(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記発熱量導出部により導出された発熱量の推移に基づいて現在の発熱量が異常であるか否か診断する異常診断部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のガスメーターシステム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(ガスメーターシステム100)
図1は、ガスメーターシステム100の情報伝達に関する概略的な構成を示した説明図である。
図1に示すように、ガスメーターシステム100は、複数の第1ガスメーター110と、複数の第2ガスメーター111と、複数のゲートウェイ機器112と、複数のガス生成工場114と、センター装置116とを含んで構成される。
【0020】
第1ガスメーター110は、その需要箇所120に供給されたガスの測定時の温度での単位体積あたりの発熱量(以下、単位発熱量とも呼ぶ)、および、第1ガスメーター110を通過したガスの通過発熱量(総発熱量)を導出し、また、センター装置116からの指令や計測された流量や発熱量などに応じて需要箇所120に設置された機器122に流れるガスを制御する。
【0021】
第2ガスメーター111は、その需要箇所120に供給されたガスの流量を導出し、また、センター装置116からの指令や計測された流量に応じて需要箇所120に設置された機器122に流れるガスを制御する。
【0022】
ゲートウェイ機器112は、第1ガスメーター110および第2ガスメーター111のデータを収集し、また、第1ガスメーター110および第2ガスメーター111に対してデータを配信する。
【0023】
ガス生成工場114は、需要箇所に供給する炭化水素系のガスを生成する。
【0024】
センター装置116は、コンピュータ等で構成され、ガス事業者等、ガスメーターシステム100の管理者側に属する。センター装置116は、1または複数のゲートウェイ機器112のデータを収集し、また、1または複数のゲートウェイ機器112に対してデータを配信する。したがって、あらゆる需要箇所120に配置される第1ガスメーター110および第2ガスメーター111が有する情報を、センター装置116で一括管理することができる。
【0025】
ここで、ゲートウェイ機器112とセンター装置116との間は、例えば、基地局118を含む携帯電話網やPHS(Personal Handyphone System)網等の既存の通信網を通じた無線通信が実行される。また、第1ガスメーター110同士、第2ガスメーター111同士、および、第1ガスメーター110と第2ガスメーター111とゲートウェイ機器112との間は、例えば、920MHz帯を利用するスマートメーター用無線システム(U−Bus Air)を通じた無線通信が実行される。
【0026】
また、センター装置116は、ガス生成工場114に対して既存の通信網を通じた有線通信が実行され、1または複数のガス生成工場114の情報を収集する。
【0027】
図2は、ガス供給導管網130を示す図である。
図2に示すように、ガス供給導管網130は、複数の第1ガスメーター110、複数の第2ガスメーター111、および、複数のガス生成工場114に張り巡らされたガス供給管132により構成されている。換言すると、複数の第1ガスメーター110、複数の第2ガスメーター111、および、複数のガス生成工場114は、ガス供給導管網130(ガス供給管132)を介して接続されている。
【0028】
そして、複数のガス生成工場114で生成されたガスは、ガス供給導管網130を構成するガス供給管132を通して第1ガスメーター110および第2ガスメーター111に供給される。したがって、ガス供給導管網130には、複数のガス生成工場114で生成されたガスが供給されることになるが、ガス管内でのガスの拡散よりもガス管内でのガス輸送による移動の方が圧倒的に速いため、複数のガス生成工場114で生成されたガスが混ざり合うことは殆どない。
【0029】
一方、第1ガスメーター110および第2ガスメーター111では、複数のガス生成工場114で生成されたガスのうち、いずれかのガス生成工場114で生成されたガスが供給されることになる。そして、同一の第1ガスメーター110または第2ガスメーター111であっても、時間によっては、供給されるガスの生成元(ガス生成工場114)、つまり供給されるガスが異なる場合がある。
【0030】
このように、ガスメーターシステム100では、例えば第2ガスメーター111から第1ガスメーター110に交換する過渡期において、ガスの流量のみを導出する第2ガスメーター111と、単位発熱量を導出することが可能な第1ガスメーター110とが共に設置される期間が発生してしまう。このような過渡期には、ガスの通過体積に基づいて課金される需要者と、単位発熱量および流量、即ち通過発熱量に基づいて課金される需要者との間で、不公平になってしまうおそれがある。
【0031】
そこで、本発明のガスメーターシステム100では、第2ガスメーター111の単位発熱量と、その第2ガスメーター111に対してガス供給導管網130において所定範囲内に設置された第1ガスメーター110で導出された単位発熱量とが同等になることに基づいて、第2ガスメーター111の通過発熱量を推定する。これにより、ガスの通過体積のみが導出可能な第2ガスメーター111でのガスの単位発熱量を精度よく求めることが可能となる。以下、第1ガスメーター110、第2ガスメーター111およびセンター装置116の詳細について説明する。
【0032】
(第1ガスメーター110)
図3は、第1ガスメーター110の概略的な構成を示した機能ブロック図である。第1ガスメーター110は、超音波流量計150と、遮断弁152と、通信回路154と、ガスメーター記憶部156と、ガスメーター制御部158とを含んで構成される。
【0033】
図4は、超音波流量計150の構成を示した図である。超音波流量計150は、到達時間差式の流量計であり、
図3に示すように、ガス流路140の流れ(
図4中、白抜き矢印で示す)に沿って上流と下流との二箇所に配置された一対の超音波送受信器150a、150bを含んで構成され、一方の超音波送受信器150a、150bから他方の超音波送受信器150b、150aへガス内を超音波が伝播する伝播時間を単位時間ごとに双方向に計測できるようになされている。かかる伝播時間t1、t2は後述する音速導出部160で用いられる。
【0034】
ここで、一対の超音波送受信器150a、150bは、ガス流路140のそれぞれ上流側と下流側に配設されるため、両者間を伝播する超音波はガスの流速の影響を受け、上流側から下流側に伝播される超音波は加速され、下流側から上流側に伝播される超音波は減速される。ここでは、上流側の超音波送受信器150aから下流側の超音波送受信器150bに伝播される超音波の伝播時間をt1とし、下流側の超音波送受信器150bから上流側の超音波送受信器150aに伝播される超音波の伝播時間をt2とする。
【0035】
図3に戻り、遮断弁152は、例えばソレノイドやステッピングモータを用いた電磁弁等で構成され、ガス流路140を遮断または開放する。通信回路154は、ゲートウェイ機器112、他の第1ガスメーター110、第2ガスメーター111と無線通信を確立する。ガスメーター記憶部156は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、第1ガスメーター110に用いられるプログラムや各種データを記憶する。
【0036】
ガスメーター制御部158は、CPUやDSPで構成され、ガスメーター記憶部156に格納されたプログラムを用い、第1ガスメーター110全体を制御する。また、ガスメーター制御部158は、音速導出部160、流量導出部162、発熱量導出部164、通過発熱量導出部166、遮断部168、メーター通信部170として機能する。
【0037】
音速導出部160は、超音波流量計150で計測された伝播時間t1、t2に基づいて音速を導出する。流量導出部162は、超音波流量計150で計測された伝播時間t1、t2に基づいてガスの流量を導出する。発熱量導出部164は、音速導出部160で導出された音速に基づいて、ガスの単位発熱量(MJ/m
3)を導出する。一般に、ガスは温度が高いと膨張し低いと収縮するが、本発明では測定時の温度での単位体積当たりの発熱量を導出する。
【0038】
通過発熱量導出部166は、発熱量導出部164で導出されたガスの単位発熱量と、流量導出部162で検出された流量とに基づいて、第1ガスメーター110を通過したガスの通過発熱量、つまり、第1ガスメーター110が設けられた需要箇所で消費されたガスの総発熱量を導出する。遮断部168は、遮断弁152を制御してガスの需給を制御する。メーター通信部170は、通信回路154を通じてセンター装置116と情報交換し、例えば、発熱量導出部164で導出された単位発熱量、および、通過発熱量導出部166で導出された通過発熱量を1時間毎にセンター装置116に送信する。ただし、遮断部168や遮断弁152を備えない構成でも本実施形態は成り立つ。
【0039】
以下に、音速導出部160、流量導出部162、発熱量導出部164、通過発熱量導出部166の詳細な処理について説明する。
【0040】
(音速導出部160)
図5は、超音波流量計150の超音波送受信器150a、150bで受信される超音波の波形を説明する図である。
図5に示すように、超音波流量計150の超音波送受信器150aまたは150bで受信される超音波は、受信され始めた直後では振幅が小さく、徐々に振幅が大きくなり、数周波長後に振幅のピークを迎え、その後、再び振幅が小さくなる。そして、超音波送受信器150a、150bでは、対をなす超音波送受信器150b、150aから発信された超音波を受信する際、感度やS/N比の問題から振幅が小さい最初の数周波長分の到達時間を高精度に規定することが困難であり、振幅がある程度大きくなった数周波長後の超音波がゼロクロスしたときに(
図5中、黒点で示す)、超音波を受信したと判定する。
【0041】
したがって、超音波流量計150では、超音波を発信してから受信するまでの伝播時間t1、t2が、本来の到達時間に相当する到達時間よりも約2波長分に相当する遅延到達時間だけ長い時間となってしまう。つまり、伝播時間t1、t2には、遅延到達時間分の誤差が生じていることになる。
【0042】
ここで、詳しくは後述するように、流量導出部162で導出されるガスの流量については、伝播時間t1と伝播時間t2との差分に基づいて導出される。そのため、伝播時間t1、t2が共に本来の到達時間に相当する到達時間に対して遅延到達時間分の誤差を有したとしても、伝播時間t1および伝播時間t2の差分を取ることにより遅延到達時間が相殺されるため、流量を導出する際にこの誤差の影響が小さくなる。
【0043】
一方で、音速導出部160では、超音波流量計150で計測された伝播時間t1、t2に基づいて音速を導出するため、伝播時間t1、t2に遅延到達時間分の誤差があると、音速を導出する際にこの誤差の影響を受ける。
【0044】
そこで、音速導出部160では、超音波流量計150で計測された伝播時間t1、t2から、誤差である遅延到達時間を減算し、本来の到達時間に相当する到達時間ta1、ta2を導出し誤差の影響を出来るだけ小さくする。
【0045】
そして、本来の到達時間に相当する到達時間ta1、ta2は、式(1)のように表すことができる。
【数1】
なお、Lは一対の超音波送受信器150a、150b間の距離を示し、Vはガスの流速を示す。
【0046】
したがって、音速導出部160は、本来の到達時間に相当する到達時間ta1、ta2に基づいて、上記の式(1)を連立させた下記の式(2)を用いて、音速Cを導出する。
【数2】
【0047】
このように、音速導出部160は、超音波流量計150で計測された伝播時間t1、t2から、振幅が小さく検出することができない超音波の遅延到達時間を減算し、本来の到達時間に相当する到達時間ta1、ta2に基づいて、上記の式(1)を連立させた下記の式(2)を用いて、音速Cを導出することで、精度よく音速Cを導出することができる。なお、遅延到達時間は、実験により予め音速導出部160の1台1台に対して測定しておいてもよく、同一設計の音速導出部160では標準の遅延到達時間を計測して1台1台の測定を省略してもよい。また、発信した超音波の発信時間と、受信した超音波の受信時間とに基づいて伝播時間t1、t2から到達時間に相当する到達時間ta1、ta2を補正するようにしてもよい。
【0048】
(流量導出部162)
流量導出部162は、超音波流量計150で計測された伝播時間t1、t2に基づいて、下記の式(3)を用いてガスの流速Vを導出する。
【数3】
そして、流量導出部162は、導出したガスの流速Vに、ガス流路140の断面積を乗算することにより、ガスの流量を導出する。
【0049】
(発熱量導出部164)
図6は、温度、音速およびガスの種別(標準状態での発熱量)の関係を示す図である。
図7は、音速および単位発熱量の関係を示す図である。以下では、標準状態での発熱量を標準発熱量とも呼ぶ。
【0050】
図6に示すように、ガスの種別(標準発熱量)に拘わらず、ガスの温度が低いとガスの音速が遅くなり、ガスの温度が高くなるに連れてガスの音速が速くなる。一方で、ガスの種別(標準発熱量)が異なると、ガスの温度が同一であってもガスの音速が異なり、また、ガスの音速が同一であってもガスの温度が異なる。より詳細には、ガスの標準発熱量が高くなるに連れて、ガスの温度が同一であってもガスの音速が遅くなり、また、ガスの音速が同一であってもガスの温度が高くなる。
【0051】
このような特性により、ガスの温度および音速を特定することができれば、ガスの種別(標準発熱量)を推定することが可能となる。例えば、ガスの温度が20℃で、ガスの音速が415m/sであった場合には、ガスの種別(標準発熱量)は、44.4MJ/Nm
3と推定することが可能である。
【0052】
そこで、従来のガスメーターでは、ガスの温度および音速を計測し、計測したガスの温度および音速に基づいて標準発熱量を推定していた。しかしながら、従来のガスメーターでは、ガスの音速に加えてガスの温度を計測するために温度センサを設ける必要があるため、高コストになるだけでなく、複雑な構成になってしまうといった問題があった。
【0053】
ここで、
図6に示した温度、音速およびガスの種別(標準発熱量)の関係に基づいて、音速を405m/sと同一にした場合の、異なるガスの種別(標準発熱量)での温度および単位発熱量を表1に示す。
【0055】
表1からも明らかなように、音速を405m/sと同一にした場合には、ガスの種別(標準発熱量)および温度に拘わらず、単位発熱量は約43.5±0.5MJ/m
3に収まる一定の値となる。
【0056】
また、
図7に示すように、ガスの種別(標準発熱量)に拘わらず、音速と単位発熱量とは、ほぼ同一線の関係で表すことができる。したがって、ガスの種別(標準発熱量)に拘わらず、音速のみに基づいて単位発熱量を導出することが可能であることが理解できる。なお、表1および
図7においては、ガスの種別(標準発熱量)によって、音速と単位発熱量との関係に若干の誤差が生じているものの、その誤差は約±2.5%以下であり、音速のみを用いて、ガスの種別に拘わらず、精度よく単位発熱量を導出することが可能である。
【0057】
以下には、音速のみで単位発熱量を導出することが可能であることを理論的に説明する。
【0058】
音速Cは、下記の式(4)で表すことができる。
【数4】
ここで、γは混合気体の比熱比を示し、Rは気体定数(J/mol/K)を示し、Mは混合気体の平均分子量(kg/mol)を示す。
【0059】
また、ガス密度(平均分子量)と標準発熱量との関係は、下記の式(5)で表すことができる。
【数5】
ここで、CV
0は標準発熱量(kJ/Nm
3)を示し、a、bは定数(飽和炭化水素の理想気体の場合、a=2.1×10
6、b=7.4×10
3、飽和炭化水素の実在気体の場合、a=2.4×10
6、b=5.7×10
2)を示す。
【0060】
また、温度Tにおけるガスの単位発熱量は、下記の式(6)で表すことができる。
【数6】
ここで、CV
Tは温度Tにおける単位発熱量(kJ/m
3)を示し、pは温度Tにおける圧力(供給圧力、Pa)を示し、p
0は標準圧力(101325Pa)を示し、T
0は標準温度(273.15K)を示す。
【0061】
これら式(4)〜式(6)により、下記の式(7)が導き出せる。
【数7】
ここで、Mは都市ガスであれば16〜20程度であり、a>>b/Mの関係が成り立つため、式(7)は式(8)と表すことができる。
【数8】
【0062】
このように、式(8)では、測定時の温度Tの影響を受けないことから、供給圧力pが既知であれば、温度Tを計測せずに音速Cのみから単位発熱量を導出することが可能であることが判る。なお、温度Tを計測せずに音速Cのみから単位発熱量を導出する場合には、直鎖飽和炭化水素のガスであれば若干導出精度が高い。また、音速は圧力の影響をほとんど受けないことが知られているので、圧力pについては、必要に応じて、圧力を計測することで通常のボイルの法則に従って補正すればよい。
【0063】
そこで、発熱量導出部164は、音速導出部160で導出された音速に基づいて、予めガスの音速から単位発熱量を一義的に導き出せる対応関係情報を参照して、ガスの単位発熱量(MJ/m
3)を導出する。なお、対応関係情報は、ガスの音速から単位発熱量を一義的に導き出せるものであれば、音速から単位発熱量を導き出せる式でもよく、また、音速から単位発熱量を導き出せるテーブル等であってもよい。
【0064】
(通過発熱量導出部166)
通過発熱量導出部166は、発熱量導出部164により導出されたガスの単位発熱量と、流量導出部162により導出された流量との積を時間軸に対して積分していくことにより、ガスの通過発熱量を導出する。ここでは、第1ガスメーター110の通過発熱量導出部166により通過発熱量を導出しているが、通過発熱量の導出頻度に関して第2ガスメーター111との通過発熱量導出の公平性を確保するために、センター装置116で通過発熱量を導出してもよい。このようにして導出された単位発熱量、および、通過発熱量が1時間毎にセンター装置116に送信される。
【0065】
これにより、第1ガスメーター110では、音速のみを計測することで、炭化水素系のガスの種別(標準発熱量)によらず、単位発熱量を導出することができる。このとき、第1ガスメーター110では、温度の計測を行うことなく、ガスの温度によるガスの膨張収縮の補正を対応関係情報により行っていることになる。これにより、従来のガスメーターと比較して、低コストで、かつ、簡易な構成でガスの通過発熱量を導出することができる。また、ガス事業者は、通過発熱量に基づいて課金を適切に行うことができる。
【0066】
(第2ガスメーター111)
図8は、第2ガスメーター111の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図8に示すように、第2ガスメーター111は、流量計180と、遮断弁182と、通信回路184と、ガスメーター記憶部186と、ガスメーター制御部188とを含んで構成される。第2ガスメーター111は、第1ガスメーター110と比べ、ガスの音速、単位発熱量を導出することができない。
【0067】
流量計180は、第2ガスメーター111を通過するガスの流量値を計測する。遮断弁182は、例えばソレノイドやステッピングモータを用いた電磁弁等で構成され、ガスの流路を遮断または開放する。通信回路184は、ゲートウェイ機器112、第1ガスメーター110、他の第2ガスメーター111と無線通信を確立する。ガスメーター記憶部186は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、第2ガスメーター111に用いられるプログラムや各種データを記憶する。
【0068】
ガスメーター制御部188は、CPUやDSPで構成され、ガスメーター記憶部186に格納されたプログラムを用い、第2ガスメーター111全体を制御する。また、ガスメーター制御部188は、遮断部190、メーター通信部192として機能する。
【0069】
遮断部190は、遮断弁182を制御してガスの需給を制御する。メーター通信部192は、通信回路184を通じてセンター装置116と情報交換し、例えば、流量計180で計測された流量の情報を1時間毎にセンター装置116に送信する。ただし、遮断部190や遮断弁182を備えない構成でも本実施形態は成り立つ。
【0070】
(センター装置116)
図9は、センター装置116の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図9に示すように、センター装置116は、通信回路200と、使用量記憶部202と、機器記憶部204と、センター制御部206とを含んで構成される。通信回路200は、基地局118を解してゲートウェイ機器112と無線通信を確立する。使用量記憶部202は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、各第1ガスメーター110から受信した単位発熱量および通過発熱量を、その第1ガスメーター110に関連付けて蓄積する。したがって、使用量記憶部202には、第1ガスメーター110毎の過去の単位発熱量および通過発熱量の推移が保持されている。また、使用量記憶部202は、各第2ガスメーター111から受信した流量を、その第2ガスメーター111に関連付けて蓄積する。したがって、使用量記憶部202には、第2ガスメーター111毎の過去の通過体積の推移が保持されている。機器記憶部204は、使用量記憶部202同様、ROM、RAM、フラッシュメモリ、HDD等で構成され、口火機器等、第1ガスメーター110、第2ガスメーター111を経由して使用する機器122を、その第1ガスメーター110、第2ガスメーター111に関連付けて記憶する。
【0071】
センター制御部206は、CPUやDSPで構成され、使用量記憶部202や機器記憶部204に記憶された情報に基づいてセンター装置116全体を制御する。また、センター制御部206は、センター通信部210、単位発熱量推定部212、通過発熱量導出部214、異常診断部216として機能する。
【0072】
センター通信部210は、通信回路200を通じて各第1ガスメーター110と情報交換し、例えば、第1ガスメーター110からガスの単位発熱量および通過発熱量を受信する。また、センター通信部210は、通信回路200を通じて各第2ガスメーター111と情報交換し、例えば、第2ガスメーター111からガスの流量を受信する。
【0073】
単位発熱量推定部212は、第2ガスメーター111におけるガスの単位発熱量を推定する。ここで、使用量記憶部202には、
図2に示したような、第1ガスメーター110、第2ガスメーター111およびガス生成工場114が接続されたガス供給導管網130(ガス供給管132)を示す供給導管網マップが記憶されている。
【0074】
単位発熱量推定部212は、供給導管網マップを参照して、第2ガスメーター111に対して、ガス供給管132上で最も近傍に配置されている第1ガスメーター110を特定する。そして、単位発熱量推定部212は、ガス供給管132上で最も近傍に配置されている第1ガスメーター110の単位発熱量に基づいて、第2ガスメーター111の単位発熱量を推定する。具体的には、単位発熱量推定部212は、第2ガスメーター111の単位発熱量を、ガス供給管132上で最も近傍に配置されている第1ガスメーター110の単位発熱量と同一と推定する。なお、ここでいう近傍とは、物理空間的な近傍のことではなく、導管網上での導管経路に沿った近傍のことをいう。これは、たとえ隣接した建物に備えられた2つのガスメーターでも異なる導管経路をたどってガスが供給されているときには、それぞれのガスメーターに供給されるガスの発熱量が同一であるとは見做せないことがあるためである。
【0075】
図10は、ガス供給導管網130における、ガス生成工場114で生成されたガスの供給範囲を説明する図である。ここで、第2ガスメーター111は、ガス供給管132上で最も近傍に配置されている第1ガスメーター110と、同一のガス生成工場114で生成されたガスが供給される可能性が高い。
【0076】
例えば、
図10(a)に示すように、ガス供給導管網130において、境界134を境にして、それぞれのガス生成工場114で生成されたガスが第1ガスメーター110、第2ガスメーター111に供給されているとする。そして、
図10(b)に示すように、ガス供給導管網130において、時間の経過とともに、各ガス生成工場114で生成されたガスの供給範囲が変わると、境界134も変化していくことになる。
【0077】
このように境界134が変化した場合であっても、ガス供給管132上で最も近傍に配置されている第1ガスメーター110の単位発熱量に基づいて、第2ガスメーター111の単位発熱量を推定することで、第2ガスメーター111の単位発熱量を精度よく推定することができる。
【0078】
通過発熱量導出部214は、第2ガスメーター111から受信したガスの通過体積と、単位発熱量推定部212により推定されたガスの単位発熱量との積を時間軸に対して積分していくことにより、第2ガスメーター111のガスの通過発熱量を導出する。
【0079】
異常診断部216は、使用量記憶部202に記憶された過去の通過発熱量の推移に基づいて現在の通過発熱量が異常であるか否か診断する。また、異常診断部216は、機器記憶部204に記憶された機器122におけるガスの定格通過発熱量に基づいても異常を診断することができる。
【0080】
以上、説明したように、単位発熱量を導出可能な第1ガスメーター110と、通過体積を導出可能な第2ガスメーター111がガス供給導管網130を介して接続されるガスメーターシステム100では、ガス供給管132上で最も近傍に配置されている第1ガスメーター110の単位発熱量に基づいて、第2ガスメーター111の単位発熱量を推定する。これにより、例えば第2ガスメーター111から第1ガスメーター110への交換の過渡期においても、第2ガスメーター111の単位発熱量を精度よく推定することができる。また、ガス事業者は、推定したガスの単位発熱量に基づいて、第2ガスメーター111が設置された需要箇所の需要者に対して適正に課金をすることができる。
【0081】
ところで、複数のガス供給源(ガス生成向上)に接続されている複数の流入口からガスが供給される特定のエリア(ガス供給導管網)において、複数の流入口で計測された発熱量と流量を基に算出されたエリアでの平均の発熱量を用いて課金するという方法が実施、もしくは計画されている。しかし、この方法では、常に平均の発熱量よりも発熱量の低いガスが流れ込む流入口の近くでは、平均の発熱量を基に課金されると需要者が損し、ガス事業者は得をすることになり、逆に常に平均の発熱量よりも発熱量の高いガスが流れ込む流入口の近くでは、平均の発熱量を基に課金されると需要者が得し、ガス事業者は損をすることになってしまう。
【0082】
また、ガス事業者も、導管事業者とガス小売事業者がいるような場合には、導管事業者とガス小売事業者とさらに以下のような課題が生じる。ガス小売事業者が調達したガスを導管事業者の導管経由で需要者に供給・販売することになるが、このときには、従来のガス会社と顧客との間の取引に加え、ガス小売事業者同士や、ガス小売事業者と導管事業者との取引も発生する。
【0083】
例えば、1の小売事業者がエリアの平均値よりも低発熱量のガスを調達して特定のエリアに1の注入口から注入し、他の小売事業者がエリアの平均値よりも高発熱量のガスを調達して同じエリアに他の注入口から注入し、それぞれのガス小売事業者と契約している需要者がエリア内に点在しているとする。このとき、需要者がそれぞれのガスの届くエリアに平均的に分布していれば、ガス小売事業者と需要者の間では、先の例と同様の問題しか生じない。一方分布に偏りがあり、例えば、1の小売事業者の注入口の近くに他の小売事業者と契約している需要者が多く、その逆に他の小売事業者の注入口の近くに1の小売事業者と契約している需要者が多い場合には、1の小売事業者は他の小売事業者よりも低い発熱量しか供給しないでいるにもかかわらず、平均的な発熱量での通過体積のガスをエリアに供給していればよいという条件では得をしてしまうことになるなど、平均の発熱量と、実際に使用しているガスの発熱量とが異なる場合もあり、不公平が解消されるに至っていない。他にも、小売事業者間の不公平をなくす方法としては、1の小売事業者と契約している需要者に専用の導管を用いて供給する方法がありうるが、この方法では小売事業者が追加される毎に導管を別に設置することになるので現実的でない。
【0084】
そこで、ガスメーターシステム100では、ガス供給管132上で最も近傍に配置されている第1ガスメーター110の単位発熱量に基づいて、第2ガスメーター111の単位発熱量を推定することにより、上記の問題を解決することができる。
【0085】
<変形例>
図11は、変形例による第1ガスメーター300の概略的な構成を示した機能ブロック図である。
図11に示すように、第1ガスメーター300は、上記の第1ガスメーター110に対して、温度センサ302が設けられている点で異なり、その他の構成は第1ガスメーター110と同一である。
【0086】
温度センサ302は、供給されたガスの温度を計測する。そして、発熱量導出部164は、音速導出部160で導出された音速、および、温度センサ302で計測された温度に基づいて、単位発熱量を導出する。これにより、発熱量導出部164は、第1ガスメーター110よりもガスの単位発熱量を精度よく導出することができる。
【0087】
以上のように、第1ガスメーター300では、ガスの温度および音速を導出または計測し、ガスの温度および音速に基づいて、ガスの単位発熱量を導出することができる。これにより、ガスの単位発熱量の導出精度を向上することができる。
【0088】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0089】
なお、上記の実施形態では、第1ガスメーター110に発熱量導出部164および通過発熱量導出部166が設けられていたが、センター装置116に設けられていてもよい。この場合、第1ガスメーター110では、音速導出部160により導出された音速の情報をセンター装置116に送信するようにすればよい。
【0090】
また、上記の実施形態では、第1ガスメーター110が通信回路154を設けるようにしていたが、第1ガスメーター110は通信回路154を設けていなくてもよい。この場合、第1ガスメーター110を通過したガスの単位発熱量、通過発熱量または流量を、例えば1ヶ月毎に検針員によって検針され、その検針されたガスの単位発熱量、通過発熱量または流量がセンター装置116で記憶されるようにすればよい。
【0091】
また、上記の実施形態では、第2ガスメーター111が通信回路184を設けるようにしていたが、第2ガスメーター111は通信回路184を設けていなくてもよい。この場合、第2ガスメーター111を通過したガスの流量は、例えば1ヶ月毎に検針員によって検針され、その検針されたガスの流量がセンター装置116で記憶される。そして、センター装置116では、第2ガスメーター111の最も近傍に配置された第1ガスメーター110の単位発熱量の1ヶ月の平均値と、検針されたガスの流量との積で通過発熱量を導出すればよい。
【0092】
また、上記の実施形態では、第2ガスメーター111が通信回路184を設けるようにしていたが、第2ガスメーター111は通信回路184を設けていなくてもよい。この場合、第2ガスメーター111を通過したガスの流量は、例えば1ヶ月毎に検針員によって検針され、その検針されたガスの流量がセンター装置116で記憶される。そして、センター装置116では、第2ガスメーター111の最も近傍に配置された第1ガスメーター110の1ヶ月の平均の単位発熱量に基づいて、第2ガスメーター111の1ヶ月の平均の単位発熱量を推定し、推定した1ヶ月の平均の単位発熱量と検針されたガスの流量との積で通過発熱量を導出すればよい。
【0093】
また、例えば、第2ガスメーター111にガスが通過している時刻と同一とされる時間内に、ガスが通過している第1ガスメーター110の中から、最も近傍に配置されている第1ガスメーター110の単位発熱量に基づいて、第2ガスメーター111の単位発熱量を推定するようにしてもよい。つまり、第1ガスメーター110が使用されていない場合には、第2ガスメーター111の最も近傍に配置されている第1ガスメーター110であっても除外して、同一とされる時間内に使用されている第1ガスメーター110の中から、最も近傍の第1ガスメーター110を特定して、特定した第1ガスメーター110の単位発熱量に基づいて、第2ガスメーター111の単位発熱量を推定するようにしてもよい。
【0094】
また、上記の実施形態では、最も近傍に配置されている第1ガスメーター110の単位発熱量に基づいて、第2ガスメーター111の単位発熱量を推定したが、第2ガスメーター111に対してガス供給管132上の所定範囲136(
図10(b))に入っている第1ガスメーター110の単位発熱量に基づいて、第2ガスメーター111の単位発熱量を推定してもよい。
【0095】
また、第1ガスメーター300は、音速導出部160で導出された音速、および、温度センサ302で計測された温度に基づいて、標準状態での発熱量を導出してセンター装置116に送信し、第2ガスメーター111は、温度センサを備え、通過体積に加えて、温度センサにより計測された温度をセンター装置116に送信し、センター装置116は、第1ガスメーター300で導出される標準状態での発熱量、第2ガスメーター111で計測、導出された温度、通過体積に基づいて、第2ガスメーター111の単位発熱量を導出してもよい。
【0096】
また、第1ガスメーター110および第2ガスメーター111は、供給されるガスの圧力を計測する圧力センサを備えるようにしてもよい。この場合、第1ガスメーター110は、圧力センサで計測された圧力に基づいて(上記の式(8))、単位発熱量を補正し、第2ガスメーター111は、圧力センサで計測された圧力に基づいて体積流量を補正するようにしてもよい。さらに、第1ガスメーター110は、供給されるガスの圧力を計測する圧力センサを備え、第2ガスメーター111の体積流量を、第2ガスメーター111近傍の第1ガスメーター110で計測された圧力に基づいて補正するようにしてもよい。
【0097】
また、ガス生成工場114は、ガスクロマトグラフィーや望むらくは併せて音速導出部を備え、生成されたガスの成分をガスクロマトグラフィーにより分析してガス特性としてセンター装置116に送信するとともに、音速導出部で導出されたガスの音速をセンター装置116に送信するようにしてもよい。そして、センター装置116は、第1ガスメーター110から受信したガスの音速自体やその時系列的な変化と、ガス生成工場114から受信したガス特性や音速に基づいて、その第1ガスメーター110に供給しているガスの生成元、つまり、複数のガス生成工場114のうち、供給されているガスを生成したガス生成工場114を特定するようにしてもよい。