【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための熱音響設備は、作動媒体が充填され音波が伝播する音響筒に、前記作動媒体を外部から加熱する加熱器と前記作動媒体を外部から冷却する冷却器と前記加熱器と前記冷却器との間で音波を増幅する再生器とから成る原動機を少なくとも1つ以上設けると共に、音波の振動から電力を発生させる電力発生機を設ける熱音響機関を、少なくとも1つ以上有する熱音響設備であって、その特徴構成は、
前記冷却器は、外部から供給される低温冷媒と前記音響筒の内部の前記作動媒体とを熱交換可能に構成されており、
前記音響筒で前記原動機と前記電力発生機とが備えられた部分以外で音波が共鳴する共鳴部において、外部から供給される低温冷媒を当該共鳴部の近傍に通流させて前記作動媒体と熱交換する形態で、当該共鳴部の内部の作動媒体を冷却する作動媒体冷却機構を備え、
一の熱音響機関に関し、外部から供給される低温冷媒を、前記冷却器にて前記作動媒体と熱交換させた後に、前記作動媒体冷却機構にて前記作動媒体と熱交換させる低温冷媒通流路が設けられている点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、熱音響機関の冷却器に導かれる冷熱源としての冷媒として低温の冷媒を用いているから、例えば、加熱器へコジェネレーションシステム等からの排熱を保有する熱媒を供給することで、冷却器での低温側温度と加熱器での高温側温度との温度差を十分に大きくして、再生器にて音波の振動エネルギを良好に増幅できる。
更に、上記特徴構成にあっては、共鳴部の内部の作動媒体を冷却する作動媒体冷却機構を備えると共に、当該作動媒体冷却機構に原動機の冷却器を通過した後の低温冷媒を供給する低温冷媒通流路を備えているから、音波の振動エネルギの増幅に用いられた残りの低温冷媒の冷熱を用いて、共鳴部の作動媒体を冷却することで、下記の〔式1〕の関係式に従う形態で、当該作動媒体を伝播する音波の波長を短くできる。
【0011】
【0012】
熱音響機関においては、作動媒体の物性、圧力、再生器の流路径によって決定される熱緩和時間τと角振動数ωの積ωτが0.1〜3.0程度になるときに、再生器で音波が増幅される。上記の条件を満たす振動数において、音響筒が共鳴を生じる長さである時に、熱音響機関は発振する。発振可能な周波数は上記の条件で制限されるため、音響筒を小型化する場合、波長を短くする必要がある。
そこで、本発明にあっては、音響筒の共鳴部の作動媒体を冷却することで、上記〔式1〕に従って音速Cを小さくし、音波の波長を短くすることで、筒長さを短くしているのである。
結果、音響筒の長さを短くして、全体としての小型化を図りつつ、単位体積あたりのエネルギ変換効率を高めることができる熱音響設備を提供できる。
【0013】
熱音響設備の更なる特徴構成は、
前記作動媒体冷却機構は、内部に低温冷媒を通流すると共に前記共鳴部として働く前記音響筒の外周面に、外面が密接して設けられる低温冷媒通流体から構成されている点にある。
【0014】
例えば、低温冷媒としてLNGを用いる場合、初期供給温度が−160℃程度となり、当該LNGが、空気中に配設される配管等の内部を通流する場合、その配管の外面には着霜が発生する場合がある。
上記特徴構成によれば、内部に低温冷媒を通流する低温冷媒通流体は、その外面が共鳴部として働く音響筒の外周面に密接する形態で設けられるから、当該低温冷媒通流体と音響筒の間に着霜が発生することを防止でき、低温冷媒通流体を通流する低温冷媒と音響筒内の作動媒体との熱交換を良好に行わせることができる。結果、作動媒体を適切に冷却し当該作動媒体を伝播する音波の波長を短くして、音響筒を短く構成することができる。
【0015】
熱音響設備の更なる特徴構成は、
前記低温冷媒通流体は、前記共鳴部として働く前記音響筒の回りを気密に外囲する外囲筒から構成されており、前記共鳴部として働く前記音響筒との間に低温冷媒を通流する形態で前記作動媒体を冷却する点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、低温冷媒を共鳴部として働く音響筒の外周面に直接接触させる形態で、作動媒体を冷却できるから、作動媒体の冷却効率を高めることができる。
結果、より効率良く、作動媒体を冷却して作動媒体を伝播する音波の波長を短くして、音響筒を短くできる。
【0017】
熱音響設備の更なる特徴構成は、
前記音響筒の筒軸心方向において、前記加熱器が設けられている部位の端部と、前記作動媒体冷却機構としての前記低温冷媒通流体の端部とは、当該低温冷媒通流体による冷却効果が前記加熱器へ及ぶことを抑制する冷却抑制距離だけ離間して設けられている点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、音響筒の筒軸心方向に於いて、加熱器が設けられている部位と、作動媒体冷却機構としての低温冷媒通流体の端部とは、低温冷媒通流体による冷却効果が加熱器へ及ぶことを抑制する冷却抑制距離だけ離間して設けられているから、例えば、低温冷媒の冷熱により加熱器での作動媒体の加熱の効果が低下することを抑制できる。これにより、共鳴部として働く音響筒を低温冷媒で冷却する構成を採用する場合であっても、原動機での音波の振動エネルギの増幅効果が低減することを防止できる。
【0019】
熱音響設備の更なる特徴構成は、
前記共鳴部として働く前記音響筒の内部には、前記音響筒の筒軸心方向において、前記加熱器が設けられている部位の端部と、前記作動媒体冷却機構としての前記低温冷媒通流体の端部との間で、前記再生器が設けられていない領域に、前記作動媒体の流動を抑制する流動抑制機構が設けられている点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、作動媒体の流動を抑制する流動抑制機構を、筒軸心方向において、加熱器が設けられている部位の端部と、作動媒体冷却機構としての低温冷媒通流体の端部との間で、前記再生器が設けられていない領域に設けているから、低温冷媒通流体にて冷却された作動媒体が、加熱器が設けられている部位へ移動することを抑制し、加熱器による加熱の効果が低減することを防止できる。
結果、熱源機での音波の振動エネルギの増幅効果が低減することを防止できる。
【0021】
熱音響設備の更なる特徴構成は、
前記音響筒の外径部位には、前記音響筒の筒軸心方向において、前記再生器が設けられている部分の筒外周部位に沿い、且つ前記音響筒の筒径よりも大径の外形を有する円環状の断熱部材が設けられている点にある。
【0022】
これまで説明してきた熱音響設備の冷却器には、冷媒として低温冷媒を導く構成を採用しているが、低温冷媒としてLNG(初期導入温度がー60℃程度)を用いる場合、当該構成にあっては、冷却器の周囲において外気に含まれる水蒸気が冷却され凝固して着霜する場合がある。
このように形成された霜は、冷却器の周囲にあっては、低温冷媒の冷熱が大気へ放熱することを防止する効果を発揮するため、好ましいが、加熱器の周囲にまで広がって形成されると、加熱器の温熱を奪う虞がある。
そこで、上記特徴構成にあっては、音響筒の再生器が設けられている部分の筒外周部位に沿い且つ音響筒の筒径よりも大径の外形を有する円環状の断熱部材を設けることで、冷却器の周囲に形成される霜が、加熱器の側まで広がることを防止し、加熱器の回りに霜が形成され加熱器の温熱が当該霜により奪われることを良好に防止できる。
【0023】
熱音響設備の更なる特徴構成は、
前記熱音響機関が複数設けられ、
前記低温冷媒通流路は、前記熱音響機関のすべての前記冷却器に低温冷媒を導いて前記作動媒体と熱交換させた後に、前記作動媒体冷却機構に低温冷媒を導いて前記作動媒体と熱交換させるように配設されている点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、低温冷媒通流路は、熱音響機関のすべての冷却器に低温冷媒を導いた後に、作動媒体冷却機構に低温冷媒を導くように配設されているから、まずもって、低温冷媒が保有する冷熱のうち、熱音響機関で有用な低温の低温冷媒を用いることで、冷却器での低温の作動媒体と加熱器での高温の作動媒体との温度差を十分に大きくして、熱エネルギを、音波の振動エネルギとして、効率良く取り出すことができる。
さらに、低温冷媒の保有する冷熱のうち、比較的高温の冷熱で、熱音響機関としては有用性が低い比較的高温の低温冷媒にて、作動媒体冷却機構により共鳴部として働く音響筒内に位置する作動媒体を冷却するから、熱音響機関としては有用性が低い比較的高温の低温冷媒の冷熱を有効利用して、熱音響機関の小型化を図り、省スペース化を図ることができる。
【0025】
熱音響設備の更なる特徴構成は、
一の前記熱音響機関に複数の前記原動機が設けられ、
前記低温冷媒通流路は、上流にて低温冷媒を通流する低温冷媒通流本管と、当該低温冷媒通流本管から分岐する複数の低温冷媒分岐支管とから構成され、
前記低温冷媒分岐支管の夫々は、前記原動機の前記冷却器の夫々に1対1で対応して配設されている点にある。
【0026】
上記特徴構成によれば、一の熱音響機関に複数設けられる原動機の冷却器の夫々に対し、低温冷媒分岐支管を1対1対応で配設するから、複数の冷却器の夫々に、略等しい温度で低温の低温冷媒を導くことができる。これにより、例えば、複数の加熱器の側にも略等しい温度の熱媒を導く構成を採用すれば、複数の原動機で略等しい温度差で、音波の振動エネルギを効率良く増幅できる。
【0027】
これまで説明してきた熱音響設備を備えた気化器の特徴構成は、
低温冷媒を加熱する加熱用熱交換器と、当該加熱用熱交換器にて加熱された低温冷媒を直接膨張する直膨タービンと、当該直膨タービンにて回転駆動される発電機とを備える直膨流路とを備え、
前記低温冷媒通流路は、前記低温冷媒を、前記原動機の前記冷却器と前記作動媒体冷却機構とを通過した後に、前記直膨流路へ導くように配設されている点にある。
【0028】
熱音響設備に導かれた低温冷媒は、熱音響機関の作動媒体との熱交換だけでは十分に気化しきれない場合が考えられる。
上記特徴構成によれば、熱音響機関に導かれた後の低温冷媒が保有する残りの冷熱エネルギにて、直膨タービンを回転させ、当該直膨タービンにより発電機を回転駆動して電力を得るから、低温冷媒の保有する冷熱エネルギのうち、比較的高温のエネルギまでをも良好に回収できると共に、LNGを良好に気化できる気化器を実現できる。