【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、有底円筒状の外装缶の開口部が、絶縁ガスケットを介して封口板によりカシメ封口された密閉型電池であって、前記封口板には、電池内圧上昇時に前記封口板の変形の起点となる薄肉部を備え、電池内圧上昇時には、前記封口板の変形により前記絶縁ガスケットと前記封口板との間に隙間が生じて、前記外装缶内部のガスが前記外装缶外部に排出されることを特徴とする。
【0015】
上記構成による効果を、
図1、2を用いて説明する。
図1は、本発明に係る密閉型電池の断面図であり、
図2は、本発明に係る密閉型電池の封口部分の内圧上昇による変形を説明する図である。
【0016】
本発明に係る密閉型電池の封口板10には、
図1、2に示すように、他の部分よりも肉厚の薄い薄肉部10aが設けられており、これにより当該部分の強度が弱められている。このため、電池内圧上昇時には、薄肉部10aを起点に封口板10が変形する(
図2(a)、(b)参照)。そして、封口板10の変形が進行すると、絶縁ガスケット11と封口板10との接触が緩み、封口板10と絶縁ガスケット11との間にガス排出可能な隙間が生じる(
図2(c)、(d)参照)。これにより、速やかに電池に大きな開口部が形成されるので、急速にガスが発生してもガス排気能力が十分に追随できる。よって、開口形成後に外装缶5の側壁に内圧によるダメージが加わるおそれがなく、外装缶5の側壁での亀裂発生を顕著に抑制できる。これにより、外装缶5内部のガスや電解液の排出方向を封口板10側のみに誘導できる。このため、外装缶10の側壁方向に隣接する部材に悪影響を及ぼすことが防止され、例えば本発明に係る密閉型電池を組電池に使用する場合、一つの単電池に異常が発生しても、組電池を構成する他の単電池の安全性を害することが防止される。
【0017】
上記構成において、前記封口板は、一枚の板状部材により構成されている。封口板10が一枚の板状部材であると、内圧上昇時に封口板10を変形させ易くなり、絶縁ガスケット11からの離脱をより速めることができるとともに、封口板10の製造が簡便となる。
【0018】
ここで、一枚の板状部材とは、実質的に一枚の板より構成されていればよく、例えば複数の材料が貼りあわされ、一体化された一枚のクラッド材により構成されていてもよい。また、板状部材は、厚みが一定であってもよく、厚みの変化があってもよく、強度を高める等の目的で1又は2以上の段差部10bが形成されていてもよい。また、電池外の要素との接続の接点となる部材等が、部分的に付加されている構成であってもよい。
【0019】
上記構成において、前記封口板は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる構成とすることができる。アルミニウム又はアルミニウム合金は、軽量で変形し易く、且つ電解液に対する耐性が高いので、封口板の材料として好適である。
【0020】
上記構成において、前記外装缶の側壁には、電池軸方向に突出した溝入れ部が設けられ、前記薄肉部は、前記溝入れ部よりも内周側に設けられている構成とすることができる。
【0021】
カシメ封口を行う場合、外装缶5の側壁に電池軸方向に突出した溝入れ部5aが設けられることが多いが、溝入れ部5aよりも外側の封口板部分には、電池内部の圧力がほとんど作用しないので、この部分に薄肉部10aを設けた場合には、本発明の効果が小さくなるおそれがある。このため、溝入れ部5aを形成する場合、薄肉部10aは、溝入れ部5aよりも内側の封口板部分を含んで設けられることが好ましく、溝入れ部5aよりも内側の封口板部分のみに設けることがより好ましい。
【0022】
また、封口板10の全体が、外装缶5の天面よりも低い位置にある構成とすることが好ましい。封口板10の全体が、外装缶5の天面よりも低い位置にあると、スペース効率を高めることができるとともに、封口板10に直接衝撃が作用することを抑制できるので、封口板10の無用な変形を抑制できる。
【0023】
なお、
図1では、電池内方に凸の段差部10bを設けることにより上記構成を達成しているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、封口板10は、段差のない平坦な構成であってもよく、電池外方に凸の段差部を備えていてもよい。また、同一方向に凸又は異なる方向に凸の複数の段差部を備えた構成であってもよい。
【0024】
上記構成において、電池内圧上昇の進行により、前記封口板は前記外装缶から完全に離脱する構成とすることができる。この構成によると、ガス排出を行う開口面積を非常に大きくできるため、好ましい。
【0025】
上記構成において、前記密閉型電池は、正極板を有するリチウムイオン二次電池であり、前記正極板は、一般式Li
xNi
yM
1−yO
2(0.95≦x≦1.10、MはCo、Mn、Cr、Fe、Mg、TiおよびAlの少なくとも1種類、0.6≦y≦0.95)で表されるリチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として含み、前記密閉型電池の体積エネルギー密度が、500Wh/L以上である構成とすることができる。
【0026】
上記リチウムニッケル複合酸化物は、従来よりリチウムイオン二次電池の正極活物質として使用されているリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)よりも容量が大きく、エネルギー密度が高く、且つ安価であるので、体積エネルギー密度が、500Wh/L以上の高エネルギー密度の電池を低コストで得ることができる。ところで、リチウムニッケル複合酸化物を用いた場合には、リチウムコバルト複合酸化物を用いた場合よりも、電池の異常時におけるガスの発生量が多量となるという問題がある。しかし、本発明の構成を採用することにより、上記のようなガスが急速に発生する電池においても、外装缶の側壁に亀裂が生じることを抑制することができる。ここで、上記リチウムニッケル複合酸化物の質量は、正極活物質全質量の50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることがさらに好ましい。
【0027】
ここで、薄肉部10aの個数は、
図3〜5に示すように、1つであってもよく、2以上であってもよい。また、薄肉部の平面形状は特に限定されることはなく、例えば、直線状や曲線状のような線状であってもよく、多角形、円形、その他不定形のような平面状であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。また、複数の薄肉部を設ける場合、これらの配置は規則的(同一サイズで等間隔)であってもよく、長さや間隔が異なるランダム配置であってもよく、一部が重なるような配置であってもよい。
【0028】
例えば、薄肉部10aは、
図3に示すように、1又は複数本の直線状である構成とすることができる。ここで、直線状は、
図3(a)に示すように封口板10の直径に沿った直線状であってもよく、
図3(b)に示すように封口板10の直径に沿わない直線状であってもよい。また、複数本の直線状を設ける場合、
図3(c)に示すように、封口板10に均等に(等間隔に)配置されている構成であってもよく、
図3(d)に示すように不均等に(ランダムに)配置されている構成であってもよい。
【0029】
また、薄肉部10aは、
図4に示すように、1又は複数本の曲線状である構成とすることができる。ここで、曲線状は、封口板10の外周線と同心円状(
図4(a)参照)や同心円弧状(
図4(b)参照)であってもよく、封口板10の外周線と同心円状ではない1又は複数の曲線状
であってもよい(
図4(c)、(d)参照)。
【0030】
また、薄肉部10aは、
図5に示すように、平面状である構成とすることができる。平面形状は特に限定されず、多角形(
図5(a)参照)、円形、楕円形、扇形、その他不定形(
図5(b)参照)とすることができる。また、
図5(c)、(d)に示すように、薄肉部は、直線状、曲線状、平面状の組み合わせとしてもよい。また、複数の薄肉部10aは、一部が重なり合っている構成であってもよく(
図5(c)参照)、重なり合わない構成(
図5(d)参照)であってもよい。
【0031】
また、薄肉部の断面形状は特に限定されることはない。例えば、線状の薄肉部の場合、断面形状は、V字(三角形)状、四角形状、U字状、半円状等の凹部によるものとすることができ、溝深さは一定であってもよく、変化していてもよい。また、平面状の薄肉部の場合、封口板面に平行な平坦面を備える構成であってもよく、規則的な凹凸や不規則な凹凸を有する凹凸面を備える構成であってもよい。なお、薄肉部の破断が生じないように、凹部の角部を鈍角ないしRを付けた構成としたり、薄肉部を電池内がわ面に形成した凹部からなる構成としたり、薄肉部の残肉厚を破断し難い厚みとしたりすることが好ましい。
【0032】
ここで、薄肉部10aは、
図3〜5、
図7(b)に示すように、封口板10の電池内がわ面に凹部を設けることにより形成してもよいが、
図6(a)、(b)、
図7(a)に示すように、封口板10の電池外がわ面に凹部を設けることにより形成してもよい。さらに、
図6(c)、(d)、
図7(c)、(d)に示すように、封口板10の両面に凹部を設けることにより形成してもよい。ここで、
図6では、電池外がわ面に凹部を設けた場合には破線で薄肉部10aを示している。封口板10の両面に凹部を形成する場合、封口板10を平面透視したときに、両面に形成された凹部が一致するように配置してもよく(
図7(d)参照)、両面に形成された凹部が重ならないように配置してもよく(
図6(c)、
図7(c)参照)、両面に形成された凹部の一部が重なるように配置してもよい(
図6(d)参照)。
【0033】
また、薄肉部10aの配置は、特に限定されることはない。しかしながら、絶縁ガスケット11によりかしめられた部分は、内圧上昇時に変形することがないので、この部分に薄肉部が設けられていた場合、本発明でいう電池内圧上昇時に封口板の変形の起点となる薄肉部には該当しない。すなわち、絶縁ガスケット11によりかしめられていない封口板部分に、薄肉部10aの少なくとも一部が存在するようにすることが必須である。また、かしめられた部分に薄肉部が存在すると、封口信頼性を害するおそれがあるので、封口板10のかしめられた部分には、薄肉の部分が存在しないようにすることが好ましい。また、封口板10に段差部10bを設ける場合、段差部10bよりも外側部分に薄肉部10aの少なくとも一部が存在するようにすることが好ましい。
【0034】
また、薄肉部の形成方法は、特に限定されないが、プレス加工により形成することが簡便であり好ましい。
【0035】
また、封口板は、電池の正負電極のいずれか一方の外部端子を兼ねる構成とすることが好ましい。このような構成とすることにより、電池構造を簡略化できる。また、外装缶は、他方の外部端子を兼ねる構成とすることが好ましい。