特許第6223433号(P6223433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6223433高ダイナミックレンジ検出器補正アルゴリズム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6223433
(24)【登録日】2017年10月13日
(45)【発行日】2017年11月1日
(54)【発明の名称】高ダイナミックレンジ検出器補正アルゴリズム
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/06 20060101AFI20171023BHJP
   G01N 27/62 20060101ALI20171023BHJP
   H01J 49/42 20060101ALI20171023BHJP
【FI】
   H01J49/06
   G01N27/62 E
   H01J49/42
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-512142(P2015-512142)
(86)(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公表番号】特表2015-517724(P2015-517724A)
(43)【公表日】2015年6月22日
(86)【国際出願番号】IB2013000729
(87)【国際公開番号】WO2013171555
(87)【国際公開日】20131121
【審査請求日】2016年1月22日
(31)【優先権主張番号】61/648,653
(32)【優先日】2012年5月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】コリングス, ブルース アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ディーマ, マーシャン
(72)【発明者】
【氏名】イボセフ, ゴルダナ
【審査官】 杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04835703(US,A)
【文献】 特表2000−513494(JP,A)
【文献】 Y. Alan et al.,Reduced electron multiplier dead time in ion counting mass spectrometry,Review of Scientific Insturuments,1993年,Vol.64,pp.1661-1662
【文献】 M. Lampton et al.,Counting efficiency of systems having both paralyzable and nonparalyzable elements,Review of Scientific Insturuments,1985年,Vol.56,pp.164-165
【文献】 J. M. Hayes et al.,High Precision Pulse Counting: Limitations and Optimal Conditions,Analytical Chemistry,1977年 2月,Vol.49, No.2,pp.306-311
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N27/60−27/70
27/92
G01T1/00−1/16
1/167−7/12
H01J40/00−49/48
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
麻痺しない電子機器が高計数率で計数するときに前記麻痺しない電子機器の特性の結果である不感時間延長を呈する質量分析計の非麻痺型検出システムのための不感時間補正を行うためのシステムであって、前記システムは、
イオン検出器と、比較器/弁別器と、単安定回路と、カウンタとを含む質量分析計の非麻痺型検出システムであって、前記単安定回路は、トリガするために、前記比較器/弁別器からのパルスの立ち上がりエッジを要求し、前記パルスが低になった後のみ、再び、トリガされることができ、第1の比較器/弁別器パルスによって開始された不感時間の終了直前に到達する第2の比較器/弁別器パルスが、前記不感時間を前記第2の比較器/弁別器パルスの立ち下がりエッジまで延長することを可能にする、質量分析計の非麻痺型検出システムと、
前記カウンタとデータ通信するプロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、前記カウンタから観察されたイオン計数を受信し、前記観察されたイオン計数から観察されたイオン計数率を計算し、前記不感時間の延長を考慮した調整係数関数をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計数率のための式を使用して、前記観察されたイオン計数率の不感時間補正を行う、システム。
【請求項2】
前記調整係数関数は、前記観察されたイオン計数率の非線形関数である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記調整係数関数(adj_fac)は、
【数5】

を含み、ここで、y、abは、係数であり、observed_count_rateは、前記観察されたイオン計数率を示す、請求項1〜2のいずれかに記載のシステム。
【請求項4】
前記係数y、a、およびbは、前記調整係数関数を、較正試料のための調整係数対観察された計数率のプロットに適合することによって判定される、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
調整係数関数(adj_fac)をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計数率(true_count_rate)のための式は、
【数6】

を含み、observed_count_rateは、前記観察されたイオン計数率を示す、請求項1〜4のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記調整係数関数は、前記質量分析計に依存する、請求項1〜5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記調整係数関数は、前記イオン検出器バイアス電位および前記弁別器閾値レベルに依存する、請求項1〜6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記質量分析計は、1つ以上の四重極を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
麻痺しない電子機器が高計数率で計数するときに前記麻痺しない電子機器の特性の結果である不感時間延長を呈する質量分析計の非麻痺型検出システムのための不感時間補正を行うための方法であって、前記方法は、
イオン検出器と、比較器/弁別器と、単安定回路と、カウンタとを含む質量分析計の非麻痺型検出システムを使用して、観察されたイオン計数を求めることであって、前記単安定回路は、トリガするために、前記比較器/弁別器からのパルスの立ち上がりエッジを要求し、前記パルスが低になった後のみ、再び、トリガされることができ、第1の比較器/弁別器パルスによって開始された不感時間の終了直前に到達する第2の比較器/弁別器パルスが、前記不感時間を前記第2の比較器/弁別器パルスの立ち下がりエッジまで延長することを可能にする、ことと、
プロセッサを使用して、前記観察されたイオン計数から観察されたイオン計数率を計算することと、
前記プロセッサを使用して、前記不感時間パルスの延長を考慮した調整係数関数をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計数率のための式を使用して前記観察されたイオン計数率の不感時間補正を行うことによって、真のイオン計数率を計算することと
を含む、方法。
【請求項10】
前記調整係数関数は、前記観察されたイオン計数率の非線形関数である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記調整係数関数(adj_fac)は、
【数7】

を含み、ここで、y、abは、係数であり、observed_count_rateは、前記観察されたイオン計数率を示す、請求項9〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記係数y、a、およびbは、前記調整係数関数を、較正試料のための調整係数対観
察された計数率のプロットに適合することによって判定される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
調整係数関数(adj_fac)をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計
数率(true_count_rate)のための式は、
【数8】

を含み、observed_count_rateは、前記観察されたイオン計数率を示す、請求項9〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記調整係数関数は、前記質量分析計に依存する、請求項9〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記調整係数関数は、前記イオン検出器バイアス電位および前記弁別器閾値レベルに依存する、請求項9〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記質量分析計は、1つ以上の四重極を含む、請求項9〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
プログラムが記録されたコンピュータ可読記録媒体であって、前記プログラムは、命令を有し、前記命令は、麻痺しない電子機器が高計数率で計数するときに前記麻痺しない電子機器の特性の結果である不感時間延長を呈する質量分析計の非麻痺型検出システムのための不感時間補正を行うための方法を行うようにプロセッサ上で実行され前記方法は、
システムを提供することであって、前記システムは、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを備え、前記個別のソフトウェアモジュールは、測定モジュールおよび補正モジュールを備える、ことと、
前記測定モジュールを使用して、イオン検出器と、比較器/弁別器と、単安定回路と、カウンタとを含む質量分析計の非麻痺型検出システムから、観察されたイオン計数を求めることであって、前記単安定回路は、トリガするために、前記比較器/弁別器からのパルスの立ち上がりエッジを要求し、前記パルスが低になった後のみ、再び、トリガされることができ、第1の比較器/弁別器パルスによって開始された不感時間の終了直前に到達する第2の比較器/弁別器パルスが、前記不感時間を前記第2の比較器/弁別器パルスの立ち下がりエッジまで延長することを可能にする、ことと、
前記観察されたイオン計数から観察されたイオン計数率を計算することと、
前記補正モジュールを使用して、前記不感時間の延長を考慮した調整係数関数をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計数率のための式を使用して前記観察されたイオン計数率の不感時間補正を行うことによって、真のイオン計数率を計算することと
を含む、コンピュータ可読記録媒体
【請求項18】
前記調整係数関数は、前記観察されたイオン計数率の非線形関数である、請求項17に記載のコンピュータ可読記録媒体
【請求項19】
前記調整係数関数(adj_fac)は、
【数9】

を含み、ここで、y、abは、係数であり、observed_count_rateは、前記観察されたイオン計数率を示す、請求項17〜18のいずれかに記載のコンピュータ可読記録媒体
【請求項20】
調整係数関数(adj_fac)をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計数率(true_count_rate)のための式は、
【数10】

を含み、observed_count_rateは、前記観察されたイオン計数率を示す、請求項17〜19のいずれかに記載のコンピュータ可読記録媒体
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2012年5月18日に出願された米国仮特許出願第61/648,653号の利益を主張する。上記文献の内容は、その全体として参照することによって本明細書において援用される。
【0002】
(導入)
四重極質量分析計内のイオン検出システムは、イオン検出器と、電流/電圧前置増幅器と、比較器/弁別器と、単安定回路と、カウンタとから作製される。イオン検出器は、それに衝突するイオン毎に電流パルスを生成し、これらの電流パルスは、電流/電圧前置増幅器に通過され、そこで、電圧パルスに変換される。電圧パルスは、電圧パルスの立ち下がり区間が弁別器閾値を超えると、論理パルスを生成する、比較器/弁別器に通過される。論理パルスは、電圧パルスの立ち下がりエッジが、弁別器閾値レベルを下回って降下すると終了する。比較器/弁別器は、閾値を超える電圧パルスを伝送することのみによって、雑音を除去する。論理パルスは、設定時間周期の論理パルスをもたらす、単安定回路に、次いで、観察された計数を記録する、カウンタに通過する。単安定回路は、あるパルスの到達後、別のパルスの到達まで構築される、臨界期を有する。これは、不感時間または不感時間周期と呼ばれる。
【0003】
検出システム不感時間は、例えば、17.5nsである。単安定回路からの出力は、8.75ns幅の論理パルスである。しかしながら、単安定回路は、比較器/弁別器から別のパルスを受け取るための準備ができる前に、さらに8.75ns(論理パルス幅の2倍)要する。単安定回路はまた、別の論理パルスをもたらし得る前に、さらに100ps要し得る。したがって、単安定回路論理パルスは、不感時間の約半分だけの幅を有する。
【0004】
不感時間損失は、飽和とは異なる。飽和は、検出器が入力においていくつかのイオンを受容後、出力パルスをもたらすために十分な電流を迅速に供給することができないときに生じる。その場合、検出器から出力される電流パルスは、振幅が減少し、弁別器閾値レベルを下回り始め、検出されない。検出器におけるイオンの到達は、ポアソン分布を使用して説明され得る、時間的にランダムなプロセスと見なされる。観察された計数率の真の計数率への変換のために使用される式は、検出器の出力を取り扱うために採用される信号取扱電子機器のタイプに依存する。
【0005】
あまりに多くのイオンが、ある時間周期内に到達し、検出器が、前述のように飽和しないとき、その損失は、多くの場合、不感時間損失と称される。これは、電流パルスが、依然として、存在するが、単に、計数されないためである。質量分析計の検出器の出力を測定するいくつかの異なる方法が、存在する。検出器の出力を測定する方法の1つは、パルス計数システムを使用する。パルス計数システムでは、1つのイオンは、例えば、1つのパルスをもたらす。
【0006】
あるタイプのパルス計数システムは、弁別器からのパルスを計数する。この場合、弁別器からの論理パルスの幅が、弁別器に入力されるアナログ信号が閾値を上回ったままである時間によって判定されるため、設定不感時間は、存在しない。計数率は、不感時間損失に対して補正されず、線形性からの逸脱が、概して、数百万cpsを上回って生じる。
【0007】
別のタイプのパルス計数システムは、麻痺型システムである。麻痺型システムでは、検出器からの着信パルスの立ち下がり区間は、パルスが、前のパルスの立ち下がり区間の一定不感時間周期(すなわち、17.5ns)内で到達すると、一定不感時間周期(すなわち、17.5ns)だけ、不感時間を延長させる。十分に高い計数率では、信号取扱電子機器からの出力は、延長された時間周期の間、高いままであって、複数のパルスは、単一パルスとして計数される。十分に高い真の計数率では、観察された計数率は、パルスがますます重複されるにつれて、減少し始める。
【0008】
さらに別のタイプのパルス計数システムは、非麻痺型システムである。非麻痺型システムでは、前のパルスの一定不感時間周期(すなわち、17.5ns)内の検出器からのパルスの到達は、付加的一定不感時間周期(すなわち、17.5ns)だけ不感時間を延長させない。システムは、計数されたパルスからの不感時間が終了すると、計数する準備ができる。この場合、真の計数率が増加するにつれて、観察された計数率も増加する。
【0009】
しかしながら、高計数率では、麻痺しない電子機器を採用する、高ダイナミックレンジ検出システムもまた、麻痺しない電子機器の特性の結果である、不感時間延長を呈し得る。その結果、高計数率で計数するために、非麻痺型高ダイナミックレンジ検出システムの不感時間補正のためのシステムおよび方法が、必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
非麻痺型検出システムは、イオン検出器710と、比較器/弁別器720と、単安定回路730と、カウンタ740とを含む。非麻痺型検出システムは、高計数率では、不感時間延長を呈する。不感時間の延長は、単安定回路730が、トリガするために立ち上がりエッジを要求し、比較器/弁別器720からの出力パルスが低になった後のみ、再び、トリガされることができるために生じる。これは、第1の比較器/弁別器パルスによって開始された不感時間の終了直前に到達する第2の比較器/弁別器パルスが、不感時間を第2の比較器/弁別器パルスの立ち下がりエッジまで延長させることを可能にする。比較器/弁別器出力が低になった後、システムが反応し得る前に、ある周期が存在してもよい。周期は、約100psであってもよい。
【0011】
種々の実施形態では、調整係数関数は、質量分析計に依存する。質量分析計が、長い不感時間を有する場合、係数は、短い不感時間を伴うシステムのために使用されるものと異なるであろう。例えば、調整係数関数の係数は、質量分析計毎に、較正実験から判定される。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
高計数率で麻痺しない電子機器の特性の結果である不感時間延長を呈する質量分析計の非麻痺型検出システムのための不感時間補正を行うためのシステムであって、前記システムは、
イオン検出器と、比較器/弁別器と、単安定回路と、カウンタとを含む質量分析計の非麻痺型検出システムであって、前記単安定回路は、トリガするために、前記比較器/弁別器からのパルスの立ち上がりエッジを要求し、前記パルスが低になった後のみ、再び、トリガされることができ、第1の比較器/弁別器パルスによって開始された不感時間の終了直前に到達する第2の比較器/弁別器パルスが、前記不感時間を前記第2の比較器/弁別器パルスの立ち下がりエッジまで延長することを可能にする、質量分析計の非麻痺型検出システムと、
前記カウンタとデータ通信するプロセッサと
を備え、
前記プロセッサは、前記カウンタから観察されたイオン計数を受信し、前記観察されたイオン計数から観察されたイオン計数率を計算し、前記不感時間の延長を考慮した調整係数関数をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計数率のための式を使用して、前記観察されたイオン計数率の不感時間補正を行う、システム。
(項目2)
前記調整係数関数は、前記観察されたイオン計数率の非線形関数である、先行システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目3)
前記調整係数関数(adj_fac)は、
(数5)

を含み、ここで、y、a、およびbは、係数である、先行システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目4)
前記係数y、a、およびbは、前記調整係数関数を、較正試料のための調整係数対観察された計数率のプロットに適合することによって判定される、先行システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目5)
調整係数関数(adj_fac)をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計数率(true_count_rate)のための式は、
(数6)

を含む、先行システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目6)
前記調整係数関数は、前記質量分析計に依存する、先行システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目7)
前記調整係数関数は、前記イオン検出器バイアス電位および前記弁別器閾値レベルに依存する、先行システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目8)
前記質量分析計は、1つ以上の四重極を含む、先行システム項目に記載の任意の組み合わせのシステム。
(項目9)
高計数率で麻痺しない電子機器の特性の結果である不感時間延長を呈する質量分析計の非麻痺型検出システムのための不感時間補正を行うための方法であって、前記方法は、
イオン検出器と、比較器/弁別器と、単安定回路と、カウンタとを含む質量分析計の非麻痺型検出システムを使用して、観察されたイオン計数を求めることであって、前記単安定回路は、トリガするために、前記比較器/弁別器からのパルスの立ち上がりエッジを要求し、前記パルスが低になった後のみ、再び、トリガされることができ、第1の比較器/弁別器パルスによって開始された不感時間の終了直前に到達する第2の比較器/弁別器パルスが、前記不感時間を前記第2の比較器/弁別器パルスの立ち下がりエッジまで延長することを可能にする、ことと、
プロセッサを使用して、前記観察されたイオン計数から観察されたイオン計数率を計算することと、
前記プロセッサを使用して、前記不感時間の延長パルスを考慮した調整係数関数をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計数率のための式を使用して前記観察されたイオン計数率の不感時間補正を行うことによって、真のイオン計数率を計算することと
を含む、方法。
(項目10)
前記調整係数関数は、前記観察されたイオン計数率の非線形関数である、先行方法請求項に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目11)
前記調整係数関数(adj_fac)は、
(数7)

を含み、ここで、y、a、およびbは、係数である、先行方法項目に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目12)
前記係数y、a、およびbは、前記調整係数関数を、較正試料のための調整係数対観察された計数率のプロットに適合することによって判定される、先行方法項目に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目13)
調整係数関数(adj_fac)をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計数率(true_count_rate)のための式は、
(数8)

を含む、先行方法項目に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目14)
前記調整係数関数は、前記質量分析計に依存する、先行方法項目に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目15)
前記調整係数関数は、前記イオン検出器バイアス電位および前記弁別器閾値レベルに依存する、先行方法項目に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目16)
前記質量分析計は、1つ以上の四重極を含む、先行方法項目に記載の任意の組み合わせの方法。
(項目17)
非一過性かつ有形のコンピュータ可読記憶媒体を備えるコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータ可読記憶媒体のコンテンツは、高計数率で麻痺しない電子機器の特性の結果である不感時間延長を呈する質量分析計の非麻痺型検出システムのための不感時間補正を行うための方法を行うようにプロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含む、前記方法は、
システムを提供することであって、前記システムは、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを備え、前記個別のソフトウェアモジュールは、測定モジュールおよび補正モジュールを備える、ことと、
前記測定モジュールを使用して、イオン検出器と、比較器/弁別器と、単安定回路と、
カウンタとを含む質量分析計の非麻痺型検出システムから、観察されたイオン計数を求めることであって、前記単安定回路は、トリガするために、前記比較器/弁別器からのパルスの立ち上がりエッジを要求し、前記パルスが低になった後のみ、再び、トリガされることができ、第1の比較器/弁別器パルスによって開始された不感時間の終了直前に到達する第2の比較器/弁別器パルスが、前記不感時間を前記第2の比較器/弁別器パルスの立ち下がりエッジまで延長することを可能にする、ことと、
前記観察されたイオン計数から観察されたイオン計数率を計算することと、
前記補正モジュールを使用して、前記不感時間の延長を考慮した調整係数関数をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計数率のための式を使用して前記観察されたイオン計数率の不感時間補正を行うことによって、真のイオン計数率を計算することと
を含む、コンピュータプログラム製品。
(項目18)
前記調整係数関数は、前記観察されたイオン計数率の非線形関数である、先行コンピュータプログラム製品項目に記載の任意の組み合わせのコンピュータプログラム製品。
(項目19)
前記調整係数関数(adj_fac)は、
(数9)

を含み、ここで、y、a、およびbは、係数である、先行コンピュータプログラム製品項目に記載の任意の組み合わせのコンピュータプログラム製品。
(項目20)
調整係数関数(adj_fac)をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計数率(true_count_rate)のための式は、
(数10)

を含む、先行コンピュータプログラム製品項目に記載の任意の組み合わせのコンピュータプログラム製品。
【0012】
当業者は、後述の図面が、例証目的にすぎないことを理解するであろう。図面は、本教示の範囲をいかようにも制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、種々の実施形態による、コンピュータシステムを図示する、ブロック図である。
図2図2は、種々の実施形態による、測定された計数率対不感時間が補正されていないレセルピンの第2、第3、および第4の同位体に基づいて計算された真の計数率の逸脱の例示的プロットである。
図3図3は、種々の実施形態による、非麻痺型システムのための不感時間補正式(1)を使用して、真の計数率に変換された図2のために使用されるデータの例示的プロットである。
図4図4は、種々の実施形態による、不感時間パルスをもたらすエッジトリガ回路が、どのように不感時間パルスを延長させ得るかを示す、検出システムの例示的タイミング図である。
図5図5は、種々の実施形態による、計算された不感時間調整係数に対する指数関数適合の例示的プロットである。
図6図6は、種々の実施形態による、非麻痺型システムのための調整係数を含む、不感時間補正式(2)を使用して、真の計数率に変換された図2のために使用されるデータの例示的プロットである。
図7図7は、種々の実施形態による、高計数率で麻痺しない電子機器の特性の結果である、不感時間延長を呈する、質量分析計の非麻痺型検出システムのための不感時間補正を行うためのシステムである。
図8図8は、高計数率で麻痺しない電子機器の特性の結果である、不感時間延長を呈する、質量分析計の非麻痺型検出システムのための不感時間補正を行うための方法を示す、例示的流れ図である。
図9図9は、種々の実施形態による、高計数率で麻痺しない電子機器の特性の結果である、不感時間延長を呈する、質量分析計の非麻痺型検出システムのための不感時間補正を行うための方法を行う、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを含む、システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本教示の1つ以上の実施形態を詳細に説明する前に、当業者は、本教示が、その用途において、以下の発明を実施するための形態に記載される、または図面に例証される、構造、構成要素の配列、およびステップの配列の詳細に制限されないことを理解するであろう。また、本明細書で使用される表現および専門用語は、説明の目的のためであって、制限としてみなされるべきではないことを理解されたい。
【0015】
コンピュータ実装システム
図1は、本教示の実施形態が実装され得る、コンピュータシステム100を例証する、ブロック図である。コンピュータシステム100は、情報を通信するためのバス102または他の通信機構と、情報を処理するために、バス102と結合されたプロセッサ104と、を含む。コンピュータシステム100はまた、プロセッサ104によって実行される命令を記憶するために、バス102に結合される、ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶デバイスであり得る、メモリ106を含む。メモリ106はまた、プロセッサ104によって実行される命令の実行の間、一時的変数または他の中間情報を記憶するために使用されてもよい。コンピュータシステム100はさらに、プロセッサ104のための静的情報および命令を記憶するために、バス102に結合された読取専用メモリ(ROM)108または他の静的記憶デバイスを含む。磁気ディスクまたは光ディスク等の記憶デバイス110は、情報および命令を記憶するために、提供され、バス102に結合される。
【0016】
コンピュータシステム100は、情報をコンピュータユーザに表示するために、バス102を介して、ブラウン管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイ112に結合されてもよい。英数字および他のキーを含む、入力デバイス114は、情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信するために、バス102に結合される。別のタイプのユーザ入力デバイスは、方向情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信し、ディスプレイ112上のカーソル移動を制御するためのマウス、トラックボール、またはカーソル方向キー等のカーソル制御116である。本入力デバイスは、典型的には、デバイスに、平面において、位置を指定可能にする、2つの軸、すなわち、第1の軸(すなわち、x)および第2の軸(すなわち、y)において、2自由度を有する。
【0017】
コンピュータシステム100は、本教示を行うことができる。本教示のある実装によると、結果は、メモリ106内に含有される1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行する、プロセッサ104に応答して、コンピュータシステム100によって提供される。そのような命令は、記憶デバイス110等の別のコンピュータ可読媒体から、メモリ106内に読み込まれてもよい。メモリ106内に含有される命令のシーケンスの実行は、プロセッサ104に、本明細書に説明されるプロセスを行わせる。代替として、有線回路が、本教示を実装するためのソフトウェア命令の代わりに、またはそれと組み合わせて、使用されてもよい。したがって、本教示の実装は、ハードウェア回路およびソフトウェアの任意の具体的組み合わせに制限されない。
【0018】
用語「コンピュータ可読媒体」は、本明細書で使用されるように、実行のために、命令をプロセッサ104に提供する際に関与する、任意の媒体を指す。そのような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含むが、それらに制限されない、多くの形態をとってもよい。不揮発性媒体は、例えば、記憶デバイス110等の光学または磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メモリ106等の動的メモリを含む。伝送媒体は、バス102を備える配線を含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含む。
【0019】
コンピュータ可読媒体の一般的形態として、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD−ROM、デジタルビデオディスク(DVD)、ブルーレイディスク、任意の他の光学媒体、サムドライブ、メモリカード、RAM、PROM、およびEPROM、フラッシュ−EPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、あるいはコンピュータが読み取ることができる、任意の他の有形媒体形態が挙げられる。
【0020】
コンピュータ可読媒体の種々の形態は、実行のために、1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスをプロセッサ104に搬送することに関わり得る。例えば、命令は、最初は、遠隔コンピュータの磁気ディスク上で搬送されてもよい。遠隔コンピュータは、命令をその動的メモリ内にロードし、モデムを使用して、電話回線を介して、命令を送信することができる。コンピュータシステム100にローカルのモデムは、データを電話回線上で受信し、赤外線送信機を使用して、データを赤外線信号に変換することができる。バス102に結合された赤外線検出器は、赤外線信号内で搬送されるデータを受信し、データをバス102上に置くことができる。バス102は、データをメモリ106に搬送し、そこから、プロセッサ104は、命令を受信し、実行する。メモリ106によって受信された命令は、随意に、プロセッサ104によって実行前または後、記憶デバイス110上に記憶されてもよい。
【0021】
種々の実施形態によると、プロセッサによって実行され、方法を行うように構成される命令は、コンピュータ可読媒体上に記憶される。コンピュータ可読媒体は、デジタル情報を記憶する、デバイスであることができる。例えば、コンピュータ可読媒体は、ソフトウェアを記憶するために、当技術分野において周知のように、コンパクトディスク読取専用メモリ(CD−ROM)を含む。コンピュータ可読媒体は、実行されるように構成される命令を実行するために好適なプロセッサによってアクセスされる。
【0022】
本教示の種々の実装の以下の説明は、例証および説明の目的のために提示される。包括的でもなく、本教示を開示される精密な形態に制限するものでもない。修正および変形例は、前述の教示に照らして可能である、または本教示の実践から取得されてもよい。加えて、説明される実装は、ソフトウェアを含むが、本教示は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせとして、またはハードウェア単独において、実装されてもよい。本教示は、オブジェクト指向および非オブジェクト指向両方のプログラミングシステムによって実装されてもよい。
【0023】
実験データ
非麻痺型システムのための不感時間補正は、拡張線形ダイナミックレンジのために使用される。具体的には、非麻痺型不感時間補正アルゴリズムは、麻痺しない電子機器によって受信された計数率が補正され、検出システムのダイナミックレンジの増加につながることを可能にする。しかしながら、より高い計数率では、高ダイナミックレンジ検出システムもまた、麻痺しない電子機器の特性の結果である、不感時間延長を呈し得る。その結果、高計数率で計数するために、非麻痺型高ダイナミックレンジ検出システムの不感時間補正のためのシステムおよび方法が、必要とされる。
【0024】
ダイナミックレンジの増加
全ての実験は、ABSCIEXQTRAP(登録商標)5500質量分析計上で実施された。データは、7.0μL/分で注入されたレセルピンの溶液を使用して、正イオンモードで収集された。検出システムは、12kVで動作する高エネルギー変換ダイノード(HED)と、その出力が0Vであったマグナム5901検出器を併用した。検出器の出力は、高利得トランスインピーダンス(TZ)電流増幅器を通して通過された。これは、検出器バイアスが、電圧/電圧前置増幅器を採用する検出器システムに対する典型的バイアスより約500〜600V低く設定されることを可能にした。これは、真の計数率を約2×10秒あたりカウント(cps)以上で査定することを可能にする。
【0025】
ダイナミックレンジを拡張するために、トランスインピーダンス(TZ)増幅器が、検出器の出力に追加された。TZ増幅器は、高ダイナミックレンジ検出システムの最新バージョンでは、13kΩ利得の高利得を伴う、電流増幅器であった。これは、利得が検出器から除去されることを可能にし(検出器バイアス電位の減少)、検出器が、検出器を飽和させずに、より高い計数率で計数することを可能にする。
【0026】
不感時間補正を伴わない場合
検出器の線形性およびその補正アルゴリズムを試験するために、レセルピンの第1の同位体(m/z609)の強度が、第2(m/z610)、第3(m/z611)、および第4の(m/z612)同位体の強度および予期される同位体比に基づいて計算される。第1の同位体に対する第2、第3、および第4の同位体の理論的同位体比は、それぞれ、0.374、0.086、および0.013である。例えば、第1の同位体の強度が、5×10cpsである場合、第2の同位体の強度は、1.87×10cps(5×10cps×0.374)であるはずである。第2の同位体の強度が、1.87×10cpsとして測定される場合、第1の同位体の強度は、既知の同位体比によって除算することによって計算されることができる(すなわち、1.87×10cps/0.374=5×10cps)。第1の同位体の計算強度と測定強度との間の差異は、次いで、補正アルゴリズムの正確度を計測するために使用されることができる。
【0027】
図2は、種々の実施形態による、測定された計数率対不感時間が補正されていないレセルピンの第2、第3、および第4の同位体に基づいて計算された真の計数率の逸脱の例示的プロット200である。プロット200は、不感時間補正を伴わない場合、測定された計数率対計算された真の計数率の逸脱が、計数率の増加に伴って、有意に増加することを示す。
【0028】
一定不感時間を用いた不感時間補正
使用される高ダイナミックレンジ検出システムの電子機器は、非麻痺型システムであると見なされる。非麻痺型システムのための不感時間補正式は、以下である。
【数1】
【0029】
図3は、種々の実施形態による、非麻痺型システムのための不感時間補正式(1)を使用して、真の計数率に変換された図2のために使用されるデータの例示的プロット300である。プロット300では、測定された計数率対計算された真の計数率の逸脱は、計数率の増加に伴って、図2におけるものほど有意に増加しない。しかしながら、線形性からの逸脱は、依然として、高計数率では、満足のいかないものである。
【0030】
検出器、比較器、および単安定回路出力信号のいくつかの実験および分析後、検出器パルスが前のパルスからの不感時間の終了直前に到達するとき、検出システムが不感時間周期の延長を呈することが発見された。本理由は、不感時間パルスをもたらす回路がエッジトリガされるという事実に関係する。比較器の出力が、付加的検出器パルスの存在のため、前のパルスの立ち下がり区間からの不感時間を上回って高い場合、回路は、付加的検出器パルスに対する論理パルスをもたらさないであろう。比較器からの出力は、最初に、別の検出器パルスが検出され得る前に、降下する必要がある。不感時間は、比較器が前のパルスからの不感時間を上回って高い持続時間に対応する付加的量だけ延長される。
【0031】
図4は、種々の実施形態による、感時間をもたらすエッジトリガ回路が、どのように不感時間を延長させ得るかを示す、検出システムの例示的タイミング図400である。略図400のAでは、2つの検出されたパルスは、17.5nsを上回って分離され、2つの論理パルスをもたらす。略図400のBでは、第2のパルスは、第1のパルスに対する不感時間の終了直前に到達し、単に1デジタルパルスもたらし、そのパルス幅は、拡張される。Bでは、不感時間は、Δtに対応する付加的周期だけ延長される。
【0032】
エッジトリガの代わりに、レベルトリガされる電子機器を使用して、考慮された。これは、デジタルパルスが、不感時間回路の準備ができるとすぐにもたらされる結果をもたらすであろう。しかしながら、これは、次いで、検出器パルスを2回計数する問題をもたらす(1回目は、第1のパルスに近接して到達するパルスを考慮する不感時間補正式によって、2回目は、比較器レベルが高いため、不感時間回路がデジタルパルスをもたらすときである)。
【0033】
延長可能不感時間を用いた不感時間補正
種々の実施形態では、不感時間補正は、高計数率における不感時間の延長のための補正を含む。高計数率における不感時間の延長のための補正は、例えば、調整係数を式(1)に追加することを含むことができる。真の計数率のための式は、したがって、以下となる。
【数2】
【0034】
一例示的実験では、調整係数は、較正点として、レセルピンの同位体比を使用して見出される。データは、1ng/μLのレセルピンの溶液を使用して収集された。信号の強度は、イオン源から質量分析四重極にイオンを移送するために使用されるRF専用四重極上の無線周波数振幅を変化させることによって変動された。これは、観察された計数率が、m/z609.23における第1の同位体に対して、5×10cps〜3×10cpsに変動されることを可能にした。観察された計数率は、不感時間のためのいかなる補正も適用されないそれらの計数率である。強度は、最初の4つの同位体に対して収集され、同位体は、良好に分解された。低計数率における4つの同位体の強度は、次いで、4つの同位体に対する平均同位体比を計算するために使用された。実験同位体比は、それぞれ、m/z609.23、610.23、611.23、および612.23に対して、100%、36.2%、8.4%、および1.6%であって、理論的同位体比と良好に一致した。(理論的同位体比は、100%、37.4%、8.6%、および1.3%である)。609.23同位体の観察された信号強度は、次いで、補正された強度が、その同位体割合によって除算されたm/z612.23の強度から計算された強度と一致するまで、不感時間を調整しながら式1を使用することによって、不感時間に対して補正された。
【0035】
式(2)の調整係数(adj_fac)を計算するために使用される例示的ステップは、以下を含む。
1.m/z609.23およびm/z612.23の両方に対する補正されていない(観察された)信号を測定する。
2.17.5nsの一定不感時間(式1)を使用して、不感時間が補正された強度を計算する。
3.m/z612.23強度および同位体比に基づいて、真のm/z609.23強度を計算する。
4.真の計数率がステップ3からの真の計数率に等しくなるまで、式2において、adj_facを調整する。
【0036】
表1は、種々の実施形態による、調整係数を計算するために使用される例示的一式のステップから計算された数字を示す。
【表1】
【0037】
図5は、種々の実施形態による、計算された不感時間調整係数への指数関数適合の例示的プロット500である。前述のステップが、adj_fac対観察された計数率のプロット500を求めるために、5×10〜3.04×10cpsに及ぶm/z609.23の観察された値に対して繰り返された。約1.5×10cpsを上回るm/z609.23に対するデータのみ、回帰のために使用された(黒丸、プロット500)。これは、m/z612.23に対する信号強度が、低過ぎて(<5×10cps)、良好な統計を求めることができなかったためであった。データは、以下の形態の式に適合された。
【数3】
式中、y=0.90、a=0.097、およびb=5.0993×10−8である。その結果、調整係数のための式は、以下となった。
【数4】
【0038】
図6は、種々の実施形態による、非麻痺型システムのための調整係数を含む、不感時間補正式(2)を使用して、真の計数率に変換された図2のために使用されたデータの例示的プロット600である。式2および4は、図2および3におけるプロットを作成するために使用される観察された計数率から、真の計数率を計算するために使用された。線形性からの逸脱は、プロット600に示される。10%以内までの線形性は、ここでは、レセルピンの第2、第3、および第4の同位体を使用して計算された真の計数率に対して、1.1×10cpsを上回って延長されている。
【0039】
データ処理のシステムおよび方法
不感時間補正システム
図7は、種々の実施形態による、高計数率で麻痺しない電子機器の特性の結果である、不感時間延長を呈する、質量分析計の非麻痺型検出システムのための不感時間補正を行うためのシステム700である。システム700は、質量分析計の非麻痺型検出システムを含む。質量分析計は、例えば、1つ以上の四重極を含む、任意の質量分析計である。質量分析計はまた、イオンの検出のために、パルス計数を使用する、3Dまたは線形のいずれかのイオントラップであってもよい。
【0040】
システム700は、非麻痺型検出システムおよびプロセッサ750を含む。プロセッサ750は、カウンタ740とデータ通信する。プロセッサ750は、限定ではないが、コンピュータシステム(図1)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはデータを送受信および処理可能な任意の回路であることができる。
【0041】
プロセッサ750は、カウンタ740から観察されたイオン計数を受信する。受信されたイオン計数は、イオン計数率に変換される必要があり、これは、計数を収集するために使用される時間周期もまた、既知であることを意味する。計数率は、時間周期によって除算されたイオン計数であり得る。プロセッサ750は、観察されたイオン計数率の不感時間補正を行う。プロセッサ750は、不感時間の延長を考慮した調整係数関数をさらに含む、非麻痺型検出システムの不感時間補正のための式を使用する。プロセッサ750は、本式からの真のイオン計数率および観察されたイオン計数率をもたらす。
【0042】
種々の実施形態では、調整係数関数は、非線形関数である。
【0043】
種々の実施形態では、調整係数関数は、前述のような式(3)であって、式中、y、a、およびbは、係数である。
【0044】
種々の実施形態では、式(3)の係数は、調整係数関数を較正試料のための調整係数対観察された計数率のプロットに適合することによって判定される。
【0045】
種々の実施形態では、調整係数関数をさらに含む、非麻痺型検出システムの不感時間補正のための式は、前述のような式(4)である。
【0046】
種々の実施形態では、調整係数関数は、各質量分析計のイオン検出器バイアス電位および弁別器閾値レベルに依存する。係数は、バイアスが変化されるにつれて、弁別器閾値レベルにおけるパルス幅分布もまた変化するため、検出器バイアスの関数である。不感時間が延長される量は、弁別器閾値レベルにおけるパルス幅に依存する。同様に、閾値の変化は、パルス幅分布を変化させ、不感時間が延長される量を変化させる。例えば、調整係数関数の計数は、各質量分析計のイオン検出器バイアス電位または弁別器閾値レベルの変化毎に、較正実験から判定される。
【0047】
不感時間方法
図8は、高計数率で麻痺しない電子機器の特性の結果である、不感時間延長を呈する、質量分析計の非麻痺型検出システムのための不感時間補正を行うための方法800を示す、例示的流れ図である。
【0048】
方法800のステップ810では、観察されたイオン計数は、イオン検出器と、比較器/弁別器と、単安定回路と、カウンタとを含む、質量分析計の非麻痺型検出システムを使用して求められる。単安定回路は、トリガするために、比較器/弁別器からのパルスの立ち上がりエッジを要求し、再び、パルスが低になった後のみ、トリガされることができる。これは、第1の比較器/弁別器パルスによって開始された不感時間の終了直前に到達する第2の比較器/弁別器パルスが、不感時間を第2の比較器/弁別器パルスの立ち下がりエッジまで延長させることを可能にする。
【0049】
ステップ820では、観察されたイオン計数率は、プロセッサを使用して、観察されたイオン計数から計算される。
【0050】
ステップ830では、真のイオン計数率は、プロセッサを使用して、観察されたイオン計数率の不感時間補正を行うことによって計算される。観察されたイオン計数率の不感時間補正は、調整係数関数をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計数率のための式を使用して行われる。調整係数関数は、不感時間パルスの延長を考慮する。
【0051】
不感時間コンピュータプログラム製品
種々の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、高計数率で麻痺しない電子機器の特性の結果である、不感時間延長を呈する、質量分析計の非麻痺型検出システムのための不感時間補正を行うための方法を行うように、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含む、非一過性、かつ有形のコンピュータ可読記憶媒体を含む。本方法は、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを含む、システムによって行われる。
【0052】
図9は、種々の実施形態による、高計数率で麻痺しない電子機器の特性の結果である、不感時間延長を呈する、質量分析計の非麻痺型検出システムのための不感時間補正するための方法を行う、1つ以上の個別のソフトウェアモジュールを含む、システム900の概略図である。システム900は、測定モジュール910および補正モジュール920を含む。
【0053】
測定モジュール910は、イオン検出器と、比較器/弁別器と、単安定回路と、カウンタとを含む、質量分析計の非麻痺型検出システムを使用して、観察されたイオン計数を求める。単安定回路は、トリガするために、比較器/弁別器からのパルスの立ち上がりエッジを要求し、パルスが低になった後のみ、再び、トリガされることができる。これは、第1の比較器/弁別器パルスによって開始された不感時間の終了直前に到達する第2の比較器/弁別器パルスが、不感時間を第2の比較器/弁別器パルスの立ち下がりエッジまで延長させることを可能にする。
【0054】
補正モジュール910は、観察されたイオン計数から観察されたイオン計数率を計算する。補正モジュール910は、次いで、観察されたイオン計数率の不感時間補正を行うことによって、真のイオン計数率を計算する。観察されたイオン計数率の不感時間補正は、調整係数関数をさらに含む、非麻痺型検出システムの真のイオン計数率のための式を使用して行われる。調整係数関数は、不感時間の延長を考慮する。
【0055】
本教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本教示が、そのような実施形態に制限されることを意図するものではない。対照的に、本教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。
【0056】
さらに、種々の実施形態の説明において、本明細書は、ステップの特定のシーケンスとして、方法および/またはプロセスを提示し得る。しかしながら、方法またはプロセスが、本明細書に記載されるステップの特定の順序に依拠しない程度において、方法またはプロセスは、説明されるステップの特定のシーケンスに制限されるべきではない。当業者が理解するであろうように、ステップの他のシーケンスも可能であり得る。したがって、本明細書に記載されるステップの特定の順序は、請求項に関する制限として解釈されるべきでない。加えて、方法および/またはプロセスを対象とする請求項は、そのステップの実施を書かれた順序に制限されるべきではなく、当業者は、シーケンスが、変動されてもよく、依然として、種々の実施形態の精神および範囲内にあることを容易に理解することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9