(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6302906
(24)【登録日】2018年3月9日
(45)【発行日】2018年3月28日
(54)【発明の名称】ウイルス感染および他の疾患を治療するためのアルキルピリミジン誘導体
(51)【国際特許分類】
C07D 239/48 20060101AFI20180319BHJP
C07D 401/06 20060101ALI20180319BHJP
C07D 409/06 20060101ALI20180319BHJP
A61K 31/505 20060101ALI20180319BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20180319BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20180319BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20180319BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20180319BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20180319BHJP
【FI】
C07D239/48CSP
C07D401/06
C07D409/06
A61K31/505
A61K31/506
A61P31/12
A61P29/00
A61P37/02
A61P43/00 111
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-525892(P2015-525892)
(86)(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公表番号】特表2015-524462(P2015-524462A)
(43)【公表日】2015年8月24日
(86)【国際出願番号】EP2013066673
(87)【国際公開番号】WO2014023813
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2016年8月5日
(31)【優先権主張番号】12180167.4
(32)【優先日】2012年8月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510020022
【氏名又は名称】ヤンセン・サイエンシズ・アイルランド・ユーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】マク ゴーン,デイビッド,クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンカーズ,ティム,ヒューゴ,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ラボイソン,ピエール,ジーン−マリー,ベルナルド
【審査官】
福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第00/012487(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/066335(WO,A1)
【文献】
特表2011−504497(JP,A)
【文献】
特表2002−541245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 239/02−239/69
A61K 31/33− 33/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、
R
1は、水素、フッ素、ヒドロキシル、アミン、C
1〜6アルキル、C
1〜6アルキルアミノ、C
1〜6アルコキシ、C
3〜7シクロアルキル、C
4〜7複素環、アリール、二環式複素環、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アリールオキシ、
またはヘテロアリールオキ
シであり、これらはそれぞれ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1〜6アルキル、ジ(C
1〜6)アルキルアミノ、(C
1〜4)アルコキシ−(C
1〜4)アルキル、C
1〜6アルキルアミノ、C
1〜6アルキル、C
1〜6アルコキシ、C
3〜6シクロアルキル
、複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、またはニトリルから独立して選択される1個以上の置換基で任意選択により置換されており、
R
2は、C
1〜6アルキルであり、これはそれぞれ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、ニトリル
、C1〜3アルキル、C
1〜3アルコキシ
、C
3〜6シクロアルキル、
またはスルホ
ンから独立して選択される1個以上の置換基で任意選択により置換されており、
但し、N−(2−アミノ−5−フェネチルピリミジン−4−イル)−N−ペンチルアミンは除外される)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形。
【請求項2】
R1がC4〜7複素環であり、R2がヒドロキシル基で置換されたC1〜6アルキルである、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形。
【請求項3】
R1が水素であり、R2がC1〜6アルキルであり、これがそれぞれ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、ニトリル、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ、C3〜6シクロアルキル、またはスルホンから独立して選択される1個以上の置換基で任意選択により置換されている、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形。
【請求項4】
以下:
【化2】
およびその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形から選択される、請求項1に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形を、1種以上の薬学的に許容される医薬品添加物、賦形剤または担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項6】
医薬として使用される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形、または請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
TLR7の調節および/またはTLR8の調節が関与する障害を治療するための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形、または請求項5に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルピリミジン誘導体、それらの製造方法、医薬組成物、ならびに疾患の治療および/または療法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、トール様受容体(TLR)の調節または受容体活性化作用が関与する、ウイルス感染、免疫または炎症性疾患の治療におけるアルキルピリミジン誘導体の使用に関する。トール様受容体は、細胞外ロイシンリッチドメインと、保存領域を含む細胞質伸長(cytoplasmic extension)とを特徴とするI型(primary)細胞膜貫通タンパク質である。自然免疫系は、ある種の免疫細胞の細胞表面に発現するこれらのTLRにより病原体関連分子パターンを認識することができる。外来の病原体を認識すると、サイトカインの産生と食細胞上の共刺激分子のアップレギュレーションが活性化される。これは、T細胞挙動の調節に繋がる。
【0003】
大部分の哺乳動物種は10〜15種類のトール様受容体を有する。ヒトおよびマウスで合わせて13種類のTLR(単にTLR1〜TLR13と称される)が同定されており、他の哺乳動物種でもこれらの多くと同等の形態が発見されてきた。しかし、ヒトで発見された特定のTLRの同等物が全ての哺乳動物に存在するわけではない。例えば、ヒトのTLR10と類似のタンパク質をコードする遺伝子がマウスに存在するが、過去のある時点でレトロウイルスによって損傷を受けたように見受けられる。他方、マウスはTLR11、TLR12、およびTLR13を発現するが、そのどれもヒトには現れない。他の哺乳動物がヒトには見られないTLRを発現することもある。トラフグ属のフグ(Takifugu pufferfish)に見られるTLR14によって示されるように、他の非哺乳動物種が、哺乳動物とは異なるTLRを有することもある。これにより、ヒトの自然免疫のモデルとして実験動物を使用する方法が複雑になることがある。
【0004】
トール様受容体に関する概説については、次の雑誌論文を参照されたい。Hoffmann,J.A.,Nature,426,p33−38,2003;Akira,S.,Takeda,K.,and Kaisho,T.,Annual Rev.Immunology,21,p335−376,2003;Ulevitch,R.J.,Nature Reviews:Immunology,4,p512−520,2004.
【0005】
国際公開第2000006577号パンフレットの複素環誘導体、国際公開第98/01448号パンフレットおよび国際公開第99/28321号パンフレットのアデニン誘導体、ならびに国際公開第2009/067081号パンフレットのピリミジン類などのトール様受容体に対する活性を示す化合物が以前記載された。
【0006】
特定のウイルス感染の治療では、C型肝炎ウイルス(HCV)の場合のように、インターフェロン(IFNアルファ)を定期的に注射投与することができる(Fried et.al.Peginterferon−alfa plus ribavirin for chronic hepatitis C virus infection,N Engl J Med 2002;347:975−−82)。経口投与可能な低分子IFN誘導物質は、免疫原性の低下と投与の簡便性という利点を提供し得る。従って、新規なIFN誘導物質は、ウイルス感染の治療に有効となり得る新種の薬物である。抗ウイルス作用を有する低分子IFN誘導物質の文献中の例については、De Clercq,E.;Descamps,J.;De Somer,P.Science 1978,200,563−565を参照されたい。
【0007】
インターフェロンαはまた、ある種の癌の治療では他の薬物と併用投与される(Eur.J.Cancer 46, 2849−57,and Cancer Res.1992,52,1056)。TLR7/8アゴニストは、明白なTh1反応を誘導することができるため、ワクチンアジュバントとしても重要である(Hum.Vaccines 2010,6,
322−335;およびHum.Vaccines 2009,5,381−394)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来技術の化合物と比較して、好ましい選択性、および改善された安全性プロファイルを有する新規なトール様受容体調節剤が強く求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、式(I)
【化1】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形が提供され、式中、
R
1は、水素、フッ素、ヒドロキシル、アミン、C
1〜6アルキル、C
1〜6アルキルアミノ、C
1〜6アルコキシ、C
3〜7シクロアルキル、C
4〜7複素環、アリール、二環式複素環、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミドであり、これらはそれぞれ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C
1〜6アルキル、ジ(C
1〜6)アルキルアミノ、(C
1〜4)アルコキシ−(C
1〜4)アルキル、C
1〜6アルキルアミノ、C
1〜6アルキル、C
1〜6アルコキシ、C
3〜6シクロアルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、またはニトリルから独立して選択される1個以上の置換基で任意選択により置換されており、
R
2は、C
1〜6アルキルであり、これはそれぞれ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、ニトリル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、C
1〜3アルキル、C
1〜3アルコキシまたはC
3〜6シクロアルキル、スルホン、スルホキシド、またはニトリルから独立して選択される1個以上の置換基で任意選択により置換されており、
但し、N−(2−アミノ−5−フェネチルピリミジン−4−イル)−N−ペンチルアミンは除外される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の実施形態では、本発明は、式(I)(式中、R
1は複素環であり、R
2は、例えば、ヒドロキシル基で置換されたC
1〜6アルキルである)の化合物に関する。
【0011】
第2の実施形態では、本発明は、式(I)(式中、R
1は水素であり、R
2はC
1〜6アルキルであり、これはそれぞれ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、ニトリル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、C
1〜3アルキル、C
1〜3アルコキシまたはC
3〜6シクロアルキル、スルホン、スルホキシド、またはニトリルから独立して選択される1個以上の置換基で任意選択により置換されている)の化合物を提供する。
【0012】
式(I)の化合物およびそれらの薬学的に許容される塩、溶媒和物または多形は、医薬としての、特に、トール様受容体(とりわけTLR7および/またはTLR8)活性の調節剤としての活性を有する。
【0013】
別の態様では、本発明は、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または多形を1種以上の薬学的に許容される医薬品添加物、賦形剤または担体と共に含む医薬組成物を提供する。
【0014】
さらに、本発明による式(I)の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形、または前記式(I)の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形を含む医薬組成物は、医薬として使用することができる。
【0015】
本発明の別の態様は、式(I)の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形、または、前記式(I)の化合物もしくはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形を含む前記医薬組成物が、TLR7および/またはTLR8の調節が関与するいかなる障害の治療にも適宜使用できることである。
【0016】
「アルキル」という用語は、指定された数の炭素原子を含む直鎖または分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素を指す。
【0017】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を指す。
【0018】
「アルケニル」という用語は、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1個の炭素−炭素二重結合からなる前述のアルキルを指す。
【0019】
「アルキニル」という用語は、少なくとも2個の炭素原子と少なくとも1個の炭素−炭素三重結合からなる前述のアルキルを指す。
【0020】
「シクロアルキル」という用語は、指定された数の炭素原子を含む炭素環を指す。
【0021】
「アルコキシ」という用語は、例えば、メトキシ基またはエトキシ基のように、酸素に単結合したアルキル(炭素と水素からなる鎖)基を指す。
【0022】
「アリール」という用語は、N、OおよびSから、特にNおよびOから選択される1個または2個のヘテロ原子を任意選択により含む、芳香環構造を意味する。前記芳香環構造は、5、6または7個の環原子を有してもよい。特に、前記芳香環構造は、5個または6個の環原子を有してもよい。
【0023】
「アリールオキシ」という用語は、芳香環構造を指す。前記芳香族基は、例えば、フェノールのように、酸素に単結合している。
【0024】
「ヘテロアリールオキシ」という用語は、N、OおよびSから選択される1個または2個のヘテロ原子を任意選択により含む芳香環構造を指す。前記芳香族基は、5〜7個の環原子を含有し、その1個が、例えば、ヒドロキシピリジンのように、酸素に単結合している。
【0025】
「二環式複素環」という用語は、縮合した2個の芳香環で構成された、「アリール」という用語について前述した芳香環構造を意味する。各環は、N、OおよびSから、特にNおよびOから選択されるヘテロ原子で任意選択により構成される。
【0026】
アリールアルキル」という用語は、アルキル基で任意選択により置換された、「アリール」という用語について前述した芳香環構造を意味する。
【0027】
「ヘテロアリールアルキル」という用語は、アルキル基で任意選択により置換された、「ヘテロアリール」という用語について前述した芳香環構造を意味する。
【0028】
複素環は、飽和または部分飽和であり、テトラヒドロフラン、ジオキサンまたは他の環状エーテルを含む分子を指すが、これらに限定されない。窒素を含む複素環としては、例えば、アゼチジン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジンおよびピロリジン等が挙げられる。他の複素環としては、例えば、チオモルホリン、モルホリン、および環状スルホンが挙げられる。
【0029】
「ヘテロアリール基」は、芳香族の性質を有する複素環基である。これらは、N、OまたはSから選択される1個以上のヘテロ原子を含む単環、二環、または多環である。ヘテロアリール基は、例えば、イミダゾリル、イソキサゾリル、フリル、オキサゾリル、ピロリル、ピリドニル、ピリジル、ピリダジニル、またはピラジニル、チオフェンまたはキノリンであってもよい。
【0030】
式(I)の化合物の薬学的に許容される塩には、その酸付加塩および塩基塩が含まれる。好適な酸付加塩は、無毒の塩を形成する酸から形成される。好適な塩基塩は、無毒の塩を形成する塩基から形成される。
【0031】
本発明の化合物は、溶媒和していない形態および溶媒和した形態で存在することもできる。本明細書では、「溶媒和物」という用語は、本発明の化合物および1種以上の薬学的に許容される溶媒分子、例えば、エタノールを含む分子錯体を説明するのに使用される。
【0032】
「多形」という用語は、2つ以上の形態または結晶構造で存在する本発明の化合物の能力を指す。
【0033】
本発明の化合物は、結晶性または非晶質の生成物として投与することができる。それらは、例えば、沈殿、結晶化、凍結乾燥、噴霧乾燥、または蒸発乾固などの方法で、固体プラグ(solid plugs)、粉末、またはフィルムとして得ることができる。それらは、単独で投与されても、または本発明の1種以上の他の化合物と併用投与されても、または他の1種以上の薬物と併用投与されてもよい。一般に、それらは、1種以上の薬学的に許容される医薬品添加物と共に製剤として投与される。「医薬品添加物」という用語は、本明細書では、本発明の化合物以外の任意の成分を説明するのに使用される。医薬品添加物の選択は、主に、特定の投与方法、溶解性および安定性に対する医薬品添加物の効果、ならびに剤形の種類などの要因に依存する。
【0034】
本発明の化合物またはその任意の部分群を、投与の目的で、様々な医薬形態に製剤化することができる。適切な組成物として、薬物を全身投与するのに通常使用される全ての組成物を挙げることができる。本発明の医薬組成物を製造するために、有効成分として、特定の化合物、任意選択により付加塩の形態の特定の化合物を有効量、薬学的に許容される担体と均質に混合した状態に配合するが、その担体は投与に望ましい製剤の形態に応じて非常に様々な形態を取り得る。これらの医薬組成物は、例えば、経口投与、経腸投与、または経皮投与に好適な単位剤形であることが望ましい。例えば、経口剤形の組成物の製造において、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤、および溶液剤などの経口液体製剤の場合、例えば、水、グリコール、油、およびアルコール等;または、散剤、丸剤、カプセル剤、および錠剤の場合、デンプン、糖類、カオリン、賦形剤、滑沢剤、結合剤、および崩壊剤等の固体担体などの、通常の医薬媒体のいずれかを使用することができる。投与が容易であるため、錠剤およびカプセル剤が最も有利な経口単位剤形であり、この場合、明らかに固体医薬担体が使用される。使用直前に、液体の形態に変換できる固体の形態の製剤も含まれる。経皮投与に好適な組成物では、担体は、浸透促進剤および/または好適な湿潤剤を任意選択により含み、これに、皮膚に対する顕著な有害作用を生じさせない任意の種類の好適な添加剤が少量、任意選択により配合される。前記添加剤は皮膚への投与を促進し得るおよび/または所望の組成物の製造に有用となり得る。これらの組成物は、様々な方法で、例えば、経皮パッチとして、スポット・オン製剤(spot−on)として、軟膏として投与することができる。本発明の化合物は、このような方法で投与されるように当該技術分野で使用される方法および製剤で、吸入または吸送により投与することもできる。従って、一般に、本発明の化合物は、溶液剤、懸濁剤または乾燥粉末の形態で肺に投与することができる。
【0035】
投与の容易さと投与量の均一性のため、前述の医薬組成物を単位剤形に製剤化することがとりわけ有利である。本明細書で使用する場合、単位剤形とは、単位投与量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の有効成分を、必要な医薬担体と共に含有する。このような単位剤形の例としては、錠剤(割線入り錠剤およびコーティング錠を含む)、カプセル剤、丸剤、散剤分包(powder packets)、カシェ剤、坐剤、注射用溶液剤または懸濁剤等、およびこれらのそれぞれの倍数(segregated multiples thereof)がある。
【0036】
感染疾患を治療する当業者は、下記に示す試験結果から有効量を決定することができるであろう。一般に、有効治療1日量は、0.01mg/kg体重〜50mg/kg体重、より好ましくは0.1mg/kg体重〜10mg/kg体重であろうと考えられる。必要な用量を、1日を通して2、3、または4以上の部分用量(sub−doses)として適切な間隔を空けて投与することが適切な場合がある。前記部分用量は、例えば、単位剤形当たり有効成分を1〜1000mg、特に5〜200mg含有する単位剤形として製剤化されてもよい。
【0037】
正確な投与量および投与頻度は、当業者に周知のように、使用される式(I)の特定の化合物、治療される特定の症状、治療される症状の重症度、特定の患者の年齢、体重、および全身健康状態、ならびにその個体が摂取している可能性がある他の医薬に依存する。さらに、治療される対象の反応に応じておよび/または本発明の化合物を処方する医師の評価に応じて、前記有効量を増減し得ることが明らかである。従って、前述の有効量の範囲は、ガイドラインに過ぎず、決して本発明の範囲または使用を制限するものではない。
【0038】
化合物の製造
式(I)の化合物はスキーム1に従って製造される。
【実施例】
【0039】
実施例1の製造
スキーム1
【化2】
【0040】
A−1の合成
【化3】
N
2雰囲気下、−78℃で、CH
3PPh
3Br(27.91g、78.1mmol、1.5当量)をTHF(70mL)に懸濁し、撹拌した。n−ブチルリチウム(30mL、75mmol、1.44当量、2.5Mヘキサン溶液)を20分間かけて滴下し、さらに0.5時間撹拌した後、2−アミノ−4,6−ジクロロ−5−ホルミルピリミジン[5604−46−6](10.0g、52mmol、1.0当量)をTHF(180mL)懸濁液として添加した。冷却浴を取り外し、混合物を室温で2時間撹拌した。反応を−78℃に冷却した後、NH
4Cl(飽和水溶液)をゆっくり添加した。冷却浴を取り外し、混合物を1.5時間撹拌した。有機層を分離し、水で洗浄し、乾燥し(Na
2SO
4)、固体を濾過により除去し、濾液の溶媒を減圧留去した。石油エーテルから酢酸エチルへの勾配を用いるシリカカラムクロマトグラフィーにより粗製物を精製し、無色油状物、A−1(1.2g)を得た。
1H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ ppm 5.30(br.s.,2H),5.65(d,1H),5.82(d,1H),6.58(q,1H)
【0041】
B−1の製造
【化4】
A−1(1.0g、5.26mmol)、n−ブチルアミン(0.39g、5.26mmol)およびEt
3N(0.53g、5.26mmol、1.0当量)のエタノール(10mL)溶液を12時間還流した。溶媒を減圧留去した。石油エーテルから酢酸エチルへの勾配を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより粗製物を精製した。最良の画分をプールし、減圧濃縮して、B−1(300mg)を得た。
LC−MS m/z=227(M+H)
1H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ ppm 0.95(t,J=7.3Hz,3H),1.38(dq,J=14.9,7.4Hz,2H),1.55(quin,J=7.4Hz,2H),3.38(q,J=7.3Hz,2H),4.75(br.s.,2H),5.39(br.s.,1H),5.5(m,2H),6.55(m,1H)
【0042】
実施例1の製造
【化5】
B−1(200mg、0.88mmol、1.0当量)のメタノール(5mL)溶液に、10%Pd/C(20mg)を添加し、H
2ガス(50Psi)と50℃で17時間混合した。分取高速液体クロマトグラフィー(C18カラム、溶離液:CH
3CN/H
2O、10/90〜95/5、0.05%HCl)により粗生成物を精製した。所望の画分をプールし、減圧濃縮して、1(74mg)を得た。
LC−MS m/z=195(M+H)
1H NMR(400MHz,クロロホルム−d)δ ppm 0.95(t,J=7.3Hz,3H),1.20(t,J=7.3Hz,3H),1.38(dq,J=14.9,7.4Hz,2H),1.62(quin,J=7.4Hz,2H),1.93(br.s.,1H),2.37(q,J=7.3Hz,2H),3.40−3.63(m,2H),6.18(br.s.,1H),7.24(br.s.,1H),13.43(br.s.,1H)
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
分析方法。化合物は全て、次の方法を用いるLC−MSによりキャラクタリゼーションを行った:
方法1.陽イオンモードのAgilent 1100 LC−MSは、50℃に保たれるYMC−PACK ODS−AQ、50×2.0mm、5μmカラムを備えた。次の移動相および勾配を10分間の総分析時間(total run time)にわたり0.8mL/分で使用し、220nmで監視した。
【0047】
【表4】
【0048】
方法2.陽イオンモードのAgilent 1100 LC−MSは、50℃に保たれるYMC−PACK ODS−AQ、50×2.0mm、5μmカラムを備えた。次の移動相および勾配を10分間の総分析時間にわたり0.8mL/分で使用し、220nmで監視した。
【0049】
【表5】
【0050】
式(I)の化合物の生物活性
生物学的アッセイの説明
TLR7およびTLR8活性の評価
TLR7またはTLR8発現ベクターおよびNFκB−lucレポーター構築物で一過性トランスフェクションを行ったHEK293細胞を使用する細胞レポーターアッセイで、化合物のヒトTLR7(hTLR7)および/またはTLR8(hTLR8)活性化能力を評価した。一例では、TLR発現構築物は、各野生型配列、またはTLRの第2のロイシンリッチリピートに欠失がある突然変異体配列を発現する。このような突然変異TLRタンパク質は、アゴニスト活性化をより受け易いことが以前示された(米国特許第7498409号明細書)。
【0051】
簡潔に言えば、HEK293細胞を培養培地(10%FCSおよび2mMグルタミンを補ったDMEM)中で増殖させた。10cm皿内で細胞のトランスフェクションを行うために、トリプシン−EDTAで細胞を剥離し、CMV−TLR7またはTLR8プラスミド(750ng)、NFκB−lucプラスミド(375ng)およびトランスフェクション試薬の混合物でトランスフェクションを行い、加湿した5%CO
2雰囲気中、37℃で一晩インキュベートした。次いで、トランスフェクション細胞をトリプシン−EDTAで剥離し、PBS中で洗浄し、1.67×10
5細胞/mLの密度になるように培地に再懸濁した。次いで、4%DMSO中の化合物10μLが既に存在する384ウェルプレートの各ウェルに細胞30マイクロリットルを分注した。37℃、5%CO
2で48時間インキュベートした後、Steady Lite Plus基質(Perkin Elmer)15μlを各ウェウルに添加することによりルシフェラーゼ活性を測定し、ViewLux ultraHTSマイクロプレートイメージャー(Perkin Elmer)で読み取りを行った。クワドルプリケート(quadruplicates)で行った測定から用量反応曲線を生成した。アッセイの標準偏差を少なくとも2倍上回る効果をもたらす濃度と定義される最低有効濃度(LEC)値を各化合物について測定した。
【0052】
並行して、同様の一連の希釈を行った化合物(4%DMSO中の化合物10μL)を、NFκB−lucレポーター構築物単独(1.67×10
5細胞/mL)をトランスフェクションした細胞1ウェル当たり30μLと共に使用した。37℃、5%CO
2でインキュベートして6時間後、各ウェルにSteady Lite Plus基質(Perkin Elmer)15μlを添加することによりルシフェラーゼ活性を測定し、ViewLux ultraHTSマイクロプレートイメージャー(Perkin Elmer)で読み取りを行った。カウンタースクリーンデータをLECとして報告する。
【0053】
化合物は全て、前述のHEK 293 TOXアッセイでCC50>24μMを示した。
【0054】
【表6】
本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
式(I)
【化6】
(式中、
R1は、水素、フッ素、ヒドロキシル、アミン、C1〜6アルキル、C1〜6アルキルアミノ、C1〜6アルコキシ、C3〜7シクロアルキル、C4〜7複素環、アリール、二環式複素環、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミドであり、これらはそれぞれ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、C1〜6アルキル、ジ(C1〜6)アルキルアミノ、(C1〜4)アルコキシ−(C1〜4)アルキル、C1〜6アルキルアミノ、C1〜6アルキル、C1〜6アルコキシ、C3〜6シクロアルキル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、複素環、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、またはニトリルから独立して選択される1個以上の置換基で任意選択により置換されており、
R2は、C1〜6アルキルであり、これはそれぞれ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、ニトリル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシまたはC3〜6シクロアルキル、スルホン、スルホキシド、またはニトリルから独立して選択される1個以上の置換基で任意選択により置換されており、
但し、N−(2−アミノ−5−フェネチルピリミジン−4−イル)−N−ペンチルアミンは除外される)
の化合物、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形。
[2]
R1が複素環であり、R2がヒドロキシル基で置換されたC1〜6アルキルである、上記[1]に記載の化合物。
[3]
R1が水素であり、R2がC1〜6アルキルであり、これがそれぞれ、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、ニトリル、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシまたはC3〜6シクロアルキル、スルホン、スルホキシド、またはニトリルから独立して選択される1個以上の置換基で任意選択により置換されている、上記[1]に記載の化合物。
[4]
上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形を、1種以上の薬学的に許容される医薬品添加物、賦形剤または担体と一緒に含む医薬組成物。
[5]
医薬として使用される、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形、または上記[4]に記載の医薬組成物。
[6]
TLR7の調節および/またはTLR8の調節が関与する障害の治療に使用される、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、もしくはその薬学的に許容される塩、溶媒和物もしくは多形、または上記[4]に記載の医薬組成物。