【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための非水電解質二次電池用電極板にかかる本発明は、次のように構成されている。
電極活物質と結着剤とを有する電極活物質層が、芯体表面に設けられた非水電解質二次電池用電極板において、前記電極活物質層の外表面側から前記芯体側に向かって、前記電極活物質層に含まれる前記結着剤の量が連続的に増大するように前記結着剤が分布しており、前記結着剤が前記電極活物質層内に均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体
側面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が10未満であることを特徴とする。
【0015】
本発明者らが結着剤とサイクル特性との関係について鋭意研究したところ、電極活物質層の外表面側で電極活物質表面が結着剤に覆われる場合、電極活物質層の芯体側で電極活物質表面が結着剤に覆われる場合よりもサイクル特性が低下し易いことを知った。
【0016】
上記本発明の構成では、外表面側に存在する結着剤の量が少なく、電極活物質層の外表面側では電極活物質表面における結着剤に覆われる領域の割合が小さいので、サイクル特性の低下を防止できる。また、芯体側での結着剤の量が多いため、衝撃等によって電極活物質層が芯体からはがれることを防止できる。
【0017】
なお、「電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量」とは、電極活物質層の特定の厚み領域内に存在する結着剤量を意味するものではなく、電極活物質層の厚み方向に存在する結着剤の量を微分的にとらえた値を意味する。
【0018】
そして、「前記結着剤が均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体
側面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が、10未満」とは、電極活物質層の芯体
側面を基点として、電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域(外表面側の厚み10%領域)においては、結着剤量が10以上である部分が存在しないことを意味する。
【0019】
また、電極活物質層の外表面から厚み10%の領域における電極活物質層単位厚み当たりの結着剤の量の下限値は、電極活物質層を形成するのに最低限必要な量とすることが好ましい。
【0020】
また、結着剤の量の分布は、外表面側から芯体側に向かって連続的に増大するものであり、電極活物質層内において単位厚み当たりの結着剤の量が不連続に変化する界面は存在しない。また、芯体側での結着剤濃度勾配が、外表面側での結着剤濃度勾配よりも大きい構成とすることが好ましい。
【0021】
上記構成において、前記結着剤が前記電極活物質層内に均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体
側面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向0〜10%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が10よりも多い構成とすることができる。
【0022】
芯体と電極活物質層との結着性をさらに高めるため、上記の如く規制することが好ましい。
【0023】
また、上記構成において、前記結着剤が前記電極活物質層内に均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体
側面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向45〜55%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が2〜20である構成とすることができる。
【0024】
充放電サイクル特性をさらに高めるため、上記の如く規制することが好ましい。
【0025】
上記構成において、前記結着剤が前記電極活物質層内に均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体
側面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が5以下であり、前記電極活物質層の厚み方向0〜10%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が15以上であり、前記電極活物質層の厚み方向45〜55%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が5〜15である、構成とすることができる。
【0026】
充放電サイクル特性や芯体と電極活物質層との結着性をさらに高めるため、上記の如く規制することがより好ましい。
【0027】
上記構成において、前記電極活物質層に含まれる前記電極活物質と、前記芯体との接触面積比率が、30%以上である構成とすることができる。
【0028】
電極活物質層の芯体からの脱離をより抑制するため、上記の如く規制することがより好ましい。また、活物質粒子が芯体に食い込んでいることがより好ましい。
【0029】
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴムやその変性体等の公知の結着剤を使用できる。なかでも、スチレンブタジエンゴムやその変性体は、電極活物質層を形成する際の溶剤として、低コストで環境に悪影響を与えない水を使用できるので、好ましい。スチレンブタジエンゴムの変性体としては、カルボキシル変性やアミノ変性がなされたスチレンブタジエンゴムが好適である。
【0030】
電極活物質層の質量に占める結着剤の質量割合は、結着剤の種類に応じて適宜設定できる。例えば、電極活物質層の質量に占める結着剤の質量割合は、ポリフッ化ビニリデンの場合0.1〜3.0質量%、ポリテトラフルオロエチレンの場合0.1〜5.0質量%、スチレンブタジエンゴムやその変性体の場合0.1〜5.0質量%等とすることができる。
【0031】
上記課題を解決するための非水電解質二次電池にかかる本発明は、次のように構成されている。
上記のいずれかの非水電解質二次電池用電極板を、正極板、負極板の少なくとも一方として用いてなる非水電解質二次電池。
【0032】
上記課題を解決するための非水電解質二次電池の製造方法にかかる本発明は、次のように構成されている。
電極活物質と、結着剤と、溶剤と、を有する第1の電極活物質スラリーを、芯体上に塗布する第1塗布工程と、電極活物質と、結着剤と、溶剤と、を有し、前記第1の電極活物
質スラリーよりも前記溶剤の質量比率が低い第2の電極活物質スラリーを、未乾燥の前記第1の電極活物質スラリーによる層の上に塗布する第2塗布工程と、前記第2
塗布工程の後、前記溶剤を揮発除去する乾燥工程と、を備え、乾燥工程後の電極活物質層の外表面側から前記芯体側に向かって、前記電極活物質層に含まれる前記結着剤の量が連続的に増大するように前記結着剤が分布しており、前記結着剤が均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体
側面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が10未満である非水電解質二次電池の製造方法。
【0033】
芯体上に第1の電極活物質スラリーを塗布し、未乾燥の第1の電極活物質スラリーによる層の上に、第1の電極活物質スラリーよりも溶媒比率の低い(固形分(電極活物質、結着剤、必要に応じて増粘剤等)の比率が高い)第2の電極活物質スラリーを塗布すると、第1及び第2の電極活物質スラリーによる層の界面で結着剤の沈降が生じて、結着剤の浮き上がりが抑制される。これにより、上記のような結着剤分布の電極を作製できる。
【0034】
ここで、乾燥工程での乾燥速度が速すぎると、電極活物質層内部の溶剤の揮発に伴って結着剤が浮き上がるおそれがある。このため、乾燥速度は、2g(溶媒)/m
2・s未満であることが好ましく、1.5g(溶媒)/m
2・s以下であることがより好ましい。また、乾燥速度が遅すぎると、作業効率が低下するので、0.5g(溶媒)/m
2・s以上であることが好ましい。乾燥速度は、乾燥工程の雰囲気温度や圧力等を制御することにより調整できる。
【0035】
ここで、第1及び第2の電極活物質スラリーの結着剤は、同一とすることが好ましい。ここで、第1及び第2の電極活物質スラリーの組成は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、未乾燥の第2の電極活物質層上に、さらに電極活物質スラリーを塗布してもよい。
【0036】
また、乾燥工程前における、第1の電極活物質スラリーの固形分質量と第2の電極活物質スラリーの固形分質量との比は、0.1〜10であることが好ましく、0.5〜2であることがより好ましい。