(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、超音波厚さ測定機を用いてコンベヤベルトの摩耗量を測定する場合、以下の様な問題点がある。
コンベヤベルトの設置場所まで超音波厚さ測定機を持ち運ぶ必要があり、測定準備に要する手間がかかる。
測定に際しては、超音波厚さ測定機の探触子とコンベヤベルトの表面との間にグリセリンなどの接触媒質を塗布すると共に、測定毎に校正作業を要するため、測定に手間がかかる。
超音波厚さ測定機の探触子は、測定対象に当て付ける部分がある程度の大きさを有しているため、コンベヤベルトの同一箇所の厚さを測定する場合、探触子を同一箇所に正確に位置決めすることが難しく、測定場所にばらつきが生じやすい。
コンベヤベルトの表面状態が荒れて凹凸が発生している場合は、厚さ測定が困難となる。
そこで、本出願人は、ゴムベルトのベルト本体と識別できる色を有し、ベルト本体の厚さ方向に沿って断面積が次第に変化する形状で形成された摩耗視認部材をベルト本体に埋め込んだゴムベルトを提供している。
このようなゴムベルトによれば、超音波厚さ測定機を用いることなく、ベルト本体から露出する摩耗視認部材を視認するだけで、ゴムベルトの摩耗量を簡単に確実に把握する上で有利である。
本発明は前記ゴムベルトに着目して案出されたものであって、本発明の目的は摩耗視認部材が設けられたコンベヤベルトを利用することによって、摩耗量を自動的に把握する上で有利なコンベヤベルトの摩耗量測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、
本発明は、補強層と前記補強層を覆うカバーゴム層と有するベルト本体
を備えるコンベヤベルトの摩耗量を測定する摩耗量測定装置であって、
前記カバーゴム層は、前記補強層の厚さ方向の一方の面を覆い被搬送物が載置される上部カバーゴム層と、前記補強層の厚さ方向の他方の面を覆う下部カバーゴム層とを有し、前記カバーゴム層と識別できる色を有し、前記カバーゴム層に埋め込まれ、前記カバーゴム層の厚さ方向に沿って断面積が次第に変化する摩耗視認部材が、前記上部カバーゴム層と前記下部カバーゴム層とにそれぞれ設けられ、前記上部カバーゴム層の表面に露出する前記摩耗視認部材を撮像して画像情報を生成する上部撮像部と、前記下部カバーゴム層の表面に露出する前記摩耗視認部材を撮像して画像情報を生成する下部撮像部と、前記上部撮像部と前記下部撮像部から供給される前記画像情報に基づいて前記摩耗視認部材の面積を画像処理により検出すると共に、前記検出された面積に基づいて前記上部カバーゴム層と前記下部カバーゴム層の摩耗量をそれぞれ検出する摩耗量検出部と、前記摩耗量検出部で検出された前記上部カバーゴム層と前記下部カバーゴム層の摩耗量の大きさに応じて報知装置を制御することにより警報を報知する報知部と備え、前記報知部は、前記上部カバーゴム層と前記下部カバーゴム層の摩耗量を、予め定められた第1のしきい値と、前記第1のしきい値よりも大きな第2のしきい値と比較し、前記報知部は、前記上部カバーゴム層または前記下部カバーゴム層の摩耗量が前記第1のしきい値を超え前記第2のしきい値を下回った場合には、前記報知装置を制御することにより前記コンベヤベルトの交換時期が近づいた旨の第1の警報を報知し、前記報知部は、前記上部カバーゴム層または前記下部カバーゴム層の摩耗量が前記第2のしきい値を超えた場合には、前記報知装置を制御することにより前記コンベヤベルトを直ちに交換することが好ましい旨の第2の警報を報知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コンベヤベルトの表面に露出する摩耗視認部材を撮像して生成された画像情報に基づいて摩耗視認部材の面積を画像処理により検出すると共に、検出された面積に基づいてコンベヤベルトの摩耗量を検出するようにしたので、摩耗量を自動的に把握する上で有利となる。
本発明によれば、検出されたコンベヤベルトの摩耗量の大きさに応じて警報を報知するので、コンベヤベルトのメンテナンス作業を効率的に行なう上で有利となる。
本発明によれば、コンベヤベルトの摩耗量と複数のしきい値との比較結果に対応した内容の警報を報知するので、メンテナンス作業を円滑に行なう上でより有利となる。
本発明によれば、コンベヤベルトの摩耗量を自動的にかつより正確に把握する上で有利となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の実施の形態を図面にしたがって説明する。
まず、ベルトコンベヤ装置について説明する。
図1に示すように、ベルトコンベヤ装置10は、駆動プーリ12と、従動プーリ14と、それらに架け渡された無端状に形成されたコンベヤベルト16とを含んで構成されている。
駆動プーリ12が不図示のモータから供給される駆動力により回転駆動されることにより、コンベヤベルト16が駆動プーリ12と従動プーリ14との間で走行する。
コンベヤベルト16は、コンベヤベルト16の長手方向に間隔をおいて複数配置されたトラフローラ18に掛装されている。
図2に示すように、トラフローラ18は、コンベヤベルト16の幅方向の中央に配置された中央ローラ18Aと、中央ローラ18Aの両側に配置された傾斜ローラ18B、18Cとで構成され、コンベヤベルト16が中央ローラ18A、傾斜ローラ18B、18C上で移動することで被搬送物Mが搬送される。
【0009】
図2、
図3に示すように、コンベヤベルト16は、ベルト本体20を有し、ベルト本体20は、補強層22と、補強層22を挟む一対のカバーゴム層24と、摩耗視認部材26Aとを備えている。
補強層22は、コンベヤベルト16の張力を保持するためのものであり、複数のスチールコードあるいは有機繊維と、それらを覆うクッションゴムとで構成されている。
スチールコード、有機繊維、クッションゴムには、従来公知の様々な材料が使用可能である。
【0010】
一対のカバーゴム層24は、例えば、被搬送物M、例えば、鉄鉱石、石炭、石灰石などの鉱物、土砂、粉体が載置される搬送面を形成する上部カバーゴム層24Aと、搬送面の反対面の面を形成しトラフローラ18に接触する下部カバーゴム層24Bとで構成されている。
したがって、上部カバーゴム層24Aは、被搬送物Mとの摩擦により摩耗する。
言い換えると、カバーゴム層24は、補強層22の厚さ方向の一方の面を覆い被搬送物Mが載置される上部カバーゴム層24Aと、補強層22の厚さ方向の他方の面を覆う下部カバーゴム層24Bとを有している。
【0011】
摩耗視認部材26Aは、ベルト本体20と識別できる色を有するものであり、本実施の形態では、上部カバーゴム層24Aに埋め込まれ、上部カバーゴム層24Aの厚さ方向に沿って断面積が次第に変化する形状で形成されている。
例えば、ベルト本体20の色が黒色であれば、摩耗視認部材26Aの色は、白色や黄色や橙色とすればよい。
本実施の形態では、摩耗視認部材26Aは、上部カバーゴム層24Aの表面から離れるにつれて断面積が次第に大きくなるように形成されている。
より詳細には、摩耗視認部材26Aは、軸線を上部カバーゴム層24Aの厚さ方向に一致させ、頂点を補強層22と反対方向に向けた円錐形を呈している。
したがって、
図4(A)〜(E)に示すように、上部カバーゴム層24Aの摩耗量が増加するに従って上部カバーゴム層24Aの表面から露出する摩耗視認部材26Aの断面積が次第に大きくなる。
なお、摩耗視認部材26Aは、上部カバーゴム層24Aの厚さ方向に沿って断面積が次第に変化する形状で形成されていればよく、摩耗視認部材26Aの形状は円錐形に限定されるものではない。
【0012】
また、本実施の形態では、
図2に示すように、摩耗視認部材26Aは、コンベヤベルト16の幅方向に間隔をおいた複数箇所に設けられている。
このようにすることで、コンベヤベルト16の幅方向に間隔をおいた複数箇所の摩耗状態を的確に把握する上で有利となっている。
なお、摩耗視認部材26Aを設ける箇所や数は、任意に定めれば良い。例えば、摩耗が激しいコンベヤベルト16の幅方向の中央部分には摩耗視認部材26Aを多く設け、摩耗がそれほど激しくないコンベヤベルト16の幅方向の両側寄りには摩耗視認部材26Aを少なく設ければ、摩耗の激しい箇所の摩耗量を的確に測定しつつ、摩耗視認部材26Aの数を抑制する上で有利となる。
また、コンベヤベルト16は、長手方向においてほぼ均等に摩耗することが考えられるため、摩耗視認部材26Aは、コンベヤベルト16の長手方向に間隔をおいた複数箇所に設ける必要はなく、コンベヤベルト16の長手方向においては少なくとも1箇所に設ければよい。
【0013】
なお、コンベヤベルト16は、予め型により成形された摩耗視認部材26Aを、未加硫状態の上部カバーゴム層24A内に配置したのち、上部カバーゴム層24A、補強層22、下部カバーゴム層24Bを積層した状態で加硫することによって製造される。
【0014】
次に、コンベヤベルトの摩耗量測定装置(以下、単に摩耗量測定装置という)について説明する。
図1、
図5に示すように、摩耗量測定装置30は、撮像装置32と、制御装置34と、報知装置36とを含んで構成されている。
撮像装置32は、コンベヤベルト16の表面に露出する摩耗視認部材26Aを撮像して画像情報を生成し、制御装置34に供給するものであり、撮像部を構成している。
【0015】
制御装置34は、CPUと、制御プログラムなどを格納するROMと、ワーキングエリアを提供するRAMと、インターフェース部などがバスによって接続されたマイクロコンピュータによって構成されている。インターフェース部は、撮像装置32および報知装置36との間でインターフェースをとるものである。
図5に示すように、CPUは、制御プログラムを実行することにより、摩耗量検出部34Aおよび報知部34Bを実現する。
摩耗量検出部34Aは、撮像装置32から供給される画像情報に基づいて摩耗視認部材26Aの面積を画像処理により検出すると共に、検出された面積に基づいてコンベヤベルト16の摩耗量を検出する。
また、報知部34Bは、摩耗量検出部34Aで検出されたコンベヤベルト16の摩耗量の大きさに応じて報知装置36に指令を与えることで報知装置36を動作させて警報を報知する。
本実施の形態では、報知部34Bは、摩耗量検出部34Aで検出されたコンベヤベルト16の摩耗量Xが所定のしきい値Aを上回ったことをもって、報知装置36に指令を与えることで報知装置36を動作させて警報を報知する。この場合、しきい値Aは、コンベヤベルト16の交換時期が近づいたことを示すに足る摩耗量として設定されている。
【0016】
報知装置36は、報知部34Bの指令に応じてコンベヤベルト16の摩耗量に関する警報を報知するものである。
報知装置36は、例えば、ディスプレイ装置や警告灯のように視覚的に警報を報知するもの、あるいは、スピーカーなどのように聴覚的に警報を報知するものを含んで構成されている。
ディスプレイ装置による警報の報知は、例えば、画面上に「コンベヤベルト16の摩耗量が所定値を上回りました。コンベヤベルト16を交換してください。」といったメッセージを表示することでなされる。
警告灯による警報の報知は、例えば、警告灯が点灯あるいは点滅することでコンベヤベルト16の交換時期が到来したことを報知することでなされる。
スピーカーによる警報の報知は、例えば、「コンベヤベルト16の摩耗量が所定値を上回りました。コンベヤベルト16を交換してください。」といったアナウンスを発することでなされる。
【0017】
本実施の形態によれば、コンベヤベルト16の表面に露出する摩耗視認部材26Aを撮像して生成された画像情報に基づいて摩耗視認部材26Aの面積を画像処理により検出すると共に、検出された面積に基づいてコンベヤベルト16の摩耗量を検出するようにしたので、摩耗量を自動的に把握する上で有利となる。
すなわち、大掛かりな超音波厚さ測定機が不要となるため、超音波厚さ測定機をコンベヤベルト16の設置場所まで持ち運ぶ必要がなく、測定準備に要する手間を省く上で有利となる。
また、グリセリンなどの接触媒質を使用する必要がなく、測定毎の校正作業を要しないため、上部カバーゴム層24Aの摩耗量を簡単に把握する上で有利となる。
また、摩耗視認部材26Aが上部カバーゴム層24Aに埋め込まれているため、同一箇所における摩耗量を確実に把握する上で有利となる。
コンベヤベルト16の表面状態が荒れて凹凸が発生している場合であっても摩耗量を確実に把握する上で有利となる。
【0018】
また、本実施の形態によれば、摩耗量検出部34Aで検出されたコンベヤベルト16の摩耗量の大きさに応じて警報を報知するので、コンベヤベルト16の交換時期を確実に知らせることができ、コンベヤベルト16のメンテナンス作業を効率的に行なう上で有利となる。
【0019】
なお、
図6に示すように、摩耗視認部材26Aの断面形状は、上部カバーゴム層24Aの表面から離れるにつれて摩耗視認部材26Aの断面積が次第に小さくなるようにしてもよい。
このようにした場合は、上部カバーゴム層24Aの摩耗量が増加するに従って上部カバーゴム層24Aの表面から露出する摩耗視認部材26Aの断面積が次第に小さくなるため、実施の形態と同様に、撮像部で生成された画像情報に基づいて摩擦量検出部によりコンベヤベルト16の摩耗量を検出できるため、摩耗量を自動的に把握する上で有利となる。
しかしながら、実施の形態のように、摩耗視認部材26Aを、上部カバーゴム層24Aの表面から離れるにつれて断面積が次第に大きくなるように形成すると、上部カバーゴム層24Aの摩耗量が増加した際に摩耗視認部材26Aの面積が増加するため、画像処理によって摩擦視認部材の面積を正確に検出する上でより有利となる。
【0020】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について
図7を参照して説明する。
第2の実施の形態は、報知部34Bの動作が第1の実施の形態と相違しており、他の構成は第1の実施の形態と同様である。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様の部分、部材については第1の実施の形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施の形態は、報知部34Bが、コンベヤベルト16の摩耗量を、予め定められた互いに大きさが異なる複数のしきい値と比較し、その比較結果に対応する内容の警報を報知するように報知装置36を制御するようにしたものである。
【0021】
より詳細に説明すると、報知部34Bは、コンベヤベルト16の摩耗量のしきい値として、第1のしきい値Aと、第2のしきい値B(ただしB>A)との2種類のしきい値が設定されている。
この場合、第1のしきい値Aは、コンベヤベルト16の交換時期が近づいたことを示すに足る摩耗量として設定され、第2のしきい値Bは、コンベヤベルト16の交換を直ちに行なう必要がある摩耗量として設定されている。
図5に示すように、報知部34Bは、摩耗量検出部34Aで検出されたコンベヤベルト16の摩耗量XがA<X<Bであるか否かを判定する(ステップS10)。
ステップS10が否定ならば、ステップS10に戻る。
ステップS10が肯定ならば、報知装置36に指令を与えてコンベヤベルト16の交換時期が近づいた旨を示す第1の警報を報知する(ステップS12)。
次に、報知部34Bは、報知部34Bは、摩耗量検出部34Aで検出されたコンベヤベルト16の摩耗量XがB<Xであるか否かを判定する(ステップS14)。
ステップS14が否定ならば、ステップS14に戻る。
ステップS14が肯定ならば、報知装置36に指令を与えてコンベヤベルト16を直ちに交換することが好ましい旨を示す第2の警報を報知する(ステップS16)。
【0022】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果が奏されることは無論のこと、コンベヤベルト16の摩耗量Xと第1、第2のしきい値A、Bとの比較結果に対応した内容の警報を報知する。すなわち、摩耗量Xが大きくなるほどコンベヤベルト16の交換作業の必要性や緊急度を高めた内容の警報を報知するので、メンテナンス作業を円滑に行なう上でより有利となる。
また、コンベヤベルト16の摩耗量のしきい値を互いに大きさの異なる3つ以上に設定し、コンベヤベルト16の摩耗量とそれら3つ以上のしきい値との比較結果に対応した内容の警報を報知するようにしてもよい。このようにすると、コンベヤベルト16の摩耗量Xと3つ以上のしきい値との比較結果に対応した内容の警報を報知するので、メンテナンス作業を円滑に行なう上でより一層有利となる。
【0023】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について
図8、
図9、
図10を参照して説明する。
第1、第2の実施の形態では、搬送面を形成する上部カバーゴム層24Aに摩耗視認部材26Aを設けた場合について説明したが、第3の実施の形態では、
図8に示すように、上部カバーゴム層24Aに摩耗視認部材26Aを設けると共に、搬送面の反対面の面を形成する下部カバーゴム層24Bにも摩耗視認部材26Bを設ける。
図9に示すように、上部カバーゴム層24Aの表面に露出する摩耗視認部材26Aを撮像して画像情報を生成する上部撮像装置32A(上部撮像部)と、下部カバーゴム層24Bの表面に露出する摩耗視認部材26Bを撮像して画像情報を生成する下部撮像装置32B(下部撮像部)とを設ける。
【0024】
図10に示すように、摩耗量検出部34Aは、上部撮像装置32Aと下部撮像装置32Bから供給される画像情報に基づいて摩耗視認部材26Aと摩耗視認部材26Bの面積を画像処理により検出すると共に、検出された面積に基づいて上部カバーゴム層24Aと下部カバーゴム層24Bの摩耗量をそれぞれ検出する。
また、報知部34Bは、摩耗量検出部34Aで検出されたコンベヤベルト16の摩耗量の大きさに応じて報知装置36に指令を与えることで報知装置36を動作させて警報を報知する。
【0025】
第3の実施の形態によれば、被搬送物Mとの摩擦によって摩耗する上部カバーゴム層24Aの摩耗量と、トラフローラ18との摩擦によって摩耗する下部カバーゴム層24Bの摩耗量との双方に基づいてコンベヤベルト16の摩耗量を自動的にかつより正確に把握する上で有利となる。
なお、第3の実施の形態に第2の実施の形態を適用してもよいことは無論である。