【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の脱硫方法の特徴構成は、硫黄成分を含有する燃料ガスに水蒸気を添加し、水蒸気の存在下で燃料ガスから水素ガスを生成する改質反応を行う水蒸気改質触媒と、硫黄化合物を含有する燃料ガスから硫黄化合物を除去する水添脱硫剤とを順に
200℃〜400℃にて通過させて、燃料ガス中の硫黄成分を除去する脱硫方法
であって、
前記水添脱硫剤が、ニッケルを含浸担持した酸化銅および酸化亜鉛を主成分とするニッケル系脱硫剤であり、
前記水蒸気改質触媒が、白金およびイリジウムを主成分とする触媒金属成分を、無機酸化物担体に担持してある耐硫黄水蒸気改質触媒である点にある。
【0012】
上記構成によると、燃料ガスは水蒸気と混合した状態で、まず
白金およびイリジウムを主成分とする触媒金属成分を、無機酸化物担体に担持してある耐硫黄水蒸気改質触媒からなる水蒸気改質触媒と接触する。水蒸気改質触媒上では、燃料ガスの改質反応が起きるので、燃料ガスの一部が水素に変換され、燃料ガスが水蒸気と水素とを含有するものになる。このように変換された燃料ガスを、
ニッケルを含浸担持した酸化銅および酸化亜鉛を主成分とするニッケル系脱硫剤からなり、硫黄化合物を除去し且つ改質反応に対する活性を有する水添脱硫剤に流通させると、燃料ガス中に含まれる硫黄成分が水添脱硫され、燃料ガス中に含まれる硫黄成分は、精度よく除去される。
【0013】
水添脱硫剤により水添脱硫が行われる際、燃料ガス中には、水蒸気改質触媒によって生じた充分な量の水素が含有されているので、さらに、水添脱硫剤の寿命を向上する効果を高めることができる。
【0014】
つまり、別途水素ガスを供給する設備を設けることなく、水蒸気改質触媒により、水添脱硫剤に安定した水素供給が行えるようになり、簡便な流通経路の追加により、長期的に安定して水添脱硫剤を活性高く利用できるようになった。したがって、簡単な構成の変更により、水添脱硫剤の吸着容量を高め、寿命を長くすることができ、脱硫装置に充填する水添脱硫剤の使用量を減少させる、もしくは、水添脱硫剤を所定容量に充填した脱硫装置を長期にわたって使用できる、もしくは、脱硫装置内に充填した水添脱硫剤の所定期間内における交換回数を減少させることができるなど、水添脱硫剤の使用効率の向上を図ることができた。
【0015】
なお、燃料ガスが都市ガスである場合には、メタンを主成分として、付臭剤を含むので、付臭剤としてのジメチルスルファイド、テトラヒドロチオフェンおよびt−ブチルメルカプタンを対象として脱硫を行えばよく、汎用的な水添脱硫剤で上記脱硫反応を生起させることができる。
【0016】
また、水添脱硫剤が使用されるシステム(例えば燃料電池発電システム)の水素リサイクル配管を不要にすることができる等、脱硫方法を実施するうえでのコスト削減、装置構成のコンパクト化にも寄与するとともに、簡単な構成の変更で済むことから、種々多様な系に適用できる。
【0017】
その結果、硫黄成分を精度よく除去した燃料ガスを長期にわたって安定して生成することができるので、燃料電池の燃料ガスを脱硫する用途などで、品質の高い燃料ガスを供給することができる。
【0018】
本発明の脱硫装置の特徴構成は、硫黄成分を含有する燃料ガスに水蒸気を添加して供給する供給部と、硫黄化合物を含有する燃料ガスから硫黄化合物を除去する水添脱硫剤を設けた脱硫部とを備えた脱硫装置であって、
前記水添脱硫剤の燃料ガス流通方向における上流側に、水蒸気の存在下で前記供給部により供給される燃料ガスから水素ガスを生成する改質反応を行う水蒸気改質触媒を設けた水素生成部を備え
、
前記水添脱硫剤が、ニッケルを含浸担持した酸化銅および酸化亜鉛を主成分とするニッケル系脱硫剤であり、
前記水蒸気改質触媒が、白金およびイリジウムを主成分とする触媒金属成分を、無機酸化物担体に担持してある耐硫黄水蒸気改質触媒であり、
前記水素生成部及び前記脱硫部を200℃〜400℃に加熱する加熱手段を備えた点にある。
【0019】
上記構成によると、供給部において硫黄成分を含有する燃料ガスに水蒸気を添加して、当該燃料ガスを脱硫部の
ニッケルを含浸担持した酸化銅および酸化亜鉛を主成分とするニッケル系脱硫剤からなる水添脱硫剤に供給する。ここで、水添脱硫剤の燃料ガス流通方向における上流側に水素生成部を設けてあるから、燃料ガスは水蒸気と混合した状態で、まず
白金およびイリジウムを主成分とする触媒金属成分を、無機酸化物担体に担持してある耐硫黄水蒸気改質触媒からなる水蒸気改質触媒と接触する。水蒸気改質触媒上では、燃料ガスの改質反応が起きるので、燃料ガスの一部が水素に変換され、燃料ガスが水蒸気と水素とを含有するものになる。このように変換された燃料ガスが、脱硫部に供給されると、脱硫部に設けられた水添脱硫剤により、燃料ガス中に含まれる硫黄成分が水添脱硫され、燃料ガス中に含まれる硫黄成分は、精度よく除去される。
【0020】
脱硫部において水添脱硫が行われる際、燃料ガス中には、水素生成部において生じた充分な量の水素が含有されているので、さらに、水添脱硫剤の寿命を向上する効果を高めることができる。
【0021】
つまり、別途水素ガスを供給する設備を設けることなく、水素生成部により脱硫部に安定した水素供給が行えるようになり、リサイクル路のような複雑な経路が不要で、簡便な装置構成でありながら、長期的に安定して水添脱硫剤を活性高く利用できるようになった。したがって、簡単な構成の変更により、水添脱硫剤の吸着容量を高め、寿命を長くすることができ、脱硫装置に充填する水添脱硫剤の使用量を減少させる、もしくは、水添脱硫剤を所定容量に充填した脱硫装置を長期にわたって使用できる、もしくは、脱硫装置内に充填した水添脱硫剤の所定期間内における交換回数を減少させることができるなど、水添脱硫剤の使用効率の向上を図ることができた。
【0022】
また、水添脱硫剤が使用されるシステム(例えば燃料電池発電システム)の水素リサイクル配管を不要にすることができる等、脱硫装置を構成するうえでのコスト削減、装置構成のコンパクト化にも寄与するとともに、簡単な構成の変更で済むことから、種々多様な系に適用できる。
【0023】
その結果、硫黄成分を精度よく除去した燃料ガスを長期にわたって安定して生成することができるので、燃料電池の燃料ガスを脱硫する用途などで、品質の高い燃料ガスを供給することができる。
【0025】
脱硫装置としては、脱硫部に流通されるガスのうち燃料ガス中の硫黄成分を水添脱硫する反応が主であり、脱硫部の大きさは、燃料ガス供給量に応じた適切な大きさに設定することができる。これに対して水素生成部において脱硫部に供給すべき水素ガスを生成する反応は、脱硫部の水添脱硫剤を長寿命化するために要する必要最小限に抑制しておくことができる。すると、脱硫部は十分量の燃料ガスを処理できる大きさに設定する一方、それに対して供給すべき水素ガスを生成するのに必要な水素生成部の容量は、理論上、脱硫部に対して十分小容量で構わないことになる。そのため、水素生成部を脱硫部に対して小容量に形成することにより、バランスよく水素生成部による水素精製が行え、脱硫装置を必要以上に大型化することなく構成できる。
【0027】
また、ニッケル系脱硫剤は、ニッケルによる改質反応および水添分解反応と、酸化銅、酸化亜鉛による吸着反応とがバランスよく活性を発揮し、全体として高い脱硫活性を発揮するものとなる。ニッケル系脱硫剤は改質反応に対する活性を有するので、燃料ガスを改質して水素を生成し、当該水素によりニッケル系脱硫剤自身の寿命を向上する効果を発揮するので、水素生成部による脱硫部への水素供給を補助する機能も発揮する。
また、水蒸気による劣化も少なく、長期にわたって高い脱硫活性を維持できる構成となる。
【0029】
また、白金およびイリジウムを主成分とする触媒金属成分を、無機酸化物担体に担持してある水蒸気改質触媒としての耐硫黄水蒸気改質触媒は水蒸気活性が高くかつ硫黄耐久性が高いものとなる。そのため、脱硫部の上流側において未脱硫の燃料ガスを流通させる環境にあっても、長期にわたって安定に用いることができる。
また、水蒸気の存在下で燃料ガスから水素ガスを生成する改質反応を行う能力が高く、200℃〜400℃において脱硫部の水添脱硫剤を長寿命に使用するのに十分な水素を生成する能力を有している。
なお、理論に拘泥されるものではないが、これは、以下のように説明できる。
すなわち、白金とイリジウムは周期律表では隣接する金属であり、そのため非常に安定した合金を作るものと推察される。一方、白金は硫黄と化合物を作り難い性質を持ち、イリジウムは比較的高い水蒸気改質活性を持っている。したがって、特に、白金とイリジウムを無機酸化物に担持した水蒸気改質触媒は、白金とイリジウムの合金もしくは複合体中で、それぞれの金属の好ましい性質が安定して得られるために、比較的高い水蒸気改質活性を保った上で硫黄に対する高い耐久性を示すものと考えられる。
【0030】
前記無機酸化物担体がジルコニア、アルミナ、チタニアからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分とするものとすることができる。
【0031】
無機酸化物担体としては、αアルミナ、γアルミナ等のアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、およびそれらの混合物等から選ぶことができるが、中でも、αアルミナ、ジルコニアおよびチタニアは、耐熱性が高く、加熱状態で長期使用が想定される本発明の炭化水素化合物類の水蒸気改質触媒の使用条件に特に適しているといえる。
【0032】
また、後述の実施例より、ジルコニアを用いた水蒸気改質触媒は、高い活性を持つことが実験的に明らかにされており、特に好ましいと考えられる。
【0033】
また、本発明の燃料電池
発電システムの特徴構成は、前記脱硫装置と、
前記脱硫装置によって脱硫処理された燃料ガスを改質して、水素を主成分とする改質ガスを生成させる改質装置と、
前記改質装置から供給される改質ガスを燃料として用いて発電する燃料電池と、
を備えた点にある。
【0034】
つまり、上記構成によると、燃料電池発電システムの構成要素として脱硫装置を備え、脱硫装置からの燃料ガスを改質装置にて改質し、燃料電池用燃料としての水素を製造することができるから、その水素により燃料電池を動作させて、電力を発生させることができるシステムとすることができる。
【0035】
上述のように、脱硫装置では、水蒸気の存在下に脱硫反応を行うことができる。また、脱硫部には、水添脱硫剤を収容してあるから、脱硫部内部でも改質反応が起き、前記脱硫反応は水素ガスの存在下で行われることになる。さらに、脱硫装置は、水添脱硫剤の燃料ガス流通方向における上流側に、水蒸気の存在下で前記供給部により供給される燃料ガスから水素ガスを生成する改質反応を行う水蒸気改質触媒を設けた水素生成部を備えてあるから、水蒸気改質触媒上では、燃料ガスの改質反応が起きるので、燃料ガスの一部が水素に変換され、燃料ガスが水蒸気と水素とを含有するものになる。このように変換された燃料ガスが、脱硫部に供給されると、水添脱硫剤による水添脱硫反応が進行することになるから、硫黄成分は、硫化水素として水添脱硫剤に吸着され、高い脱硫性能が発揮されるとともに、水添脱硫剤の高寿命化が図れることになる。
【0036】
したがって、簡単な構成の変更により、水添脱硫剤の吸着容量を高め、寿命を長くすることができ、脱硫装置に充填する水添脱硫剤の使用量を減少させる、もしくは、水添脱硫剤を所定容量に充填した脱硫装置を長期にわたって使用できる、もしくは、脱硫装置内に充填した水添脱硫剤の所定期間内における交換回数を減少させることができるなど、水添脱硫剤の使用効率の向上を図ることができた。そのため、燃料電池発電システムとしてもメンテナンスが少なくてすむなど、安定運転等に寄与することができる。