(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハなどの、高平坦度が要求される半導体ウェーハの表面研磨法は、半導体の両面を同時に研磨する両面研磨法と、片面のみを研磨する片面研磨法とに大別される。片面研磨法は、比較的硬質な研磨布を用いる粗研磨から、比較的軟質な研磨布を用いる仕上げ研磨まで、広く用いられている。
【0003】
ここで、
図1を用いて、従来用いられている片面研磨装置10による一般的な片面研磨方法を説明する。研磨装置10は、バッキングプレート11を介して半導体ウェーハ1を把持する研磨ヘッド12と、研磨布13が貼付された回転定盤14とを有する。なお、研磨ヘッド12は、研磨ヘッド12を回転させる回転機構と、研磨ヘッド12を回転定盤14の内外に移動させる移動機構を備える。かかる片面研磨装置10においては、研磨ヘッド12は半導体ウェーハ1を把持しつつ回転定盤14の上面に貼付された研磨布13に対して半導体ウェーハ1の被研磨面(すなわち、研磨ヘッド12と反対側の面)を押圧し、研磨ヘッド12と回転定盤14を共に回転させることにより研磨ヘッド12と回転定盤14とを相対運動させ、研磨液供給手段15から研磨液16を供給しながら半導体ウェーハ1の被研磨面のみを化学機械研磨する。
【0004】
片面研磨により、ある程度の高平坦度を達成することはできるが、完全な平坦面を得ることはできない。特に、半導体ウェーハ周縁部における「面ダレ」と呼ばれる研磨後の平坦度の悪化は現在のところ、不可避である。そこで、研磨による面ダレを防止し、平坦度の高い半導体ウェーハを得るための試みが行われている。
【0005】
例えば、特許文献1では、研磨が終了するまでに要する研磨時間を少なくとも2段階に分割し、その分割された研磨と研磨の間に休息時間を設けて、1枚の半導体ウェーハにつき多段階の研磨をする半導体ウェーハの研磨方法が記載されている。この研磨方法では、研磨と研磨の間に休息時間を設けて多段階の研磨を行って、研磨時間が長時間化するときに生じる平坦度の悪化を防止することにより、研磨面の面ダレを抑制することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の研磨方法により、従来よりも高平坦度に半導体ウェーハを仕上げ研磨することができるが、かかる方法により研磨された後の半導体ウェーハの平坦度では、微細化が益々進む今日において不十分である。さらに、複数枚の半導体ウェーハを研磨した後のそれぞれの半導体ウェーハの平坦度にばらつきが大きく、歩留まりの悪化にもつながる。
【0008】
そこで本発明は、研磨後の半導体ウェーハの平坦度を高め、かつ平坦度のばらつきを抑制することのできる枚葉式片面研磨方法および枚葉式片面研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決する方途について鋭意検討した。ここで、バッキングプレートを介して研磨ヘッドに吸着されることで、半導体ウェーハが把持されることは既述のとおりである。ところで、バッキングプレートは接着剤等により研磨ヘッドに接着されているため、各部材の影響により半導体ウェーハを把持するバッキングプレートの把持面には、nmオーダーの微小な凹凸が不可避的に存在する。研磨時においては、かかる凹凸により半導体ウェーハに不均一な圧力が加わるために、半導体ウェーハの把持面に存在する微小な凹凸が研磨後の半導体ウェーハに転写されることで研磨取り代形状の面内ばらつきが発生し、それが、平坦度の悪化や、平坦度のばらつきの原因となり、特にウェーハの外周部で顕著であることに本発明者は着目した。そこで、研磨ヘッドと、半導体ウェーハとの相対位置を研磨ヘッドの回転方向に移動させた後に、研磨ヘッドに半導体ウェーハを把持させる持ち替え工程を行うことにより、微小な凹凸の影響を平準化することができ、その結果、研磨後の半導体ウェーハの平坦度を向上させ、かつ平坦度のばらつきを抑制できることを本発明者は知見し、本願発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
【0010】
本発明による半導体ウェーハの枚葉式片面研磨方法は、研磨ヘッドに把持された半導体ウェーハを定盤に押圧して前記半導体ウェーハを研磨する研磨工程と、前記研磨ヘッドに把持された前記半導体ウェーハを、前記定盤から該定盤外のトレイ上に搬送し、次いで前記研磨ヘッドから前記半導体ウェーハを離脱させて前記トレイに前記半導体ウェーハを載置し、該載置した前記半導体ウェーハおよび前記研磨ヘッドの相対位置を前記研磨ヘッドの回転方向に移動させ、その後前記載置された前記半導体ウェーハを前記研磨ヘッドにより把持する持ち替え工程と、を含み、前記研磨工程を複数回行い、該複数回の研磨工程の合間に、前記持ち替え工程を少なくとも1回以上行うことを特徴とする。
【0011】
ここで、前記複数回をN回(但し、Nは2以上の整数とする)としたときに、前記持ち替え工程を(N−1)回行うことが好ましい。
【0012】
この場合、前記持ち替え工程における前記回転方向の移動を(360/N)度とすることが好ましい。
【0013】
また、本発明による半導体ウェーハの枚葉式片面研磨装置は、半導体ウェーハを把持し、回転機構および移動機構を備える研磨ヘッドと、前記半導体ウェーハを研磨する研磨布が貼付された定盤と、前記半導体ウェーハを載置するトレイを備える架台と、前記トレイに載置された前記半導体ウェーハを前記研磨ヘッドが把持するときに、前記半導体ウェーハおよび前記研磨ヘッドの、該研磨ヘッドの回転方向における相対位置を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0014】
この場合、前記架台は回転手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、研磨ヘッドと、半導体ウェーハとの相対位置を研磨ヘッドの回転方向に移動させた後に、研磨ヘッドに半導体ウェーハを把持させる持ち替えを行うので、研磨後の半導体ウェーハの平坦度を高め、かつ平坦度のばらつきを抑制することのできる枚葉式片面研磨方法および枚葉式片面研磨装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図2は、本発明に従う枚葉式片面研磨装置を用いた枚葉式片面研磨方法における各工程の断面構造を模式的に示したものであり、(A)は研磨工程を示す模式図であり、(B)は持ち替え工程を示す模式図である。なお、
図2は、説明の便宜上、半導体ウェーハおよび装置の構成要素の縦横の比率を実際の比率から誇張して示している。また、図面の簡略化のため、構成の要部のみを模式的に示すこととする。
【0018】
(枚葉式片面研磨装置)
図2(A)は、本発明の一実施形態に従う半導体ウェーハの枚葉式片面研磨装置100の研磨工程における模式図である。この枚葉式片面研磨装置100は、半導体ウェーハ1を把持し、回転機構および移動機構を備える研磨ヘッド120と、半導体ウェーハ1を研磨する研磨布130が貼付された定盤140と、半導体ウェーハ1を載置するトレイ190を備える架台180と、を有する。ここで、枚葉式片面研磨装置100は、トレイ190に載置された半導体ウェーハ1を研磨ヘッド120が把持するときに、半導体ウェーハ1および研磨ヘッド120の、研磨ヘッド120の回転方向における相対位置を制御する制御部170を有することを特徴とする。かかる構成を有することにより、後述の導体ウェーハの枚葉式片面研磨方法を行うことができる。以下、各構成の詳細を説明する。
【0019】
研磨ヘッド120は、一般的にバッキングプレート110を介して半導体ウェーハ1を把持する。研磨ヘッド120とバッキングプレート110とは、従来公知の接着剤等により貼り合わせられる。半導体ウェーハ1の把持にあたっては、水等の液体による表面張力または真空吸着が用いられることが一般的であるが、研磨ヘッド120は任意の手段により半導体ウェーハ1を把持および離脱することができる。また、この研磨ヘッド120は、研磨ヘッド120を昇降および定盤の内外に搬送可能な移動機構を備え、また、研磨ヘッド120を回転させることのできる回転機構を備える。
【0020】
定盤140には、粗研磨から仕上げ研磨までの所望の研磨目的に応じた番手の研磨布130が貼付される。また、半導体ウェーハ1を研磨する際には、モーター等により定盤140を回転するのが一般的である。
【0021】
なお、図示しないが、本実施形態に従う枚葉式片面研磨装置100は
図1を用いて既述の研磨液供給手段を有してもよい。かかる研磨液供給手段を用いることで、半導体ウェーハ1を化学機械研磨することができる。もちろん、本実施形態における研磨は化学機械研磨に限られず、機械研磨であっても本発明は適用可能である。
【0022】
定盤140外には、半導体ウェーハ1を一時的の載置するためのトレイ190が設けられる。このトレイ190は架台180上に設置されることが通常である。この架台180は回転手段を備えていてもよく、その場合制御部170によって回転を制御することができる。回転手段を備える架台180の一具体例として、ターンテーブル181を挙げることができる。すなわち、トレイ190をターンテーブル181上に設置してもよい。以下、回転手段を備えない一般的な架台を用いる実施形態を説明する。
【0023】
ここで、本実施形態の特徴事項の一つである制御部170について説明する。既述のとおり、制御部170は、トレイ190に載置された半導体ウェーハ1を研磨ヘッド120が把持するときに、半導体ウェーハ1および研磨ヘッド120の、研磨ヘッド120の回転方向における相対位置を制御する。具体的には以下のようにして、かかる相対位置を制御することができる。すなわち、
図2(A)に示すように、研磨ヘッド120が半導体ウェーハ1を把持していた状態から、半導体ウェーハ1を把持しながら研磨ヘッド120をトレイ190上に搬送する。次いで、研磨ヘッド120から半導体ウェーハ1を離脱させて、トレイ190に半導体ウェーハ1を載置する。その後、研磨ヘッド120を回転させる。この回転自体は、モーター等の一般的な手段を用いることができるが、回転角度を所望の角度だけ回転させて、半導体ウェーハ1および研磨ヘッド120の、研磨ヘッド120の回転方向における相対位置を移動させることが重要である。
【0024】
従来における片面研磨装置では、半導体ウェーハを研磨ヘッドにより把持する際に、半導体ウェーハに設けられるノッチまたはオリエンテーションフラットに対して、研磨ヘッドの回転方向における把持面の位置合わせなどは行っていないし、ましてや上述の相対位置の制御も行っていない。既述のとおり、研磨ヘッドに貼り付けられたバッキングプレートの半導体ウェーハとの把持面には微小な凹凸が存在するため、かかる凹凸の影響により半導体ウェーハの研磨後の平坦度の向上や、複数枚の半導体ウェーハを研磨したときの平坦度のばらつきの改善には限界があったのである。
【0025】
本実施形態に従う枚葉式片面研磨装置100は、前述の制御部170を有するので、詳細を後述する半導体ウェーハの持ち替えを行うことができる。かかる持ち替えにより、研磨後の半導体ウェーハの平坦度を高め、かつ平坦度のばらつきを抑制することができる。
【0026】
ここで、本実施形態に従う枚葉式片面研磨装置100は、半導体ウェーハ1および研磨ヘッド120の、研磨ヘッド120の回転方向における相対位置の移動度を検出することのできる検出部を有することも好ましい。このような検出部として、レーザー検知機等を研磨ヘッド120に設けることができる。他にも、研磨ヘッド120のサーボモーターのパルス制御等により、研磨ヘッドを回転させた角度を検出することもできる。
【0027】
なお、架台180として回転手段を備えるターンテーブル181を用いる場合、上記実施形態において研磨ヘッド120およびターンテーブル181のいずれか一方または両方を回転させればよい。また、研磨ヘッド120と同様に、サーボモーターのパルス制御等によってターンテーブル181を回転させることができ、その回転角度を検出することもできる。
【0028】
(枚葉式片面研磨方法)
次に、本発明の一実施形態に従う半導体ウェーハの枚葉式片面研磨方法を説明する。
本発明の一実施形態に従う半導体ウェーハの枚葉式片面研磨方法は、研磨ヘッド120に把持された半導体ウェーハ1を定盤140に押圧して半導体ウェーハ1を研磨する研磨工程(
図2(A))と、研磨ヘッド120に把持された半導体ウェーハ1を、定盤140から該定盤外のトレイ190上に搬送し、次いで研磨ヘッド120から半導体ウェーハ1を離脱させてトレイ190に半導体ウェーハ1を載置し、該載置した半導体ウェーハ1および研磨ヘッド120の相対位置を研磨ヘッド120の回転方向に移動させ、その後前記載置された半導体ウェーハ1を研磨ヘッド120により把持する持ち替え工程(
図2(B))と、を含む。本実施形態では、前記研磨工程を複数回行い、該複数回の研磨工程の合間に、前記持ち替え工程を少なくとも1回以上行うことを特徴とする。かかる工程を経ることで、研磨後の半導体ウェーハの平坦度を高め、かつ平坦度のばらつきを抑制することができる。以下、各工程について説明する。
【0029】
本実施形態において、研磨工程(
図2(A))を複数回行うことが本実施形態の特徴の一つであるが、複数回行う研磨工程のそれぞれは、常法に従い行うことができる。既述のとおり、研磨ヘッド120が半導体ウェーハ1を把持しつつ定盤140の上面に貼付された研磨布130に対して半導体ウェーハ1の被研磨面(すなわち、研磨ヘッド120と反対側の面)を押圧し、研磨ヘッド120と定盤140を共に回転させることにより研磨ヘッド120と定盤140とを相対運動させ、研磨液供給手段から研磨液を供給しながら半導体ウェーハ1の被研磨面のみを化学機械研磨するのが一般的である。しかしながら、研磨ヘッド120のみを回転させてもよいし、定盤140のみを回転させてもよい。また、研磨液を供給せずに機械研磨をしてもよい。
【0030】
また、持ち替え工程(
図2(B))は、制御部170により行われる、研磨ヘッド120と半導体ウェーハ1との研磨ヘッドの回転方向における相対位置の制御に既述のとおりである。すなわち、一旦半導体ウェーハ1を研磨ヘッド120からトレイ190に離脱させ、半導体ウェーハ1および研磨ヘッド120の相対位置を研磨ヘッド120の回転方向に移動させた後に、研磨ヘッド120が半導体ウェーハを再度把持することで、半導体ウェーハ1は持ち替えられる。
【0031】
ここで、本実施形態において、研磨工程(
図2(A))を複数回行い、該複数回の研磨工程の合間に、持ち替え工程(
図2(B))を少なくとも1回以上行うことが重要である。すなわち、複数回の研磨工程の合間に、持ち替え工程を行うことにより、研磨ヘッド120と半導体ウェーハ1との把持面であるバッキングプレート110に存在するnmオーダーの微小な凹凸による影響を平準化することができる。その結果、研磨後の半導体ウェーハの平坦度を高め、かつ平坦度のばらつきを抑制できるのである。
【0032】
ここで、本実施形態において、上記複数回をN回(但し、Nは2以上の整数とする)としたときに、前記持ち替え工程を(N−1)回行うことが好ましい。すなわち、複数回行う研磨工程の全ての間で持ち替え工程を行うことが好ましい。半導体ウェーハの持ち替えにより、凹凸の影響を平準化することができ、研磨後の半導体ウェーハの平坦度を高め、かつ平坦度のばらつきを抑制できる。持ち替え回数が多ければ多いほど、凹凸の影響が小さくなるため好ましいが、持ち替え回数が過剰になると生産効率の低下を招くため、限定を意図しないものの、上限を100回とすることができる。一方、一度でも持ち替えを行えば本発明の効果を得ることができるため、持ち替え回数の下限は1回である。なお、本発明の効果をより確実に得つつ、生産効率を向上させるためには、持ち替え回数を1〜10回とすることが好ましく、2〜8回とすることがより好ましく、3〜6回とすることが最も好ましい。
【0033】
また、本実施形態において、半導体ウェーハ1および研磨ヘッド120の相対位置を研磨ヘッド120の回転方向に移動される回転角度は、相対位置が変化する限りは任意であり限定されない。しかしながら、半導体ウェーハ1の把持面における凹凸の影響を平準化して抑制するためには、少なくとも2度以上回転させて相対位置を移動させることが好ましく、5度以上回転させて相対位置を移動させることがより好ましい。また、凹凸の影響を最も平準化して抑制するためには、上記複数回をN回としたときに、半導体ウェーハ1および研磨ヘッド120の相対位置を研磨ヘッド120の回転方向に移動される回転角度を(360/N)度とすることが最も好ましい。
【0034】
ここで、本実施形態の特徴である持ち替え工程の実施に依存せず、研磨による研磨取り代は研磨時間に比例する。N回行う研磨工程の合計研磨時間Tは、所望の取り代に応じて適宜設定することができ、各研磨工程の研磨時間は任意である。ただし、上述のように回転角度を(360/N)度とする場合には、凹凸の影響を平準化するために研磨工程毎の研磨時間を同じにする(すなわち、T/N)ことが好ましい。
【0035】
なお、本発明は任意の半導体ウェーハに適用可能であり、何らの限定も意図しないが、例えばシリコンウェーハ、化合物半導体(GaAs、GaN、SiC)ウェーハを例示することができ、その表面にエピタキシャル層を有する半導体エピタキシャルウェーハにも本発明を適用可能である。
【0036】
ここで、本明細書で言う「同じ」または「等しい」とは、厳密に数学的な意味での等しさを意味するものではなく、半導体ウェーハの製造工程上生ずる不可避な誤差をはじめ、本発明の作用効果を奏する範囲で許容される誤差を含むものであることは勿論である。例えば、2%程度の誤差は本発明に含まれる。
【0037】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。例えば、バッキングプレート110、研磨ヘッド120、研磨布130、定盤140、トレイ170、架台180(ターンテーブル181)は任意の部材を適用することが可能である。
【実施例1】
【0038】
(実施例1−1)
直径300mm、厚み775μmのシリコンウェーハを用意し、スウェード素材の研磨布を定盤の表面に設置し、
図2(A),(B)に示す枚葉式片面研磨装置100により仕上げ研磨を行った。また、バッキングプレート110にはスウェード素材の部材を使用した。研磨と研磨の間には毎回シリコンウェーハの持ち替えを行った。研磨条件は以下のとおりとした。
研磨圧力:135g/cm
2
研磨工程回数:6回(持ち替え工程回数:5回)
合計研磨時間:360秒
各研磨工程における研磨時間:60秒
持ち替え時の回転角度:60度
研磨液:アルカリ研磨液(コロイダルシリカ含有)
以上の片面研磨を経て、実施例1−1にかかるシリコンウェーハを得た。
【0039】
(実施例1−2)
実施例1−1における研磨工程回数、研磨時間および回転角度を下記の表1に記載の条件に変えた以外は、実施例1−1と同様にして実施例1−2にかかるシリコンウェーハを得た。
【0040】
(従来例1−1)
実施例1−1における研磨工程回数、持ち替え工程回数、研磨時間および回転角度を下記の表1に記載の条件に変えた以外は、実施例1−1と同様にして従来例1−1にかかるシリコンウェーハを得た。すなわち、従来例1−1では持ち替え工程を行っていない。
【0041】
【表1】
【0042】
(評価1:シリコンウェーハの研磨後の形状)
実施例1−1、1−2および従来例1−1に係る研磨後のシリコンウェーハの形状を、平坦度測定装置(KLA-Tencor社製:WaferSight)を用いて測定した。結果を
図3〜
図5にそれぞれ示す。
図3〜
図5は、実施例1−1、1−2および従来例1−1の研磨後のシリコンウェーハの形状プロファイルを、円周方向に8セクター(45度刻み)で区切ったものである。グラフの横軸はウェーハ中心からの径方向の位置を示す。すなわち、ウェーハ中心は0mmに相当し、ウェーハの外周端は150mmに相当する。また、縦軸はウェーハの厚さの相対値であり、任意単位(A.U.)としているが、図中の縦方向の矢印は厚さ範囲の絶対値を示す。
【0043】
図3〜
図5より、従来例1−1では周縁部のばらつきは150nm程度あったのに対して、実施例1−1では周縁部のばらつきを20nmに改善することができ、実施例1−2では周縁部のばらつきを50nmに改善することができることがわかった。
【実施例2】
【0044】
(実施例2−1)
直径300mm、厚み775μmのシリコンウェーハを63枚用意し、スウェード素材の研磨布を定盤の表面に設置し、
図2(A),(B)に示す枚葉式片面研磨装置100により仕上げ研磨を行った。研磨と研磨の間には毎回シリコンウェーハの持ち替えを行った。研磨条件は以下のとおりとした。
研磨圧力:135g/cm
2
研磨工程回数:6回(持ち替え工程回数:5回)
合計研磨時間:360秒
各研磨工程における研磨時間:60秒
持ち替え時の回転角度:60度
研磨液:アルカリ研磨液(コロイダルシリカ含有)
以上の片面研磨を経て、実施例2−1にかかるシリコンウェーハを得た。
【0045】
(実施例2−2)
実施例2−1における研磨工程回数、研磨時間および回転角度を下記の表2に記載の条件に変えた以外は、実施例2−1と同様にして実施例2−2にかかるシリコンウェーハを得た。
【0046】
(実施例2−3)
実施例2−1における研磨工程回数、研磨時間および回転角度を下記の表2に記載の条件に変えた以外は、実施例2−1と同様にして実施例2−3にかかるシリコンウェーハを得た。
【0047】
(実施例2−4)
実施例2−1における研磨工程回数、研磨時間および回転角度を下記の表2に記載の条件に変えた以外は、実施例2−1と同様にして実施例2−4にかかるシリコンウェーハを得た。
【0048】
(従来例2−1)
実施例2−1における研磨工程回数、持ち替え工程回数、研磨時間および回転角度を下記の表1に記載の条件に変えた以外は、実施例2−1と同様にして従来例2−1にかかるシリコンウェーハを得た。すなわち、従来例2−1では持ち替え工程を行っていない。
【0049】
【表2】
【0050】
(評価2)
実施例2−1〜2−4および従来例2−1により得られた各シリコンウェーハの研磨前後のESFQR(Edge flatness metric, Sector based, Front surface referenced, least sQuares fit reference plane, Range of the data within sector)を、平坦度測定装置(KLA-Tencor社製:WaferSight)を用いて測定した。実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3および従来例2−1におけるESFQRの研磨前後の変化量([研磨前のESFQR]−[研磨後のESFQR])を
図6に示す。また、実施例2−1、実施例2−2、実施例2−3および従来例2−1における研磨前後のESFQRの変化量の平均値および標準偏差を表3に示す。同様に、実施例2−2および実施例2−4におけるESFQRの研磨前後の変化量を
図7に示し、その平均値および標準偏差を表3に併せて示す。
【0051】
なお、ESFQRとは、SEMI規格に規定される、ウェーハの平坦度を示す指標であり、ウェーハ全周の周縁領域に形成した扇形(ウェーハの外周から30mmの範囲で円周方向に72等分)の各領域のウェーハ厚みについて、最小二乗法により求められた基準面からの最大変位量の絶対値の和を算出することにより求めるものである。なお、ESFQRの値が小さいほど、ウェーハの平坦度が良好であることを意味する。
【0052】
【表3】
【0053】
図6および表3から、従来例2−1に比べて、実施例2−1〜2−3では、研磨前後のESFQR値の変化量の絶対値およびばらつきを小さくすることができたことが確認できた。また、
図7および表3から、研磨ヘッドとシリコンウェーハとの回転角度を5度とした実施例2−4でも、従来例2−1に比べて研磨前後のESFQR値の変化量の絶対値およびばらつきを小さくすることができたことが確認できた。ただし、実施例2−2と実施例2−4とを比べると、回転角度を(360/[研磨工程数])度とすることで、よりESFQR値の変化量の絶対値およびばらつきを小さくすることができたことが確認できた。また、研磨工程回数および持ち替え工程回数が多いほど、本発明の効果をより確実に得られることも確認できた。