特許第6332590号(P6332590)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6332590光導波路用感光性樹脂組成物および光導波路コア層形成用光硬化性フィルム、ならびにそれを用いた光導波路、光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6332590
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】光導波路用感光性樹脂組成物および光導波路コア層形成用光硬化性フィルム、ならびにそれを用いた光導波路、光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/12 20060101AFI20180521BHJP
   C08G 59/32 20060101ALI20180521BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G02B6/12 351
   G02B6/12 371
   C08G59/32
   C08G59/68
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-231728(P2013-231728)
(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公開番号】特開2015-91910(P2015-91910A)
(43)【公開日】2015年5月14日
【審査請求日】2016年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】平山 智之
(72)【発明者】
【氏名】辻田 雄一
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−209664(JP,A)
【文献】 特開2011−221226(JP,A)
【文献】 特開2010−078924(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/055134(WO,A1)
【文献】 特開2007−052120(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0076391(US,A1)
【文献】 特開2009−015085(JP,A)
【文献】 特開2010−084150(JP,A)
【文献】 特開2010−243920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
G02B 6/00−6/54
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性置換基を有する脂肪族系樹脂および光重合開始剤を含有する光導波路用感光性樹脂組成物であって、上記重合性置換基を有する脂肪族系樹脂が、25℃で固形を示す、下記(A)および(B)からなり、上記光重合開始剤が、下記の一般式(1)で表される光酸発生剤であることを特徴とする光導波路用感光性樹脂組成物。
(A)2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物。
(B)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂および水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂の少なくとも一方。
【化1】
【請求項2】
(A)および(B)の混合重量比[(A):(B)]が、(A):(B)=4:1〜1:1である請求項1記載の光導波路用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)および(B)の混合重量比[(A):(B)]が、(A):(B)=4:1〜2:1である請求項2記載の光導波路用感光性樹脂組成物。
【請求項4】
基材とその基材上にクラッド層が形成され、さらに上記クラッド層中に所定パターンで、光信号を伝搬するコア層が形成されてなる光導波路におけるコア層形成材料である請求項1〜3のいずれか一項に記載の光導波路用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の光導波路用感光性樹脂組成物をフィルム状に形成してなる光導波路コア層形成用光硬化性フィルム。
【請求項6】
基材とその基材上にクラッド層が形成され、さらに上記クラッド層中に所定パターンで、光信号を伝搬するコア層が形成されてなる光導波路であって、上記コア層が、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光導波路用感光性樹脂組成物、または請求項5記載の光導波路コア層形成用光硬化性フィルムを硬化させることにより形成されてなることを特徴とする光導波路。
【請求項7】
請求項6記載の光導波路を備えることを特徴とする光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信,光情報処理,その他一般光学にて広く用いられる光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板における光導波路を構成するコア層等の形成材料として用いられる光導波路用感光性樹脂組成物および光導波路コア層形成用光硬化性フィルム、ならびにそれを用いた光導波路、光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板向けの光導波路コア層形成材料には液状の感光性モノマーからなる混合物が用いられ、これを用いたコア層のパターン形成の際には、フォトマスクを介して紫外線(UV)照射を行なうことにより所望のコアパターンを作製している。このような感光性モノマーからなる混合物は光硬化感度が高い一方、塗工後の表面粘着性(タック性)の観点から、大量生産を視野に入れた製造工程であるロール・トゥ・ロール(roll-to-roll:R−to−R)プロセスのような連続プロセスに供した場合、ロールに接触した際に上記感光性樹脂組成物からなるフィルムが破壊されるため、R−to−Rプロセスには適合できないという欠点を有しており、生産性に乏しいという問題があった(特許文献1)。
【0003】
このため、R−to−Rプロセスのような連続プロセスに適合するために、一般的には感光性樹脂としては常温で固体を呈するポリマー材料が用いられている。その際、ポリマー材料が高分子量であればあるほど硬化前段階のアモルファスフィルムのフレキシビリティは上がるが、その一方でパターニング解像性(硬化感度)が低下するという問題を有している。逆に、ポリマー材料が低分子量のものであれば、パターニング解像性は高まるがフレキシビリティが低下することとなる。このように、一般的には、フィルムのフレキシビリティとパターニング解像性はトレードオフの関係にあり問題があった。このようなことから、感光硬化性フィルムにおいて、そのフレキシビリティとパターニング解像性が両立するような光導波路コア層形成材料が求められ、種々提案されている(特許文献2)。
【0004】
光導波路コア層形成材料は、その使用用途に従い、硬化物の諸物性として高屈折率、高透明性、高解像パターニング性、高耐熱性といった多くの要求特性を満たす必要がある。そのため、種々の原料の選択,配合バランス等により諸特性を満たすための検討が行われている。
【0005】
前述のように、大量生産を視野に入れたR−to−Rプロセスに供するため、光導波路コア層形成材料は、一般に、上記形成材料からなる未硬化物フィルムをドライフィルム化する手法が用いられているが、材料開発において未硬化物の低タック性、フレキシビリティといったドライフィルム材料としてのプロセス適合性の要求から材料設計自由度を狭めることにつながるのみならず、ドライフィルムを作製する際、ラミネート基材がその両面に必要となることから、省資源化及びコストの観点から問題となるため、材料開発においてウェットプロセスヘの適合性もまた重要視され、検討されている(特許文献3)。
【0006】
これらの背景を鑑みて、例えば、特殊なノボラック型多官能エポキシ樹脂を主剤に、さらに種々の樹脂を配合することにより上記特性を満たす感光性樹脂組成物が提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−281475号公報
【特許文献2】特開2011−27903号公報
【特許文献3】特開2010−230944号公報
【特許文献4】特開2011−237645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板向け導波路材料には、上記の要求特性のうち特に高い透明性と、作製工程上はんだリフロー工程に耐えうるための耐リフロー性が要求される。
【0009】
このようなことから、従来のR−to−R適合性、高解像パターニング性を維持したまま、高透明性で、かつ耐リフロー性をも兼ね備えた光導波路コア層形成材料となりうる感光性硬化樹脂組成物が強く望まれている。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、光導波路形成用材料、特にコア層形成材料として、高透明性、良好なR−to−R適合性、高解像パターニング性を兼ね備え、かつ優れた耐リフロー性をも備えた光導波路用感光性樹脂組成物および光導波路コア層形成用光硬化性フィルム、ならびにそれを用いた光導波路、光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、重合性置換基を有する脂肪族系樹脂および光重合開始剤を含有する光導波路用感光性樹脂組成物であって、上記重合性置換基を有する脂肪族系樹脂が、25℃で固形を示す、下記(A)および(B)からなり、上記光重合開始剤が、下記の一般式(1)で表される光酸発生剤である光導波路用感光性樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物。
(B)水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂および水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂の少なくとも一方。
【化1】
【0012】
また、本発明は、上記第1の要旨である光導波路用感光性樹脂組成物をフィルム状に形成してなる光導波路コア層形成用光硬化性フィルムを第2の要旨とする。
【0013】
さらに、本発明は、基材とその基材上にクラッド層が形成され、さらに上記クラッド層中に所定パターンで、光信号を伝搬するコア層が形成されてなる光導波路であって、上記コア層が、上記第1の要旨の光導波路用感光性樹脂組成物、または上記第2の要旨の光導波路コア層形成用光硬化性フィルムを硬化させることにより形成されてなる光導波路を第3の要旨とする。
【0014】
そして、本発明は、上記第3の要旨の光導波路を備える光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板を第4の要旨とする。
【0015】
本発明者らは、高透明性、良好なR−to−R適合性、高解像パターニング性を兼ね備え、かつ優れた耐リフロー性を備えた光導波路のコア層形成材料となる感光性樹脂組成物を得るために鋭意検討を重ねた。その結果、上記配合成分となる感光性エポキシ樹脂組成物を用いると、所期の目的が達成されることを見出し本発明に到達した。
【0016】
すなわち、[1]タック性に関しては、配合成分である樹脂成分中の液状樹脂の存在に起因することから、樹脂成分を固形樹脂成分である、上記2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(A)および水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂および水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂の少なくとも一方(B)のみからなる配合設計とすることにより上記タック性が解消されることとなる。また、[2]R−to−R適合性に関しては、塗工乾燥後の塗膜の常温下の柔軟性に依存することから、常温で固形樹脂を示す配合設定にて構成することにより、膜(層)形成の際の未硬化時におけるアモルファスフィルムにおいて柔軟性が付与されることとなる。特に、本発明において、上記(A)と上記(B)の混合重量比がある特定の範囲を外れ、例えば、上記(A)が多くなると、未硬化アモルファスフィルムの柔軟性が顕著に悪化して、R−to−R適合性が悪化する傾向がみられる。[3]パターニング性に関して、光硬化に伴い特に硬化速度の速い上記(A)を主剤として用い、その他の要求物性を阻害しないように配合を調整することにより、パターニング性の向上が図られる。特に、本発明において、上記(A)と上記(B)の混合重量比がある特定の範囲を外れ、例えば、上記(B)が多くなると、パターニング性および耐熱性が顕著に悪化して、導波路の損失が悪化する傾向がみられる。
【0017】
このようなことから、上記配合に設定してなる光導波路用感光性樹脂組成物を用いることにより、タック性、良好なR−to−R適合性、高解像パターニング性を兼ね備え、さらに優れた高透明性(低損失)および耐リフロー性が得られることとなり、本発明に到達したのである。
【0018】
なお、上記高透明性(低損失)に関しては、使用する樹脂骨格に起因するものであり、従来のコア層形成材料にはクラッド層よりも高い屈折率が要求されることから、その設計上、芳香族骨格含有の樹脂を使用している。しかし、この芳香族骨格の存在により伝搬光850nmの波長帯が芳香環C−H結合に由来する振動吸収の4倍音吸収(4vCH)の裾引きに重なることで一定以上の損失低減に関して限界があった。本発明では、コア層形成材料において、芳香環を含まない脂肪族系樹脂を用いてコア層形成材料の構成を行うことにより、芳香環由来の4倍音吸収(4vCH)の影響を排除する材料設計を図ったのである。
【0019】
また、上記高透明性(低損失)に関して、さらに好適には、光酸発生剤において、例えば、カチオン骨格を選定することにより対応することが可能となる。すなわち、硬化物の熱劣化(着色)の発生機構は、樹脂酸化劣化で生じるπ共役系拡張因子の発生に由来する。従来、光硬化系樹脂の配合設計において、光酸発生剤の選定指針は、パターニング性の観点から、露光波長365nmに対する感度を持たせた比較的広いπ共役系を持つカチオン骨格(例えば、トリフェニルスルホニウム塩系)を有する光酸発生剤が採用されてきた。しかし、この広いπ共役系骨格が酸発生後のカチオン残渣(死骸)の酸化劣化におけるπ共役系の拡張により着色しやすくなる要因であることから、好適には、ジフェニルヨードニウムカチオン系の様な狭いπ共役系カチオン部からなる光酸発生剤を用いることが高透明性(低損失)に関して一層好適である。
【0020】
本発明において、上記ジフェニルヨードニウムカチオン系の光酸発生剤を用いると、この特定の光酸発生剤は、全光酸発生剤中、最も狭いπ共役系から構成されているものの一つである。そのため、露光波長365nmに対する感度は皆無であり、混線露光(ブロード光)が必要となるが、得られる硬化物は、従来から使用されているトリフェニルスルホニウム塩系光酸発生剤よりも着色しにくく、より一層良好な高透明性の付与(低損失)が可能となる。
【0021】
一方、上記耐リフロー性に関しては、コア部形成材料として特に加熱による黄変の抑制効果を奏する材料を選定していることに加えて、より好適には光酸発生剤として露光後の樹脂黄変性に優れるアンチモン系の光酸発生剤を使用すると、より一層の効果が付与されることとなる。
【発明の効果】
【0022】
このように、本発明は、25℃で固形を示す、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(A)および水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂および水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂の少なくとも一方(B)からなる重合性置換基を有する脂肪族系樹脂と、光重合開始剤を含有する光導波路用感光性樹脂組成物である。このため、この光導波路用感光性樹脂組成物を用いて、例えば、光導波路のコア層を形成した場合、従来の作製工程を変更することなく、塗工工程およびR−to−Rプロセスにて、低損失で、耐リフロー性に優れた光導波路のコア層を形成することが可能となる。
【0023】
そして、上記光重合開始剤として、後述の一般式(1)で表される光酸発生剤を用いるため、より優れた高透明性(低損失)が付与され、かつ一層優れた耐リフロー性が付与されるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに、本発明の実施の形態について詳しく説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0025】
《光導波路用感光性樹脂組成物》
本発明の光導波路用感光性樹脂組成物(以下、単に「感光性樹脂組成物」という場合がある。)は、重合性置換基を有する脂肪族系樹脂、および、光重合開始剤を用いて得られるものである。そして、本発明においては、上記重合性置換基を有する脂肪族系樹脂が、25℃で固形を示す特定の側鎖多官能脂肪族樹脂(A)と、同じく25℃で固形を示す特定の二官能長鎖脂肪族樹脂(B)からなることを特徴とする。なお、本発明において、「液状」、あるいは「固形」とは、25℃の温度下において「液状」または「固形」状態を呈することを意味する。
以下、各種成分について順に説明する。
【0026】
<重合性置換基を有する脂肪族系樹脂>
上記重合性置換基を有する脂肪族系樹脂は、特定の側鎖多官能脂肪族樹脂(A)と、特定の二官能長鎖脂肪族樹脂(B)から構成されてなるものである。そして、上記重合性置換基を有する脂肪族系樹脂は、常温で固形を示すものである。なお、本発明においては、上記重合性置換基を有する脂肪族系樹脂としては、全体が常温で固形を示すものであることが好ましいが、常温で液状を示す脂肪族系樹脂を本発明の効果を阻害しない範囲内(例えば、感光性樹脂組成物全体の5重量%程度以下)にて配合してもよい。
【0027】
上記特定の側鎖多官能脂肪族樹脂(A)としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物があげられる。具体的には、EHPE3150(ダイセル社製)等があげられる。また、上記特定の側鎖多官能脂肪族樹脂(A)としては、固形を示すものが用いられ、この場合の固形とは上述のとおり常温(25℃)の温度下において固体状態を呈することを意味する。
【0028】
上記特定の二官能長鎖脂肪族樹脂(B)としては、両末端に重合性官能基であるエポキシ基を有する長鎖脂肪族エポキシ樹脂があげられる。このように、上記長鎖脂肪族エポキシ樹脂を用いることにより、カチオン重合における架橋密度を低下させることが可能となり、硬化物の柔軟性を付与することができる。上記特定の二官能長鎖脂肪族樹脂(B)としては、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂があげられる。これらは単独でもしくは2種併せて用いられる。具体的には、YX−8040(三菱化学社製)、ST−4000D(新日鐵化学社製)等があげられる。このように、本発明において、脂肪族樹脂としては、上記脂環式エポキシ樹脂を含む趣旨である。また、上記特定の二官能長鎖脂肪族樹脂(B)としては、固形を示すものが用いられ、この場合の固形とは上述のとおり常温(25℃)の温度下において固体状態を呈することを意味する。また、上記長鎖脂肪族エポキシ樹脂以外に、エポキシ基を有さない脂肪族樹脂、すなわち、バインダー樹脂としての作用を奏する脂肪族樹脂を用いても、上記と同様の効果を奏することが可能である。
【0029】
上記特定の側鎖多官能脂肪族樹脂(A)および特定の二官能長鎖脂肪族樹脂(B)の混合重量比[(A):(B)]は、好ましくは(A):(B)=4:1〜1:1であり、特に好ましくは(A):(B)=3:1〜2:1である。混合重量比が上記範囲を外れ、(A)が多すぎると、硬化前のアモルファスが脆弱化し、R−to−Rプロセス中の軸による湾曲に耐えられずクラックが発生する傾向がみられる。また、(A)が少なすぎると、光・熱硬化においてパターニング性が悪化する傾向がみられる。
【0030】
<光重合開始剤>
上記光重合開始剤は、感光性樹脂組成物に対して光照射による硬化性を付与するため、例えば、紫外線硬化性を付与するために用いられるものである。
【0031】
上記光重合開始剤としては、高透明性の付与(低損失)、耐リフロー性の向上という点から、下記の一般式(1)で表される光酸発生剤が用いられる。
【0032】
【化2】
【0033】
上記式(1)中、好ましくはR1,R2は炭素数1〜15のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数10〜13のアルキル基を有する混合物である。具体的には、WPI−116(和光純薬工業社製)等のヨードニウム塩タイプの光重合開始剤があげられる。
【0034】
上記光重合開始剤の含有量は、感光性樹脂組成物の樹脂成分(例えば、重合性置換基を有する脂肪族系樹脂)100重量部に対して0.1〜3重量部に設定することが好ましく、より好ましくは0.5〜1重量部である。すなわち、光重合開始剤の含有量が少なすぎると、満足のいく光照射(紫外線照射)による光硬化性が得られ難く、多すぎると、光感度が上がり、パターニングに際して形状異常をきたす傾向がみられる、および、初期損失の要求物性が悪化する傾向がみられる。
【0035】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記重合性置換基を有する脂肪族系樹脂と、光重合開始剤以外に、必要に応じて、例えば、接着性を高めるためにシラン系あるいはチタン系のカップリング剤、オレフィン系オリゴマーやノルボルネン系ポリマー等のシクロオレフィン系オリゴマーやポリマー、合成ゴム、シリコーン化合物等の密着付与剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤やリン系酸化防止剤等の各種酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤等があげられる。これら添加剤は、本発明における効果を阻害しない範囲内にて適宜に配合される。これらは単独でまたは2種類以上併用して用いることができる。
【0036】
上記酸化防止剤の配合量は、感光性樹脂組成物の樹脂成分(例えば、重合性置換基を有する脂肪族系樹脂)100重量部に対して3重量部未満に設定することが好ましく、特に好ましくは1重量部以下である。すなわち、酸化防止剤の含有量が多すぎると、初期損失の要求物性が悪化する傾向がみられる。
【0037】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記重合性置換基を有する脂肪族系樹脂および光重合開始剤、さらには必要に応じて他の添加剤を、所定の配合割合にして撹拌混合することにより調製することができる。さらに、本発明の感光性樹脂組成物を塗工用ワニスとして調製するために、加熱下(例えば、60〜90℃程度)、有機溶剤に撹拌溶解させてもよい。上記有機溶剤の使用量は、適宜調整されるものであるが、例えば、感光性樹脂組成物の樹脂成分(例えば、重合性置換基を有する脂肪族系樹脂)100重量部に対して20〜80重量部に設定することが好ましく、特に好ましくは30〜50重量部である。すなわち、有機溶剤の使用量が少なすぎると、塗工用ワニスとして調製した際に高粘度となり塗工性が低下する傾向がみられ、有機溶剤の使用量が多すぎると、塗工用ワニスを用いて厚膜に塗工形成することが困難となる傾向がみられる。
【0038】
上記塗工用ワニスを調製する際に用いられる有機溶剤としては、例えば、乳酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、エチルラクテート、2−ブタノン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジグライム、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチルフラン、ジメトキシエタン等があげられる。これら有機溶剤は、単独でまたは2種類以上併用し、塗工に好適な粘度となるように、例えば、上記範囲内において所定量用いられる。
【0039】
《光導波路》
つぎに、本発明の感光性樹脂組成物をコア層の形成材料として用いてなる光導波路について説明する。
【0040】
本発明により得られる光導波路は、例えば、基材と、その基材上に、所定パターンで形成されたクラッド層(アンダークラッド層)と、上記クラッド層上に、光信号を伝搬する、所定パターンで形成されたコア層と、さらに、上記コア層上に形成されたクラッド層(オーバークラッド層)の構成からなる。そして、本発明により得られる光導波路では、上記コア層が、前述の感光性樹脂組成物によって形成されてなることが特徴である。また、上記アンダークラッド層形成材料およびオーバークラッド層形成材料に関しては、同じ成分組成からなるクラッド層形成用樹脂組成物を用いてもよいし、異なる成分組成の樹脂組成物を用いてもよい。なお、本発明により得られる光導波路において、上記クラッド層は、コア層よりも屈折率が小さくなるよう形成する必要がある。
【0041】
本発明において、光導波路は、例えば、つぎのような工程を経由することにより製造することができる。すなわち、基材を準備し、その基材上に、クラッド層形成材料である感光性樹脂組成物からなる感光性ワニスを塗工する。このワニス塗工面に対して紫外線等の光照射を行ない、さらに必要に応じて加熱処理を行なうことにより感光性ワニスを硬化させる。このようにしてアンダークラッド層(クラッド層の下方部分)を形成する。
【0042】
ついで、上記アンダークラッド層上に、本発明の感光性樹脂組成物を有機溶剤に溶解させてなるコア層形成材料(感光性ワニス)を塗工することによりコア形成用の未硬化層を形成する。このとき、上記コア層形成材料(感光性ワニス)を塗工した後、有機溶剤を加熱乾燥して除去することにより未硬化の光導波路コア層形成用光硬化性フィルムとなるフィルム形状に形成されることとなる。そして、このコア形成用未硬化層面上に、所定パターン(光導波路パターン)を露光させるためのフォトマスクを配設し、このフォトマスクを介して紫外線等の光照射を行ない、さらに必要に応じて加熱処理を行なう。その後、上記コア形成用未硬化層の未露光部分を、現像液を用いて溶解除去することにより、所定パターンのコア層を形成する。
【0043】
つぎに、上記コア層上に、上述のクラッド層形成材料である感光性樹脂組成物からなる感光性ワニスを塗工した後、紫外線照射等の光照射を行ない、さらに必要に応じて加熱処理を行なうことにより、オーバークラッド層(クラッド層の上方部分)を形成する。このような工程を経由することにより、目的とする光導波路を製造することができる。
【0044】
上記基材材料としては、例えば、シリコンウェハ、金属製基板、高分子フィルム、ガラス基板等があげられる。そして、上記金属製基板としては、SUS等のステンレス板等があげられる。また、上記高分子フィルムとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム等があげられる。そして、その厚みは、通常、10μm〜3mmの範囲内に設定される。
【0045】
上記光照射では、具体的には紫外線照射が行なわれる。上記紫外線照射での紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯等があげられる。また、紫外線の照射量は、通常、10〜20000mJ/cm2、好ましくは100〜15000mJ/cm2、より好ましくは500〜10000mJ/cm2程度があげられる。
【0046】
上記紫外線照射による露光後、光反応による硬化を完結させるためにさらに加熱処理を施してもよい。上記加熱処理条件としては、通常、80〜250℃、好ましくは、100〜150℃にて、10秒〜2時間、好ましくは、5分〜1時間の範囲内で行なわれる。
【0047】
また、上記クラッド層形成材料としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フッ素化エポキシ樹脂、エポキシ変性シリコーン樹脂等の各種液状エポキシ樹脂、固形エポキシ樹脂、さらには、前述の各種光酸発生剤を適宜含有する樹脂組成物があげられ、コア層形成材料と比較して適宜、低屈折率となる配合設計が行われる。さらに、必要に応じてクラッド層形成材料をワニスとして調製し塗工するため、塗工に好適な粘度が得られるように従来公知の各種有機溶剤、また、上記コア層形成材料を用いた光導波路としての機能を低下させない程度の各種添加剤(酸化防止剤、密着付与剤、レベリング剤、UV吸収剤)を適量用いてもよい。
【0048】
上記ワニス調製用に用いられる有機溶剤としては、前述と同様、例えば、乳酸エチル、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、エチルラクテート、2−ブタノン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジグライム、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラメチルフラン、ジメトキシエタン等があげられる。これら有機溶剤は、単独でまたは2種類以上併用して、塗布に好適な粘度が得られるように、適量用いられる。
【0049】
なお、上記基材上における、各層の形成材料を用いての塗工方法としては、例えば、スピンコーター、コーター、円コーター、バーコーター等の塗工による方法や、スクリーン印刷、スペーサを用いてギャップを形成し、そのなかに毛細管現象により注入する方法、マルチコーター等の塗工機によりR−to−Rで連続的に塗工する方法等を用いることができる。また、上記光導波路は、上記基材を剥離除去することにより、フィルム状光導波路とすることも可能である。
【0050】
このようにして得られた光導波路は、例えば、光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板用の光導波路として用いることができる。
【実施例】
【0051】
つぎに、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、例中、「部」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0052】
[実施例1]
まず、実施例となる光導波路の作製に先立ち、クラッド層形成材料およびコア層形成材料である各感光性ワニスを調製した。
【0053】
<クラッド層形成材料の調製>
遮光条件下にて、液状二官能フッ化アルキルエポキシ樹脂(H022、東ソーエフテック社製)50部、液状二官能脂環式エポキシ樹脂(セロキサイド2021P、ダイセル社製)50部、光酸発生剤(アデカオプトマーSP−170、アデカ社製)4.0部、リン系酸化防止剤(HCA、三光社製)0.54部、シランカップリング剤(KBM−403、信越シリコーン社製)1部を混合し80℃加熱下にて撹拌完溶させ、その後室温(25℃)まで冷却した後、直径1.0μmのメンブランフィルタを用いて加熱加圧濾過を行なうことにより、クラッド層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0054】
<コア層形成材料の調製>
遮光条件下にて、固形多官能脂肪族エポキシ樹脂(EHPE3150、ダイセル社製)80部、固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YX―8040、三菱化学社製)20部、光酸発生剤(WPI−116、和光純薬工業社製)1.0部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(Songnox1010、共同薬品社製)0.5部、リン系酸化防止剤(HCA、三光社製)0.5部を、乳酸エチル40部に混合し、85℃加熱下にて撹拌完溶させ、その後室温(25℃)まで冷却した後、直径1.0μmのメンブランフィルタを用い加熱加圧濾過を行なうことにより、コア層形成材料となる感光性ワニスを調製した。
【0055】
《光導波路の作製》
<アンダークラッド層の作製>
スピンコーターを用いて、上記クラッド層形成材料である感光性ワニスを厚み約500μmのシリコンウェハ上に塗工した後、混線(ブロード光)にて5000mJ(波長365nm積算)の露光を行なった。その後、130℃×10分間の後加熱を行なうことによりアンダークラッド層(厚み20μm)を作製した。
【0056】
<コア層の作製>
形成されたアンダークラッド層上に、スピンコーターを用いて、コア層形成材料である感光性ワニスを塗工した後、ホットプレート上にて有機溶剤(乳酸エチル)を乾燥させる(130℃×5分間)ことにより、未硬化フィルム状態の未硬化層を形成した。形成された未硬化層に対して、混線(ブロード光)にて9000mJ(波長365nm積算)のマスクパターン露光〔パターン幅/パターン間隔(L/S)=50μm/200μm〕を行ない、後加熱(140℃×5分間)を行なった。その後、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中にて現像(25℃×3分間)を行ない、水洗し、ホットプレート上にて水分を乾燥(120℃×5分間)させることにより、所定パターンのコア層(厚み55μm)を作製した。
【0057】
このようにしてシリコンウェハ上に、アンダークラッド層が形成され、このアンダークラッド層上に所定パターンのコア層が形成された光導波路を作製した。
【0058】
[実施例2]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、脂肪族系樹脂の樹脂成分の配合割合を、固形多官能脂肪族エポキシ樹脂(EHPE3150、ダイセル社製)75部、固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YX―8040、三菱化学社製)25部に変えた。それ以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
【0059】
[実施例3]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、脂肪族系樹脂の樹脂成分の配合割合を、固形多官能脂肪族エポキシ樹脂(EHPE3150、ダイセル社製)67部、固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YX―8040、三菱化学社製)33部に変えた。それ以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
【0060】
[実施例4]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、脂肪族系樹脂の樹脂成分の配合割合を、固形多官能脂肪族エポキシ樹脂(EHPE3150、ダイセル社製)50部、固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YX―8040、三菱化学社製)50部に変えた。それ以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
【0061】
[実施例5]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、光酸発生剤(WPI−116、和光純薬工業社製)の配合量を3部に変えた。それ以外は実施例4と同様にして光導波路を作製した。
【0062】
[実施例6]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、光酸発生剤(WPI−116、和光純薬工業社製)の配合量を0.5部に変えた。それ以外は実施例4と同様にして光導波路を作製した。
【0063】
[比較例1]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、樹脂成分の配合組成を、固形多官能脂肪族エポキシ樹脂(EHPE3150、ダイセル社製)67部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YL−6810、三菱化学社製)33部に代えた。それ以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
【0064】
[比較例2]
コア層形成材料である感光性ワニスの調製において、樹脂成分の配合割合を、クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂(YDCN−700−10、新日鉄住金化学社製)67部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YL−6810、三菱化学社製)33部に代えるとともに、光酸発生剤としてWPI−116(和光純薬工業社製)をSP−170(アデカ社製)に代えた。それ以外は実施例1と同様にして光導波路を作製した。
【0065】
このようにして得られた各コア層形成材料である感光性ワニス、および、各光導波路を用いて、タック性評価,R−to−R適合性(クラック)評価,パターニング性評価(いずれもコア層形成材料に関する評価)、また、光導波路損失評価(直線損失)および耐リフロー性評価(双方ともに光導波路に関する評価)に関して下記に示す方法に従って測定・評価した。これらの結果をコア層形成材料の配合組成とともに後記の表1に併せて示す。
【0066】
[タック性評価]
上記実施例および比較例において調製したコア層形成材料となる感光性ワニスを、厚み約500μmのシリコンウェハ上にスピンコーターを用いて塗工し、ホットプレート上にて乾燥(130℃×5分間)を行なうことにより未硬化フィルム層(厚み約50μm)を作製した。得られた未硬化フィルム層の表面を指触により確認し、その結果、下記の基準に基づき評価した。
○:タックが無く、かつ表面荒れが発生しなかった。
×:タックを有しており、かつ表面荒れが発生した。
【0067】
[R−to−R適合性(クラック)評価]
上記実施例および比較例において調製したコア層形成材料となる感光性ワニスを、厚み50μmのSUS基材上にスピンコーターにて塗工し、乾燥(130℃×5分間)を行なうことにより厚み約50μmの未硬化フィルムを作製した。上記SUS基材上に形成された未硬化フィルム(アモルファスフィルム)を、直径8cmの巻き芯に沿って巻回し、フィルムに生じたクラックの有無を目視により確認した。その結果、下記の基準に基づき評価した。
○:クラックが発生しなかった。
×:クラックが発生した。
【0068】
[パターニング性評価]
上記実施例および比較例において調製したコア層形成材料となる感光性ワニスを用いて、上記アンダークラッド層上に形成されたコア層パターンを光学顕微鏡にて確認した。その結果、下記の基準に基づき評価した。
○:コア層パターンの形状が、パターンうねりや裾引き等が無く矩形に形成された。
×:コア層パターンの形状が矩形になっておらず、パターンうねりあるいは裾引き等の形状異常を生起した。
【0069】
[光導波路の損失評価(直線損失)]
上記実施例および比較例により得られた光導波路のコア層パターン上に、スピンコーターを用いて、クラッド層形成材料である感光性ワニスを塗工した後、ホットプレート上にてプリベーク(100℃×5分間)した。その後、混線(ブロード光)にて5000mJ(波長365nm積算)の露光を行ない、後加熱(120℃×5分間)を行なうことにより、オーバークラッド層を形成して光導波路(コア層パターン上のオーバークラッド層の厚み15μm、光導波路総厚み90μm)を作製した。
【0070】
上記光導波路をサンプルとして用い、光源(850nmVCSEL光源OP250、三喜社製)から発振された光をマルチモードファイバー〔FFP−G120−0500、三喜社製(直径50μmMMF、NA=0.2)〕にて集光して、上記サンプルに入射した。そして、サンプルから出射された光をレンズ〔FH14−11,清和光学製作所社製(倍率20、NA=0.4)〕にて集光し、光計測システム(オプティカルマルチパワーメーターQ8221、アドバンテスト社製)にて、4チャンネルをカットバック法にて評価した。その平均全損失から直線損失を算出し、下記の基準に基づき評価した。
○:全直線損失が0.04dB/cm以下であった。
×:全直線損失が0.04dB/cmを超える結果となった。
【0071】
[耐リフロー性評価]
上記光導波路をサンプルとして用い、リフローシミュレーター(SANYOSEIKO製、SMT Scope SK−5000)にて空気雰囲気下、ピーク温度250〜255℃×45秒の加熟工程に暴露した後、上記と同様にして光導波路損失(直線損失)の評価を行なった。その結果、下記の基準に基づき評価した。
○:リフロー加熟後の損失増加が0.01dB/cm未満であった。
×:リフロー加熱後の損失増加が0.01dB/cmを超える結果となった。
【0072】
【表1】
【0073】
上記結果から、固形多官能脂肪族エポキシ樹脂と固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂とを併用してなる感光性樹脂組成物(実施例品)および上記感光性樹脂組成物を用いて形成されたコア層を備えた光導波路は、タック性評価、R−to−R適合性(クラック)評価、パターニング性評価、光導波路損失評価(直線損失)、耐リフロー性評価の全てにおいて良好な評価結果が得られた。
【0074】
これに対して、固形多官能脂肪族エポキシ樹脂とともに、芳香族樹脂であるビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた感光性樹脂組成物(比較例1品)、また、クレゾールノボラック型多官能エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いた感光性樹脂組成物(比較例2品)、および上記各感光性樹脂組成物を用いて形成されたコア層を備えた光導波路は、タック性評価、R−to−R適合性(クラック)評価、パターニング性評価および耐リフロー性評価に関しては良好な結果が得られたが、光導波路損失評価(直線損失)に関して劣る評価結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の光導波路用感光性樹脂組成物は、光導波路の構成部分の形成材料として、特にコア層形成材料として有用である。そして、上記光導波路用感光性樹脂組成物を用いて作製される光導波路は、例えば、光・電気伝送用混載フレキシブルプリント配線板等に用いられる。