特許第6341695号(P6341695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ディスコの特許一覧

特許6341695サブチャックテーブルの原点位置検出方法
<>
  • 特許6341695-サブチャックテーブルの原点位置検出方法 図000002
  • 特許6341695-サブチャックテーブルの原点位置検出方法 図000003
  • 特許6341695-サブチャックテーブルの原点位置検出方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6341695
(24)【登録日】2018年5月25日
(45)【発行日】2018年6月13日
(54)【発明の名称】サブチャックテーブルの原点位置検出方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/00 20060101AFI20180604BHJP
   B24B 47/22 20060101ALI20180604BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20180604BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20180604BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20180604BHJP
【FI】
   B24B53/00 K
   B24B47/22
   B24B49/12
   H01L21/78 F
   B24B27/06 M
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-40057(P2014-40057)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-164750(P2015-164750A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100137903
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】松山 敏文
【審査官】 上田 真誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−258689(JP,A)
【文献】 特開2013−116545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00
B24B 27/06
B24B 47/22
B24B 49/10
B24B 49/12
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードと該切削ブレードが装着され該切削ブレードを回転させるスピンドルとを有した切削手段と、該チャックテーブルに保持された被加工物の上面を撮像する撮像手段と、該切削ブレードを該保持面に対して垂直な切り込み送り方向に移動させる切り込み送り手段と、該切削ブレードと該チャックテーブルとを接触させて電気的導通により該チャックテーブルに対する該切削ブレードの切り込み方向の原点位置を検出する原点位置検出機構と、該チャックテーブルの近傍に配設されたサブチャックテーブルとを備えた切削装置において、該サブチャックテーブルに対する該切削ブレードの切り込み方向の原点位置を検出する原点位置検出方法であって、
該原点位置検出機構により該チャックテーブルの該保持面を基準とした切削ブレードの切り込み方向の原点位置を検出し、該切削ブレードの原点位置を検出する保持面位置で該撮像手段の焦点を合わせたチャックテーブルのフォーカス位置を検出し、該チャックテーブルに対する切削ブレードの切り込み方向の原点位置と該チャックテーブルのフォーカス位置の位置関係を算出する位置関係算出ステップと、
該位置関係算出ステップを実施した後に、該撮像手段により該サブチャックテーブルの保持面に焦点を合わせて該サブチャックテーブルのフォーカス位置を検出し、該サブチャックテーブルの該フォーカス位置から、該位置関係算出ステップで算出した該位置関係に基づいて、該サブチャックテーブルの該保持面を基準とした切削ブレードの原点位置を算出する原点位置算出ステップと、を備え、
該原点位置算出ステップでは、該チャックテーブルの該保持面を基準とした該切削ブレードの原点位置と該撮像手段のフォーカス位置の位置関係に、該サブチャックテーブルの該保持面を基準とした該切削ブレードの原点位置と該撮像手段のフォーカス位置の位置関係が等しくなるように、該サブチャックテーブルの該保持面を基準とした該切削ブレードの原点位置が算出されるサブチャックテーブルの原点位置検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サブチャックテーブルに対する切削ブレードの切り込み方向における原点位置を検出する原点位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削装置において、切削ブレードの切り込み量の設定基準となる原点位置を検出する原点位置検出機構を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の原点位置検出機構では、導電性の切削ブレードが回転した状態でチャックテーブルに向けて下降され、切削ブレードの刃先がチャックテーブルの金属枠に接触した際(切り込んだ際)に導通するように構成されている。これにより、原点位置検出機構の検出回路に電流が流れ込み、検出回路において電流の変化に伴う電圧変動が検出される。そして、電圧変動が検出された時点における切削ブレードの切り込み位置が原点位置に設定される。
【0003】
また、切削用のメインのチャックテーブルに隣接して、サブチャックテーブルが配設された切削装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。サブチャックテーブル上には小片被加工物(サンプルウェーハ)やドレッサーボードが吸引保持され、メインのチャックテーブル上の被加工物の加工中に、切削ブレードのヘアライン合わせや目立てドレスが実施可能になっている。このサブチャックテーブルにおいても、切削ブレードとサブチャックテーブルの接触時に導通した位置が、切削ブレードの切り込み方向における原点位置に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2597808号公報
【特許文献2】特開平07−283171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、サブチャックテーブルにおいても、メインのチャックテーブルと同様に高精度な接触式の原点位置検出を行っているが、サブチャックテーブルに対してはメインのチャックテーブルほどの精度は求められていない。例えば、サブチャックテーブル上のドレッサーボードで切削ブレードをドレスする場合には、ドレッサーボード自体の厚みバラツキ(数十μm)を考慮してドレッサーボードの切残し量が設定されており、原点位置の僅かなズレが大きな問題になることはない。一方で、接触式の原点位置検出を行うためには、サブチャックテーブル自体に原点位置検出用の配線が必要になり、コストが増大するという問題がある。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、簡易かつ安価な構成で、サブチャックテーブルに対する切削ブレードの切り込み方向における原点位置を検出することができる原点位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のサブチャックテーブルの原点位置検出方法は、被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードと切削ブレードが装着され切削ブレードを回転させるスピンドルとを有した切削手段と、チャックテーブルに保持された被加工物の上面を撮像する撮像手段と、切削ブレードを保持面に対して垂直な切り込み送り方向に移動させる切り込み送り手段と、切削ブレードとチャックテーブルとを接触させて電気的導通によりチャックテーブルに対する切削ブレードの切り込み方向の原点位置を検出する原点位置検出機構と、チャックテーブルの近傍に配設されたサブチャックテーブルとを備えた切削装置において、サブチャックテーブルに対する切削ブレードの切り込み方向の原点位置を検出する原点位置検出方法であって、原点位置検出機構によりチャックテーブルの該保持面を基準とした切削ブレードの切り込み方向の原点位置を検出し、切削ブレードの原点位置を検出する保持面位置で撮像手段の焦点を合わせたチャックテーブルのフォーカス位置を検出し、チャックテーブルに対する切削ブレードの切り込み方向の原点位置とチャックテーブルのフォーカス位置の位置関係を算出する位置関係算出ステップと、位置関係算出ステップを実施した後に、撮像手段によりサブチャックテーブルの保持面に焦点を合わせてサブチャックテーブルのフォーカス位置を検出し、サブチャックテーブルのフォーカス位置から、位置関係算出ステップで算出した位置関係に基づいて、サブチャックテーブルの該保持面を基準とした切削ブレードの原点位置を算出する原点位置算出ステップと、を備え、該原点位置算出ステップでは、該チャックテーブルの該保持面を基準とした該切削ブレードの原点位置と該撮像手段のフォーカス位置の位置関係に、該サブチャックテーブルの該保持面を基準とした該切削ブレードの原点位置と該撮像手段のフォーカス位置の位置関係が等しくなるように、該サブチャックテーブルの該保持面を基準とした該切削ブレードの原点位置が算出される。
【0008】
この構成によれば、接触式の原点位置検出によってチャックテーブルに対する切削ブレードの切り込み方向の原点位置が高精度に検出される。また、チャックテーブルの保持面位置に撮像手段の焦点を合わせて、チャックテーブルのフォーカス位置が検出される。そして、チャックテーブルの保持面を基準とした切削ブレードの原点位置と撮像手段のフォーカス位置との位置関係が求められる。サブチャックテーブルの保持面に撮像手段の焦点を合わせた撮像手段のフォーカス位置が検出されることで、上記の位置関係からサブチャックテーブルを基準とした切削ブレードの原点位置が算出される。このように、サブチャックテーブルに切削ブレードを接触させることなく、サブチャックテーブルの加工に対して十分な精度で切削ブレードの原点位置が検出される。このため、サブチャックテーブルに原点位置検出用の配線を設ける必要がなく、簡易かつ安価な構成で原点位置検出することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チャックテーブルの保持面を基準とした切削ブレードの原点位置と撮像手段のフォーカス位置との位置関係を求めることで、サブチャックテーブルに対する切削ブレードの原点位置を簡易かつ安価な構成で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施の形態に係る切削装置の斜視図である。
図2図1の切削装置のチャックテーブル周辺の拡大図である。
図3】本実施の形態に係る原点位置検出方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態に係る切削装置について説明する。図1は、本実施の形態に係る切削装置の斜視図である。図2は、図1の切削装置のチャックテーブル周辺の拡大図である。なお、本実施の形態に係る切削装置は、図1及び図2に示す構成に限定されない。ここでは、一対の切削ブレードを備えた切削装置を例示するが、この構成に限定されない。本発明は、サブチャックテーブルを備えた切削装置であれば、どのような切削装置にも適用可能である。
【0012】
図1及び図2に示すように、切削装置1は、チャックテーブル3上の被加工物Wを加工する切削ブレード52を、サブチャックテーブル4上のドレッシングボードDを用いて定期的にドレッシングするように構成されている。また、被加工物Wは、ダイシングテープTを介してリングフレームFに支持された状態で切削装置1に搬入される。なお、被加工物Wは、シリコン、ガリウム砒素等の半導体基板にIC、LSI等のデバイスが形成された半導体ウェーハでもよいし、セラミック、ガラス、サファイア系の無機材料基板にLED等の光デバイスが形成された光デバイスウェーハでもよい。
【0013】
切削装置1の基台2の上面中央は、X軸方向に延在するように矩形状に開口されており、この開口を覆うように移動板31及び防水カバー32が設けられている。移動板31上には、Z軸回りに回転可能なチャックテーブル3が設けられている。防水カバー32及び移動板31の下方には、チャックテーブル3をX軸方向に移動させる加工送り手段(不図示)が設けられている。チャックテーブル3の上面には被加工物Wを保持する保持面33が形成されている。保持面33の中央領域はポーラス34による吸引領域になっており、吸引領域の周囲には金属枠35が露出した導電領域になっている。
【0014】
チャックテーブル3の周囲には、被加工物Wの周囲のリングフレームFを挟持固定する4つのクランプ部36が設けられている。また、移動板31上には、チャックテーブル3の近傍にサブチャックテーブル4が設けられている。サブチャックテーブル4の上面は格子状の浅溝41が形成されて保持面42になっており、保持面42にドレッシングボードDが吸引保持される。基台2の上面には、X軸方向に延在する開口を跨ぐように立設した門型の柱部21が設けられている。門型の柱部21には、チャックテーブル3上の被加工物Wに対して一対の切削手段5を相対的に移動させる割出送り手段6及び切り込み送り手段7が設けられている。
【0015】
割出送り手段6は、割出送り方向(Y軸方向)に一対の切削手段5を移動させ、切り込み送り手段7は、保持面33に対して垂直な切り込み送り方向(Z軸方向)に一対の切削手段5を移動させる。割出送り手段6は、柱部21の前面に対してY軸方向に平行な一対のガイドレール61と、一対のガイドレール61にスライド可能に設置されたモータ駆動の一対のY軸テーブル62とを有している。また、切り込み送り手段7は、各Y軸テーブル62の前面に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール71と、このガイドレール71にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル72とを有している。
【0016】
各Z軸テーブル72の下部には、被加工物Wを切削する切削手段5が設けられている。また、各Y軸テーブル62の背面側には、図示しないナット部が形成され、これらナット部にボールネジ63が螺合されている。また、各Z軸テーブル72の背面側には、図示しないナット部が形成され、これらナット部にボールネジ73が螺合されている。Y軸テーブル62用のボールネジ63、Z軸テーブル72用のボールネジ73の一端部には、それぞれ駆動モータ64、74が連結されている。これら駆動モータ64、74によりボールネジ63、73が回転駆動されることで、一対の切削手段5がガイドレール61、71に沿ってY軸方向及びZ軸方向に移動される。
【0017】
一対の切削手段5は、スピンドル51に切削ブレード52を装着して構成される。切削ブレード52は、ブレードカバー53によって周囲が覆われており、ブレードカバー53には切削部分に向けて切削水を噴射する噴射ノズルが設けられている。また、スピンドル51には被加工物Wの上面を撮像する撮像手段55が設けられており、撮像手段55の撮像画像に基づいて被加工物Wに対して切削ブレード52がアライメントされる。一対の切削手段5では、複数の噴射ノズルから切削水が噴射されながら、切削ブレード52によって被加工物Wが分割予定ラインに沿って切削されることで、個々のデバイスに分割される。
【0018】
また、切削装置1には、装置各部を統括制御する制御手段9が設けられている。制御手段9は、各種処理を実行するプロセッサやメモリ等により構成される。メモリは、用途に応じてROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の一つ又は複数の記憶媒体で構成される。メモリには、切削装置1の各種加工条件だけでなく、例えば、チャックテーブル3に対する切削ブレード52の原点位置検出用のプログラム、サブチャックテーブル4に対する切削ブレード52の原点位置検出用のプログラム等が記憶されている。
【0019】
このような切削装置1においては、被加工物Wの加工前に、切削ブレード52の切り込み方向の原点位置を設定する原点位置検出機構11(図3参照)が設けられている。原点位置検出機構11は、いわゆる接触式の原点位置検出機構であり、導電性を有する切削ブレード52をチャックテーブル3の外周部分の金属枠35に接触させて電気的導通を図ることにより、チャックテーブル3に対する切削ブレード52の原点位置(高さ)を検出する。また、この切削装置1にはサブチャックテーブル4が設けられているため、サブチャックテーブル4に対しても、切削ブレード52の切り込み方向における原点位置を検出する必要がある。
【0020】
チャックテーブル3と同様に、サブチャックテーブル4に対しても接触式の原点位置検出を実施する場合には、サブチャックテーブル4用にも様々な配線が必要になり、装置構成が煩雑になる。そこで、本実施の形態においては、サブチャックテーブル4に対してはアライメント用の撮像手段55を使用して、切削ブレード52の切り込み方向の原点位置を非接触で検出するようにしている。これにより、サブチャックテーブル4に対して原点位置検出用の配線を不要にして、装置コストの低減を可能にしている。以下、本実施の形態に係るサブチャックテーブル4の原点位置検出方法について詳細に説明する。
【0021】
図3は、本実施の形態に係る原点位置検出方法の説明図である。原点位置検出方法は、位置関係算出ステップ、原点位置算出ステップを経てサブチャックテーブルに対する切削ブレードの原点位置を検出する方法である。図3A及び図3Bは位置関係算出ステップ、図3C及び図3Dは原点位置算出ステップをそれぞれ示している。なお、チャックテーブルにおいては、金属枠の表面がポーラスの表面と面一で形成されており、金属枠の表面からの切削ブレードの高さが保持面からの切削ブレードの高さとして検出される。
【0022】
図3Aに示すように、位置関係算出ステップにおいて、原点位置検出機構11による接触式の原点位置検出が実施される。接触式の原点位置検出では、チャックテーブル3の金属枠35の上方に切削ブレード52が位置付けられ、切削ブレード52が回転した状態でチャックテーブル3に向けて下降される。そして、切削ブレード52の刃先がチャックテーブル3の金属枠35の表面(保持面33)に接触し、導電性の切削ブレード52とチャックテーブル3との金属枠35とが導通される。このときの切削ブレード52の高さがリニアスケール12等で測定され、原点位置検出機構11によってチャックテーブル3に対する切削ブレード52の切り込み方向の原点位置Zとして検出される。なお、リニアスケール12は、例えば、切り込み送り手段7に設けられている。
【0023】
また、図3Bに示すように、位置関係算出ステップにおいて、撮像手段55によるチャックテーブル3のフォーカス位置検出が実施される。チャックテーブル3のフォーカス位置検出では、チャックテーブル3の金属枠35の上方に撮像手段55が位置付けられ、金属枠35に対する切削ブレード52の接触位置が撮像範囲に含まれる。そして、撮像手段55の焦点が金属枠35の表面(保持面33)に合わせられるように撮像手段55の高さが調整される。このときの撮像手段55の高さがリニアスケール12等で測定され、チャックテーブル3に対する撮像手段55のフォーカス位置Zとして検出される。なお、フォーカス位置検出は、原点位置検出において切削ブレード52が金属枠35に接触した位置で実施されることが好ましい。この場合、金属枠35に切削溝が形成されている場合には、切削溝の近傍でフォーカス位置検出が実施される。
【0024】
接触式の原点位置検出及びフォーカス位置検出の検出結果は制御手段9(図1参照)に出力され、制御手段9によって切削ブレード52の切り込み方向の原点位置Zと撮像手段55のフォーカス位置Zの位置関係が算出される。例えば、位置関係として、高さ方向(Z軸方向)における切削ブレード52の切り込み方向の原点位置Zと撮像手段55のフォーカス位置Zの差分ΔZ1−2が算出される。このように、チャックテーブル3の保持面33を基準とした切削ブレード52の原点位置Zと撮像手段55のフォーカス位置Zと高さ方向の位置関係が求められる。
【0025】
次に、位置関係算出ステップを実施した後に、原点位置算出ステップが実施される。図3Cに示すように、原点位置算出ステップにおいて、撮像手段55によるサブチャックテーブル4のフォーカス位置検出が実施される。サブチャックテーブル4のフォーカス位置検出では、サブチャックテーブル4の保持面42の上方に撮像手段55が位置付けられ、サブチャックテーブル4の保持面42に焦点が合わせられるように撮像手段55の高さが調整される。このサブチャックテーブル4の保持面42に撮像手段55の焦点が合わせられたときの撮像手段55の高さがリニアスケール12等で測定され、サブチャックテーブル4に対する撮像手段55のフォーカス位置Zとして検出される。
【0026】
図3Dに示すように、原点位置算出ステップにおいて、サブチャックテーブル4に対する撮像手段55のフォーカス位置Zから、上記の位置関係に基づいてサブチャックテーブル4に対する切削ブレード52の原点位置Zが算出される。この場合、チャックテーブル3の保持面33を基準とした切削ブレード52の原点位置Zと撮像手段55のフォーカス位置Zの位置関係(図3B参照)に、サブチャックテーブル4の保持面42を基準とした切削ブレード52の原点位置Zと撮像手段55のフォーカス位置Zの位置関係が等しくなることを利用している(差分ΔZ1−2=差分ΔZ3−4)。
【0027】
すなわち、位置関係算出ステップ(図3B参照)で求められた差分ΔZ1−2と同じ位置関係になるように、サブチャックテーブル4の保持面42を基準とした撮像手段55のフォーカス位置Zに対する切削ブレード52の原点位置Zが算出される(Z=Z+差分ΔZ1−2)。サブチャックテーブル4に対する切削ブレード52の原点位置Zは、サブチャックテーブル4に対する撮像手段55のフォーカス位置Zから差分ΔZ1−2だけ低い位置として算出される。このようにして、切削ブレード52をサブチャックテーブル4に接触させることなく、接触式の原点位置検出に近い精度でサブチャックテーブル4に対する切削ブレード52の原点位置Zが検出される。
【0028】
なお、図3においては、位置関係算出ステップにおいて、チャックテーブル3に対する切削ブレード52の原点位置Zを検出した後に、チャックテーブル3のフォーカス位置Zを検出する構成としたが、この構成に限定されない。位置関係算出ステップにおいて、チャックテーブル3のフォーカス位置Zを検出した後に、チャックテーブル3に対する切削ブレード52の原点位置Zを検出してもよい。これにより、チャックテーブル3の金属枠35の上面に切削ブレード52によって僅かな切削溝が形成される前に、チャックテーブル3のフォーカス位置Zを検出できるため、切削溝によってフォーカス位置Zに誤差が生じることがない。
【0029】
また、図3においては、原点位置算出ステップでは、サブチャックテーブル4の保持面42に焦点を合わせてフォーカス位置を検出する構成にしたが、この構成に限定されない。原点位置算出ステップでは、サブチャックテーブル4に保持されたドレッシングボードD(図2参照)又は小片被加工物の上面に焦点を合わせてフォーカス位置を検出することも可能である。この場合には、位置関係算出ステップ(図3B参照)で求められた差分ΔZ1−2と同じ位置関係になるように、ドレッシングボードD又は小片被加工物の上面を基準とした撮像手段55のフォーカス位置に対する切削ブレード52の原点位置が算出される。そして、ドレッシングボードD又は小片被加工物の上面を基準にした場合には、ドレッシングボードD又は小片被加工物の上面を基準に切り込み量が設定される。これにより、ドレッシングボードDのように厚みバラツキが大きい場合(例えば、100μm)でも、ボード上面が基準になることで切り込み量が制御し易くなっている。
【0030】
以上のように、本実施の形態に係る切削装置1によれば、チャックテーブル3の保持面33を基準とした切削ブレード52の原点位置Zと撮像手段55のフォーカス位置Zとの位置関係が求められる。サブチャックテーブル4の保持面42に撮像手段55の焦点を合わせた撮像手段55のフォーカス位置Zが検出されることで、上記の位置関係からサブチャックテーブル4を基準とした切削ブレード52の原点位置Zが算出される。このように、サブチャックテーブル4に切削ブレード52を接触させることなく、接触式の原点位置検出に近い精度で切削ブレード52の原点位置が検出される。また、サブチャックテーブル4に対する切削ブレード52の原点位置を非接触で検出するため、サブチャックテーブル4に原点位置検出用の配線を設ける必要がなく、さらにフォーカス位置の検出にアライメント用の撮像手段55を使用しているため、簡易かつ安価な構成で原点位置検出することができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0032】
例えば、上記した実施の形態においては、サブチャックテーブル4にドレッシングボードDが保持される構成としたが、この構成に限定されない。サブチャックテーブル4には、ドレッシングボードDの他に、カーフチェック用のサンプルウェーハ等が保持されてもよい。
【0033】
また、上記した実施の形態においては、アライメント用の撮像手段55によって、チャックテーブル3及びサブチャックテーブル4に対するフォーカス位置Z、Zが検出される構成としたが、この構成に限定されない。アライメント用の撮像手段55とは別に、原点位置検出用の撮像手段を設ける構成にしてもよい。
【0034】
また、上記した実施の形態においては、チャックテーブル3に対する切削ブレード52の原点位置Zと撮像手段55のフォーカス位置Zの位置関係として、切削ブレード52の原点位置Zと撮像手段55のフォーカス位置Zの差分Z1−2で表される構成としたが、この構成に限定されない。位置関係は、チャックテーブル3の保持面33を基準とした切削ブレード52と撮像手段55の位置関係が分かればよく、例えば、切削ブレード52の原点位置Zと撮像手段55のフォーカス位置Zの割合Z/Zで表されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上説明したように、本発明は、簡易かつ安価な構成で、サブチャックテーブルに対する切削ブレードの切り込み方向における原点位置を検出できるという効果を有し、特に、ドレッシングボードを保持するサブチャックテーブルの原点位置検出方法に有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 切削装置
3 チャックテーブル
4 サブチャックテーブル
5 切削手段
7 切り込み送り手段
11 原点位置検出機構
33 チャックテーブルの保持面
42 サブチャックテーブルの保持面
51 スピンドル
52 切削ブレード
55 撮像手段
図1
図2
図3