特許第6426317号(P6426317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6426317
(24)【登録日】2018年11月2日
(45)【発行日】2018年11月21日
(54)【発明の名称】装身具
(51)【国際特許分類】
   A44C 17/02 20060101AFI20181112BHJP
   A44C 25/00 20060101ALI20181112BHJP
   A44C 27/00 20060101ALI20181112BHJP
【FI】
   A44C17/02
   A44C25/00 Z
   A44C27/00
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-79795(P2018-79795)
(22)【出願日】2018年4月18日
【審査請求日】2018年4月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517050813
【氏名又は名称】株式会社トップジュエリー
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】李 正炯
【審査官】 山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5960336(JP,B2)
【文献】 特許第6141486(JP,B2)
【文献】 米国特許第09888749(US,B1)
【文献】 特許第5976248(JP,B1)
【文献】 特開2013−226462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体への装着の対象となる枠体、宝石を目視可能な状態にて支持する支持具、及び枠体と支持具との間に介在するアーム部からなる装身具であって、枠体は、支持具の両側及び上側に配設され、かつ当該両側の領域のうち、支持具と向かい合う内側にてアーム部と係合する凹部を備えており、アーム部は、支持具の両側から水平方向に突設され、かつ当該突設領域の所定位置にて上側に屈曲した上で更に水平方向両側に延設されており、しかも当該延設領域の所定位置にて下方側に屈曲し、かつ凹部の下側面に当接している支軸を形成しており、前記当接位置よりも宝石及び支持具の重心の方が下側に設定されると共に、前記上側への屈曲領域が曲げ弾性を備えることに基づき、宝石及び支持具が前記両側方向に揺動し、かつ前記上側への屈曲領域を支持具側に弾性変形することによって、前記延設領域及び前記支軸が前記凹部内に挿入されている装身具。
【請求項2】
両側の支軸が下方となるに従って、先細り形状となるピボット状であることを特徴とする請求項1記載の装身具。
【請求項3】
両側の支軸が円柱状であって、先端が湾曲した球面状であることを特徴とする請求項1記載の装身具。
【請求項4】
アーム部を1個の素材によって形成し、かつ両側における水平方向の突設領域及び延設領域の断面積を、上側への屈曲領域の断面積よりも大きく設定していることを特徴とする請求項1、2、3の何れか一項に記載の装身具。
【請求項5】
上側への屈曲領域が上側となるに従って断面積を大きく設定していることを特徴とする請求項1、2、3、4の何れか一項に記載の装身具。
【請求項6】
上側への屈曲領域における水平方向断面が矩形であって、かつ左右方向における突設方向の辺よりも当該辺に直交する前後方向の辺の方が長いことを特徴とする請求項1、2、3、4、5の何れか一項に記載の装身具。
【請求項7】
アーム部において、支持具の両側から水平方向に突設された領域が曲げ弾性を有しており、かつアーム部が宝石及び支持具の重量を支えた場合、当該突設領域が水平方向を呈するように突設方向を設定することを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6の何れか一項に記載の装身具。
【請求項8】
突設領域における断面積を支持具から遠くなるに従って大きく設定していることを特徴とする請求項7記載の装身具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宝石と結合しかつペンダント、ブローチ、指輪のように身体に装着し、かつ揺動状態を可能とする装身具を対象としている。
【背景技術】
【0002】
近年、宝石を揺動可能とする装身具が提唱されている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、宝石と係合する2個の内側リング及び身体への装着を可能とする2個の外側リングを採用し、内側リングと外側リングとが交互に突入し合う状態にて接続することによって、前記揺動自在状態を実現している。
【0004】
しかしながら、このような接続状態の場合には、二対のリングの摩擦によって、揺動状態の継続が不十分である。
【0005】
特許文献2においては、宝石を支持している支持具を両側及び上側にて囲んだ状態にある枠体の前記両側の領域のうち、支持具と相向かい合う内側に凹部を設け、支持具と枠体との間に介在するアーム部において、下側となるにしたがって先細り形状であるピボット状とする支軸が、前記凹部の下側面と当接することによって前記両側の方向と直交する方向である前後方向の揺動自在状態を実現している。
【0006】
このような構成の場合には、揺動が特許文献1の構成よりも極めて持続し得る点において優れている。
但し、特許文献2の構成の場合には、両側の方向である左右方向の揺動状態を実現することができない。
【0007】
特許文献1の場合には、交互に嵌入し合う二対の内側リングと外側リングの製造という煩雑な製造工程を必要不可欠とする。
【0008】
特許文献2の場合においても、アーム部の支軸を枠体の両側における前記内側の凹部の下側面に当接させるためには、凹部の両外側に水平方向に挿脱自在のストッパを設けると共に、凹部の下側に鉛直方向に挿脱自在のストッパを設けるという格別の設計を必要とする点において製造工程が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−226462号公報
【特許文献2】特許第5960336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、宝石が前後のみならず、左右方向に揺動することができ、しかも製造工程がシンプルである装身具の構成を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の基本構成は、身体への装着の対象となる枠体、宝石を目視可能な状態にて支持する支持具、及び枠体と支持具との間に介在するアーム部からなる装身具であって、枠体は、支持具の両側及び上側に配設され、かつ当該両側の領域のうち、支持具と向かい合う内側にてアーム部と係合する凹部を備えており、アーム部は、支持具の両側から水平方向に突設され、かつ当該突設領域の所定位置にて上側に屈曲した上で更に水平方向両側に延設されており、しかも当該延設領域の所定位置にて下方側に屈曲し、かつ凹部の下側面に当接している支軸を形成しており、前記当接位置よりも宝石及び支持具の重心の方が下側に設定されると共に、前記上側への屈曲領域が曲げ弾性を備えることに基づき、宝石及び支持具が前記両側方向に揺動し、かつ前記上側への屈曲領域を支持具側に弾性変形することによって、前記延設領域及び前記支軸が前記凹部内に挿入されている装身具からなる。
【発明の効果】
【0012】
前記基本構成に基づく本願発明は、枠体と支持具との間に介在するアーム部によって、支持具及び宝石は、前記当接状態を原因として前後方向に揺動するだけでなく、上側への屈曲領域が曲げ弾性を有することを原因として左右方向に揺動することも可能となり、宝石のダイナミックな揺動状態を享受することができる。
【0013】
しかも、アーム部の支軸と両側の枠体の凹部の下側面との当接を実現するために、特許文献2の場合のような挿脱自在のストッパを設けずに、上側への屈曲領域を内側、即ち支持具側に弾性変形させた上で、アーム部の水平方向への延設領域及び支軸を凹部内に挿入するというシンプルな製造工程を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】基本構成における実施形態の一例を示しており、(a)は、枠体、支持具、アーム部からなる全体構成につき、支持具の両側方向である左右方向に切断した場合の側断面図を示し、(b)は、支持具が宝石を支持している状態につき、前記左右方向に切断した場合の側断面図を示し、(c)は、支持具が宝石を支持していない場合におけるアーム部との一体形成状態の斜視図を示す。
図2】円輪形状の支持具に対し、左右及び上下に配設された円輪形状の枠体を採用した実施形態を示しており、(a)は、枠体、支持具、アーム部からなる全体構成につき、前記左右方向に切断した場合の側断面図を示し、(b)は、支持具及び支持具から両側に突設されたアーム部との一体形状状態の斜視図を示す。
図3】アーム部の全ての断面が円形であって、しかも上側への屈曲領域が上側となるに従って断面積を大きく設定した実施形態であって、(a)は、アーム部の前側方向からの側面図を示し、(b)は、上側への屈曲領域及び支軸の水平方向における断面図を示し、(c)は、突設領域の鉛直方向における断面図を示し、(d)は、水平方向の延設領域鉛直方向における断面図を示す。
図4】アーム部の上側への屈曲領域において、断面が矩形状であって、しかも左右方向の辺よりも前後方向の辺の方が長い実施形態であって、(a)は、左右方向外側からの側断面図を示し、(b)は、水平方向の断面図を示す。
図5】アーム部の上側への屈曲領域において、断面が矩形状であって、しかも左右方向の辺よりも前後方向の辺の方が長く、かつ図2の場合と同様に、上側への屈曲領域を上側となるに従って断面積を大きく設定している実施形態であって、(a)は、左右方向外側からの側断面図を示し、(b)は、水平方向の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
最初に、図1に即して、本願の装身具の基本構成について説明する。
【0016】
前記基本構成は、図1(a)に示すように、身体への装着又は掌による把持の対象となる枠体3、宝石1を目視可能な状態にて支持する支持具2、及び枠体3と支持具2との間に介在するアーム部4からなる装身具であって、枠体3は、支持具2の両側及び上側に配設され、かつ当該両側の領域のうち、支持具2と向かい合う内側にてアーム部4と係合する凹部30を備えている。
【0017】
しかも、図1(a)、(b)、(c)に示すように、アーム部4は、支持具2の両側から水平方向に突設され、かつ当該突設領域41の所定位置にて上側に屈曲した上で更に水平方向両側に延設されており、しかも当該延設領域43の所定位置にて下方側に屈曲し、かつ凹部30の下側面に当接している支軸44を形成している。
【0018】
支持具2の両側及び上側に配設されている枠体3は、図1(a)に示すような湾曲した逆V字型の形状だけでなく、図2(a)に示すように、支持具2の下側まで延設された円輪形状をも採用することが可能であるが、枠体3の形状は、前記各図面の場合のみに限定される訳ではない。
【0019】
図1(b)、(c)は、前方に突設部21を有し、かつ後方の底部に孔を有する容器状の支持具2を示し、図2(b)は、前側に留め部22を有する支持具2の形状を示すが、支持具2の形状は、前記各図面の場合のみに限定される訳ではなく、宝石1を安定した状態にて支持する様々な形状を採用することができる。
【0020】
図1(c)は、板状体からなるアーム部4を示し、図2(a)、(b)、(c)、(d)は、断面が円形であるアーム部4を示すが、アーム部4の断面形状は、前記各図面のみに限定される訳ではない。
【0021】
前記基本構成のアーム部4は、特許文献2発明のアーム部4と基本的に同一の構成に立脚しているが、上側への屈曲領域42が曲げ弾性を有している点において、特許文献2発明のアーム部4と相違している。
【0022】
即ち、前記基本構成においては、アーム部4の支軸44が枠体の凹部30の下側面と当接することによって、特許文献2発明の場合と同様に、前後方向に揺動するだけでなく、前記曲げ弾性によって左右方向の揺動をも実現することが可能となる一方、特許文献2発明の場合には、アーム部4を枠体の凹部30に挿入するために、凹部30の両外側及び両下側に挿脱自在のストッパを設けることを必要不可欠としているのに対し、本願発明の場合には、アーム部4の上側への屈曲領域42を支軸44側の方向に弾性的に折り曲げることによってアーム部4の支軸44及び更なる延設領域43を凹部30に挿入することが可能であって、シンプルな製造工程を実現し得ることは、効果の項において既に説明した通りである。
尚、曲げ弾性を有する上側への屈曲領域42に適合する素材としては、銀、白金(プラチナ)、真鍮及びこれらの混合物が装飾効果をも発揮し、かつ兼用する上で好ましい。
【0023】
前記基本構成においては、支軸44が両側の凹部30の下側面と接続する位置よりも宝石1及び支持具2の重心の方が下側であることから、安定した揺動状態を継続することができる。
【0024】
アーム部4の支軸44は、図1(a)、(c)及び図2(a)、(b)に示すように、両側の支軸44が下方となるに従って、先細り形状となるピボット状であることを特徴とする実施形態、及び図3(a)、(b)に示すように、両側の支軸44が円柱状であって、先端が湾曲した球面状であることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0025】
前記ピボット状の実施形態の場合には、支軸44の先端と枠体の凹部30下側面の当接面積が極めて小さいため、双方間の摩擦抵抗が少なく、安定した揺動状態を持続することができる。
【0026】
前記球面状の実施形態の場合においても、揺動に際し、球面が下側面にて回転することが可能であることから、同様に少ない摩擦抵抗による揺動状態を持続することができ、しかも支軸44の先端における摩耗が少ないという技術上のメリットを発揮することができる。
【0027】
アーム部4において、曲げ弾性を有する上側への屈曲領域42と支持具2からの突設領域41及び水平方向への延設領域43並びに支軸44とを異なる素材を採用し、双方を接続する構成、具体的には、双方の素材として金属を採用した上で相互に溶接する構成は、当然採用可能である。
但し、図1(a)、(c)及び図2(a)に示すように、アーム部4を1個の素材によって形成し、かつ両側における水平方向の突設領域41及び延設領域43の断面積を、曲げ弾性を有している上側への屈曲領域42の断面積よりも大きく設定した場合には、上記接合が不要というシンプルな工程によって、本願発明のアーム部4を製造することができる。
【0028】
アーム部4の上側への屈曲領域42においては、同一の断面積による実施形態も当然採用可能である。
【0029】
しかしながら、支持具2及び宝石1が揺動する場合に、当該揺動に伴う曲げモーメントは上側への屈曲領域42が上側となるに従って大きい状態にある。
【0030】
このような曲げモーメントの変化に鑑み、図3(a)、(b)に示すように、上側への屈曲領域42が上側となるに従って断面積を大きく設定していることを特徴とする実施形態の場合には、曲げモーメントの増加に対応して断面積も増加しており、このような設定によって上側への屈曲領域42の曲げ変形に基づく疲労を分散しかつ均一状態とすることができる。
【0031】
図3(a)、(b)及び図4(a)、(b)は、何れも上側への屈曲領域42における水平方向断面が矩形であって、かつ突設方向である左右方向の辺よりも当該辺に直交する前後方向の辺の方が長いことを特徴とする実施形態を示しており、図3(a)、(b)は、上側への屈曲領域42の断面積が変化しない場合を示しており、図4(a)、(b)は、上側への屈曲領域42の断面積が上側となるに従って大きく設定した実施形態を示す。
【0032】
このように、矩形状断面において、前後方向の辺の長さを左右方向の辺の長さよりも大きく設定することによって、左右方向の揺動に伴って発生する左右方向の曲げ変形を原因とする疲労の程度を緩和することができる。
【0033】
しかも、図4(a)、(b)に示す実施形態のように、上側となるに従って断面積を大きく設定した場合には、曲げモーメントが上側となるに従って大きくなることに適応でき、図3(a)、(b)に示す実施形態と同一の作用効果を得ることができる。
【0034】
以下、実施例に従って説明する。
【実施例】
【0035】
実施例は、アーム部4において、支持具2の両側から水平方向に突設された領域41が曲げ弾性を有しており、かつアーム部4が宝石1及び支持具2の重量を支えた場合、当該突設領域41が水平方向を呈するように突設方向を設定することを特徴としている。
【0036】
このような実施例の場合には、支持具2及び宝石1は、前後方向及び左右方向だけでなく、上下方向の揺動をも実現することが可能となる。
【0037】
しかも、突設領域41における断面積を支持具2から遠くなるに従って大きく設定している構成を採用した場合には、前記突設領域41における曲げモーメントが支持具2から遠くなるに従って大きいことに対応することが可能となり、図3(a)、(b)に示す実施形態と同様に曲げ変形に基づく疲労を分散しかつ均一化するという作用効果を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本願発明は、ペンダント、ブローチ、指輪等の装身具を単に前後方向だけでなく、左右方向の揺動をも可能とする装身具をシンプルな工程によって製造することができ、装身具の分野において多大な利用価値を発揮することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 宝石
2 支持具
21 突設部
22 留め部
3 枠体
30 枠体の凹部
4 アーム部
41 突設領域
42 上側への屈曲領域
43 水平方向への延設領域
44 支軸
【要約】
【課題】宝石が前後のみならず、左右方向に揺動することができ、しかも製造工程がシンプルである装身具の構成を提供すること。
【解決手段】宝石1を支持している支持具2の両側及び上側に配置され、かつ両内側に凹部30を備えている枠体3との間にアーム部4が介在する装身具であって、アーム部4が支持具2からの突設領域41、上側への屈曲領域42、水平方向への更なる延設領域43及び下方側に屈曲した支軸44を備えており、かつ上側への屈曲領域42が曲げ弾性を有することによって、前記課題を達成し得る装身具。
【選択図】図1(a)
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図2
図3
図4
図5