特許第6248408号(P6248408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6248408
(24)【登録日】2017年12月1日
(45)【発行日】2017年12月20日
(54)【発明の名称】内燃機関の燃料噴射制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/34 20060101AFI20171211BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20171211BHJP
   F02D 41/08 20060101ALI20171211BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20171211BHJP
【FI】
   F02D41/34 C
   F02D41/04 330P
   F02D41/04 325Z
   F02D41/08 325
   F02D45/00 360A
   F02D45/00 314Q
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-83018(P2013-83018)
(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-206070(P2014-206070A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】中村 望
(72)【発明者】
【氏名】川辺 敬
(72)【発明者】
【氏名】平石 文昭
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−197807(JP,A)
【文献】 特開2010−024951(JP,A)
【文献】 特開2008−291816(JP,A)
【文献】 特開2009−215909(JP,A)
【文献】 特開2012−149555(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射する直噴弁と、前記内燃機関の吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射弁とを備えた内燃機関の燃料噴射制御装置であって、
前記直噴弁の温度を推定する直噴弁温度推定手段と、前記直噴弁による燃料噴射を指令する直噴実行手段と、前記ポート噴射弁による燃料噴射を指令するポート噴射実行手段と、 運転状態に応じて前記直噴弁による燃料の噴射量と前記ポート噴射弁による燃料の噴射量との比率を決定し前記直噴実行手段及び前記ポート噴射実行手段にそれぞれ噴射量を指令する比率決定手段とを備え、
前記比率決定手段は、前記ポート噴射実行手段のみによる燃料噴射時に前記直噴弁温度推定手段によって得られた前記直噴弁の温度が第一の所定値以上となったとき、前記直噴弁の温度に応じて前記直噴弁による燃料噴射と前記ポート噴射弁による燃料噴射との噴射量の比率を調整して前記直噴実行手段及び前記ポート噴射実行手段にそれぞれ噴射量を指令し、前記ポート噴射弁と前記直噴弁の両方による燃料噴射が行われている場合はそのままの制御状態を継続し、前記直噴実行手段は、アイドリング中に前記直噴弁による燃料噴射が必要となった場合は前記直噴弁による燃料噴射をアイドリング終了後に実施するように指令するものであり、
前記比率決定手段は、前記第一の所定値より高い第二の所定値を有し、
前記第二の所定値より低いときには前記直噴実行手段より前記ポート噴射実行手段の噴射量を多く設定し、
前記第二の所定値より高いときには前記直噴実行手段より前記ポート噴射実行手段の噴射量を少なく設定してそれぞれの噴射量を指令することを特徴とする内燃機関の燃料噴射制御装置。
【請求項2】
前記温度推定手段は、内燃機関の回転数、負荷の情報に基づいて、前記直噴弁の温度を推定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内燃機関の燃料噴射制御装置、及び、内燃機関の燃料噴射制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、気筒内に直接燃料を噴射する筒内噴射弁(以下、筒内噴射を「直噴」、筒内噴射弁を「直噴弁」と称する。)と、吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射弁とを備えた内燃機関が知られている。
【0003】
この種の内燃機関では、ポート噴射弁のみによる燃料噴射、直噴弁のみによる燃料噴射、あるいは、両方を用いた燃料噴射というように、運転状態に応じて、直噴弁とポート噴射弁とを選択的に又は組み合わせて用いる制御装置及び制御方法を採用している。
【0004】
しかし、直噴弁は燃焼室に直接臨んでいるため、常に、高温の燃焼ガスに晒された状態となる。このため、直噴弁の弁孔周囲には、デポジットと呼ばれる付着物が蓄積し易いという問題がある。デポジットは、主として、燃料の燃えかす、酸化物等である。
【0005】
直噴弁とポート噴射弁とを併用した場合、ポート噴射弁のみによる燃料噴射が長時間継続すると、直噴弁の弁孔周囲の温度が上昇するので、付着物がさらに多くなる傾向がある。付着物が多くなると、直噴弁による適正な燃料噴射の妨げとなるので、好ましくない。
【0006】
そこで、ポート噴射弁のみによる燃料噴射が継続し、直噴弁への付着物が多くなった場合に、強制的に直噴を行うことでデポジットを除去する技術が開示されている。
【0007】
例えば、特許文献1は、直噴弁の先端部に熱電対からなる温度測定手段を設け、直噴弁の先端部における温度が制限値以上となっている場合に、直噴弁による燃料噴射の時期を遅角させることで、直噴弁の先端部の温度を低下させ、デポジットの付着を抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−291123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1の技術は、直噴弁の温度が高くなった際に、デポジット等の付着が多くなることに着目したものである。しかし、特許文献1の技術は、直噴弁の温度が制限値以上となった場合に、直噴弁による燃料噴射の時期を遅角させ、遅角が制限値に達したとき直噴弁の噴射量を増加させるに留まる。すなわち、付着物抑制の対策は、温度に関しては、直噴弁の温度が予め設定した制限値を超えているかのみで判断されている。直噴弁へのデポジット等の付着の度合いは、直噴弁の温度に応じて刻々と変化するので、付着を抑制するには改善の余地がある。
【0010】
そこで、この発明は、直噴弁へのデポジット等の付着を、より確実に抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、この発明は、内燃機関の気筒内に燃料を直接噴射する直噴弁と、前記内燃機関の吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射弁とを備えた内燃機関の燃料噴射制御装置であって、前記直噴弁の温度を推定する直噴弁温度推定手段と、前記直噴弁による燃料噴射を指令する直噴実行手段と、前記ポート噴射弁による燃料噴射を指令するポート噴射実行手段と、運転状態に応じて前記直噴弁による燃料の噴射量と前記ポート噴射弁による燃料の噴射量との比率を決定し前記直噴実行手段及び前記ポート噴射実行手段にそれぞれ噴射量を指令する比率決定手段とを備え、前記比率決定手段は、前記ポート噴射実行手段による燃料噴射時に前記直噴弁温度推定手段によって得られた前記直噴弁の温度が第一の所定値以上となったとき、前記直噴弁の温度に応じて前記直噴弁による燃料噴射と前記ポート噴射弁による燃料噴射との噴射量の比率を調整して前記直噴実行手段及び前記ポート噴射実行手段にそれぞれ噴射量を指令する内燃機関の燃料噴射制御装置を採用したのである。
【0012】
直噴弁の温度が制限値である第一の所定値以上となった際、比率決定手段は、直噴弁による燃料噴射と、同時に実行するポート噴射弁による燃料噴射との燃料の比率を、直噴弁の温度に基づいて調整する。具体的には、直噴弁の温度が比較的高ければ、デポジット等の付着が多くなるので、直噴弁による燃料の噴射量を相対的に増やすことが望ましい。また、直噴弁の温度が比較的低ければ、デポジット等の付着が少なくなるので、直噴弁による燃料の噴射量を相対的に減らすことが望ましい。
【0013】
すなわち、直噴弁の温度が第一の所定値以上となった後、その時点における直噴弁の温度に応じた比率で、直噴とポート噴射とを実行できる。このため、直噴弁へのデポジット等の付着状況に応じた噴射配分を実現でき、デポジット等の付着をより確実に抑制できる。また、直噴弁の温度に応じた比率で燃料噴射できるので、直噴弁による燃料の噴射量を必要最小限に抑え、機関の回転を安定させることができる。さらに、直噴弁による燃料の噴射量を必要最小限に抑えることで、直噴に必要な高圧ポンプの駆動時間、負荷を低減することができる。
【0014】
この構成において、前記比率決定手段は、前記第一の所定値より高い第二の所定値を有し、前記第二の所定値より低いときには前記直噴実行手段より前記ポート噴射実行手段の噴射量を多く設定し、前記第二の所定値より高いときには前記直噴実行手段より前記ポート噴射実行手段の噴射量を少なく設定してそれぞれの噴射量を指令する構成とできる。
【0015】
この構成では、直噴弁の温度が予め設定した第一の所定値以上となった場合に、その温度が第二の所定値を上回っているかどうかで、直噴とポート噴射との比率を決定する。
例えば、直噴弁の温度が第二の所定値以上であれば、デポジット等の付着が比較的多くなるので、直噴弁による燃料の噴射量をポート噴射弁による燃料の噴射量よりも多くする、あるいは、直噴弁の温度が第二の所定値を下回れば、デポジット等の付着が比較的少ないので、直噴弁による燃料の噴射量をポート噴射弁による燃料の噴射量よりも少なくすることができる。
【0016】
これらの第一の所定値、第二の所定値の各温度は、予め実験等によって、直噴弁の温度と、直噴弁への付着物の状態との関係を求めておくことにより適宜設定することができる。
【0017】
これらの各構成において、前記温度推定手段は、内燃機関の回転数、負荷の情報に基づいて、前記直噴弁の温度を推定する構成とできる。内燃機関の回転数、負荷の情報に基づいて、直噴弁の温度を推定するようにすれば、直噴弁やその周囲に温度センサ等を設ける必要がなく、長期間の使用による温度センサの劣化を危惧する必要がない。直噴弁の温度は、例えば、内燃機関の回転数、負荷の各情報をパラメータとし、それらのパラメータと直噴弁の温度又はその周囲の部材の温度との関係を、予め実験データで取得しておくことで推定できる。
【0018】
ところで、ポート噴射弁のみによる燃料噴射が継続しているアイドリング中に、直噴弁による燃料噴射を行うと、機関の回転が不安定になり、状況によってはエンスト(機関停止)する可能性がある。このため、直噴弁による強制的な燃料噴射は、内燃機関のアイドリング中は行わないことが望ましい場合もある。
【0019】
そこで、これらの各構成において、前記直噴実行手段は、アイドリング中に前記直噴弁による燃料噴射が必要となった場合に、前記直噴弁による燃料噴射をアイドリング終了後に実施するように指令する構成とできる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、直噴弁の温度が第一の所定値以上となった際、その時点における直噴弁の温度に応じた比率で直噴とポート噴射とを実行できる。このため、直噴弁へのデポジット等の付着状況に応じた噴射配分を実現でき、デポジット等の付着をより確実に抑制することができる。また、直噴弁による燃料の噴射量を必要最小限に抑え、機関の回転を安定させ、さらに、直噴に必要な高圧ポンプの駆動時間、負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のエンジンの燃料噴射制御装置の概略を示すダイヤグラムである。
図2】第一の実施形態を示す内燃機関の燃料噴射制御装置の制御フローチャートである。
図3】エンジンの回転数と負荷との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の第一の実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は、この発明の内燃機関の燃料噴射制御装置として、自動車用の4サイクルガソリンエンジン(以下、単に「エンジン」と称する。)1の構成を示している。
【0023】
エンジン1は、シリンダ2の気筒上部に、燃焼室3内の燃料に点火するための点火プラグ5が設けられている。また、気筒上部のやや側方には、燃焼室3内に燃料を直接噴射する直噴弁20が設けられている。
【0024】
点火プラグ5の側方には、燃焼室3内に燃料を送り込むための吸気ポート6が設けられている。吸気ポート6には、燃料を噴射するポート噴射弁10と、燃焼室3側の出口を開閉する吸気弁8とが設けられている。
【0025】
吸気ポート6からの燃料の供給は、ピストン4が下降して気筒内が負圧になることによって行われる。ポート噴射弁10から燃料が噴射されると、吸気弁8が開放した状態で、燃料及び空気が燃焼室3内に送り込まれる。ポート噴射弁10による燃料の噴射は、吸気行程のやや前段、機関が膨張行程から排気行程へ移行するタイミングで行われる。また、直噴弁20からの燃料の噴射は、ピストン4が下降する吸気行程中のタイミングで行われる。
【0026】
ポート噴射弁10と直噴弁20への燃料の送り込みは、燃料タンク11に設けられたポンプ12を用いて行われる。ポンプ12は、燃料タンク11内の燃料をポート噴射弁10及び直噴弁20へ向かって送り出す。ここで、直噴弁20はポート噴射弁10より燃料噴射圧が高いため、直噴弁20に至る供給ルートの途中に、高圧の直噴用ポンプ21が用いられている。
【0027】
ポート噴射弁10と直噴弁20からの燃料の噴射は、ポート噴射弁10と直噴弁20のそれぞれが備える電磁弁が開閉することにより、燃料の噴射、噴射の停止が切り替えられ、また、噴射量の増減の調整が行われる。
【0028】
燃料噴射制御装置は、図1に示すように、エンジン1を制御する電子制御ユニット30に設けられた噴射弁制御手段31、直噴弁温度推定手段32、直噴実行手段33、ポート噴射実行手段34、比率決定手段35から成る。
【0029】
ポート噴射弁10及び直噴弁20による燃料噴射に関する通常の制御は、電子制御ユニット(ECU)30が備える噴射弁制御手段31によって、運転状況に応じて行われる。
【0030】
直噴弁温度推定手段32は、直噴弁20の先端部の温度を推定する機能を有する。この実施形態では、エンジン1の回転数、負荷の各情報をパラメータとし、それらのパラメータと直噴弁20の温度との関係を、予め実験データで取得しておくことで、直噴弁20の温度を推定している。一般に、エンジン1の回転数が高いほど、単位時間当たりの燃料噴射の回数が増えるので燃焼熱が大きくなり、直噴弁20の温度は高くなる傾向がある。また、負荷が大きいほど、1回当たりの燃料の噴射量が増えるので燃焼熱が大きくなり、直噴弁20の温度が高くなる傾向がある。
【0031】
推定の手法は、例えば、実験データに基づいて、エンジン1の回転数、負荷の各数値の組合わせに対して、直噴弁20の温度を対応させておき、取得されたエンジン1の回転数、負荷の各情報から、推定される直噴弁20の温度を導き出す手法がある。また、実験データに基づいて、エンジン1の回転数、負荷の各数値から直噴弁20の温度を算出する近似式を作成しておき、その近似式を適用して直噴弁20の温度を導き出す手法がある。
【0032】
また、前記パラメータとして、エンジン1の回転数、負荷に代えて、それ以外の情報、例えば、冷却水の水温やシリンダヘッドの温度等の他の情報等を用いてもよい。あるいは、エンジン1の回転数、負荷の情報に加えて、冷却水の水温やシリンダヘッドの温度等の他の情報等を追加してもよい。ここで、推定する直噴弁20の温度は、直噴弁20の先端部の温度としている。直噴弁20の先端部が、デポジット等が付着する場所だからである。
【0033】
直噴実行手段33は、直噴弁20への付着物を除去、抑制するために、直噴弁20による強制的な燃料噴射を指令する機能を有する。指令は、直噴弁温度推定手段32による直噴弁20の推定温度に基づいて、ポンプ12、直噴用ポンプ21、電磁弁等に対して出される。
【0034】
ポート噴射実行手段34は、直噴実行手段33の指令により直噴弁20が燃料噴射を実行する際、必要に応じて、ポート噴射弁10による燃料噴射の実行を同時に指令する機能を有する。ポート噴射実行手段34及び直噴実行手段33の指令は、通常の制御に用いられる噴射弁制御手段31の指令に優先する。
【0035】
比率決定手段35は、直噴実行手段33の指令による直噴弁20の燃料噴射と、ポート噴射実行手段34の指令によるポート噴射弁10の燃料噴射とを同時に実行する際に、直噴弁20による燃料の噴射量とポート噴射弁10による燃料の噴射量との比率を、直噴弁20の温度に基づいて調整する機能を有する。
【0036】
また、電子制御ユニット30は、エンジン1が備える回転数検出手段41や負荷検出手段42、冷却水の水温検出手段43の情報が取得できるようになっている。回転数検出手段41は、クランク角センサ等からの情報に基づいて、エンジンの回転数の情報を取得する。また、負荷検出手段42は、アクセルペダルに連動するスロットルバルブの開度や、燃料噴射量、エンジンの回転数、車速等の情報に基づいて、エンジンへの負荷の情報を取得する。
【0037】
図2は、第一の実施形態のエンジンの燃料噴射制御装置を用いた制御方法を示すフローチャートである。
【0038】
ステップS1、S2において、直噴弁温度推定手段32は、エンジン1の回転数、負荷、冷却水の水温の各情報を読み込み、その情報を基に、直噴弁20の先端部の温度を推定する。
【0039】
つぎに、ステップS3において、燃料噴射の制御状態を判別する。すなわち、ポート噴射弁10のみによる燃料噴射が行われている状態、直噴弁20のみによる燃料噴射が行われている状態、ポート噴射弁10と直噴弁20の両方を用いた燃料噴射が行われている状態、あるいは、燃料がカットされている状態等を判別する。
燃料噴射の制御状態は、電子制御ユニット30から各インジェクタへの指令を読み取って判別してもよいし、回転数検出手段41からのエンジン回転数の情報と負荷検出手段42からのエンジン負荷の情報に基づいて判別してもよい。
【0040】
図3は、エンジン回転数とエンジン負荷の数値に基いて決定される燃料噴射の制御状態の一例を示している。比較的低回転、低負荷の領域では、ポート噴射弁10のみによる燃料噴射が行われる(図中の「ポート噴射オンリー」運転領域参照)。また、高負荷の領域では、ポート噴射弁10による燃料噴射と、直噴弁20による燃料噴射の両方が行われる(図中の「直噴+ポート噴射」運転領域参照)。
【0041】
燃料噴射がポート噴射弁10のみではない場合、例えば、ポート噴射弁10と直噴弁20の両方による燃料噴射が行われている場合、そのままの制御状態が継続される。ポート噴射弁10のみによる燃料噴射が行われている場合、すなわち、ポート噴射オンリー運転領域である場合、ステップS4へ移行する。
【0042】
ステップS4おいて、エンジン1がアイドリング中であるか否かを判断する。アイドリング中であるか否かは、エンジン回転数やエンジン負荷、あるいは、このエンジン1を搭載する自動車が備える車速センサ等からの情報を基に、電子制御ユニット30が判断できる。
【0043】
ここで、アイドリング中であるか否かを判断するのは、アイドリング中に直噴弁20による燃料噴射を行うと、機関の回転が不安定になり、状況によってはエンスト(機関停止)する可能性があるからである。直噴弁20による強制的な燃料噴射は、エンジン1のアイドリング中は行わないことが望ましい。
【0044】
そこで、ステップS4において、エンジン1がアイドリング中であると判断した場合は、そのままの制御状態が継続され、ステップS1へ復帰する。エンジン1がアイドリング中ではないと判断した場合は、ステップS5へ移行する。
【0045】
ステップS5おいて、直噴弁20の温度が、第一の所定値(以下、「所定値1」と称する。)以上となっているかどうかを判断する。
【0046】
直噴弁20の温度が所定値1未満であれば、直噴弁20への付着物が許容限度を超えていないと判断し、ポート噴射弁10のみによる燃料噴射の状態を継続させる(ステップS9参照)。以後、ステップS1に復帰する。
【0047】
直噴弁20の温度が所定値1以上であれば、直噴弁20への付着物が許容限度を超えていると判断し、直噴弁20による燃料噴射を指令するために、ステップS6へ移行する。
【0048】
ここで、水温検出手段43によって得られた直噴弁20の温度の情報は、リアルタイムに直噴実行手段33が取得している。また、所定値1は、予め実験データ等に基づいて算定されており、その値が直噴実行手段33に記憶されている。
【0049】
ステップS6において、直噴弁20の温度が、第二の所定値(以下、「所定値2」と称する。)以上であるかどうかを判断する。
【0050】
直噴弁20の温度が所定値2未満であれば、直噴弁20への付着物は、まだ比較的少ない状態であると判断し、ステップS8へ移行する。ステップS8では、直噴実行手段33が直噴弁20による燃料噴射を指令し、同時に、ポート噴射実行手段34がポート噴射弁10による燃料噴射を指令するので、直噴とポート噴射の両方が実行される。
【0051】
このとき、比率決定手段35は、その時点における直噴弁20の温度に基づいて、直噴弁20による燃料の噴射量と、ポート噴射弁10による燃料の噴射量との比率を決定する。決定は、直噴実行手段33及びポート噴射実行手段34に指令され、決定された燃料の比率で、直噴弁20による燃料噴射、ポート噴射弁10による燃料噴射が実行される。
【0052】
ステップS8では、直噴弁20の温度が所定値1以上であるものの、所定値2を下回っており、比較的温度が低い状態である。このため、デポジット等の付着が少ないことが予想される。したがって、直噴弁20による燃料の噴射量を、ポート噴射弁10による燃料の噴射量よりも相対的に少なく設定している。
【0053】
また、ステップS6において、直噴弁20の温度が所定値2以上であれば、直噴弁20への付着物は比較的多い状態であると判断し、ステップS7へ移行する。ステップS7においても、直噴実行手段33が直噴弁20による燃料噴射を指令し、同時に、ポート噴射実行手段34がポート噴射弁10による燃料噴射を指令するので、直噴とポート噴射の両方が実行される。
【0054】
ステップS7では、直噴弁20の温度が所定値1以上、且つ、所定値2以上であり、比較的温度が高い状態である。このため、デポジット等の付着が多いことが予想される。したがって、比率決定手段35は、直噴弁20による燃料の噴射量を、ポート噴射弁10による燃料の噴射量よりも相対的に多く設定している。このとき、ポート噴射弁10による燃料の噴射量を0とし、直噴弁20のみによる燃料噴射としてもよい。
【0055】
比率決定手段35は、決定した燃料の噴射量の比率を、直噴実行手段33及びポート噴射実行手段34に指令し、その比率で、直噴弁20による燃料噴射、ポート噴射弁10による燃料噴射が実行される。以後、ステップS1へ復帰し、この過程を繰り返すことになる。
【0056】
なお、ステップS4で示すアイドリング中における直噴の禁止機能を省略することもできる。アイドリング中に直噴弁20による燃料噴射を実行することが許されるエンジン1の仕様である場合には、このような制御を採用することができる。
【0057】
上記の各実施形態では、自動車用の4サイクルガソリンエンジンを例に説明したが、この実施形態には限定されず、この発明は、例えば、2サイクルガソリンエンジンにも適用できる。また、自動車以外の各種輸送機器、産業機械に用いられるレシプロエンジンにも、この発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 内燃機関(エンジン)
2 シリンダ
3 燃焼室
4 ピストン
5 点火プラグ
6 吸気ポート
7 排気ポート
10 ポート噴射弁
11 燃料タンク
12 ポンプ
20 筒内噴射弁(直噴弁)
21 直噴用ポンプ
30 電子制御ユニット(ECU)
31 噴射弁制御手段
32 直噴弁温度推定手段
33 直噴実行手段
34 ポート噴射実行手段
35 比率決定手段
41 回転数検出手段
42 負荷検出手段
43 水温検出手段
図1
図2
図3