特許第6318768号(P6318768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6318768
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】ガラス位置決め装置及びガラス取付装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/06 20060101AFI20180423BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   B62D65/06 B
   B23P21/00 303A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-66693(P2014-66693)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-189293(P2015-189293A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】北村 友勝
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−050180(JP,U)
【文献】 特開平10−157669(JP,A)
【文献】 特開平10−305788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/06
B23P 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス取付装置で用いるガラス取り付けロボットにガラスを供給可能に支持するガラス載置台と、
前記ガラス載置台より上向きに突出し前記ガラスの裏面に当接することでガラスを載置する複数の受具と、
前記複数の受具に載置のガラスの周縁を複数個所から押圧して所定の向きに位置決めする位置決め装置と、
前記互いに隣り合う受具を結ぶ結線より前記ガラスが離脱方向に移動して下方にずれ変位する際にガラスの縁部を受け止める落下防止部材と、
を有するガラス位置決め装置。
【請求項2】
請求項1記載のガラス位置決め装置であって、
前記落下防止部材の上面は前記互いに隣り合う受具を結ぶ結線の位置より所定量下方に配備されることを特徴とするガラス位置決め装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のガラス位置決め装置であって、
前記ガラスを載置する複数の受具は3つあることを特徴とするガラス位置決め装置
【請求項4】
請求項3記載のガラス位置決め装置であって、
前記3つの受具の内互いの間隔が最も小さくなる位置の二つの受具と他の一つの受具間を結ぶ2本の結線に沿って前記落下防止部材を配備したことを特徴とするガラス位置決め装置。
【請求項5】
請求項4記載のガラス位置決め装置であって、
前記2本の結線が前記二つの受具間の結線より長く、前記ガラスは縦長矩形を成していることを特徴とするガラス位置決め装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のガラス位置決め装置を備えることを特徴とするガラス取付装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
車両用のガラス取付装置に対向配備されるガラス載置台上に載置されたガラスの位置修正を行うガラス位置決め装置、及び、位置決めされたガラスをガラス取り付けロボットにより車両の所定位置に取り付けるガラス取付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ガラスをそのガラスの周縁部に接着剤を塗布した上でガラス取り付けロボットにより吸着し、3次元的に移動して、車両の所定位置に取り付けるガラス取付装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
このガラス取付装置は、図7に示すように、車両Bの組立ラインを構成する搬送コンベアCの側方に前後一対設けられており、前後のウインドガラスFGn、RGnの周縁部に接着剤を塗布する前後塗布ロボット201、202と、前後ウインドガラスFGn、RGnを搬送して車体Bにそれぞれ取り付ける前後一対の組付ロボット301、302と、を備える。
【0003】
ここで、たとえば、前の組付ロボット301では、これにより、前のウインドガラスFGnを台車401から取り出して接着剤塗布面(裏面)と反対側のガラス表面を吸着してガラス載置台501に載置し、そこでガラス位置決め装置により、載置されたガラスの基準位置調整後に再度吸着して塗布エリアの塗布ロボット201側に移動させる。そこで、前組付ロボット301でウインドガラスFGnを把持した状態で、塗布ロボット201により、脱脂剤塗布、プライマ塗布、接着剤塗布を順次、ウインドガラスFGnの裏面の周縁部に施し、塗布完了後に前組付ロボット301でウインドガラスを3次元的に移動して車体Bの所定場所に取り付けている。なお、後ウインドガラスRGnの車体Bの所定場所への取り付けも後組付ロボット302、塗布ロボット202により前後対称に配備のガラス取付装置で行なわれる。
【0004】
このように組付ロボット301ではウインドガラスFGnを組み付けるのに先立ち、一旦、ガラス載置台501に台車401からのガラスを移動して載置している。この際、図8(a)、(b)に示すように、ガラス載置台501に装備する複数の分散配備の受具601の上に摩擦抵抗の低い状態でガラスを載置できるようにしている。更に、ガラス載置台501に装備の複数の位置決め装置801により、前ガラスFGnの周縁を押圧して微動させ、組付ロボット301の基準位置(たとえば図中実線で示す位置)となる設定位置に所定の向きで位置決めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭64−50180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、さまざまな形状のガラスが登場しており、小型のガラスのような場合、たとえば、図8(a)、(b)に示すように、ガラス載置台501に分散配備の複数の受具601の上に小型のガラスFGnを載置して、位置決めを行なっている。
このように縦長で比較的幅の狭い縦長矩形あるいは三角形のガラスFGnの場合であると、これを載置する複数の受具601の数が限られ、複数の受具601が結ぶ結線701で囲む安定領域702が狭くなる。このような状況のため、小型ガラスFGnを載置する際や位置決めの際に、安定領域702内よりガラスの重心703が外側に離脱しやすい。特に、ガラスFGnの周縁を複数の位置決め装置801により押圧して、組付ロボット301の基準位置となる設定位置に所定の向きで位置決めするとする。この際、ガラスの載置の際や位置決の際に、ガラスが過度にずれたような場合、安定領域702内よりガラスの重心703が外側に離脱し、ガラスFGnの落下が図8(b)に2点鎖線で示すように生じ、位置決め処理のためガラスの位置修正を行なうという機能を的確に発揮できない場合がある。
【0007】
本発明は上述の課題を解決するもので目的とするのは、たとえ、小型のガラスであっても、複数の受具上でガラスの位置と向きを的確に修正し位置決めして組付ロボットに供給できるガラス位置決め装置、及び同装置を備えるガラス取付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記課題を達成するため以下の構成とした。
請求項1記載の発明であるガラス位置決め装置は、ガラス取付装置で用いるガラス取り付けロボットにガラスを供給可能に支持するガラス載置台と、前記ガラス載置台より上向きに突出し前記ガラスの裏面に当接することでガラスを載置する複数の受具と、前記複数の受具に載置のガラスの周縁を複数個所から押圧して所定の向きに位置決めする位置決め装置と、前記互いに隣り合う受具を結ぶ結線より前記ガラスが離脱方向に移動して下方にずれ変位する際にガラスの縁部を受け止める落下防止部材と、を有する。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のガラス位置決め装置であって、前記落下防止部材の上面は前記互いに隣り合う受具を結ぶ結線の位置より所定量下方に配備されることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載のガラス位置決め装置であって、前記ガラスを載置する複数の受具は3つあることを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のガラス位置決め装置であって、前記3つの受具の内互いの間隔が最も小さくなる位置の二つの受具と他の一つの受具間を結ぶ2本の結線に沿って前記落下防止部材を配備したことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のガラス位置決め装置であって、前記2本の結線が前記二つの受具間の結線より長く、前記ガラスは縦長矩形を成していることを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明であるガラス取付装置は、請求項1〜5のいずれか一つに記載のガラス位置決め装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明は、位置決め装置によりガラスの周縁を複数個所から押圧して所定の向きに位置決めする際に、ガラスが結線より離脱方向に過度に移動して下方にずれ変位しても、落下防止部材がガラスの縁部を受け止め、ガラスの落下を防止でき、複数の受具に載置されたガラスの位置決めを確実に行なえる。
【0015】
請求項2の発明は、結線の位置より所定量下方に落下防止部材の上面が位置するので、ガラスの端縁が傾斜状態で上面に当接でき、ガラスの落下を確実に防止でき、ガラスの裏面のプライマ等が上面に付着することも防止できる。
【0016】
請求項3の発明は、ガラスを載置する3つの受具を用いるので、小型のガラスであっても、載置でき、落下防止部材が落下を防止できる。
【0017】
請求項4の発明は、二つの受具と他の一つの受具間を結ぶ2本の結線に沿って落下防止部材を配備するので、2本の結線が挟む領域より重心が離脱しやすいガラスの落下を落下防止部材が防止できる。
【0018】
請求項5の発明は、ガラスが縦長矩形で、概略、縦長三角形に近い形状であっても3つの受具を用いて載置でき、落下防止部材が落下を防止できる。
【0019】
請求項6の発明であるガラス取付装置は、請求項1〜5のいずれか一つに記載のガラス位置決め装置を用いてガラスの落下を防止でき、小型ガラスの位置決めを確実に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態のガラス位置決め装置を搭載するガラス取付装置の全体構成図である。
図2図1のガラス取付装置により側方ガラスが取り付けられる車体側方前部の部分切欠側面図である。
図3図1のガラス位置決め装置とそこで位置決めされる前ガラスを示し、()は平面図、()は()中のA−A’線断面図である。
図4図1のガラス位置決め装置とそこで位置決めされる側方ガラスを示し、()は平面図、()は()中のB−B’線断面図である。
図5図4のガラス位置決め装置の機能説明のための概略図で(a)は平面図、(b)は(a)中のC−C’線断面図である。
図6図5のガラス位置決め装置の概略図において、側方ガラスがその重心を結線より離脱して傾斜した状態を示し、(a)は平面図、(b)は(a)中のC−C’線断面図、(c)は傾斜角説明図である。
図7】従来のガラス位置決め装置を搭載するガラス取付装置の全体概略図である。
図8】従来のガラス位置決め装置とそこで位置決めされる側方ガラスの変位説明図で、()は平面図、()は()中のD−D’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を適用したガラス位置決め装置と同装置を備えるガラス取付装置について解説する。
本発明を適用したガラス位置決め装置は、要するに、車体に取り付けるガラスをガラス戴置台に供給するにあたり、供給されるガラスの位置のバラツキによりガラスが複数の受具上より落下するのを防止できる落下防止部材を設けたことが特徴となっている。
本発明の特徴について、以下の実施形態及び変形例等を用いて説明する。なお、実施形態及び変形例等に亘り、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより、以後の説明を省略する。
【0022】
ここでは、本発明のガラス位置決め装置をガラス取付装置に適用した場合を実施形態1として説明する。
実施形態1のガラス位置決め装置を備えるガラス取付装置1は車体Bの組み立てラインにおける、ガラス組み立てエリアEに配備される。ここでガラス組み立てエリアEには、たとえば、シャトル・プレート・コンベア(以後単にコンベアと記す)Cによって車体Bが搬送されてくる。その上で、図1中で、コンベアCの右と左にほぼ車体長程度前後にずれて2つのガラス取付装置1、1aが配備されている。
【0023】
車体Bの組み立てラインに沿って搬送されてきた車体Bはガラス取付装置1において所定作業時間の間、停止保持され、その間にガラス取付装置1が車体Bの前側に前ガラスFGを、ガラス取付装置1aが車体Bの後側に後ガラスRGの取付を行う。更に、図2に示すように、ガラス取付装置1が車体Bのフロントピラ2とフロントドア3とのドア対向フロントサッシュ4との間の略三角側壁エリアに右の側方ガラスSG1の取付を行い、同様にガラス取付装置1aが車体Bの左の不図示の略三角側壁エリアに左の側方ガラス(左側SG2は不図示)の取付を行い、次の作業エリアに移送される。なお、ここでは、2つのガラス取付装置1、1aがほぼ左右対称の構成を採るため、ここでは、ガラス取付装置1を主に説明する。
【0024】
次に、ガラス組み立てエリアEのガラス取付装置1の説明をする。
図1において、ガラス組み立てエリアEの中央にはコンベアCが車体Bの移送可能に配備される。更に、コンベアCの搬送方向Xに向かって右側に前ガラスFG及び右側方ガラスSG1の取り付け装置(以後単に右ガラス取付装置と記す)が、左側に後ガラスRG及び左側方ガラスSG2の取り付け装置(以後単に左ガラス取付装置と記す)1aが配備される。
ここで、左右のガラス取付装置1、1aはほぼ左右対称に装備され、それぞれ実質的に同一の機能若しくは相当する機能を有する要素を有する部材から成り、右ガラス取付装置に対し、左ガラス取付装置1aに属する要素であることを示すため添え字aを付し、重複説明を略す。
【0025】
右ガラス取付装置はコンベアCの側方にガラス取り付け用の右作業エリア7と、その側方にフロントガラスFG、右側方ガラスSG1を収容するガラス載置台たる第1、第2パレット4、5を配備したガラス供給エリア10とを備えている。
右作業エリア7には接着剤塗布前処理装置としての脱脂液塗布装置21及びプライマ塗布装置22と、接着剤塗布装置23と、ガラス取り付け用のロボット14と、ガラス載置台としての前ガラス位置決め台15と、ガラス載置台としての右側方ガラス位置決め台16とが配備される。更に、ガラス取り付け用のロボット14のアーム端に選択的に着脱できる前ガラス用吸着具17及び右側方ガラス用吸着具18が収容される着脱保持装置19が配備される。なお、これらの機器は、ロボット14のアーム141の可動範囲内に配備されている。
【0026】
前ガラス用吸着具17は、図1に示すように、略湾曲矩形長板状の前ガラスFGの表面を吸着可能な形状に形成されている。前ガラス用吸着具17は、アーム側の連結具142に着脱可能な着脱器171とその着脱器171に一体結合される互いに分散配備のそれぞれ吸盤qを供えた4つの吸着部材172とで構成される。なお、吸着部材172は不図示の真空ポンプにパイプ接続され、前ガラスFGの表面を負圧により吸着可能に形成されている。
【0027】
側方ガラス用吸着具18は、図1に示すように、略縦長矩形状の右側方ガラスSG1の表面を吸着可能な形状に形成される。側方ガラス用吸着具18は、アーム側の連結具142に着脱可能な着脱器181とその着脱器に一体結合される互いに分散配備のそれぞれ吸盤qを供えた3つの吸着部材182とで構成される。なお、吸着部材182は不図示の真空ポンプにパイプ接続され、右側方ガラスSG1の表面を負圧により吸着可能に形成されている。
右作業エリア7のガラス供給エリア10との近傍側には前ガラス位置決め台15、右側方ガラス位置決め台16が配備される。前ガラス位置決め台15、右側方ガラス位置決め台16は、取り付けロボット14がガラス供給を受けるに先立ち、前ガラス位置決め台15、右側方ガラス位置決め台16上でガラスの位置決め(セッティング)を行なうものである。
【0028】
図1、3に示すように、前ガラス位置決め台15は後述のロボット14による前ガラスFGの基準位置P1(図3の実線の位置)からの取り出しセッティングを行なうためのものである。前ガラス位置決め台15は基台151の上面より複数の受具152を上向きに軸部153を介して突き出し配備される。
この受具152は組み立てに供される車両の形式に応じた前ガラスFGの裏面の凹凸(図3(b)参照)に応じて予め突出量を変位調整される。この受具152は半球状の突状部材で、摩擦抵抗の少ない樹脂等で形成され、軸部153は基台151に対して上方突き出し量を適時に調整可能に突き出し調整部154を介して支持されている。
【0029】
これにより、前ガラスFGを受具152で囲まれる領域e0に重心CG1(図3(a)参照)が位置するように定置させるよう構成される。更に、基台151には、受具152の集合域より外周側に、載置されている前ガラスFGの周縁を複数個所から押圧して所定の向きに位置決めする前位置決め装置150が配備される。この前位置決め装置150は、図3(b)に示すように、縦向き軸159に枢支された前位置決めローラ155と、縦向き軸159の下端を一体的に支持した横向き支持板156と、横向き支持板156に先端ロッド部が一体結合されたシリンダ157とから成る押圧器158を複数有する。これらのシリンダ157は不図示の加圧エア回路の制御系により押圧、退却作動する。
【0030】
前位置決め装置150の各押圧器158は同時に加圧源の加圧エアにより駆動され、前ガラスFGの周縁をガラス中心側に押圧して、所定の前ガラス基準位置P1に位置決めするよう押圧作動量が設定される。
なお、場合により、押圧器に位置決めローラとは別に不図示の基準ローラを併設してもよい。載置されたガラスが基準ローラ側に寄っていればこの基準ローラが先んじて押し出し作動し、そうでない場合には位置決めローラが動作をしてガラスを基準ローラに当たる所まで押し出す様に操作してもよい。
【0031】
次に、図1、4に示すように、右側方ガラス位置決め台16は、後述のロボット14による右側方ガラスSG1の基準位置P2からの取り出しセッティングを行なうためのものである。この右側方ガラスSG1の位置決め台16は基台161の表面上に複数、ここでは3つの受具162を備え(図4(a)参照)、これら受具162を組み立てに供される車両の形式に応じた右側方ガラスSG1の裏面凹凸(図4(b)参照)に応じて予め突出量を変位させてセットされている。
この受具162は上述の前ガラス位置決め台15の受具152と同様に摩擦抵抗の少ない樹脂等で形成され、受具162の軸部163が基台161に対して突き出し調整部164を介して支持されている。
【0032】
更に、基台161には、受具162の集合域より外周側に、載置されている右側方ガラスSG1の周縁を複数個所から押圧して所定の向きに位置決めする右側方位置決め装置160が配備される。この右側方位置決め装置160は上述の前位置決め装置150と同様に構成され、縦向き軸169に枢支された前位置決めローラ165と、縦向き軸169の下端を一体的に支持した横向き支持板166と、横向き支持板166に先端ロッド部が一体結合されたシリンダ167とから成る押圧器168を複数有する。これらのシリンダ167は不図示の加圧エア回路の制御系により押圧、退却作動する。
右側方位置決め装置160の各押圧器168は同時に加圧源の加圧エアにより駆動され、右側方ガラスSG1の周縁をガラス中心側に押圧して、所定の右側方ガラスの基準位置P2に位置決めするよう押圧作動量が設定される。
【0033】
ここで、右側方ガラスSG1は、図1図4に示すように、略縦長矩形長板状で、ほぼ、縦長の略三角形に近い形状であり、この右側方ガラスSG1が基準位置P2に保持された場合にはその重心CG2は3つの受具162の結線sで囲まれる領域e1内に位置する
【0034】
ここで、3つの受具162を結ぶ結線sの内、互いの間隔が最も小さくなる位置の二つの受具1621と他の一つの受具1622間を結ぶ2本の結線s−1が二つの受具1621間の結線s−2より長く、比較的狭い縦長三角形の領域e1を備える。
この比較的狭い縦長三角形の領域e1に縦長矩形である縦長台形の比較的小型の右側方ガラスSG1を載置した上で、右側方位置決め装置160の複数の押圧器168を位置決め作動させる。この場合、比較的狭い縦長三角形の領域e1より右側方ガラスSG1が過度にずれると、その重心CG2が2本の結線s−1で挟まれえる領域e1を超えて離脱しやすい。この場合、図6(a)〜(c)に示すように、右側方ガラスSG1はその3つの受具162より落下する可能性がある。そこで、位置決め台16はその基台161上に、3つの受具162の内、互いの間隔が最も小さくなる位置の二つの受具1621と他の一つの受具1622間を結ぶ2本の結線s−1に沿って、その直下に複数の落下防止部材24を配備している。これにより右側方ガラスSG1の落下を阻止している。
【0035】
この複数の落下防止部材24は長板状を成し、ここでは、各結線s−1に沿って、互いに離れてそれぞれ2つ配備され、これら落下防止部材24の上面は互いに隣り合う受具162を結ぶ結線s−1の位置より所定量H1(図4(b)参照)だけ下方に配備される。
ここで、特に、右側方位置決め装置160に乾燥待機時の右側方ガラスSG1が載置されたとする。この場合、右側方ガラスSG1の側端縁の裏面にはプライマ塗布ラインPBが存在する。このため、右側方ガラスSG1が傾斜して落下した際にその時の右側方ガラスSG1と落下防止部材24の間の傾斜角θ1(図6(c)参照)は右側方ガラスSG1の周縁部に塗布されているプライマ塗布ラインPBが落下防止部材24の上面に当たることがないようあらかじめ設定されている。
【0036】
これにより、右側方位置決め装置160の複数の押圧器168により、位置決め作動中の右側方ガラスSG1の重心CG2が2本の結線s−1を乗り越え、領域e1より離脱したとする。このような場合であっても、右側方ガラスSG1の過度の落下を落下防止部材24が阻止でき、傾斜角θ1の設定によりプライマ塗布ラインPBのプライマの剥離を防止できる。なお、傾斜した右側方ガラスSG1は右側方位置決め装置160の複数の押圧器168の一つによる右側方ガラスSG1のガラス中心方向である領域e1内への押し戻し操作を受けて、重心CG2は領域e1に戻り、基準位置P2に修正される。
【0037】
次に、右作業エリア7の一端部には接着剤塗布前処理装置としての脱脂液を吐出する脱脂液塗布装置21及びプライマを吐出するプライマ塗布装置22と、接着剤を吐出する接着剤塗布装置23とが配備される。ここで、脱脂液塗布装置21、プライマ塗布装置22、接着剤塗布装置23は、それぞれが支持枠211、221、231の先端より下方に向け突出する筒部212、222、232の先端に形成されている不図示のガン先より脱脂液、プライマ液、接着剤を塗布可能な形状構成を採用している。
【0038】
右作業エリア7の中央部に配備のロボット14はアーム141に前ガラス用吸着具17を装着した上で、前ガラスFGを吸着保持し、三次元的に移動することで脱脂液塗布装置21、プライマ塗布装置22に達し、乾燥位置決め待機の後に接着剤塗布装置23に順次臨ませる。次いで前ガラスFGを車両の所定位置に取り付ける一連の操作を不図示の制御系の指示に沿い行う。更に、ロボット14はアーム141に前ガラス用吸着具17に換えて側方ガラス用吸着具18を装着できる。その上で、右側方ガラスSG1を吸着保持し、三次元的に移動することで脱脂液塗布装置21、プライマ塗布装置22に達し、乾燥位置決め待機の後に接着剤塗布装置23に順次臨ませる。次いで、右側方ガラスSG1を車両の所定位置に取り付ける一連の操作を不図示の制御系の指示に沿い行う。
【0039】
このロボット14の本体140、前ガラス用吸着具17、側方ガラス用吸着具18の移動方向、移動量、移動タイミングはそれぞれ予め、教示されており、教示された軌道にそって動作するよう作動制御が不図示の制御系により行なわれている。
このようなロボット14は各固定ノズルに対応する位置で、吸盤qにより吸着保持したガラスFG、SG1を三次元的に移動させ、この時に固定ノズルによる脱脂液、プライマ、接着剤の塗布がそれぞれ行なわれるようになっている。
【0040】
このように構成されたガラス位置決め装置を備えるガラス取付装置1の作動を、ロボット14の作動に沿って説明する。
ロボット14は、前ガラスFGの取り付け指示を制御系より受けるとアーム141に前ガラス用吸着具17を装着し、パレット4の前ガラスFGを吸着し、前ガラス位置決め台15の複数の受具152上に載置し、ガラス供給工程を完了する。これに応じて、前ガラス位置決め台15の前位置決め装置150の複数の押圧器158を位置決め作動させ、前ガラスFGを基準位置P1に保持する。この際、複数の受具152を結ぶ結線s(図3参照)は比較的大きな環状を成し、前位置決め装置150により前ガラスFGが位置修正移動したとしても環状を成す結線sの外部に離脱する憂いは少なく、前ガラスFGの位置決め作動がなされ、前ガラスの位置決め工程が完了する。なお、場合により右側方ガラス位置決め台16で説明した落下防止部材24と同様の機能を有する落下防止部材を結線sの直下に配備してもよい。
【0041】
次いで、ロボット14は前ガラスFGの位置決めが完了すると、位置決めされたガラスFGの表面を吸着し、裏面が上向きに保持されるように3次元移動させる。その上で、前ガラスFGを脱脂処理のために移動させ、脱脂液塗布装置21に臨ませる。ここで前ガラスFGを3次元移動させることで周縁部の1周分の脱脂を実施させ、脱脂処理工程を済ませる。次いで、ロボット14は、前ガラスFGをプライマ塗布のために移動させ、プライマ塗布装置22に臨ませる。ここで、前ガラスFGを3次元移動させることで周縁部の1周分のプライマ塗布を実施させプライマ塗布工程を済ませる。
【0042】
次いで、ロボット14は、前ガラスFGを表面が上向きに保持されるように3次元移動させ、前ガラスFGを前ガラス位置決め台15に載置し吸着を解除し、プライマの乾燥を行い、乾燥待機工程を済ませる。ここで前位置決め装置150により再度の基準位置P1の修正の後に前ガラスFGを前ガラス位置決め台15より吸着保持し、その上で、接着剤塗布のために接着剤塗布装置23に臨ませる。ここで前ガラスFGを3次元移動させることで周縁部の1周分の接着剤塗布を実施させ、接着剤塗布工程を済ませる。
この後、ロボット14は、接着剤が塗布された前ガラスFGを車体Bの所定箇所まで3次元移動して車両に臨ませ、前ガラスFGを車体Bの前窓枠(前開口)に嵌め込み、接着処理を行うこととなる。
【0043】
次に、ロボット14は、右側方ガラスSG1の取り付け指示を制御系より受けるとアーム141に前ガラス用吸着具17に換えて、側方ガラス用吸着具18を装着し、パレット5より右側方ガラスSG1を吸着保持し、右側方ガラス位置決め台16の3つの受具162上に載置し(図4図5参照)、ガラス供給工程を完了する。
これに応じて、右側方ガラス位置決め台16の右側方位置決め装置160の複数の押圧器168を位置決め作動させ、右側方ガラスSG1を基準位置P2に位置修正する。
この際、3つの受具162は、互いに隣り合う受具162間を結ぶ2本の結線s−1及び比較的短い結線s−2が縦長三角形を成す。
【0044】
この縦長三角形領域e1に比較的小型の右側方ガラスSG1が載置され、右側方位置決め装置160の複数の押圧器168で位置決め操作される。この場合、縦長三角形の領域e1より右側方ガラスSG1が過度にずれると、その重心CG2が2本の結線s−1を超えて移動し、領域e1より離脱し、図(a)、(b)に示すように、右側方ガラスSG1の受具162より落下する場合がある。その際には、2本の結線s−1の直下に配備の複数の落下防止部材24により右側方ガラスSG1の落下を阻止でき、ガラス位置決め工程が完了する。なお、傾斜した右側方ガラスSG1は右側方位置決め装置160の複数の押圧器168の一つによる右側方ガラスSG1のガラス中心方向である領域e1内への押し戻し操作を受けて、重心CG2は領域e1に戻り、基準位置P2に修正される。
【0045】
次いで、右側方ガラスSG1の位置決めが完了すると、前ガラスFGの場合と同様に、基準位置P2に位置決めされた右側方ガラスSG1の表面を吸着し、裏面が上向きに保持されるように3次元移動させる。その上で、右側方ガラスSG1を脱脂処理のために移動させ、脱脂液塗布装置21に臨ませ、周縁部の1周分の脱脂を実施させ、脱脂処理工程を済ませる。
【0046】
次いで、前ガラスFGの場合と同様に、右側方ガラスSG1をプライマ塗布のためにプライマ塗布装置22に臨ませ、前ガラスFGの周縁部の1周分のプライマ塗布を実施させプライマ塗布工程を済ませる。次いで、前ガラスFGの場合と同様に、右側方ガラスSG1を表面が上向きに保持されるように3次元移動させ、右側方ガラスSG1を右側方ガラス位置決め台16に載置し、吸着を解除し、プライマの乾燥を行い、乾燥待機工程を済ませる。ここで右側方ガラス位置決め台16の右側方位置決め装置160により再度の基準位置P2の修正が前ガラスFGの場合と同様になされる。
【0047】
この際、図(a)、(b)に示すように、右側方ガラスSG1の受具162より落下する場合があるが複数の落下防止部材24により右側方ガラスSG1の落下を阻止できる。この際、右側方ガラスSG1が傾斜して落下しても、右側方ガラスSG1と落下防止部材24の間の傾斜角θ1は右側方ガラスSG1の周縁部に塗布されているプライマ塗布ラインPBに当たることがないような角度を保持できる。これにより、位置決め作動中の右側方ガラスSG1の重心CG2が領域e1より離脱した場合であっても、右側方ガラスSG1の過度の落下を落下防止部材24が阻止できる。しかも、右側方ガラスSG1の傾斜角θ1の規制によりプライマ塗布ラインPBのプライマの剥離を防止できる。なお、傾斜した右側方ガラスSG1は右側方位置決め装置160の複数の押圧器168の一つによる右側方ガラスSG1のガラス中心方向である領域e1内への押し戻し操作を受けて、重心CG2は領域e1に戻り、基準位置P2に修正される。
【0048】
次いで、右側方位置決め装置160により再度の基準位置P2の修正の後に右側方ガラスSG1を右側方ガラス位置決め台16より吸着保持し、その上で、接着剤塗布のために接着剤塗布装置23に臨ませる。ここで右側方ガラスSG1を3次元移動させることで周縁部の1周分の接着剤塗布を実施させ、接着剤塗布工程を済ませる。
この後、ロボット14は、接着剤が塗布された右側方ガラスSG1を車体Bの所定箇所まで3次元移動して車両に臨ませ、右側方ガラスSG1を車体Bの前側端枠(前側方開口)に嵌め込み、接着処理を行うこととなる。
【0049】
一方、ガラス組み立てエリアEのコンベアCに向かって左側に左ガラス取付装置1aが配備されるが、左右のガラス取付装置1、1aはほぼ左右対称に装備される。このため、同様の機能を発揮すべく実質的に左右対称に同様に作動するため、重複説明は略す。このような、左のガラス取付装置1aは車両の後窓枠(後開口)に後ガラスRGを嵌め込み接着し、車体Bの前左側端枠(前左側方開口)に左側方ガラスSG2を嵌め込み接着することとなる。
【0050】
上述のように、図1に示した左右のガラス取付装置1、1aは右側方及び左側方位置決め装置160、160aによりガラスSG1、SG2の周縁を複数個所から押圧して所定の向きに位置決めする際に、ガラスが結線sより離脱方向に過度に移動して下方にずれ変位しても、落下防止部材24、24がガラスの縁部を受け止め、ガラスの落下を防止でき、複数受具162、162aに載置されたガラスの位置決めを確実に行なえる。
【0051】
更に、結線sの位置より所定量H1下方に落下防止部材24、24aの上面が位置するので、ガラスSG1、SG2の端縁が傾斜状態(傾斜角θ1)で上面に当接でき、ガラスの落下を確実に防止できる。しかも、ガラスの裏面のプライマ等が剥離し、落下防止部材24、24aの上面に付着することも防止できる。更に、ガラスSG1、SG2を載置する3つの受具を用いるので、小型のガラスであっても、載置でき、落下防止部材24、24aが落下を防止できる。
更に、二つの受具1621と他の一つの受具1622間を結ぶ2本の結線s−1に沿って落下防止部材24、24aを配備するので、2本の結線より重心CG2が離脱しやすい小型のガラスであっても、その落下を落下防止部材24、24aが防止できる。
【0052】
更に、ガラスが縦長矩形で、概略、縦長三角形に近い形状で小型であっても、3つの受具162を用いて載置でき、落下防止部材24、24aが落下を防止できる。
更に、上述のガラス取付装置1は各ガラス位置決め装置150、160を用いてガラスの落下を防止でき、小型ガラスの位置決めを確実に行なえる。
【0053】
上述のところにおいて、ガラス位置決め装置を備えたガラス取付装置1はワンボックス型の車両の製造ラインに配備され、縦長三角形に近い小型形状のガラスを車両の前後の側方開口に嵌め込み接着する場合を主に説明した。これに代えて、その他の矩形形状のガラスを車両の側方開口に嵌め込み接着する場合にも同様に適用でき、前後の窓枠(前後開口)に装備の大型の矩形窓ガラスであってもよい。
【0054】
上述の実施形態1では、ガラス供給エリア10に搬送されてくる前ガラスFG,右側方ガラスSG1に対して脱脂液塗布装置21、プライマ塗布装置22が、脱脂液塗布、プライマ塗布を行い、乾燥工程の経過後に前ガラスFGを前ガラス位置決め台15より吸着保持し、その上で、接着剤塗布のために接着剤塗布装置23に臨ませ、車体Bの前窓枠(前開口)に嵌め込み、接着処理を行っていた。これに代えて、予め、脱脂液塗布、プライマ塗布を済ませた前ガラスFG,右側方ガラスSG1を、ガラス供給エリア10に搬送するようにして、ガラス取付作業時間の短縮を図ってもよい。この場合、ガラスの位置決め装置に達する前段階でプライマ塗布済みのガラスが供給され、プライマ塗布済みであるからこそ、プライマ塗布面を汚さないように複数の受具162の配置位置がプライマ塗布ラインPBの狭い範囲e1内に限定され、小さいガラスが落下するという問題が発生するが、ここで、落下防止部材24、24aが,ガラス落下を防止できる。
【0055】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
例えば本発明を適用するガラス取付装置の製造ラインは、上述のタイプに限らず、他のタイプ、例えば、ガラス組み立てエリアがコンベアの搬送方向における左右一方側に複数直列配備されてもよい。この場合、製造ラインが直列配備であるので、横幅が過度に増加することを防止できる。本発本発明の実施の形態に記載された効果は本発明から生じるもっとも好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
右ガラス取付装置(ガラス取付装置)
1a 左ガラス取付装置(ガラス取付装置)
14 ガラス取り付けロボット
15 前ガラス位置決め台(ガラス載置台)
16 右側方ガラス位置決め台(ガラス載置台)
150、150a 前位置決め装置
160、160a 右側方位置決め装置
151、161 基台
152、162 受具
158、168 押圧器
24 落下防止部材
CG1、CG2 重心
s 結線
SG1、SG2 側方ガラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8