特許第6422873号(P6422873)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6422873多層反射膜付き基板、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランク、EUVリソグラフィー用反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6422873
(24)【登録日】2018年10月26日
(45)【発行日】2018年11月14日
(54)【発明の名称】多層反射膜付き基板、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランク、EUVリソグラフィー用反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20181105BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20181105BHJP
【FI】
   G03F1/24
   G03F7/20 521
【請求項の数】10
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-536573(P2015-536573)
(86)(22)【出願日】2014年9月9日
(86)【国際出願番号】JP2014073727
(87)【国際公開番号】WO2015037564
(87)【国際公開日】20150319
【審査請求日】2017年7月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-188329(P2013-188329)
(32)【優先日】2013年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】尾上 貴弘
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−268750(JP,A)
【文献】 特開平11−354407(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/068223(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/102313(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/071126(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/071086(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/014904(WO,A1)
【文献】 特開2008−016821(JP,A)
【文献】 羽多野 忠,極紫外用の高反射率多層膜,光学,2002年,31巻7号,pp. 532-537
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/00− 1/86
G03F 7/20− 7/24
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に形成された、高屈折率材料としてのSiを含む層と低屈折率材料を含む層とが周期的に複数積層されてなる多層反射膜と、
該多層反射膜上に形成された、前記多層反射膜を保護するRu系保護膜とを有し、
前記多層反射膜の基板と反対側の表面層は前記Siを含む層であり、
さらに、前記Ru系保護膜はRu及びTiを含むRu化合物を含み、該Ru化合物におけるRuの割合が50原子%より大きく100原子%未満であり前記Ru化合物をX線回折法のIn−Plane測定法で測定したときに、回折線ピークが主として(100)と(110)である、多層反射膜付き基板。
【請求項2】
前記Ru化合物におけるRuの割合が95原子%より大きく100原子%未満である、請求項に記載の多層反射膜付き基板。
【請求項3】
前記Ru系保護膜における前記基板側の下層部のRu含有量よりも、上層部のRu含有量が多い、請求項1又は2に記載の多層反射膜付き基板。
【請求項4】
さらに、前記多層反射膜と前記Ru系保護膜との間に酸化ケイ素を含む膜を有する、請求項1〜のいずれかに記載の多層反射膜付き基板。
【請求項5】
前記低屈折率材料がMoである、請求項1〜のいずれかに記載の多層反射膜付き基板。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の多層反射膜付き基板と、該多層反射膜付き基板におけるRu系保護膜上に形成された、EUV光を吸収する吸収体膜とを有するEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク。
【請求項7】
前記吸収体膜上にさらにレジスト膜を有する、請求項に記載のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク。
【請求項8】
請求項に記載のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランクにおける吸収体膜を、前記レジスト膜を介してパターニングして、前記Ru系保護膜上に吸収体膜パターンを形成する工程を有する、EUVリソグラフィー用反射型マスクの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜のいずれかに記載の多層反射膜付き基板と、当該多層反射膜付き基板におけるRu系保護膜上に形成された、EUV光を吸収する吸収体膜パターンとを有するEUVリソグラフィー用反射型マスク。
【請求項10】
請求項に記載のEUVリソグラフィー用反射型マスクの製造方法により得られたEUVリソグラフィー用反射型マスク又は請求項に記載のEUVリソグラフィー用反射型マスクを使用して、半導体基板上に転写パターンを形成する工程を有する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造等に使用される露光用マスクを製造するための原版である多層反射膜付き基板、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランク、EUVリソグラフィー用反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年における超LSIデバイスの高密度化、高精度化の更なる要求に伴い、極紫外(Extreme Ultra Violet、以下、EUVと称す)光を用いた露光技術であるEUVリソグラフィーが有望視されている。なお、ここで、EUV光とは軟X線領域又は真空紫外線領域の波長帯の光を指し、具体的には波長が0.2〜100nm程度の光のことである。
【0003】
このような反射型マスクは、ガラスやシリコンなどの基板上に、露光光を反射する多層反射膜が形成され、その多層反射膜上に露光光を吸収する吸収体膜がパターン状に形成されたものである。パターン転写を行う露光機において、それに搭載された反射型マスクに入射した光は、吸収体膜パターンのある部分では吸収され、吸収体膜パターンのない部分では多層反射膜により反射される。そして反射された光像が反射光学系を通してシリコンウエハ等の半導体基板上に転写される。
【0004】
このような反射型マスクを用いて半導体デバイスの高密度化、高精度化を達成するためには、反射型マスクにおける反射領域(多層反射膜の表面)が露光光であるEUV光に対して高反射率を備えることが必要とされる。
【0005】
上記多層反射膜は前記の高反射率を達成すべく、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層膜であり、一般的には、重元素又はその化合物の薄膜と、軽元素又はその化合物の薄膜とが交互に40〜60周期程度積層された多層膜が用いられる。例えば、波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜としては、Mo膜とSi膜を交互に40周期程度積層したMo/Si周期積層膜が好ましく用いられる。なおMoは大気により容易に酸化して多層反射膜の反射率が低下するので、多層反射膜の最上層をSi膜とすることが行われている。
【0006】
このEUVリソグラフィーにおいて用いられる反射型マスクとしては、例えば下記特許文献1に記載された露光用反射型マスクがある。すなわち特許文献1には、基板と、前記基板上に形成され、2種の異なる膜が交互に積層された多層膜からなる反射層と、前記反射層上に形成されたルテニウム膜からなるバッファ層と、所定のパターン形状をもって前記バッファ層上に形成された軟X線を吸収し得る材料からなる吸収体パターンとを有することを特徴とする反射型フォトマスクが提案されている。
【0007】
前記バッファ層は保護膜とも呼ばれる。前記吸収体パターンを形成する際にレジストを介して吸収体膜の一部をエッチング加工するが、吸収体パターンの形成の完全を期すために、若干のオーバーエッチングを行うため、吸収体膜の下の膜もエッチングを受けることになる。その際に吸収体膜の下の多層反射膜がダメージを受けることを防止するために、保護膜が設けられる。
【0008】
この保護膜について、さらに、多層反射膜表層のSi層と保護膜との間での拡散層形成(多層反射膜の反射率減少につながる)を抑制する観点から、RuにZrやBを添加したRu合金からなる保護膜が提案されている(特許文献2)。
【0009】
また、特許文献3には、スパッタリングターゲットに起因する異物を低減することができるEUVマスクブランクスの製造方法として、基板上へMo膜及びSi膜を交互成膜して多層反射膜を形成し、この多層反射膜上にRu膜またはRu化合物膜の成膜を行い、かつこれらの成膜をイオンビームスパッタリング法により、同一の成膜チャンバ内において、所定の条件で実施することが提案されている。また、同文献には前記Ru化合物として、RuB、RuNb及びRuZrが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−122981号公報
【特許文献2】特開2008−016821号公報
【特許文献3】特開2012−129520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、EUVリソグラフィーを利用した半導体装置製造においては、当該リソグラフィーは高真空下で行われ、EUV光照射時またはEUV光照射後に、カーボン等の不純物が上記反射型マスク上に析出することがある。このため、リソグラフィー終了後には反射型マスクを洗浄することが必要である。そして通常、反射型マスクは繰り返し使用されるので、マスク洗浄も繰り返し行われることになる。
【0012】
それゆえ、反射型マスクには十分な洗浄耐性を備えていることが要求される。反射型マスクにおいて吸収体膜パターンが形成されていない部分においては保護膜が形成されているので、吸収体膜パターン及び保護膜の双方が洗浄耐性を備えていることが求められる。
【0013】
しかしながら、本発明者の検討によると、上記特許文献1〜3に開示されているような従来構成の反射型マスクにおいては、通常のRCA洗浄によるマスク洗浄を複数回行うと、露出している反射領域の多層反射膜上のRu系保護膜の膜剥れが生じることが判明した。これは、以下の原因による。すなわち、特許文献1〜3のような構成であると、多層反射膜のSi層からSiが時間の経過とともにRu系保護膜の方へ、Ru系保護膜の粒界の間を移動して拡散し(そしてRuシリサイド(RuSi)を形成し)、Ru系保護膜の表層にまで到達して洗浄液やガスにより酸化反応を受けてSiOが生成したり、保護膜が緻密でない場合には、洗浄液やガスが保護膜内に浸透し、保護膜内(保護膜内部もしくは下部)でSiOが生成する。そして、RuとSiOとの密着性が低いために、これらが剥離する。
【0014】
このような膜剥れが生じると、新たな発塵の原因となったり、反射率の不均一性を招くことになるので、半導体基板上へのパターン転写時に、パターンが正確に転写できない恐れがあり、これは重大な問題である。
【0015】
そこで本発明の目的は、第1に、高反射率が得られ、且つ洗浄耐性に優れた反射型マスクを与える多層反射膜付き基板を提供することであり、第2に、繰り返し洗浄後においても高反射率を維持し、且つ膜剥がれが発生しない、洗浄耐性に優れた反射型マスクを与える多層反射膜付き基板を提供することであり、第3に、当該多層反射膜付き基板を使用して製造されるEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク、例えば当該マスクブランクから得られるEUVリソグラフィー用反射型マスク及びその製造方法、並びにその反射型マスクを利用した半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は上記課題を解決するために検討を行い、Siがガスや洗浄液と接触して酸化されSiOを形成することは抑制が困難であるので、SiのRu系保護膜への拡散を抑制することが最も重要であると考えた。
【0017】
そして実際の検討の結果、Ru系保護膜に一定量のTiを添加すると、TiはSiと強固なシリサイドを形成してSiがその場に固定されるため、SiがRu系保護膜中において酸化を受けるような場所まで拡散することを抑制することができ、これによりRu系保護膜の剥離を抑制し、繰り返し洗浄にも十分な耐性を有するEUVリソグラフィー用反射型マスクが得られることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0018】
すなわち上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
(構成1)
基板と、該基板上に形成された、高屈折率材料としてのSiを含む層と低屈折率材料を含む層とが周期的に複数積層されてなる多層反射膜と、該多層反射膜上に形成された、前記多層反射膜を保護するRu系保護膜とを有し、前記多層反射膜の基板と反対側の表面層は前記Siを含む層であり、さらに、前記Ru系保護膜はRu及びTiを含むRu化合物を含み、該Ru化合物は化学量論的組成のRuTiよりもRuを多く含む、多層反射膜付き基板。
【0019】
上記構成1にあるように、高屈折率材料としてSiを使用した多層反射膜を有する多層反射膜付き基板において、多層反射膜の最表面を、Siを含む層とし、その上にTiを特定量含むRu系保護膜を形成することで、多層反射膜の最表面のSiがRu系保護膜中において酸化を受けるような場所まで拡散することが防止され、酸化ケイ素(SiO等)の形成が抑制される。これにより、洗浄耐性に優れたEUVリソグラフィー用反射型マスクを製造するための原版である多層反射膜付き基板が得られる。
【0020】
また、前記構成により、EUVリソグラフィー用反射型マスクを繰り返し洗浄した後においても、高いEUV光反射率を維持したEUVリソグラフィー用反射型マスクを製造するための原版である多層反射膜付き基板が得られる。
【0021】
(構成2)
前記Ru系保護膜において、Ru化合物をX線回折法のIn−Plane測定法で測定したときに、回折線ピークが主として(100)と(110)である、構成1に記載の多層反射膜付き基板。
【0022】
上記構成2にあるように、前記Ru系保護膜におけるRu化合物をX線回折法のIn−Plane測定法で測定したときに、回折線ピークが主として(100)と(110)である、すなわち(001)面に配向面を有するRu化合物とすることにより、多層反射膜のSi層からのSi拡散の抑制と、洗浄液やガスによる保護膜内への浸透が抑制される。これにより、さらに洗浄耐性に優れたEUVリソグラフィー用反射型マスクを製造するための原版である多層反射膜付き基板が得られる。
【0023】
(構成3)
前記Ru化合物におけるRuの割合が95原子%より大きく100原子%未満である、構成1又は2に記載の多層反射膜付き基板。
【0024】
上記構成3にあるように、本発明においてはRu化合物におけるRuの割合を95原子%より大きく100原子%未満の範囲にして、Tiの添加量を少なくしたとしても、十分なSi拡散抑制効果が得られる。それにより、Ru系保護膜についてRuによる高い透過率を達成することができる。
【0025】
(構成4)
前記Ru系保護膜における前記基板側の下層部のRu含有量よりも、上層部のRu含有量が多い、構成1〜3のいずれかに記載の多層反射膜付き基板。
上記構成4にあるように、本発明においては、Ru系保護膜における基板側の下層部のRu含有量よりも、上層部のRu含有量が多い構成とすることで、EUVリソグラフィー用反射型マスクを繰り返し洗浄した後においても、Ru系保護膜の剥離が防止された、十分な洗浄耐性を有し、かつ高いEUV光反射率を維持できるEUVリソグラフィー用反射型マスクを製造するための原版である多層反射膜付き基板が得られる。
【0026】
(構成5)
さらに、前記多層反射膜と前記Ru系保護膜との間に酸化ケイ素を含む膜を有する、構成1〜4のいずれかに記載の多層反射膜付き基板。
【0027】
上記構成5にあるように、多層反射膜とRu系保護膜との間に酸化ケイ素を含む膜を形成すると、酸化ケイ素はSiのRu系保護膜への拡散のバリアとして機能し、しかも酸化ケイ素を含む膜とRu系保護膜とは密着性に優れているため、Siの拡散抑制による繰り返し洗浄に対する優れた耐性という本発明の効果がより強く奏される。
【0028】
(構成6)
前記低屈折率材料がMoである、構成1〜5のいずれかに記載の多層反射膜付き基板。
【0029】
上記構成6にあるように、EUV光に対する良好な反射率を達成するためには、多層反射膜を構成する低屈折率材料を含む層における当該材料としてMoが好ましい。
【0030】
(構成7)
構成1〜6のいずれかに記載の多層反射膜付き基板と、該多層反射膜付き基板におけるRu系保護膜上に形成された、EUV光を吸収する吸収体膜とを有するEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク。
【0031】
上記構成7にあるように、本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランクは、本発明の多層反射膜付き基板のRu系保護膜上に、EUV光を吸収する吸収体膜を有する構成である。
【0032】
(構成8)
前記吸収体膜上にさらにレジスト膜を有する、構成7に記載のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク。
【0033】
上記構成8にあるように、本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランクには、前記吸収体膜上にさらにレジスト膜を有する態様も含まれる。
【0034】
(構成9)
構成8に記載のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランクにおける吸収体膜を、前記レジスト膜を介してパターニングして、前記Ru系保護膜上に吸収体膜パターンを形成する工程を有する、EUVリソグラフィー用反射型マスクの製造方法。
【0035】
上記構成9にあるように、本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランクにおける吸収体膜を、前記レジスト膜を介してパターニングすることで、前記Ru系保護膜上に吸収体膜パターンが形成される。このような工程を実施することで、洗浄耐性に優れた、本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクが得られる。
【0036】
(構成10)
構成1〜6のいずれかに記載の多層反射膜付き基板と、当該多層反射膜付き基板におけるRu系保護膜上に形成された、EUV光を吸収する吸収体膜パターンとを有するEUVリソグラフィー用反射型マスク。
【0037】
上記構成10にあるように、本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクの構成は、本発明の多層反射膜付き基板と、当該多層反射膜付き基板におけるRu系保護膜上に形成された、EUV光を吸収する吸収体膜パターンとを有する、というものである。
【0038】
(構成11)
構成9に記載のEUVリソグラフィー用反射型マスクの製造方法により得られたEUVリソグラフィー用反射型マスク又は構成10に記載のEUVリソグラフィー用反射型マスクを使用して、半導体基板上に転写パターンを形成する工程を有する、半導体装置の製造方法。
【0039】
上記構成11にあるように、本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクの製造方法により得られたEUVリソグラフィー用反射型マスク又は本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクを使用して、半導体基板上に転写パターンを形成し、その他種々の工程を経ることで、各種の半導体装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、高反射率が得られ、且つ洗浄耐性に優れた反射型マスクを与える多層反射膜付き基板が提供され、また、反射型マスクを繰り返し洗浄した後においても、高いEUV光反射率を維持し、且つ洗浄耐性に優れた反射型マスクを与える多層反射膜付き基板が提供され、さらに、当該多層反射膜付き基板を使用して製造されるEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク、例えば当該マスクブランクから得られるEUVリソグラフィー用反射型マスク及びその製造方法、並びにその反射型マスクを利用した半導体装置の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の多層反射膜付き基板の断面を示す模式図である。
図2】酸化ケイ素を含む膜を有する態様の本発明の多層反射膜付き基板の断面を示す模式図である。
図3】本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランクの断面を示す模式図である。
図4】本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクの製造方法を示す模式図である。
図5】パターン転写装置によりレジスト付き半導体基板にパターンを転写する工程を示す模式図である。
図6】本発明に使用されるRu化合物を多層反射膜上に異なる成膜方法で成膜した試料を、X線回折法のIn−Plane測定法で測定したときのX線回折データである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、膜上などでいう「上」とは、必ずしもその膜などの上面に接触して形成される場合に限られず、離間して上方に形成される場合も含んでおり、膜と膜の間に介在層が存在する場合も包含する意味で使用する。
【0043】
[多層反射膜付き基板]
図1は、本発明の多層反射膜付き基板の断面を示す模式図である。当該多層反射膜付き基板10は、基板12の上に、露光光であるEUV光を反射する多層反射膜14と、当該多層反射膜14上に設けられた、当該多層反射膜14を保護するためのRu系保護膜16とを備えている。
【0044】
<基板12>
本発明の多層反射膜付き基板10に使用される基板12としては、EUV露光の場合、露光時の熱による吸収体膜パターンの歪みを防止するため、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO2−TiO2系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
【0045】
基板12の転写パターン(後述の吸収体膜がこれを構成する)が形成される側の主表面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されている。例えば、EUV露光の場合、基板12の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。また、転写パターンが形成される側と反対側の主表面は、露光装置にセットするときに静電チャックされる面であって、その142mm×142mmの領域において、平坦度が1μm以下、更に好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。なお、本明細書において平坦度は、TIR(Total Indicated Reading)で示される表面の反り(変形量)を表す値で、基板表面を基準として最小二乗法で定められる平面を焦平面とし、この焦平面より上にある基板表面の最も高い位置と、焦平面より下にある基板表面の最も低い位置との高低差の絶対値である。
【0046】
また、EUV露光の場合、基板12として要求される表面平滑度は、基板12の転写パターンが形成される側の主表面の表面粗さが、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.1nm以下であることが好ましい。なお表面平滑度は、原子間力顕微鏡で測定することができる。
【0047】
さらに、基板12は、その上に形成される膜(多層反射膜14など)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
【0048】
<多層反射膜14>
本発明の多層反射膜付き基板10においては、以上説明した基板12の上に多層反射膜14が形成されている。この多層反射膜14は、EUVリソグラフィー用反射型マスクにおいてEUV光を反射する機能を付与するものであり、屈折率の異なる元素が周期的に積層された多層膜の構成を取っている。
【0049】
一般的には高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40〜60周期程度積層された多層膜が、前記多層反射膜14として用いられる。多層膜は、基板12側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層したものであってもよいし、基板12側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層したものであってもよい。
【0050】
なお、多層反射膜14の最表面の層、すなわち多層反射膜14の基板12と反対側の表面層は、高屈折率層である。上述の多層膜において、基板12側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層した高屈折率層/低屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は最上層が低屈折率層となる。低屈折率層が多層反射膜14の最表面を構成すると、これは容易に酸化されてしまい反射型マスクの反射率が減少するので、最上層の低屈折率層上に高屈折率層を形成して多層反射膜14とする。また、上述の多層膜において、基板12側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層した低屈折率層/高屈折率層の積層構造を1周期として複数周期積層する場合は最上層が高屈折率層となるので、その場合は、最上層の高屈折率層が多層反射膜14の最表面となる。
【0051】
本発明において、前記高屈折率層としては、Siを含む層が採用される。Siを含む材料としては、Si単体の他に、Siに、B、C、N、Oを含むSi化合物が挙げられる。Siを含む層を高屈折率層として使用することによって、EUV光の反射率に優れたEUVリソグラフィー用反射型マスクが得られる。また本発明において基板12としてはガラス基板が好ましく用いられるので、Siはそれとの密着性にも優れている。
【0052】
また前記低屈折率材料としては、Mo、Ru、Rh、及びPtから選ばれる元素やこれらの合金が用いられる。例えば波長13〜14nmのEUV光に対する多層反射膜14としては、好ましくはMo膜とSi膜を交互に40〜60周期程度積層したMo/Si周期積層膜が用いられる。
【0053】
このような多層反射膜14の単独での反射率は通常65%以上であり、上限は通常73%である。なお、多層反射膜14の各構成層の厚み、周期は、露光波長により適宜選択すればよく、そしてブラッグの法則を満たすように選択される。
【0054】
また、多層反射膜14において高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ複数存在するが、高屈折率層どうし、そして低屈折率層どうしの厚みは同じでも同じでなくともよい。また、多層反射膜14の最表面のSi層の膜厚は、反射率を低下させない範囲で調整することができる。具体的には最表面のSi層の膜厚は、3〜10nmとすることができる。
【0055】
多層反射膜14の形成方法は当該技術分野において公知であるが、例えばイオンビームスパッタ法により、各層を成膜することにより形成できる。上述したMo/Si周期多層膜の場合、例えばイオンビームスパッタ法により、まずSiターゲットを用いて厚さ4nm程度のSi膜を基板12上に成膜し、その後Moターゲットを用いて厚さ3nm程度のMo膜を成膜し、これを一周期として、40〜60周期積層して、多層反射膜14を形成する(最表面の層はSi膜とする)。
【0056】
<Ru系保護膜16>
上記で形成された多層反射膜14の上に、後述する、EUVリソグラフィー用反射型マスクの製造工程におけるドライエッチングや洗浄からの多層反射膜14の保護のため、Ru系保護膜16を形成することで、多層反射膜付き基板10として完成する。
【0057】
従来の反射型マスクでは多層反射膜上に保護膜が設けられ、Si層と保護膜との間での拡散層形成を抑制する観点から、RuにZrやBを添加したRu合金からなる保護膜が提案された。しかしこれでもSiの拡散抑制は不十分であり、SiがRu系保護膜に拡散し、酸化を受けて酸化ケイ素(SiO等)を形成し、反射型マスクの製造工程や製品として完成した後の使用における繰り返しの洗浄を受けることで膜剥れが生じてしまう。
【0058】
あるいは、酸化ケイ素はSiを通過させにくいため、Mo/Si多層反射膜とRu系保護膜との間に酸化ケイ素を含有する中間層を形成することも考えられる。しかしながら本発明者の検討によれば、このような中間層はRu系保護膜との密着性が不十分であるため、これらの接合部で膜剥れが発生してしまう。
【0059】
このようにSiが酸化を受けることや酸化ケイ素(SiO等)と既存のRu系保護膜の密着性が不十分であるということについては回避が非常に困難であることから、本発明ではRuにTiを所定量添加したRu化合物を含む保護膜を採用する。TiはSiと強固なシリサイドを形成して、その部分でSiの移動を止めるので、結果としてSiのRu系保護膜への拡散が抑制されるものと考えられる。
【0060】
より具体的には、SiはRu系保護膜中に拡散するが、酸化を受けて酸化ケイ素を生じるような位置まで拡散する前にTiに捕獲されると考えられる。そしてこのようにして形成されたTiシリサイドとRu化合物との密着性は良好である。従って本発明におけるRu系保護膜によれば、Ru系保護膜へSiが拡散してガスや洗浄液と接触して酸化ケイ素(SiO等)が生成し、膜剥れを生じるのを防ぐことができ、またTiシリサイドとRu化合物との間でも膜剥れが非常におきにくく、これにより高反射率及び優れた洗浄耐性を有する反射型マスクが得られる。
【0061】
本発明において採用されるRu系保護膜16は、Ru及びTiを所定量含むRu化合物を含むものである。より具体的には、前記Ru化合物においてRuの量は、化学量論的組成のRuTiにおけるそれよりも多い。このようにRuの量を化学量論的組成のものよりも多くすることで、SiのRu系保護膜への拡散抑制効果を十分に達成しつつ、保護膜の基本性能である優れた透過率(入射したEUV光はRu系保護膜16を透過して多層反射膜14で反射され、そして反射光はRu系保護膜16を透過して出射される)も同時に担保することができる。この観点からは、前記Ru化合物におけるRuの割合が50原子%より大きく100原子%未満であることが好ましく、さらには、80原子%以上100原子%未満であることが好ましく、95原子%より大きく100原子%未満であることが特に好ましい。
【0062】
またRu化合物には、本発明の効果を逸脱しない範囲で、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)のうち少なくとも1つの元素が含まれていても構わない。EUV光に対する反射率の点から、窒素、酸素、炭素のうち少なくとも1つの元素が含まれている場合、その合計含有量は、10原子%以下、さらには、5原子%以下であることが好ましい。
【0063】
さらに、洗浄耐性向上の観点からは、前記Ru系保護膜16において、Ru化合物をX線回折法のIn−Plane測定法で測定したときに、回折線ピークが主として(100)と(110)である、すなわち、主として(001)面に配向面を有することが好ましい。
【0064】
なお、本発明において、「回折線ピークが主として(100)と(110)である」とは、X線回折法のIn−Plane測定法で測定したときに、回折線ピークが(100)と(110)であって、他の回折線ピーク、例えば、(102)、(103)、(112)等を有さない、あるいは、上記他の回折線ピークが十分に低い状態をいう。なお、回折線ピークが(100)と(110)以外に、(102)、(103)、(112)等を有する状態をランダム配向と定義する。また、「回折線ピークが主として(100)と(110)である」とは、(100)、(110)の2次回折((200)、(220))や、3次回折((300)、(330))の回折線ピークを有する場合も含むものとする。
【0065】
図6は、本発明に使用されるRu化合物を多層反射膜14上に異なる成膜方法で成膜した試料(膜厚20nm)を、X線回折法のIn−Plane測定法で測定したときのX線回折データである。黒色で示されたスペクトルが、本発明において好ましく使用される、主として回折線ピークが(100)と(110)である(=(001)面の配向面を有する)Ru化合物のものである。そして灰色で示されたスペクトルが、回折線ピークが(100)と(110)以外に、(102)、(103)、(112)等を有するランダム配向のRu化合物のものである。
【0066】
Ru系保護膜16において、Ru化合物が、In Plane測定において、回折線ピークが主として(100)と(110)である場合は、Ru化合物の粒子の(001)面が基板12の水平方向に揃って多層反射膜14上に堆積しているので、多層反射膜14のSi層からのSi拡散と、洗浄液やガスの保護膜16内への浸透が抑制されて、洗浄耐性がさらに向上する。一方、ランダム配向の場合は、Ru化合物の結晶粒子の配向がランダムの状態で多層反射膜14上に堆積しているので、Ru化合物の配向による洗浄耐性向上効果は得られにくい傾向がある。
【0067】
またRu系保護膜16の厚みは、多層反射膜14を十分に保護することができ、かつ多層反射膜14から移行してくるSiとTiがシリサイドを形成して、SiのRu系保護膜16中への拡散を、該保護膜16の比較的下部の、Siが酸化を受けて酸化ケイ素を生じることのない位置にとどめることができる厚さである限り特に限定されない。
【0068】
なお、Ru系保護膜16の厚みは、前記の点とEUV光の透過率の観点から、好ましくは1.2〜8.5nm、より好ましくは1.5〜8nm、さらに好ましくは1.5〜6nmである。
【0069】
また、本発明の多層反射膜付き基板10について、その、Ru系保護膜16の側より基板の中心132mm×132mmの領域を測定して求められる平坦度は、通常750nm以下、好ましくは500nm以下、さらに好ましくは350nm以下である。本発明においては、次に説明する、Ru系保護膜16におけるRu含有量の調整などにおいて加熱処理を行う場合があるが、これによって、Ru系保護膜16の透過率を損なうことなく、平坦度を高めることができる。また、当該加熱処理は、Ru系保護膜16の形成前に独立に行ってもよい。
【0070】
また、Ru系保護膜16における基板12側の下層部のRu含有量よりも、Ru系保護膜16の露出表面(この上に後述する吸収体膜20が形成される。)側の上層部のRu含有量を多くすることで、EUVリソグラフィー用反射型マスクを繰り返し洗浄した後においても、Ru系保護膜16の剥離が防止されるだけの十分な洗浄耐性を有し、且つ、EUV光に対する反射率を高い値で維持できるEUVリソグラフィー用反射型マスクを製造するための原版である多層反射膜付き基板が得られる。なお、前記下層部及び上層部とは、おおよそRu系保護膜16の厚み方向におけるおおよそ中央部を基準としたものである。
【0071】
Ru系保護膜16における基板12側の下層部のRu含有量よりも、上層部のRu含有量を多くするにあたっては、段階的及び/または連続的に下層部から上層部に向かってRu含有量を多くすることができる。
【0072】
段階的に下層部から上層部に向かってRu含有量を多くするには、異なる組成比を有するRu化合物(下層部のRu含有量<上層部のRu含有量)を使用して段階的に成膜する。
【0073】
また、連続的に下層部から上層部に向かってRu含有量を多くするには、Ru化合物を成膜した後、若しくは成膜時に基板12を加熱する。なお、基板12を加熱することにより連続的に下層部から上層部に向かってRu含有量を多くする場合には、加熱温度を150℃以上300℃以下、さらに好ましくは、180℃以上250℃以下とする。
【0074】
なお、Ru系保護膜16が化学量論的組成のRuTiよりRuを多く含む本発明の構成により、多層反射膜14の膜応力を低減させる目的で(その結果、多層反射膜付き基板10の上記平坦度が良好になるものと考えられる)行われる基板12の加熱温度を、前記に記載の高い温度(150℃以上300℃以下)に設定することができる(加熱してもRu系保護膜16の透過率がほとんど低下しない)。このためRu系保護膜16におけるRu含有量を調整するための前記加熱は、多層反射膜14の応力低減の視点においても好ましい。また、加熱時間は通常5〜60分程度である。
【0075】
また、別の方法として、連続的に下層部から上層部に向かってRu含有量を多くするには、以下のようにしてもよい。すなわち、Ru化合物を成膜する際に、RuターゲットとTiターゲット、または組成比の異なるRuTiターゲットを基板12に対向して配置する。スパッタリング法により成膜する際に、イオンビームスパッタリング法においては各ターゲットに照射されるイオンビーム強度を時間の経過とともに変化させていく、又はDC若しくはRFスパッタリング法においては各ターゲットに印加する電圧・電流を時間とともに変化させる。これにより、連続的に下層部から上層部に向かってRu含有量を多くすることができる。
【0076】
このように、Ru系保護膜16における下層部のRu含有量よりも、上層部のRu含有量を多くすることにより、EUVリソグラフィー用反射型マスクを繰り返し洗浄した後においても、EUV光に対する反射率を高い値で維持できる。しかも下層部には相対的にTiが多く含有されていることにより、多層反射膜14から移行してくるSiとシリサイドを形成して、そこでSiを捕獲するので、前記マスクにおいて、Ru系保護膜16の剥離が防止される、十分な洗浄耐性を達成することができる。
【0077】
また、上記の通り本発明において多層反射膜14からRu系保護膜16へのSiは起こり得る(そして膜剥れの問題が生じるような位置までSiが拡散することが抑制される)。そのため、製造直後は本発明の多層反射膜付き基板10において多層反射膜14とRu系保護膜16との境界は明りょうであると考えられるが、上記の加熱処理を受けたり、Ru系保護膜16形成後のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランクへの製造工程を経たり、あるいはEUVリソグラフィー用反射型マスクとして使用されているうちに、上記のSiの移行が起きて、多層反射膜14とRu系保護膜16との境界は明りょうではなくなるものと考えられる。
【0078】
本発明において、以上説明したRu系保護膜16の形成方法としては、従来公知の保護膜の形成方法と同様のものを特に制限なく採用することができる。そのような形成方法の例としては、DCスパッタリング法やRFスパッタリング法などのマグネトロンスパッタリング法、及びイオンビームスパッタリング法が挙げられる。なお、例えばこれらの方法において使用するRuターゲット及びTiターゲットの量比を調整することによって、本発明におけるRu化合物の所定の構成元素の割合を達成することができる。
【0079】
さらに、上述のようにRu化合物に配向を設ける場合には、多層反射膜14表面の法線に対するRu化合物粒子の入射角度が0度以上45度以下、好ましくは、0度以上35度以下、好ましくは0度以上30度以下となるようにしてスパッタ成膜する。保護膜の形成方法としては、イオンビームスパッタリング法により成膜することが好ましい。
【0080】
<酸化ケイ素を含む膜18>
本発明の多層反射膜付き基板10においては、多層反射膜14とRu系保護膜16との間に酸化ケイ素を含む膜18を形成してもよい(図2参照)。図2は、酸化ケイ素を含む膜18を有する態様の本発明の多層反射膜付き基板10の断面を示す模式図である。
【0081】
酸化ケイ素はSiのバリア性能に優れており、これを多層反射膜14とRu系保護膜16との間に配置することで、多層反射膜14からSiがRu系保護膜16へ拡散するのをより有効に抑制することができる。
【0082】
前記酸化ケイ素の具体例としては、SiOや酸素リッチSiOが挙げられる。従来使用されている、RuNbやRuZrなどからなる保護膜は酸化ケイ素との密着性が不良なため、酸化ケイ素を含む膜を設けると、これと保護膜との界面で膜剥れが生じてしまう。しかしながら酸化ケイ素と本発明で採用されるRu系保護膜16とは密着性に優れているため、密着性不足による膜剥れが抑制される。
【0083】
このようにSiバリア性能を有する酸化ケイ素を含む膜18の厚みは、そのバリア性能を発揮し得る限り特に制限されるものではないが、通常0.2〜3nmであり、好ましくは0.5〜2nmである。
【0084】
以上説明した酸化ケイ素を含む膜18は、多層反射膜14の最表面のSi膜を酸素雰囲気下に曝露する方法、多層反射膜14の最表面のSi膜を酸素雰囲気下又は大気中において所定温度でアニールする方法、多層反射膜14の最表面のSi膜に対して、SiターゲットでArガス等の不活性ガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気下において、DC又はRFスパッタリングで酸化ケイ素を含む膜を成膜する方法、多層反射膜14の最表面のSi膜に対して、SiOxターゲットでArガス等の不活性ガスと酸素ガスとの混合ガス雰囲気下において、RFスパッタリングで酸化ケイ素を含む膜を成膜する方法などで形成する。
【0085】
以上説明した通り本発明の多層反射膜付き基板10は、基板12と多層反射膜14とRu系保護膜16とを有する。当該多層反射膜付き基板10においてはRu系保護膜16の所定の組成により(好ましくはさらに上層部と下層部でのRu含有量の差異により)、当該保護膜16の膜剥れが抑制されており、高反射率、具体的には波長13.5nmのEUV光に対して63%以上の反射率を達成しつつ、優れた洗浄耐性も有している。そして前記の通り多層反射膜14とRu系保護膜16との間に酸化ケイ素を含む膜18を形成することによって、洗浄耐性をさらに向上させることができる。
【0086】
さらに前記多層反射膜付き基板10は、基板12の多層反射膜14が形成されている側とは反対側の主表面上に、裏面導電膜を有していてもよい。裏面導電膜は、マスクブランク製造の際に多層反射膜付き基板10の支持手段として使用される静電チャックや、後述する本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランクのパターンプロセス時や露光時のマスクハンドリングの支持手段として使用される静電チャックに、多層反射膜付き基板10又はマスクブランクを吸着させる目的で形成される。また裏面導電膜は、多層反射膜14の応力補正の目的でも形成される。
【0087】
また、本発明の多層反射膜付き基板10においては、基板12と多層反射膜14との間に下地膜を形成してもよい。下地膜は、基板12の表面の平滑性向上の目的、欠陥低減の目的、多層反射膜14の反射増強効果の目的、導電性確保の目的、並びに多層反射膜14の応力補正の目的で形成される。
【0088】
また、本発明の多層反射膜付き基板10としては、多層反射膜14やRu系保護膜16上に、基板12や多層反射膜付き基板10の欠陥存在位置の基準となる基準マークを、フォトリソグラフィーで形成する場合において、多層反射膜14やRu系保護膜16上にレジスト膜を形成した態様も含まれる。
【0089】
[EUVリソグラフィー用反射型マスクブランク]
図3は、本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク30の断面を示す模式図である(図3では酸化ケイ素を含む膜18を有する態様としている)。上述の本発明の多層反射膜付き基板10のRu系保護膜16上にEUV光を吸収する吸収体膜20を形成することによって、本発明のマスクブランク30が得られる。
【0090】
吸収体膜20は、露光光であるEUV光を吸収する機能を有するもので、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランク30を使用して作製されるEUVリソグラフィー用反射型マスク40において(図4も参照)、上記多層反射膜14及びRu系保護膜16による反射光と、吸収体膜パターン20aによる反射光との間で所望の反射率差を有するものであればよい。
【0091】
例えば、EUV光に対する吸収体膜20の反射率は、0.1%以上40%以下の間で選定される。また、上記反射率差に加えて、上記多層反射膜14及びRu系保護膜16による反射光と、吸収体膜パターン20aによる反射光との間で所望の位相差が存在してもよい。尚、このような所望の位相差が存在する場合、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランク30における吸収体膜20を位相シフト膜と称する場合がある。上記多層反射膜14、Ru系保護膜16による反射光と、吸収体膜パターン20aによる反射光との間で所望の位相差を設けて、得られる反射型マスクの反射光のコントラストを向上させる場合、位相差は180度±10度の範囲に設定するのが好ましく、吸収体膜20の反射率は、1.5%以上40%以下に設定するのが好ましい。
【0092】
以上の通り、本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク30には、吸収体膜20が、多層反射膜14及びRu系保護膜16による反射光と、吸収体膜20による反射光との間で所定の位相差が存在する、位相シフト膜である態様も含まれる。
【0093】
以上説明した吸収体膜20は、単層でも積層構造であってもよい。積層構造の場合、同一材料の積層膜でも、異種材料の積層膜でもよい。膜組成は、材料や組成が膜厚方向に段階的及び/又は連続的に変化したものとすることができる。
【0094】
このような吸収体膜20にレジストを介してドライエッチングを施すことにより所定の吸収体膜パターンを得て、光(本発明においてはEUV光)を反射する部分(Ru系保護膜16並びにその下の多層反射膜14(及び存在する場合には酸化ケイ素を含む膜18)が露出している部分)及び光を吸収する部分(吸収体膜パターン)を有するEUVリソグラフィー用反射型マスクが得られる。
【0095】
EUV光を吸収する機能を有し、エッチング等により除去が可能(好ましくは塩素(Cl)やフッ素(F)系ガスのドライエッチングでエッチング可能)である限り、吸収体膜20の材料は特に限定されない。そのような機能を有するものとして、タンタル(Ta)単体又はTaを主成分として含むタンタル化合物を好ましく用いることができる。
【0096】
このようなタンタルやタンタル化合物により構成される吸収体膜20は、DCスパッタリング法やRFスパッタリング法などのマグネトロンスパッタリング法といった公知の方法で形成することが出来る。例えば、タンタルとホウ素を含むターゲットを用い、酸素或いは窒素を添加したアルゴンガスを用いたスパッタリング法で吸収体膜20をRu系保護膜16上に成膜することができる。
【0097】
前記タンタル化合物は、通常Taの合金である。このような吸収体膜20の結晶状態は、平滑性及び平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造であることが好ましい。吸収体膜20表面が平滑・平坦でないと、吸収体膜パターンのエッジラフネスが大きくなり、パターンの寸法精度が悪くなることがある。吸収体膜20の好ましい表面粗さは0.5nmRms以下であり、更に好ましくは0.4nmRms以下、0.3nmRms以下であれば更に好ましい。
【0098】
前記タンタル化合物としては、TaとBとを含む化合物、TaとNとを含む化合物、TaとOとNとを含む化合物、TaとBとを含み、更にOとNの少なくとも何れかを含む化合物、TaとSiとを含む化合物、TaとSiとNとを含む化合物、TaとGeとを含む化合物、TaとGeとNとを含む化合物、等を用いることが出来る。
【0099】
TaはEUV光の吸収係数が大きく、また塩素系ガスやフッ素系ガスで容易にドライエッチングすることが可能な材料であるため、加工性に優れた吸収体膜材料である。さらにTaにBやSi、Ge等を加えることにより、アモルファス状の材料が容易に得られ、吸収体膜20の平滑性を向上させることができる。また、TaにNやOを加えれば、吸収体膜20の酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることが出来るという効果が得られる。
【0100】
一方吸収体膜20の成膜時の基板加熱温度や、成膜時のスパッタリングガス圧力を調整することにより吸収体膜材料を微結晶化することができる。
【0101】
また、吸収体膜20を構成する材料としては、タンタル又はタンタル化合物以外に、WN、TiN、Ti等の材料が挙げられる。
【0102】
以上説明した吸収体膜20は、露光光の波長に対し、吸収係数が0.025以上、更には0.030以上であると、吸収体膜20の膜厚を小さくできる点で好ましい。
【0103】
なお、吸収体膜20の膜厚は、露光光であるEUV光が十分に吸収できる厚みであればよいが、通常30〜100nm程度である。
【0104】
また、本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク30には、前記吸収体膜20上に、ドライエッチングによるパターン形成のためのレジスト膜22を形成した態様も含まれる。
【0105】
また、本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク30には、前記吸収体膜20とレジスト膜22との間に、ハードマスク膜を形成した態様も含まれる。ハードマスク膜は、吸収体膜20をパターニングする際にマスク機能を有するものであり、吸収体膜20とエッチング選択性が異なる材料により構成する。吸収体膜20がタンタルやタンタル化合物により構成される場合、ハードマスク膜は、クロムやクロム化合物などの材料が選択される。当該クロム化合物としては、CrとN、O、C、Hから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料が挙げられる。
【0106】
なお、多層反射膜付き基板10において、基板12の多層反射膜14と対向する面と反対側の面には、前述の通り静電チャックの目的のために裏面導電膜を形成してもよい。裏面導電膜に求められる電気的特性は通常100Ω/□以下である。裏面導電膜の形成方法は公知であり、例えばマグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタ法により、クロム(Cr)、タンタル(Ta)等の金属や合金のターゲットを使用して形成することができる。裏面導電膜の厚みは前記目的を達成する限り特に限定されないが、通常10〜200nmである。
【0107】
次に説明する通り本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク30をさらに加工してEUVリソグラフィー用反射型マスクが得られるが、この反射型マスクについては、通常、パターンの検査、修正が行われる。EUV光を露光光に適用する反射型マスクの場合においても、パターン検査を行うときの検査光としては、波長193nm、257nm等のEUV光に比べて長波長の光が用いられる場合が多い。長波長の検査光に対応するためには、吸収体膜20の表面反射を低減させる必要がある。この場合、吸収体膜20を、基板12側から、主としてEUV光を吸収する機能を有する吸収体層と、主として検査光に対する表面反射を低減する機能を有する低反射層とを積層した構成にするとよい。低反射層としては、吸収体層がTaを主成分とする材料の場合、TaやTaBにOを添加した材料が好適である。
【0108】
[EUVリソグラフィー用反射型マスク]
以上説明した本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク30を使用して、本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクを製造することができる。本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクの製造には、高精細のパターニングを行うことができるフォトリソグラフィー法が最も好適である。
【0109】
以下ではフォトリソグラフィー法を利用した、レジスト膜22を介してEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク30における吸収体膜20をパターニングして本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクを製造する方法を説明する。また、当該方法の模式図を図4に示す。図4において同一の構成に関して、一つについて符号を示し、その他の同一の構成については符号をつけるのを省略している。
【0110】
まず、基板12、多層反射膜14、必要に応じて酸化ケイ素を含む膜18、Ru系保護膜16及び吸収体膜20がこの順に形成されたマスクブランク30(図4(a))の吸収体膜20上にレジスト膜22を形成する(図4(b))。レジスト膜22が形成されたものも本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスクブランク30であるので、ここからスタートしてもよい。このレジスト膜22に所望のパターンを描画(露光)し、さらに現像・リンスすることによって、所定のレジストパターン22aを形成する(図4(c))。
【0111】
このレジストパターン22aをマスクとして使用して、エッチングガスによるドライエッチングを実施することにより、吸収体膜20のレジストパターン22aで被覆されていない部分がエッチングされ、吸収体膜パターン20aがRu系保護膜16上に形成される(図4(d))。
【0112】
なお、前記エッチングガスとしては、Cl,SiCl,CHCl,CCl等の塩素系のガス、これら塩素系ガス及びOを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガス及びHeを所定の割合で含む混合ガス、塩素系ガス及びArを所定の割合で含む混合ガス、CF,CHF,C,C,C,C,CH,CHF,C,SF,F等のフッ素系のガス、これらフッ素系ガス及びOを所定の割合で含む混合ガス、フッ素系ガス及びHeを所定の割合で含む混合ガス、フッ素系ガス及びArを所定の割合で含む混合ガスが挙げられる。
【0113】
そして、例えば、レジスト剥離液によりレジストパターン22aを除去した後、酸性やアルカリ性の水溶液を用いたウェット洗浄を行い、高い反射率を達成したEUVリソグラフィー用反射型マスク40が得られる(図4(e))。
【0114】
[半導体装置の製造方法]
以上説明した本発明のEUVリソグラフィー用反射型マスク40を使用したリソグラフィー技術により、半導体基板上に前記マスクの吸収体膜パターン20aに基づく転写パターンを形成し、その他種々の工程を経ることで、半導体基板上に種々のパターン等が形成された半導体装置を製造することができる。
【0115】
より具体的な例として、図5に示すパターン転写装置50により、EUVリソグラフィー用反射型マスク40を用いてレジスト付き半導体基板56にEUV光によってパターンを転写する方法を説明する。
【0116】
EUVリソグラフィー用反射型マスク40を搭載したパターン転写装置50は、レーザープラズマX線源52、反射型マスク40、縮小光学系54等から概略構成される。縮小光学系54としては、X線反射ミラーを用いている。
【0117】
縮小光学系54により、反射型マスク40で反射されたパターンは通常1/4程度に縮小される。例えば、露光波長として13〜14nmの波長帯を使用し、光路が真空中になるように予め設定する。このような状態で、レーザープラズマX線源52から得られたEUV光を反射型マスク40に入射させ、ここで反射された光を縮小光学系54を通してレジスト付き半導体基板56上に転写する。
【0118】
反射型マスク40に入射した光は、吸収体膜パターン20aのある部分では、吸収体膜に吸収されて反射されず、一方、吸収体膜パターン20aのない部分に入射した光は多層反射膜14により反射される。このようにして、反射型マスク40から反射される光により形成される像が縮小光学系54に入射する。縮小光学系54を経由した露光光は、レジスト付き半導体基板56上のレジスト層に転写パターンを形成する。そして、この露光済レジスト層を現像することによってレジスト付き半導体基板56上にレジストパターンを形成することができる。
【0119】
そして前記レジストパターンをマスクとして使用してエッチング等を実施することにより、例えば半導体基板上に所定の配線パターンを形成することができる。
このような工程その他の必要な工程を経ることで、半導体装置が製造される。
【実施例】
【0120】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を限定するものではない。
【0121】
[実施例1]
<多層反射膜付き基板の製造>
使用する基板はSiO−TiO系のガラス基板(6インチ角、厚さが6.35mm)である。このガラス基板の端面を面取り加工、及び研削加工し、更に酸化セリウム砥粒を含む研磨液で粗研磨処理した。これらの処理を終えたガラス基板を両面研磨装置のキャリアにセットし、研磨液にコロイダルシリカ砥粒を含むアルカリ水溶液を用い、所定の研磨条件で精密研磨をおこなった。精密研磨終了後、ガラス基板に対し洗浄処理を行った。
【0122】
以上のようにして、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランク用ガラス基板を作製した。この得られたガラス基板の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で、0.10nm以下と良好であった。また、平坦度は、測定領域132mm×132mmで30nm以下と良好であった。
【0123】
次に、上記EUVリソグラフィー用反射型マスクブランク用ガラス基板の裏面に、以下の条件でCrNからなる裏面導電膜をマグネトロンスパッタリング法により形成した。
裏面導電膜形成条件:Crターゲット、Ar+Nガス雰囲気(Ar:N=90%:10%)、膜組成(Cr:90原子%、N:10原子%)、膜厚20nm
【0124】
次に、上記EUVリソグラフィー用反射型マスクブランク用ガラス基板の裏面導電膜が形成された側と反対側の主表面上に、以下のようにして多層反射膜を形成した。ガラス基板上に形成される多層反射膜としては、13〜14nmの露光光波長帯域に適した多層反射膜とするために、Mo膜/Si膜周期多層反射膜を採用した。
【0125】
すなわち、多層反射膜は、MoターゲットとSiターゲットを使用し、イオンビームスパッタリング(Arを使用)により基板上にMo層及びSi層を交互に積層して形成した。
【0126】
まず、Si膜を4.2nmの厚みで成膜し、続いて、Mo膜を2.8nmの厚みで成膜した。これを一周期とし、同様にして40周期積層し、最後にSi膜を4.0nmの厚みで成膜し、多層反射膜を形成した。
【0127】
このようにして多層反射膜が形成されたサンプルを大気中でアニール(200℃で10分間)処理することにより、多層反射膜の表面にSiO膜を形成した(厚み1nm)。
【0128】
続いて、RuTiターゲット(Ru:95.5原子%、Ti:4.5原子%)を使用し、Arガス雰囲気にてDCマグネトロンスパッタリングにより前記SiO膜上に、RuTi(Ru:95.5原子%、Ti:4.5原子%)からなるRu系保護膜を形成した(厚み2.5nm)。
【0129】
なお、Ru系保護膜の成膜は、RuTiのスパッタ粒子が、多層反射膜の表面の法線に対して20度の入射角度で入射するように行った。形成されたRu系保護膜について、X線回折法のIn−Plane測定法で測定したところ、回折線ピークが(100)、(110)、(200)のみ観察され、主として(001)面に配向面を有するRuTiのRu化合物でRu系保護膜が形成されていた。
【0130】
このようにして得られた多層反射膜付き基板における、Ru系保護膜表面の波長13.5nmのEUV光に対する反射率は63.5%と高反射率であった。また、多層反射膜付き基板の平坦度について、保護膜側より基板の中心132mm×132mmの領域を平坦度測定機により測定したところ、330nmと良好な結果が得られた。これは、多層反射膜を比較的高い温度でアニール処理したことによる多層反射膜の応力が効果的に低減したことによるものと考えられる。
【0131】
<EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクの製造>
以上のようにして得られた多層反射膜付き基板のRu系保護膜上に、TaBN(厚み56nm)とTaBO(厚み14nm)の積層膜からなる吸収体膜をDCマグネトロンスパッタリングにより形成し、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクを製造した。TaBN膜は、TaBターゲットを使用し、ArガスとNガスの混合ガス雰囲気による反応性スパッタリングにより、TaBO膜はTaBターゲットを使用し、ArガスとOガスの混合ガス雰囲気による反応性スパッタリングにより形成した。
【0132】
[実施例2]
<多層反射膜付き基板の製造>
大気中アニールにより多層反射膜の表面にSiO膜を形成する操作を行わなかったこと、Ru系保護膜をイオンビームスパッタリングにより、多層反射膜の成膜に続いて連続して行った以外は実施例1と同様にして多層反射膜付き基板を製造した。なお、イオンビームスパッタリングは、RuTiターゲット(Ru:95.5原子%、Ti:4.5原子%)を使用し、多層反射膜の表面の法線に対して30度の入射角度でRuTiのスパッタ粒子が入射するようにして実施した。
【0133】
形成されたRu系保護膜について、X線回折法のIn−Plane測定法で測定したところ、回折線ピークが(100)、(110)、(200)のみ観察され、主として(001)面に配向面を有するRuTiのRu化合物でRu系保護膜が形成されていた。
【0134】
このようにして得られた多層反射膜付き基板における、Ru系保護膜表面の波長13.5nmのEUV光に対する反射率は64.2%と高反射率であった。
【0135】
<EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクの製造>
以上のようにして得られた多層反射膜付き基板を使用して、実施例1と同様にして、Ru系保護膜上に、TaBN(厚み56nm)とTaBO(厚み14nm)の積層膜からなる吸収体膜をDCマグネトロンスパッタリングにより形成し、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクを製造した。なお、TaBN膜とTaBO膜の成膜は、実施例1と同様に反応性スパッタリングにより行った。
【0136】
[実施例3]
<多層反射膜付き基板の製造>
Ru系保護膜におけるRuとTiの割合をRu:75原子%、Ti:25原子%に変更した以外は実施例2と同様にして多層反射膜付き基板を製造した。得られた多層反射膜付き基板における、Ru系保護膜表面の波長13.5nmのEUV光に対する反射率は63%と高反射率であった。
【0137】
<EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクの製造>
以上のようにして得られた多層反射膜付き基板を使用して、実施例1と同様にして、Ru系保護膜上に、TaBN(厚み56nm)とTaBO(厚み14nm)の積層膜からなる吸収体膜をDCマグネトロンスパッタリングにより形成し、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクを製造した。なお、TaBN膜とTaBO膜の成膜は、実施例1と同様に反応性スパッタリングにより行った。
【0138】
[実施例4]
<多層反射膜付き基板の製造>
実施例2で得られた多層反射膜付き基板を大気中にてアニール(180℃で10分間)処理した。得られた多層反射膜付き基板における、Ru系保護膜表面の波長13.5nmのEUV光に対する反射率は64.0%と高反射率を維持していた。
【0139】
また、多層反射膜付き基板の平坦度については、保護膜側より基板の中心132mm×132mmの領域を平坦度測定機により測定したところ、上記アニール処理前のものでは850nmであったのに対し、アニール処理後には330nmと良好になった。これは、実施例1と同様に多層反射膜付き基板を比較的高い温度でアニール処理したことによる多層反射膜の応力が効果的に低減したことによるものと考えられる。
【0140】
なお、アニール処理して得られた多層反射膜付き基板について、断面TEM観察と、エネルギー分散型X線分光法(EDX)による組成分析を行った。その結果、Ru系保護膜表面である上層部は下層部と比べて高い膜密度を有していることが確認できた。さらに、RuとTiの膜深さ方向の組成は、Ru系保護膜の上層部のRu含有量は、下層部のRu含有量よりも多いことが確認された。また、Ru系保護膜の膜厚方向のRu含有量は、下層部から上層部に向かって連続的に増加している傾向も確認できた。
【0141】
<EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクの製造>
このようにして得られた多層反射膜付き基板を使用して、実施例1と同様にして、Ru系保護膜上に、TaBN(厚み56nm)とTaBO(厚み14nm)の積層膜からなる吸収体膜をDCマグネトロンスパッタリングにより形成し、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクを製造した。なお、TaBN膜とTaBO膜の成膜は、実施例1と同様に反応性スパッタリングにより行った。
【0142】
[比較例1]
<多層反射膜付き基板の製造>
保護膜をRuからなる保護膜に変更した以外は実施例1と同様にして多層反射膜付き基板を製造した。この多層反射膜付き基板における、Ru保護膜表面の波長13.5nmのEUV光に対する反射率は64%と高反射率であった。
【0143】
<EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクの製造>
以上のようにして得られた多層反射膜付き基板を使用して、実施例1と同様にして、Ru保護膜上に、TaBN(厚み56nm)とTaBO(厚み14nm)の積層膜からなる吸収体膜をDCマグネトロンスパッタリングにより形成し、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクを製造した。なお、TaBN膜とTaBO膜の成膜は、実施例1と同様に反応性スパッタリングにより行った。
【0144】
[比較例2]
<多層反射膜付き基板の製造>
保護膜をRuZrからなる保護膜に変更した以外は実施例2と同様にして多層反射膜付き基板を製造した。この多層反射膜付き基板における、Ru系保護膜表面の波長13.5nmのEUV光に対する反射率は64.5%と高反射率であった。
【0145】
さらに、上述の実施例4と同様に、この多層反射膜付き基板について、多層反射膜の応力低減の目的で大気中にてアニール(150℃で10分間)処理を行った。その結果、多層反射膜付き基板の平坦度は375nmに改善したが、Ru系保護膜表面の波長13.5nmのEUV光に対する反射率は62.0%と、アニール処理前と比べて2.5%も低下する結果となった。また、アニール処理後の多層反射膜付き基板について断面TEM観察を行ったところ、Ru系保護膜表面は荒れた状態となり、Ru系保護膜表面からの酸化が原因と思われる酸素がRu系保護膜の内部まで拡散されていることが確認された。
【0146】
<EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクの製造>
以上のようにして得られた多層反射膜付き基板を使用して、実施例1と同様にして、Ru系保護膜上に、TaBN(厚み56nm)とTaBO(厚み14nm)の積層膜からなる吸収体膜をDCマグネトロンスパッタリングにより形成し、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクを製造した。なお、TaBN膜とTaBO膜の成膜は、実施例1と同様に反応性スパッタリングにより行った。
【0147】
[マスク洗浄耐性試験]
上記実施例1〜4、並びに比較例1及び2で得られた各EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクを使用してEUVリソグラフィー用反射型マスクを製造した。具体的には以下の通りである。
【0148】
まず、前記反射型マスクブランクの吸収体膜上に電子線描画用のレジスト膜を形成し、電子線描画機を使用して所定のパターン描画を行った。描画後、所定の現像処理を行い、前記吸収体膜上にレジストパターンを形成した。
【0149】
次に、このレジストパターンをマスクとして、フッ素系ガス(CFガス)により上層のTaBO膜を、塩素系ガス(Clガス)により下層のTaBN膜をドライエッチングし、吸収体膜に転写パターンを形成し、吸収体膜パターンを形成した。
【0150】
さらに、吸収体膜パターン上に残ったレジストパターンを熱硫酸で除去し、反射型マスクを得た。このようにして各実施例1〜4、並びに比較例1及び2から反射型マスクを20枚ずつ作製した。
【0151】
この、得られた反射型マスクについて一般的なRCA洗浄を繰り返し行い、反射型マスクの洗浄耐性を評価した。なお、保護膜の膜剥離状況はSEM(走査型電子顕微鏡)にて観察を行った。結果を下記表1に示す。
【0152】
【表1】
【0153】
表1より、実施例1〜4の反射型マスクについてはいずれも、100回のRCA洗浄後においてRu系保護膜の露出面における膜剥れは観察されず、これらが良好な洗浄耐性を有していることがわかる。一方比較例1及び2の反射型マスクについては5〜10回の洗浄で膜剥れが発生してしまい、実施例に比較して洗浄耐性が劣っていたことがわかる。
【0154】
また、実施例1〜4について、RCA洗浄前と100回のRCA洗浄後におけるRu系保護膜の露出面におけるEUV光(波長13.5nm)反射率の差(RCA洗浄によるEUV光反射率の低下量、以下同様)は、実施例1は0.2%、実施例2は0.3%、実施例3は0.4%、実施例4は0.2%となり、何れも反射率差は0.5%以下と良好な結果が得られた。
【0155】
[実施例5]
<EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクの製造>
上述の実施例4と同じ多層反射膜付き基板を準備した後、多層反射膜付き基板のRu系保護膜上に、TaN(厚み27.3nm)とCrCON(厚み25nm)の積層膜からなる、位相シフト機能を有する吸収体膜をDCマグネトロンスパッタリングにより形成して、EUVリソグラフィー用反射型マスクブランクを製造した。TaN膜は、Taターゲットを使用し、ArガスとNガスの混合ガス雰囲気による反応性スパッタリングにより、CrCON膜はCrターゲットを使用し、ArガスとCOガスとNガスの混合ガス雰囲気による反応性スパッタリングにより形成した。
【0156】
<EUVリソグラフィー用反射型マスクの製造>
前記で得られたEUVリソグラフィー用反射型マスクブランクを使用してEUVリソグラフィー用反射型マスクを製造した。具体的には以下の通りである。
【0157】
まず、前記反射型マスクブランクの吸収体膜上に電子線描画用のレジスト膜を形成し、電子線描画機を使用して所定のパターン描画を行った。描画後、所定の現像処理を行い、前記吸収体膜上にレジストパターンを形成した。
【0158】
次に、このレジストパターンをマスクとして、塩素ガス(Clガス)と酸素ガス(Oガス)の混合ガスにより上層のCrCON膜を、塩素系ガス(Clガス)により下層のTaN膜をドライエッチングし、吸収体膜に転写パターンを形成し、吸収体膜パターンを形成した。
【0159】
さらに、吸収体膜パターン上に残ったレジストパターンを熱硫酸で除去し、反射型マスクを得た。吸収体膜パターンのEUV光反射率は2.8%、吸収体膜パターンと、吸収体膜パターンが形成されていない、露出した保護膜表面とでの反射による位相差は、180度であった。
【0160】
[マスク洗浄耐性試験]
上述の実施例5の反射型マスクについて、上述の実施例1〜4と同様に、マスク洗浄耐性試験を行った。その結果、100回RCA洗浄後にて膜剥がれは観察されず、良好な洗浄耐性を有していた。
【0161】
また、実施例5について、RCA洗浄前と100回のRCA洗浄後におけるRu系保護膜の露出面におけるEUV光反射率の差は、0.2%と良好な結果が得られた。
【0162】
[符号の説明]
10 多層反射膜付き基板
12 基板
14 多層反射膜
16 Ru系保護膜
18 酸化ケイ素を含む膜
20 吸収体膜
20a 吸収体膜パターン
22 レジスト膜
22a レジストパターン
30 EUVリソグラフィー用反射型マスクブランク
40 EUVリソグラフィー用反射型マスク
50 パターン転写装置
52 レーザープラズマX線源
54 縮小光学系
56 レジスト付き半導体基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6