特許第6247460号(P6247460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オートモティブシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6247460-電池制御装置 図000002
  • 特許6247460-電池制御装置 図000003
  • 特許6247460-電池制御装置 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6247460
(24)【登録日】2017年11月24日
(45)【発行日】2017年12月13日
(54)【発明の名称】電池制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/00 20060101AFI20171204BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20171204BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20171204BHJP
【FI】
   G01R31/00ZHV
   H01M10/42 P
   H02J7/00 Y
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-125869(P2013-125869)
(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公開番号】特開2015-1439(P2015-1439A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】特許業務法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋平
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−210007(JP,A)
【文献】 特開2011−153952(JP,A)
【文献】 特開2004−266937(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/140098(WO,A1)
【文献】 特開2002−073165(JP,A)
【文献】 特開2012−168728(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0206107(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/00
H01M 10/42
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池制御装置が起動される毎にその起動回数を計数する起動回数計数部と、
電池モジュールの状態を取得して診断を実行する診断処理部と、
前記起動回数計数部による起動回数と、前記診断処理部による前回の診断で得られた前回故障情報および今回の診断により得られた今回故障情報とを記憶する記憶部と、
前記診断処理部による診断で異常が判明した場合に、当該異常の今回故障情報が前記記憶部に記憶されている前回故障情報と同じではないことを判別すると共に、前記起動回数に基づいて前記診断処理部による診断が前記電池制御装置の起動後初めての診断であるかを判別する判別部と、
前記判別部で、前回故障情報と同じではなく、起動後初めての診断であると判別された場合に、今回故障情報を前記記憶部に記憶する制御部とを備えたことを特徴とする電池制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池制御装置において、
前記判別部は、更に、前記診断処理部による診断で判明した異常が重篤なエラーであるかを判別し、
前記制御部は、前記判別部で重篤なエラーであると判別された今回故障情報を優先して前記記憶部に記憶することを特徴とする電池制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電池制御装置において、
前記判別部は、前記重篤なエラーを、発生した異常の程度に応じて複数段階のエラーに弁別し、
前記制御部は、前記複数段階のエラーに応じて、今回故障情報を、判明した異常よりも異常の程度が低い段階のエラーに優先して前記記憶部に記憶することを特徴とする電池制御装置。
【請求項4】
請求項1請求項3のいずれか一項に記載の電池制御装置において、
前記判別部は、更に、前記診断処理部による診断で判明した異常が前記電池制御装置の毀損の可能性のあるエラーであるかを判別し、
前記制御部は、前記判別部で毀損の可能性のあるエラーであると判別された今回故障情報を前記電池制御装置の外部に設けられた車両制御装置の記憶部に記憶させる処理を実行することを特徴とする電池制御装置。
【請求項5】
請求項1請求項3のいずれか一項に記載の電池制御装置において、
前記判別部は、更に、前記診断処理部による診断で判明した異常が前記電池制御装置の毀損の可能性のあるエラーであるかを判別し、
前記制御部は、前記判別部で毀損の可能性のあるエラーであると判別された今回故障情報を通信部を介して車両外に出力することを特徴とする電池制御装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の電池制御装置において、
前記記憶部は不揮発性メモリにより構成されることを特徴とする電池制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電可能な組電池の電池制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車や電気自動車に搭載される電池モジュールは複数のニッケル水素電池やリチウムイオン電池などで構成された電池制御装置で管理される。電池制御装置は、電池の温度、電圧、劣化状態などを常時監視して、異常がある場合には検知する自己診断機能を備える。そして電池制御装置は、異常を検知した場合には、異常の内容により電池の充放電を禁止するなど、電池の安全を保護する制御を実施する。さらに、発生した異常種別や異常発生時の各種電池状態を故障情報として、電池制御装置内の不揮発領域に記録し、電池制御装置を回収して記録内容を読み出し、記録されている故障情報をもとに電池の故障診断を行い、故障原因を解析する。
【0003】
例えば、電池の充放電電流を検出し、検出電流値に応じた電圧値を出力する電流センサの出力が固定してしまう出力固着異常を診断する電流センサの故障診断装置がある。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−024825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、自己診断機能において、異常種別や異常発生時の故障情報を不揮発メモリに書き込む処理を行うが、故障が発生して、電池制御装置を再度起動すると、その度に同一の異常の発生に陥って同一の故障情報を記録したり、この起動時に発生した異常に伴って従属的に発生した異常の故障情報を記録したりするので不揮発メモリの領域が占有されてしまう問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の電池制御装置は、電池制御装置が起動される毎にその起動回数を計数する起動回数計数部と、電池モジュールの状態を取得して診断を実行する診断処理部と、起動回数計数部による起動回数と、診断処理部による前回の診断で得られた前回故障情報および今回の診断により得られた今回故障情報とを記憶する記憶部と、診断処理部による診断で異常が判明した場合に、当該異常の今回故障情報が記憶部に記憶されている前回故障情報と同じではないことを判別すると共に、起動回数に基づいて診断処理部による診断が電池制御装置の起動後初めての診断であるかを判別する判別部と、判別部で、前回故障情報と同じではなく、起動後初めての診断であると判別された場合に、今回故障情報を記憶部に記憶する制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、故障診断に有用な故障情報を優先して残すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施の形態に係わる全体システム構成を示す図である。
図2】不揮発性メモリと安全保護診断処理部の記憶内容を示す図である。
図3】診断記録のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による電池制御装置の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は電池制御装置の全体システム構成を示す図であり、図1に基づいて全体システム構成を以下に説明する。
【0010】
電池制御装置100は、セルコントローラ200を介して電池モジュール300を管理制御し、セルコントローラ200から入力される電池モジュール300の電圧、電流、温度などを受信して、安全保護診断処理などを実行する。そして、車両制御装置400との間で信号を授受する。
【0011】
電池制御装置100は、基本処理部110、入力処理部120、出力処理部130、アプリケーション処理部140、不揮発性メモリ150から成る。
【0012】
基本処理部110は、起動・停止シーケンス処理部111を有し、起動・停止シーケンス処理部111は、起動や停止の要求時に、電池制御装置100の起動や停止処理を開始したり、電池制御装置100の制御準備完了などのフラグ情報を、車両制御装置400や図示省略したモータコントローラへ出力したりする。
【0013】
入力処理部120は、A/D入力処理部121、I/O入力処理部122、CC通信入力部123、CAN(Controller Area Network)通信入力部124を有する。
【0014】
A/D入力処理部121は、セルコントローラ200から入力される電池の総電圧、電池の電流、電池の温度などを読み込み、A/D変換してデジタル値を出力する。
【0015】
I/O入力処理部122は、セルコントローラ200のFF信号ライン(セルコントローラICのFFI,FFO端子を結ぶ、1ビット信号の伝送ライン)から入力された過電圧入力信号のレベル(HighかLow)を読み込む。
【0016】
CC通信入力部123は、セルコントローラ200の通信ライン(セルコントローラICのRX,TX端子を結ぶ、マルチビット信号の伝送ライン)にコマンド信号を送信し、戻ってきた信号から、電池の電圧や異常フラグを読み込む。異常フラグは電池に過充電(過電圧)や過放電、回路異常などがあったときにセルコントローラICに設定されるフラグである。
【0017】
CAN通信入力部124は、CANに接続された車両制御装置400や図示省略したその他のコントロールユニットと通信を行ない、車両制御装置400からの起動停止要求、例えばイグニションスイッチの信号、モータコントローラからのリレー情報を受信する。
【0018】
出力処理部130は、I/O出力処理部131、CC通信出力部132、CAN通信出力部133を有する。
【0019】
I/O出力処理部131は、ファン制御信号、リーク検出信号、リレーカット信号、過電圧出力信号を出力する。リーク検出信号は、電池制御装置100が備えているリーク検出装置においてリークを検出する際に用いられる交流入力信号(パルス信号)である。リレーカット信号は、通常はモータコントローラが制御するが、過電圧などの緊急時には電池制御装置100から強制的にリレーをオフする為の信号である。過電圧出力信号は、FF信号ラインに出力される1ビットのテスト信号であり、FF信号ラインの断線を検知するための信号である。
【0020】
CC通信出力部132は、セルコントローラ200のコマンド信号ラインに、電池の容量調整を制御するための信号を出力する。
【0021】
CAN通信出力部133は、CANに接続されたコントロールユニットと通信を行なう部分であって、車両制御装置400やモータコントローラにステータスフラグを出力する。更に、SOC (State Of Charge:残容量)、SOH(State Of Health:劣化状態)、許容充放電電力又は電流などの電池情報を出力する。ステータスフラグは、電池制御装置100の自己診断結果による信号であり、後述する重篤度1の場合はリレーカット要求に関するフラグ、重篤度2の場合は充放電禁止要求に関するフラグ、重篤度3の場合はアラーム通知に関するフラグである。
【0022】
アプリケーション処理部140は、電池情報演算処理部141、安全保護診断処理部142を有する。
【0023】
電池情報演算処理部141は取得した電池の状態から電池のSOC、SOHなどの各種電池の状態を示す値を計算する。具体的には、電池特性テーブルを保持し、A/D入力処理部121より入力された電池総電圧、電池電流、電池温度のそれぞれに関するパラメータ情報からの電池総電圧、電池電流、電池温度のそれぞれの演算、SOC演算、電池出力(電力)演算、電池の充放電を制御するための許容充放電電力の演算、SOH演算を行なう。
【0024】
安全保護診断処理部142はI/O入力処理部122や電池情報演算処理部141から取得した電池の各種状態を示すステータスをもとに自己診断を行い、不揮発性メモリ150へ故障情報等を記憶する。具体的には、各種センサ、例えば、総電圧計測回路、電流センサ、温度センサ等のセンサや、FF信号ライン、A/D変換器、リーク検出器、ファン、メモリ、リレーの接点の溶着や未駆動、CAN通信などの診断を行なう。また、診断結果、後述する診断異常である場合や、セルコントローラ200のバランシングスイッチの異常診断、センシングラインの断線診断、CC通信エラーなど異常診断結果に基づいてステータスフラグの設定や出力、リレーカット制御などを行なう。
【0025】
不揮発性メモリ150は、後述するように、診断異常発生時の電池の総電圧、温度、SOC、SOH等の故障情報1〜Nと診断コードを記憶する他、電池制御装置100が起動される毎に積算された生涯BCU起動回数を起動回数として記憶する。更に前回発生時の診断コード及びその時の起動回数を記憶する。
【0026】
セルコントローラ200は、電池モジュール300の総電圧、電池モジュール300内の単セル電圧、電池モジュール300内の全単セルのうちのいくつかの温度などの電池の状態に関する各種ステータスを検出する。
【0027】
電池モジュール300は、複数の単電池から構成される。電池モジュール300として、リチウムイオン電池を採用した場合を例に説明するが、他にもニッケル水素電池、鉛電池、電気二重層キャパシタ、ハイブリッドキャパシタなどの蓄電池を用いることができる。
【0028】
車両制御装置400は、電池制御装置100に接続され、CAN通信出力部133から、診断異常が判明したことが通知され、また、安全保護診断処理部142による診断で判明した異常が電池制御装置100を毀損する可能性のあるエラーである場合に、電池制御装置100から故障情報が送信され、車両制御装置400内の不揮発性メモリに記憶する。
【0029】
図1に示す全体システム構成の動作概要を以下に説明する。
電池モジュール300の総電圧、電池モジュール300内の単セル電圧、電池モジュール300内の全単セルのうちのいくつかの温度などの電池の状態はセルコントローラ200で検出される。セルコントローラ200で検出された電池の状態に関する各種ステータスは、電池制御装置100へ入力される。電池の状態に関する各種ステータスは、電池制御装置100内のA/D入力処理部121、I/O入力処理部122を通じて電池情報演算処理部141、安全保護診断処理部142に送られる。電池情報演算処理部141は取得した電池の状態から電池のSOC、SOHなどの各種電池の状態を示す値を計算する。
【0030】
安全保護診断処理部142はI/O入力処理部122や電池情報演算処理部141から取得した電池の各種状態を示すステータスをもとに自己診断を行う。安全保護診断処理部142は、自己診断を行い診断異常が検出された場合には、不揮発性メモリ150に故障情報など、診断異常発生時の電池の状態に関する各種ステータスを格納する。さらにCAN通信を用いて、診断異常が判明したことを車両制御装置400に通知を行い、電池の異常発生を認識した車両制御装置400はシャットダウン要求を電池制御装置100にCAN通信入力部124より行う。CAN通信入力部124より入力されたシャットダウン要求は、基本処理部110の起動・停止シーケンス処理部111に入力されて、電池制御装置100の電池コントロールシステムを停止させ、電池の使用を休止することができる。
【0031】
図2は、不揮発性メモリ150と安全保護診断処理部142の記憶内容を示す図である。
不揮発性メモリ150は、診断異常発生時の電池の総電圧、温度、SOC、SOH等よりなる故障情報と診断コードを複数記憶する。故障情報は異常の原因を後に特定するための情報が含まれる。診断コードは後述する。更に、電池制御装置100が起動される毎に積算された生涯BCU起動回数を起動回数として記憶する。更に前回に判明した診断コードを前回発生時故障情報として記憶する。
【0032】
安全保護診断処理部142は、診断コードテーブル143に診断コードと重篤度を対応付けて記憶する。具体的には、バッテリ温度加熱診断異常:重篤度1、バッテリ過電圧診断異常:重篤度1、バッテリ過電流診断異常:重篤度1、バッテリ過放電診断異常:重篤度2、バッテリFAN回転診断異常:重篤度3を記憶する。
【0033】
ここで、重篤度1は、診断結果が運転を継続できない運転停止レベルであることを示し、例えば、電池のバッテリ情報を正しく検出できない、電池他の機器の破損を招く虞があるなど電池制御装置100等を毀損する可能性のある場合である。この場合は、リレーを遮断し、電池とインバータとの間の電気的な接続を切り離す処置がなされる。重篤度2は、過充放電抑制レベルを示し、電池の充放電を禁止し、条件により復帰する。重篤度3は、運転に影響は少ない電池管理レベルを示し、故障を検知してアラームで通知したり、電池への通電量を絞ったり、電池を冷却したりする。
【0034】
診断コードには、バッテリ温度加熱診断異常、バッテリ過電圧診断異常、バッテリ過電流診断異常、バッテリ過放電診断異常、バッテリFAN回転診断異常などがある。バッテリ温度加熱診断異常は、電池の温度が予め定められた閾値以上に加熱した場合である。バッテリ過電圧診断異常は、電池の電圧が予め定められた閾値以上になった場合である。バッテリ過電流診断異常は、電池の電流が予め定められた閾値以上になった場合である。バッテリ過放電診断異常は、電池が予め定められた閾値を超えて過放電になった場合である。バッテリFAN回転診断異常は、バッテリFAN回転数が正常値の範囲にない場合である。なお、電圧(過充電)及び過放電の判断は、電池総電圧とそれに対応する閾値との比較判断によるものと、セルコントローラ200におけるセル電圧とそれに対応する閾値との比較判断によるものとがあり、どちらか一方で異常が判明すれば異常と判断される。
【0035】
図3はエラー検出後に実行される診断記録のフローチャートである。以下、このフローチャートを参照して本発明の一実施の形態の動作について説明する。
【0036】
イグニションスイッチをオンにすると、電池制御装置100が起動され、安全保護診断処理部142は自己診断を定期的に実行する。なお、電池制御装置100が起動される毎に、起動回数が積算され、生涯BCU起動回数を起動回数として不揮発性メモリ150に記憶している。安全保護診断処理部142により定期的に行われる自己診断において異常が検出されると図3に示す診断記録が安全保護診断処理部142によって実行される。
【0037】
ステップS1において、今回発生した異常は前回発生した異常と同じか、すなわち、前回と同じ診断コードかを判断する。前回発生した診断コードは、前回に異常が検出された際に、不揮発性メモリ150の領域152に記録される。また、前回に異常が検出された際に、起動回数として不揮発性メモリ150の領域151に記憶されている起動回数が前回発生時の起動回数として領域152に記憶される。このステップS1で、今回の診断コードと前回の診断コードとが同じであれば、ステップS2で、故障情報を破棄して診断記録のフローチャートを終了する。
【0038】
ステップS1で、今回の診断コードと前回の診断コードとが異なれば、次のステップS3を実行する。ステップS3では、電池制御装置100が起動されて初めて起きた異常かを判断する。すなわち、不揮発性メモリ150の領域152に記録されている前回発生時の起動回数が、不揮発性メモリ150の領域151に記憶されている起動回数と同じであれば、今回の起動で初めて起きた異常ではないと判断し、ステップS5の処理で、不揮発性メモリ150の領域153に空き領域があるかを判断する。空き領域が無ければ、ステップS2で、故障情報を破棄して診断記録のフローチャートを終了する。空き領域が有れば、ステップS6の処理で、故障情報や診断コードを不揮発性メモリ150の領域153に記録して診断記録のフローチャートを終了する。
【0039】
ステップS3で、不揮発性メモリ150の領域152に記録されている前回発生時の起動回数が、不揮発性メモリ150の領域151に記憶されている起動回数と異なれば、今回の起動で初めて起きた異常であるので、次のステップS4の処理を実行する。
【0040】
ステップS4では、今回の診断コードを安全保護診断処理部142内の診断コードテーブル143と照合し、重篤度が高いかを判断する。この例では重篤度1の場合に重篤度が高いと判断する。ステップS4の判断結果、重篤度が高く無い場合、例えば重篤度2、重篤度3の場合は、ステップS5の処理で、不揮発性メモリ150の領域153に空き領域があるかを判断する。空き領域が無ければ、ステップS2で、故障情報を破棄して診断記録のフローチャートを終了する。空き領域が有れば、ステップS6の処理で、故障情報や診断コードを不揮発性メモリ150の領域153に記録して診断記録のフローチャートを終了する。
【0041】
ステップS4では、今回の診断コードを安全保護診断処理部142内の診断コードテーブル143と照合し、重篤度が高いと判断された場合は、ステップS7の処理を行う。ステップS7では、不揮発性メモリ150の領域153に空き領域があるかを判断し、空き領域が有れば、ステップS8の処理で、故障情報や診断コードを不揮発性メモリ150の領域153に記録する。
【0042】
ステップS7の処理で、不揮発性メモリ150の領域153に空き領域が無ければ、ステップS9の処理を行う。ステップS9の処理では、既に不揮発性メモリ150の領域153に記録されている診断コードを順次読出し、診断コードテーブル143と参照して重篤度が低い故障情報を検索する。そして、ステップS10で、重篤度が低い故障情報が記録されている不揮発性メモリ150の領域153に今回の故障情報や診断コードを上書きして記録する。このステップS10の処理の後、若しくはステップS8の処理の後、ステップS11の処理を行う。
【0043】
ステップS11では、今回の故障情報や診断コードに基づいて、電池制御装置100等を毀損する可能性のある異常かを判断する。例えば、重篤度1の場合は、毀損する可能性のあると判断され、次のステップS12の処理で、今回の故障情報や診断コードを車両制御装置400へ送り、車両制御装置400内の不揮発性メモリへ記憶させる。なお、故障情報や診断コードを車両制御装置400へ送ったが、車両内のその他のコントローラへ送り、当該コントローラに記憶させるようにしても良い。ステップS11で、今回の故障情報や診断コードに基づいて、電池制御装置100等を毀損する可能性が無い場合は診断記録のフローチャートを終了する。
【0044】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施の形態を次のように変形して実施することができる。
(1)電池制御装置100等を毀損する可能性のある異常が検出された場合に、今回の故障情報や診断コードを車両制御装置400やその他のコントローラへ送り、記憶させるようにしたが、通信部の無線通信で車両システム外に故障情報や診断コードを送信して、車両システム外の記憶部の保存領域に保存しても良い。車両システム外とは、例えば、無線通信で接続されたサーバ装置などであり、図2の車両制御装置400に替えてサーバ装置とすることが出来る。
【0045】
(2)不揮発性メモリ150の領域153に空き領域が無ければ、ステップS9の処理を行い、既に不揮発性メモリ150の領域153に記録されている診断コードを順次読出し、診断コードテーブル143と参照して重篤度が低い故障情報を検索して、ステップS10で、重篤度が低い故障情報が記録されている不揮発性メモリ150の領域153に今回の故障情報や診断コードを上書きして記録するようにしたが、重篤度が低い故障情報が記録されている不揮発性メモリ150の領域153が検索されなかった場合は、古い故障情報に上書きして記録しても良い。あるいは、重篤度が低い故障情報が記録されている不揮発性メモリ150の領域153が検索されなかった場合は、車両の整備をするように警告情報を報知してもよい。
【0046】
以上の実施形態による電池制御装置は次のような作用効果を奏する。
(1)電池制御装置100が起動される毎にその起動回数を計数し、電池モジュール300の状態を取得して診断を実行し、起動回数と安全保護診断処理部142による前回発生した前回故障情報と今回発生した今回故障情報を不揮発性メモリ150に記憶し、安全保護診断処理部142による診断で異常が判明した場合に、当該異常の今回故障情報が不揮発性メモリ150に記憶されている前回故障情報と同じではないことを判別すると共に、起動回数に基づいて不揮発性メモリ150による診断が電池制御装置100の起動後初めての診断であるかを判別し、前回故障情報と同じではなく、起動後初めての診断であると判別された場合に、今回故障情報を不揮発性メモリ150に記憶するようにした。したがって、故障が発生して、電池制御装置100を再度起動して、その度に同一の異常の発生に陥って同一の故障情報を記録することが無く、また、この起動時に発生した異常に伴って従属的に発生した異常の故障情報を記録することが無く、故障診断に有用な故障情報を優先して不揮発性メモリ150に残すことができる。
【0047】
(2)安全保護診断処理部142による診断で判明した異常が重篤なエラーであるかを判別し、重篤なエラーであると判別された今回故障情報を優先して不揮発性メモリ150に記憶するようにしたので、故障診断により有用な故障情報を優先して不揮発性メモリ150に残すことができる。
【0048】
(3)更に、重篤なエラーを、発生した異常の程度に応じて複数段階のエラーに判別し、複数段階のエラーに応じて、今回故障情報を、発生した異常の程度が低い段階のエラーに優先して不揮発性メモリ150に残すようにしたので、故障診断により有用な重篤なエラーに係わる故障情報を優先して不揮発性メモリ150に残すことができる。
【0049】
(4)安全保護診断処理部142による診断で発生した異常が電池制御装置100の毀損の可能性のあるエラーである場合には、今回故障情報を車両制御装置400の記憶部に記憶するようにしたので、仮に電池制御装置100が毀損して、不揮発性メモリ150から故障情報が読み出すことが出来なくなっても、車両制御装置400の記憶部から読み出して故障診断が可能である。
【0050】
(5)安全保護診断処理部142による診断で発生した異常が電池制御装置100の毀損の可能性のあるエラーである場合には、今回故障情報を通信部を介して車両外に出力して、車両外の記憶部に記憶するようにしたので、仮に電池制御装置100が毀損して、不揮発性メモリ150から故障情報が読み出すことが出来なくなっても、車両外の記憶部から読み出して故障診断が可能である。
【0051】
本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限り、本発明の技術思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
100 電池制御装置
110 基本処理部
120 入力処理部
130 出力処理部
140 アプリケーション処理部
150 不揮発性メモリ
200 セルコントローラ
300 電池モジュール
図1
図2
図3