(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基準範囲は、複数であり、前記基準範囲毎に演算した前記確率密度関数の複数の最大値の平均値が20〜40%/μmとなるよう前記表面状態が調整される、請求項2に記載の摩擦板。
前記基準範囲は、複数であり、前記基準範囲毎に演算した前記確率密度関数の複数の最大値の平均値が20〜40%/μmとなるよう前記表面状態が調整される、請求項6に記載の摩擦板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、好ましい実施形態を挙げ、本発明をより詳しく説明する。本実施形態では、本発明に係る摩擦板(以降、クラッチプレートと称す)を、電子制御4WDカップリングのメインクラッチ機構のクラッチプレートとして用いた場合を一例として挙げる。ただし、本発明のクラッチプレートは、他のクラッチ機構にも適用できる。なお、電子制御4WDカップリングは、以下、駆動力伝達装置と記載する。
【0024】
(駆動力伝達装置)
ここで、
図1及び
図2を参照して、駆動力伝達装置91について説明する。まず、四輪駆動車90は、
図1に示すように、主に、駆動力伝達装置91と、トランスアクスル92と、エンジン93と、一対の前輪94と、一対の後輪95と、を備える。エンジン93の駆動力は、トランスアクスル92を介してアクスルシャフト81に出力され、前輪94を駆動する。
【0025】
また、トランスアクスル92は、プロペラシャフト82を介して駆動力伝達装置91に連結される。駆動力伝達装置91は、ドライブピニオンシャフト83を介してリヤデファレンシャル84に連結される。リヤデファレンシャル84は、アクスルシャフト85を介して後輪95に連結される。プロペラシャフト82とドライブピニオンシャフト83が駆動力伝達装置91にて駆動力伝達可能に連結された場合には、エンジン93の駆動力は後輪95に伝達される。
【0026】
駆動力伝達装置91は、例えば、リヤデファレンシャル84とともにディファレンシャルキャリヤ86内に収容され、且つディファレンシャルキャリヤ86に支持され、同ディファレンシャルキャリヤ86を介して車体に支持される。
【0027】
図2に示すように、駆動力伝達装置91は、主に、外側回転部材70aと、内側回転部材70bと、メインクラッチ機構70cと、パイロットクラッチ機構70dと、カム機構70eと、を備える。
【0028】
外側回転部材70aは、有底筒状のフロントハウジング71aと、リヤハウジング71bと、を備える。リヤハウジング71bは、フロントハウジング71aの軸方向の一方側(
図2の右側)端部の開口部に螺着され、且つその開口部を覆う。フロントハウジング71aの軸方向の他方側(
図2の左側)の端部には入力軸60が突出形成され、入力軸60はプロペラシャフト82に連結される。
【0029】
入力軸60が一体で形成されたフロントハウジング71a、及びリヤハウジング71bは、鉄系の磁性材料で形成される。リヤハウジング71bの径方向の中間部には、非磁性の例えばステンレス鋼で形成された筒体61が埋設される。筒体61は環状の非磁性部位を形成する。
【0030】
外側回転部材70aは、フロントハウジング71aの前端部外周において、ディファレンシャルキャリヤ86に対してベアリング等(図示なし)を介して回転可能に支持される。また、外側回転部材70aは、リヤハウジング71bの外周において、ディファレンシャルキャリヤ86に対して支持されたヨーク76にベアリング等を介して支持される。
【0031】
内側回転部材70bは、リヤハウジング71bの中央部を液密的に貫通してフロントハウジング71a内に挿入される。そして、内側回転部材70bは、軸方向への移動を規制された状態で、フロントハウジング71aとリヤハウジング71bに対して相対回転可能に支持される。内側回転部材70bには、
図1に示すドライブピニオンシャフト83の先端部が挿入される。
【0032】
メインクラッチ機構70cは、湿式多板のクラッチ機構である。メインクラッチ機構70cは、インナクラッチプレート72a(本発明の摩擦板に相当する)と、アウタクラッチプレート72bと、をそれぞれ複数枚備える。アウタクラッチプレート72bは、鉄系材料で形成される。インナクラッチプレート72aおよびアウタクラッチプレート72bは、フロントハウジング71aの径方向の内側に配設される。
【0033】
クラッチ機構を構成する各インナクラッチプレート72a(摩擦板)は、内側回転部材70bの外周にスプライン嵌合されて軸方向へ移動可能に組み付けられる。一方、各アウタクラッチプレート72bは、フロントハウジング71aの内周にスプライン嵌合されて軸方向へ移動可能に組み付けられる。各インナクラッチプレート72aと各アウタクラッチプレート72bは、軸方向に交互に配置されており、互いに各対向面が当接して摩擦係合可能であるとともに、互いに離間して非係合の自由状態になることもできる。
【0034】
パイロットクラッチ機構70dは、電磁石73、摩擦クラッチ群74、及びアーマチャ75を備える。ヨーク76は、ディファレンシャルキャリヤ86に対してインローで支持され、かつリヤハウジング71bの後端部の外周に対して相対回転可能に支持される。ヨーク76には環状の電磁石73が嵌着される。電磁石73は、リヤハウジング71bの環状凹所63に配置される。
【0035】
摩擦クラッチ群74は、鉄系材料で形成された1枚のインナパイロットクラッチプレート74a、及び鉄系材料で形成された2枚のアウタパイロットクラッチプレート74bを有する多板式の摩擦クラッチとして構成される。
【0036】
インナパイロットクラッチプレート74aは、カム機構70eを構成する第1カム部材77の外周にスプライン嵌合されて、軸方向へ相対移動可能且つ周方向に相対移動不可能に組み付けられる。一方、各アウタパイロットクラッチプレート74bは、フロントハウジング71aの内周にスプライン嵌合されて、軸方向へ相対移動可能且つ周方向に相対移動不可能に組み付けられる。
【0037】
インナパイロットクラッチプレート74aと、各アウタパイロットクラッチプレート74bとは、軸方向に交互に配置され、対向面が互いに当接して摩擦係合可能であるとともに、互いに離間して非係合の自由状態になることもできる。
【0038】
カム機溝70eは、第1カム部材77、第2カム部材78、及びカムフォロア79を有している。第2カム部材78は、内側回転部材70bの外周に軸方向へ移動自在にスプライン嵌合されており、内側回転部材70bに対して一体回転可能に組み付けられる。第2カム部材78は、メインクラッチ機構70cのインナクラッチプレート72aと対向して配置される。カムフォロア79は、ボール状に形成され、第2カム部材78及び第1カム部材77の対向面にそれぞれ形成される各カム溝間に介在される。
【0039】
駆動力伝達装置91において、パイロットクラッチ機構70dを構成する電磁石73の電磁コイルへの通電がなされていない場合には、磁路は形成されず、摩擦クラッチ群74は非係合状態となる。この場合、パイロットクラッチ機構70dは非作動の状態にあって、カム機構70eを構成する第1カム部材77は、カムフォロア79を介して第2カム部材78と一体回転可能であり、メインクラッチ機構70cは非作動状態にある。このため、四輪駆動車90は、二輪駆動の駆動モードを構成する。
【0040】
一方、電磁石73の電磁コイルに通電がされると、パイロットクラッチ機構70dには磁路が形成され、電磁石73はアーマチャ75を吸引する。この場合、アーマチャ75は、摩擦クラッチ群74を軸方向に押圧して摩擦係合させ、カム機構70eの第1カム部材77をフロントハウジング71a側と連結させ、第2カム部材78との間に相対回転を生じさせる。この結果、カム機構70eでは、カムフォロア79が、両カム部材77、78を互いに離間させる方向へ押圧する。
【0041】
この結果、第2カム部材78はメインクラッチ機構70c側へ押圧され、メインクラッチ機構70cを摩擦クラッチ群74の摩擦係合力に応じて摩擦係合させ、外側回転部材70a(フロントハウジング71a)と内側回転部材70bとの間の駆動力伝達を行なう。このため、四輪駆動車90は、プロペラシャフト82とドライブピニオンシャフト83とが直結状態となり四輪駆動の駆動モードを構成する。
【0042】
つまり、インナパイロットクラッチプレート74a、及びアウタパイロットクラッチプレート74bが係合することでフロントハウジング71aと内側回転部材70bとが駆動力を伝達可能な状態となる。また、インナパイロットクラッチプレート74a及びアウタパイロットクラッチプレート74bが離間することでフロントハウジング71aと内側回転部材70bとが駆動力伝達不能な状態となる。アーマチャ75、及びリヤハウジング71b(又は筒体61)は、インナパイロットクラッチプレート74a及びアウタパイロットクラッチプレート74bを軸方向に挟持して摩擦係合状態を形成する。
【0043】
また、電磁石73の電磁コイルへの印加電流を所定の値に増加させると、電磁石73のアーマチャ75に対する吸引力が増加する。これにより、アーマチャ75は強く電磁石73側へ吸引作動され、摩擦クラッチ群74の摩擦係合力を増大させ、両カム部材77、78間の相対回転量を増加させる。この結果、カムフォロア79は、第2カム部材78に対する押圧力を増加させて、メインクラッチ機構70cを結合(係合)状態とする。このため、四輪駆動車90は、プロペラシャフト82とドライブピニオンシャフト83が直結した四輪駆動の駆動モードを構成する。インナパイロットクラッチプレート74a及びアウタパイロットクラッチプレート74bの駆動力変化率は、運転フィーリング等に影響を及ぼす。
【0044】
(クラッチプレート及び湿式ペーパ摩擦材)
次に、本実施形態において摩擦板に相当するインナクラッチプレート72aの詳細について、
図2〜
図15を参照して説明する。
図2〜
図4に示すように、メインクラッチ機構70cを構成する複数のインナクラッチプレート72aは、それぞれ鉄系材料で形成されたコアプレート72fと、コアプレート72fの摺動面両面に接着された湿式のペーパ摩擦材72g,72gと、を有する。なお、
図3は、メインクラッチ機構70cからインナクラッチプレート72aを抜き出した図であり、インナクラッチプレート72aの正面図である。
【0045】
各コアプレート72fは、
図3に示すように、円盤状に形成される。コアプレート72fの表面及び裏面の各外周側には、円環状のペーパ摩擦材72g,72gがそれぞれ接着剤により貼り付けられる。なお、インナクラッチプレート72aの裏表の各ペーパ摩擦材72g,72gは同じものである。よって、以降の説明においては、代表として何れかのペーパ摩擦材72gのみについて説明する。
【0046】
図4に示すように、ペーパ摩擦材72gは、ペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1が、メインクラッチ機構70cにおいてインナクラッチプレート72aと隣接するアウタクラッチプレート72bの摩擦摺動面72b1(
図3参照)と対向し当接可能に配置される。摩擦摺動面72b1は、アウタクラッチプレート72bを構成する、例えば鉄系材料の金属表面がそのまま露出している。湿式のペーパ摩擦材は、公知の技術である。このため、詳細な説明は省略するが、通常、湿式のペーパ摩擦材は、天然パルプや有機合成繊維を母材として形成される。そして、母材にフェノール樹脂や耐熱性樹脂が含浸され、それらが硬化した後に、鋼板(コアプレート)に接着される。本実施形態に係るペーパ摩擦材72gも同様の方法により製作されるものとする。
【0047】
(シャダーの発生のメカニズム)
ここで、シャダーの発生のメカニズムについて、
図5に示すストライベック曲線に基づき説明しておく。なお、シャダーとは、湿式摩擦クラッチにおいて、対向し当接する摩擦板同士がすべりを伴って相対回転する際に発生する振動に起因する異音のことである。また、ストライベック曲線は、通常、シャダーの発生メカニズムを説明する際に用いられる、湿式摩擦クラッチにおける摩擦板間の((粘度×速度)/荷重)と摩擦係数との関係を示す公知のグラフである。
【0048】
図5に示すストライベック曲線の横軸は、(粘度×速度)/荷重である。このとき、粘度は、ペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1と、アウタクラッチプレート72bの摩擦摺動面72b1との間に介在する油の粘度である。速度は、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間の相対移動速度である。荷重は、ペーパ摩擦材72gがアウタクラッチプレート72bを押圧する押圧力である。また、ストライベック曲線の縦軸は、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間の摩擦係数である。
【0049】
なお、説明を簡略化するため、ストライベック曲線の横軸の項目((粘度×速度)/荷重)に対して粘度と荷重を一定として説明する。これにより、ストライベック曲線を、速度と摩擦係数の関数と見なすことができる。
図5のストライベック曲線では、左から右に向かって境界潤滑領域BA、混合潤滑領域MA、及び流体潤滑領域FAを示している。それぞれの領域は、破線で分離されている。
【0050】
(境界潤滑領域BA)
境界潤滑領域BAは、ペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1とアウタクラッチプレート72bの摩擦摺動面72b1との間の相対移動速度が低い領域である。このような領域では、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間の油膜厚さが薄い。これにより、摩擦摺動面72g1及び摩擦摺動面72b1の接触面積が増加し、摩擦係数も増加する。しかし、このときのストライベック曲線における摩擦係数の変動は正勾配(A部参照)となるので、スティック・スリップは発生しにくく、シャダーは発生しない。境界潤滑領域BAにおける相対移動速度より、相対移動速度が増加すると混合潤滑領域MAに移行する。
【0051】
(混合潤滑領域MA)
混合潤滑領域MAでは、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間の相対移動速度は、高い領域とはいえず比較的低い領域である。このため、油膜によって摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1とを離間させる油圧反力は低い。このような状態の混合潤滑領域MAで、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間の相対移動速度が増加していくと、相対移動速度に応じて油圧反力が増加し摩擦係数が低下する。つまり、ストライベック曲線における特性は負勾配(
図5中、B部参照)となる。この状態(B部)を含む領域を混合潤滑領域MAという。ストライベック曲線において、B部のような負勾配の特性部分では、摩擦摺動面72g1及び摩擦摺動面72b1の相対移動時に、両者の間で公知のスティック・スリップが引き起こされシャダーが発生し易い。
【0052】
そして、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間の相対移動速度がさらに増加すると、当該速度の増加に伴う油圧反力の増加によって摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間は完全に離間する。これにより、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間の摩擦係数は、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間の油膜の粘性抵抗に大きく依存するようになるため、相対移動速度の増加に伴い増加していく。そして、ストライベック曲線における摩擦係数の特性は、流体潤滑領域FAに移行する。
【0053】
(流体潤滑領域FA)
流体潤滑領域FAでは、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間の相対移動速度がさらに増加する。これにより、ペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1とアウタクラッチプレート72bの摩擦摺動面72b1との間が、油によって完全に分離される。摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1とは物理的に接触していないためシャダーは発生しない。
【0054】
(境界潤滑領域BAにおける摩擦摺動面72g1及び72b1の状態)
図6は、境界潤滑領域BAにおける摩擦摺動面72g1及び摩擦摺動面72b1の関係(状態)を模式的に示した図である。
図6においては、摩擦摺動面72g1の表面凹凸の山Tが所定量摩耗しているが、谷深さは十分残存している。このため、摩擦摺動面72g1の山Tが所定量摩耗することによって、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間の接触面積が増加し、摩擦係数が増加した状態で安定する。また、十分な谷深さの残存によって、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間に介在する油が良好に排出される。これらによって、境界潤滑領域BAにおいては,摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間の摩擦係数は大きいが、その特性は緩やかな正勾配を有している。このため、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間でスティック・スリップは発生しにくく、延いてはシャダーも発生しにくい。
【0055】
(混合潤滑領域MAにおける摩擦摺動面72g1及び72b1の状態)
図7、及び
図8は、混合潤滑領域MAにおいて、シャダーが発生する摩擦摺動面72g1及び摩擦摺動面72b1の別パターンの関係をそれぞれ模式的に示したものである。
図7は、摩擦摺動面72g1があまり摩耗しておらず表面凹凸の山T、谷Vともに十分残存している状態、つまり、初期状態を示している。
図7における場合には、摩擦摺動面72g1及び摩擦摺動面72b1は一部が物理的に接触しているが、油も両者の間に多く介在している。このような場合にも、ストライベック曲線においては負勾配の特性となる。
【0056】
また、
図8では、摩擦摺動面72g1において表面凹凸の山が摩耗し、谷Vにも摩耗によって発生したスラッジSが堆積している状態を示している。
図8の場合には、スラッジSが谷Vに堆積したことによって、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間の油が排出されにくくなり、油膜厚さが厚くなる。このような場合も、混合潤滑であり、ストライベック曲線においては負勾配の特性となる。このように、
図7、及び
図8に示すいずれの状態においても、ストライベック曲線においては負勾配となる。これにより、スティック・スリップが発生しやすく、シャダーが発生しやすい。
【0057】
なお、上記において、摩擦摺動面72g1の初期状態からの時間の経過で見ていくと、シャダー発生の虞のある
図7、
図8に示す状態、及びシャダー発生の虞のない
図6に示す状態は、
図7→
図6→
図8の順に、摩擦摺動面72g1と摩擦摺動面72b1との間の状態が移行している。
【0058】
上記のシャダー発生メカニズムより、発明者は、シャダーの発生が、摩擦摺動面72g1の表面凹凸(表面状態)、特に、介在する油を排出するための摩擦摺動面72g1の谷深さと深い相関を有すると考えた。そこで、摩擦摺動面72g1の表面凹凸(表面状態)を管理する際に、谷Vの全深さも含めて評価可能な確率密度関数を表面状態の管理指標とすることとした。詳細には、確率密度関数における最大値Pmaxを管理指標とすることとした。
【0059】
(確率密度関数及び最大値Pmax)
まず、確率密度関数について説明する。確率密度関数は、累積分布関数を微分して求めた関数である。累積分布関数(負荷曲線)は、ペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1における基準範囲BRにおいて、摩擦摺動面72g1から所定の深さで切断した切断断面における摩擦摺動面72g1の表面凹凸の凹部(谷V)の断面積(大きさに相当)の基準範囲BRの面積(大きさに相当)に対する割合(断面積率)と、深さとの関数である。具体的には、累積分布関数は、
図9に示すグラフで表せる。なお、
図9に示す累積分布関数(負荷曲線L1)は、
図7に示すペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1の累積分布関数(負荷曲線)である。
【0060】
本実施形態においては、所定の深さで切断したときに現れる摩擦摺動面72g1の表面凹凸の凹部(谷V)の断面積は、非接触式の表面形状計測器(図略)によって計測する。また、基準範囲BR(
図3参照)の面積は、任意に設定できるが、例えば0.7mm×0.52mmの矩形の範囲とすることができる。ただし、この数値はあくまで一例であって、基準範囲BRの面積は、任意に設定可能である。なお、非接触式の表面形状計測器はどのようなものでもよいが、例えばZygo社製の非接触表面形状測定機が例示できる。
【0061】
そして、確率密度関数は、摩擦摺動面72g1の累積分布関数を(
図9の負荷曲線参照)を微分することにより求める。つまり、確率密度関数は、凹部深さ(谷深さ)成分も含んだ指標となる。前述したように、
図9に示す累積分布関数(負荷曲線)は、
図7に示すペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1の累積分布関数(負荷曲線)である。
図7の表面状態を有するペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1の山Tの頂点は摩耗しておらず谷Vも深い。このような状態では、
図9に示すように負荷曲線L1は緩やかな傾きとなる。
【0062】
なお、上記において、所定の深さで切断したときに現れる摩擦摺動面72g1の表面凹凸の凹部(谷V)の断面積は、非接触式の表面形状計測器によるものとは限らない。凹部の断面積は、接触式の表面形状測定器によって測定したものであってもよい。また、
図9において、横軸における0は、
図9の特性のうち、最も曲線の傾きが大きな位置である。つまり、
図9の曲線を微分したとき、最大値となる点が0点と交差するように設定してある。
【0063】
図9の累積分布関数(負荷曲線)を微分して演算した確率密度関数の演算結果を
図10に示す。緩やかな傾きの負荷曲線L1を微分した確率密度関数の最大値Pmaxは小さくなる。そして、演算した確率密度関数のうちの最大値Pmax(%/μm)を抽出し、当該最大値Pmaxの大きさに基づき、シャダーの発生の有無を判定する。判定方法については後述する。
【0064】
このように、表面凹凸の凹部深さも考慮に入れた確率密度関数に基づく指標を用いることによって、シャダーの発生の有無を簡易に判定可能とする。なお、参考として、
図8の表面状態を有するペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1の確率密度関数及び最大値Pmax(%/μm)を
図11,
図12にそれぞれ示す。
図8の表面状態を有するペーパ摩擦材72gの場合、摩擦摺動面72g1の表面凹凸の山T(凸部)の頂点は摩耗し、谷V(凹部)にはスラッジSが堆積して谷深さが浅くなっている。このため、負荷曲線L2は急峻な傾きとなる。よって、負荷曲線L2を微分して求める確率密度関数の最大値Pmaxは大きなものとなる。
【0065】
(確認試験結果)
発明者は、確率密度関数に基づく指標(最大値Pmax)とシャダーの発生との間に相関関係が本当にあるのか否かの確認試験を行った。発明者は、未使用(初期状態)のインナクラッチプレート72aから実際に作動中であるインナクラッチプレート72aまでランダムに集め、それぞれのペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1の確率密度関数の最大値Pmaxとシャダーの発生との関係を調査した。供試品は全部で14個(TP1〜TP14)である。また、結果は
図13に示すとおりである。
【0066】
各供試品からは、それぞれ例えば3枚ずつインナクラッチプレート72aを抜き取り測定を行なう。抜き取った3枚のインナクラッチプレート72aは、軸方向に並んだ複数のインナクラッチプレート72aのどこから抜き取ってもよい。しかし、試験条件を合わせこむため、全供試品間では全て同じ位置から抜き取るものとする。なお、本実施形態においては、複数のインナクラッチプレート72aのうち、両端と軸方向中央から3枚抜き取るものとする。
【0067】
そして、各供試品の各3枚のインナクラッチプレート72aの各裏表の複数の測定箇所(基準範囲BR)で表面状態を測定する。このとき、例えば、
図3に示すように、各裏表で円周方向に90度ずつ位相をずらしながらそれぞれ4箇所ずつ測定を行えば、3枚のインナクラッチプレート72aで合計24箇所のデータが取得できる。そして、24箇所で計測し求めた累積分布関数(負荷曲線)をそれぞれ微分して確率密度関数、及び最大値Pmaxを演算し、最大値Pmaxをグラフ(
図13参照)にプロットする。
【0068】
図13の横軸は、供試品NOであり、縦軸は確率密度関数の最大値Pmaxである。各供試品のデータ(
図13中、白抜き四角参照)は、それぞれ、複数(例えば3枚)のインナクラッチプレート72aから抽出して測定及び演算した複数のデータ群である。そして、各供試品毎のデータの中に黒丸で示した点は、各データ群の平均値である。
【0069】
そして、
図13中の破線の左側にシャダーが発生した供試品を4つ並べた(矢印N参照)。また
図13の破線の右側にシャダーが発生しなかった残りの供試品を全て並べた(矢印Y参照)。この結果から、シャダーが発生した供試品では、確率密度関数の最大値Pmaxの平均値が20%/μm未満であることがわかった。
【0070】
また、矢印Gが示すように、シャダーが発生しなかった供試品の確率密度関数の最大値Pmaxの平均値は、20%/μm以上であることがわかった。また、
図13中には示さないが、別の実験によって、本実施形態においては、確率密度関数の最大値Pmaxが87%/μmまでの供試品にシャダーの発生がないことが確認された。つまり、摩擦摺動面72g1の確率密度関数の最大値Pmaxが所定の範囲内にあるペーパ摩擦材72gにおいては、シャダーは発生しない。そして、その所定の範囲とは、20%/μm〜87%/μmの範囲である。以上より、確率密度関数に基づく指標(最大値Pmax)とシャダーの発生との間に相関関係があることが確認できた。
【0071】
(確率密度20〜40%/μmの設定)
上記より、製品初期時における確率密度関数の最大値Pmaxは20%/μm以上であればよいことが判った。しかし、試験結果でわかったように本実施形態においては、最大値Pmaxが87%/μm以下であればシャダーは発生しない。しかし最大値Pmaxが87%/μmのペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1の表面状態は、山T(凸部)は大きく摩耗し、谷V(凹部)にも多くのスラッジSが堆積した、いわゆる寿命間近であると考えられる。
【0072】
そこで、発明者は、本実施形態において、製品初期時における単体慣らし工程でペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1を調整用金属(調整用部材に相当)に圧接しながら摺動(相対移動に相当)させることによって、調整可能な上限である40%/μmを製品初期時における確率密度の最大値Pmaxの上限とした。これにより、製品初期時においては、確実にシャダーの発生が防止できる。また、シャダーが発生する限界上限(最大値Pmaxが87%/μm)までに十分な耐久性能を有する。ただし、高い耐久性能を求めない場合は、出荷時(製品初期時)において、確率密度関数の最大値Pmaxは、40%/μm以上に調整してもよい。
【0073】
(製造方法)
次に、確率密度関数の最大値Pmaxを管理指標とするインナクラッチプレート72aの製造方法について
図14のフローチャートに基づき説明する。特に、インナクラッチプレート72aのペーパ摩擦材72gの製造方法は、計測工程S1と、確率密度演算工程S2と、準備工程S3と、調整工程S4と、を備える。
【0074】
(1.計測工程S1)
計測工程S1では、コアプレート72fに接着されるペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1における所定の深さで切断したときに現れる摩擦摺動面72g1の表面凹凸の凹部(谷V)の断面積を複数個所で計測し累積分布関数(負荷曲線)を求める。本実施形態では、摩擦摺動面72g1の円中心に対し、同心円上で周方向に90degずつ位相のずれた位置で測定する(
図3参照)。また、裏のペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1においても同様に表面凹凸の凹部(谷V)の断面積を計測する。つまり、1枚のインナクラッチプレート72aの裏表のペーパ摩擦材72gで、8箇所の凹部(谷V)の断面積データを測定する。なお、この態様に限らず測定箇所及び測定数は、任意に設定可能である。
【0075】
上記において、凹部(谷V)の断面積の計測は、非接触式の表面形状計測器によって行なう。これにより、従来、使用されている触針式の測定器に比べ、狭い測定範囲で、大量のデータの取得が可能となりインナクラッチプレート72aのソリ、曲がり等の影響を排除できるので、データの信頼性が向上する。
【0076】
(2.確率密度演算工程S2)
確率密度演算工程S2では、計測された凹部(谷V)の断面積に基づく累積分布関数(負荷曲線)(
図9、
図11参照)をそれぞれ微分してペーパ摩擦材72gの確率密度関数を演算する。その演算結果の一例を
図10のグラフに示す。確率密度演算工程S2では、他の測定点データの確率密度関数の最大値Pmaxの平均値を演算する。
【0077】
(3.準備工程S3)
準備工程S3では、最大値Pmaxの平均値が20〜40%/μmの範囲内であるか否かの判定を行なう。そして、最大値Pmaxの平均値が20〜40%/μmであれば、合格とし、プログラムを終了し製品として出荷準備を行なう。しかし、
図10のグラフに示すように、最大値Pmaxの平均値が20%/μm未満であれば、シャダーの発生の虞があるので調整工程S4に移動する。
【0078】
(4.調整工程S4)
調整工程S4は、準備されたインナクラッチプレート72a(摩擦板)のペーパ摩擦材72gに対して、確率密度関数の最大値が20〜40%/μmとなるようペーパ摩擦材72gの表面状態を調整する。具体的には、ペーパ摩擦材72gの摩擦摺動面72g1を調整用金属板(調整用部材)の表面に所定の圧力で圧接させるとともに調整用金属板と摺動(相対移動)させて表面状態を調整する。そして、調整後、再び準備工程S3にて確認を行なう。ここで、摩擦摺動面72g1の確率密度関数の最大値Pmaxの平均値が20〜40%/μmとなれば合格としプログラムを終了する。最大値Pmaxの平均値が20〜40%/μmの範囲内でないときには、範囲内に入るまで調整工程S4→準備工程S3を繰り返し実施する。
【0079】
(検査方法)
次に、インナクラッチプレート72aの検査方法について説明する。検査としては、例えば上記で説明した製品出荷時における検査と、市場回収品に対する検査がある。いずれの場合においても、確率密度関数に基づきインナクラッチプレート72a(摩擦板)の良否が判定される。具体的には、製品出荷時における検査では、前述のとおり、インナクラッチプレート72aが備えるペーパ摩擦材72gにおいて、摩擦摺動面72g1の確率密度関数の複数の最大値Pmaxの平均値が20〜40%/μmの範囲にあれば合格とする。なお、確率密度関数の最大値Pmaxは、複数に限らず1箇所のみ演算し判定してもよい。
【0080】
次に市場回収品に対する検査においては、上記の製品出荷時における検査方法と同様にして検査ができる。つまり、回収品のインナクラッチプレート72aのコアプレート72fに接着されるペーパ摩擦材72gにおいて、摩擦摺動面72g1の凹部(谷V)の断面積に基づく累積分布関数(負荷曲線)をそれぞれ上記と同様に複数個所で計測する。
【0081】
次に、計測された累積分布関数(負荷曲線)をそれぞれ微分してペーパ摩擦材72gの確率密度関数の最大値Pmaxをそれぞれ演算する。そして、最大値Pmaxの平均値が、シャダー発生の下限値(20%/μm)〜シャダー発生の上限値(87%/μm)までの範囲にあれば、ペーパ摩擦材72gは寿命内であり良品と判定できる。
【0082】
また、演算した最大値Pmaxを、事前に求めた
図15のグラフにプロットしてもよい。
図15は、1面当たりの摩擦摺動面72g1に入力される入力エネルギー(KJ)と、確率密度関数の最大値Pmax(%/μm)との関係を示す対数グラフである。この特性は、耐久試験等で1面当たりの摩擦摺動面72g1に入力された入力エネルギーが判明しているペーパ摩擦材72gの、入力エネルギーと確率密度関数の最大値Pmaxとの実際の関係をプロット(黒丸参照)したグラフである。この特性を見て判るように、入力エネルギーと最大値Pmaxとが、良好な相関を有していることが判る(直線L3参照)。なお、
図15中において、Slimは、確率密度関数の最大値Pmaxにおいて上方におけるシャダーの発生限界を示し、矢印SO1、SO2はシャダーの発生領域を示している。また、上下限の範囲を示す矢印Adは、初期時のペーパ摩擦材72gの表面状態における確率密度関数の最大値Pmaxの調整範囲を示している。
【0083】
ここに例えば、回収したペーパ摩擦材72gの確率密度関数の最大値Pmaxをプロットする(例えば黒△印)。これにより、回収したペーパ摩擦材72gに入力された入力エネルギーX1、及びシャダー限界Slim(上側太線)に到達するまでの入力エネルギーX2が推定できる。つまり、ペーパ摩擦材72gの寿命に到達するまでの入力エネルギーX2がわかり、ペーパ摩擦材72gの寿命が計算できる。
【0084】
なお、参考として、本実施形態と同様の耐久試験後品における1面当たりの摩擦摺動面に入力された入力エネルギーと、従来技術における指標であったTp値(カットレベル10μm)と、の関係を
図15と同様のグラフである
図16のグラフにのせてみた。
図16に示す特性は、
図15の特性と明らかに異なり、やはり、入力エネルギーとTp値との間に相関関係を見出すことはできない。また、
図16においては、シャダー発生の有品(d点)、及び無し品(e点)が同じTp値を示していることもあり、ペーパ摩擦材の寿命に到達するまでの入力エネルギーの量は到底推定できない。
【0085】
このように、本発明においては回収品であるペーパ摩擦材72gの確率密度関数の最大値Pmaxを演算することにより、これまでに入力された入力エネルギーX1と寿命までの入力エネルギーX2が予測可能となる。これにより、回収品に対してシャダーが発生するまでの寿命が精度よく推定できる。
【0086】
上述の説明から明らかなように、上記実施形態のインナクラッチプレート72a(摩擦板)、及びインナクラッチプレート72aの製造方法によれば、摩擦摺動面72g1の製品初期時における表面状態を調整する指標は、従来技術のように、表面凹凸の山Tの頂点からの所定の深さ(例えば10μm)のみに基づく指標ではなく、摩擦摺動面72g1の表面凹凸の凹部(谷V)を全て含んだ累積分布関数を微分して求めた確率密度関数による指標である。このため、製品初期時において、凹部(谷V)の深さが十分となるよう確率密度関数に基づき表面状態を調整すれば、製品初期時だけでなく、所定時間運転した後においても、摩擦摺動面の凹部にスラッジSが堆積し、凹部の深さが浅くなりすぎることによってシャダーが発生することを良好に抑制できる。
【0087】
また、上記実施形態によれば、確率密度関数を演算する際の基準範囲BRは、複数であり、基準範囲BR毎に演算した確率密度関数の複数の最大値の平均値が20〜40%/μmとなるよう摩擦摺動面の表面状態が調整される。このため、摩擦摺動面の全ての基準範囲BRにおいて、確率密度関数の最大値が20〜40%/μmを満足する必要がない。これにより、低コストに製作可能であるとともに、実用的である。
【0088】
また、上記実施形態によれば、表面凹凸の凹部(谷V)の断面積は、非接触式の表面形状計測器によって計測される。非接触式の表面形状計測器で凹部の断面積を計測すると、接触式の計測器で計測した場合と比べて、短時間で大量、且つ精度の高いデータが取得できる。これにより、低コストで精度よく確率密度関数の最大値の管理が可能となり、製品初期時におけるシャダーの発生を良好に防止できる。
【0089】
また、上記実施形態における製造方法によれば、初期状態で確率密度関数の最大値Pmaxが20%/μm未満であっても、調整工程S4によって、確率密度関数の最大値が20〜40%/μmとなるよう表面状態が調整でき、20%/μm未満のペーパ摩擦材を無駄にすることがない。
【0090】
また、上記実施形態における製造方法によれば、調整工程S4は、摩擦摺動面を調整用部材に圧接し相対移動させて前記表面状態を調整する。このように簡易な方法にて、表面状態の調整ができる。
【0091】
また、上記実施形態における検査方法によれば、確率密度関数に基づきインナクラッチプレート72a(摩擦板)の良否が判定される。このように、本発明で使用する指標は、従来技術のように、表面凹凸の山Tの頂点からの所定の深さ(例えば10μm)のみに基づく指標ではなく、摩擦摺動面の表面凹凸の凹部深さ(谷深さ)を含んだ累積分布関数を微分して求めた指標である。このため、摩擦摺動面の凹部(谷V)にスラッジSが堆積し、凹部(谷V)の深さが浅くなることによってシャダーが発生することを良好に判定できる。
【0092】
また、上記実施形態における検査方法によれば、確率密度関数の最大値が20〜87%/μmである場合に、インナクラッチプレート72a(摩擦板)が、良品と判定される。実測に基づき、確率密度関数の最大値が20〜87%/μmであれば、摩擦板にシャダーが発生する虞がないことがわかっている。これにより、確実に良品の判定ができる。また、シャダーが発生するまでの残りの寿命の推定も良好に行なえる。
【0093】
なお、上記実施形態においては、製品初期時における摩擦摺動面72g1の表面状態は、確率密度関数の最大値Pmaxが、20〜40%/μmの範囲に入るよう調整される。しかし、この態様には限らない。製品初期時における摩擦摺動面72g1の表面状態は、ペーパ摩擦材毎の特性に応じて、シャダーが発生しないよう20〜40%/μm以外の範囲に調整されてもよい。
【0094】
また、上記実施形態の製造方法においては、準備工程S3を設けた。しかし、この態様に限らず、準備工程S3はなくともよい。つまり、全てのペーパ摩擦材が、常に調整工程によって摩擦摺動面の表面状態を調整されてもよい。また、製造方法では、計測工程S1、確率密度演算工程S2及び準備工程S3を備えず、調整工程S4のみを備えてもよい。