(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6323105
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】トランスミッション内部潤滑構造
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20180507BHJP
【FI】
F16H57/04 N
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-61955(P2014-61955)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-183800(P2015-183800A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176811
【氏名又は名称】三菱自動車エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100067873
【弁理士】
【氏名又は名称】樺山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100090103
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 章悟
(72)【発明者】
【氏名】浦野 徹
(72)【発明者】
【氏名】那須 剛太
(72)【発明者】
【氏名】河内 宣明
(72)【発明者】
【氏名】西原 正樹
【審査官】
藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭50−114587(JP,U)
【文献】
実公昭44−011365(JP,Y1)
【文献】
実開平03−108530(JP,U)
【文献】
特開2001−248715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/00−57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッションケース内部に設けられた回転自在なギヤと、
前記ギヤの回転軸を軸支する軸受と、
前記ミッションケースと一体に形成され、前記回転軸の上方に前記回転軸と平行に設けられる基部と、
前記ギヤ及び前記軸受のそれぞれに対応する複数箇所に前記基部から先端部にかけて先細り形状で形成される複数の凸部とを有し、
前記凸部及び前記凸部の幅に対応する前記基部とで壁部が構成され、複数の前記壁部は前記凸部の表面積と前記基部の表面積との和であるその表面積がそれぞれ異なるように形成されていることを特徴とするトランスミッション内部潤滑構造。
【請求項2】
請求項1記載のトランスミッション内部潤滑構造において、
前記ギヤ及び前記軸受のうち最も給油を要する箇所と対応する前記壁部の表面積が他の前記壁部の表面積よりも大きく形成されていることを特徴とするトランスミッション内部潤滑構造。
【請求項3】
請求項1または2記載のトランスミッション内部潤滑構造において、
複数の前記凸部の形状が三角形であることを特徴とするトランスミッション内部潤滑構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトランスミッション内部に配置されたギヤやベアリング等の潤滑構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トランスミッション内の底部には潤滑油が滞留しており、トランスミッション内部に設けられたシャフトに取り付けられたギヤが回転することによって滞留している潤滑油
がトランスミッション内部全体に掻き上げられ、掻き上げられた潤滑油は飛散してトランスミッション内部に配置されたギヤやベアリング等に供給される。そして、ミッションケース後方に配置された部材に対して潤滑油を供給する構成が、例えば「特許文献1」に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4576718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
掻き上げられた潤滑油は飛散してトランスミッション内部に供給されるが、トランスミッション内部にはギヤやベアリング等の潤滑油を必要とする部材が点在しており、このような複数の部材に向けて掻き上げられ飛散した潤滑油を確実に供給することは困難であった。
本発明は上述の問題点を解決し、トランスミッション内部において掻き上げられた潤滑油を給油したい部材に対して確実に給油することが可能なトランスミッション内部潤滑構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、ミッションケース内部に設けられた回転自在なギヤと、前記ギヤの回転軸を軸支する軸受と、前記ミッションケースと一体に形成され、前記回転軸の上方に前記回転軸と平行に設けられる基部と、前記ギヤ及び前記軸受のそれぞれに対応する複数箇所に前記基部から先端部にかけて先細り形状で形成される複数の凸部とを有し、
前記凸部及び前記凸部の幅に対応する前記基部とで壁部が構成され、複数の前記壁部は前記凸部の表面積と前記基部の表面積との和であるその表面積がそれぞれ異なるように形成されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のトランスミッション内部潤滑構造において、さらに前記ギヤ及び前記軸受のうち最も給油を要する箇所と対応する
前記壁部の表面積が他の前記壁部の表面積よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のトランスミッション内部潤滑構造において、さらに複数の前記凸部の形状が三角形であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ミッションケース内においてギヤの回転により掻き上げられた潤滑油をギヤ及び軸受のそれぞれに供給することができ、トランスミッションの潤滑を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態を適用したトランスミッションの概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に用いられる壁部材を説明する概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に用いられる壁部材を説明する概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態に用いられる壁部材を説明する概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態の変形例に用いられる壁部材を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態を適用したトランスミッションを示している。同図においてトランスミッション1は、回転軸としてのモータ軸2、カウンタシャフト3、ドライブシャフト4を有しており、モータ軸2の回転がカウンタシャフト3を介してドライブシャフト4に伝達される。
【0011】
図2に示すように、モータ軸2にはギヤ5が一体的に形成されており、モータ軸2はミッションケース6に対して軸受7,8によって回転自在に支持されている。ミッションケース6の下部には図示しない潤滑油が貯留されており、モータ軸2の回転によりギヤ5が回転すると貯留されている潤滑油がギヤ5によって掻き上げられ、ミッションケース6内において飛散する。
【0012】
ミッションケース6の内部上方には、複数箇所(本実施形態では3箇所)に凸部9a,9b,9cを有する壁部材9が一体的に設けられている。凸部9aは軸受7と、凸部9bはギヤ5と、凸部9cは軸受8とそれぞれ対応する位置に設けられており、凸部9aとミッションケース6との間の部位にはモータ軸2と平行に形成された基部9dが設けられている。また、凸部9bとミッションケース6との間の部位にはモータ軸2と平行に形成された基部9eが、凸部9cとミッションケース6との間の部位にはモータ軸2と平行に形成された基部9fがそれぞれ設けられている。
図3に示すように、各凸部9a,9b,9cはそれぞれの基部9d,9e,9fから先端部にかけて先細り形状となるように形成されており、それぞれの先端部における長さa,b,cが異なるように形成されている。さらに、各凸部9a,9b,9cと各凸部9a,9b,9cと対応する基部9d,9e,9fとで構成される、
図4に示す壁部9g,9h,9iの表面積がそれぞれ異なるように形成されている。つまり壁部の表面積とは、ミッションケース6から先端部までの距離及び凸部の幅を用いて規定されるものである。本実施形態において、各壁部の表面積は9g>9h>9iとなるように形成されている。
【0013】
上述の構成により、ギヤ5の回転によって掻き上げられて飛散した図示しない潤滑油は、
図4に示すように各壁部9g,9h,9iに液滴10として付着し、各凸部9a,9b,9cが先細り形状であることからやがて各凸部9a,9b,9cと対応するギヤ5及び各軸受7,8上に滴下する。これにより、ミッションケース6内においてギヤ5の回転により掻き上げられた潤滑油を所望の部材に供給することができ、トランスミッション1の潤滑を効率よく行うことができる。
【0014】
また、本実施形態では軸受7と対応する壁部9gの表面積を最も大きくしたので、凸部9a上に形成される液滴10の大きさが他の液滴10よりも大きくなり、軸受7に対して最も多くの潤滑油を供給することができる。なお、ギヤ5に多くの潤滑油を供給する場合には壁部9hの表面積を、軸受8に多くの潤滑油を供給する場合には壁部9iの表面積を他の壁部に比してそれぞれ大きく形成すればよい。
【0015】
図5は本発明の他の実施形態に用いられる壁部材11を示している。この壁部材11は、壁部材9と同様に軸受7と対応する位置に壁部11aを、ギヤ5と対応する位置に壁部11bを、軸受8と対応する位置に壁部11cをそれぞれ有している。各壁部11a,11b,11cは先端の凸部がそれぞれ三角形状を呈しており、それぞれの表面積(各斜面の面積の合計)は11a>11b>11cとなるように形成されている。この構成により、各壁部11a,11b,11cの凸部が三角形であることから、ギヤ5の回転によって掻き上げられ各壁部11a,11b,11cに付着した液滴10が上記実施形態に比して所望の位置に落下し易く、上記実施形態よりも潤滑効率を向上することができる。
【0016】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。本発明の実施の形態に記載された効果は本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0017】
1 トランスミッション
5 ギヤ
6 ミッションケース
7,8 軸受
9a,9b,9c 凸部
9d,9e,9f 基部
9g,9h,9i,11a,11b,11c 壁部