正極の作製
上記作製の正極活物質の粉末93g、アセチレンブラック(導電剤)3g、ポリフッ化ビニリデン粉末(結着剤)4g、及びN−メチル−2−ピロリドン50mlを混合して、正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーを厚さ15μmのアルミニウム箔(正極集電体)の両面の上に塗布した。得られた塗膜を乾燥した後に、圧延することにより、片面あたりの厚さが50μmの正極活物質層を形成した。このようして、56mm×205mmの正極板を作製した。この正極板の両面の正極活物質層の一部(56mm×5mm)を除去し、正極集電体が露出した部分を形成した。正極集電体が露出した部分にアルミニウム製の正極リードを超音波溶接法により溶接することにより、正極を完成させた。
【0090】
(3)負極板の作製
天然黒鉛の粉末(平均粒径:20μm)90g、SiOの粉末(平均粒径:20μm)9g、濃度が1質量%であるカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液100g及びスチレンブタジエンゴム(SBR)1gを混合して負極合剤スラリーを調製した。この負極合剤スラリーを厚さ10μmの銅箔(負極集電体)の両面に26cmの長さで、5cmの間隔をあけて間欠的に塗布した。その後、得られた塗膜を乾燥し、圧延することにより、片面あたりの厚みが60μmである負極活物質層を形成した。
【0091】
次に、負極活物質層の表面上と、銅箔の負極活物質層が形成されていない非配置領域に、以下のようにしてリチウム層を形成した。まず、図3に示されるように、巻き出しローラ43に、負極活物質層が形成された帯状の負極集電体を巻き付けた。次に、負極活物質層が形成された負極集電体からなるシート17を、案内ローラ46、キャン44、及び案内ローラ47を経由して搬送した。シート17が、キャン44の表面上に位置する際に、シート17の上にリチウムの蒸気を供給した。リチウムの蒸気はキャン44内部の図示しない冷却手段により冷却されて、シート17の表面上で析出し、リチウム層が形成された。リチウム層が形成された負極板を巻き取りローラ45に巻き取った。
【0092】
なお、リチウムの蒸気は、リチウム源50を、ヒーターで560℃に加熱して気化させることにより生成させた。ヒーターの昇温時間や、リチウム層の形成終了後のヒーター降温時間において、不要なリチウムが飛散しないように遮蔽板51でリチウムの飛散を遮った。真空チャンバ41内の圧力は、8.0×10−3Paとした。負極集電体の巻き取りローラ45による巻き取り速度は、20cm/分とした。リチウム原料には、リチウム板(本荘ケミカル株式会社製)を用いた。以上のようにして、厚さ5μmのリチウム層を形成し、負極板を作製した。
【0093】
得られた負極板15を、負極集電体の負極活物質層が形成されていない領域(58mm×50mm)が長手方向における端部となるように、58mm×260mmに切断した。
【0094】
(4)負極リードの接合
上記(3)で裁断した負極板15に、ニッケル箔(厚み0.1mm)から作製した幅5mm、長さ70mm、厚さ0.1mmの負極リードを接合し、負極を作製した。負極リードの接合は、以下のような抵抗溶接法により行った。
【0095】
まず、負極板の負極活物質層が形成されていない領域に形成されたリチウム層の上から、負極板の長手方向と負極リードの長手方向が垂直となるようにして、負極リードを重ね合わせた。抵抗溶接機(ミヤチテクノス株式会社製)の、先端径が2mmの相対する二つの端子で、負極板と負極リードとを挟み込むように配置し、端子間を狭める方向に荷重をかけた。抵抗溶接機の電流設定値を1200Aに設定し、10ミリ秒の電流を印加した。負極リードの長手方向に、同じ条件でさらに3箇所を溶接し、合計4箇所の接合部を形成した。負極リードの上面と接合部の裏面の両側に、幅7mm×長さ60mmのポリプロピレン製テープを負極リードの長手方向に貼り付け、負極を得た。
【0096】
(5)リチウム二次電池の作製
上記で得られた正極と負極との間にポリエチレン微多孔膜(セパレータ、商品名:ハイポア、厚さ20μm、旭化成株式会社製)を介在させて積層し、得られた積層物を捲回し、捲回型電極群を作製した。正極リードの他端をステンレス鋼製正極端子に溶接し、負極リードの他端を有底円筒形の鉄製電池ケースの底部内面に接続した。捲回型電極群の長手方向の一端部及び他端部に、それぞれ、ポリエチレン製の上部絶縁板及び下部絶縁板を装着し、捲回型電極群を電池ケース内に収容した。
【0097】
次に、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとを体積比1:1の割合で含む混合溶媒に、LiPFを1.0mol/リットルの濃度で溶解させた非水電解液を電池ケースに注液した。さらに、電池ケースの開口に、ポリエチレン製のガスケットを介して封口板を装着し、電池ケースの開口端部を内側にかしめて電池ケースを封口し、円筒型リチウム二次電池Aを作製した。
【0098】
(比較例1)
負極の作製において、銅箔の負極活物質層が形成されていない領域に、ポリイミドテープを貼り付け、リチウムを蒸着した後に、ポリイミドテープを剥がすことにより、銅箔の負極活物質層が形成されていない領域にリチウム層を形成しなかったこと以外は、電池Aと同様にして、円筒型リチウム二次電池Bを作製した。
【0099】
(比較例2)
負極の作製において、銅箔の全面に負極活物質層を形成し、銅箔の負極活物質層が形成されていない領域を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。このとき、負極活物質層の表面に負極リードを配置して抵抗溶接法での溶接を試みたが、負極活物質層と負極リードとの接合はできなかった。
【0100】
[負極集電体と負極リードとの接合部の観察]
実施例1及び比較例1で作製した負極について、それぞれ、負極リードの接合部付近を断面研磨して、接合部のサイズを金属顕微鏡で測定した。結果を表1に示す。
【0101】
[電池組立後の電池容量]
実施例1及び比較例1で得られた電池A,Bを、それぞれ20℃の恒温槽に収容し、以下のような定電流定電圧方式で充電した。
【0102】
電池A及び電池Bを、それぞれ電池電圧が4.2Vになるまで1Itレート(1Itとは1時間で全電池容量を使い切ることができる電流値)の定電流で充電した。その後、40℃の恒温槽に収容して3日間貯蔵した充電後の電池を、1Itレートの定電流で、電池電圧が2.5Vになるまで放電した。同様に充電、放電を行って各電池の充放電容量を測定した。電池Aの充放電容量を100%としたときの電池Bの充放電容量を表1に示す。
【0103】
[充放電容量を測定した後の負極の観察]
各電池の充放電容量を測定した後、電池Aを分解し、負極の負極集電体の負極活物質層を形成していない領域を観察した。その結果、負極集電体の負極活物質層を形成していない領域のリチウム層の一部が消失していた。さらに負極リードに貼ったテープと負極リードとを剥がして観察した結果、負極リードの下に位置するリチウム層は残存していた。
【0104】
[充放電サイクル特性]
実施例1及び比較例1において作製したリチウム二次電池を、それぞれ3個ずつ、20℃の恒温槽に収容し、以下のような定電流定電圧方式で充電した。
【0105】
各電池を、電池電圧が4.2Vになるまで1Itレート(1Itとは1時間で全電池容量を使い切ることができる電流値)の定電流で充電した。電池電圧が4.2Vに達した後は、電流値が0.05Itになるまで、各電池を4.2Vの定電圧で充電した。次に、20分間休止した後、充電後の電池を、1Itレートのハイレートの定電流で、電池電圧が2.5Vになるまで放電した。このような充放電を100サイクル繰り返した。
【0106】
1サイクル目の全放電容量に対する、100サイクル目の全放電容量の割合を、百分率値で求めた。得られた値の平均値を算出し、容量維持率として表1に示す。
【0107】
【表1】
【0108】
表1に示されるように、実施例1の電池Aの接合部サイズは、比較例1の電池Bの接合部サイズと比較して大きかった。このことから、電池Aでは、負極集電体と負極リードとが強固に接合されていること、負極集電体と負極リードとの接合部の電気抵抗率が低いことなどが分かる。電池Bにおいても、負極集電体と負極リードとが接合されているものの、負極集電体と負極リードとの接合部の大きさが電池Aと比べて小さかった。
【0109】
また、電池Aの充放電容量は、電池Bの充放電容量よりも高かった。電池Aの負極集電体表面上に形成されたリチウム層の一部が充放電容量の評価後に消失していたことから、消失したリチウム層は、隣接する負極活物質層に吸蔵されたものと考えられる。電池Aは、電池Bと比較して、高い容量維持率を示した。これは、負極集電体の表面に形成されたリチウム層から負極活物質層の正極活物質層と対向していない部分にリチウムが吸蔵されたため、負極活物質層の正極活物質層と対向している部分から、正極活物質層と対向していない部分にリチウムが移動することが抑制されたことに起因すると考えられる。
【符号の説明】
【0110】
1…リチウム二次電池用負極
10…負極集電体
10a,10b…負極集電体の表面
10a1,10b1…負極集電体の表面の領域
10a2,10b2…非配置領域
11…負極活物質層
11a,11b…負極活物質層の部分
12…リチウム層
13…負極リード
14…接合部
15…負極板
16a,16b…端子
17…シート
2…正極
20…正極集電体
21…正極活物質層
22…正極板
23…正極リード
3…セパレータ
30…リチウム二次電池
31…上部絶縁板
32…下部絶縁板
33…正極端子
34…封口板
35…電池ケース
36…捲回型電極群
40…真空蒸着装置
41…真空チャンバ
43…巻き出しローラ
44…キャン
45…巻き取りローラ
46,47…案内ローラ
50…リチウム源
51…遮蔽板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8