特許第6219302号(P6219302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6219302非水電解質二次電池用電極板及びこれを用いた非水電解質二次電池並びにその製造方法
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  • 特許6219302-非水電解質二次電池用電極板及びこれを用いた非水電解質二次電池並びにその製造方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6219302
(24)【登録日】2017年10月6日
(45)【発行日】2017年10月25日
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用電極板及びこれを用いた非水電解質二次電池並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20171016BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20171016BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20171016BHJP
【FI】
   H01M4/13
   H01M4/62 Z
   H01M4/139
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-544255(P2014-544255)
(86)(22)【出願日】2013年10月23日
(86)【国際出願番号】JP2013006253
(87)【国際公開番号】WO2014068904
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年10月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-239535(P2012-239535)
(32)【優先日】2012年10月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101823
【弁理士】
【氏名又は名称】大前 要
(72)【発明者】
【氏名】衣川 元貴
(72)【発明者】
【氏名】伊達 健二
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−192539(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/013413(WO,A1)
【文献】 特開2008−258055(JP,A)
【文献】 特開2008−027633(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/089898(WO,A1)
【文献】 特開平09−185960(JP,A)
【文献】 特開平10−270013(JP,A)
【文献】 特開2007−35589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/139
H01M 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質と結着剤とを有する電極活物質層が、芯体表面に設けられた非水電解質二次電池用電極板において、
前記電極活物質層の外表面側から前記芯体側に向かって、前記電極活物質層に含まれる前記結着剤の量が連続的に増大するように前記結着剤が分布しており、
前記結着剤が前記電極活物質層内に均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が10未満である、
ことを特徴とする非水電解質二次電池用電極板。
【請求項2】
請求項1に記載の非水電解質二次電池用電極板において、
前記結着剤が前記電極活物質層内に均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向0〜10%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が10よりも多い、
ことを特徴とする非水電解質二次電池用電極板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用電極板において、
前記結着剤が前記電極活物質層内に均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向45〜55%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が2〜20である、
ことを特徴とする非水電解質二次電池用電極板。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載の非水電解質二次電池用電極板において、
前記結着剤が前記電極活物質層内に均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、
前記電極活物質層の芯体面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が5以下であり、前記電極活物質層の厚み方
向0〜10%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が15以上であり、前記電極活物質層の厚み方向45〜55%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が5〜15である、
ことを特徴とする非水電解質二次電池用電極板。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用電極板において、
前記電極活物質層に含まれる前記電極活物質と、前記芯体との接触面積比率が、30%以上である、
ことを特徴とする非水電解質二次電池用電極板。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用電極板において、
前記結着剤が、スチレンブタジエンゴム及び/又はその変性体である、
ことを特徴とする非水電解質二次電池用電極板。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用電極板を、正極板、負極板の少なくとも一方として用いてなる非水電解質二次電池。
【請求項8】
電極活物質と、結着剤と、溶剤と、を有する第1の電極活物質スラリーを、芯体上に塗布する第1塗布工程と、
電極活物質と、結着剤と、溶剤と、を有し、前記第1の電極活物質スラリーよりも前記溶剤の質量比率が低い第2の電極活物質スラリーを、未乾燥の前記第1の電極活物質スラリーによる層の上に塗布する第2塗布工程と、
前記第2塗布工程の後、前記溶剤を揮発除去する乾燥工程と、を備え、
乾燥工程後の電極活物質層の外表面側から前記芯体側に向かって、前記電極活物質層に含まれる前記結着剤の量が連続的に増大するように前記結着剤が分布しており、
前記結着剤が前記電極活物質層内に均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が10未満である、
非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池のサイクル特性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池は、高いエネルギー密度を有し、高容量であるため、携帯電話、スマートフォン、ノートパソコン等の携帯機器の駆動電源として広く利用されている。近年では、非水電解質二次電池のサイクル特性のさらなる向上が求められている。
【0003】
このような非水電解質二次電池に用いる電極板は、生産性や放電特性を高める観点から、電極活物質と、結着剤と、溶媒と、を混合してなる電極活物質スラリーを芯体上に塗布し、乾燥した後、圧延する方法により作製されている。
【0004】
ここで、結着剤は充放電に直接寄与しないため、その量を過大とすると放電容量が低下する。他方、結着剤量を過少とすると、電極活物質層の剥離強度が低下して電極活物質が芯体から脱落し易くなる。
【0005】
非水電解質二次電池の結着剤に関する技術としては、下記特許文献1〜5がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−89871号公報
【特許文献2】特開2011−192539号公報
【特許文献3】特開平9−147834号公報
【特許文献4】特開2008−258055号公報
【特許文献5】特開平10−284059号公報
【0007】
特許文献1は、金属集電体上に活物質の塗膜層が設けられてなる二次電池電極であって、該活物質層中におけるバインダーがバインダー分布係数0.5〜5.0の範囲に分布している技術を開示している。この技術によると、優れた電池特性が得られるとされる。
【0008】
特許文献2は、集電体と、集電体の表面に形成された第1合剤層と、第1合剤層の表面に形成された第2合剤層と、を有する電極であって、第2合剤層には、第1合剤層よりも少量のバインダーを含ませる技術を開示している。この技術によると、優れたレート特性およびサイクル特性、ならびに高い容量を有する非水電解質二次電池用電極を提供できるとされる。
【0009】
特許文献3は、負極活物質層は、集電体との界面から外に向かってバインダーの量が段階的に少なくなる第1,第2,第3の負極活物質層7a,7b,7cで構成する技術を開示している。この技術によると、高容量化及び高エネルギー密度化された電池を提供できるとされる。
【0010】
特許文献4は、正極集電板と、この正極集電板上に積層され、正極原料粉末及び正極バインダを含む複数の正極合材層を備え、この複数の正極合材層のうち最も正極集電板側に位置する最内側正極合材層にかかる正極バインダの含有率を、他の正極合材層に比べて高くし、且つ、4wt%以上7wt%以下とした正極を用いる技術を開示している。この技術によると、出力特性が良好で、且つサイクル寿命特性が良好な二次電池が得られるとされる。
【0011】
特許文献5は、有機溶媒とフッ素樹脂からなるバインダとを混合してバインダ溶液を銅箔からなる集電体の両面に塗布して半乾燥して半乾燥バインダ層を形成し、黒鉛とフッ素樹脂とを混合した混合物を作った後、有機溶媒とこの混合物とを湿式混合してなる炭素材溶液を半乾燥バインダ層のそれぞれの上に塗布・乾燥して集電体に負極材層を形成する技術を開示している。この技術によると、放電容量を低下させることなく、負極材層と負極集電体との密着性を十分に高めることができるとされる。
【0012】
しかしながら、上記特許文献1〜5に係る技術を用いても、サイクル特性が十分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための非水電解質二次電池用電極板にかかる本発明は、次のように構成されている。
電極活物質と結着剤とを有する電極活物質層が、芯体表面に設けられた非水電解質二次電池用電極板において、前記電極活物質層の外表面側から前記芯体側に向かって、前記電極活物質層に含まれる前記結着剤の量が連続的に増大するように前記結着剤が分布しており、前記結着剤が前記電極活物質層内に均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が10未満であることを特徴とする。
【0015】
本発明者らが結着剤とサイクル特性との関係について鋭意研究したところ、電極活物質層の外表面側で電極活物質表面が結着剤に覆われる場合、電極活物質層の芯体側で電極活物質表面が結着剤に覆われる場合よりもサイクル特性が低下し易いことを知った。
【0016】
上記本発明の構成では、外表面側に存在する結着剤の量が少なく、電極活物質層の外表面側では電極活物質表面における結着剤に覆われる領域の割合が小さいので、サイクル特性の低下を防止できる。また、芯体側での結着剤の量が多いため、衝撃等によって電極活物質層が芯体からはがれることを防止できる。
【0017】
なお、「電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量」とは、電極活物質層の特定の厚み領域内に存在する結着剤量を意味するものではなく、電極活物質層の厚み方向に存在する結着剤の量を微分的にとらえた値を意味する。
【0018】
そして、「前記結着剤が均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が、10未満」とは、電極活物質層の芯体面を基点として、電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域(外表面側の厚み10%領域)においては、結着剤量が10以上である部分が存在しないことを意味する。
【0019】
また、電極活物質層の外表面から厚み10%の領域における電極活物質層単位厚み当たりの結着剤の量の下限値は、電極活物質層を形成するのに最低限必要な量とすることが好ましい。
【0020】
また、結着剤の量の分布は、外表面側から芯体側に向かって連続的に増大するものであり、電極活物質層内において単位厚み当たりの結着剤の量が不連続に変化する界面は存在しない。また、芯体側での結着剤濃度勾配が、外表面側での結着剤濃度勾配よりも大きい構成とすることが好ましい。
【0021】
上記構成において、前記結着剤が前記電極活物質層内に均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向0〜10%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が10よりも多い構成とすることができる。
【0022】
芯体と電極活物質層との結着性をさらに高めるため、上記の如く規制することが好ましい。
【0023】
また、上記構成において、前記結着剤が前記電極活物質層内に均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向45〜55%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が2〜20である構成とすることができる。
【0024】
充放電サイクル特性をさらに高めるため、上記の如く規制することが好ましい。
【0025】
上記構成において、前記結着剤が前記電極活物質層内に均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が5以下であり、前記電極活物質層の厚み方向0〜10%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が15以上であり、前記電極活物質層の厚み方向45〜55%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が5〜15である、構成とすることができる。
【0026】
充放電サイクル特性や芯体と電極活物質層との結着性をさらに高めるため、上記の如く規制することがより好ましい。
【0027】
上記構成において、前記電極活物質層に含まれる前記電極活物質と、前記芯体との接触面積比率が、30%以上である構成とすることができる。
【0028】
電極活物質層の芯体からの脱離をより抑制するため、上記の如く規制することがより好ましい。また、活物質粒子が芯体に食い込んでいることがより好ましい。
【0029】
結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴムやその変性体等の公知の結着剤を使用できる。なかでも、スチレンブタジエンゴムやその変性体は、電極活物質層を形成する際の溶剤として、低コストで環境に悪影響を与えない水を使用できるので、好ましい。スチレンブタジエンゴムの変性体としては、カルボキシル変性やアミノ変性がなされたスチレンブタジエンゴムが好適である。
【0030】
電極活物質層の質量に占める結着剤の質量割合は、結着剤の種類に応じて適宜設定できる。例えば、電極活物質層の質量に占める結着剤の質量割合は、ポリフッ化ビニリデンの場合0.1〜3.0質量%、ポリテトラフルオロエチレンの場合0.1〜5.0質量%、スチレンブタジエンゴムやその変性体の場合0.1〜5.0質量%等とすることができる。
【0031】
上記課題を解決するための非水電解質二次電池にかかる本発明は、次のように構成されている。
上記のいずれかの非水電解質二次電池用電極板を、正極板、負極板の少なくとも一方として用いてなる非水電解質二次電池。
【0032】
上記課題を解決するための非水電解質二次電池の製造方法にかかる本発明は、次のように構成されている。
電極活物質と、結着剤と、溶剤と、を有する第1の電極活物質スラリーを、芯体上に塗布する第1塗布工程と、電極活物質と、結着剤と、溶剤と、を有し、前記第1の電極活物
質スラリーよりも前記溶剤の質量比率が低い第2の電極活物質スラリーを、未乾燥の前記第1の電極活物質スラリーによる層の上に塗布する第2塗布工程と、前記第2塗布工程の後、前記溶剤を揮発除去する乾燥工程と、を備え、乾燥工程後の電極活物質層の外表面側から前記芯体側に向かって、前記電極活物質層に含まれる前記結着剤の量が連続的に増大するように前記結着剤が分布しており、前記結着剤が均一に分布していると仮定した場合の前記電極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、前記電極活物質層の芯体面を基点として、前記電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が10未満である非水電解質二次電池の製造方法。
【0033】
芯体上に第1の電極活物質スラリーを塗布し、未乾燥の第1の電極活物質スラリーによる層の上に、第1の電極活物質スラリーよりも溶媒比率の低い(固形分(電極活物質、結着剤、必要に応じて増粘剤等)の比率が高い)第2の電極活物質スラリーを塗布すると、第1及び第2の電極活物質スラリーによる層の界面で結着剤の沈降が生じて、結着剤の浮き上がりが抑制される。これにより、上記のような結着剤分布の電極を作製できる。
【0034】
ここで、乾燥工程での乾燥速度が速すぎると、電極活物質層内部の溶剤の揮発に伴って結着剤が浮き上がるおそれがある。このため、乾燥速度は、2g(溶媒)/m・s未満であることが好ましく、1.5g(溶媒)/m・s以下であることがより好ましい。また、乾燥速度が遅すぎると、作業効率が低下するので、0.5g(溶媒)/m・s以上であることが好ましい。乾燥速度は、乾燥工程の雰囲気温度や圧力等を制御することにより調整できる。
【0035】
ここで、第1及び第2の電極活物質スラリーの結着剤は、同一とすることが好ましい。ここで、第1及び第2の電極活物質スラリーの組成は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、未乾燥の第2の電極活物質層上に、さらに電極活物質スラリーを塗布してもよい。
【0036】
また、乾燥工程前における、第1の電極活物質スラリーの固形分質量と第2の電極活物質スラリーの固形分質量との比は、0.1〜10であることが好ましく、0.5〜2であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0037】
上記で説明したように、本発明によると、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は実施例1〜3、比較例1の負極活物質層における結着剤分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例を通じて、詳細に説明する。なお、本発明は下記の形態に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することができる。
【0040】
(実施例)
[実施例1]
〔正極の作製〕
正極活物質としてのコバルト酸リチウム(LiCoO)100質量部と、導電剤としてのアセチレンブラック2質量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)2質量部と、N−メチル−2−ピロリドンとを混合して、正極活物質スラリーとした。
【0041】
正極活物質スラリーを、ドクターブレード法により厚み15μmのアルミニウム製芯体の両面に塗布し、乾燥させた。この後、圧縮ローラーを用いて厚み170μmに圧縮し、裁断して、正極板を作製した。
【0042】
〔負極の作製〕
負極活物質としての人造黒鉛100質量部と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース1質量部と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)の水ディスパージョン(固形分比率40%)をスチレンブタジエンゴム換算で1質量部と、合計固形分が48〜55%となるように適量の水とを、双腕式練合機にて混合して、負極活物質スラリーA(第2の電極活物質スラリー)とした。
【0043】
負極活物質スラリーAから一部を取り出し、合計固形分が40〜48%となるように適量の水をさらに加え、双腕式練合機にて混合して、負極活物質スラリーB(第1の電極活物質スラリー)とした。
すなわち、負極活物質スラリーAと、負極活物質スラリーBとは、固形分内での構成比率は同一で、水分(溶剤)の質量比率が負極活物質スラリーA<負極活物質スラリーBとなっている。
【0044】
この負極活物質スラリーBを、ドクターブレード法により厚み10μmの銅製芯体の両面に塗布し、その後負極活物質スラリーAを、ドクターブレード法により、未乾燥の負極活物質スラリーBによる層の上に塗布した。この時、固形分質量比率は、負極活物質スラリーAによる層が負極活物質スラリーBによる層の2倍とした。
【0045】
この後、平均乾燥速度1g(溶媒)/m・sで乾燥を行い、圧縮ローラーを用いて厚み200μmに圧縮し、裁断して、負極板を得た。
【0046】
この負極板の結着剤(SBR)の活物質層厚み方向における分布を、臭素で染色した断面の画像処理により解析した。図1に、活物質層厚み方向における結着剤分布を示す。この図では、結着剤分布を、結着剤が均一に分布していると仮定した場合の負極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするときの相対値で示している。
【0047】
結着剤が均一に分布していると仮定した場合の負極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、電極活物質層の芯体面を基点として、電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が1.5以下であり、電極活物質層の厚み方向45〜55%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が2〜3であり、電極活物質層の厚み方向0〜10%の領域における負極活物質層単位厚み当たりの結着剤量が20〜31であった。また、活物質層に含まれる活物質(人造黒鉛)粒子と、芯体との接触面積比率は、圧縮前で30%、圧縮後は30%以上であった。
【0048】
〔電極体の作製〕
上記正極板及び負極板を、ポリエチレン製微多孔膜からなるセパレータ(厚み20μm)を介して巻回し、最外周にテープを貼り付けて、円筒状の電極体を作製した。
【0049】
〔非水電解質の調整〕
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを体積比80:5:15(25℃、1気圧)で混合し、電解質塩としてのLiPFを1.0M(モル/リットル)となるように溶解し、ビニレンカーボネートを3質量%となるように添加して、非水電解質となした。
【0050】
〔電池の組み立て〕
上記電極体および非水電解質5.5gを、円筒形外装缶内に収容した。この後、封口体により外装缶の開口を封止して、実施例1に係る非水電解質二次電池(高さ65mm、直径18mm)を作製した。
【0051】
[実施例2]
負極活物質スラリーAによる層と、負極活物質スラリーBによる層と、の固形分質量比率を、負極活物質スラリーAによる層が負極活物質スラリーBによる層の1倍としたこと以外は、上記実施例1と同様(総固形分量は実施例1と同一)にして、実施例2にかかる非水電解質二次電池を作製した。
【0052】
この負極板の結着剤(SBR)の活物質層厚み方向における分布を、上記と同様に解析した。結着剤が均一に分布していると仮定した場合の負極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、電極活物質層の芯体面を基点として、電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が2.5以下であり、電極活物質層の厚み方向45〜55%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が9〜12であり、電極活物質層の厚み方向0〜10%の領域における負極活物質層単位厚み当たりの結着剤量が18〜21であった(図1参照)。また、活物質層に含まれる活物質(人造黒鉛)粒子と、芯体との接触面積比率は、圧縮前で30%、圧縮後は30%以上であった。
【0053】
[実施例3]
負極活物質スラリーAによる層と、負極活物質スラリーBによる層と、の固形分質量比率を、負極活物質スラリーAによる層が負極活物質スラリーBによる層の1/2としたこと以外は、上記実施例1と同様(総固形分量は実施例1と同一)にして、実施例3にかかる非水電解質二次電池を作製した。
【0054】
この負極板の結着剤(SBR)の活物質層厚み方向における分布を、上記と同様に解析した。結着剤が均一に分布していると仮定した場合の負極活物質層単位厚み当たりの結着剤量を10とするとき、電極活物質層の芯体面を基点として、電極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が3〜7であり、電極活物質層の厚み方向45〜55%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が14〜16であり、電極活物質層の厚み方向0〜10%の領域における負極活物質層単位厚み当たりの結着剤量が16.5〜17であった(図1参照)。また、活物質層に含まれる活物質(人造黒鉛)粒子と、芯体との接触面積比率は、圧縮前で30%、圧縮後は30%以上であった。
【0055】
[比較例1]
合計固形分が50%である負極活物質スラリーCのみを用いて負極を作製としたこと以外は、上記実施例1と同様(総固形分量は実施例1と同一)にして、比較例1にかかる非水電解質二次電池を作製した。
【0056】
この負極板の結着剤(SBR)の厚み方向における分布を上記と同様に解析した。すると、負極活物質層内に結着剤が均一に分布していた(図1参照)。また、活物質層に含まれる活物質(人造黒鉛)粒子と、芯体との接触面積比率は、圧縮前で30%、圧縮後は30%以上であった。
【0057】
[比較例2]
負極板の作製を次のようにして行った。
増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース1質量部と、結着剤としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)の水ディスパージョン(固形分比率40%)をスチレンブタジエンゴム換算で1質量部と、合計固形分が50%となるように適量の水とを、双腕式練合機にて混合して、結着剤スラリーとした。
この結着剤スラリーを、ドクターブレード法により厚み10μmの銅製芯体の両面に塗布し、その後負極活物質スラリーCを、ドクターブレード法により結着剤スラリーによる層の上に塗布した。この後、平均乾燥速度1g(溶媒)/m・sで乾燥を行い、圧縮ローラーを用いて厚み200μmに圧縮し、裁断して、負極板を得た。なお、総活物質量は、実施例1と同様である。
【0058】
上記と同様に解析した、活物質層に含まれる活物質(人造黒鉛)粒子と、芯体との接触面積比率は、圧縮後で28%であった。また、この負極板は、活物質層の脱離が多く、電池としての使用に適した品質を満たしていなかった。このため、比較例2の電池は作製しなかった。
【0059】
〈サイクル特性試験〉
実施例1〜3、比較例1と同様にして作製した電池を以下の条件で充放電を2回行い、45℃の恒温槽で7日保存した。この電池を再度以下の条件で充放電を500サイクル行った。下記式により容量維持率を算出しこの結果を下記表1に示す。
【0060】
充電:定電流1400mAで電圧が4.2Vとなるまで、その後定電圧4.2Vで電流が100mAまで、25℃
放電:定電流2000mAで電圧が3.0Vとなるまで、25℃
容量維持率(%)=500サイクル目放電容量÷1サイクル目放電容量×100
【0061】
〈内部抵抗の測定〉
実施例1〜3、比較例1と同様にして作製した電池を20℃の環境に30分放置した後、定電流0.2It(440mA)で充電深度(SOC)が50%になるまで充電した。この後、25℃の環境に30分放置した。この後、定電流1It(2200mA)での10秒間の充電及び放電を行った。このときの充放電終止電圧とSOC50%の状態における開回路電圧との差を、流した電流値で除することにより、電圧勾配dV/dAを求めた。この結果を、比較例1を100とした相対値で下記表1に示す。
【0062】
〈衝撃試験〉
実施例1〜3、比較例1と同様にして作製した電池を平面上に置いた。このとき、平面と電池の軸方向とが平行となるようにした。直径15.8mmの棒を電池の中央部に横たえた。9.1kgの重りを61mmの高さ各電池の上に落下させた。このときの電池表面温度を記録するとともに、6時間以内の破裂や発火の有無を確認した。この結果、実施例1〜3、比較例1の電池では、破裂や発火は確認されなかった。表面温度の最高値(最高到達温度)について、下記表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
上記表1及び図1から、負極活物質層の結着剤分布が、外表面側から芯体側にかけて連続的に増加し、負極活物質層の芯体面を基点として、負極活物質層の厚み方向90〜100%の領域における単位厚み当たりの結着剤量が10未満である実施例1〜3は、容量維持率が58〜73%、内部抵抗が91〜98、最高到達温度が130〜140℃であり、負極活物質層の結着剤分布が一定(負極活物質層の厚み方向の全て領域において、単位厚み当たりの結着剤量が10)である比較例1の、容量維持率が56%、内部抵抗が100、最高到達温度が150℃よりも優れていることが分かる。
【0065】
このことは、次のように考えられる。結着剤が電極活物質表面を覆うと、電極活物質のリチウムイオンの受け入れ性が悪くなる。そして、電極活物質層の外表面側で電極活物質表面が結着剤に覆われる場合、芯体側で電極活物質表面が結着剤に覆われる場合よりもサイクル特性が低下し易い。負極活物質層の結着剤分布が、外表面側から芯体側にかけて増加している実施例1〜3では、負極活物質層の結着剤分布が一定である比較例1よりもサイクル後の容量維持率が比較例1よりも高まるとともに、内部抵抗が比較例1よりも低くなる。また、芯体側での結着剤が多く、活物質層が芯体からはがれにくいので、衝撃を受けた際に剥がれた活物質による正負電極間の短絡を抑制でき、耐衝撃安全性もまた高まる(衝撃試験での最高到達温度が低くなる)。
【0066】
また、実施例1〜3では、結着剤分布の勾配が大きくなるに伴い、容量維持率、内部抵抗、及び最高到達温度が優れる傾向にあることが分かる。また、結着剤分布の勾配は、2つの活物質スラリーによる層の固形分質量比の変更により制御できることが分かる。
【0067】
〔追加事項〕
上記実施例では、負極板のみに本発明を適用したが、正極板のみに適用する構成や、両電極板に適用する構成とすることができる。
【0068】
また、本発明で使用できる結着剤としては、スチレンブタジエンゴム、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等がある。これらは、電極活物質の種類、溶剤の種類等に応じて適宜選択すればよい。
【0069】
また、本発明を適用する電極板に用いる電極活物質としては、公知の材料を広く用いることができる。例えば、正極活物質としては、リチウム含有コバルトニッケルマンガン複合酸化物(LiNiMnCo、0.9<x≦1.2、a+b+c=1)、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn)、これらの遷移金属元素を他の元素に置換した化合物等を単独で、又は二種以上混合して用いることができる。
【0070】
また、負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素質物(たとえば、黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、非晶質炭素)、珪素質物、金属リチウム、リチウム合金、リチウムイオン吸蔵・脱離可能な金属酸化物等を単独で、又は二種以上混合して用いることができる。
【0071】
また、スラリー調製に用いる溶剤としては、スチレンブタジエンゴムを用いる場合には、水を用いることができ、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンを用いる場合には、N−メチル−2−ピロリドンを用いることができる。
【0072】
また、非水電解質に用いる非水溶媒としては、カーボネート類、ラクトン類、ケトン類、エーテル類、エステル類等を用いることができる。具体的には、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ジメトキシエタン、テトロヒドロフラン、1,4−ジオキサン等を用いることができる。
【0073】
また、非水電解質に用いる電解質塩としては、上記LiPF以外に、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiClO等の一種または複数種の混合物が使用できる。また、非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2.0モル/リットルとすることが好ましい。
【0074】
また、芯体としては、正極側では純アルミニウムやアルミニウム合金、負極側では純銅や銅合金を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
以上に説明したように、本発明によれば、サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を提供できる。よって、産業上の利用可能性は大きい。
図1