(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6269103
(24)【登録日】2018年1月12日
(45)【発行日】2018年1月31日
(54)【発明の名称】ゴム押出物の温度測定方法および温度測定装置
(51)【国際特許分類】
B29C 47/92 20060101AFI20180122BHJP
G01K 1/14 20060101ALI20180122BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20180122BHJP
【FI】
B29C47/92
G01K1/14 L
G01K1/14 A
B29K21:00
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-12554(P2014-12554)
(22)【出願日】2014年1月27日
(65)【公開番号】特開2015-139898(P2015-139898A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(72)【発明者】
【氏名】米山 飛鳥
(72)【発明者】
【氏名】平井 秀憲
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭62−071621(JP,A)
【文献】
特開平04−225126(JP,A)
【文献】
実開平06−063320(JP,U)
【文献】
特開平06−246786(JP,A)
【文献】
特開2015−071276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機に設置されたダイスに、熱電対を内設した線径0.2mm以上0.5mm以下の金属線を固定して、このダイスの押出口の前面に緊張させ、前記押出口から未加硫のゴム押出物を押出して、このゴム押出物を前記金属線により一時的に切開しつつ、この切開直後でゴム押出物の切開面どうしが接合する前に、前記切開した部位の温度を前記熱電対により測定することを特徴とするゴム押出物の温度測定方法。
【請求項2】
前記熱電対の温度検知部を前記金属線の外部に露出させた状態でセットする請求項1に記載のゴム押出物の温度測定方法。
【請求項3】
前記金属線を複数のフィラメントにより構成し、これらフィラメントを前記熱電対をコアにして撚った撚り構造にする請求項1または2に記載のゴム押出物の温度測定方法。
【請求項4】
前記ゴム押出物により押圧される前記金属線の振れを前記押出口の近傍に取り付けた規制部材により規制する請求項1〜3のいずれかに記載のゴム押出物の温度測定方法。
【請求項5】
前記金属線を、緊張機構により前記ゴム押出物の押出方向とは反対方向に向かって常時押圧して緊張させる請求項1〜4のいずれかに記載のゴム押出物の温度測定方法。
【請求項6】
前記金属線を前記押出口の厚さ方向に延ばして緊張させ、前記ゴム押出物を10cm/sec以上の押出速度で押出す請求項1〜5のいずれかに記載のゴム押出物の温度測定方法。
【請求項7】
押出機に設置されたダイスの押出口の前面に配置される線径0.2mm以上0.5mm以下の金属線と、この金属線を前記ダイスに固定して緊張させる固定手段と、前記金属線に内設される熱電対とを備え、前記押出口から押し出されるゴム押出物が前記金属線により一時的に切開されて、この切開直後でゴム押出物の切開面どうしが接合する前に、前記切開された部位の温度を前記熱電対により測定する構成にしたことを特徴とするゴム押出物の温度測定装置。
【請求項8】
前記熱電対の温度検知部が前記金属線の外部に露出した状態でセットされる請求項7に記載のゴム押出物の温度測定装置。
【請求項9】
前記金属線が複数のフィラメントにより構成され、これらフィラメントが前記熱電対をコアにして撚った撚り構造である請求項7または8に記載のゴム押出物の温度測定装置。
【請求項10】
前記押出口の近傍に設置されて、前記押出口から押し出される未加硫のゴム押出物による前記金属線の振れを規制する規制部材を備えた請求項7〜9のいずれかに記載のゴム押出物の温度測定装置。
【請求項11】
前記ゴム押出物の押出方向とは反対方向に向かって前記金属線を常時押圧して緊張させる緊張機構が設けられた請求項7〜10のいずれかに記載のゴム押出物の温度測定装置。
【請求項12】
前記金属線が前記押出口の厚さ方向に延ばして緊張され、前記ゴム押出物の押出速度が10cm/sec以上に設定される請求項7〜11のいずれかに記載のゴム押出物の温度測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム押出物の温度測定方法および温度測定装置に関し、さらに詳しくは、押出機から押出された直後のゴム押出物の内部温度を、従来に比して高精度で測定することができるとともに、製造ラインの次工程に影響を与えることなく測定可能にしたゴム押出物の温度測定方法および温度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ等のゴム製品を製造する際には、押出機によって未加硫ゴムを押出す押出し工程がある。このような押出し工程では、未加硫ゴムは押出機に取り付けられたダイスの押出口から押し出されることにより、所定形状に型付けされたゴム押出物となる。ここで例えば、シリカ配合の未加硫ゴムを押出す場合、可塑化による温度上昇によってゴム押出物内部が発泡するなど、ゴム押出物の内部温度がゴム押出物の安定性に与える影響は大きい。押出機のスクリューによって可塑化される際に発生したゴム押出物の局部的な変形は、ゴム押出物の内部温度分布に現れるため、正確にゴム押出物の内部温度を把握することが重要である。
【0003】
ゴム押出物の内部温度を測定する方法は種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1で提案されている測定方法では、ゴム押出物の表面温度を少なくとも2箇所で測定し、この測定値とゴム押出物の厚みとに基づいてゴム押出物の内部温度を決定する。しかしながら、この方法では実際にゴム押出物の内部温度を測定しているわけではなく、予測しているので測定精度を高めるには限界がある。
【0004】
押出直後のゴム押出物に温度計のプローブを突き刺して直接的に内部温度を測定する方法では、プローブの温度が測定温度に影響するため、測定精度を高めるにはプローブをゴム押出物と同等の温度まで加温する等の対策が必要になる。或いは、押出直後のゴム押出物を刃物等の切断具によって切開し、その切開面を赤外線温度計等で測定することも考えられる。しかしながら、刃物等の切断具はゴム押出物との接触面積が大きい(接触時間が長い)ので、ゴム押出物と切断具との温度差が測定温度に影響して切開面の温度が変化する。それ故、ゴム押出物の内部温度(切開面の温度)を精度よく測定することができないという問題がある。また、ゴム押出物を使用する製造ラインでは、切断具によって切開したゴム押出物は、そのままの状態では次工程で使用できなくなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−151747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、押出機から押出された直後のゴム押出物の内部温度を、従来に比して高精度で測定することができるとともに、製造ラインの次工程に影響を与えることなく測定可能にしたゴム押出物の温度測定方法および温度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明のゴム押出物の温度測定方法は、押出機に設置されたダイスに、熱電対を内設した線径0.2mm以上0.5mm以下の金属線を固定して、このダイスの押出口の前面に緊張
させ、前記押出口から未加硫のゴム押出物を押出して、このゴム押出物を前記金属線により一時的に切開しつつ、この切開直後でゴム押出物の切開面どうしが接合する前に、前記切開した部位の温度を前記熱電対により測定することを特徴とする。
【0008】
本発明のゴム押出物の温度測定装置は、押出機に設置されたダイスの押出口の前面に配置される線径0.2mm以上0.5mm以下の金属線と、この金属線を前記ダイスに固定して緊張させる固定手段と、前記金属線に内設される熱電対とを備え、前記押出口から押し出されるゴム押出物が前記金属線により一時的に切開されて、この切開直後でゴム押出物の切開面どうしが接合する前に、前記切開された部位の温度を前記熱電対により測定する構成にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、押出機に設置されたダイスに線径0.2mm以上0.5mm以下の金属線を固定して、このダイスの押出口の前面に緊張
させ、押出機から押出したゴム押出物をこの金属線によって一時的に切開するので、ゴム押出物と金属線との接触面積は非常に小さくなり、これに伴い、接触時間も非常に短くなる。細径の金属線なので、押し出されたゴム押出物が接触してもゴム押出物の温度はほとんど変化しない。これにより、金属線の温度の影響を最小限にして押出直後のゴム押出物の内部を切開面として露出させることができる。そして、この切開直後でゴム押出物の切開面どうしが接合する前に、切開された部位の温度を熱電対により測定するので、従来に比して高精度の測定が可能になる。
【0010】
また、金属線によって一時的に切開されたゴム押出物は、切開された後ですぐに切開面どうしが接合して一体化する。それ故、温度測定したゴム押出物はそのまま製造ラインの次工程に送って使用することができる。即ち、本発明ではゴム押出物を一時的に切開するだけなので、ゴム押出物を使用する製造ラインの次工程に影響を与えることなくゴム押出物の内部温度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のゴム押出物の温度測定装置を例示する説明図である。
【
図2】
図1の金属線周辺を拡大して例示する平面図である。
【
図3】
図1のダイス周辺を拡大して例示する正面図である。
【
図7】緊張機構を一部断面視で例示する説明図である。
【
図8】緊張機構により金属線を緊張させる工程を例示する説明図である。
【
図9】測定したゴム押出物の表面温度および内部温度を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のゴム押出物の温度測定方法および装置を、図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1〜3に例示する本発明のゴム押出物の温度測定装置1の実施形態は、線径0.2mm以上0.5mm以下の金属線2と、この金属線2を押出機7に取り付けられたダイス8に固定して緊張させる固定手段3と、金属線2に内設される熱電対6とを備えている。押出機7は、周知の一軸や二軸等の押出機であり、スクリューが内設されている。ダイス8に形成された押出口9の前方には引き取りコンベヤ10が配置されている。
【0014】
この実施形態ではさらに、ダイス8の押出口9の近傍に設置される規制部材4と、ゴム押出物Rの押出方向とは反対方向に向かって金属線2を常時押圧して緊張させる緊張機構5(5a、5b、5c)とが設けられている。
【0015】
金属線2は、ダイス8の押出口9の前面に配置される。押出口9の形状は一般的に、幅方向寸法が厚さ方向寸法よりも大きくなっている。この実施形態では、金属線2は押出口9の厚さ方向(
図3では上下方向)に延ばして緊張されている。金属線2としては、例えば、
図4、
図5に例示するような複数の金属製のフィラメント2aを撚って構成された金属ワイヤ等が使用される。
【0016】
図4、
図5に例示するように熱電対6は温度検知部6aと、温度検知部6aから延びるリード線6bとにより構成されていて、撚り構造の金属線2に内設されている。この実施形態では、熱電対6(温度検知部6a)をコアにして複数のフィラメント2aが撚られて金属線2が構成されている。リード線6bは、金属線2の長手方向中途の位置から金属線2の外側に突出して延長されている。延長されたリード線6bはデータ処理機11に接続されている。尚、筒状の金属線2を用いて、この金属線2に熱電対6を内挿した構造にすることもできる。
【0017】
金属線2の外周面のうち、ダイス8の表面に位置している部分はフィルム状の断熱材2bにより被覆され、押出口9に位置している部分の大半は断熱材2bにより被覆されていない。即ち、金属線2の外周面とダイス8とは直接接触せずに断熱材2bが介在する構造になっている。断熱材2bとしては、例えば20℃時の熱伝導率が0.17W/(m・K)以下の樹脂等を用いる。断熱材2bの厚さは例えば0.1mm以下であり、金属線2の線径に比して非常に小さくなっている。
【0018】
この実施形態の固定手段3は、固定ビス3aである。金属線2は固定手段3によって、ダイス8に着脱自在に固定されている。固定手段3は、金属線2をダイス8に固定して緊張させるものであればよい。
【0019】
規制部材4は例えば金属板であり、ビス等によってダイス8に着脱自在に固定される。規制部材4は、金属線2を覆うようにダイス8に固定されて、金属線2を押さえつける。即ち、金属線2は断熱材2bを介在させて規制部材4によりダイス8に押さえつけられている。規制部材4は、例えば、一般炭素鋼以上の剛性を有するようにして容易に曲がらない仕様にする。
【0020】
緊張機構5は、例えば、ガイドフレーム5aや調整ネジ5b等で構成されている。ガイドフレーム5aに案内された金属線2を調整ネジ5bを用いて押圧することで金属線2を常時緊張させる。詳細は後述する。
【0021】
次に、押出機7から押し出された直後のゴム押出物Rの内部温度を測定する本発明の測定方法の手順を説明する。
【0022】
まず、所定量の未加硫ゴムおよび配合剤を押出機7に投入する。これらは押出機7により混合、混練される。混合、混練された未加硫ゴムは、ある程度柔らかくなって(可塑化されて)押出口9から押出口9の形状に型付けされて、未加硫のゴム押出物Rとしてシート状に押し出される。押出口9の前面には金属線2が緊張されているので、ゴム押出物Rの幅方向中央部は、金属線2によって左右に切開される。
【0023】
金属線2は熱電対6を内設しながらも線径0.2mm以上0.5mm以下の細径なので、押出機7から押出したゴム押出物Rを切開する際のゴム押出物Rとの接触面積は非常に小さくなり、これに伴い、接触時間も非常に短くなる。それ故、ゴム押出物Rが金属線2に接触してもゴム押出物Rの温度はほとんど変化しない。また、細径の金属線2は、押し出されたゴム押出物2の温度と直ぐに同じ温度になる。
【0024】
金属線2によって切開されたゴム押出物Rは、押し出された流れのなかで、切開された後ですぐに切開面Rfどうしが自然に接合して一体化する。即ち、金属線2によって切断された未加硫ゴムのスウェル(広がろうとする性質)によって、ゴム押出物Rの切開面Rfどうしが自動的に接合する。
【0025】
ここで、金属線2に内設された熱電対6(温度検知部6a)は、ゴム押出物Rの切開直後でゴム押出物Rの切開面Rfどうしが接合する前に、切開された部位(切開面Rf)の温度を測定する。温度検知部6aにより測定された温度データはリード線6bを通じてデータ処理機11に入力される。切開直後のゴム押出物Rの切開面Rfの温度は、即ち、押出直後のゴム押出物Rの内部温度である。金属線2の外周面は断熱材2bにより被覆されてダイス8には直接接触していないので、金属線2に伝わるダイス8の熱は僅かである。それ故、温度検知部6aはダイス8の温度の影響を排除して、ゴム押出物Rの内部温度をリアルタイムで精度よく測定することができる。
【0026】
このようにして、ゴム押出物Rの切開面Rfの温度を、切開直後に熱電対6により測定することで、切開面Rfの温度に外部環境等による影響が生じることを抑制できる。そのため、本発明によれば、従来に比して高精度でゴム押出物Rの内部温度を測定することが可能になっている。本発明の温度測定装置1は、既存の押出機7にも適用することができるので高い汎用性を有している。
【0027】
ゴム押出物Rは金属線2により一時的に切開された後、切開面Rfどうしが接合することにより切開面Rfは消滅し、引き取りコンベヤ10によって次工程に搬送される。それ故、温度測定したゴム押出物Rはそのまま製造ラインの次工程に送って使用することができる。即ち、本発明ではゴム押出物Rを一時的に切開するだけなので、ゴム押出物Rを使用する製造ラインの次工程に影響を与えることなくゴム押出物Rの内部温度を測定することができる。
【0028】
図4に例示する金属線2には熱電対6(温度検知部6a)が外部に露出することなく内設されているが、
図6に例示するように温度検知部6aが金属線2の外部に露出した状態でセットすることもできる。
図6に例示する金属線2は、フィラメント2aどうしが隙間をあけて撚られている。この撚り構造によって、フィラメント2aどうしの隙間から温度検知部6aが金属線2の外部に露出した状態になっている。この構造の金属線2を用いると、ゴム押出物Rに温度検知部6aを直接的に接触させることができるので、測定精度を向上させるには益々有利になる。
【0029】
金属線2は、押出口9の厚さ方向両端部において規制部材4によって押さえられていて移動が規制されている。そのため、金属線2はゴム押出物Rにより押圧される状況でありながら左右に振れることが抑制される。そのため、ゴム押出物Rを所定位置で安定して切開することが可能になり、押出直後のゴム押出物Rの内部温度を安定して測定することができる。
【0030】
尚、金属線2の線径が0.2mm未満であると、ゴム押出物2による押圧によって切断し易くなり、また、ゴム押出物Rに押圧された際の金属線2の振れが大きくなる。一方、金属線2の線径が0.5mm超になると、ゴム押出物Rとの接触面積が大きくなり、これに伴って、接触時間も長くなる。これにより、金属線2の温度が切開面Rfの温度に影響を及ぼし、ゴム押出物Rの内部温度を精度よく測定するには不利になる。
【0031】
金属線2はゴム押出物Rに押圧され続けるので、伸びが生じたり、緊張が緩むことがある。このような場合、ゴム押出物Rを所定位置で安定して切開することができなくなる。そこで、この実施形態では、
図7に例示するような緊張機構5が設けられている。緊張機構5を構成するガイドフレーム5aには、金属線2が案内されるガイド穴と、ネジ穴とが形成されていて、ガイド穴には金属線2が貫通し、ネジ穴には調整ネジ5bが螺合するともに押圧コマ5cが挿入されている。ガイドフレーム5aは一部がダイス8に埋設されていて、金属線2が貫通するガイド穴は、ダイス8の前面と同一レベルの位置にある。
【0032】
図8に例示するように、調整ネジ5bを回転させてガイドフレーム5aに締め付けることで、押圧コマ5cが押し込まれて、この押圧コマ5cが金属線2をゴム押出物Rの押出方向とは反対方向に常時押圧する。
図8では、左から右に向かう方向がゴム押出物Rの押出方向である。このように金属線2を押出方向とは反対方向に常時押圧することで、金属線2の緊張状態が常時維持されるので、ゴム押出物Rをより安定して切開することができる。緊張機構5は、金属線2の一方端部だけでなく追加して他方端部にも設けることができる。金属線2の緊張状態を維持するために金属線2を押圧する方向は、例えば、ゴム押出物Rの押出方向と同じ方向にすることもできるが、押出方向と反対方向にすると、規制部材4に追加的な負担が生じることを回避できる。
【0033】
ゴム押出物Rが10cm/sec未満の押出速度で押出される場合は、金属線2に対する負荷がそれ程大きくないが、10cm/sec以上の押出速度で押出す場合は、金属線2に対する負荷が過大になる。そこで、ゴム押出物Rの押出速度が10cm/sec以上に設定される場合は、
図3に例示するように、金属線2を押出口9の厚さ方向に延ばして緊張することが好ましい。尚、金属線2の緊張方向を押出口9の幅方向に対して直交(交差角度90°)させることもできるが、
図3に例示するように押出口9の幅方向に対してある程度傾けて交差(例えば交差角度45°〜80°)させると、金属線2により一時的に切開された切開面Rfどうしを接合させ易くなる。
【0034】
本発明により得られたゴム押出物Rの内部温度データは、押出機7でゴム押出物Rを押出す際の最適な条件設定を決定する際などに有効に利用することができる。また、ゴム押出物Rの内部の温度分布を把握できるので、ゴム押出物Rの高温部分をより集中的に冷却してヤケ防止や部材の安定化対策に利用することができる。ヤケを防止してゴム押出物Rの歩留まりを向上させることもできるので、省エネルギに寄与し、また、エコロジー対策にもなる。
【実施例】
【0035】
同じ押出機により同条件下で同じスペック(幅約180mm厚さ約15mm)の未加硫のゴム押出物を押出した際に、押出直後のゴム押出物の表面温度をサーモグラフィ装置で測定し(比較例)、また、ゴム押出物の幅方向一方端から幅寸法の約1/4の位置を金属線により一時的に左右に切開した際の切開面の温度を金属線に内設した熱電対で測定した(実施例)。切開面の温度測定には、
図1〜5に例示した温度測定装置と同様の設備を用いて、線径0.4mmの金属線を押出口の前面に厚さ方向に緊張した。測定結果を模式的に
図9に示した。破線が比較例を示し、実線が実施例を示している。
【0036】
図9の結果から実施例は、比較例よりも全般的に測定温度が高く、押出直後のゴム押出物の内部温度を精度よく把握できていることが分かる。
【符号の説明】
【0037】
1 温度測定装置
2 金属線
2a フィラメント
3 固定手段
3a 固定ビス
4 規制部材
5 緊張機構
5a ガイドフレーム
5b 調整ネジ
5c 押圧コマ
6 熱電対
6a 温度検知部
6b リード線
6c 断熱材
7 押出機
8 ダイス
9 押出口
10 引取りコンベヤ
11 データ処理部
R ゴム押出物
Rf 切開面