(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6310349
(24)【登録日】2018年3月23日
(45)【発行日】2018年4月11日
(54)【発明の名称】風量制御システムおよび風量制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/007 20060101AFI20180402BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20180402BHJP
F24F 7/06 20060101ALI20180402BHJP
F24F 11/72 20180101ALI20180402BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20180402BHJP
【FI】
F24F7/007 B
F24F7/08 Z
F24F7/06 C
F24F11/04 Z
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-144740(P2014-144740)
(22)【出願日】2014年7月15日
(65)【公開番号】特開2016-20772(P2016-20772A)
(43)【公開日】2016年2月4日
【審査請求日】2017年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大沢 信雄
【審査官】
河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−237527(JP,A)
【文献】
特開2012−251729(JP,A)
【文献】
特開2012−225624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/00−7/10,11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象施設へ吹き出す給気の風量を調節する給気バルブと、
対象施設から吸い出す排気の風量を調節する一般排気バルブと、
前記給気バルブによって調節される給気風量と前記一般排気バルブによって調節される排気風量との差が所定の設定値に一致するように、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記一般排気バルブによって調節される一般排気風量とを決定する風量バランス決定手段と、
前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち一方を主バルブとし、他方を従バルブとしたときに、前記風量バランス決定手段が決定した、前記主バルブに対応する風量が得られるように前記主バルブを制御する主バルブ制御手段と、
前記風量バランス決定手段が決定した、前記従バルブに対応する風量が得られるように前記従バルブを制御する従バルブ制御手段と、
前記給気バルブと前記一般排気バルブの状態を定期的に監視するバルブ監視手段と、
予め設定されたスケジュールまたは外部からの指示に従って前記風量バランス決定手段に対して風量変更の指示を出す風量変更手段とを備え、
前記風量バランス決定手段は、前記風量変更手段から風量変更の指示を受けたときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち少なくとも一方が故障している場合は、前記給気風量と前記一般排気風量を変更しないことを特徴とする風量制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の風量制御システムにおいて、
さらに、前記対象施設に設置された局所排気装置と、
この局所排気装置の排気風量を調節する局所排気バルブと、
前記局所排気装置のサッシ面の面風速が規定値となるように前記局所排気バルブを制御する局所排気バルブ制御手段とを備え、
前記風量バランス決定手段は、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記局所排気バルブおよび一般排気バルブによって調節される排気風量との差が所定の設定値に一致するように、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記一般排気バルブによって調節される一般排気風量とを決定することを特徴とする風量制御システム。
【請求項3】
請求項2記載の風量制御システムにおいて、
さらに、前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち少なくとも一方が故障している場合に、前記局所排気装置の使用者に対して、前記給気バルブまたは一般排気バルブが故障していることを通知するバルブ状態通知手段を備えることを特徴とする風量制御システム。
【請求項4】
請求項2記載の風量制御システムにおいて、
さらに、前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち少なくとも一方が故障している場合に、前記局所排気装置の開閉禁止機構を制御して、前記局所排気装置のサッシの開閉を禁止するサッシ制御手段を備えることを特徴とする風量制御システム。
【請求項5】
請求項3記載の風量制御システムにおいて、
前記バルブ監視手段は、前記局所排気バルブの状態を定期的に監視し、
前記バルブ状態通知手段は、前記局所排気バルブが故障している場合に、前記局所排気装置の使用者に対して、前記局所排気バルブが故障していることを通知することを特徴とする風量制御システム。
【請求項6】
請求項4記載の風量制御システムにおいて、
前記バルブ監視手段は、前記局所排気バルブの状態を定期的に監視し、
前記サッシ制御手段は、前記局所排気バルブが故障している場合に、前記局所排気装置の開閉禁止機構を制御して、前記局所排気装置のサッシの開閉を禁止することを特徴とする風量制御システム。
【請求項7】
対象施設に設置された給気バルブによって調節される給気風量と前記対象施設に設置された一般排気バルブによって調節される排気風量との差が所定の設定値に一致するように、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記一般排気バルブによって調節される一般排気風量とを決定する風量バランス決定ステップと、
前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち一方を主バルブとし、他方を従バルブとしたときに、前記風量バランス決定ステップで決定した、前記主バルブに対応する風量が得られるように前記主バルブを制御する主バルブ制御ステップと、
前記風量バランス決定ステップで決定した、前記従バルブに対応する風量が得られるように前記従バルブを制御する従バルブ制御ステップと、
前記給気バルブと前記一般排気バルブの状態を定期的に監視するバルブ監視ステップと、
予め設定されたスケジュールまたは外部からの指示に従って風量変更の指示を出す風量変更ステップとを含み、
前記風量バランス決定ステップは、前記風量変更の指示を受けたときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち少なくとも一方が故障している場合は、前記給気風量と前記一般排気風量を変更しないことを特徴とする風量制御方法。
【請求項8】
請求項7記載の風量制御方法において、
さらに、前記対象施設に設置された局所排気装置のサッシ面の面風速が規定値となるように局所排気バルブを制御する局所排気バルブ制御ステップを含み、
前記風量バランス決定ステップは、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記局所排気バルブおよび一般排気バルブによって調節される排気風量との差が所定の設定値に一致するように、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記一般排気バルブによって調節される一般排気風量とを決定することを特徴とする風量制御方法。
【請求項9】
請求項8記載の風量制御方法において、
さらに、前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち少なくとも一方が故障している場合に、前記局所排気装置の使用者に対して、前記給気バルブまたは一般排気バルブが故障していることを通知するバルブ状態通知ステップを含むことを特徴とする風量制御方法。
【請求項10】
請求項8記載の風量制御方法において、
さらに、前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち少なくとも一方が故障している場合に、前記局所排気装置の開閉禁止機構を制御して、前記局所排気装置のサッシの開閉を禁止するサッシ制御ステップを含むことを特徴とする風量制御方法。
【請求項11】
請求項9記載の風量制御方法において、
前記バルブ監視ステップは、前記局所排気バルブの状態を定期的に監視するステップを含み、
前記バルブ状態通知ステップは、前記局所排気バルブが故障している場合に、前記局所排気装置の使用者に対して、前記局所排気バルブが故障していることを通知するステップを含むことを特徴とする風量制御方法。
【請求項12】
請求項10記載の風量制御方法において、
前記バルブ監視ステップは、前記局所排気バルブの状態を定期的に監視するステップを含み、
前記サッシ制御ステップは、前記局所排気バルブが故障している場合に、前記局所排気装置の開閉禁止機構を制御して、前記局所排気装置のサッシの開閉を禁止するステップを含むことを特徴とする風量制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象施設への給気風量や排気風量の制御により風量バランスを維持する風量制御システムおよび風量制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化学実験では、実験作業過程において、人体に有害な生物化学物質が発生する場合が多い。これら生物化学物質の室内への拡散を防止し、人体への汚染を防ぐ装置の1つにヒュームフードがある。一般に、ヒュームフードは、上下または左右に開閉可能なサッシ付きの囲い(エンクロージャ)を備えており、実験室の作業者はこのサッシからエンクロージャ内にアクセスすることができる。ヒュームフードで作業中の作業者が有害な生物化学物質に曝されないようにするために、エンクロージャは生物化学物質を除去する局所排気ダクトに接続されている。
【0003】
風量制御システムは、ヒュームフード内で生物化学物質を扱う実験をする場合に、生物化学物質が部屋内に逆流しないようにサッシ面の面風速を所定の速度に維持するよう局所排気ダクトの風量を調整すると共に、生物化学物質が部屋の外に漏れ出したり外からの不純物等が部屋内に流入したりしないように部屋の圧力を一定に保つシステムである(特許文献1参照)。
図4は従来の風量制御システムの構成を示す図である。風量制御システムは、部屋100内に設置されたヒュームフード101−1,101−2と、ヒュームフード101−1,101−2に接続された局所排気ダクト102−1,102−2と、部屋100に給気を供給する給気ダクト103と、部屋100の空気を排気する一般排気ダクト104と、局所排気ダクト102−1,102−2の風量を調整する局所排気バルブEXV1,EXV2と、給気ダクト103の風量を調整する給気バルブMAVと、一般排気ダクト104の風量を調整する一般排気バルブGEXと、局所排気バルブEXV1,EXV2を制御するコントローラ105−1,105−2と、給気バルブMAVを制御するコントローラ106と、一般排気バルブGEXを制御するコントローラ107と、各コントローラ105−1,105−2,106,107を互いに接続する通信線108とから構成される。
【0004】
ヒュームフード101−1,101−2は、サッシ111−1,111−2と、検知範囲に人がいるかどうかを検出する人検知センサ112−1,112−2と、ヒュームフード101−1,101−2を使用する作業者に情報を通知するためのヒュームフードモニタ113−1,113−2と、サッシ111−1,111−2の開度を検出するサッシセンサ114−1,114−2とを備えている。
【0005】
図4に示した風量制御システムでは、給気ダクト103の給気風量と一般排気ダクト104の排気風量と局所排気ダクト102−1,102−2の局所排気風量とが、「給気風量=一般排気風量+局所排気風量+オフセット風量」の関係を満たすように、給気バルブMAVと一般排気バルブGEXと局所排気バルブEXV1,EXV2の開度の制御、すなわち風量バランス制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−237527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4に示した風量制御システムでは、風量バランス制御を司る主バルブ(例えば給気バルブMAV)とこのバルブから設定風量を受けて動作する従バルブ(例えば一般排気バルブGEX)とがあった場合、主バルブが従バルブの故障を検知できずに主従両バルブの風量変更を行うため、室内の風量バランスが崩れてしまうことがあるという問題点があった(すなわち、従バルブが故障していて開閉できないにも拘わらず、主バルブのみがバルブ開閉をしてしまう)。
【0008】
例えば、室内を陰圧に保つ部屋で、夜間に換気回数を落として運転したときの給気風量、排気風量が、給気風量=1500m
3/h、一般排気風量=2000m
3/hであったとする(局所排気風量は0m
3/hとする)。
昼間に換気回数を上げて運転しようとしたときに、一般排気バルブの故障で風量の増減ができないと、給気風量=3000m
3/h、一般排気風量=2000m
3/hとなり、正常な一般排気風量=3500m
3/hに対して排気風量が不足し、室内が極端な陽圧になってしまう。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、給排気バルブが故障している場合でも、室圧が極端な陽圧や極端な陰圧にならないようにすることができる風量制御システムおよび風量制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の風量制御システムは、対象施設へ吹き出す給気の風量を調節する給気バルブと、対象施設から吸い出す排気の風量を調節する一般排気バルブと、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記一般排気バルブによって調節される排気風量との差が所定の設定値に一致するように、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記一般排気バルブによって調節される一般排気風量とを決定する風量バランス決定手段と、前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち一方を主バルブとし、他方を従バルブとしたときに、前記風量バランス決定手段が決定した、前記主バルブに対応する風量が得られるように前記主バルブを制御する主バルブ制御手段と、前記風量バランス決定手段が決定した、前記従バルブに対応する風量が得られるように前記従バルブを制御する従バルブ制御手段と、前記給気バルブと前記一般排気バルブの状態を定期的に監視するバルブ監視手段と、予め設定されたスケジュールまたは外部からの指示に従って前記風量バランス決定手段に対して風量変更の指示を出す風量変更手段とを備え、前記風量バランス決定手段は、前記風量変更手段から風量変更の指示を受けたときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち少なくとも一方が故障している場合は、前記給気風量と前記一般排気風量を変更しないことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の風量制御システムの1構成例は、さらに、前記対象施設に設置された局所排気装置と、この局所排気装置の排気風量を調節する局所排気バルブと、前記局所排気装置のサッシ面の面風速が規定値となるように前記局所排気バルブを制御する局所排気バルブ制御手段とを備え、前記風量バランス決定手段は、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記局所排気バルブおよび一般排気バルブによって調節される排気風量との差が所定の設定値に一致するように、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記一般排気バルブによって調節される一般排気風量とを決定することを特徴とするものである。
また、本発明の風量制御システムの1構成例は、さらに、前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち少なくとも一方が故障している場合に、前記局所排気装置の使用者に対して、前記給気バルブまたは一般排気バルブが故障していることを通知するバルブ状態通知手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の風量制御システムの1構成例は、さらに、前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち少なくとも一方が故障している場合に、前記局所排気装置の開閉禁止機構を制御して、前記局所排気装置のサッシの開閉を禁止するサッシ制御手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の風量制御システムの1構成例において、前記バルブ監視手段は、前記局所排気バルブの状態を定期的に監視し、前記バルブ状態通知手段は、前記局所排気バルブが故障している場合に、前記局所排気装置の使用者に対して、前記局所排気バルブが故障していることを通知することを特徴とするものである。
また、本発明の風量制御システムの1構成例において、前記バルブ監視手段は、前記局所排気バルブの状態を定期的に監視し、前記サッシ制御手段は、前記局所排気バルブが故障している場合に、前記局所排気装置の開閉禁止機構を制御して、前記局所排気装置のサッシの開閉を禁止することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の風量制御方法は、
対象施設に設置された給気バルブによって調節される給気風量と
前記対象施設に設置された一般排気バルブによって調節される排気風量との差が所定の設定値に一致するように、前記給気バルブによって調節される給気風量と前記一般排気バルブによって調節される一般排気風量とを決定する風量バランス決定ステップと、前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち一方を主バルブとし、他方を従バルブとしたときに、前記風量バランス決定ステップで決定した、前記主バルブに対応する風量が得られるように前記主バルブを制御する主バルブ制御ステップと、前記風量バランス決定ステップで決定した、前記従バルブに対応する風量が得られるように前記従バルブを制御する従バルブ制御ステップと、前記給気バルブと前記一般排気バルブの状態を定期的に監視するバルブ監視ステップと、予め設定されたスケジュールまたは外部からの指示に従って風量変更の指示を出す風量変更ステップとを含み、前記風量バランス決定ステップは、前記風量変更の指示を受けたときに、前記給気バルブと前記一般排気バルブのうち少なくとも一方が故障している場合は、前記給気風量と前記一般排気風量を変更しないことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、風量変更手段から風量変更の指示を受けたときに、給気バルブと一般排気バルブのうち少なくとも一方が故障している場合は、給気風量と一般排気風量を変更しないようにしたので、対象施設の室圧を維持することができ、室圧が極端な陽圧や極端な陰圧にならないようにすることができる。
【0014】
また、本発明では、給気バルブと一般排気バルブのうち少なくとも一方が故障している場合に、局所排気装置の使用者に対して、給気バルブまたは一般排気バルブが故障していることを通知することにより、使用者に局所排気装置のサッシを開閉しないように促すことができる。
【0015】
また、本発明では、給気バルブと一般排気バルブのうち少なくとも一方が故障している場合に、局所排気装置のサッシの開閉を禁止することにより、使用者が局所排気装置のサッシを開いて局所排気風量を増やしてしまうことを防止できる。
【0016】
また、本発明では、局所排気バルブが故障している場合に、局所排気装置の使用者に対して、局所排気バルブが故障していることを通知することにより、使用者に局所排気装置のサッシを開閉しないように促すことができる。
【0017】
また、本発明では、局所排気バルブが故障している場合に、局所排気装置のサッシの開閉を禁止することにより、使用者が局所排気装置のサッシを開いて局所排気風量を増やしてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係るコントローラの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る風量制御システムの風量バランス制御動作を説明するフローチャートである。
【
図3】本発明の実施の形態に係る風量制御システムの風量変更制御動作を説明するフローチャートである。
【
図4】従来の風量制御システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施の形態においても、風量制御システムの全体の構成は
図4に示したとおりであるので、
図4の符号を用いて説明する。
図1は主バルブ(本実施の形態では給気バルブMAV)および従バルブ(本実施の形態では一般排気バルブGEX)を制御する本実施の形態のコントローラ106の構成を示すブロック図である。
【0020】
コントローラ106は、局所排気バルブEXV1,EXV2毎に設けられた局所排気バルブ制御部2−1,2−2と、給気バルブMAVによって調節される給気風量と局所排気バルブEXV1,EXV2および一般排気バルブGEXによって調節される排気風量との差が所定の設定値に一致するように、給気バルブMAVによって調節される給気風量と一般排気バルブGEXによって調節される一般排気風量とを決定する風量バランス決定部3と、主バルブを制御する主バルブ制御部4と、給気バルブMAV、一般排気バルブGEXおよび局所排気バルブEXV1,EXV2の状態を監視するバルブ監視部5と、局所排気装置であるヒュームフード101−1,101−2毎に設けられ、サッシ111−1,111−2の開度情報を取得するサッシ開度情報取得部6−1,6−2と、予め設定されたスケジュールまたは外部からの指示に従って風量バランス決定部3に対して風量変更の指示を出す風量変更部7と、ヒュームフード101−1,101−2の使用者にバルブの故障を通知するバルブ状態通知部8と、ヒュームフード101−1,101−2のサッシ111−1,111−2の開閉を制御するサッシ制御部9とを備えている。
【0021】
次に、本実施の形態の風量制御システムの風量バランス制御動作について説明する。
図2は風量バランス制御動作を説明するフローチャートである。本実施の形態では、給気ダクト103から吹き出す給気の風量をVmav、一般排気ダクト104で吸い出す排気の風量をVgex、局所排気ダクト102−1,102−2で吸い出す排気の風量をVexv1,Vexv2とする。
【0022】
サッシ開度情報取得部6−1,6−2は、それぞれ対応するヒュームフード101−1,101−2のサッシセンサ114−1,114−2からサッシ111−1,111−2の開度情報を取得する(
図2ステップS1)。
【0023】
局所排気バルブ制御部2−1は、ヒュームフード101−1のサッシ開口面積に基づいて、サッシ面の面風速が規定値(通常0.5m/s)となるように局所排気風量Vexv1を定め、局所排気ダクト102−1の排気風量がVexv1となるようにコントローラ106−1を介して局所排気バルブEXV1の開度を制御する(
図2ステップS2)。同様に、局所排気バルブ制御部2−2は、ヒュームフード101−2のサッシ開口面積に基づいて、サッシ面の面風速が上記規定値となるように局所排気風量Vexv2を定め、局所排気ダクト102−2の排気風量がVexv2となるようにコントローラ106−2を介して局所排気バルブEXV2の開度を制御する(
図2ステップS2)。なお、ヒュームフード101−1,101−2のサッシ開口面積は、サッシ開度情報取得部6−1,6−2が取得したサッシ開度情報から求めることができるサッシ111−1,111−2の開口部高さと、既知のサッシ幅との乗算により決定することができる。
【0024】
次に、風量バランス決定部3は、局所排気バルブ制御部2−1,2−2によって算出された局所排気風量Vexv1,Vexv2に応じて、給気風量Vmavと排気風量(Vgex+Vexv1+Vexv2)との差が所定の設定値αに一致するように、給気風量Vmavと一般排気風量Vgexとを決定する(
図2ステップS3)。
Vmav=Vgex+Vexv1+Vexv2+α ・・・(1)
【0025】
式(1)における設定値αは、対象施設(
図4の部屋100)から漏れていく風量を決定すると共に、部屋100を正圧にするか負圧にするかを決定するためのオフセット風量である。ただし、風量バランス決定部3は、部屋100の最低換気風量を満足させるよう、少なくとも最低風量を常に吹き出すように給気風量Vmavを決定する。
【0026】
主バルブ制御部4は、給気ダクト103の風量が風量バランス決定部3によって決定された風量Vmavとなるように主バルブ(本実施の形態では給気バルブMAV)の開度を制御する(
図2ステップS4)。
従バルブ制御手段となるコントローラ107は、一般排気ダクト104の排気風量が風量バランス決定部3によって決定された風量Vgexとなるように従バルブ(本実施の形態では一般排気バルブGEX)の開度を制御する(
図2ステップS5)。
【0027】
こうして、例えばユーザからの指示により風量制御が終了するまで(
図2ステップS6においてYES)、ステップS1〜S5の処理が制御周期毎に繰り返し行われる。
以上の風量バランス制御動作によれば、ヒュームフード101−1,101−2のサッシ111−1,111−2の開閉に伴って局所排気風量Vexv1,Vexv2が変更されたときに、この変更に伴って給気風量Vmavと排気風量Vgexが変更されることになる。
【0028】
給気風量Vmavと排気風量Vgexが変更される別の例としては、作業を行わない夜間や休日などの人がいない時間帯において、省エネルギーのために、室内外の圧力差を一定に保ちつつ、給気風量Vmavと排気風量Vgexを下げる風量変更制御動作がある。この風量変更は、平日は毎日行われる。昼から夜への切り替えの例では、給気風量Vmavと排気風量Vgexを共に徐々に減らし、夜から昼への切り替えの例では、給気風量Vmavと排気風量Vgexを共に徐々に増やす。また、部屋100の温度制御に伴って外部から風量変更の指示を受ける場合もある。
【0029】
次に、風量変更制御動作について説明する。
図3は風量変更制御動作を説明するフローチャートである。
風量変更部7は、予め設定されたスケジュールに従って風量を変更する場合(例えば昼から夜の時間帯に切り替わる場合もしくは夜から昼の時間帯に切り替わる場合)、または外部から風量変更の指示を受けた場合(
図3ステップS10においてYES)、風量バランス決定部3に対して給気風量Vmavを変更するように指示を出す(
図3ステップS11)。
【0030】
風量変更部7からの指示を受けた風量バランス決定部3は、給気バルブMAVと一般排気バルブGEXとが正常かどうかをバルブ監視部5を通じて確認する(
図3ステップS12)。バルブ監視部5は、給気バルブMAVと一般排気バルブGEXの状態を定期的に監視している。
【0031】
風量バランス決定部3は、給気バルブMAVと一般排気バルブGEXとが正常と判断した場合(ステップS12においてYES)、給気風量Vmavを徐々に変更する(
図3ステップS13)。このとき、風量バランス決定部3は、給気風量Vmavの変更に応じて排気風量Vgexも変更するが、風量変更後も式(1)が成立するように排気風量Vgexを決定する。
【0032】
主バルブ制御部4は、給気ダクト103の風量が風量バランス決定部3によって決定された風量Vmavとなるように主バルブ(本実施の形態では給気バルブMAV)の開度を制御する(
図3ステップS14)。
従バルブ制御手段となるコントローラ107は、一般排気ダクト104の排気風量が風量バランス決定部3によって決定された風量Vgexとなるように従バルブ(本実施の形態では一般排気バルブGEX)の開度を制御する(
図3ステップS15)。
【0033】
こうして、給気風量Vmavがスケジュールで予め設定された風量値または外部から指定された風量値に達するまで(
図3ステップS16においてYES)、ステップS12〜S15の処理が制御周期毎に繰り返し行われる。風量変更後の風量バランス制御は上記で説明したとおりである。
【0034】
一方、風量バランス決定部3は、給気バルブMAVと一般排気バルブGEXのうち少なくとも一方が故障していて動かないと判断した場合(ステップS12においてNO)、風量変更をせず、現在の給気風量Vmavと排気風量Vgexを維持することで、室圧を一定に保つ(
図3ステップS17)。
【0035】
バルブ状態通知部8は、給気バルブMAVと一般排気バルブGEXのうち少なくとも一方が故障している場合、ヒュームフード101−1,101−2の使用者に対して、給気バルブMAV、一般排気バルブGEXが故障していることをヒュームフードモニタ113−1,113−2を介して通知する(
図3ステップS18)。
【0036】
また、サッシ111−1,111−2の開閉を禁止する開閉禁止機構がヒュームフード101−1,101−2に設けられている場合、サッシ制御部9は、この開閉禁止機構を制御して、サッシ111−1,111−2の開閉ができないようにする(
図3ステップS19)。
【0037】
給気バルブMAVや一般排気バルブGEXが故障していて動かない場合に、サッシ111−1,111−2を開いて局所排気風量Vexv1,Vexv2を増やしてしまうと、室内が極端に陰圧になってしまう。このような事態を防ぐため、給気バルブMAVや一般排気バルブGEXが故障した場合は、ヒュームフードモニタ113−1,113−2から、例えば「給気バルブが故障しているので使用しないでください」、あるいは「一般排気バルブが故障しているので使用しないでください」などといった音声を出力させることで、ヒュームフード101−1,101−2の使用者にサッシ111−1,111−2を開閉しないように促すことができる。また、開閉禁止機構がヒュームフード101−1,101−2に設けられている場合には、サッシ111−1,111−2の開閉を禁止することも可能である。
【0038】
以上のように、本実施の形態では、給気バルブMAVと一般排気バルブGEXのうち少なくとも一方が故障している場合は、給気風量Vmavと排気風量Vgexを変更しないようにしたので、対象施設の室圧を維持することができ、室圧が極端な陽圧や極端な陰圧にならないようにすることができる。
【0039】
なお、本実施の形態では、給気バルブMAVや一般排気バルブGEXが故障した場合について説明しているが、局所排気バルブEXV1,EXV2が故障した場合についても、故障通知とサッシ111−1,111−2の開閉禁止が可能である。
すなわち、バルブ状態通知部8は、局所排気バルブEXV1,EXV2が故障した場合、ヒュームフードモニタ113−1,113−2から、例えば「局所排気バルブが故障しているので使用しないでください」などといった音声を出力させることで、ヒュームフード101−1,101−2の使用者にサッシ111−1,111−2を開閉しないように促すことができる。また、サッシ制御部9は、ヒュームフード101−1,101−2の開閉禁止機構を制御して、サッシ111−1,111−2の開閉ができないようにする。
【0040】
本実施の形態で説明した各コントローラ105,106,107は、例えばCPU(Central Processing Unit)、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。各コントローラ105,106,107のCPUは、各コントローラの記憶装置に格納されたプログラムに従って本実施の形態で説明した処理を実行する。
【0041】
なお、本実施の形態では、バルブの故障を音声で通知しているが、これに限るものではなく、LEDの点灯やブザーの鳴動によって通知するようにしてもよい。
本実施の形態では、局所排気バルブ制御部2−1,2−2とサッシ開度情報取得部6−1,6−2とをコントローラ106に設けているが、これらをコントローラ105−1,105−2に設けてもよい。
また、本実施の形態では、局所排気装置の1つとしてフュームフードを示したが、安全キャビネットなど、フュームフードと同様の役割を果たす装置にも適用可能である。
【0042】
また、本実施の形態では、ヒュームフード101−1,101−2(局所排気装置)と局所排気バルブEXV1,EXV2と局所排気バルブ制御部2−1,2−2とが設けられた構成について説明しているが、これに限るものではなく、ヒュームフード101−1,101−2と局所排気バルブEXV1,EXV2と局所排気バルブ制御部2−1,2−2とがない構成(Vexv1=Vexv2=0)に本発明を適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、風量制御システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
2−1,2−2…局所排気バルブ制御部、3…風量バランス決定部、4…主バルブ制御部、5…バルブ監視部、6−1,6−2…サッシ開度情報取得部、7…風量変更部、8…バルブ状態通知部、9…サッシ制御部、100…部屋、101−1,101−2…ヒュームフード、102−1,102−2…局所排気ダクト、103…給気ダクト、104…一般排気ダクト、105〜106…コントローラ、111−1,111−2…サッシ、113−1,113−2…ヒュームフードモニタ、EXV1,EXV2…局所排気バルブ、MAV…給気バルブ、GEX…一般排気バルブ。