(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記伸縮装置を有する台車は、前記両端部に連結用の連結部をそれぞれ有し、前記伸縮装置の動作に応じて前記各連結部が前記走行方向に沿って前進又は後退することにより、前記間隔を伸縮させる、請求項1に記載の工事用運搬車両。
前記作業場所は、前記出発基地としての立坑下部に位置する発進基地に連通するトンネル坑内に、位置する構成とした、請求項1〜3のいずれか1つに記載の工事用運搬車両。
前記クレーンは、前記工事資機材を吊上げた状態で、該工事資機材を、前記立坑内で鉛直方向に搬送可能であり、且つ、該工事資機材を、前記発進基地における坑口側壁面により規制される前記軌道と平行する方向についての所定の規制範囲内で搬送可能に配置される、請求項5に記載の工事資機材の積卸し方法。
前記クレーンとして、前記工事資機材を、吊上げ可能であり、且つ、前記軌道と平行する方向に搬送可能な門型クレーンを地上に配置する、請求項6に記載の工事資機材の積卸し方法。
前記積卸し可能な位置にて、前記先頭台車の前記載置台の前記軌道と平行する方向についての中央部が前記規制範囲内に位置している、請求項6又は7に記載の工事資機材の積卸し方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本実施形態において、本発明に係る工事用運搬車両をシールドトンネル工事用運搬車両に適用する場合を一例として挙げて以下説明する。
図1及び
図2は本発明の一実施形態における工事用運搬車両100の概略構成を示す図であり、
図1は出発基地としての立坑1下部に位置する発進基地2で待機している工事用運搬車両100の側面図であり、
図2は
図1のA方向から視た工事用運搬車両100の上面図である。また、
図1は、発進基地2を含む立坑1とトンネル坑(坑道)3の部分断面図でもある。
【0015】
地下にトンネルを構築する際は、地上から鉛直下方に立坑1を構築し、この立坑1の下部領域に出発基地としての発進基地2を構築する。そして、この発進基地2から地中の水平方向に向けてトンネル坑3を構築していく。この際、トンネル坑3を構成するセグメントS(後述する
図4参照)等の搬入や、切羽周辺で発生した掘削土や、不要になった機材等の搬出用の工事用運搬車両100を走行させるために、立坑1内の発進基地2から構築途中のトンネル坑3内に、作業場所としてのトンネル坑3内に位置する切羽(掘削場所)周辺の組立場への走行用の軌道4を敷設し、次々と延設する。このように、本実施形態では、作業場所は、立坑1下部に位置する発進基地2に連通するトンネル坑3内に、位置する構成とした。
【0016】
本実施形態の工事用運搬車両100は、シールドトンネル工事用運搬車両であり、立坑1内の発進基地2から切羽周辺のセグメント等の組立場(図示せず)まで延設され、トンネル坑3内に敷設された2本のレール鋼からなる走行用の軌道4上を走行して、工事資機材を運搬するものである。工事用運搬車両100は、主にシールドトンネル工事用の資材であるセグメントSの搬入を行う。すなわち、発進基地2にてセグメントSを積込み、組立場まで走行し、荷卸しを行う。また、不要になった機材や掘削土の搬出を行う場合は、組立場にて、これらを積込んで、発進基地2にて荷卸し(排出作業)を行う。
【0017】
前記軌道4は、例えば、発進基地2においては、この発進基地2の床部をなすベース板5上に敷設され、トンネル坑3内においては、トンネル坑3の延伸方向と直交する方向にセグメントリングSL毎にそれぞれ延伸されるH鋼6(
図1参照、
図2では図示省略)上に架け渡されて敷設される。また、軌道4をなす一対のレール鋼は、トンネル坑3の中心軸心Oを通る鉛直平面を挟んで、この鉛直平面から同一距離離間して敷設されている。
また、本実施形態においては、後述するセグメント台車10Bの軌道4からの浮き上がり防止用の支持アンカー7が、発進基地2内における軌道4と平行して設けられている。支持アンカー7としては、例えば、軌道4と同様にレール鋼が用いられる。この支持アンカー7を用いた浮き上がり防止構造の詳細については、後に説明する。
【0018】
前記工事用運搬車両100は、例えば、複数のセグメント台車が連結されてなるセグメント車列10と、バッテリーロコ20とを備え、複数両編成で構成される。本実施形態においては、上記セグメント台車が2台(両)である場合を一例に挙げて以下説明する。
【0019】
具体的には、工事用運搬車両100は、
図1及び
図2に示すように、合計3台(両)で1編成をなし、組立場(切羽)側への進行方向先頭から順に、2台のセグメント台車10A,10Bと1台のバッテリーロコ20とがこの順番で、互いに連結されて構成されている。なお、発進基地2から組立場へ向けて進行するときは、一方のセグメント台車10Aを先頭にして、バッテリーロコ20により車列10を押動して走行し、組立場から発進基地2へ戻るときは、バッテリーロコ20を先頭にしてこのバッテリーロコ20により車列10を牽引して走行する。
【0020】
本実施形態において、セグメント車列10は、前述したように、2台のセグメント台車10A,10Bが連結されてなるものである。各セグメント台車10A,10Bは、セグメントS等の工事資機材の載置用の載置台11と、連結用の連結部12とをそれぞれ有する。
【0021】
前記載置台11は、略矩形状の外形を有して形成されている。また、前記載置台11の上面には、例えば、セグメントSの載置の際に、セグメントSの外周面と当接する傾斜面を有する一対の当接部13,13が取り付けられている。一対の当接部13,13は、具体的には、軌道4と直交する方向にそれぞれ延在し、互いに、その傾斜面を内側に向けつつ、軌道4と平行する方向(走行方向)に離間して取り付けられている。一対の当接部13,13は、互いの離間方向についての中央位置を、各載置台11(セグメント台車)の走行方向についての中央部(走行方向中央部)Mに合わせて、載置台11上に取り付けられている。セグメントSは、後述する
図4に示すように、例えば、その長手方向の中央位置を、一対の当接部13,13の上記中央位置に略合わせた状態で、載置台11上に一対の当接部13,13を介して載置される。これにより、セグメントSを、先頭台車10Aや伸縮台車10B上に安定して載置することができる。
【0022】
前記連結部12は、各セグメント台車(10A,10B)の走行方向の両端部に、それぞれ配置され、他のセグメント台車(10A又は10B)やバッテリーロコ20と連結するための部材である。
なお、本実施形態においては、各セグメント台車10A,10Bがそれぞれ本発明に係る「台車」に相当し、セグメント台車10Aが本発明に係る「先頭台車」に相当し、セグメント車列10が本発明に係る「車列」に相当する。以下において、セグメント車列10のうちの組立場側の先頭の上記セグメント台車10Aを先頭台車10Aと呼び、セグメント車列10のうちの先頭台車10Aの後方に位置する上記セグメント台車10Bを後述する伸縮装置14を有する伸縮台車10Bと呼ぶ。この先頭台車10Aと伸縮台車10Bは、それぞれ、載置台11と連結部12と一対の当接部13,13とを有しており、基本構造は共通している。伸縮台車10Bにおける先頭台車10Aと異なる構造については、後に詳述する。
【0023】
前記バッテリーロコ20は、セグメント車列10と連結され、このセグメント車列10を押動又は牽引するものであり、例えば、外部電源からの電力を充電するバッテリー21と、このバッテリー21を電力源として車輪を回動させる電動機22と、運転台23と、走行方向の両端部に設けられセグメント車列10との連結用の連結部24とを備え、バッテリー21を駆動源として軌道4上を走行可能に構成されている。
【0024】
次に、前記伸縮台車10Bについて、先頭台車10Aと異なる構造を、
図3〜
図5を参照して詳述する。
図3は伸縮台車10Bの上面図、
図4は伸縮台車10Bの側面図、
図5は伸縮台車10Bの軌道4からの浮き上がり防止用の構造を説明するための要部拡大図である。
【0025】
前記伸縮台車10Bは、その走行方向の両端部間の間隔L1を伸縮させる伸縮装置14を更に有する。
図1〜
図4においては、間隔L1が伸びたときの伸縮台車10Bの状態が実線で示されており、
図3及び
図4では、間隔L1が縮められたときの伸縮台車10Bの状態が破線で示されている。間隔L1は、言い換えると、伸縮台車10Bの走行方向の全長であり、伸縮台車10Bは、伸縮装置14を介して自身の全長を可変可能に構成されている。
本実施形態において、伸縮台車10Bは、具体的には、伸縮装置14の動作に応じて各連結部12が走行方向に沿って前進又は後退することにより、上記間隔(全長)L1を伸縮させるように構成されている。
【0026】
より具体的には、伸縮装置14は、一方の連結部12の基端側(載置台側)に接続される一端側可動部14aと、他方の連結部12の基端側に接続される他端側可動部14bと、各可動部14a,14bに対応して載置台11内に内蔵される空圧式又は油圧式のシリンダ(図示省略)とを含んで構成されている。各可動部14a,14bは、伸縮台車10Bの載置台11内で走行方向に延在して形成されるガイド部(図示省略)によって走行方向に移動可能にガイドされると共に、対応する各シリンダの一端が接続されている。これにより、各可動部14a,14bはガイド部にガイドされつつ対応するシリンダの動作に応じて走行方向に前進又は後進する。この各可動部14a,14bの前進又は後進動作は同期して行われ、その結果、伸縮台車10Bの両端部間の間隔L1を伸縮させている。
なお、先頭台車10Aの全長、及び、間隔L1を最大限に伸ばした状態の伸縮台車10Bの間隔L1maxは、運搬する主な工事資機材(本実施形態においては、セグメントS)の載置状態における走行方向の全長L2より長くなるように設定されている。一方、間隔L1を最小限に縮めた状態の伸縮台車10Bの間隔L1minは、
図4及び
図5に示すように、主な工事資機材の全長L2より短くなるように設定されている。上記L1maxからL1minを減じて得られる値(=L1max−L1min)が2つの可動部14a,14bによる間隔L1の伸縮ストロークSt(つまり、伸縮装置14の伸縮ストロークSt)となる。この伸縮ストロークStの具体的な設定方法については、後に詳述する。
【0027】
本実施形態においては、このようにして、発進基地(出発基地)2から組立場(作業場所)まで伸びる軌道4上を走行して、工事資機材を運搬する複数両編成の工事用運搬車両100であって、工事資機材の載置用の載置台11をそれぞれ有する複数の台車10A,10Bが連結されてなるセグメント車列10を備え、セグメント車列10のうちの、組立場(作業場所)側の先頭台車10Aの後方に位置する少なくとも1台の伸縮台車10Bは、その走行方向の両端部間の間隔L1を伸縮させる伸縮装置14を有する、工事用運搬車両100が構成される。
【0028】
次に、支持アンカー7を用いた浮き上がり防止構造について、
図4及び
図5を参照して説明する。
本実施形態においては、伸縮台車10Bは、載置台11の下部に取り付けられ、支持アンカー7と係合すると共に支持アンカー7の係合面8に沿って移動可能な係合部15を更に有する。
前記係合部15は、例えば、第1係合部15aと、第2係合部15bとを備えて構成されている。第1係合部15a及び第2係合部15bは、載置台11の下部において、前記中央部Mを中間に挟むようにして互いに走行方向に離間している。第1係合部15a及び第2係合部15bは、それぞれ、
図5に示す断面構造を有し構成される。
【0029】
前記第1係合部15a及び第2係合部15bは、それぞれ、例えば、互いに載置台幅方向に離間して対向する係合プレート16,16と、一対の係合プレート16,16の間を連結する連結プレート17と、各係合プレート16の下端部の対向面側にて回動可能にそれぞれ軸支される回転ローラ18とを備えて、載置台幅方向の中央部に位置するように載置台11の下部に取り付けられている。一対の係合プレート16,16は支持アンカー7の上部を挟むように配置され、連結プレート17は支持アンカー7の上面に近接するように配置される。この状態で、各回転ローラ18が支持アンカー7の上部裏面の係合面8に当接しつつ、係合面8に沿って回動しながら移動する。つまり、回転ローラ18はその鉛直方向の移動が支持アンカー7の係合面8により規制され、これにより、伸縮台車10Bの軌道4からの浮き上がりが防止される。したがって、伸縮台車10Bの下部に取り付けられた係合部15は、支持アンカー7に係合すると共に支持アンカー7の係合面8に沿って移動可能である。
【0030】
ところで、
図1及び
図2は、工事用運搬車両100がその伸縮台車10Bを伸ばして発進基地2の軌道4上に待機し、その先頭台車10Aの一部がトンネル坑3内に位置している状態を示している。詳しくは、先頭台車10Aの中央部Mが後述するクレーン30による搬送可能な範囲(規制範囲R)外に位置し、この状態では、先頭台車10Aに対するセグメントSの積卸しができない状態を示している。以下では、各台車10A,10Bの連結を維持した状態で、この工事用運搬車両100に対してセグメントSの積卸しを行う方法の一例を説明する。
【0031】
次に、発進基地2における工事用運搬車両100に対するセグメントSの積卸し方法について、
図2及び
図6〜
図13を参照して説明する。
【0032】
まず、
図6に示すように、立坑1に対応してセグメントSの積卸し用のクレーン30を、地上に配置する。このクレーン30は、セグメントSを吊上げた状態で、セグメントSを立坑1内で鉛直方向に搬送可能であり、且つ、セグメントSを発進基地2における所定の規制範囲R内で搬送可能に構成されている。
上記所定の規制範囲Rとは、クレーン30によりセグメントSを発進基地2において軌道4と平行する方向に搬送可能な範囲であって、発進基地2における坑口側壁面1aにより規制される軌道4と平行する方向についての範囲である。本実施形態においては、規制範囲Rは、
図2に示す平面視において、トンネル坑3の中心軸心Oと直交する鉛直平面と、トンネル坑3の坑口3aの周縁を形成する坑口側壁面1aとが接する位置から、セグメント車列10のバッテリーロコ20側の端部までの範囲であるものとする。積卸しの際に、クレーン30は、
図6に破線で示すように、この規制範囲R内にてそのフック部31を軌道4と平行する方向に移動させることができる。なお、本実施形態において、坑口側壁面1aは、立坑1の内壁面である。
【0033】
本実施形態においては、クレーン30として、セグメントSを吊上げ可能であり、且つ、セグメントSを軌道4と平行する方向に搬送可能な門型クレーンを地上に配置する。このクレーン30は、セグメントSを吊上げた状態で、セグメントSを軌道4と平行する方向と直交する方向(横行方向)に搬送することもできる。地上の立抗1の周辺には、例えば、立坑1を挟むようにして軌道4と平行にクレーン用軌道9が敷設される。これにより、クレーン設置工程が完了する。
【0034】
クレーン30の設置完了後、
図7に示すように、先頭台車10Aに対するクレーン30によるセグメントSの積卸し前に、伸縮装置14を駆動させて伸縮台車10Bの間隔L1を縮める(つまり、LmaxからLminに縮める)ことにより、各台車10A,10Bの連結状態を維持しつつ、先頭台車10Aを、図中白抜き矢印で示すようにクレーン30による積卸し可能な位置まで引き戻す。これにより、伸縮台車10Bの間隔縮小工程が完了し、伸縮台車10B以外の台車(本実施形態では先頭台車10A)に対するクレーン30によるセグメントSの積卸しが可能な状態になる。
本実施形態においては、この積卸し可能な位置にて、先頭台車10Aの載置台11の軌道4と平行する方向についての中央部Mが規制範囲R内に位置している。
なお、伸縮装置14の伸縮ストロークSt(=L1max−L1min)は、例えば、間隔L1をLminに縮めた状態において中央部Mが規制範囲R内に位置するように、予め設定されている。
【0035】
次に、
図8〜
図10に示すように、クレーン30により、引き戻された先頭台車10Aに対するクレーン30によるセグメントSの積卸し(ここでは、積込み)を行う。
詳しくは、
図8に示すように、セグメントSは地上のクレーン用軌道9のレール鋼の間に適宜段数(図では3段)で段積みされており、この段積セグメント群SSをクレーン30により吊上げ、立坑1の開口部上方まで搬送し、その後、先頭台車10Aの近傍まで吊下げる。
そして、
図9に示すように、クレーン30を作業場所側に向かって走行させて段積セグメント群SSを先頭台車10Aの直上に位置させる。このとき、段積セグメント群SSは、その長手方向の中央位置(図中一点鎖線で示す位置)が一対の当接部13,13の中央位置(図中太線で示す位置)に略一致するように配置されている。
その後、
図10に示すように、クレーン30により段積セグメント群SSを更に吊下げて、最下部のセグメントSの外周を一対の当接部13,13の傾斜面に当接させて、段積セグメント群SSを、先頭台車10Aの載置台11上に安定して載置する。これにより、先頭台車10Aに対する積込み工程が完了する。
【0036】
次に、
図11に示すように、伸縮装置14を駆動させて伸縮台車10Bの間隔L1を伸ばす(つまり、LminからLmaxに伸ばす)ことにより、各台車10A,10Bの連結状態を維持しつつ、先頭台車10Aを、図中黒塗り矢印で示すように作業場所側に押し戻す。これにより、伸縮台車10Bの間隔拡大工程が完了し、伸縮台車10Bに対するクレーン30によるセグメントSの積卸しが可能な状態になる。
【0037】
そして、
図12に示すように、伸縮台車10Bに対するクレーン30による積卸し(ここでは、積込み)を行う。これにより、各セグメント台車10A,10Bに対するセグメントSの積込みが完了し、その後、工事用運搬車両100は、
図13に示すように、作業場所側に向かって走行する。
なお、上記では、工事用運搬車両100への工事資機材の積込みについて説明したが、発進基地2において、工事用運搬車両100から荷卸しする場合についても積込み時と同様の手順で行えばよい。つまり、先頭台車10Aに対するクレーン30による工事資機材の積卸し(積込み又は荷卸し)を行う場合は、伸縮装置14により伸縮台車10Bの間隔L1を縮めて、先頭台車10Aをクレーン30による積卸し可能な位置まで引き戻した後、積卸しを行い、伸縮台車10Bに対するクレーン30による工事資機材の積卸しを行う場合は、間隔L1を伸ばした状態で、積卸しを行う。
【0038】
かかる本実施形態による工事用運搬車両100及びこれを用いた工事資機材の積卸し方法によれば、走行方向の両端部間の間隔L1を伸縮させる伸縮装置14を有する少なくとも1台の伸縮台車10Bを組立場(作業場所)側の先頭台車10Aの後方に位置させ、伸縮装置の伸縮ストロークStを予め適切に設定して、伸縮台車10Bの間隔L1を縮めることにより、連結状態を維持しつつ先頭台車10Aをクレーン30による積卸し可能な位置まで引き戻し、その後、先頭台車10Aに対する積卸しを行うことができる。そして、その後、伸縮台車10Bの間隔L1を伸ばすことにより連結状態を維持しつつ、先頭台車10Aを押し戻し、その後、伸縮台車10Bに対する積卸しを行うことができる。その結果、各セグメント台車10A,10Bの連結状態を維持した状態で、クレーン30による各セグメント台車10A,10Bに対する工事資機材の積卸しが可能となる。
このようにして、狭隘な発進基地(出発基地)2であっても、伸縮装置14による伸縮ストロークStを予め適切に設定するだけで、各セグメント台車10A,10Bの切り離し及び再連結を行うことなく、クレーン30による各セグメント台車10A,10Bに対する工事資機材の積卸しを実施することができ、施工サイクル(積卸し時間)の短縮と、今まで以上に安全な施工環境の実現とを図ることが可能な、工事用運搬車両100、及び、これを用いた工事資機材の積卸し方法を提供することができる。
【0039】
また、本実施形態においては、伸縮台車10Bは、伸縮装置14の動作に応じて各連結部12が走行方向に沿って前進又は後退することにより、間隔L1を伸縮させる構成とした。
これにより、載置台11の構造を単純化しつつ、伸縮台車10Bの両端部間の間隔L1を伸縮させることができる。なお、間隔L1の伸縮構造をこれに限らない。例えば、載置台11を走行方向に二分割し、これら二分割された載置台11の間を空圧式又は油圧式のシリンダを介して連結して構成してもよい。なお、空圧式又は油圧式のシリンダに代えて、電動式のギア式の伸縮構造を用いてもよい。
【0040】
また、本実施形態においては、発進基地2に、伸縮台車10Bの軌道4からの浮き上がり防止用の支持アンカー7を設けると共に、伸縮台車10Bに、支持アンカー7と係合し且つ支持アンカー7の係合面8に沿って移動する係合部15を更に備える構成とした。
これにより、例えば、セグメントS等の工事資機材が、載置台11上において走行方向について偏った位置に載置された場合や、伸縮台車10Bの伸縮装置14の伸縮動作中に全体のバランスが不安定になる場合であっても、係合部15を介して伸縮台車10Bを支持アンカー7と係合させて、伸縮台車10Bの鉛直方向の移動を規制することができるので、先頭台車10Aの移動を確実にできる。これにより、発進基地2における工事資機材の積込み時において、伸縮台車10Bの軌道4からの浮き上がりを防止することができ、この浮き上がりに起因する災害の発生を防止することができる。なお、発進基地2において、仮に、工事資機材が伸縮台車10Bに偏った位置で載置してしまった場合、工事資機材の載置位置をクレーン30等により微調整してその偏りを解消させた後、組立場に向かって走行させる。
【0041】
また、本実施形態においては、クレーン30として、工事資機材を、吊上げ可能であり、且つ、軌道4と平行する方向に搬送可能な門型クレーンを地上に配置する構成とした。これにより、工事資機材の吊上げ、吊下げ、軌道4と平行する方向への搬送移動を一つの機器で、容易に行うことができる。なお、クレーン30は、これに限らず、ラフテレーンクレーン等の一般的なクレーンを用いてもよい。また、クレーン30は、地上に限らず、立坑1に対応して配置する構成であればどのように配置してもよく、例えば、発進基地2の床部をなすベース板5上に配置してもよい。
【0042】
また、本実施形態においては、伸縮装置14により先頭台車10Aをクレーン30による積卸し可能な位置まで引き戻し、この積卸し可能な位置にて、先頭台車10Aの載置台11の軌道4と平行する方向についての中央部Mが、クレーン30の規制範囲R内に位置する構成とした。これにより、クレーン30により工事資機材を、その長手方向の中央位置を載置台11の中央部Mの位置に合わせた状態で、載置台11に容易に積込むことができるため、工事資機材を、全ての台車10A,10Bに、容易に安定載置することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、トンネル坑3の坑口3aの周縁を形成する坑口側壁面1aは、立坑1の内壁面である場合を一例にして説明したが、これに限らない。例えば、トンネル坑3の坑口3aに坑口コンクリートが設けられる場合は、この坑口コンクリートが坑口側壁面1aをなす。この場合、クレーン30の所定の規制範囲Rが坑口コンクリートにより規制された状態において、クレーン30により各セグメント台車10A,10Bに対するセグメントSの積卸しを行う。
【0044】
また、車列10は、2台のセグメント台車10A,10Bからなる場合で説明したが、これに限らず、発進基地2の広さに応じて、3台以上のセグメント台車からなるものとしてもよい。この場合、先頭台車10Aの後方に位置する2台以上のセグメント台車のうち、伸縮台車10Bは、1台であってもよいし、2台以上であってもよい。先頭台車10Aの後方の伸縮台車10B以外の残りのセグメント台車としては、例えば、先頭台車10Aと同一形状の台車を採用すればよい。伸縮台車10Bの台数を増やすほど、車列10全体の走行方向の長さの伸縮ストロークを効果的に増加させることができる。例えば、各伸縮装置14が伸びた状態で、先頭台車全体や、先頭台車全体と先頭台車10Aのすぐ後ろの台車の一部や、車列10の組立場側の2台の台車全体がトンネル坑3内に位置する場合等においても、伸縮装置14の伸縮ストロークStを適宜設定することにより、各台車の連結状態を維持した状態で、各台車に対するクレーン30による積卸しを行うことができる。
【0045】
また、セグメント台車が3台以上であって、そのうち伸縮台車10A以外の台車が複数の場合において、伸縮台車10Bの間隔L1が縮められた状態では、先頭台車10Aに対する積卸しだけでなく、伸縮台車10B以外の残りの台車に対する積卸しを行ってもよい。また、伸縮台車10Bの間隔L1が伸びた状態で、伸縮台車10B以外に積卸し可能な台車がある場合は、その台車に対する積卸しを行ってもよい。つまり、少なくとも先頭台車10Aに対するクレーン30による工事資機材の積卸しを行う場合は、伸縮装置14により伸縮台車10Bの間隔L1を縮めて、先頭台車10Aをクレーン30による積卸し可能な位置まで引き戻した後、積卸しを行い、少なくとも伸縮台車10Bに対するクレーン30による工事資機材の積卸しを行う場合は、間隔L1を伸ばした状態で、積卸しを行えばよい。
【0046】
また、本実施形態においては、工事用運搬車両100は、複数のセグメント台車が連結されてなるセグメント車列10と、セグメント車列10を押動又は牽引するバッテリーロコ20とを備えた車両であるものとして説明したが、これに限らず、少なくともセグメント車列10を備えていればよい。この場合、例えば、セグメント車列10を自走可能な構成としてもよい。
【0047】
また、本実施形態においては、工事用運搬車両100をシールドトンネル工事用運搬車両に適用した場合、つまり、作業場所は立坑1下部に位置する発進基地2に連通するトンネル坑3内に位置する場合を一例として挙げて説明したが、適用場所はこれに限らない。つまり、工事用運搬車両100が走行する軌道4は、トンネルの発進基地2からトンネル坑3内に位置するセグメントS等の組立場まで延設されるものとしてが、これに限らず、車両の出発基地から工事の作業場所まで延設されていればよい。本発明に係る工事用運搬車両は、クレーンによる積卸しのために十分な空間が確保されていない出発基地から工事の作業場所まで延設される軌道上を走行する場合に好適である。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。