(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6229976
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】錠剤容器
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20171106BHJP
B65D 83/06 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
B65D47/20 210
B65D83/06 N
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-39650(P2014-39650)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-163517(P2015-163517A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2016年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(72)【発明者】
【氏名】古澤 光夫
【審査官】
佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−175426(JP,A)
【文献】
特開2003−231542(JP,A)
【文献】
特開平10−077059(JP,A)
【文献】
特開平11−193051(JP,A)
【文献】
特開2006−248567(JP,A)
【文献】
特開平11−208702(JP,A)
【文献】
実開平05−049648(JP,U)
【文献】
特開2002−166959(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0206766(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 47/20
B65D 83/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口筒部(2)、肩部(3)、胴部(4)および底部(5)から成る容器(1)と、
該口筒部(2)の外周面に組み付く組付き筒部(11)、該組付き筒部(11)の上端から径方向内側に延設された環状平坦部(13)、該環状平坦部(13)の内周縁から下方に垂下して延設された内筒部(12)、該内筒部(12)の内周部から延設された環状傾斜板(16)および低床部(16b)、ならびに該内筒部(12)を閉栓する天板部(14)を有するキャップ(10)とを備えた錠剤容器であって、
前記環状傾斜板(16)は径方向内側に対し上方に傾斜しながらその中央部に内容物が通過可能な貫通穴(16a)を形成すると共に、
前記低床部(16b)は、前記環状傾斜板(16)と隣り合う位置に設けられ、少なくともその一部分が径方向内側に対し下方に傾斜していることを特徴とする錠剤容器。
【請求項2】
前記キャップ(10)の天板部(14)は透明性を有する請求項1に記載の錠剤容器。
【請求項3】
前記キャップ(10)はヒンジキャップである請求項1又は2に記載の錠剤容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、必要数の錠剤を安定して取り出すことが出来ると共に必要数以上の余った錠剤を容器内に確実・容易に戻すことが出来る錠剤容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
飲食し易いように予め所定の形状(例えば球形、長球形、円板形、膨出円板形等)に加工された粒状の医薬品や食品(以下、「錠剤」という。)を収納容器から取り出す方法としては、キャップを開き容器内に指を挿入して取り出すか、或いは容器を反転傾斜させて容器に軽い振動を加え錠剤を容器開口近傍まで移動させ、その状態から更に軽い振動を加え必要数を落下させ手で受け取ることが一般的な方法である。特に、指を容器内部へ挿入して取り出す場合、使用始めにおいては錠剤は胴部上方近傍まで満たされている為、指を容器内部へ深く挿入しなくても取り出すことは容易であるが、残量が少なくなるにつれて、指を容器内部深く挿入する必要が生じてくる。特に、残量が終局間際には、容器内部深く例えば容器の底部付近まで指を挿入する必要が生じてくる。この場合、指先の感覚で錠剤を探し出し摘み出さなければならない為、錠剤を取り出すことは簡単ではなくなる。また、容器の底部付近まで指を挿入する為、指が錠剤だけでなく容器内面にも触れることになり、衛生面の観点からあまり好ましくなかった。
ところで、指を容器内部へ挿入することなく所定量の錠剤を取り出すことが出来るとした容器が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。この容器では、容器本体と蓋体との間に筒状の中間連結体が設けられ、その中間連結体の内側開口には、錠剤が貯留する底板が設けられている。その底板は、縦断面で見た場合、底板が先端部分において2つに分岐し蓋体側に反った円弧形状(第1延出部および第2延出部)を成して構成されている。
この容器において錠剤を取り出すには、蓋体が締まった状態で第1延出部(第2延出部)が中間連結体の中で下方に来るように容器を反転傾斜させ、錠剤が蓋体の天板と底板との間に入り込むようにする。そして、容器を元の姿勢に戻すことにより、蓋体と中間連結体との間にあった錠剤の内、第1延出部側にあった錠剤は底板に配置される一方、それ以外の錠剤は容器本体の収納部内へ戻されることになる。そして、蓋体を開け、指で摘んで取り出すか、或いは容器を再度傾斜させることにより錠剤を取り出すこととしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−248567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した通り、上記錠剤容器では、蓋体が締まった態様で容器を反転傾斜させ元の姿勢に戻すことにより、所定量の錠剤だけが底板上に取り上げられ、そして蓋体を開け、指で摘んで取り出すか、或いは容器を再度傾斜させることにより錠剤を取り出すこととしている。
しかし、上記錠剤容器では、錠剤を取り出す際、錠剤が貯留する底板は蓋体側に反った円弧形状を成している為、錠剤を取り出しにくいという問題がある。
一方、必要数以上の余った錠剤を戻す際、容器を傾斜させ底板から下方へ落として容器内へ戻すものと考えられるが、錠剤を取り出す際と同様に、底板が蓋体側に反った円弧形状を成している為、錠剤が底板から落下しにくい、つまり余った錠剤を容器内に戻しにくいという問題がある。
そこで、本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものであって、必要数の錠剤を安定して取り出すことが出来ると共に必要数以上の余った錠剤を容器内に確実・容易に戻すことが出来る錠剤容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するための本発明のうち、請求項1記載の発明の手段は、口筒部、肩部、胴部および底部から成る容器と、
該口筒部の外周面に組み付く組付き筒部、該組付き筒部の上端から径方向内側に延設された環状平坦部、該環状平坦部の内周縁から下方に垂下して延設された内筒部、該内筒部の内周部から延設された環状傾斜板および低床部、ならびに該内筒部を閉栓する天板部を有するキャップとを備えた錠剤容器であって、
前記環状傾斜板は径方向内側に対し上方に傾斜しながら内容物が通過可能な貫通穴を形成すると共に、
前記低床部は
、前記環状傾斜板
と隣り合う位置に設けられ、少なくともその一部分が径方向内側に対し下方に傾斜していることを特徴とする
【0006】
請求項1記載の上記構成では、キャップが締まった状態でユーザーが容器を正立状態から反転傾斜(例えば180度近く反転傾斜)させて再び正立状態に戻すことにより、錠剤が貫通穴を通過して容器口筒部内側に設けられた環状傾斜板の傾斜および貫通穴によって、必要数を含む所定量の錠剤が環状傾斜板上に貯留されることになる。そして、ユーザーがキャップを開くと、錠剤は容器口筒部内側に設けられた環状傾斜板上に貯留されている為、必要数の錠剤を指先で摘んで容易に取り出すことが出来るようになる。このように、容器を正立状態から反転傾斜させて再び正立状態に戻す動作は、錠剤残量の大小には関係なく更には容器の深さにも関係なく、必要数の錠剤を指先で摘んで容易に取り出すことが出来るようになる。
一方、必要数以上の余った錠剤については、環状傾斜板
と隣り合う所定区間に上記傾斜特性を有する低床部が設けられている為、容器を傾斜させて錠剤を低床部へ誘導して、そして容器を再び正立状態に戻すことにより錠剤を低床部から貫通穴を通して容器内に確実・容易に戻すことが出来るようになる。
【0007】
請求項2記載の発明の手段は、前記キャップの天板部は透明性を有する、ことにある。
【0008】
上記構成では、環状傾斜板上に貯留する錠剤をキャップを開けることなく外部から確認することが出来るようになる。これにより、容器の反転傾斜および正立復帰の動作を効率良く行うことができ、その結果、キャップを開けることなく必要数を含む所定量の錠剤を安定に環状傾斜板上に載せることが出来ると共に、必要数以上の余った錠剤は容器を傾斜させて環状傾斜板の低床部へ誘導して、そして容器を再び正立状態に戻すことにより錠剤を低床部から貫通穴を通して容器内に確実・容易に戻すことが出来るようになる。
【0009】
請求項3記載の発明の手段は、前記キャップはヒンジキャップである。
【0010】
上記構成では、天板部は組付き筒に一体に連結され、その結果、キャップを容器から分離する必要がなくなり、キャップの紛失が好適に防止されると共にキャップ開閉操作が容易となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、キャップを閉じた状態で容器全体を正立状態から反転傾斜させて再び正立状態に戻す動作により、必要数を含む所定量の錠剤が環状傾斜板上に貯留され、キャップを開けて必要数の錠剤を容易に取り出すことが出来ると共に、必要数以上の余った錠剤については、環状傾斜板
と隣り合う所定区間に上記傾斜特性を有する低床部が設けられている為、容器を傾斜させて錠剤を低床部へ誘導して、そして容器を再び正立状態に戻すことにより錠剤を低床部から貫通穴を通して容器内に確実・容易に戻すことが出来るようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る錠剤容器を示す断面説明図である。
【
図3】本発明の実施例に係る錠剤容器の錠剤取り出し方法を示す説明図である。
【
図4】本発明の実施例に係る錠剤容器の錠剤戻し方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。
【0014】
図1−2は、本発明の実施例に係る錠剤容器100を示す説明図である。なお、
図1は断面図であり、
図2は
図1(容器1)のA矢視図である。
この錠剤容器100は、錠剤を収容する容器1と、容器1を開・閉栓するキャップ10とを具備して構成されている。この錠剤容器100は、キャップ10を閉じた状態で容器全体を正立状態から反転傾斜させて再び正立状態に戻すという動作により、必要数を含む所定量の錠剤が後述する環状傾斜板16上に貯留され、キャップ10を開けて必要数の錠剤を容易に取り出すことが出来ると共に、必要数以上の余った錠剤については、容器1を傾斜させて錠剤を後述する低床部16bへ誘導して、そして容器1を再び正立状態に戻すことにより錠剤を低床部16bから貫通穴16aを通して容器1内に確実・容易に戻すことが出来るように構成されている。
【0015】
容器1は、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂などの合成樹脂材料をブロー成形法または射出成形法などにより所定の形状に成形されたもので、口筒部2、肩部3、胴部4および底部5から成る。口筒部2の外周面には、キャップ10を螺合により装着するための雄ねじ部2aが形成されている。また、口筒部2の開口は、ユーザーが錠剤を取り出し易いように、径の大きい、いわゆる広口を成している。
【0016】
キャップ10は、例えばポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂または透明性を有する合成樹脂材料を射出成形法により所定の形状に成形されたもので、口筒部2に螺合により組み付く組付き筒部11と、口筒部2の上端面に接合する内筒部12と、組付き筒部11と内筒部12を一体に連結する環状平坦部13と、内筒部12の開口を閉栓する天板部14と、組付き筒部11と天板部14を一体に連結するヒンジ部15と、そして所定量の錠剤が貯留される本発明に係る環状傾斜板16および必要数以上の余った錠剤を容器1内へ戻すための低床部16bとから成る。
【0017】
キャップ10は透明性を有することが好ましく、この場合、キャップ10を開けずに環状傾斜板16上に貯留された錠剤を外部から確認することが出来るようになると共に、キャップ10を開けずに必要数以上の余った錠剤を低床部16bへ誘導することが出来るようになる。
【0018】
組付き筒部11の内周面には口筒部2の雄ねじ部2aと螺合する雌ねじ部11aが形成されている。また、組付き筒部11の上部外周縁には天板部14の内周縁が嵌る周条段差11bが形成されている。
【0019】
内筒部12は、上端において環状平坦部13と、内周部において環状傾斜板16とそれぞれ一体に連結し、組付き筒部11を口筒部2にねじ込んだ際、口筒部2の上端面に接合するように構成されている。なお、内筒部12の口筒部2に対する結合形態は、環状傾斜板16が高い位置に保持されるように接合形態であるが、嵌入形態でもあっても良い。
【0020】
天板部14は組付き筒部11にヒンジ結合部15によって一体に連結されて、キャップ10が容器1から分離することがないように構成されている。また、天板部14は、二段円筒構造を成して周条段差14aが設けられ、ユーザーがキャップ10を開閉する際、天板部14が容易に変形することがないようにしている。
【0021】
ヒンジ部15は、ヒンジ15a(
図3(c))とL字状ヒンジ15bにより構成されている。特に、L字状ヒンジ15bは天板部14の開姿勢(キャップ10が開いた時)または閉姿勢(キャップ10が閉じた時)を安定に保持するように機能する。なお、キャップ10の姿勢を安定に保持するヒンジはL字状に限定されない。
【0022】
環状傾斜板16は、内筒部12の内周部から延設され、径方向内側に向かって上方に傾斜してその中央部に貫通穴16aが形成されるように構成されている。なお、貫通穴16aの径は、錠剤が通過することができ且つ所定量の錠剤が環状傾斜板16上に貯留することが出来る大きさであれば良く、それ以外貫通穴16aの径は特に限定されない。また、環状傾斜板16の傾斜角についても必要数を含む所定量の錠剤が環状傾斜板上に貯留することが出来る大きさであれば良く、それ以外傾斜角は特に限定されない。
【0023】
低床部16bは、環状傾斜板16
と隣り合う所定区間、例えば
図2において径方向区間a-a'、周方向区間a'-b'-c'、径方向区間c'-c、および周方向区間c-b-aから成る所定区間(扇形部分)に形成されている。つまり、径方向に係る高さを見た場合、a'の高さ>aの高さ、b'の高さ<bの高さ、およびc'の高さ>cの高さである。他方、周方向に係る高さを見た場合、a'の高さ>b'の高さ、およびb'の高さ<c'の高さである。なお、外周縁方向については、aの高さ=bの高さ=cの高さである。つまり、低床部16bの傾斜特性は、周方向に沿って径方向区間a-a'から径方向区間b-b'に向かうに従って床が低くなると共に、径方向区間b-b'から径方向区間c-c'に向かうに従って床が高くなるように構成されている。すなわち、低床部16bにおいて径方向区間b-b'の近傍が周方向に沿って極小部分となるように構成されている。
【0024】
また、環状傾斜板16および低床部16bは内筒部12に一体に成形されているが、別体(二体)に成形することも可能である。
【0025】
図3は、本発明の実施例に係る錠剤容器100の錠剤取り出し方法を示す説明図である。なお、
図1に示すように、キャップ10は閉じた状態にあるとする。
先ず、
図3(a)に示すように、容器全体を反転傾斜させる。錠剤が貫通穴16aを通って天板部14と環状傾斜板16の間に入り込む。
次に、
図3(b)に示すように、容器全体を正立状態に戻す。天板部14と環状傾斜板16の間に入り込んだ錠剤の内、環状傾斜板16の傾斜および貫通穴16aによって、必要数を含む所定量の錠剤が環状傾斜板16上に貯留される。
そして、
図3(c)に示すように、キャップ10(天板部14)を開栓し、環状傾斜板16上に貯留する所定量の錠剤の内、必要数の錠剤を指先で摘んで取り出す。
【0026】
なお、必要数以上の余った錠剤は、
図4(a)に示すように、容器1を傾斜させて低床部16bへ誘導して低床部16b上に錠剤を貯留させる。そして、
図4(b)に示すように、容器1を元の姿勢に戻すことにより、錠剤は自重により低床部16bに沿って下方へ滑り落ち、そして貫通穴16aから落下して容器1内に戻ることになる。なお、容器1を傾斜させて錠剤を戻す際、キャップ10は閉じた状態であっても開いた状態であっても、どちらでも良い。
【0027】
以上、本発明の錠剤容器100によれば、キャップ10を閉じた状態で容器全体を正立状態から反転傾斜させて再び正立状態に戻す動作により、必要数を含む所定量の錠剤が環状傾斜板16上に貯留され、キャップ10を開けて必要数の錠剤を容易に取り出すことが出来ると共に、必要数以上の余った錠剤については、上記傾斜特性を有する低床部(高低差)16bが設けられている為、容器1を傾斜させて錠剤を低床部16bへ誘導して、そして容器1を再び正立状態に戻すことにより錠剤を低床部16bから貫通穴16aを通して容器1内に確実・容易に戻すことが出来るようになる。
【0028】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。例えば、低床部16bの形成範囲については、必要数を含む所定量の錠剤が環状傾斜板16上に好適に貯留される限り、種々の拡大または縮小することが可能である。また、貫通穴(16a)は内筒部(12)に対し偏芯していても良い。また、容器1とキャップ10はねじ結合しているが、凹凸嵌合して組み付けるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の錠剤容器は、錠剤を収納する容器に好適に適用される。
【符号の説明】
【0030】
1 容器
2 口筒部
2a 雄ねじ部
3 肩部
4 胴部
5 底部
10 キャップ
11 組付き筒部
11a 雌ねじ部
11b 周条段差
12 内筒部
13 環状平坦部
14 天板部
15 ヒンジ部
15a ヒンジ
15b L字状ヒンジ
16 環状傾斜板
16a 貫通穴
16b 低床部
100 錠剤容器