特許第6380468号(P6380468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6380468
(24)【登録日】2018年8月10日
(45)【発行日】2018年8月29日
(54)【発明の名称】四輪駆動車の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 17/348 20060101AFI20180820BHJP
【FI】
   B60K17/348 B
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-122662(P2016-122662)
(22)【出願日】2016年6月21日
(65)【公開番号】特開2017-226277(P2017-226277A)
(43)【公開日】2017年12月28日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 哲史
(72)【発明者】
【氏名】谷 英樹
(72)【発明者】
【氏名】河府 大介
(72)【発明者】
【氏名】八木 康
【審査官】 岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−356014(JP,A)
【文献】 特開2000−177556(JP,A)
【文献】 特開2013−075651(JP,A)
【文献】 特開2008−185418(JP,A)
【文献】 特開平11−230742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 17/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
四輪駆動車の制御装置であって、
前記四輪駆動車は、
車両走行のための駆動力を生成する駆動源と、
前輪及び後輪と、
前記前輪及び前記後輪に対して前記駆動力を配分する駆動力配分手段と、
を備え、
前記制御装置は、
前記四輪駆動車が、傾斜路における最大傾斜線方向に対して交差する交差方向に向いているか否かを判断し、
前記四輪駆動車が前記交差方向に向いていると判断した場合には、前記四輪駆動車が平坦路上にある場合に比べて、前記前輪への前記駆動力の配分量と前記後輪への前記駆動力の配分量との差が小さくなるように、前記駆動力の配分量を設定し、
前記設定された前記配分量を以って前記駆動力の配分を実行するよう、前記駆動力配分手段に対して指令する
四輪駆動車の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の四輪駆動車の制御装置において、
前記四輪駆動車は、当該四輪駆動車の横方向の加速度を検出する横Gセンサを備えており、
前記制御装置は、前記横Gセンサから出力される横G値が所定値以上である場合に、前記四輪駆動車が前記交差方向に向いていると判断する
四輪駆動車の制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の四輪駆動車の制御装置において、
前記四輪駆動車は、当該四輪駆動車の前後方向の加速度を検出する前後Gセンサを備えており、
前記制御装置は、
前記四輪駆動車が前記傾斜路上を走行中又は停車中であって、前記横Gセンサから出力される前記横G値が所定値以上であり、前記前後Gセンサから出力される前後G値が所定値以上である場合に、前記横G値と前記前後G値との合成G値を設定し、
前記設定した前記合成G値に基づいて、前記前輪への前記駆動力の配分量と前記後輪への前記駆動力の配分量との差が小さくなるように、前記駆動力の配分量を設定する
四輪駆動車の制御装置。
【請求項4】
請求項2記載の四輪駆動車の制御装置において、
前記四輪駆動車は、当該四輪駆動車の前後方向の加速度を検出する前後Gセンサを備えており、
前記制御装置は、
前記四輪駆動車が前記傾斜路上を走行中又は停車中であって、前記横Gセンサから出力される前記横G値が所定値以上であり、前記前後Gセンサから出力される前後G値が所定値以上である場合に、前記横G値と前記前後G値との合成G値を設定し、
前記設定した前記合成G値に基づいて、前記傾斜路の路面勾配値を設定するとともに、前記最大傾斜線方向に対する前記四輪駆動車の向きを設定し、
前記設定した前記路面勾配値及び前記四輪駆動車の向きに基づいて、前記前輪への前記駆動力の配分量と前記後輪への前記駆動力の配分量との差が小さくなるように、前記駆動力の配分量を設定する
四輪駆動車の制御装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の四輪駆動車の制御装置において、
前記四輪駆動車が走行中であるか否かを判断し、
前記四輪駆動車が走行中であると判断した場合には、前記前後Gセンサから出力される前記前後G値から、前記四輪駆動車の走行に伴い生じるG値の分を差し引く第1の補正をする
四輪駆動車の制御装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5の何れか記載の四輪駆動車の制御装置において、
前記四輪駆動車が走行中であるか否かを判断し、
前記四輪駆動車が走行中であると判断した場合には、前記横Gセンサから出力される前記横G値から、前記四輪駆動車の走行に伴い生じるG値の分を差し引く第2の補正をする
四輪駆動車の制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか記載の四輪駆動車の制御装置において、
前記四輪駆動車は、当該四輪駆動車の進行方向を推定する進行方向推定手段を備えており、
前記制御装置は、
前記進行方向推定手段からの進行方向に関する推定値に基づき、前記四輪駆動車が前記傾斜路を登坂方向あるいは降坂方向に進むのか否かを判断し、
前記四輪駆動車が前記傾斜路を前記登坂方向あるいは前記降坂方向に進むと判断した場合には、前記傾斜路を前記登坂方向及び前記降坂方向の何れでもない方向に進むと判断した場合に比べて、前記前輪への前記駆動力の配分量と前記後輪への前記駆動力の配分量との差が小さくなるように、前記駆動力の配分量を設定する
四輪駆動車の制御装置。
【請求項8】
請求項7記載の四輪駆動車の制御装置において、
前記進行方向推定手段は、操舵角を検出する操舵角センサである
四輪駆動車の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、四輪駆動車の制御装置及び車両の勾配値設定装置に関し、特に、車両の向きが最大傾斜線方向に対して交差方向である場合における勾配値の設定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、FF車(フロントエンジン・フロントドライブ車)やFR車(フロントエンジン・リヤドライブ車)をベースとする四輪駆動車が実用化されている。例えば、FF車ベースの四輪駆動車では、通常の走行時には、前輪に対して駆動力の殆どを配分し、低μ路などの走行時には、後輪への駆動力の配分量を多くする制御がなされる。即ち、FF車やFR車をベースとする四輪駆動車では、通常は略二輪駆動で走行し、路面状況や車両の姿勢、さらにはドライバからの入力情報などを基に、前輪と後輪との間における駆動力の配分量を設定して四輪駆動で走行するようになっている。このような四輪駆動車では、通常は二輪駆動で走行するのでエネルギロスの最小化を図ることができ、かつ、低μ路などでは四輪駆動で走行するので車輪のスリップを抑制することができる。
【0003】
ここで、特許文献1には、前後Gセンサを備え、当該前後G(加速度)センサからの信号に基づいて路面勾配値を算出する四輪駆動車が開示されている。特許文献1に開示されている四輪駆動車では、前後Gセンサからの信号に基づいて算出した路面勾配値を用い、前輪と後輪との間における駆動力の配分量を設定することとしている。これにより、特許文献1の四輪駆動車では、例えば、低μ路の登り坂からの発進においても、スリップの発生を抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−225657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案されている技術を含む従来の技術では、最大傾斜線(Fall Line)方向に対して交差する方向に車両が向いている場合にあっては、正確な路面勾配値を算出することができず、スリップが発生する場合がある。具体的に、上記特許文献1で提案の技術では、前後Gセンサからの信号のみに基づき路面勾配値を算出しているので、最大傾斜線方向に対して交差する方向に車両が向いている場合にあっては、車両に係るG(加速度)の内、前後方向成分だけが検出されることになる。このため、特許文献1で提案の技術では、最大傾斜線方向に対して交差する方向に車両が向いている場合にあっては、正確に前輪と後輪との駆動力の配分量を設定することができない。
【0006】
さらに、上記特許文献1で提案の技術では、車両が最大傾斜線方向に対して直交する方向(横方向)を向いている場合には、前後GセンサではGの検出ができず、FF車ベースの場合には前輪だけに駆動力が配分され、FR車ベースの場合には後輪だけに駆動力が配分されてしまうということが考えられる。この場合には、車両の傾斜に伴い、車輪のスリップが発生してしまうことがある。
【0007】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、車両が最大傾斜線方向に対して交差する方向を向いていても、車輪のスリップを確実に抑制することができる四輪駆動車の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る四輪駆動車の制御装置は、次のような構成を備える四輪駆動車を制御対象とする。
【0009】
前記四輪駆動車は、駆動源と、前輪及び後輪と、駆動力配分量設定手段と、を備える。
【0010】
前記駆動源は、車両走行のための駆動力を生成する。
【0011】
前記駆動力配分量設定手段は、前記前輪及び前記後輪への前記駆動力の配分量を設定する。
【0012】
そして、前記制御装置は、(i)前記四輪駆動車が、傾斜路における最大傾斜線方向に対して交差する交差方向に向いているか否かを判断し、(ii)前記四輪駆動車が前記交差方向に向いていると判断した場合には、前記四輪駆動車が平坦路上にある場合に比べて、前記前輪への前記駆動力の配分量と前記後輪への前記駆動力の配分量との差が小さくなるように、前記駆動力の配分量を多く設定し、(iii)前記設定された前記配分量を以って前記駆動力の配分を実行するよう、前記駆動力配分手段に対して指令する。
【0013】
本態様に係る四輪駆動車の制御装置では、四輪駆動車が前記交差方向(傾斜路における最大傾斜線方向に対して交差する方向)に向いている場合に、前輪への駆動力の配分量と後輪への駆動力の配分量の差が小さくなるように、駆動力の配分量を設定する。このため、四輪駆動車が、傾斜路上において、前記交差方向に向いていても、車輪のスリップを抑制することができる。
【0014】
従って、本態様に係る四輪駆動車の制御装置は、車輪のスリップを確実に抑制することができ、安定した発進及び走行が可能となる。
【0015】
なお、上記において、「前輪への駆動力の配分量と後輪への駆動力の配分量との差が小さくなるように」とは、例えば、FF車ベースの四輪駆動車の場合には、平坦路上にある場合に比べて、後輪への駆動力の配分量を増加させることを意味し、FR車ベースの四輪駆動車の場合には、平坦路上にある場合に比べて、前輪への駆動力の配分量を増加させることを意味する。
【0016】
本発明の別態様に係る四輪駆動車の制御装置は、上記構成において、前記四輪駆動車が当該四輪駆動車の横方向(車幅方向)の加速度を検出する横Gセンサを備えている場合に、前記制御装置は、前記横Gセンサから出力される横G値が所定値以上である場合に、前記四輪駆動車が前記交差方向に向いていると判断する。
【0017】
本態様に係る四輪駆動車の制御装置では、横Gセンサから出力される横G値に基づいて、四輪駆動車の方向についての判断を行う。このため、簡単な構成で、四輪駆動車が傾斜路上にある場合における車輪のスリップを確実に抑制することが可能となる。
【0018】
従って、本態様に係る四輪駆動車の制御装置は、製造コストの高騰を抑えながら、傾斜路における安定した発進及び走行が可能となる。
【0019】
なお、四輪駆動車に装備される横Gセンサについては、単数であってもよいし、複数であってもよい。複数の横Gセンサを装備する場合には、制御装置は、それらの出力信号の平均値を用いてもよいし、多数決判断を実行することとしてもよい。
【0020】
本発明の別態様に係る四輪駆動車の制御装置は、上記構成において、前記四輪駆動車が当該四輪駆動車の前後方向の加速度を検出する前後Gセンサを備えている場合に、前記制御装置は、(iv)前記四輪駆動車が前記傾斜路上を走行中又は停車中であって、前記横Gセンサから出力される前記横G値が所定値以上であり、前記前後Gセンサから出力される前後G値が所定値以上である場合に、前記横G値と前記前後G値との合成G値を設定し、(v)前記設定した前記合成G値に基づいて、上記のように前輪への駆動力の配分量と後輪への駆動力の配分量との差が小さくなるように、前記駆動力の配分量を設定する。
【0021】
本態様に係る四輪駆動車の制御装置は、上記のような駆動力の配分量設定に際して、横Gセンサからの横G値と、前後Gセンサからの前後G値との合成G値を用いることとしている。このため、四輪駆動車が最大傾斜線方向に沿った方向(坂上方向、坂下方向)を向いていても、あるいは、上記交差方向を向いていても、車輪のスリップを確実に抑制することが可能である。
【0022】
従って、本態様に係る四輪駆動車の制御装置では、傾斜路上において、四輪駆動車が何れの方向を向いていても、四輪駆動車の安定した発進及び走行が可能となる。
【0023】
本発明の別態様に係る四輪駆動車の制御装置は、上記構成において、前記四輪駆動車が当該四輪駆動車の前後方向の加速度を検出する前後Gセンサを備えている場合に、前記制御装置は、(vi)前記四輪駆動車が前記傾斜路上を走行中又は停車中であって、前記横Gセンサから出力される前記横G値が所定値以上であり、前記前後センサから出力される前後G値が所定値以上である場合に、前記横G値と前記前後G値との合成G値を設定し、(vii)前記設定した前記合成G値に基づいて、前記傾斜路の路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向に対する前記四輪駆動車の向きを設定し、(viii)前記設定した前記路面勾配値及び前記四輪駆動車の向きに基づいて、上記のように前輪への駆動力の配分量と後輪への駆動力の配分量との差が小さくなるように、前記駆動力の配分量を設定する。
【0024】
本態様に係る四輪駆動車の制御装置は、上記のように設定した合成G値に基づき、傾斜路における路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向に対する四輪駆動車の向きを設定し、その上で上記のような駆動力の配分量を設定することとしている。よって、本態様に係る四輪駆動車の制御装置においても、傾斜路上において、四輪駆動車が何れの方向を向いていても、車輪のスリップを確実に抑制し、四輪駆動車の安定した発進及び走行が可能となる。
【0025】
本発明の別態様に係る四輪駆動車の制御装置は、上記構成において、(ix)前記四輪駆動車が走行中であるか否かを判断し、(x)前記四輪駆動車が走行中であると判断した場合には、前記前後Gセンサから出力される前記前後G値から、前記四輪駆動車の走行に伴い生じるG値の分を差し引く第1の補正をする。
【0026】
四輪駆動車を含む車両の走行中には、当該走行に伴って前後Gがかかる。本態様に係る四輪駆動車の制御装置では、走行に伴って四輪駆動車に前後Gがかかった場合にあっても、上記のように第1の補正を実行するので、傾斜路の勾配に起因する前後G値だけを抽出することができる。よって、路面勾配に起因する車輪のスリップを効果的に抑制するのに有効である。
【0027】
本発明の別態様に係る四輪駆動車の制御装置は、上記構成において、(xi)前記四輪駆動車が走行中であるか否かを判断し、(xii)前記四輪駆動車が走行中であると判断した場合には、前記横Gセンサから出力される前記横G値から、前記四輪駆動車の走行に伴い生じるG値の分を差し引く第2の補正をする。
【0028】
四輪駆動車を含む車両の走行中には、当該走行に伴って横Gがかかることもある。本態様に係る四輪駆動車の制御装置では、走行に伴って四輪駆動車に横Gがかかった場合にあっても、上記のように第2の補正を実行するので、傾斜路の勾配に起因する横G値だけを抽出することができる。よって、路面勾配に起因する車輪のスリップを効果的に抑制するのに有効である。
【0029】
本発明の別態様に係る四輪駆動車の制御装置は、上記構成において、前記四輪駆動車が当該四輪駆動車の進行方向を推定する進行方向推定手段を備えている場合に、前記制御装置は、(xiii)前記進行方向推定手段からの進行方向に関する推定値に基づき、前記四輪駆動車が前記傾斜路を登坂方向あるいは降坂方向に進むのか否かを判断し、(xiv)前記四輪駆動車が前記傾斜路を前記登坂方向あるいは前記降坂方向に進むと判断した場合には、前記傾斜路を前記登坂方向及び前記降坂方向の何れでもない方向に進むと判断した場合に比べて、上記のように前輪への駆動力の配分量と後輪への駆動力の配分量との差が小さくなるように、前記駆動力の配分量を設定する。
【0030】
本態様に係る四輪駆動車の制御装置では、進行方向に関する推定値に基づき、前記一方の駆動輪への駆動力の配分量を予め設定することができる。このため、例えば、最大傾斜線方向に対して交差する方向(交差方向)に停車していた四輪駆動車が発進直後にカーブして登坂あるいは降坂する場合にあっても、予め上記のような駆動力の配分量が設定されているので、車輪のスリップを確実に抑制することができる。
【0031】
本発明の別態様に係る四輪駆動車の制御装置は、上記構成において、上記進行方向推定手段が操舵角を検出する操舵角センサである。
【0032】
本態様では、進行方向推定手段の具体例として操舵角センサを採用する。このため、特にセンサの追加装備などを行うことなしに、進行方向に関する推定を実行することが可能となる。
【0033】
なお、進行方向推定手段としては、操舵角センサの他に、方向指示器を用いることもできる。ドライバが方向指示器を左右の何れかに操作した場合には、当該方向指示器で指示された方向を、進行方向であると推定することができる。これによって、予め上記のような駆動力の配分量を設定することとしてもよい。
【発明の効果】
【0040】
上記の各態様では、四輪駆動車が最大傾斜線方向に対して交差する方向を向いていても、車輪のスリップを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の第1実施形態に係る四輪駆動車1の概略構成を示す模式図である。
図2】四輪駆動車1における制御に係る構成を示す模式ブロック図である。
図3】四輪駆動車1のコントロールユニット10が実行する制御を示すフローチャートである。
図4】傾斜路RSSLに対する四輪駆動車1a〜1eの状態を示す模式図である。
図5図4における各四輪駆動車1a〜1eでの前後G値及び横G値を示す特性図であって、(a)は四輪駆動車1a、(b)は四輪駆動車1b、(c)は四輪駆動車1c、(d)は四輪駆動車1d、(e)は四輪駆動車1eの、各々における前後G値及び横G値を示す。
図6】(a)は、図4における四輪駆動車1aの状態で検出されるGを示し、(b)は、図4における四輪駆動車1cの状態で検出されるGを示す。
図7】(a)〜(c)は、四輪駆動車1がブレーキをかけた際の状態を順に表す模式図であり、(d)は、制動中に四輪駆動車1にかかるGを示し、(e)は、停止直後に四輪駆動車1にかかるGを示す。
図8】旋回中の四輪駆動車1にかかるGを示す模式図である。
図9】四輪駆動車1が、最大傾斜線方向DirFLに対し直交する向きに停車している状態から登坂方向にステアリングを切って発進する様子を示す模式図である。
図10】四輪駆動車1が、最大傾斜線方向DirFLに対し直交する向きに停車している状態から降坂方向にステアリングを切って発進する様子を示す模式図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る四輪駆動車2の概略構成を示す模式図である。
図12】四輪駆動車2における制御に係る構成を示す模式ブロック図である。
図13】本発明の第3実施形態に係る四輪駆動車3の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一態様であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0043】
[第1実施形態]
1.四輪駆動車1の概略構成
本発明の第1実施形態に係る四輪駆動車1の概略構成について、図1を用い説明する。なお、図1は、四輪駆動車1を模式的に表す模式図であって、各機構の配置レイアウトやそれぞれのサイズなどに関しては、図1に示したレイアウト及びサイズに限定されるものではない。
【0044】
図1に示すように、四輪駆動車1のエンジン11が配置されている。エンジン11は、例えば、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジンである。エンジン11の駆動力の出力側には自動変速機12、及びフロントデファレンシャルギヤ13が順に接続されている。
【0045】
エンジン11で生成された駆動力は、自動変速機12、フロントデファレンシャルギヤ13を介して、左フロントドライブシャフト14L及び右フロントドライブシャフト14Rに伝達され、左前輪15L及び右前輪15Rに伝達される。
【0046】
なお、本実施形態に係る四輪駆動車1は、FF車(フロントエンジン・フロントドライブ車)をベースとする四輪駆動車であり、前輪15L,15Rが主駆動輪である。よって、平坦路など通常の走行時などには、前輪15L,15Rに殆どの駆動力が配分される。
【0047】
また、四輪駆動車1には、エンジン11で生成された駆動力の一部をプロペラシャフト17へと分割する動力分割機構(PTO:Power Take−Off)16を備える。プロペラシャフト17の後端部には、駆動力配分手段である電子制御4WDカップリング18及びリヤデファレンシャルギヤ19を介して左リヤドライブシャフト20L及び右リヤドライブシャフト20Rに接続されている。左リヤドライブシャフト20Lの軸端には左後輪21Lが取り付けられ、右リヤドライブシャフト20Rの軸端には右後輪21Rが取り付けられている。
【0048】
上述のように、本実施形態に係る四輪駆動車1は、FF車(フロントエンジン・フロントドライブ車)をベースとする四輪駆動車であり、後輪21L,21Rが従駆動輪である。
【0049】
動力分割機構16で分割された駆動力の一部は、プロペラシャフト17、電子制御4WDカップリング18、リヤデファレンシャルギヤ19などを介して左リヤドライブシャフト20L及び右リヤドライブシャフト20Rに伝達され、左後輪21L及び右後輪21Rに伝達可能となっている。
【0050】
本実施形態に係る四輪駆動車1では、電子制御4WDカップリング18で駆動力の配分量の可変が自在となっており、路面状況等に応じて、前輪:後輪=100:0から前後輪直結状態(概ね、前輪:後輪=50:50)までのトルク配分の変更が自在となっている。
【0051】
2.四輪駆動車1における制御系統構成
本実施形態に係る四輪駆動車1の制御系統構成について、図2を用い説明する。
【0052】
図2に示すように、四輪駆動車1には、エンジン11、自動変速機12、及び電子制御4WDカップリング18などの制御を実行するコントロールユニット10を備える。
【0053】
また、四輪駆動車1には、アクセル開度センサ22、ブレーキ踏込量センサ23、車輪速センサ24、操舵角センサ25、前後Gセンサ26、及び横Gセンサ27なども備えている。アクセル開度センサ22からは、コントロールユニット10に対して、アクセル開度に関する検出信号が入力され、同様に、ブレーキ踏込量センサ23からはブレーキ踏込量に関する検出信号、車輪速センサ24からは車輪速に関する検出信号、操舵角センサ25からは操舵角に関する検出信号が、コントロールユニット10に対してそれぞれ入力される。
【0054】
また、前後Gセンサ26からは、四輪駆動車1における前後G値がコントロールユニット10に入力され、横Gセンサ27からは、四輪駆動車1における横G値がコントロールユニット10に入力される。
【0055】
3.コントロールユニット10が実行する制御
四輪駆動車1におけるコントロールユニット10が実行する制御について、図3を用い説明する。
【0056】
先ず、コントロールユニット10は、上述のような各種センサ信号の読み込みを行う(ステップS1)。
【0057】
次に、コントロールユニット10は、読込んだ各種センサ信号から、四輪駆動車1の車速が所定値未満であるか否か、換言すると、四輪駆動車1が実質的に停車状態であるか否かを判断する(ステップS2)。コントロールユニット10は、車速が所定値未満である、と判断した場合には(ステップS2:Yes)、続いて、車速が所定値未満となった時点から所定期間が経過したか否かを判断する(ステップS3)。これは、ブレーキをかけて制動した場合には、停車直後では制動に起因するG(加速度)が車両にかかっており、以下の制御でのノイズとなる成分を排除するためである。
【0058】
なお、ステップS3における所定期間とは、例えば、0.1sec.〜0.9sec.程度の期間である。
【0059】
一方、ステップS2において、車速が所定値未満とは判断されなかった場合、即ち、四輪駆動車1が実質的に走行中であると判断された場合には(ステップS2:No)、前後Gセンサ26からの前後G値を補正する第1補正を実行するとともに(ステップS4)、及び横Gセンサ27からの横G値を補正する第2補正を実行する(ステップS5)。これらの補正は、四輪駆動車1の走行中には、加減速などで前後Gがかかるとともに、旋回などで横Gもかかる。このため、以下の制御でのノイズとなる成分を排除するためである。
【0060】
次に、コントロールユニット10は、読込んだ横G値が所定値以上であるか否かを判断する(ステップS6)。コントロールユニット10は、横G値が所定値以上であると判断した場合には(ステップS6:Yes)、続いて、読込んだ前後G値が所定値以上であるか否かを判断する(ステップS7)。
【0061】
一方、ステップS6において、横G値が所定値未満であると判断した場合には(ステップS6:No)、前後G値から路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向に対する四輪駆動車1の向きを設定する(ステップS8)。即ち、横G値が所定値未満である場合には、四輪駆動車1は、傾斜路において、最大傾斜線方向に沿った方向(坂上または坂下の方向)に向いていると考えられる。よって、この場合には、横G値を考慮せず、前後G値だけで路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向に対する四輪駆動車1の向きを設定することが可能となる。
【0062】
ステップS7において、前後G値が所定値以上であると判断した場合には(ステップS7:Yes)、横G値と前後G値との合成G値を設定し(ステップS9)、当該合成G値から路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向に対する四輪駆動車1の向きを設定する(ステップS10)。これにより、四輪駆動車1が最大傾斜線方向に対して交差する方向に向いていた場合にあっても、正確な路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向に対する四輪駆動車1の向きを設定することが可能となる。
【0063】
一方、ステップS7において、前後G値が所定値未満であると判断した場合には(ステップS7:No)、横G値から路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向に対する四輪駆動車1の向きを設定する(ステップS11)。具体的に、ステップS7において、前後G値が所定値未満である場合には、四輪駆動車1は、最大傾斜線方向に対して略直交する方向を向いていることになる。この場合には、前後G値は殆ど検出されないので、横G値だけで路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向に対する四輪駆動車1の向きを設定することが可能となる。
【0064】
次に、路面勾配値が設定された後において(ステップS8、S10、S11)、操舵角センサ25からの入力信号に基づき、操舵角が所定値以上であるか否かの判断を行う(ステップS12)。
【0065】
ステップS12において、操舵角が所定値以上であると判断した場合には(ステップS12:Yes)、操舵角と路面勾配値との両方に応じて、前輪15L,15R及び後輪21L,21Rへの駆動力の配分量を設定する(ステップS13)。これにより、傾斜路に四輪駆動車1が位置し、ドライバがステアリングを切っているような場合にであっても、車輪15R,15L,21R,21Lのスリップを抑制することができる。
【0066】
一方、ステップS12において、操舵角が所定値未満であると判断した場合には(ステップS12:No)、操舵角については考慮することなく、上記のように設定した路面勾配値及び四輪駆動車1の向きに応じて、前輪15L,15R及び後輪21L,21Rへの駆動力の配分量を設定する(ステップS14)。これにより、傾斜路に四輪駆動車1が位置し、ドライバがステアリングを切っていない場合にあっても、車輪15R,15L,21R,21Lのスリップを抑制することができる。
【0067】
ここで、本実施の形態に係るコントロールユニット10は、横G値及び前後G値の少なくとも一方が所定値以上であると判断した場合には(ステップS6及びステップS7の少なくとも一方がYesの場合)、横G値及び前後G値がともに所定値未満である場合(平坦路上に四輪駆動車1が位置する場合)に比べて、前輪15L,15Rへの駆動力の配分量と後輪21L,21Rへの駆動力の配分量との差が小さくなるように、駆動力の配分量を設定する。
【0068】
4.四輪駆動車1の向きと前後G値及び横G値
四輪駆動車1が向いている方向と、四輪駆動車1における前後Gセンサ26で検出される前後G値、及び横Gセンサ27で検出される横G値との関係について、図4図6を用い説明する。
【0069】
図4に示すように、勾配値がθの傾斜路RSSLに、5方向Dir1a〜Dir1eを向く四輪駆動車1a〜1eを想定し、各々について、前後G値と横G値とについて説明する。
【0070】
4−1.四輪駆動車1a
図4に示すように、四輪駆動車1aは、方向Dir1aが最大傾斜線方向DirFLに沿い、坂上の方向を向いている。この状態では、図5(a)及び図6(a)に示すように、前後G値だけが検出され、横G値については検出されない。
【0071】
この方向を向いた四輪駆動車1aにおいては、前後G値から路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向DirFLに対する四輪駆動車1aの向きを設定することとなる(図3のステップS8)。
【0072】
4−2.四輪駆動車1b
図4に示すように、四輪駆動車1bは、方向Dir1bが最大傾斜線方向DirFLに対して交差し、坂の斜め上を向いた状態にある。この状態では、図5(b)に示すように、四輪駆動車1bに対しては、後ろ向きのGと右向きのGとがかかる。
【0073】
この方向を向いた四輪駆動車1bにおいては、前後G値と横G値との合成G値を設定し(図3のステップS9)、当該合成G値から路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向DirFLに対する四輪駆動車1bの向きを設定することとなる(図3のステップS10)。
【0074】
4−3.四輪駆動車1c
図4に示すように、四輪駆動車1cは、方向Dir1cが最大傾斜線方向DirFLに対して直交する状態にある。この状態では、図5(c)及び図6(b)に示すように、右向きのG(横G値)だけが検出され、前後G値については検出されない。
【0075】
この方向を向いた四輪駆動車1cにおいては、横G値から路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向DirFLに対する四輪駆動車1cの向きを設定することとなる(図3のステップS11)。
【0076】
4−4.四輪駆動車1d
図4に示すように、四輪駆動車1dは、方向Dir1dが最大傾斜線方向DirFLに対して交差し、坂の斜め下を向いた状態にある。この状態では、図5(d)に示すように、前向きのG(前後G値)と右向きのG(横G値)とがかかる。
【0077】
この方向を向いた四輪駆動車1dにおいても、上記四輪駆動車1bと同様に、前後G値と横G値との合成G値を設定し(図3のステップS9)、当該合成G値から路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向DirFLに対する四輪駆動車1dの向きを設定することとなる(図3のステップS10)。
【0078】
4−5.四輪駆動車1e
図4に示すように、四輪駆動車1eは、方向Dir1eが最大傾斜線方向DirFLに沿い、坂下の方向を向いている。この状態では、図5(e)に示すように、前向きのG(前後G値)だけが検出され、横G値については検出されない。
【0079】
この方向を向いた四輪駆動車1eにおいても、上記四輪駆動車1aと同様に、前後G値から路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向DirFLに対する四輪駆動車1eの向きを設定することとなる(図3のステップS8)。
【0080】
なお、図4及び図5では、一例として、5つの配置形態(四輪駆動車1a〜1e)と、前後G値及び横G値との関係について図示したが、図示した形態以外の種々の配置形態についても、同様に路面勾配値の設定が可能である。
【0081】
5.四輪駆動車1の動きと前後G値及び横G値
5−1.制動時
制動時における四輪駆動車1にかかる前後G値について、図7を用い説明する。
【0082】
図7(a)に示すように、四輪駆動車1が定速(V=V)で走行しているときには、前後G値については殆ど検出されないが、ドライバによるアクセル開度の変更に伴って前後G値が検出される場合もある。
【0083】
なお、横G値については、四輪駆動車1がカーブを走行中などには検出される場合がある。
【0084】
このように車両が例えば走行中などに検出される前後G値及び横G値については、補正を行う対象となる(図3のステップS4,S5)。
【0085】
次に、図7(b)に示すように、ドライバがブレーキを踏み込むと、速度が低下してゆき(V=V)、図7(c)に示す停車状態となる(V=0)。
【0086】
図7(d)は、図7(b)に示す制動中に、四輪駆動車1にかかる前後G値を模式的に表している。また、図7(e)には、図7(c)に示す停車直後(例えば、停車から0.1sec.〜0.9sec.の間)に、四輪駆動車1にかかっている前後G値を表している。
【0087】
図7(e)に示すように、停車直後においては、前後G値がかかっている期間がある。このため、コントロールユニット10が実行する制御では、車速が所定値未満で実質的に停車状態となった場合にも(図3のステップS2)、所定期間の経過を待つこととしている(図3のステップS3)。これにより、図7(e)に示すような停車直後での前後G値の影響を除去することが可能となる。
【0088】
5−2.旋回走行時
旋回走行中の四輪駆動車1にかかる横G値について、図8を用い説明する。
【0089】
図8に示すように、四輪駆動車1が速度Vでカーブを走行しているときには、矢印で示すように外向きの横G値がかかる。この横G値は、カーブの曲率や四輪駆動車1の速度V、さらには車輪15L.15Rの滑りなどに起因して刻々と変化する場合がある。
【0090】
本実施形態に係るコントロールユニット10は、その制御において、操舵角が所定値以上である場合に(図3のステップS12:Yes)、路面勾配値に加えて操舵角も考慮して駆動力の配分量を設定することとしている。このため、四輪駆動車1では、路面の状況(例えば、路面のμ)に応じて、最適な駆動力の配分が可能となり、車輪15L,15R,21L,21Rのスリップを抑制することができる。
【0091】
なお、四輪駆動車1がカーブを走行中(旋回走行中)の場合についても、上記同様に、前後G値及び横G値の補正がなされる(図3のステップS4,S5)。これにより、正確な路面勾配値及び四輪駆動車1の向きの設定が可能となる。
【0092】
5−3.傾斜路での発進(1)
四輪駆動車1が傾斜路RSSLに停車している状態から発進する一形態について、図9を用い説明する。
【0093】
図9に示すように、四輪駆動車1は、最大傾斜線方向DirFLに対して略直交する向きに停車している。図4に示す四輪駆動車1cと同じ状態である。
【0094】
上述のように、最大傾斜線方向DirFLに対して略直交する向きに停車している四輪駆動車1には、前後Gは殆どかからず、横Gだけがかかった状態にある(図3のステップS6:Yes、ステップS7:No)。よって、この状態では、コントロールユニット10は、横G値から路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向DirFLに対する四輪駆動車1の向きを設定することになる。
【0095】
また、図9に示すように、本形態では、停車中あるいは発進直後にステアリングが切られ、前輪15L,15Rが登坂方向を向いている。即ち、操舵角が所定値以上の状態にある(図3のステップS12:Yes)。
【0096】
以上のような状態の四輪駆動車1の場合には、コントロールユニット10は、操舵角と、横G値から設定された路面勾配値とに応じて、前輪15L,15Rへの駆動力の配分量と後輪21L,21Rへの駆動力の配分量との差が小さくなるように、駆動力の配分量を設定する。そして、四輪駆動車1は、車輪15L,15R,21L,21Rのスリップを生じることなく、走行ラインLTRに沿って登坂してゆく。
【0097】
5−4.傾斜路での発進(2)
四輪駆動車1が傾斜路RSSLに停車している状態から発進する他の形態について、図10を用い説明する。
【0098】
図10に示すように、四輪駆動車1は、最大傾斜線方向DirFLに対して略直交する向きに停車している。図4に示す四輪駆動車1cと同じ状態である。
【0099】
本形態においても、最大傾斜線方向DirFLに対して略直交する向きに停車している四輪駆動車1には、前後Gは殆どかからず、横Gだけがかかった状態にある(図3のステップS6:Yes、ステップS7:No)。よって、この状態では、コントロールユニット10は、横G値から路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向DirFLに対する四輪駆動車1の向きを設定することになる。
【0100】
図10に示すように、本形態に係る四輪駆動車1では、停車中あるいは発進直後に図9とは逆の方向にステアリングが切られ、前輪15L,15Rが降坂方向を向いている。この場合においても、操舵角が所定値以上の状態にあることになる(図3のステップS12:Yes)。
【0101】
以上のような状態の四輪駆動車1の場合にも、コントロールユニット10は、操舵角と、横G値から設定された路面勾配値とに応じて、前輪15L,15Rへの駆動力の配分量と後輪21L,21Rへの駆動力の配分量との差が小さくなるように、駆動力の配分量を設定する。そして、四輪駆動車1は、車輪15L,15R,21L,21Rのスリップを生じることなく、走行ラインLTRに沿って降坂してゆく。
【0102】
6.効果
本実施形態に係る四輪駆動車1のコントロールユニット10では、四輪駆動車1が傾斜路RSSLにおける最大傾斜線方向DirFLに対して交差する方向を向いている場合に(図4の四輪駆動車1b〜1d)、四輪駆動車1が平坦路上に位置する場合に比べて、前輪15L,15Rへの駆動力の配分量と後輪21L,21Rへの駆動力の配分量との差が小さくなるように、駆動力の配分量を設定する。このため、四輪駆動車1が、傾斜路RSSL上において、最大傾斜線方向DirFLに対して交差する方向を向いていても、車輪のスリップを抑制することができる。
【0103】
従って、本実施形態に係る四輪駆動車1のコントロールユニット10は、四輪駆動車1が最大傾斜線方向DirFLに対して交差する方向を向いていても、車輪のスリップを確実に抑制することができ、安定した発進及び走行が可能となる。
【0104】
なお、四輪駆動車1に装備される前後Gセンサ26及び横Gセンサ27については、単数であってもよいし、複数であってもよい。前後Gセンサ26及び横Gセンサ27をそれぞれ複数装備する場合には、コントロールユニット10は、それらの出力信号の平均値を用いてもよいし、多数決判断を実行することとしてもよい。
【0105】
本実施形態に係る四輪駆動車1のコントロールユニット10は、従駆動輪である後輪21L,21Rへの駆動力の配分量設定に際して、横Gセンサ17からの横G値と、前後Gセンサ26からの前後G値との合成G値を用いることとしている。このため、四輪駆動車1が最大傾斜線方向DirFLに沿った方向(坂上方向、坂下方向)を向いていても(図4に示す四輪駆動車1a,1e)、あるいは、最大傾斜線方向DirFLに交差する方向を向いていても(図4に示す四輪駆動車1b〜1d)、正確な駆動力の配分量の設定が可能である。
【0106】
従って、四輪駆動車1のコントロールユニット10では、傾斜路RSSL上において、四輪駆動車1が何れの方向を向いていても、四輪駆動車1の発進時及び走行時における車輪15L.15R,21L,21Rのスリップを抑制することができる。
【0107】
本実施形態に係る四輪駆動車1のコントロールユニット10は、図4における四輪駆動車1b,1dのような方向を向いている場合に、前後G値と横G値とから設定した合成G値に基づき、傾斜路RSSLにおける路面勾配値を設定するとともに、最大傾斜線方向DirFLに対する四輪駆動車1の向きを設定し、その上で駆動力の配分量を設定することとしている。よって、四輪駆動車1のコントロールユニット10では、傾斜路RSSL上において、四輪駆動車1が何れの方向を向いていても、四輪駆動車1の発進時及び走行時における車輪15L,15R,21L,21Rのスリップを抑制することができる。
【0108】
四輪駆動車1の走行中には、当該走行に伴って前後Gがかかる。本実施形態に係る四輪駆動車1のコントロールユニット10では、走行に伴って前後Gがかかった場合にあっても、図3のステップS4のように、前後G値の補正を実行する。よって、路面の勾配に起因する前後G値だけを抽出することができ、路面勾配に起因する車輪15L,15R,21L,21Rのスリップを効果的に抑制するのに有効である。同様に、図3のステップS5のように、横G値の補正も行うので、路面の勾配に起因する横G値だけを抽出することができ、路面勾配に起因する車輪15L,15R,21L,21Rのスリップを効果的に抑制するのに有効である。
【0109】
本実施形態に係る四輪駆動車1のコントロールユニット10では、操舵角から進行方向に関する推定を行い、当該推定値に基づき、前輪15L,15Rへの駆動力の配分量と後輪21L,21Rへの駆動力の配分量との差が小さくなるように、駆動力の配分量を予め設定する。このため、図9及び図10に示すように、最大傾斜線方向DirFLに対して交差する方向に停車していた四輪駆動車1が発進直後に登坂あるいは降坂する場合にあっても、予め従駆動輪である後輪15L,15Rへの駆動力の配分量が設定されているので、スリップを確実に抑制することができる。
【0110】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る四輪駆動車2の構成について、図11及び図12を用い説明する。
【0111】
上記第1実施形態に係る四輪駆動車1は、プロペラシャフト17を介して、エンジン11からの駆動力を後輪21L,21Rにも配分する構成を採用した。
【0112】
これに対して、図11に示すように、本実施形態に係る四輪駆動車2では、エンジン11の駆動力は前輪15L,15Rにのみ伝達される。そして、四輪駆動車2では、後輪21L,21Rの駆動源としてモータ31を備える。
【0113】
具体的には、四輪駆動車2において、エンジン11はフロントに配置され、自動変速機12及びデファレンシャルギヤ13を介して、左フロントドライブシャフト14L及び右フロントドライブシャフト14Rに駆動力が伝達されるようになっている。伝達された駆動力により、左前輪15L及び右前輪15Rが駆動される。
【0114】
一方、モータ31は、四輪駆動車2のリヤ部分に配置され、クラッチ32、減速ギヤユニット33及びリヤデファレンシャルギヤ19を介して、左リヤドライブシャフト20L及び右リヤドライブシャフト20Rに駆動力が伝達されるようになっている。伝達された駆動力により、左後輪21L及び右後輪21Rが駆動される。
【0115】
なお、モータ31で生成された駆動力は、クラッチ32が締結状態にあるときに後輪21L,21Rへと伝達され、解放状態にあるときには伝達されない。
【0116】
図12に示すように、四輪駆動車2のコントロールユニット30には、上記第1実施形態と同様に、アクセル開度センサ22、ブレーキ踏込量センサ23、車輪速センサ24、操舵角センサ25、前後Gセンサ26、横Gセンサ27からの各種検出信号が入力される。
【0117】
なお、図12では図示を省略しているが、モータ31の回転数をモニタするためのモータ回転数センサも装備されており、モータ回転数に関する検出信号もコントロールユニット30に入力されるようになっている。
【0118】
また、図示を省略しているが、四輪駆動車2には、モータ31に接続され、モータ31の回転数制御のためのインバータ回路ユニットも装備されている。
【0119】
コントロールユニット30は、上記のような各種検出信号に基づき、エンジン11、自動変速機12、モータ31、及びクラッチ32に対して制御指令を送出する。
【0120】
コントロールユニット30は、上記第1実施形態に係るコントロールユニット10が実行する制御フロー(図3)と同様のフローに沿って、前輪15L,15Rへの駆動力の配分量と後輪21L,21Rへの駆動力の配分量とを設定する(図3のステップS13,S14)。
【0121】
本実施形態に係る四輪駆動車2では、後輪21L,21Rがモータ31の駆動力で駆動される構成となっている。このため、コントロールユニット30は、後輪21L,21Rに対して駆動力の配分が必要であると判断した場合には、モータ31を所定の回転数で回転させ、クラッチ32を締結状態とする。
【0122】
一方、高速走行時などに前輪15L,15Rへの駆動力伝達だけでよい場合には、コントロールユニット30は、モータ31の回転を停止し、クラッチ32を解放状態とする。即ち、四輪駆動車2では、ドライ路面における高速走行時などでは、主駆動輪である前輪15L,15Rだけを駆動し、路面のμなどに応じて、必要な場合に、従駆動輪である後輪21L,21Rも駆動する。換言すると、本実施形態においても、ウェット路や凍結路などの低μ路などに位置している場合には、前輪15L,15Rへの駆動力の配分量と後輪21L,21Rへの駆動力の配分量との差が小さくなるように、駆動力の配分量が設定される。
【0123】
ここで、四輪駆動車2が低μ路などで後退するような場合には、後輪21L,21Rも駆動する必要が生じる場合がある。このような場合には、コントロールユニット30は、モータ31への供給電流の向きを逆転させて、モータ31の回転方向の切り換えを行う。
【0124】
本実施形態に係る四輪駆動車2のコントロールユニット30についても、上記第1実施形態と同様に、図3に示すフローに沿って駆動力に配分量を設定する。このため、四輪駆動車2が傾斜路RSSLにおいてどのような方向を向いていたとしても、走行及び発進時に車輪がスリップするのを抑制することができる。
【0125】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る四輪駆動車3の構成について、図13を用い説明する。
【0126】
上記第2実施形態では、前輪15L,15Rを駆動するための駆動源としてエンジン11を備え、後輪21L,21Rを駆動するための駆動源としてモータ31を備える四輪駆動車2を採用した。
【0127】
図13に示すように、本実施形態に係る四輪駆動車3では、前輪15L,15Rを駆動するための駆動源としてモータ34を備え、後輪21L,21Rを駆動するための駆動源としてモータ31を備える。
【0128】
モータ34は、四輪駆動車3のフロント部分に配置され、クラッチ35及びフロントデファレンシャルギヤ13を介して左フロントドライブシャフト14L及び右フロントドライブシャフト14Rを駆動する。
【0129】
一方、モータ31は、上記第2実施形態と同様に、四輪駆動車3のリヤ部分に配置され、クラッチ32及びデファレンシャルギヤ19を介して左リヤドライブシャフト20L及び右リヤドライブシャフト20Rを駆動する。
【0130】
本実施形態について、制御に係る構成を示す図を省略しているが、四輪駆動車3のコントロールユニットは、モータ31,34の回転、トルク調整、及び回転方向切り換えの各制御を行うとともに、クラッチ32,35の断接制御を行う。このため、四輪駆動車3では、前輪:後輪=100:0〜0:100までの範囲での制御が可能であり、より路面状況や走行シーンに応じた制御が可能となっている。よって、本実施形態に係る四輪駆動車3では、厳密な意味での「主駆動輪」及び「従駆動輪」はないが、平坦路など通常の走行時に主として駆動する駆動輪を「主駆動輪」と定義することができる。
【0131】
なお、本実施形態に係る四輪駆動車3のコントロールユニットについても、上記第1実施形態及び上記第2実施形態と同様に、図3に示すフローに沿って駆動力の配分量を設定する。換言すると、本実施形態に係るコントロールユニットも、前輪15L,15Rへの駆動力の配分量と後輪21L,21Rへの駆動力の配分量との差が小さくなるように、駆動力の配分量を設定する。よって、本実施形態に係る四輪駆動車3が傾斜路RSSLにおいてどのような方向を向いていたとしても、走行及び発進時に車輪がスリップするのを抑制することができる。
【0132】
[変形例]
上記第1実施形態では、図9及び図10を用い説明したように、車両が進もうとしている方向について、操舵角センサによる操舵角に関する検出信号を用いることとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ドライバによる方向指示器への入力情報によることとしてもよい。また、ナビゲーションシステムからの情報を用いることとしてもよい。
【0133】
また、本発明では、駆動力の配分量の設定に当たり、必ずしも操舵角を考慮する必要はなく、前後G値及び横G値から設定される路面勾配値から設定を行うこととしてもよい。
【0134】
また、上記第1実施形態から上記第3実施形態では、傾斜路RSSLにおける四輪駆動車1,2,3の向きや操舵角に応じて、駆動力の配分量を設定することとした。本発明は、これに加えて、傾斜路RSSLにおける路面の摩擦係数(μ)などを駆動力の配分量を設定する際の要件とすることもできる。路面の摩擦係数を推定する手段としては、例えば、ワイパーの稼働状況、外気温、ステアリングトルク・パワーステアリングモータ電流などを用いることができる。ワイパーが稼働している状況であれば、雨が降っており、路面の摩擦抵抗が低くなっている(低μ路である)と推定される。
【0135】
外気温については、0℃以下であれば路面の凍結により摩擦係数が低くなっていると推定される。そして、ステアリングトルク・パワーステアリングモータ電流については、入力されるステアリングトルクに対し、パワーステアリングモータ電流が低い場合には、アシスト量が少なく、路面の摩擦抵抗が低くなっていると推定される。
【0136】
上記第2実施形態では、駆動源としてエンジン11とモータ31とを備える四輪駆動車2を採用し、上記第3実施形態では、駆動源として2つのモータ31,34を備える四輪駆動車3を採用した。本発明は、これ以外にも、4つのインホイールモータを備える四輪駆動車に対して適用しても、上記同様の効果を得ることができる。
【0137】
また、上記第1実施形態から上記第3実施形態では、四輪駆動車1,2,3における駆動力の配分量の設定方法について示した。しかし、前後G値及び横G値から路面勾配値を設定し、最大傾斜線方向に対する車両の向きを設定する手段については、四輪駆動車に限らず、広範な車両への応用が可能である。例えば、FF車やFR車、さらにはRR車(リヤエンジン・リヤドライブ車)やMR車(ミッドエンジン・リヤドライブ車)などの二輪駆動車においても、設定した路面勾配値を基に、左右の車輪への駆動力の配分量調整を行ったり、サスペンションの減衰力の調整を行ったりすることなども可能である。
【0138】
また、前後G値及び横G値から設定された路面勾配値については、トラクションコントロールシステム(TCS)や横滑る防止装置(ECS)に入力し、それらの制御で用いることも可能である。
【0139】
また、上記第1実施形態及び上記第2実施形態では、所謂、FFベースの四輪駆動車1,2を一例として採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではなく、FR車ベースの四輪駆動車や、MR車ベースの四輪駆動車などに適用することも可能である。これらの四輪駆動車では、後輪を主駆動輪とし、前輪を従駆動輪としてもよい。このような後輪を主駆動輪とする四輪駆動車では、平坦路上を走行の際などでは、後輪だけに駆動力を配分して走行し、低μ路などを走行の際などでは、前輪への駆動力の配分量と後輪への駆動力の配分量との差が小さくなるように、前輪への駆動力配分を増加させる駆動力の配分量の設定を行うことができる。
【0140】
また、上記第2実施形態では、1つのコントロールユニット30がエンジン11及び自動変速機12と、モータ31との制御を行うこととしたが、これらを2つの部分に分けるとともに、相互に連携した制御を実行することとしてもよい。上記第3実施形態におけるコントロールユニットについても同様である。
【0141】
また、図3のステップS12では、操舵角が所定値以上であるか否かを判断し、操舵角が所定値以上の場合には、操舵角と路面勾配値とに応じて駆動力の配分量を設定することとした。ここで、操舵角が大きい場合には、所謂、タイトコーナーブレーキング現象が発生することが考えられる。このため、タイトコーナーブレーキング現象の発生を抑制するために、従駆動輪への駆動力の配分量を抑えることも可能である。
【0142】
また、図2などでは、前後Gセンサ26と横Gセンサ27とを別々のデバイスとして表したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、1つの2次元Gセンサを用いることで、前後Gと横Gとを検出可能となる。
【0143】
また、直前のある一定期間における路面とタイヤとの摩擦抵抗に関する情報をメモリなどに記憶しておき、当該情報を駆動力の配分量を設定する際に用いることもできる。これにより、タイヤのグリップ力についての要因も考慮した制御を実行することが可能となる。
【符号の説明】
【0144】
1,2,3 四輪駆動車
10,30 コントロールユニット(制御装置)
11 エンジン(駆動源)
12 自動変速機
15L,15R 前輪(主駆動輪)
18 電子制御4WDカップリング(駆動力配分手段)
21L,21R 後輪(従駆動輪)
25 操舵角センサ
26 前後Gセンサ
27 横Gセンサ
31,34 モータ(駆動源)
32,35 クラッチ
33,36 減速ギヤユニット
図1
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