(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記秘匿情報は、幾何学パターン、周期的に配置された2値の文字パターン、又は、周期的に配置された2値の図形パターン、である、ことを特徴とする請求項1のホログラム転写箔。
【背景技術】
【0002】
パスポート又はID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。例えば、一般的なパスポートには、顔画像を焼き付けた印画紙が冊子体に貼り付けられている。しかしながら、そのようなパスポートは、写真印画の貼り替えによって改竄されることが懸念される。
【0003】
このような理由により、近年では、顔画像の情報がデジタル化され、デジタル情報が冊子体の上に再現されている。画像再現のために用いられる画像表示技術としては、例えば、昇華性(熱移行性)染料、又は、顔料を分散させた樹脂型溶融タイプ又はワックス溶融タイプ、を用いた転写リボンによる感熱転写記録法、又は、電子写真法などが用いられる。
【0004】
近年、昇華性染料又は着色した熱可塑性樹脂を使用する感熱転写記録方式のプリンタが広く普及してきている。この感熱転写記録方式を用いると、パスポートから顔画像を取り除き、その部分に別の顔画像を記録することが必ずしも困難ではない。
【0005】
一方で、上記のような画像表示技術を用いて顔画像を印刷し、その上に蛍光インキを用いて顔画像を記録する蛍光体印刷物が提案されている(例えば、文献1(特開2000−141863号公報)参照)。また、無色又は淡色の蛍光染料と有色の顔料とを含有したインキを用いて顔画像を記録した偽造防止画像形成体(例えば、文献2(特開2002−226740号公報)参照)、さらに、通常の顔画像とパール顔料を用いて形成された顔画像とを並べて配置した個人認証媒体が提案されている(例えば、文献3(特開2003−170685号公報)参照)。
【0006】
上記のような画像表示技術をパスポートに適用することにより、パスポートの改竄はより困難になる。
【0007】
しかしながら、蛍光材料を用いて記録した顔画像は、紫外線ランプなどの特殊な光源を使用しない限り観察することができない。また、パール顔料を用いて形成した顔画像は、肉眼で視認できるが、パール顔料の粒径が大きいため、このパール顔料を用いて高精細な画像を形成することが困難である。
【0008】
個人認証媒体に記録される顔画像の見え方が単純で特別な視覚効果がない場合、顔画像が複雑で特徴のある視覚効果を有する場合と比較して、顔画像の改竄は容易である。また、顔画像が単純な見え方で表示されている場合、改竄、偽造された顔画像を目視で容易に判断することが困難である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態は、ホログラム転写箔、画像表示体、画像表示体の作製方法、個人認証媒体に関する。
【0020】
本実施形態に係るホログラム転写箔は、基材の一方の面に、剥離層、回折構造形成層、接着層を積層して形成される。回折構造形成層は、ホログラム又は回折格子の微細凹凸から形成される。剥離層及び接着層の少なくとも一方は、熱伝導性秘匿情報所有部に秘匿情報を備え、熱伝導性秘匿情報非所有部に秘匿情報を備えない。
【0021】
本実施形態に係る画像表示体は、ホログラム転写箔を被転写基材へ熱転写して作製される。
【0022】
本実施形態に係る画像表示体の作製方法は、ホログラム転写箔の熱伝導性秘匿情報所有部を、被転写基材に記録する工程と、ホログラム転写箔の識別情報を含む熱伝導性秘匿情報非所有部を被転写基材に記録する工程と、を備える。
【0023】
本実施形態により、本人を識別するための画像を目視で容易に確認することができ、かつ、偽造及び改竄されることを予防し、高セキュリティ性を実現することができる。
【0024】
以下、本実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
図1は、本実施形態に係る個人認証媒体の一例を概略的に示す平面図である。個人認証媒体1は、例えばパスポートなどの冊子体である。
図1において、個人認証媒体1は、開いた状態で示されている。
【0026】
個人認証媒体1は、画像情報1a,1bを表示している。画像情報1aは、光の吸収を利用して表示される画像情報である。具体的には、画像情報1aは、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に、視認可能な画像である。
【0027】
画像情報1aは、例えば、染料及び顔料で構成されてもよい。この場合、画像情報1aの形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又は、それら二つ以上の組み合わせが利用されてもよい。画像情報1aは、感熱発色剤を含む層を形成し、この層にレーザービームで描画することにより形成されてもよい。画像情報1aは、上記の各種の方法を組み合わせて形成されてもよい。画像情報1aの少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成されてもよく、印刷法によって形成されてもよく、それらの組み合わせを利用して形成されてもよい。
【0028】
画像情報1bは、ホログラム及び/又は回折格子の回折構造によって表示される画像である。画像情報1bは、例えば、サーマルヘッドを用いた熱転写記録と、ホットスタンプ又は熱ロールを用いた熱転写記録とをこの順に行うことによって形成される。
【0029】
画像情報1bは、個人を認証するための中間階調を持つ識別情報と、識別情報とは異なる視認角度により認識される秘匿情報とを含んでいる。個人を認証するための中間階調を持つ識別情報は、例えば、顔画像などである。秘匿情報は、例えば、記号、符号及び標章など、非個人情報である。
【0030】
次に、個人認証媒体1の作製に必要なホログラム転写箔の構造について、
図2乃至
図4を参照しながら説明する。
【0031】
図2は、本実施形態に係るホログラム転写箔の第1の例を示す断面図である。
【0032】
図3は、本実施形態に係るホログラム転写箔の第2の例を示す平面図である。
【0033】
図4及び
図5は、本実施形態に係るホログラム転写箔の第2の例を示す断面図である。
【0034】
ホログラム転写箔100,200は、基材11,21の一方の面に、剥離層12,22(22a,22b)、回折構造形成層13,23、接着層14,24(24a,24b)を順に積層することにより形成される。このホログラム転写箔100,200は、ホログラムリボン又はシートの形態で適用されてもよい。
【0035】
剥離層22aは、秘匿情報を含まない剥離層である。剥離層22bは、秘匿情報を含む剥離層である。
【0036】
接着層24aは、秘匿情報を含まない接着層である。接着層24bは、秘匿情報を含む接着層である。
【0037】
基材11,21は、例えば樹脂フィルム又はシートである。基材11,21は、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレン(PE)等のプラスチック材料を用いて形成される。
【0038】
剥離層12,22は、基材11,21の上に形成される。剥離層12,22は、ホログラム転写箔100,200の基材11,21からの剥離を安定化すると共に、後述する
図6の被転写基材301への接着を促進する役割を果たす。剥離層12,22は、光透過性を有しており、典型的には透明である。剥離層12,22の材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂にシリコーン又はフッ素系の添加剤を加えた樹脂、フッ素系アクリル樹脂、又は、シリコーン系アクリル系樹脂などが用いられてもよい。
【0039】
剥離層12,22bは、例えば、グラビアコーターによって塗工される。グラビアコーターによる塗工において、グラビア印刷版として柄のついた版が使用されることにより、柄に沿って厚みが微小に異なる(典型的には、厚みの差がおよそ0.2μm以下である)剥離層12,22bの塗工が可能となる。また、剥離層22,22aは、例えば、リップコーターなど、塗工層厚が面内で一様となる塗工方式で塗工されてもよい。
【0040】
回折構造形成層13,23は、剥離層12,22の上に形成される。回折構造形成層13,23の材料としては、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレン等の光硬化性樹脂が用いられてもよい。また、回折構造形成層13,23の材料としては、アクリルニトリルスチレン共重合体樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられてもよい。さらに、回折構造形成層13,23の材料としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂が用いられてもよい。例えば、上記の樹脂を所望の構造に賦型して硬化させることで、剥離層12,22の表面上に回折構造形成層13,23が形成される。
【0041】
なお、回折構造形成層13,23を形成する樹脂の硬化物は、全て光透過性である。回折構造形成層13,23を形成する樹脂の硬化物の屈折率は、一般的には、1.5程度である。回折構造形成層13,23の膜厚は、耐熱性、箔切れ性、熱転写性を向上させるために薄い方がよく、およそ1.5μm以下であることが好ましい。
【0042】
回折構造形成層13,23は、ホログラム及び/又は回折格子の回折構造形成部K1,K2を含む。この回折構造形成部K1,K2のパラメータとしては、
(1)回折構造の空間周波数(格子線のピッチ:単位長さ当たりの格子線の本数)
(2)回折構造の方向(格子線の方向)
がある。上記(1)に応じて、その画像セルの光って見える色が変化する。上記(2)に応じて、その画像セルの光って見える方向が変化する。
【0043】
回折構造形成部K1,K2は、上記(1),(2)のパラメータが異なっていても異なっていなくてもよいが、好ましくは、(1),(2)のパラメータのうち、少なくとも1つ以上が異なる。
【0044】
回折構造形成層13,23は、反射層を含むとしてもよい。反射層を設けた場合には回折構造が表示する画像の視認性が向上する。反射層としては、例えば、透明反射層を使用することができる。透明反射層は、例えば、真空蒸着又はスパッタリングなどの真空成膜法によって形成される。
【0045】
透明反射層としては、例えば、回折構造形成層13,23とは屈折率が異なる透明材料を含む層が使用される。透明材料を含む透明反射層は、単層構造又は多層構造のいずれでもよい。多層構造の場合、透明反射層は、繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。透明材料としては、例えば、硫化亜鉛又は二酸化チタンなどの透明誘電体が使用される。
【0046】
また、透明反射層としては、厚さがおよそ20nm未満の金属層が使用されてもよい。金属層の材料としては、例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金、又は、銅などの単体金属、又は、それらの合金が使用される。透明反射層の膜厚は、典型的には、50nm以上、100nm以下程度であることが好ましい。
【0047】
接着層14,24は、回折構造形成層13,23の上に形成される。接着層14,24の材料としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂、又は、これらの樹脂にシリカ等の無機微粒子を添加させた材料が使用されてもよい。
【0048】
接着層14,24bは、例えば、グラビアコーターによって塗工される。グラビアコーターによる塗工において、グラビア印刷版として柄のついた版が使用されることにより、柄に沿って厚みが微小に異なる(典型的には、厚みの差がおよそ0.2μm以下である)接着層14,24bの塗工が可能となる。あるいは、接着層14,24bの材料に無機微粒子が添加された場合、接着層14,24bに含有される添加剤を版の柄に沿って凝集させることが可能となる。これにより、サーマルヘッドでの熱転写時に、版の柄に従って熱伝導性を異ならせることができる。
【0049】
接着層24,24aは、例えば、リップコーターなど、塗工層厚及び無機微粒子の含有状態が面内で一様となる塗工方式で塗工される。
【0050】
図6A及び
図6Bは、それぞれ、本実施形態に係る画像表示体の作製方法の第1ステップ及び第2ステップの例を示す断面図である。この
図6A及び
図6Bでは、上記ホログラム転写箔200を被転写基材301の表面上に転写することによって画像表示体300が作製される。しかしながら、ホログラム転写箔100により画像表示体が作製される場合も同様の作製方法を用いることができる。
【0051】
図7は、
図6A及び
図6Bに示される転写方式によって作製された画像表示体300の一例を概略的に示す断面図である。
【0052】
上記の
図3に示すホログラム転写箔200に基づいて
図7に示す画像表示体300が作製される場合、まず、
図6Aに示すように、ホログラム転写箔200が、被転写基材301の表面上に、ホログラム転写箔200の基材21が上側となり、接着層24が被転写基材301の表面に接着されるように配置される。次に、ホログラム転写箔200の上面に、熱圧15が
図6Aに示す破線の間に加えられる。その後、熱圧15が加えられていない部分が被転写基材301から引き剥がされる。これにより、
図6Bに示すように、ホログラム転写箔200のうちの熱圧15が加えられた部分16のみが被転写基材301の表面上に転写される。次に、熱圧15が加えられた部分16の基材21と剥離層22との間で剥離が生じる。これにより、被転写基材301の表面上の所要位置にホログラム転写箔200の一部が転写された画像表示体300が作製される。
【0053】
ホログラム転写箔100,200が転写される被転写基材301は、基材31と剥離層32と受像層35とを含んでいる。上記基材31としては、例えば、基材11,21について例示した材料を使用することができる。剥離層32としては、例えば、上記の剥離層12,22について例示した材料を使用することができる。受像層35は、ホログラム転写箔100,200の接着層14,24との密着性が良好な材料を含むことが好ましい。
【0054】
次に、秘匿情報及び個人を認証するための識別情報を含む、画像表示体300の形成方法について説明する。
【0055】
画像表示体300の作製においては、例えば、まず、熱伝導性秘匿情報所有部H2が被転写基材301に形成される。具体的には、ホログラム転写箔100,200の熱伝導性秘匿情報所有部H2が、被転写基材301の受像層35の上へ熱転写される。この熱転写には、例えば、サーマルヘッドが利用される。なお、サーマルヘッドを利用した熱転写の代わりに、熱ロール又はホットスタンプを利用した熱転写が行われてもよい。熱伝導性秘匿情報所有部H2の熱転写面積は、転写指定領域の少なくとも10%以上とする。また、熱伝導性秘匿情報所有部H2の転写形状は、秘匿情報が確認できるように、連続的な形状であることが望ましい。
【0056】
次に、個人を認証するための中間階調を持つ識別情報が被転写基材301に形成される。個人を認証するための中間階調を持つ識別情報は、例えば、撮像装置を用いて人物の顔を撮影することにより、又は、印画から顔画像などを読み取ることによって得られる画像電子情報に基づいて印刷される。例えば、顔画像などの識別情報は、熱伝導性秘匿情報非所有部H1に対応する。識別情報は、熱伝導性秘匿情報非所有部H1において、被転写基材301の上に形成される。具体的には、画像情報に基づいて、
図3に示すホログラム転写箔200における熱伝導性秘匿情報非所有部H1における転写層320を、
図7に示す受像層35、及び/又は、熱伝導性秘匿情報所有部H2における転写層310の上に熱転写する。この熱転写は、サーマルヘッドを利用して、ホログラム転写箔200から受像層35へ熱転写される部分が、先の顔画像に対応した階調及びパターンを有するように実行される。なお、ここでは、熱伝導性秘匿情報非所有部H1の回折構造形成部K1と、先に熱転写を行なった熱伝導性秘匿情報所有部H2の回折構造形成部K2とでは、上述したパラメータが異なるとする。
【0057】
このようにして得られる顔画像に対応したパターンは、サーマルヘッドを用いた熱転写によって形成されるため、典型的には、複数のドット形状又は線形状によって形成される。
【0058】
ドット状部の径、又は、線状部の線幅は、例えば、およそ0.085mm以上、0.508mm以下(約50dpi(dots per inch)以上、約300dpi以下)の範囲内とし、典型的には、およそ0.085mm以上、0.169mm以下(約150dpi以上、約300dpi以下)の範囲内とする。ドット状部の径、又は、線状部の線幅の寸法を大きくすると、高精細な顔画像を表示させることが難しくなる。また、ドット状部の径、又は、線状部の線幅の寸法を小さくすると、ドット状部の径、又は、線状部の線幅の再現性が低下する。
【0059】
なお、画像表示体300の作製において、個人を認証するための中間階調を持つ識別情報が先に形成され、熱伝導性秘匿情報所有部H2が後から形成されてもよい。
【0060】
画像表示体300において、熱伝導性秘匿情報所有部H2は、例えば、秘匿情報を持つ。秘匿情報は、例えば、周期的に配置された2値の文字・図形パターン、又は、彩文パターンとしてもよい。したがって、秘匿情報と、中間階調をもつ個人を認証するための識別情報との区別は容易である。
【0061】
画像表示体300は、パスポート又は査証などの冊子の上に、又は、カード等の個人認証媒体の上に、個人特定の要となる顔画像又は指紋として、印刷・印字・描画される。
【0062】
本実施形態においては、例えば、正当な所有者の顔などの個人の識別情報が、回折構造を設けた構造体とオンデマンド印刷技術を組み合わせて形成され、さらに、識別情報とは異なる光射出角度を持つ秘匿情報が形成される。
【0063】
個人認証を行う観察者(審査官)は、画像表示体300を観察して個人認証を容易に行うことができ、偽造及び改竄を摘発することが容易になる。また、画像表示体300は、偽造及び改竄が困難である。
【0064】
次に、画像表示体300が熱転写されることによって作製される個人認証媒体について、
図8を参照しながら説明する。
【0065】
図8は、
図7に示す画像表示体300を熱転写することによって作製された個人認証媒体400の一例を概略的に示す断面図である。
【0066】
個人認証媒体400は、
図7に示す画像表示体300を、基材31から基材41へ熱転写して得られる。この熱転写には、例えばホットスタンプが利用される。なお、ホットスタンプを利用する熱転写の代わりに、熱ロール又はサーマルヘッドを利用した熱転写が行われてもよい。以上のようにして個人認証媒体400が作製される。
【0067】
上記のようにして作製された個人認証媒体400について、
図9に示す観察範囲40aから観察すると、
図10Aに示す個人を認証するための中間階調を持つ識別情報(顔画像)420が観察者によって観察される。
【0068】
図9に示す観察範囲40bから観察すると、個人を認証するための中間階調を持つ識別情報420の回折光は観察者によって観察されず、代わりに
図10Bに示す秘匿情報410が観察者によって観察される。
【0069】
基材41には、接着強さを高めるために接着アンカー層が形成されてもよい。
【0070】
個人認証媒体400を基材41に強い接着力で接着させることが難しい場合、
図8及び
図9に示すように、個人認証媒体400は、接着層44を介して基材41へ熱転写されてもよい。接着層44としては、例えば、接着リボンが使用される。接着層44を備えることにより、個人認証媒体400と基材41との接着力を強くすることができる。
【0071】
画像表示体300を貼り付ける基材41の材質は、紙以外であってもよい。例えば、画像表示体300を貼り付ける基材41は、プラスチック基材、金属基板、セラミックス基板、又は、ガラス基板でもよい。
【0072】
図11は、従来の画像と本実施形態に係る画像との対比の一例を示す模式図である。
【0073】
従来の画素S1は、サーマルヘッドにより、画像の濃淡に応じた画素を従来のホログラム転写箔に転写することによって作製されるホログラムである。
【0074】
本実施形態に係る画像S2は、顔画像を表示する識別情報S2Aと、例えば凹凸による秘匿情報S2B(この
図10の例では彩文パターン)とを含む。
【0075】
本実施形態においては、画像の濃淡に応じて識別情報S2Aの画素を転写する際に、秘匿情報S2Bを同時形成する。従来は、秘匿情報S2Bまでは形成されない。したがって、本実施形態においては、偽造品を判別可能であり、改竄を防止することができる。
【0076】
上記のような本実施形態の効果について、以下で説明する。
【0077】
本実施形態においては、改竄、及び、なりすましに使用されることが困難で、かつ、優れた画質で特徴のある視覚効果を持つ画像を表現することができる。
【0078】
本実施形態においては、真偽の判断を目視で容易に行うことができる。
【0079】
本実施形態においては、特定の範囲から観察することによって秘匿情報を確認することができ、特定の範囲ではない他の範囲では秘匿情報を確認することができない。従って、ホログラム転写箔100,200を被転写基材301へ転写することによって作製される画像表示体300は、真偽を判断することが容易である。
【0080】
本実施形態においては、特定の照明条件のもとで熱伝導性秘匿情報所有部H2と熱伝導性秘匿情報非所有部H1とから回折光が射出され、熱伝導性秘匿情報所有部H2において秘匿情報の画像を確認することができ、熱伝導性秘匿情報非所有部H1において秘匿情報の画像を確認することができない。
【0081】
本実施形態においては、熱伝導性秘匿情報所有部H2と熱伝導性秘匿情報非所有部H1との間で、ホログラム層の空間周波数及び/又は格子角度が異なることにより、特定の照明条件で熱伝導性秘匿情報所有部H2のみから回折光を射出させることができる。この結果、観察者は、特定の照明条件において秘匿情報の画像を確認することができる。一方、特定の照明条件とは異なる他の照射条件で、熱伝導性秘匿情報非所有部H1のみから回折光を射出させることができる。他の照射条件において、熱伝導性秘匿情報所有部H2は回折光を射出しない。この結果、観察者は、他の照射条件において秘匿情報の画像を確認することはできない。
【0082】
本実施形態においては、観察者は、熱伝導性秘匿情報非所有部H1から回折光が射出される場合の他の照明条件では、個人を認証するための識別情報を観察することができる。一方、観察者は、熱伝導性秘匿情報所有部H2から回折光が射出される場合の特定の照明条件では、秘匿情報の画像を観察することができる。熱伝導性秘匿情報非所有部H1と熱伝導性秘匿情報所有部H2とでホログラム層の空間周波数及び/又は格子角度を変えることにより、個人を認証するための識別情報420の観察角度と、秘匿情報410の画像を確認する観察角度とを変えることができる。この結果、個人を認証するための識別情報420を観察する場合に、秘匿情報410の画像が一緒に観察されることを防止することができる。
【実施例】
【0083】
画像表示体300の作製の具体例について以下で説明する。
【0084】
まず、第1のホログラム転写箔(例えば、
図2に示すホログラム転写箔100)が作製される。
【0085】
基材11として、厚みがおよそ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムが準備される。この基材11の上に、グラビアコーターを用いて、剥離層12と回折構造形成層13とがこの順で形成される。基材11と剥離層12と回折構造形成層13との積層構造物は、オーブンで乾燥される。なお、グラビアコーターの版には、175線/mmの彩文柄が施された版が使用される。また、剥離層12の材料としては、アクリル樹脂が使用される。回折構造形成層13の材料としては、アクリルポリオールが使用される。剥離層12及び回折構造形成層13の乾燥後の膜厚は、それぞれ、およそ0.6μm及び0.7μmとする。
【0086】
次に、ロールエンボス装置を用いる熱プレスにより、回折構造形成層13の表面に、ホログラムとしての回折構造が形成される。形成された回折構造の深さは、約100nmとする。空間周波数は、およそ2000本/mmとする。
【0087】
次に、回折構造形成層13の回折構造上に、蒸着法を用いて硫化亜鉛を含む透明反射層が形成される。透明反射層の膜厚はおよそ50nmとする。
【0088】
以上のような条件で、秘匿情報を含む第1のホログラム転写箔が作製される。
【0089】
次に、第1のホログラム転写箔とほぼ同じ構成及び材料を備えるが、剥離層12に秘匿情報を含まない第2のホログラム転写箔が作製される。この第2のホログラム転写箔の作製において、剥離層12はリップコーターを用いて形成され、オーブンで乾燥される。剥離層12及び回折構造形成層13の乾燥後の膜厚は、それぞれおよそ0.6μm及び0.7μmとする。次に、ロールエンボス装置を用いる熱プレスにより、回折構造形成層13の表面に、深さ約100nm、空間周波数およそ1000本/mmのホログラムとしての回折構造が形成される。この回折構造の上に、蒸着法を用いて硫化亜鉛を含む透明反射層がおよそ50nmの膜厚で形成される。
【0090】
以上のような条件で、秘匿情報を含まない第2のホログラム転写箔が作製される。
【0091】
次に、画像表示体300が以下の方法により製造される。
【0092】
まず、基材31として、厚さがおよそ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムが準備される。この基材31の上に、リップコーターを用いて、剥離層32と受像層35とがこの順で形成される。基材31と剥離層32と受像層35との積層構造物は、オーブンで乾燥される。剥離層32の材料として、アクリル樹脂が使用される。受像層35の材料として、アクリルポリオールが使用される。剥離層32及び受像層35の乾燥後の膜厚は、それぞれ、およそ1.2μm及び1.0μmとする。
【0093】
次に、およそ300dpiのサーマルヘッドを用いて第1及び第2のホログラム転写箔の熱転写を行うことにより、熱伝導性秘匿情報所有部H2及び熱伝導性秘匿情報非所有部H1が、それぞれ基材11から受像層35上へ転写される。
【0094】
画像表示体300の作製は、
図7に示したように、まず、所定の転写範囲全面を埋めるように、熱伝導性秘匿情報所有部H2に対応する転写層310を形成すること、次に、個人を認証するための中間階調を持つ識別情報(顔画像)を熱伝導性秘匿情報非所有部H1に配置するように転写を行い、熱伝導性秘匿情報非所有部H1の転写層320を形成すること、を含む。
【0095】
以上のような条件で作製された個人認証媒体400については、
図9に示すように、空間周波数およそ1000本/mmに対応させた観察角度で観察された場合に、
図10Aに示す識別画像420が確認され、一方で
図10Bに示す秘匿情報は観察されない。
【0096】
一方、空間周波数およそ2000本/mmに対応させた観察角度で観察された場合に、熱伝導性秘匿情報所有部H2の回折光が射出し、
図10Bに示す秘匿情報410が確認され、
図10Aに示す識別画像420は観察されない。
【0097】
上記の実施形態及び実施例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記の実施形態及び実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。上記の実施形態及び実施例及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。