特許第6427893号(P6427893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6427893電解アルミニウム箔、蓄電デバイス用集電体、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427893
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】電解アルミニウム箔、蓄電デバイス用集電体、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   C25D 1/04 20060101AFI20181119BHJP
   C25D 1/00 20060101ALI20181119BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20181119BHJP
   H01M 4/64 20060101ALI20181119BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20181119BHJP
   H01G 9/048 20060101ALI20181119BHJP
   C25D 3/44 20060101ALN20181119BHJP
【FI】
   C25D1/04
   C25D1/00 311
   H01G11/68
   H01M4/64 A
   H01M4/66 A
   H01G9/048 G
   !C25D3/44
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-31066(P2014-31066)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-155564(P2015-155564A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2016年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(72)【発明者】
【氏名】松田 純一
(72)【発明者】
【氏名】岡本 篤志
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/001932(WO,A1)
【文献】 特開2012−246561(JP,A)
【文献】 特開2011−166045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 1/04
C25D 1/00
H01G 9/048
H01G 11/68
H01M 4/64
H01M 4/66
C25D 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが20μm以下の電解アルミニウム箔であって、箔の厚み方向における中央部よりも両表面部の方が弾性率が小さく、かつ、ナノインデンテーション法による測定において、箔の中央部と各表面部の弾性率の差が8.0GPa以下であり、箔の表面のL表色系(SCI方式)におけるL値が、両面とも86.00以上であることを特徴とする電解アルミニウム箔
【請求項2】
電解アルミニウム箔に含まれる炭素、硫黄、塩素のそれぞれの含量の合計が1.0mass%以下であることを特徴とする請求項記載の電解アルミニウム箔
【請求項3】
硬度が、箔の厚み方向における中央部と各表面部いずれも、ナノインデンテーション法による測定において、1.00〜2.00GPaであり、中央部よりも少なくとも一方の表面部の方が大きく、箔の中央部と各表面部の硬度の差が0.4GPa以下であることを特徴とする請求項1または2記載の電解アルミニウム箔。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかに記載の電解アルミニウム箔からなることを特徴とする蓄電デバイス用集電体。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかに記載の電解アルミニウム箔に電極活物質を担持させてなることを特徴とする蓄電デバイス用電極。
【請求項6】
請求項記載の蓄電デバイス用電極を用いて構成されてなることを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項7】
めっき液に一部が浸漬した回転する陰極ドラムと、めっき液に浸漬した陽極板の間に電流を印加することで、陰極ドラムのめっき液に浸漬した表面にアルミニウム被膜を形成し、陰極ドラムの回転によって液面からせり上がったアルミニウム被膜を陰極ドラムから剥離することによる請求項1乃至3のいずれかに記載の電解アルミニウム箔の製造方法であって、アルミニウム被膜を陰極ドラムから剥離して電解アルミニウム箔を得る際の処理雰囲気の露点を−50.0℃以下に制御することを特徴とする電解アルミニウム箔の製造方法。
【請求項8】
めっき液が、ジアルキルスルホン、アルミニウムハロゲン化物、含窒素化合物を少なくとも含むめっき液であって、ジアルキルスルホン、アルミニウムハロゲン化物、含窒素化合物の配合割合が、ジアルキルスルホン10モルに対し、アルミニウムハロゲン化物は1.5〜6.0モル、含窒素化合物は0.001〜2.0モルであり、含窒素化合物が、ハロゲン化アンモニウム、第一アミンのハロゲン化水素塩、第二アミンのハロゲン化水素塩、第三アミンのハロゲン化水素塩、一般式:RN・X(R〜Rは同一または異なるアルキル基、Xは第四アンモニウムカチオンに対するカウンターアニオンを示す)で表される第四アンモニウム塩、含窒素芳香族化合物からなる群から選択される少なくとも1つであること、および、めっき液の温度が60〜125℃で陰極ドラムの表面にアルミニウム被膜を形成することを特徴とする請求項7記載の電解アルミニウム箔の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池やスーパーキャパシター(電気二重層キャパシター、レドックスキャパシター、リチウムイオンキャパシターなど)といった蓄電デバイスの正極集電体などとして用いることができる電解アルミニウム箔に関する。また、本発明は、この電解アルミニウム箔を用いた蓄電デバイス用集電体、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイスにも関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やノートパソコンなどのモバイルツールの電源に、大きなエネルギー密度を持ち、かつ、放電容量の著しい減少が無いリチウムイオン二次電池が用いられていることは周知の事実であるが、近年、モバイルツールの小型化に伴い、そこに装着されるリチウムイオン二次電池にも小型化の要請がなされている。また、地球温暖化防止対策などの観点からのハイブリッド自動車や太陽光発電などの技術の進展に伴い、電気二重層キャパシター、レドックスキャパシター、リチウムイオンキャパシターなどの大きなエネルギー密度を持つスーパーキャパシターの新しい用途展開が加速しつつあり、これらのさらなる高エネルギー密度化が要求されている。
リチウムイオン二次電池やスーパーキャパシターといった蓄電デバイスは、例えば、電解質としてLiPFやNR・BF(Rはアルキル基)などの含フッ素化合物を含んだ有機電解液中に、正極と負極がポリオレフィンなどからなるセパレータを介して配された構造を持つ。正極はLiCoO(コバルト酸リチウム)や活性炭などの正極活物質と正極集電体からなるとともに、負極はグラファイトや活性炭などの負極活物質と負極集電体からなり、それぞれの形状は集電体の表面に活物質を塗布してシート状に成型したものが一般的である。各電極とも、大きな電圧がかかることに加え、腐食性が高い含フッ素化合物を含んだ有機電解液に浸漬されることから、特に、正極集電体の材料は、電気伝導性に優れるとともに、耐腐食性に優れることが求められる。このような事情から、現在、正極集電体の材料としては、ほぼ100%に、電気良導体であり、かつ、表面に不働態膜を形成することで優れた耐腐食性を有するアルミニウムが採用されている。なお、負極集電体の材料としては銅やニッケルなどが挙げられる。
【0003】
蓄電デバイスの小型化や高エネルギー密度化のための方法の一つとして、シート状に成型された電極を構成する集電体の薄膜化がある。現在のところ、正極集電体には、圧延法によって製造された厚みが15〜20μm程度のアルミニウム箔が用いられるのが一般的であるので、このアルミニウム箔の厚みをより薄くすることで目的を達成することができる。しかしながら圧延法では、工業的製造規模でこれ以上、箔の厚みを薄くすることは困難である。
そこで圧延法にかわるアルミニウム箔を製造する方法として、アルミニウム箔を電解法によって製造する方法、即ち、電解アルミニウム箔を製造する方法が注目されており、本発明者らの研究グループは、特許文献1において、ジアルキルスルホン、アルミニウムハロゲン化物、含窒素化合物を少なくとも含むめっき液を用いた電解法によって基材の表面にアルミニウム被膜を形成した後、当該被膜を基材から剥離することで、電解アルミニウム箔を製造する方法を提案し、この方法によってビッカース硬度が40〜120Hvであって延性に富む電解アルミニウム箔を得ている。
【0004】
電解アルミニウム箔を工業的規模で製造する場合、基材の表面にアルミニウム被膜を形成する工程と当該被膜を基材から剥離する工程は、バッチ的に行うよりも、陰極ドラムを利用して連続的に行うことが望ましい。陰極ドラムを利用した電解アルミニウム箔の製造は、例えば、めっき液に一部が浸漬した陰極ドラムとめっき液に浸漬した陽極板の間に電流を印加することで陰極ドラムの表面にアルミニウム被膜を形成した後、陰極ドラムを回転させることで液面からせり上がったアルミニウム被膜を陰極ドラムから剥離することによるものであり、特許文献2に記載されているような電解アルミニウム箔製造装置を用いて行うことができる。陰極ドラムから剥離されたアルミニウム被膜は、電解アルミニウム箔として水洗された後に乾燥され、各種の用途に供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/001932号
【特許文献2】特開2012−246561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば特許文献2に記載の電解アルミニウム箔製造装置を用いて製造された電解アルミニウム箔を、箔帯としてロール状に巻き取る場合、巻き取り中の箔には箔に折り曲りや捩じれを生じさせる力が働く。従って、ロール状に巻き取られる電解アルミニウム箔は、蓄電デバイス用集電体などとして用いられる厚みが20μm以下の薄いものであっても、折り曲りや捩じれに対して強く、巻き取りに支障が生じることがない優れた可撓性を有していることが望ましい。しかしながら、優れた可撓性を有する電解アルミニウム箔は、特許文献1を含めてこれまで報告がない。
そこで本発明は、箔の折り曲りや捩じれによって巻き取りに支障が生じることがない優れた可撓性を有する、厚みが20μm以下の薄い電解アルミニウム箔を提供することを目的とする。また、本発明は、この電解アルミニウム箔を用いた蓄電デバイス用集電体、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の点に鑑みて鋭意検討を行った結果、ジアルキルスルホン、アルミニウムハロゲン化物、含窒素化合物を少なくとも含むめっき液を用いた電解法によって基材の表面にアルミニウム被膜を形成した後、当該被膜を基材から剥離することで製造される電解アルミニウム箔は、箔の厚み方向における中央部と表面部で弾性率が異なること、厚みが20μm以下の箔においては、箔の中央部よりも両表面部の方が弾性率が小さく、かつ、ナノインデンテーション法による測定において、箔の中央部と各表面部の弾性率の差が8.0GPa以下の場合、優れた可撓性を有することを見出した。
【0008】
上記の知見に基づいてなされた本発明の電解アルミニウム箔は、厚みが20μm以下の電解アルミニウム箔であって、箔の厚み方向における中央部よりも両表面部の方が弾性率が小さく、かつ、ナノインデンテーション法による測定において、箔の中央部と各表面部の弾性率の差が8.0GPa以下であることを特徴とする。
上記の電解アルミニウム箔は、ジアルキルスルホン、アルミニウムハロゲン化物、含窒素化合物を少なくとも含むめっき液を用いた電解法によって基材の表面にアルミニウム被膜を形成した後、当該被膜を基材から剥離することで製造される電解アルミニウム箔であって、めっき液に含まれる含窒素化合物が、ハロゲン化アンモニウム、第一アミンのハロゲン化水素塩、第二アミンのハロゲン化水素塩、第三アミンのハロゲン化水素塩、一般式:RN・X(R〜Rは同一または異なるアルキル基、Xは第四アンモニウムカチオンに対するカウンターアニオンを示す)で表される第四アンモニウム塩、含窒素芳香族化合物からなる群から選択される少なくとも1つであることが望ましい。
上記の電解アルミニウム箔は、電解アルミニウム箔に含まれる炭素、硫黄、塩素のそれぞれの含量の合計が1.0mass%以下であることが望ましい。
上記の電解アルミニウム箔は、めっき液に一部が浸漬した陰極ドラムとめっき液に浸漬した陽極板の間に電流を印加することで陰極ドラムの表面にアルミニウム被膜を形成した後、陰極ドラムを回転させることで液面からせり上がったアルミニウム被膜を陰極ドラムから剥離することで製造される電解アルミニウム箔であることが望ましい。
上記の電解アルミニウム箔は、硬度が、箔の厚み方向における中央部と各表面部いずれも、ナノインデンテーション法による測定において、1.00〜2.00GPaであり、中央部よりも少なくとも一方の表面部の方が大きく、箔の中央部と各表面部の硬度の差が0.4GPa以下であることが望ましい。
また、本発明の蓄電デバイス用集電体は、上記の電解アルミニウム箔からなることを特徴とする。
また、本発明の蓄電デバイス用電極は、上記の電解アルミニウム箔に電極活物質を担持させてなることを特徴とする。
また、本発明の蓄電デバイスは、上記の蓄電デバイス用電極を用いて構成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、箔の折り曲りや捩じれによって巻き取りに支障が生じることがない優れた可撓性を有する、厚みが20μm以下の薄い電解アルミニウム箔を提供することができる。また、本発明によれば、この電解アルミニウム箔を用いた蓄電デバイス用集電体、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイスを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の電解アルミニウム箔を製造するために用いることができる装置の一例の内部構造を模式的に示す斜視図である。
図2】同、内部構造を模式的に示す正面図である。
図3】実施例の評価試験1の電解アルミニウム箔の厚み方向における中央部の弾性率を基準にした各表面部の弾性率の分布を示すグラフである。
図4】同、中央部の硬度を基準にした各表面部の硬度の分布を示すグラフである。
図5】実施例の評価試験3の電解アルミニウム箔の引張試験の結果を示すグラフである。
図6】実施例の応用例1の本発明の電解アルミニウム箔を蓄電デバイス用正極集電体として利用した蓄電デバイスの一例の概略図である。
図7図6のA−A断面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の電解アルミニウム箔は、厚みが20μm以下の電解アルミニウム箔であって、箔の厚み方向における中央部よりも両表面部の方が弾性率が小さく、かつ、ナノインデンテーション法による測定において、箔の中央部と各表面部の弾性率の差が8.0GPa以下であることを特徴とするものである。
【0012】
フックの法則:σ=Eε(σ:応力、E:弾性率、ε:伸び率)に従えば、同じ応力がかかる場合には弾性率が小さいほど伸び率は大きい。本発明の電解アルミニウム箔は、箔の厚み方向における中央部よりも両表面部の方が弾性率が小さいので、箔の厚み方向における中央部よりも両表面部の方が伸び率が大きく、よって可撓性に優れる。電解アルミニウム箔の弾性率が厚み方向における中央部と両表面部で異なる理由は必ずしも明確ではないが、めっき液から不純物として箔に取り込まれる、炭素、硫黄、塩素などのアルミニウム以外の成分が関与していると考えられる。こうしたアルミニウム以外の成分の含量は少ないほど望ましいと考えられ、例えば、炭素、硫黄、塩素のそれぞれの含量の合計は、1.0mass%以下が望ましく、0.5mass%以下がより望ましく、0.2mass%以下がさらに望ましい。但し、本発明の電解アルミニウム箔は、ナノインデンテーション法による測定において、箔の中央部と各表面部の弾性率の差が8.0GPa以下である。箔の中央部と各表面部の弾性率の差が8.0GPaを超えると、弾性率の違いが大きすぎることで、箔の可撓性に悪影響を及ぼす。なお、本発明の電解アルミニウム箔の厚み方向における中央部と各表面部の弾性率は、ナノインデンテーション法による測定において、いずれも例えば30.0〜100.0GPaである。
【0013】
本発明の電解アルミニウム箔のアルミニウムの含量は、98.00mass%以上であることが望ましい。アルミニウムの含量が高いと体積抵抗率が小さくなるため、蓄電デバイスの集電体として用いることで蓄電デバイスの蓄電効率を高めることができるといった利点や、放熱性が向上するので優れた放熱性が要求される用途に適用することができるといった利点がある。また、アルミニウムの含量が高いと延性に富むため、陰極ドラムからアルミニウム被膜を剥離する際に当該被膜が破れたりしにくくなるといった利点もある。本発明の電解アルミニウム箔のアルミニウムの含量は、99.00mass%以上であることがより望ましく、99.50mass%以上であることがさらに望ましい(上限は概ね99.99mass%程度である)。なお、本発明の電解アルミニウム箔の厚みの上限は20μmであるが、下限は例えば1μmである。
【0014】
本発明の電解アルミニウム箔の硬度は、例えば、箔の厚み方向における中央部と各表面部いずれも、ナノインデンテーション法による測定において、1.00〜2.00GPaであり、中央部よりも少なくとも一方の表面部の方が大きく、箔の中央部と各表面部の硬度の差が0.4GPa以下である。
【0015】
本発明の電解アルミニウム箔は、例えば、ジアルキルスルホン、アルミニウムハロゲン化物、含窒素化合物を少なくとも含むめっき液を用いた電解法によって基材の表面にアルミニウム被膜を形成した後、当該被膜を基材から剥離することで製造することができる。ジアルキルスルホン、アルミニウムハロゲン化物、含窒素化合物を少なくとも含むめっき液としては、速い成膜速度で延性に富む高純度の電解アルミニウム箔を製造することができる、本発明者らの研究グループが特許文献1において提案しためっき液が挙げられる。
【0016】
ジアルキルスルホンとしては、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジプロピルスルホン、ジヘキシルスルホン、メチルエチルスルホンなどのアルキル基の炭素数が1〜6のもの(直鎖状でも分岐状でもよい)を例示することができるが、良好な電気伝導性や入手の容易性などの観点からはジメチルスルホンを好適に採用することができる。
【0017】
アルミニウムハロゲン化物としては、塩化アルミニウムや臭化アルミニウムなどを例示することができるが、アルミニウムの析出を阻害する要因となるめっき液に含まれる水分の量を可能な限り少なくするという観点から、用いるアルミニウムハロゲン化物は無水物であることが望ましい。
【0018】
含窒素化合物としては、ハロゲン化アンモニウム、第一アミンのハロゲン化水素塩、第二アミンのハロゲン化水素塩、第三アミンのハロゲン化水素塩、一般式:RN・X(R〜Rは同一または異なるアルキル基、Xは第四アンモニウムカチオンに対するカウンターアニオンを示す)で表される第四アンモニウム塩、含窒素芳香族化合物からなる群から選択される少なくとも1つであることが望ましい。含窒素化合物は単独で用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。ハロゲン化アンモニウムとしては、塩化アンモニウムや臭化アンモニウムなどを例示することができる。また、第一アミン〜第三アミンとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ヘキシルアミン、メチルエチルアミンなどのアルキル基の炭素数が1〜6のもの(直鎖状でも分岐状でもよい)を例示することができる。ハロゲン化水素としては、塩化水素や臭化水素などを例示することができる。一般式:RN・X(R〜Rは同一または異なるアルキル基、Xは第四アンモニウムカチオンに対するカウンターアニオンを示す)で表される第四アンモニウム塩におけるR〜Rで示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基などの炭素数が1〜6のもの(直鎖状でも分岐状でもよい)を例示することができる。Xとしては塩素イオンや臭素イオンやヨウ素イオンなどのハロゲン化物イオンの他、BFやPFなどを例示することができる。具体的な化合物としては、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、四フッ化ホウ素テトラエチルアンモニウムなどを例示することができる。含窒素芳香族化合物としては、フェナントロリンやアニリンなどを例示することができる。好適な含窒素化合物としては、速い成膜速度で延性に富む高純度の電解アルミニウム箔の製造を容易にする点において第三アミンの塩酸塩、例えばトリメチルアミン塩酸塩を挙げることができる。
【0019】
ジアルキルスルホン、アルミニウムハロゲン化物、含窒素化合物の配合割合は、例えば、ジアルキルスルホン10モルに対し、アルミニウムハロゲン化物は1.5〜6.0モルが望ましく、2.0〜5.0モルがより望ましく、2.5〜4.0モルがさらに望ましい。含窒素化合物は0.001〜2.0モルが望ましく、0.005〜0.2モルがより望ましく、0.01〜0.1モルがさらに望ましい。アルミニウムハロゲン化物の配合量がジアルキルスルホン10モルに対し1.5モルを下回ると形成されるアルミニウム被膜が黒ずんでしまう現象(焼けと呼ばれる現象)が発生する恐れや成膜効率が低下する恐れがある。一方、6.0モルを越えるとめっき液の液抵抗が高くなりすぎることでめっき液が発熱して分解する恐れがある。また、含窒素化合物の配合量がジアルキルスルホン10モルに対し0.001モルを下回ると配合することの効果、即ち、めっき液の電気伝導性の改善に基づく高電流密度印加でのめっき処理の実現による成膜速度の向上、電解アルミニウム箔の高純度化や延性の向上などの効果が得られにくくなる恐れや、電解アルミニウム箔に炭素、硫黄、塩素といった不純物、とりわけ炭素が多く取り込まれることでその純度が低下する恐れがある。一方、2.0モルを越えるとめっき液の組成が本質的に変わってしまうことでアルミニウムが析出しなくなってしまう恐れがある。ジアルキルスルホン、アルミニウムハロゲン化物、含窒素化合物は、アルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下で、所定の配合割合で混合した後、ジアルキルスルホンの融点まで加温し(ジメチルスルホンの場合は約110℃)、溶融したジアルキルスルホンにアルミニウムハロゲン化物と含窒素化合物を溶解させることでめっき液を調製することが望ましい。
【0020】
めっき条件としては、例えば、めっき液の温度が60〜150℃、印加電流密度が0.25〜20A/dmを挙げることができる。めっき液の温度の下限はめっき液の融点を考慮して決定されるべきものであり、望ましくは80℃、より望ましくは95℃である(めっき液の融点を下回るとめっき液が固化するのでめっき処理がもはや行えなくなる)。一方、めっき液の温度が150℃を越えると陰極ドラムの表面に形成されたアルミニウム被膜とめっき液との間での反応が活発化し、電解アルミニウム箔に炭素、硫黄、塩素といった不純物が多く取り込まれることでその純度が低下する恐れがある。めっき液の温度の上限は125℃が望ましく、115℃がより望ましく、110℃がさらに望ましい。また、印加電流密度が0.25A/dmを下回ると成膜効率が低下する恐れがある。一方、20A/dmを超えると含窒素化合物の分解などが原因で安定なめっき処理が行えなくなったり延性に富む高純度の電解アルミニウム箔が得られなくなったりする恐れや、電解アルミニウム箔のめっき液側の面の表面粗さRaが粗くなりすぎる(例えば0.6μm以上となる)恐れがある。印加電流密度は5〜17A/dmが望ましく、10〜15A/dmがより望ましい。
【0021】
本発明の電解アルミニウム箔は、バッチ的に製造されるものであってもよいし、陰極ドラムを利用して連続的に製造されるものであってもよいが、工業的規模で製造することができる陰極ドラムを利用して連続的に製造する方法、具体的には、例えば、めっき液に一部が浸漬した陰極ドラムとめっき液に浸漬した陽極板の間に電流を印加することで陰極ドラムの表面にアルミニウム被膜を形成した後、陰極ドラムを回転させることで液面からせり上がったアルミニウム被膜を陰極ドラムから剥離することで製造されるものであることが望ましい。
【0022】
めっき液に一部が浸漬した陰極ドラムとめっき液に浸漬した陽極板の間に電流を印加することで陰極ドラムの表面にアルミニウム被膜を形成した後、陰極ドラムを回転させることで液面からせり上がったアルミニウム被膜を陰極ドラムから剥離することによる電解アルミニウム箔の製造は、例えば特許文献2に記載の電解アルミニウム箔製造装置を用いて行うことができる。
【0023】
図1は、特許文献2に記載の電解アルミニウム箔製造装置の内部構造を模式的に示す斜視図であり、図2は、同、内部構造を模式的に示す正面図である。この電解アルミニウム箔製造装置1は、蓋部1a、電解槽1b、陰極ドラム1c、陽極板1d、ガイドロール1e、箔引出し口1f、ガス供給口1g、ヒーター電源1h、ヒーター1i、めっき液循環装置1j、天井部1k、撹拌流ガイド1m、撹拌羽根1n、図略の直流電源を備えている。陰極ドラム1cは、ステンレス、チタン、アルミニウム、ニッケル、銅などの金属から構成され、電解槽1bに貯留されためっき液Lに一部が浸漬するように配設されている。陽極板1dは、例えばアルミニウムから構成され、めっき液Lの液中において陰極ドラム1cの表面に対向して配設されている(アルミニウムの純度は99.0%以上が望ましい)。陰極ドラム1cと陽極板1dは、直流電源に接続されており、両者に通電しながら、陰極ドラム1cを一定速度(電解アルミニウム箔の所望する厚み、めっき液の温度や印加電流密度などにも依存するが、例えば6〜20rad/hである)で回転させることで、陰極ドラム1cのめっき液Lに浸漬した表面にアルミニウム被膜が形成される。通電中、めっき液Lは、ヒーター電源1hに接続されたヒーター1iにより所定の温度に加温されて保持される。同時に、めっき液Lは、撹拌羽根1nの回転により撹拌され、撹拌流ガイド1mによって陰極ドラム1cと陽極板1dの間にめっき液Lの均質な流れを発生させることで、陰極ドラム1cの表面に均質なアルミニウム被膜を形成することができる。陰極ドラム1cをさらに回転させると、陰極ドラム1cの表面に形成されたアルミニウム被膜は液面からせり上がるとともに、陰極ドラム1cの新たにめっき液Lに浸漬した表面に新たなアルミニウム被膜が形成される。液面からせり上がったアルミニウム被膜は、その端部がガイドロール1eに誘導されて陰極ドラム1cから剥離されることで、電解アルミニウム箔Fとして装置の側面に設けた箔引出し口1fから装置の外部に引き出される。こうして陰極ドラム1cの表面へのアルミニウム被膜の形成と当該被膜の陰極ドラム1cからの剥離を連続的に行い、装置の外部に引き出された電解アルミニウム箔Fは、箔の表面に付着しているめっき液を除去するためにすぐに水洗された後に乾燥され、各種の用途に供することができる。
【0024】
特許文献2に記載の電解アルミニウム箔製造装置を用いて電解アルミニウム箔を製造する場合、ガス供給口1gから、露点が−50.0℃以下のガスGを処理雰囲気制御ガスとして装置の内部に例えば1〜50L/minの供給量で供給し、処理雰囲気の露点を−50.0℃以下に制御することが望ましい。処理雰囲気の露点を−50.0℃以下に制御することで、液面からせり上がったアルミニウム被膜を陰極ドラム1cから剥離して電解アルミニウム箔Fを得る際、箔のめっき液Lに接していた側の面(図2においては下側の面)に付着しているめっき液が、処理雰囲気中の水分と反応することで、箔の表面にアルミニウムの酸化物膜や水酸化物膜が形成されることに起因すると考えられる変色が防止される。処理雰囲気制御ガスとして装置の内部に供給する露点が−50.0℃以下のガスGは、露点が−50.0℃以下のガスであればガスの種類に特段の制限はないが、ガスの種類はアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガスが望ましい。処理雰囲気の露点の下限は、処理雰囲気制御ガスの調製の容易性などに鑑みれば、例えば−80.0℃である。
【0025】
電解アルミニウム箔のめっき液に接していた側の面(陰極ドラムに接していた側の面と反対の面。以下、めっき液に接していた側の面を「めっき液側の面」、陰極ドラムに接していた側の面を「陰極ドラム側の面」と略称する)に付着しているめっき液が、処理雰囲気中の水分と反応することで、箔の表面にアルミニウムの酸化物膜や水酸化物膜が形成されることに起因すると考えられる変色が防止されていることにより、箔のめっき液側の面のL表色系(SCI方式)におけるL値が、箔の陰極ドラム側の面(めっき液の付着がない面)のL値が86.00以上であるのと同じく86.00以上であり、両面とも均一な白色の外観を呈する。ここで、L表色系におけるL値は明度を意味し、0(黒)〜100(白)の範囲の数値である。電解アルミニウム箔のめっき液側の面のL値は、概ね86.00〜88.00である。一方、箔の陰極ドラム側の面のL値は、陰極ドラムの表面粗さRaを反映する箔の陰極ドラム側の面の表面粗さRaによって異なるが、概ね87.00〜96.00である。電解アルミニウム箔を表裏の識別なく用いるためには、箔のめっき液側の面のL値と陰極ドラム側の面のL値の差は9.00以下であることが望ましく、7.00以下であることがより望ましく、5.00以下であることがさらに望ましい。例えば、陰極ドラムの表面粗さRaが0.50〜0.60μmの場合、陰極ドラム側の面の表面粗さRaが0.50〜0.60μmである電解アルミニウム箔が得られ、そのL値は概ね87.00〜90.00であり、めっき液側の面のL値と近似したものになる。また、電解アルミニウム箔のめっき液側の面と陰極ドラム側の面いずれも、L表色系(SCI方式)におけるa値が1.00以下であってb値が5.00以下であることが望ましい。L表色系におけるa値は+側が赤方向を意味し−側が緑方向を意味する。b値は+側が黄方向を意味し−側が青方向を意味する。なお、L表色系の測定方式には、正反射光を含んで測定する方式であるSCI方式や、正反射光を除去して拡散反射光だけを測定するSCE方式があるが、ここでは、測定対象物の表面状態に関係なくその素材自体の色を評価することができるSCI方式を採用する。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
【0027】
実施例1:
窒素ガスの雰囲気下で、ジメチルスルホン、無水塩化アルミニウム、トリメチルアミン塩酸塩をモル比で10:3.8:0.05の割合で配合し、110℃で溶解させて電解アルミニウムめっき液を調製した。図1図2に示す特許文献2に記載の電解アルミニウム箔製造装置(陰極ドラム:直径:140mm×幅:200mmのチタン製で表面粗さRaが0.08μm、陽極板:純度99.0%のアルミニウム製)を用い、めっき液の温度が105℃、印加電流密度が10A/dmのめっき条件で、陰極ドラムを15rad/hの回転速度で回転させながら、その表面にアルミニウム被膜を形成した後、液面からせり上がったアルミニウム被膜を陰極ドラムから剥離して電解アルミニウム箔を得た(ガイドロールの高さ:めっき液の液面から45mm)。この際、装置の内部に露点が−60.0℃の窒素ガスを30L/minの供給量で供給して処理雰囲気を制御した。装置の外部に引き出した電解アルミニウム箔は、箔の表面に付着しているめっき液を除去するために、すぐに両面に水を吹き付けて1次洗浄した後、水槽に水没させて2次洗浄し、乾燥させて、長さ:400mm×幅:200mm×厚さ:12μmの電解アルミニウム箔を得た。
【0028】
実施例2:
純度99.9%のアルミニウム製の陽極板を用いること以外は実施例1と同様にして、長さ:400mm×幅:200mm×厚さ:12μmの電解アルミニウム箔を得た。
【0029】
実施例3:
印加電流密度を14A/dmとすることと、陰極ドラムの回転速度を20rad/hとすること以外は実施例1と同様にして、長さ:400mm×幅:200mm×厚さ:12μmの電解アルミニウム箔を得た。
【0030】
実施例4:
ジメチルスルホン、無水塩化アルミニウム、トリメチルアミン塩酸塩をモル比で10:3.8:0.02の割合で配合し、110℃で溶解させて調製した電解アルミニウムめっき液を用いることと、陰極ドラムの回転速度を9rad/hとすること以外は実施例1と同様にして、長さ:400mm×幅:200mm×厚さ:20μmの電解アルミニウム箔を得た。
【0031】
比較例1:
ジメチルスルホン、無水塩化アルミニウム、トリメチルアミン塩酸塩をモル比で10:3.8:0.0005の割合で配合し、110℃で溶解させて調製した電解アルミニウムめっき液を用いることと、陰極ドラムの回転速度を9rad/hとすること以外は実施例1と同様にして、長さ:400mm×幅:200mm×厚さ:20μmの電解アルミニウム箔を得た。
【0032】
比較例2:
めっき液の温度を130℃とすること以外は実施例1と同様にして、長さ:400mm×幅:200mm×厚さ:12μmの電解アルミニウム箔を得た。
【0033】
評価試験1:ナノインデンテーション法による電解アルミニウム箔の弾性率と硬度の測定
ナノインデンテーション法による測定は、極低荷重の押し込み試験を高精度で行うものであり、弾性率(ヤング率)や硬度といった材料特性を、一度の押し込み試験により、連続的に深さ方向の関数として求めることができる。弾性率や硬度は、圧子の押し込み荷重と深さを連続的に測定し、顕微鏡像ではなく押し込み荷重と深さの変異曲線から算出される。実施例1〜4と比較例1、2のそれぞれの電解アルミニウム箔の弾性率と硬度を、分析装置(ナノインデンター)としてHysitron Inc.社製のTriboindenterを用い、以下の条件で測定した。結果を表1に示す。また、実施例1〜4と比較例1、2のそれぞれの電解アルミニウム箔について、箔の厚み方向における中央部の弾性率を基準にした各表面部の弾性率の分布を図3に、中央部の硬度を基準にした各表面部の硬度の分布を図4にそれぞれ示す。
使用圧子:Berkovich(三角錐型)
・ 測定方法:単一押し込み測定
・ 温度:室温(25℃)
・ 押し込み深さ設定:100nm
・ 測定位置:各表面部(めっき液側の面(表面部)と陰極ドラム側の面(裏面部))からそれぞれ深さ方向に2μmの位置および中央部の計3ヶ所
【0034】
評価試験2:電解アルミニウム箔の180度曲げ試験
長さが50mmの電解アルミニウム箔の両端が接触するまで180度曲げ、破損の有無を目視により観察し、以下の基準に従って判定した。結果を表1に示す。
・ ◎:180度曲げさらに折り目を押し付けても破断は生じない
・ ○:180度曲げても破断は生じないが折り目を押し付けると破断が生じる
・ ×:180度曲げる途中で破断が生じる
【0035】
【表1】
【0036】
表1、図3図4から明らかなように、実施例1〜4の厚みが20μm以下の電解アルミニウム箔は、いずれもが、箔の厚み方向における中央部よりも両表面部の方が弾性率が小さく、かつ、箔の中央部と各表面部の弾性率の差が8.0GPa以下であることで、180度曲げ試験において合格し、優れた可撓性を有していた。箔の厚み方向における中央部と各表面部の弾性率は、いずれも30.0〜100.0GPaであった。また、箔の硬度は、箔の厚み方向における中央部と各表面部いずれも、1.00〜2.00GPaであり、中央部よりも少なくとも一方の表面部の方が大きく、箔の中央部と各表面部の硬度の差が0.4GPa以下であった。実施例1〜4の方法によって製造される電解アルミニウム箔は、優れた可撓性を有することから、箔の折り曲りや捩じれによって巻き取りに支障が生じることなく、少なくとも全長が5mの箔帯としてロール状に巻き取ることができた。
【0037】
評価試験3:電解アルミニウム箔の引張試験
実施例1と比較例1のそれぞれの電解アルミニウム箔について、島津製作所社製のオートグラフAGS−500NXを用いて引張試験を行った(試験片サイズ:長さ:70mm×幅:10mm、チャック間距離:30mm、引張速度:50mm/min、室温条件)。結果を図5に示す。図5から明らかなように、実施例1の電解アルミニウム箔は、可撓性が優れ、高い引張強度を示した後、塑性変形域で大きく伸びるが、比較例1の電解アルミニウム箔は、高い引張強度を示すものの、可撓性を有していないことで、塑性変形前に破断してしまった。実施例2〜4と比較例2のそれぞれの電解アルミニウム箔についても同様の引張試験を行ったところ、実施例2〜4の電解アルミニウム箔は実施例1の電解アルミニウム箔と同様の傾向を示し、比較例2の電解アルミニウム箔は比較例1の電解アルミニウム箔と同様の傾向を示した。
【0038】
なお、実施例1〜4と比較例1、2のそれぞれの電解アルミニウム箔について、炭素と硫黄の含量の測定を、堀場製作所社製の炭素・硫黄分析装置EMIA−820Wにより行うとともに、リガク社製の波長分散蛍光X線分析装置RIX−2100を用いて塩素の含量を測定し、その残りをアルミニウムの含量とした。結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
【0040】
表2から明らかなように、厚みが20μm以下の電解アルミニウム箔においては、厚みが同じ場合、不純物(炭素、硫黄、塩素)の含量が少ないほど(アルミニウムの含量が多いほど)、可撓性が優れることがわかった。
【0041】
また、実施例1〜4と比較例1、2のそれぞれの電解アルミニウム箔について、外観観察を行うとともに、箔の表面のL表色系におけるL値、a値、b値を計測したところ、いずれの箔のめっき液側の面も陰極ドラム側の面も、均一な白色の外観を呈し、表面の変色は認められず、L値は86.00〜96.00、a値は−1.00〜1.00、b値は0.00〜5.00であった。なお、箔の表面のL値、a値、b値の計測は、SCI方式を採用し、KONICA MINOLTA社製の分光測色計CM−700dにより、白色校正キャップを装着して白色校正を行った後、付属の安定板付きφ8mmターゲットマスク(CM−A179)を用いて暗室内で行った。
【0042】
応用例1:本発明の電解アルミニウム箔を蓄電デバイス用正極集電体として利用した蓄電デバイスの作製
実施例1の電解アルミニウム箔を正極集電体として利用し、その表面に正極活物質を塗布したものを正極として、図6に示す蓄電デバイスを作製した。蓄電デバイス100は、筐体10の内部にフッ素化合物を含んだ有機電解液7が充填され、その有機電解液中に電極ユニット8が浸漬された構成を有する。電極ユニット8は、薄い箔で帯状の正極、負極、セパレータを、正極−セパレータ−負極−セパレータの順に重ねて積層体とし、この積層体を倦回した構造である。筐体10は金属材料からなり、その内側には絶縁層4が形成されている。また、筐体10には外部機器との接続端子となる正極端子5と負極端子6が形成され、正極端子5と電極ユニット8からなる正極11が、負極端子6と電極ユニット8からなる負極12と、それぞれ電気的に接続されている。図7図6のA−A断面である。正極11と負極12はセパレータ3によって物理的に隔離されているので両者は直接通電しない。しかしながら、セパレータ3は有機電解液7が透過しうる多孔質な材質からなり、正極11と負極12は有機電解液7を介して電気的に接続された状態である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、箔の折り曲りや捩じれによって巻き取りに支障が生じることがない優れた可撓性を有する、厚みが20μm以下の薄い電解アルミニウム箔を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。また、本発明は、この電解アルミニウム箔を用いた蓄電デバイス用集電体、蓄電デバイス用電極、蓄電デバイスを提供することもできる点において産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0044】
1 電解アルミニウム箔製造装置
1a 蓋部
1b 電解槽
1c 陰極ドラム
1d 陽極板
1e ガイドロール
1f 箔引出し口
1g ガス供給口
1h ヒーター電源
1i ヒーター
1j めっき液循環装置
1k 天井部
1m 撹拌流ガイド
1n 撹拌羽根
F 電解アルミニウム箔
G 処理雰囲気制御ガス
L めっき液
3 セパレータ
4 絶縁層
5 正極端子
6 負極端子
7 有機電解液
8 電極ユニット
10 筐体
11 正極
12 負極
100 蓄電デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7