(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記供給口は前記供給流路の一部を構成する直線を軸線とする筒状流路部の流路端に設けられ、前記フィルターは前記筒状流路部の軸線方向から見て、前記供給口と重ならない位置に配設され、
前記迂回流路形成ステップにおいて前記供給部材に形成される前記貫通孔は、前記供給口から前記筒状流路の軸線方向に沿って直線状にあけられた孔である請求項1に記載の液体収容容器の再生方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、フィルターが液体収容部内に配置された液体収容体を備える液体収容容器では、液体収容部内の液体がフィルターを通過する際に除去される異物がフィルター上に堆積し、堆積した異物によって、フィルターを通過する液体の量が抑制されてしまうことが起こり得る。そうなると、液体が再び注入されて再生された液体収容容器において、液体収容部内の液体は、フィルターを通過して供給口へ流れる際の液量が抑制され、円滑にプリンターへ供給されなくなるという課題がある。
【0008】
なお、こうした実情は、プリンターの装着部に装着される液体収容容器に限らず、液体を収容可能な液体収容部内にフィルターが配設された液体収容体を備える液体収容容器においては、概ね共通したものとなっている。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体収容部から供給口へ液体を円滑に流動させることができるように再生する液体収容容器の再生方法、および液体収容容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する液体収容容器の再生方法は、液体を収容可能な液体収容部と、液体消費装置に設けられた液体供給管に接続可能な供給口を持つ供給部材と、前記液体が通過可能なフィルターと、を有する液体収容体を備え、前記液体収容部内の液体が、前記フィルターを通過したのち前記供給部材に設けられた供給流路に沿って前記供給口へ流れることによって前記液体消費装置に供給される液体収容容器の再生方法であって、前記液体収容体に、前記液体収容部内の液体が、前記フィルターを通過することなく前記供給口へ流れる迂回流路を形成する迂回流路形成ステップと、前記液体収容部内へ前記液体を注入する注入ステップと、を備える。
【0011】
この方法によれば、液体収容容器を、フィルターが異物で目詰まりした状態になっても、液体収容部から迂回流路を介して供給口へ液体を円滑に流動させることができるように再生可能である。
【0012】
上記液体収容容器の再生方法において、前記迂回流路は、前記供給部材に形成され、前記供給口と前記液体収容部内とを貫通させる貫通孔であることが好ましい。
この方法によれば、迂回流路を、供給部材に貫通孔を設けることによって形成するので、液体収容部内の液体を供給口へ流す迂回流路を容易に形成することができる。
【0013】
上記液体収容容器の再生方法において、前記供給口は前記供給流路の一部を構成する直線を軸線とする筒状流路部の流路端に設けられ、前記フィルターは前記筒状流路部の軸線方向から見て、前記供給口と重ならない位置に配設され、前記迂回流路形成ステップにおいて前記供給部材に形成される前記貫通孔は、前記供給口から前記筒状流路の軸線方向に沿って直線状にあけられた孔であることが好ましい。
【0014】
この方法によれば、供給口から筒状流路部に沿う方向へ直線状に貫通孔を形成するという容易な方法で、フィルターの破損を抑制しつつ迂回流路を形成することができる。
上記液体収容容器の再生方法においては、前記注入ステップにおいて、前記迂回流路形成ステップで形成された前記迂回流路を介して前記供給口から前記液体収容部内へ前記液体を注入することが好ましい。
【0015】
この方法によれば、別途液体収容部に注入口を形成することなく、フィルターを介さない迂回流路を用いて、供給口から液体収容部内へ液体を円滑に流動させて注入することができる。
【0016】
上記課題を解決する液体収容容器は、上記液体収容容器の再生方法によって再生される。
この構成の液体収容容器によれば、上記液体収容容器の再生方法における効果と同様の効果を奏する。
【0017】
上記課題を解決する液体収容容器は、液体を収容可能な液体収容部と、液体消費装置に設けられた液体供給管に接続可能な供給口を持つ供給部材と、前記液体が通過可能なフィルターと、を有する液体収容体を備え、前記液体収容部内の液体が前記フィルターを通過して流れることによって、前記液体を前記液体消費装置に供給する液体収容容器であって、前記液体収容体には、前記液体収容部内の液体が前記フィルターを通過して前記供給口へ流れる供給流路と、前記液体収容部内の液体が前記フィルターを通過することなく前記供給口へ流れる迂回流路と、が設けられる。
【0018】
この構成によれば、液体収容容器を、液体の注入が容易であるとともに、フィルターが異物で目詰まりした状態になっても、液体収容部から迂回流路を介して供給口へ液体を円滑に流動させることができるように再生可能である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、液体消費装置の一例であるインクジェット式のプリンターの一実施形態について、図を参照しながら説明する。この実施形態のプリンターは、一方向に搬送される用紙Pに液体の一例であるインクを噴射すなわち消費して画像を形成することによって用紙Pに印刷を行う。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のプリンター11は、その一部を二点鎖線で示した略直方体形状の筐体11aを備え、その鉛直方向における反重力方向Z側の上面に、プリンター11を駆動させるための電源ボタンなどの操作ボタン11bや不図示の表示部が設けられている。また、用紙Pが搬送される搬送方向Y側となる筐体11aの前面には開閉可能なカバー11cが設けられている。ユーザーはこのカバー11cを開いた状態で、インクカートリッジ70を着脱したり交換したりすることが可能である。
【0022】
この筐体11aに覆われた内部空間に収納された略矩形箱状をなすフレーム12内の重力方向側となる下部には、用紙Pの搬送方向Yと直交する方向を長手方向とする支持台13が略水平方向に延設されるとともに、搬送方向Yと反対側となる後方側の下部には紙送りモーター14aが設けられている。すなわち、この紙送りモーター14aの駆動を通じて図示しない紙送り機構により、支持台13上にその後方側から前方側に向けて用紙Pが給送される。
【0023】
また、フレーム12内における支持台13の反重力方向側となる上方には、支持台13の長手方向に沿ってガイド軸15が架設されている。このガイド軸15にはその軸線方向において往復移動可能にキャリッジ16が支持されている。詳しくは、キャリッジ16に左右方向において貫通する支持孔16aが形成されるとともに、この支持孔16aにガイド軸15が挿通されている。
【0024】
フレーム12の後壁内面において上記ガイド軸15の両端の近傍にあたる位置には、駆動プーリー17aと従動プーリー17bとがそれぞれ回転自在に支持されている。駆動プーリー17aにはキャリッジモーター14bの出力軸が連結されるとともに、駆動プーリー17aと従動プーリー17bとの間には一部がキャリッジ16に連結された無端状のタイミングベルト17が巻き掛けられている。そして、キャリッジモーター14bが駆動されることにより、キャリッジ16はタイミングベルト17を介してガイド軸15にガイドされつつ長手方向すなわち走査方向Xに沿って往復移動する。このキャリッジ16の下側には液体噴射部の一例である液体噴射ヘッド18が設けられると共に、この液体噴射ヘッド18に対して供給されるインクが当該液体噴射ヘッド18から噴射されて消費され、用紙Pに画像が印刷される。
【0025】
筐体11a内には、前方側から見て走査方向Xの左側に、液体収容容器の一例であるインクカートリッジ70が挿抜可能に装着される装着部20が配設される。この装着部20とキャリッジ16との間に、インクを流動可能とするインク供給チューブTBが連結されている。このインク供給チューブTBを介して、インクカートリッジ70内のインクが液体噴射ヘッド18に供給される。
【0026】
本実施形態では、装着部20は、前方側が開口する箱状のカートリッジ保持体22を持つ。4つの略直方体状のインクカートリッジ70は、カートリッジ保持体22内に、走査方向Xに沿って並ぶように装着可能な構成とされている。4つのインクカートリッジ70には、例えば互いに異なる色のシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色インクがそれぞれ収容される。このため、装着部20には各インクカートリッジ70に対応して、液体供給管の一例である供給針29も4つ備えられる。各インクカートリッジ70は、カバー11cが開かれた状態で筐体11a内の装着部20に対して白抜き矢印で示すように挿抜可能である。
【0027】
また、インクカートリッジ70の挿入方向Yr先側のカートリッジ保持体22の奥壁に供給針29が設けられ、挿入されるインクカートリッジ70の供給口81Kと供給針29とが接続されることによってインクカートリッジ70からインクが供給される。そして、供給針29に供給されたインクは、装着部20に備えられた不図示のポンプ(例えばダイアフラムポンプ)の動作によって、装着部20に形成されたインク流路からインク供給チューブTBを介して液体噴射ヘッド18へ送られる。なお、本実施形態では、インクカートリッジ70の挿入方向Yrは、用紙Pの搬送方向Yと反対方向とされている。
【0028】
一方、フレーム12の内部における支持台13よりも前方側から見て走査方向X右側の領域、すなわち印刷時において使用されないホームポジション領域には、上方が開口した有底箱状のキャップ19a及び不図示の吸引ポンプなどを有したメンテナンス装置19が設けられている。そして、プリンター11では、キャリッジ16がホームポジション領域に移動させられたのち、このメンテナンス装置19において、液体噴射ヘッド18から安定してインクが噴射するようにメンテナンスするメンテナンス動作が行われる。
【0029】
このようなプリンター11において行われる種々の動作は制御部によって制御される。本実施形態では、制御部はCPUやRAM,ROMなどの電気素子が実装された回路基板によって構成され、例えばフレーム12の後方に備えられた箱体12a内に配設される。
【0030】
さらに、制御部は、インクカートリッジ70からインクが供給される場合に、インクカートリッジ70に備えられた記憶装置の一例である不図示のメモリーとの間で、所定のカートリッジ情報(例えばインクカートリッジ70の識別データやインクカートリッジ70内のインクの残量などのデータ)の通信を行う。カートリッジ情報は、適宜制御部により更新される。また、インクの残量データは、必要に応じて筐体11aの表示部に表示される。
【0031】
この液体情報の通信は、具体的には、カートリッジ保持体22に備えられた端子などによって構成される電気接続部31と、インクカートリッジ70に備えられた端子を持つ回路基板で構成される電気接続部30との間での電気的な接続によって行われる。従って、装着部20にはインクカートリッジ70の数に応じて電気接続部31が4つ備えられる。なお、
図1では電気接続部31は1つのみ図示されている。
【0032】
図2に示すように、本実施形態のインクカートリッジ70は、挿入方向Yrの先頭側と反対の後側の第1ケース部材71と、挿入方向Yrの先頭側の第2ケース部材72と、によって構成されるケース部材73を有している。そして、インクカートリッジ70の挿入時の先頭側の前側面CS1、すなわち第2ケース部材72の前側面CS1に設けられた凹形状部75に、インクパック80の供給口81Kが露出している。また、第2ケース部材72には、その前側面CS1の上端部に傾斜面72Kが設けられ、この傾斜面72Kに電気接続部30が取り付けられている。
【0033】
なお、本実施形態では、装着部20において、挿入されるインクカートリッジ70に対応する位置に図示しないガイドリブが設けられ、インクカートリッジ70は装着部20のガイドリブに案内されて挿入される。すなわち、インクカートリッジ70の下側面CS3および上側面CS4には、幅方向の両端部において挿入方向Yrに沿って延在する上凸部70Eおよび下凸部70Dがそれぞれ形成されている。この上凸部70Eおよび下凸部70Dが、装着部20に設けられたガイドリブと走査方向Xにおいてそれぞれ当接することによって位置決めされながら移動することによって、インクカートリッジ70は装着部20において決められた位置に挿入される。この結果、供給口81Kは、供給針29に対する位置ずれが抑制され、適切に供給針29と接続されるようになっている。また、電気接続部30は電気接続部31に対する位置ずれが抑制され、適切に電気接続部31と接続されるようになっている。
【0034】
次に、インクカートリッジ70の内部構成について説明する。
図3に示すように、インクカートリッジ70は、第1ケース部材71と第2ケース部材72との2つの部材が組み合わされたケース部材73内に、液体収容体としてのインクパック80を収容している。なお、
図3に示したX,Yr,Z方向は、インクカートリッジ70をプリンター11に装着した姿勢での
図1のX,Yr,Z方向と同じである。
【0035】
第1ケース部材71は、インクパック80の挿抜が可能な開口領域71Sを有する略箱形状を有し、その下側面CS3と上側面CS4に、略三角柱形状の突起部71Fがそれぞれ形成されている。一方、第2ケース部材72には、その下側面CS3と上側面CS4に、突起部71Fが挿入可能な略矩形の孔部72Hがそれぞれ形成されている。そして、第1ケース部材71に対してその開口領域71Sを覆うように第2ケース部材72を移動させるのに伴って、第2ケース部材72の孔部72Hに第1ケース部材71の突起部71Fが内側から嵌り込むことによって第1ケース部材71に第2ケース部材72が組み付けられる。逆に、第2ケース部材72を第1ケース部材71に対して引き離すように引っ張ることによって、突起部71Fが孔部72Hから抜け出し、第2ケース部材72が第1ケース部材71から取り外される。
【0036】
インクパック80は、供給口81Kを持つ供給部材81の接合部82に対して液体収容部の一例である袋状のパック体91の開口側が接合されている。その内部はインクが収容可能なインク室IS(液体収容部)とされている。本実施形態では、パック体91は可撓性を有するシート部材で形成され、2枚のシート状のパック部材92A,92Bが、その外周四辺のうち三辺が溶着されてまず袋状に形成される。次に、溶着されない一辺により形成された袋の開口側に供給部材81の接合部82が挿入された状態で、供給部材81と一緒にその一辺が溶着されることによって、
図3において網掛け領域で示すようにパック体91の周囲に溶着部91Aが形成され、パック体91の内部がインク室ISとされる。そして、可撓性を有するパック体91は、インクの流出によるインク室ISの容積減少に伴って対向する2枚のパック部材92A,92B間の隙間が減少するように変形する。
【0037】
なお、本実施形態では、供給口81Kを持つ供給部材81、すなわち供給口81Kが設けられた供給部材81が、第2ケース部材72に対して相対的に回転することによって、第2ケース部材72に組み付けられるように構成されている。供給部材81は、供給口81Kに連通する筒状流路部85が設けられる。一対の被係合部86が筒状流路部85から突出している。そして筒状流路部85を、第2ケース部材72の凹形状部75に設けられた不図示の穴部に挿入した後、その軸線を中心に回転することによって、筒状流路部85に設けられた被係合部86と第2ケース部材72に設けられた係合部としての凹形状部75とが係合することによって固定されるように構成されている。このように筒状流路部85が凹形状部75に固定されることによって、インクパック80は第2ケース部材72に組み付けられる。
【0038】
次に、インクパック80の部材構成について説明する。
図4(a),(b)に示すように、インクパック80は、供給口81Kが設けられた供給部材81と、この供給部材81の接合部82に接合されたパック体91内のインク室IS内に、フィルター室60Fと脱気室60Dとを備える。なお、
図4(a),(b)のX,Yr,Z軸方向は、インクカートリッジ70をプリンターに装着した姿勢において、
図1のX,Yr,Z軸と同じである。また、
図4(b)は、
図4(a)のインクパック80を反転させた状態で図示されている。また、
図4(a),(b)ではパック体91が透視可能な状態で図示されている。
【0039】
本実施形態では、供給部材81に接続される接続部材61に、それぞれ一端が開口する空間が2つ形成されている。そしてそれぞれの空間の開口となる第1開口65および第2開口68を塞ぐように、インクの通過可能なフィルター66および気体の透過可能なフィルム69とがそれぞれ貼り付けられて、フィルター室60Fおよび脱気室60Dが形成されている。フィルター66とフィルム69とは、インクカートリッジ70が装着部20に装着された状態で走査方向Xとなるインクカートリッジ70の幅方向から見て互いに重なる位置、つまり接続部材61において互いに表裏関係となる位置に配設されている。
【0040】
なお、接続部材61には、インク室ISに初めてインクを注入する際の注入口62が設けられ、インクの注入後、この注入口62を囲むように設けられた環状リブ62aにパック部材92A,92Bが接合(溶着)されることによって注入口62はインク室ISとの連通が遮断されるように封止される。また、パック部材92Aはフィルター66と対面する側に位置し、パック部材92Bはフィルム69と対面する側に位置する。
【0041】
次に、
図4(a),(b)および
図5(a),(b)を参照して供給部材81と接続部材61とについて説明する。なお、
図5(a),(b)では、パック体91を省略して、供給部材81と接続部材61を図示している。また、
図5(a),(b)のX,Yr,Z軸方向は、インクカートリッジ70をプリンターに装着した姿勢において、
図1のX,Yr,Z軸と同じである。
【0042】
図5(a),(b)に示すように、本実施形態の接続部材61は、弁体93(逆止弁)を挟んで接着や嵌入によって供給部材81に取り付けられ、供給部材81と一体化されている。そして供給部材81の接続部材61と隣接する部分は、
図4(b)に示すように、パック体91が溶着等によって接合される接合部82とされている。接続部材61は、その外形が略直方体形状である。
【0043】
また、
図4(a)に示すように、供給部材81は、この接合部82における装着部20への挿入方向Yr側に、略矩形板状の本体81Aを持つ。本体81Aの長手方向の一端は矩形であるのに対して、他端は略L字形状のL字型部81Fが形成されている。供給部材81の本体81Aには、本体81AのL字型部81Fの端寄りの位置で、筒状流路部85が突設されている。
【0044】
接続部材61には、略平行四辺形状の第1開口65を有する第1凹部領域64が設けられる。そして、この第1凹部領域64の第1開口65を塞ぐように、インクが透過することによって通過可能であって、インク以外の異物の通過(透過)を抑制するフィルター66が接続部材61に貼り付けられることによって、フィルター室60Fが形成される。
【0045】
また、フィルター室60Fには、第1凹部領域64の底面に、供給部材81側に向かう先下がりの傾斜面64aが形成される。そして、第1凹部領域64の供給部材81側には、フィルター66を通過したインクが接続部材61から供給部材81に流出するためのインク流出口64Hが設けられる。従って、インク室ISに収容されたインクは、フィルター66を通過したのちフィルター室60Fに流入し、さらにインク流出口64Hを介して、供給部材81に設けられた筒状流路部85の先端に位置する供給口81Kへ流動する。
【0046】
すなわち、
図5(a),(b)において実線矢印で示すように、インク室ISからフィルター66を通過してフィルター室60Fに流入したインクは、インク流出口64Hに流入した後、弁体93を通過して供給部材81に設けられた供給流路82Fを流れ、この供給流路82Fと連通する筒状流路部85内に流入する。こうしてインク室IS内のインクは、フィルター66を通過したのち供給部材81に形成された供給流路82Fを介して供給口81Kまで導かれる。なお、弁体93は、インク室IS側から供給口81K側へのインクの流れを許容し、供給口81K側からインク室IS側へのインクの逆流を規制する逆止弁として機能する。
【0047】
なお、筒状流路部85には、
図5(a),(b)に示すように、供給口81K側から順に、供給口ばね87、供給口ばね座88、供給口シールゴム89が挿入され、最後に、供給口フィルム94が筒状流路部85の先端に溶着などによって接合される。この供給口フィルム94の接合によって供給口81Kがシールされた状態となる。そして、この筒状流路部85の先端に形成された供給口81Kに対して供給針29が挿入されることによって供給口フィルム94のシールが破られるとともに、供給口シールゴム89と当接してインクの流路を遮断していた供給口ばね座88が供給口シールゴム89から離れるように押し込まれる。この結果、供給口81Kにおいて供給針29の挿入によってインクの流動が可能な隙間が形成され、形成された隙間から挿入された供給針29に対してインクが流入する。
【0048】
また、本実施形態では、フィルター室60Fとなる第1凹部領域64およびフィルター66は、接続部材61において、筒状流路部85の軸線方向から見て、供給口81Kとは重ならない位置に配設されている。
【0049】
さらに本実施形態では、接続部材61において、略矩形の第2開口68を第1開口65とは反対側に有する第2凹部領域67が、第1凹部領域64と重なるように設けられる。この第2凹部領域67には、第1凹部領域64の傾斜面64aとほぼ重なる位置に、供給部材81側に向かって第2開口68に近づく先上がりの傾斜面67aが設けられている。そして、インク中に溶存する気体やインク中に発生した気泡が通過可能なフィルム69が、減圧雰囲気中において第2開口68を塞ぐように接続部材61に貼り付けられることによって、第2凹部領域67は大気圧よりも低い圧力を有する密閉空間とされる。こうして、第2凹部領域67は脱気室60Dを構成する。
【0050】
次に、
図6を参照して、本実施形態のインクカートリッジ70においてインクを再注入して再生する作用、すなわちインクカートリッジ70の再生処理について説明する。この処理は、インクカートリッジ70のカートリッジ情報に基づいて、インクが無くなったと判定されたインクカートリッジ70に対して行われる。例えば、インクが無くなったインクカートリッジ70を回収した回収者によって行われる。回収者は、プリンター製造者であってもよい。
【0051】
図6に示すように、このインクカートリッジの再生処理では、まずステップS11にて、第2ケース部材72を第1ケース部材71から取り外す処理を行う。回収者は、再生の対象となるインクカートリッジ70の第2ケース部材72を第1ケース部材71から引き抜いて取外す。このとき、本実施形態では、インクパック80は第2ケース部材72に取り付けられているので、第2ケース部材72の引き抜きに伴って、第1ケース部材71の開口領域71Sから抜き取られる。
【0052】
次に、ステップS12にて、インクパックを第2ケース部材72から取り外す処理を行う。具体的には、インクパック80の筒状流路部85に形成された被係合部86と、凹形状部75との係合を、例えば第2ケース部材72に対してインクパック80を回転することによって解除してインクパック80を第2ケース部材72から取り外す。
【0053】
次に、ステップS13にて、供給口81Kとインクパック80内とが貫通する貫通孔KHを形成する処理を行う(迂回流路形成ステップ)。ここでは、供給口81Kから、筒状流路部85の軸線方向に沿って直線状に、断面が円形の孔を供給部材81にあける。なお、本実施形態では、この処理において、筒状流路部85に、供給口ばね87、供給口ばね座88、供給口シールゴム89が挿入された状態のまま貫通孔KHの形成を行う。
【0054】
図7(a),(b)に示すように、一例として本実施形態では回転ドリルを用いて貫通孔KHを形成する。すなわち、供給口81Kの中心とドリルDRの軸心とが略一致する状態で筒状流路部85の軸線方向に沿ってドリルDRを回転させながら供給口81Kから供給部材81に挿入させる。この結果、ドリルDRは供給部材81と、供給部材81に取り付けられた接続部材61を削って回転進入することによって、供給口81Kとインク室ISとが直接連通する直線状の貫通孔KHが形成される。この貫通孔KHは、
図7(b)において破線矢印で示すように、フィルター室60Fからインク流出口64Hを介してインクが流れる供給流路82Fに対して合流して、供給口81Kに至るインクの流路となる。すなわち、貫通孔KHは、供給流路82Fとは異なり、インク室IS内のインクがフィルター66を通過せずに供給口81Kに流れる迂回流路となる。
【0055】
接続部材61に形成されたこの貫通孔KHは、フィルター66が筒状流路部85の軸線方向から見て供給口81Kとは重ならない位置に配設されている。すなわち、貫通孔KHは、接続部材61のフィルター66とは干渉しない空間的に離れた位置に形成される。また、本実施形態では、接続部材61に形成された貫通孔KHはフィルター室60Fとも干渉しない空間的に離れた位置に形成される。
【0056】
さらに、貫通孔KHは、インクが減少しているインクパック80においてパック部材92A,92Bが接触する確率の高い接続部材61の外表面から離れた内部に形成される。従って、貫通孔KHの形成時にドリルDRがパック部材92A,92Bの破損を発生させることを抑制する。
【0057】
なお、貫通孔KHは、脱気室60Dと干渉して脱気室60Dとインク室ISが直接連通することが起こり得る。この場合、脱気室60Dの負圧状態が喪失されることになるものの、通常、再生処理前のインクパック80に収容されたインクに含まれる気体(気泡)の吸収によって、既に脱気室60Dは負圧状態がほぼ解消されているため、脱気室60Dと貫通孔KHとの連通は実用上許容される。
【0058】
次いで、
図6のステップS14にて、供給口81Kへインクを注入する処理を行う(注入ステップ)。
図8に示すように、ここでの処理では、回収者は、インクパック80を、供給口81Kの開口が鉛直方向の反重力方向側となる姿勢とする。この姿勢で、貫通孔KHからインクをインク室IS内に注入する。この注入処理において、インクは供給流路82Fに流れるよりも重力方向側へ真っ直ぐに延びる直線状の貫通孔KHに沿って流れやすい。従って、貫通孔KHを介して円滑にパック体91内のインク室ISへインクを注入可能である。
【0059】
なお、
図8では図示を省略しているが、供給口81Kへのインクの注入に際して、供給口81Kに、例えば漏斗などのインクの注入を容易にする器具を挿入して注入作業を行うようにしてもよい。また、インクの注入に際して、インクを加圧するようにしてもよい。
【0060】
次に、
図6のステップS15にて、供給口81Kをシールする処理を行う。ここでは、インクを注入した後の供給口81Kを再び供給口フィルム94でシールする。このシールによって、インクパック80内に注入されたインクが供給口81Kから漏れ出ないようになる。
【0061】
なお、ステップS13での貫通孔KHの形成処理に際して、供給口81Kに挿入された供給口ばね87、供給口ばね座88、供給口シールゴム89を前もって取り外すようにしてもよい。こうすることによって、貫通孔KHの形成が容易になる。そして、ステップS14でのインクの注入処理後であってステップS15での供給口81Kのシール処理の前に、供給口81Kへ再び取り外した供給口ばね87、供給口ばね座88、供給口シールゴム89を挿入するようにしてもよいし、新たな供給口ばね87、供給口ばね座88、供給口シールゴム89を挿入するようにしてもよい。
【0062】
次に、ステップS16にて、インクパック80を第2ケース部材72に取り付ける処理を行う。ここでは、ユーザーが、インクが再注入されたインクパック80の筒状流路部85を第2ケース部材72の凹形状部75に設けられた穴部に挿入したのち供給部材81を回転させ、筒状流路部85を凹形状部75において固定させて取り付ける。
【0063】
次いで、ステップS17にて、インクパック80を第1ケース部材71内に挿入しながら、第2ケース部材72を第1ケース部材71に取り付ける処理を行う。ここでは、回収者が、インクパック80を開口領域71Sから第1ケース部材71内へ挿入するとともに、第2ケース部材72を第1ケース部材71に接近するようにスライド移動させる。このスライド移動によって、第2ケース部材72の孔部72Hに第1ケース部材71の突起部71Fが嵌り込むことによって、第2ケース部材72が第1ケース部材71に組み付けられ、インクカートリッジ70の再生処理が終了する。
【0064】
上記説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)インクカートリッジ70を、フィルター66が異物で目詰まりした状態になっても、パック体91から迂回流路を介して供給口81Kへインクを円滑に流動させることができるように再生可能である。
【0065】
(2)迂回流路を、供給部材81に貫通孔KHを設けることによって形成するので、パック体91内のインクを供給口81Kへ流す迂回流路を容易に形成することができる。
(3)供給口81Kから筒状流路部85に沿う方向へ直線状に貫通孔KHを形成するという容易な方法で、フィルター66の破損を抑制しつつ迂回流路を形成することができる。
【0066】
(4)貫通孔KHを介して供給口81Kからパック体91内へインクを注入するので、別途パック体91に別途インクの注入口を形成することなく、フィルター66を介さない迂回流路を用いて、供給口81Kからパック体91内へインクを円滑に流動させて注入することができる。
【0067】
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・上記実施形態において、迂回流路は、貫通孔KH以外によって形成されてもよい。例えば、
図6におけるステップS13において、貫通孔KHではなく供給口81Kとインクパック80内とが貫通する溝部を迂回流路として形成してもよい。
【0068】
図9(a),(b)にその一例を示すように、本変形例では、
図6におけるステップS13において、インクパック80に対して、供給部材81の接合部82から接続部材61に至る所定長さの溝部MFを、例えばエンドミルなどを用いて形成する処理を行う。この溝部MFは、供給部材81内に形成された供給流路82Fと連通する深さで形成される。そして、溝部MFを形成したのち、溝部MFの形成によって破れたパック部材92Aの開口を塞ぐように補修シート96を接着剤などによってパック部材92Aに接合する処理を行う。
【0069】
この処理の結果、溝部MFは、
図9(b)において破線矢印で示すように、実線矢印で示した供給流路82Fを介したインクの流れとは別に、フィルター66を通過することなく、パック体91内のインク室ISから供給口81Kへインクが流れる迂回流路が形成される。
【0070】
あるいは、迂回流路の他の変形例として、ここでは図示しないが、例えばインクの流動可能なチューブを用い、その一端を筒状流路部85内に挿入して供給口81Kと連通させ、その他端をパック体91内に挿入してインク室ISと連通させる構成が採用されてもよい。こうすることによって、チューブは、インク室ISと供給口81Kとの間でインクがフィルター66を介することなく流れる迂回流路として機能する。
【0071】
・上記実施形態において、貫通孔KHは必ずしも直線状に形成されなくてもよい。例えば、曲線状であってもよいし、折れ線状であってもよい。要は、供給口81Kとパック体91内とをフィルター66を介さず連通する状態が形成可能であれば、貫通孔は、その加工手段や加工方法に応じた形状で形成されてもよい。
【0072】
・上記実施形態においては、
図6に示すステップS14の注入ステップにおいて、必ずしも回収者は、インクパック80の供給口81Kから貫通孔KHを介してインクをパック体91内に注入しなくてもよい。例えば、パック体91に別途開口を設け、この開口からパック体91内へインクを注入してもよい。もとより、注入後は開口からインクが漏れ出ないように封止する。
【0073】
・上記実施形態において、脱気室60Dは必ずしも形成されなくてもよい。インクに気体が含まれる確率が低い場合は、脱気室60Dは不要である。この場合、例えば接続部材61において、第2凹部領域67が設けられなくてもよい。あるいは、脱気室60Dは、第2凹部領域67が設けられていても、第2開口68においてフィルム69が貼り付けられない構成とされてもよい。
【0074】
・上記実施形態のインクカートリッジ70において、電気接続部30は必ずしも備えられなくてもよい。また電気接続部30としての回路基板は、装着部20への挿入方向Yrに対して、必ずしも傾斜していなくてもよい。例えば、挿入方向Yrに対して直交する方向とされてもよい。
【0075】
・上記実施形態において、装着部20は、プリンター11の筐体11aの外側に備えられる構成であってもよい。筐体11aの外部に設けられた装着部20から筐体11aの内部の液体噴射ヘッド18にインクを供給する場合には、インクを供給するためのインク供給チューブTBを筐体11aの外部から内部へ引き回す必要がある。よって、この場合には、筐体11aにインク供給チューブTBを挿通可能な孔や切り欠きを設けることが好ましい。あるいは筐体11aに設けられた隙間を通してインク供給チューブTBを筐体11aの外部から内部へ引き回しても良い。このようにすれば、インク供給チューブTBのインク流路を用いた液体噴射ヘッド18に対するインクの供給を容易に行うことができる。
【0076】
・液体噴射ヘッド18は、用紙Pの搬送方向と交差する方向にキャリッジ16と共に往復移動してインクを噴射する所謂シリアルヘッドタイプのものに限らない。すなわち、長さサイズが用紙Pの幅サイズに対応した全体形状をなし、その長手方向が用紙Pの搬送方向Yと交差する幅方向に沿うように固定配置された状態で、その長手方向の略全体に亘るように設けられた多数のノズルから媒体に向けて液体を噴射する所謂ラインヘッドタイプのものであってもよい。
【0077】
・上記実施形態において、プリンター11は、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体消費装置であってもよい。なお、液体消費装置から微小量の液滴となって吐出される液体の状態としては、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体は、液体消費装置から噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体を含むものとする。また、物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなども含むものとする。液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体消費装置の具体例としては、例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造等に用いられる電極材や色材等の材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体消費装置がある。また、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体消費装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体消費装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体消費装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体消費装置であってもよい。また、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体消費装置であってもよい。