特許第6421609号(P6421609)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6421609
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】発泡積層シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/06 20060101AFI20181105BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20181105BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20181105BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   B32B37/06
   B32B27/00 101
   B32B27/32 Z
   B32B5/18
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-7854(P2015-7854)
(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公開番号】特開2016-132147(P2016-132147A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2017年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】塩田 歩
【審査官】 藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−090283(JP,A)
【文献】 特開2000−039165(JP,A)
【文献】 特開昭59−062642(JP,A)
【文献】 特開平10−237205(JP,A)
【文献】 特開2009−052159(JP,A)
【文献】 特開2007−276283(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0166733(US,A1)
【文献】 特開2013−125632(JP,A)
【文献】 特開2009−138086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00− 43/00
C08J 9/00− 9/42
B29C71/04
C08J 7/00− 7/02
7/12− 7/18
D06N 1/00− 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と該基材上に形成される発泡樹脂層とを備える発泡積層シートの製造方法であって、
発泡剤及びシラン架橋性樹脂層を含有する樹脂組成物層を前記基材上に重ね合わせ、該樹脂組成物層に対して過熱水蒸気を供給する工程を含み、
前記過熱水蒸気を供給する工程において、前記基材と前記樹脂組成物層とを前記過熱水蒸気によりラミネートすると共に、前記樹脂組成物層に含まれる前記シラン架橋性樹脂層を前記過熱水蒸気により架橋し、架橋後の樹脂組成物層を形成することを特徴とする発泡積層シートの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂組成物層がポリオレフィン樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項3】
前記過熱水蒸気を供給する工程では、前記過熱水蒸気を前記樹脂組成物層の幅方向の略全体にわたって供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項4】
前記過熱水蒸気を供給する工程では、前記樹脂組成物層に対して前記過熱水蒸気を直接噴霧することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の発泡積層シートの製造方法。
【請求項5】
前記架橋後の樹脂組成物層に含まれる発泡剤を加熱発泡させて前記樹脂組成物層から発泡樹脂層を得る工程を更に含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の発泡積層シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡積層シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂等を含む樹脂組成物層を基材にラミネートし、壁紙等に使用される積層シートを形成することが行われている。このような積層シートは、基材と樹脂組成物層とを熱ドラムを用いて加熱してラミネートを行なうことにより、又は、基材と樹脂組成物層との間に接着剤を塗布してラミネートを行なうことにより形成されている(例えば特許文献1参照)。また、このような積層シートとして、発泡剤が含まれた樹脂組成物層を基材にラミネートして形成する発泡積層シートが知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−337228号公報
【特許文献2】特開2013−204211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載されているように、従来、ラミネート処理には熱ドラム又は接着剤が用いられている。しかしながら、ラミネート処理に熱ドラムを用いる場合には、短時間に熱を効率的に伝達することが難しいため、ラインスピードを十分に上げることができず、積層シートの製造に時間がかかってしまうという問題がある。この問題を解決するため、熱ドラムによる加熱温度を上げることも考えられるが、その場合には紙焼け等の劣化が起きてしまうこともあり、温度を高くすることは現実的ではない。ラミネート処理に接着剤を用いる場合には、接着剤の塗布工程などが更に追加されるので、接着剤を用いない場合に比べ、余分な費用をかけることになってしまうといった問題がある。
【0005】
また、上記特許文献2に記載されているような発泡積層シートにおける架橋処理として、シランカップリング反応による水架橋処理を行うことが近年知られつつある。水架橋処理を行う方法としては、発泡積層シートを湿潤下で養生する方法、又は、発泡積層シートに対して温水を付与する方法がある。しかしながら、これらの方法では、架橋に時間がかかってしまい、発泡積層シートの生産性を高めることが難しいという問題がある。
【0006】
そこで、水架橋処理を行う方法として、例えば100℃を超える過熱水蒸気を用いる方法が考えられる。「過熱水蒸気」とは、飽和蒸気を更に加熱して飽和温度以上の蒸気温度を持たせた水蒸気である。過熱水蒸気を用いることにより、架橋前の樹脂組成物層に対して熱と同時に水分を与えることができ、水架橋処理を行うことが可能となる。しかし、このように過熱水蒸気を用いた場合、上述した湿潤下で養生する方法等に比べれば架橋に要する時間が短縮されるものの、樹脂組成物層を単に過熱水蒸気雰囲気下に通しているだけでは依然として架橋を行う速度が十分といえるほど早くはなく、更なる改善が望まれている。
【0007】
一方、このような時間効率を向上させるには、過熱水蒸気の温度を上げて水架橋処理を行うことが第一に考えられるが、この場合、樹脂組成物層に含まれる発泡剤が高温によりその一部が発泡してしまい、出来上がった発泡積層シートの表面が荒れてしまうという問題がある。このように発泡積層シートの表面が荒れてしまうと、印刷に適さなくなってしまうため、単に過熱水蒸気の温度を上げるだけでは、生産性を高めることが難しい。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、短時間且つ低コストで生産性の高い発泡積層シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る発泡積層シートの製造方法は、基材と該基材上に形成される発泡樹脂層とを備える発泡積層シートの製造方法であって、発泡剤及びシラン架橋性樹脂層を含有する樹脂組成物層を基材上に重ね合わせ、該樹脂組成物層に対して過熱水蒸気を供給する工程を含み、過熱水蒸気を供給する工程において、基材と樹脂組成物層とを過熱水蒸気によりラミネートすると共に、樹脂組成物層に含まれるシラン架橋性樹脂層を過熱水蒸気により架橋し、架橋後の樹脂組成物層を形成することを特徴とする。
【0010】
この発泡積層シートの製造方法では、熱ドラム等を用いる代わりに、過熱水蒸気によって、基材と樹脂組成物層とのラミネート処理及び樹脂組成物層における架橋処理が行われる。過熱水蒸気は熱効率が良いので、各処理に必要な熱を供給するのに要する処理時間を、熱ドラム等を用いる場合よりも短くすることができる。そして、処理時間を短くすることができるラミネート処理及び架橋処理が、いずれも過熱水蒸気を供給する工程において行われる。すなわち、各処理が一つの工程において行われるので、全工程としても処理時間をより短くすることができると共に、各処理が別の工程で行われる場合よりもコストが削減できる。以上より、短時間且つ低コストで生産性の高い発泡積層シートの製造方法を提供することができる。
【0011】
蒸気の発泡積層シートの製造方法において、樹脂組成物層がポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。この場合、過熱水蒸気を用いた基材と樹脂組成物層とのラミネート処理をより容易に行うことができる。
【0012】
過熱水蒸気を供給する工程では、過熱水蒸気を樹脂組成物層の幅方向の略全体にわたって供給してもよい。この場合、ラミネート処理及び架橋処理を、樹脂組成物層の幅方向の略全体にわたって確実に行うことができる。
【0013】
過熱水蒸気を供給する工程では、樹脂組成物層に対して過熱水蒸気を直接噴霧してもよい。過熱水蒸気は、基材側から樹脂組成物層に噴霧してもよいが、樹脂組成物層に対して直接噴霧することにより、熱の伝達がより確実に行われるため、ラミネート処理及び架橋処理をより確実に行うことができる。
【0014】
架橋後の樹脂組成物層に含まれる発泡剤を加熱発泡させて樹脂組成物層から発泡樹脂層を得る工程を更に含んでもよい。この場合、基材上に発泡樹脂層が形成された発泡積層シートを確実に得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、短時間且つ低コストで生産性の高い発泡積層シートの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る製造方法で製造される発泡積層シートの例を示す断面図であり、(a)は発泡前、(b)は発泡後の断面形状を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るラミネート処理及び架橋処理を行う方法を説明するための図である。
図3図2に示す方法において過熱水蒸気の供給をより詳細に説明するための斜視図である。
図4】従来の熱ドラム方式の処理装置を用いて発泡積層シートを製造する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る発泡積層シートの製造方法について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造される発泡積層シートについて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る製造方法で製造される発泡積層シートの例を示す断面図であり、(a)は発泡前、(b)は発泡後の断面形状を示す。図1(a)に示すように、発泡前の積層シート1は、紙基材3と、発泡剤を含有する樹脂組成物層5とを備えている。
【0019】
樹脂組成物層5は、紙基材3上に重ね合わされてラミネート処理され、且つ、架橋処理された状態で、紙基材3上に形成されている。積層シート1は、含有する発泡剤が所定の発泡倍率で発泡し、図1(b)に示すように、発泡後の発泡樹脂層5aを含む発泡積層シート1aとなる。なお、発泡積層シート1aは、表面に凹凸模様を有していてもよい。このような発泡積層シート1aは、例えば発泡壁紙として用いられる。
【0020】
紙基材3は、例えば壁紙用裏打紙などの通常使用されている紙材を用いることができるが、特に限定されない。紙基材3としては、好ましくは、スルファミン酸グアニジンやリン酸グアニジンなどの水溶性難燃剤を含浸させたパルプ主体の難燃紙、又は、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機質剤を混抄した無機質紙等を用いることができ、その坪量としては50〜300g/m、好ましくは60〜160g/mである。
【0021】
また、紙基材3の表面のうち樹脂組成物層5を設ける側の接着面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、又はオゾン処理等の易接着処理を施してもよい。また、紙基材3の接着面には、アクリル−ブチル共重合体、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン等を塗布した易接着処理層(図示しない)を設けるようにしてもよい。なお、紙基材3に代えて、例えば樹脂等からなる基材を用いてもよい。
【0022】
樹脂組成物層5は、例えば発泡樹脂層5aを形成するための層であり、無機充填剤と発泡剤と樹脂とを含む樹脂組成物を用いて形成することができる。樹脂としては、無極性の非ハロゲン系熱可塑性樹脂が好ましい。非ハロゲン系熱可塑性樹脂としては、エチレン単独重合体、又は、エチレンと他のオレフィンモノマーとの共重合体を挙げることができる。非ハロゲン系熱可塑性樹脂を用いることで、エチレン−メタクリル酸メチル共重合樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合樹脂、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、及びアイオノマー樹脂などの極性樹脂を使用した場合と比較して、フィラーを増量した場合の粘度上昇が抑えられる為、高品質の壁紙を安定して生産することができる。
【0023】
樹脂組成物層5を形成するための上記樹脂組成物は、更に、シラン架橋性樹脂を含有している。含有されるシラン架橋性樹脂としては、従来公知のシラン架橋性樹脂、特にシラン架橋性ポリオレフィン系樹脂が好適に使用可能である。シラン架橋性ポリオレフィン系樹脂としては、母体としてのポリオレフィン系重合体に加水分解性シリル基を主として側鎖に導入した樹脂を用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン系、高密度ポリエチレン系、エチレン酢酸ビニル共重合体系、ポリプロピレン系等のシラン架橋性ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。架橋は、置換シリル基の加水分解により行われる。なお、このシリル基が末端に位置するポリオレフィン系樹脂が含まれていてもよい。
【0024】
このシラン架橋性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂のモノマーとエチレン性不飽和シラン化合物を容器中でランダム共重合させる方法、又は、ポリオレフィン系樹脂の溶融物に過酸化物を用いてエチレン性不飽和シラン化合物をグラフト共重合する方法により得ることができる。ここで、母体のポリオレフィン系樹脂としては前記と同様の樹脂をいずれも使用することができる。更に、母体のポリオレフィン系樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、両樹脂の混合又は分散が許容される程度であれば上記ポリオレフィン系樹脂とは異なる樹脂を併用してもよい。混合又は分散の程度は、使用する押出機の種類により大差があり、また適宜の相溶化剤も使用できるので、組み合わせ樹脂は一概に区分はできないが、同種の樹脂であることが好ましい。以上で説明した樹脂組成物層5の樹脂組成物としては、三菱化学株式会社製の「リンクロン」などが例示される。
【0025】
また、樹脂組成物層5には、必要に応じて顔料等を添加して着色してもよい。顔料添加による着色は透明であってもよいし、半透明であってもよいし、不透明であってもよい。顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の無機顔料やアニリンブラック、フタロシアニンブルー等の有機顔料を用いることができる。樹脂組成物層5に添加される顔料の添加量としては、樹脂成分100重量部に対して、5〜50重量部、好ましくは10〜30重量部である。また、樹脂組成物層5に、難燃剤、セル調整剤、安定剤、又は滑剤等の周知の添加剤を添加してもよい。
【0026】
続いて、図2及び図3を参照して、上述した積層シート1を形成する方法について説明する。すなわち、紙基材3と樹脂組成物層5とのラミネート処理、及び、樹脂組成物層5における架橋処理を行う方法を説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るラミネート処理及び架橋処理を行う方法を説明するための図である。図3は、図2に示す方法において過熱水蒸気の供給をより詳細に説明するための斜視図である。
【0027】
この方法に用いる処理装置10は、図2に示すように、紙基材3を繰り出すためのローラ11と、樹脂組成物層5を繰り出すためのローラ12と、紙基材3上に樹脂組成物層5を重ね合わせるためのローラ13,14と、紙基材3上に重ね合わされた樹脂組成物層5へ過熱水蒸気Vを供給する蒸気噴霧装置15と、過熱水蒸気Vによりラミネート処理及び架橋処理がなされた紙基材3及び樹脂組成物層(すなわち、積層シート1)に対しローラ13,14と共働して所定の張力を付与するローラ16と、積層シート1を巻き取るローラ17と、熱効率を向上させるために蒸気噴霧装置15を覆うボックス20と、を備えている。
【0028】
処理装置10では、ローラ11から紙基材3が繰り出される一方、ローラ12から樹脂組成物層5が繰り出される。そして、ローラ13,14間において、ローラ11から繰り出された紙基材3上に、ローラ12から繰り出された樹脂組成物層5が重ね合わされる。互いに重ね合わされた紙基材3と樹脂組成物層5とは、方向S2に搬送され、ボックス20に搬入される。ボックス20内において、紙基材3上に重ね合わされた樹脂組成物層5に対し、蒸気噴霧装置15から方向S1に向かって過熱水蒸気Vが噴霧(供給)される。
【0029】
図3に示すように、蒸気噴霧装置15は、複数の噴霧ノズル15aを備えており、当該噴霧ノズル15aから、樹脂組成物層5の幅方向の略全体にわたって過熱水蒸気Vが噴霧される。ボックス20は、蒸気噴霧装置15と、過熱水蒸気Vが積層シート1上に噴霧される噴霧領域とを覆う。ボックス20は、その容積が例えば0.01m〜2.0mである。積層シート1は、ボックス20の一方に設けられた開口の入口20aからボックス20内に挿入され、ボックス20の他方に設けられた開口の出口20bから出るように搬送される。積層シート1は、噴霧ノズル15a側に樹脂組成物層5が位置するように配置されている。すなわち、樹脂組成物層5に対して過熱水蒸気Vが直接噴霧されている。なお、紙基材3の場合には水蒸気が透過するため、紙基材3を噴霧ノズル15a側に配置してもよい。
【0030】
ボックス20内において、紙基材3上に重ね合わされた樹脂組成物層5に対して噴霧ノズル15aから過熱水蒸気Vが噴霧されると、紙基材3と樹脂組成物層5とが過熱水蒸気Vによりラミネートされると共に、樹脂組成物層5に含まれるシラン架橋性樹脂層が過熱水蒸気Vにより架橋し、架橋後の樹脂組成物層5が形成される。このように、ラミネート処理及び架橋処理は、樹脂組成物層5に対して過熱水蒸気Vが供給される一つの工程の中で共に行われる。
【0031】
噴霧ノズル15aから噴霧される「過熱水蒸気」とは、飽和蒸気を更に加熱して飽和温度以上の蒸気温度を持たせた蒸気であり、熱効率が良い。このため、紙基材3と樹脂組成物層5とが過熱水蒸気によりラミネートされるのに必要な熱を供給するのに要する時間と、樹脂組成物層5に含まれるシラン架橋性樹脂層が過熱水蒸気Vにより架橋するのに必要な熱を供給するのに要する時間とを、熱ドラム等を用いる場合よりも短くすることができる。すなわち、本実施形態に係る方法では、過熱水蒸気Vを用いることにより、短時間でも十分にラミネート処理及び架橋処理がなされる。
【0032】
また、上述したラミネート処理及び架橋処理が行われた積層シート1に対して、所定の発泡処理を施すことで、図1(b)に示すような発泡積層シート1aが得られる。すなわち、架橋後の樹脂組成物層5に含まれる発泡剤を加熱発泡させて樹脂組成物層5から発泡樹脂層5aを得ることにより、発泡積層シート1aが得られる。なお、この発泡積層シート1aの表面に対し、凹凸模様等を更に付与する処理を行ってもよい。
【0033】
発泡積層シート1aにおける発泡樹脂層5aの発泡倍率は、少なくとも3.1倍よりも大きいことが好ましい。よって、上述した樹脂組成物層5に対して過熱水蒸気Vを供給する工程では、発泡樹脂層5aの発泡倍率が少なくとも3.1倍よりも大きくなるように、過熱水蒸気Vを樹脂組成物層5に供給してもよい。
【0034】
また、発泡積層シート1aにおける発泡樹脂層5aの発泡倍率は、少なくとも5倍であると更に好ましい。よって、上述した樹脂組成物層5に対して過熱水蒸気Vを供給する工程では、発泡樹脂層5aの発泡倍率が少なくとも5倍となるように、過熱水蒸気Vを樹脂組成物層5に供給してもよい。
【0035】
以上、本実施形態に係る発泡積層シート1aの製造方法では、熱ドラム等を用いる代わりに、過熱水蒸気Vによって、紙基材3と樹脂組成物層5とのラミネート処理及び樹脂組成物層5における架橋処理が行われる。過熱水蒸気Vは熱効率が良いので、各処理に必要な熱を供給するのに要する処理時間を、熱ドラム等を用いる場合よりも短くすることができる。そして、処理時間を短くすることができるラミネート処理及び架橋処理が、いずれも過熱水蒸気Vを供給する工程において行われる。すなわち、各処理が一つの工程において行われるので、全工程としても処理時間をより短くすることができると共に、各処理が別の工程で行われる場合よりもコストが削減できる。以上より、短時間且つ低コストで生産性の高い発泡積層シート1aの製造方法を提供することができる。
【0036】
本実施形態に係る発泡積層シート1aの製造方法では、樹脂組成物層5がポリオレフィン樹脂を含んでいてもよい。この場合、過熱水蒸気Vを用いた紙基材3と樹脂組成物層5とのラミネート処理をより容易に行うことができる。
【0037】
本実施形態に係る発泡積層シート1aの製造方法では、過熱水蒸気Vを樹脂組成物層5に供給する工程において、樹脂組成物層5の幅方向の略全体にわたって過熱水蒸気Vが噴霧される。よって、ラミネート処理及び架橋処理を、樹脂組成物層5の幅方向の略全体にわたって確実に行うことができる。
【0038】
本実施形態に係る発泡積層シート1aの製造方法では、過熱水蒸気Vを樹脂組成物層5に供給する工程において、樹脂組成物層5に対して過熱水蒸気Vが直接噴霧される。過熱水蒸気Vは、紙基材3側から樹脂組成物層5に噴霧してもよいが、樹脂組成物層5に対して直接噴霧することにより、熱の伝達がより確実に行われるため、ラミネート処理及び架橋処理をより確実に行うことができる。
【0039】
本実施形態に係る発泡積層シート1aの製造方法では、架橋後の樹脂組成物層5に含まれる発泡剤を加熱発泡させて樹脂組成物層5から発泡樹脂層5aを得る工程を更に含んでもよい。この場合、紙基材3上に発泡樹脂層5aが形成された発泡積層シート1aを確実に得ることができる。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形を適用できる。例えば、上記実施形態では、紙基材3上に重ね合わされた樹脂組成物層5に対して過熱水蒸気Vを供給する例を示したが、基材も樹脂から構成するようにし、樹脂基材上に重ね合わされた樹脂組成物層5に過熱水蒸気Vを供給してもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
まず、インフレーションダイを取り付けた単軸押出機を用いて、表1の配合で事前混合した発泡剤含有樹脂を押出温度125℃、厚み100μm、幅965mmで製膜し、樹脂組成物層5を得た。また、紙基材3として、“WK−665”(KJ特殊紙株式会社製)を準備した。この紙基材3の坪量は65g/mであり、幅970mmであった。
【0043】
【表1】
【0044】
続いて、図2に示す処理装置10を用いて、紙基材3と樹脂組成物層5とのラミネート処理及び樹脂組成物層5における架橋処理を行った。ラミネート処理及び架橋処理を行う際、各実施例の製造条件として、ボックス(炉)20の大きさ(m)、蒸気噴霧装置15から噴霧される過熱水蒸気Vの水蒸気温度、及びラインスピードを表2,3に示す通りに変化させ、実施例に係る発泡積層シート1aを取得した。そして、取得した発泡積層シート1aにおいて、ラミネート強度及び発泡倍率の評価を行った。また、ラミネート強度、発泡倍率、及びラインスピードに基づいて、発泡積層シート1aの生産性に対する総合評価を行った。表2,3に、これらの評価結果を示している。
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
なお、発泡積層シート1aにおけるラミネート強度とは、ラミネート処理によってラミネートされた紙基材3と樹脂組成物層5との貼り付き度合いを示す指標である。ラミネート強度の評価は、紙基材から樹脂組成物層が剥がれず、紙基材側で層間剥離してしまう程度の強度を「◎」、すなわち良好な強度であるとした。また、十分にラミネートされており、素手で剥がれない程度の強度を「○」、すなわち十分な強度であるとした。また、ラミネートが弱く、素手で剥がせてしまう程度の強度を「△」、すなわち不十分な強度であるとした。但し、ある程度のラミネートは行われていた。
【0048】
発泡積層シート1aにおける発泡倍率とは、発泡積層シート1aの単位体積あたりの重量に対応し、発泡積層シート1aの硬さを示す指標である。発泡積層シート1aにおける発泡倍率は、樹脂組成物層5における架橋処理の際における発泡剤の発泡の度合いに起因する。発泡積層シート1aにおける発泡倍率が大きいほど、樹脂組成物層5における架橋処理の際における発泡剤の発泡度合いが少なく、発泡積層シート1aの表面が綺麗であると評価することができる。なお、発泡倍率は、少なくとも3.1倍よりも大きい場合には好適とまではいえないものの適正であり、5.0倍以上である場合には好適であるとした。但し、発泡倍率が約2倍以上であれば、ある程度の架橋は行われていた。
【0049】
ラミネート強度、発泡倍率、及びラインスピードに基づく総合評価は、次の基準で行った。
(総合評価)
A:ラミネート強度が「◎」、且つ、発泡倍率が5.0倍以上、且つ、ラインスピードが3m/分以上のもの
B:Aの条件に対し、ラミネート強度、発泡倍率、及びラインスピードのいずれかは優れているが、劣っている項目も含むもの
C:発泡倍率が3.1倍以下のもの
なお、上記総合評価のうち、C、B、及びAの順で、発泡積層シート11aの生産性がより高いことを示している。
【0050】
表2には、ボックス20の大きさが0.01mの場合における実施例を示している。この場合において、水蒸気温度が170℃の条件下では、ラインスピードが4m/分の場合、ラミネート強度が「○」であり、且つ、発泡倍率が4.2倍であった。すなわち、この条件下では、ラインスピードが4m/分まで速くなっても、ラミネート強度が十分であり、且つ、発泡倍率が適正な発泡積層シート11aが、一つの工程で行われるラミネート処理及び架橋処理によって取得できた(総合評価:B)。
【0051】
また、ボックス20の大きさが0.01mの場合において、水蒸気温度が200℃の条件下では、ラインスピードが4m/分の場合、ラミネート強度が「◎」であり、且つ、発泡倍率が5.0倍であった。すなわち、この条件下では、ラインスピードが4m/分まで早くなっても、ラミネート強度が良好であり、且つ、発泡倍率が好適な発泡積層シート1aが、一つの工程で行われるラミネート処理及び架橋処理によって取得でき、特に好ましかった(総合評価:A)。
【0052】
また、ボックス20の大きさが0.01mの場合において、水蒸気温度が240℃の温度条件下では、ラインスピードが2m/分の場合、ラミネート強度が「◎」であり、且つ、発泡倍率が4.4倍であった。すなわち、この条件下では、ラインスピードが2m/分まで速くなっても、ラミネート強度が良好であり、且つ、発泡倍率が適正な発泡積層シート1aが、一つの工程で行われるラミネート処理及び架橋処理によって取得できた(総合評価:B)。
【0053】
表3には、ボックス20の大きさが2.0mの場合における実施例を示している。この場合において、水蒸気温度が170℃の条件下では、ラインスピードが3m/分の場合、ラミネート強度が「◎」であり、且つ、発泡倍率が5.8倍であった。すなわち、この条件下では、ラインスピードが3m/分まで速くなっても、ラミネート強度が良好であり、且つ、発泡倍率が好適であった(総合評価:A)。すなわち、特に好ましい発泡積層シート1aが、一つの工程で行われるラミネート処理及び架橋処理によって取得できた。
【0054】
また、ボックス20の大きさが2.0mの場合において、水蒸気温度が200℃の条件下では、ラインスピードが10m/分の場合、ラミネート強度が「○」であり、且つ、発泡倍率が3.8倍であった。すなわち、この条件下では、ラインスピードが10m/分まで速くなっても、ラミネート強度が十分であり、且つ、発泡倍率が適正な発泡積層シート1aが、一つの工程で行われるラミネート処理及び架橋処理によって取得できた(総合評価:B)。また、この条件下では、ラインスピードが3m/分である場合、ラミネート強度が良好であり、且つ、発泡倍率が好適であった(総合評価:A)。すなわち、特に好ましい発泡積層シート1aが、一つの工程で行われるラミネート処理及び架橋処理によって取得できた。なお、表3における「(セル×)」は、セルが大きいことを示している。ラインスピードが6m/分である場合、ラミネート強度が「◎」であり、且つ、発泡倍率が6.7倍であったがセルが大きいため総合評価は「B」とした。
【0055】
以上のように、本実施例に係る製造方法によれば、ラミネート処理が十分に行われ、且つ、架橋処理が適正に行われた発泡積層シート1aを短時間で得ることができ、発泡積層シート1aの生産性を高めることができることが示された。
【0056】
一方、比較例1として、実施例と同様の樹脂組成物層5を用いて、図4に示すように、従来の熱ドラム方式の処理装置100を用いて、発泡積層シート1bを取得した。比較例1に係るラミネート処理及び架橋処理の際の加熱温度及びラインスピードは、表2に示す実施例におけるボックス20の大きさ0.01mの場合において水蒸気温度が200℃の温度条件下でラインスピードが4m/分とした場合(以下、この場合を「実施例1」と称する)に対応させて、加熱温度を200℃、ラインスピードを4m/分と固定した。
【0057】
比較例1では、ラミネート処理を行った後に架橋処理を行うことで、発泡積層シート1aを得た。この場合についても、架橋処理後に実施例と同様、ラミネート強度及び発泡倍率の評価を行った。比較例1においても、架橋処理後に最終的にはラミネート強度が十分で且つ発泡倍率が適正な発泡積層シート1aを得ることができるものの、このような発泡積層シート1aを得るためには、ラミネート処理及び架橋処理の二つの工程を経なければならかった。これに対し、実施例1では、上述したように、ラインスピードが4m/分まで早くなっても、ラミネート強度が良好であり、且つ、発泡倍率が好適な発泡積層シート1aが、一つの工程で行われるラミネート処理及び架橋処理によって取得できた。したがって、実施例1と比較例1とを比較すると、同じラインスピード4m/分であっても、全体の工程としては、実施例1は比較例1に比べて、ラミネート処理が十分に行われ且つ架橋処理が適正に行われた発泡積層シート1aを得るために必要な時間が短く低コスト化が実現できる。したがって、実施例1の場合は比較例1の場合に比べ発泡積層シート1aの生産性が高いことが確認された。
【0058】
また、比較例1のようにラミネート処理及び架橋処理を二つの工程で行う場合においては、例えばラミネート処理を行った後、架橋処理を行う前の段階では発泡積層シート1aのラミネート強度が十分ではない場合もある。この場合、ラミネート処理を行った後、架橋処理を行う前の段階における発泡積層シート1aの保管方法が難しく、保管方法によっては、架橋処理を行う前に紙基材から樹脂組成物層が剥がれてしまう可能性等もある。よって、比較例1の場合には、発泡積層シート1aの生産性を安定的に高めることが難しかった。これに対し、実施例1では、上述したように、ラミネート処理及び架橋処理が一つの工程で行われるので、架橋処理を行う前に紙基材から樹脂組成物層が剥がれてしまう可能性等がなく、安定的に発泡積層シート1aの生産性を高めることができる。
【符号の説明】
【0059】
1…積層シート、1a…発泡積層シート、3…紙基材、5…樹脂組成物層、5a…発泡樹脂層、10…処理装置、15…蒸気噴霧装置、15a…噴霧ノズル、V…過熱水蒸気。
図1
図2
図3
図4