(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6299073
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】フレキソ印刷原版用感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/033 20060101AFI20180319BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20180319BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20180319BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20180319BHJP
G03F 7/095 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
G03F7/033
G03F7/00 502
G03F7/027 511
G03F7/004 503
G03F7/095
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-68809(P2013-68809)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-191291(P2014-191291A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年3月14日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】八和田 雪美
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕登
【審査官】
倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0146806(US,A1)
【文献】
特開2004−163532(JP,A)
【文献】
特開2008−152218(JP,A)
【文献】
特開平06−194837(JP,A)
【文献】
特開平06−051511(JP,A)
【文献】
特開2014−065251(JP,A)
【文献】
特開平06−194833(JP,A)
【文献】
特開2011−203453(JP,A)
【文献】
特開2005−257727(JP,A)
【文献】
特開2005−062711(JP,A)
【文献】
特開2005−010252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブタジエンラテックス、及び/又はアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスの水分散ラテックスより得られる疎水性重合体、(B)(A)と共通骨格の、未変性ブタジエンゴム及び/又は未変性アクリロニトリルブタジエンゴム、(C)数平均分子量が1000以上、10000以下の光重合性オリゴマー及び炭素数8〜18の直鎖アルキルメタクリレートを含有する光重合性化合物、及び(D)光重合開始剤を含有するフレキソ印刷原版用感光性樹脂組成物であって、(A)成分と(B)成分との合計質量に対する(B)成分の質量比率が8〜19%の範囲であることを特徴とするフレキソ印刷原版用水現像性感光性樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のフレキソ印刷原版用水現像性感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のフレキソ印刷原版用水現像性感光性樹脂組成物から得られた感光性樹脂層を支持体上に設けることを特徴とするフレキソ印刷原版。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層の表面に、赤外アブレーション層を設けたことを特徴とするフレキソ印刷原版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐刷性及び画像再現性をともに満足する、水現像可能なフレキソ印刷原版用感光性樹脂組成物、及びそれによって得られるフレキソ印刷原版に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルム、ラベル、封筒、段ボール、紙袋への印刷材料として、フレキソ印刷版が使用されている。フレキソ印刷版は、柔軟性を発現させるために、合成ゴム、ラテックス、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等のエラストマーを主成分としており、これに光重合性化合物、光重合開始剤を配合した感光性樹脂組成物が多く提案されている。
【0003】
フレキソ印刷原版は、基板上に感光性樹脂組成物からなる感光層を備えている。このような印刷原版は、原画フィルムを感光層に密着させ、原画フィルムを通じて活性光線を照射し、未硬化部を除去することでレリーフ部を作成するものである。最近では、この未硬化部の除去に水系現像液を使用するフレキソ印刷原版が上市されている。
【0004】
水現像可能な感光性樹脂組成物としては、例えば特許文献1には、少なくとも2種類の水分散ラテックスから得られる疎水性重合体、親水性重合体、光重合性化合物、光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物が開示されている。また、例えば特許文献2には、水分散ラテックスから得られる疎水性重合体、光重合性モノマー、ゴム、光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物、特許文献3には、水分散ラテックスから得られる疎水性重合体、ゴム、界面活性剤、光重合性モノマー光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の感光性樹脂組成物は、機械的強度が不足し、印刷時の耐刷性が不足するという欠点があった。また、特許文献2、特許文献3の感光性樹脂組成物はいずれも微細画像再現性が劣るという欠点があった。
【0006】
このように、従来の水現像可能な感光性樹脂組成物は、耐刷性、画像再現性のいずれも満足させるというものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO04/090638
【特許文献2】特許第4211141号公報
【特許文献3】WO11/118052
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題を解消するためになされたものであり、その目的は、印刷時の耐刷性を持ち、しかも微細画像再現性に優れる、水現像可能なフレキソ印刷原版用の感光性樹脂組成物、及びそれによって得られるフレキソ印刷原版を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、1種類以上の水分散ラテックスから得られる疎水性重合体とゴムの使用によって、水現像性、印刷版の耐刷性及び画像再現性がともに高く維持されることを見い出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(3)の構成を有するものである。
(1)(A)1種類以上の水分散ラテックスから得られる疎水性重合体、(B)(A)と共通骨格の
、未変性ブタジエンゴム及び/又は未変性アクリロニトリルブタジエンゴム、(C)光重合性化合物、及び(D)光重合開始剤を含有するフレキソ印刷原版用感光性樹脂組成物であって、(A)成分と(B)成分との合計質量に対する(B)成分の質量比率が8〜19%の範囲であることを特徴とするフレキソ印刷原版用水現像性感光性樹脂組成物。
(2)さらに、界面活性剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のフレキソ印刷原版用水現像性感光性樹脂組成物。
(3)請求項1又は請求項2に記載のフレキソ印刷原版用水現像性感光性樹脂組成物から得られた感光性樹脂層を支持体上に設けることを特徴とするフレキソ印刷原版。
(4)請求項1〜3のいずれかに記載の感光性樹脂組成物からなる感光性樹脂層の表面に、赤外アブレーション層を設けたことを特徴とするフレキソ印刷原版。
【発明の効果】
【0011】
本発明の感光性樹脂組成物によれば、耐刷性と微細画像再現性がともに優れた水現像性フレキソ印刷原版を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のフレキソ印刷原版は、(A)ポリブタジエンラテックス、及び/又はアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックスの水分散ラテックスより得られる疎水性重合体、(B)(A)と共通骨格
の、未変性ブタジエンゴム及び/又は未変性アクリロニトリルブタジエンゴム、(C)数平均分子量が1000以上、10000以下の光重合性オリゴマー及び炭素数8〜18の直鎖アルキルメタクリレートを含有する光重合性化合物、及び(D)光重合開始剤を含有するフレキソ印刷原版用感光性樹脂組成物であって、(A)成分と(B)成分との合計質量に対する(B)成分の質量比率が8〜19%の範囲であることを特徴とするフレキソ印刷原版用水現像性感光性樹脂組成物である。
【0013】
本発明における(A)水分散ラテックスから得られる疎水性重合体としては、分散質として水中に分散した重合体粒子より得られるものであり、本発明においては、一種類以上、好ましくは2種類以上の水分散ラテックスから得られる疎水性重合体を用いるものである。具体的には、ポリブタジエンラテックス、天然ゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリクロロプレンラテックス、ポリイソプレンラテックス、ポリウレタンラテックスやこれらの重合体にアクリル酸やメタクリル酸などの他の成分を共重合して得られる重合体が挙げられる。この中でも、分子鎖中にブタジエン骨格またはイソプレン骨格を含有する水分散ラテックス重合体が、硬度やゴム弾性の点から好ましく用いられる。具体的には、ポリブタジエン(BR)ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(NBR)ラテックスが好ましい。水ラテックスは一種類以上であり、2種類以上のラテックスを組み合わせても良い。(A)成分の組成物中の配合量は、50〜90質量%が好ましい。50質量%未満では、印刷版としての強度が不足し、90質量%を超えると、水現像に時間を要するので好ましくない。
【0014】
本発明における(B)成分(ゴム)は、感光性樹脂組成物にゴム弾性を付与するために用いられる。(B)成分としては、具体的には、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、アクリルゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、スチレンイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併合して用いてもよい。この中でも、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴムが好ましい。また、前記(A)成分の水分散ラテックスと(B)成分のゴムとがそれぞれ共通の骨格構造を有することが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の機械的強度が向上し、耐刷性を備えた印刷版を得ることができる。
【0015】
感光性樹脂組成物中における(A)成分(水分散ラテックスから得られる疎水性重合体)と(B)成分(ゴム)との配合比率は、(A)成分と(B)成分との合計質量に対する(B)成分の質量の比率(B/(A+B)質量比率)で8〜19%の範囲であることが好ましい。
【0016】
本発明における(C)成分(光重合性化合物)は、光重合性オリゴマーが好ましい。(C)成分の組成物中の配合量は、1〜50質量%が好ましい。1質量部未満ではレリーフが脆くなり、柔軟性を損ねる。50質量%を超えると、生版が柔らかくなり過ぎ、ハンドリング性が悪くなるので好ましくない。
【0017】
本発明における(C)成分(光重合性化合物)は、光重合性オリゴマーと光重合性モノマーを含有することが好ましい。光重合性オリゴマーとは、共役ジエン系重合体の末端および/または側鎖にエチレン性不飽和基が結合した重合体であって、数平均分子量が1000以上、10000以下のものである。共役ジエン系エチレン性重合体を構成する共役ジエン系重合体は、共役ジエン不飽和化合物の単独重合体または共役ジエン不飽和化合物とモノエチレン性不飽和化合物との共重合体によって構成される。かかる共重合体としては、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、メタクリル酸メチル−イソプレン共重合体、アクリロニトリル−イソプレン共重合体、メタクリル酸メチル−イソプレン共重合体、アクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等が挙げられる。これらのうち、ゴム弾性と光硬化性の点で、ブタジエン重合体、イソプレン重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体が好ましく、特に好ましくはブタジエン重合体、イソプレン重合体である。
【0018】
光重合性モノマーは、少なくとも一種がアルキルメタクリレートであることが好ましい。特に炭素数8〜18の直鎖アルキルメタクリレートが好ましい。具体的には、ラウリル
メタクリレート、ステアリル
メタクリレート等のアルキル
メタクリレート、メトキシエチルメ
タクリレート等のアルコキシアルキル
メタクリレート、フェノキシエチル
メタクリレートなどのフェノキシアルキル
メタクリレートなどを挙げることができ、特に好ましくはn−ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、アルキル(C12〜15)メタクリレート等が挙げられる。これらアルキルメタクリレートの含有量は、1〜20質量%が好ましい。
【0019】
本発明における(D)成分(光重合開始剤)は、光によって重合性の炭素−炭素不飽和基を重合させることができるものであれば、特に制限されない。なかでも、光吸収によって、自己分解や水素引き抜きによってラジカルを生成する機能を有するものが好ましく用いられる。具体的には、例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類などが挙げられる。(D)成分の組成物中の配合量は、0.1〜10質量%が好ましい。0.1質量%未満では画像再現性が劣り、10質量%を超えると光透過性が低下して底部の光硬化性が悪くなる。
【0020】
本発明の感光性樹脂組成物には、柔軟性を付与するなどの目的で可塑剤を添加することができる。可塑剤の配合量は、0.1〜50質量%であることが好ましい。可塑剤としては他成分と相溶性が良好なものが好ましくは、液状ポリエン化合物やエステル結合を有する化合物などが挙げられる。
【0021】
本発明の感光性樹脂組成物は、混練時の熱安定性を高める、貯蔵安定性を高めるなどの観点から、熱重合禁止剤(安定剤)を添加することができる。具体的にはフェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類のものなどを挙げられ、配合量は0.001〜5質量%が好ましい。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物は、現像性の面から界面活性剤を配合しても良い。界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤があげられ、二種類以上を混合しても良い。
【0023】
本発明の感光性樹脂組成物においては、本発明の効果を阻害しない範囲において、種々の特性向上を目的として、紫外線吸収剤、染料、顔料、消泡剤、香料などの他の成分を適宜添加することができる。
【0024】
次に、上述の本発明の感光性樹脂組成物を使用した水現像可能なフレキソ印刷原版について説明する。
【0025】
本発明のフレキソ印刷原版は、本発明の感光性樹脂組成物よりなる感光層を有する。本発明の印刷原版は、使用時に、感光層の上にネガフィルムを密着させる、アナログ方式の印刷原版であってもよいし、予め感光層の上に化学線により融除可能な赤外アブレーション層が密着している、いわゆるCTP(Computer to plate)方式に含まれるLAM(Laser ablation mask)方式の印刷原版であってもよい。
【0026】
支持体は、寸法安定性に優れたポリエチレンテレフタレートフィルムが特に好ましい。支持体の厚みは、機械的特性、形状安定化あるいは印刷版製版時の取り扱い性等から、50〜350μm、好ましくは100〜250μmが望ましい。また、必要により、支持体と感光層との接着性を向上させるために、それらの間に接着剤を設けても良い。
【0027】
本発明は、感光性樹脂層上に粘着防止層を設けても良い。粘着防止層に用いるポリマーは、水系現像液で除去可能であれば特に制限されず、水に可溶性または不溶性のいずれのポリマーも使用できる。このようなポリマーとしては、例えば部分鹸化ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、水溶性セルロース誘導体、アルキルセルロース、水溶性ポリアミドなどが挙げられる。これらのポリマーは、一種類の使用に限定されず、二種類以上のポリマーを組み合わせて使用することもできる。
【0028】
本発明は、感光性樹脂層上に赤外アブレーション層を設けても良い。赤外アブレーション層は、化学線に関して2.0以上の光学濃度であることが好ましく、2.2〜2.5がより好ましい。赤外アブレーション層の厚みは、0.5〜5.0μmが好ましく、1.0〜2.0μmがより好ましい。赤外アブレーション層は、バインダー、赤外線レーザーを吸収し熱に変換する機能と紫外光を遮断する機能を有する材料から構成される。上記バインダーとしては、特に限定されないが、極性を持つ共重合ポリアミドが好ましく用いられる。赤外線吸収機能と紫外光遮断機能を有する材料としては、光熱変換率および、経済性、取り扱い性の面から、カーボンブラックが特に好ましい。赤外線吸収機能と紫外光遮断機能を有する材料は、前記光学濃度と層厚を達成できる濃度で適宜用いれば良い。
【0029】
保護フィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルムを挙げることができる。しかしながら、このような保護フィルムは絶対に必要というものではない。
【実施例】
【0030】
次に実施例および比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
感光性樹脂組成物の作成
(B)成分であるBRゴム(Nippol BR1220 日本ゼオン(株)製)6質量部、トルエン80質量部を60℃で加熱し、ゴム溶解液を作成した。これを室温まで放冷し、(A)成分であるブタジエンラテックス(Nipol LX111NF、日本ゼオン(株)製)40質量部、アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(Nipol SX1503、日本ゼオン(株)製)5質量部、(C)成分であるオリゴブタジエンアクリレート(ABU−4S、共栄社化学(株)製)19質量部、ラウリルメタクリレート(ライトエステルL、共栄社化学(株)製)7.5質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート(ライトエステルTMP、共栄社化学(株)製)7.5質量部、(D)成分である光重合開始剤(イルガキュア651)1質量部、(E)成分である凝集防止剤(ノニオンTA−405 日油(株)製)1質量部、その他成分として、親水性重合体(PFT−3、不揮発分25%、共栄社化学(株)製)5質量部、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.03質量部を容器中で混合し、ドープを作成した。ドープを加圧ニーダーに投入して、80℃でトルエンと水を減圧除去した。
【0032】
フレキソ印刷原版の作成
低ケン化度ポリビニルアルコール(KH20、日本合成(株)製)と可塑剤(サンフレックスSE270、三洋化成工業製、脂肪族多価アルコール系ポリエーテルポリオール、固形分濃度85%)とNBRラテックス(SX1503A、日本ゼオン(株)製、固形分濃度42%)を、50/20/30の質量割合で混合し、保護層塗工液を得た。フィルム上に、乾燥後の塗膜の厚みが2.0μmとなるようにバーコーターで保護層塗工液を塗工し、120℃×5分乾燥してフィルム積層体(I)を得た。共重合ポリエステル系接着剤を塗工したPETフィルム支持体(東洋紡績(株)、E5000、厚さ125μm)上に上記感光性樹脂組成物を配置し、その上からフィルム積層体(I)を重ね合わせた。ヒートプレス機を用いて100℃でラミネートし、PET支持体、接着層、感光性樹脂層、保護層および保護フィルムからなるフレキソ印刷原版を得た。版の総厚は1.70mmであった。
【0033】
フレキソ印刷原版からの印刷版の作成
印刷原版のPET支持体側から化学線(光源Philips10R、365nmにおける照度8mW/cm
2)を1分間照射した。続いて、保護フィルムを剥離した。この版を150線3%の画像を有するテストチャートのネガフィルムを用いて、化学線(光源Philips10R、365nmにおける照度8mW/cm
2)を7分照射した。その後、A&V(株)製現像機(Stuck System)で、40℃で8分現像を行った。現像液には、Coop粉せっけん(Coop製)を1%添加した水道水を使用した。現像後、60℃で10分乾燥し、化学線を10分間照射し、最後に表面粘着性を除去するために殺菌灯を5分間照射した。
【0034】
(実施例2〜3)
感光性樹脂組成物の組成および配合比を表1の記載の通りとした以外は、実施例1と同様にして印刷版を作成した。
【0035】
以下の評価方法に基づいて、感光性樹脂組成物の機械的強伸度、印刷版の微細画像再現性を評価した。
(1)感光性樹脂組成物の機械的強伸度
厚み2mmにヒートプレスした感光性樹脂組成物を光硬化させたのち、金型で抜き取り、テンシロン(クロスヘッド100kg使用)の引っ張り試験により、試験速度200mm/分で測定した伸度と強度を掛け合わせた値(kg%/mm
2)で評価し、値が100以上を○、100未満を×とした。
(2)印刷版の微細画像再現性
得られた印刷版の150lpi 3%の網点再現性をルーペで観察し、90%以上の再現を○、90%未満の再現を×とした。
【0036】
実施例1〜3の感光性樹脂組成物の組成(質量部)及び印刷版の評価結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の感光性樹脂組成物によれば、耐刷性と画像再現性がともに優れた水現像性フレキソ印刷原版を提供することができる。