特許第6427947号(P6427947)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6427947
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】ガスバリア性包装材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20181119BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20181119BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20181119BHJP
   B65D 81/24 20060101ALI20181119BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   B32B27/00 B
   B32B27/40
   B32B27/30 102
   B65D81/24 E
   B65D65/40 D
【請求項の数】2
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-101434(P2014-101434)
(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公開番号】特開2015-217558(P2015-217558A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 晴香
(72)【発明者】
【氏名】大森 望
【審査官】 弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−006707(JP,A)
【文献】 特開2009−167364(JP,A)
【文献】 特開平7−157742(JP,A)
【文献】 特開2009−25728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
B65D 65/40
B65D 81/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体の一方の面に設けられた接着層(A)、および、該接着層(A)上に形成されたバリア層(B)からなるガスバリア層と、を備え、
前記接着層(A)は、水性ポリウレタン樹脂(a1)、水溶性高分子(a2)および水分散性ポリイソシアネート系硬化剤(a3)を含み、
前記水溶性高分子(a2)は、ポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体の少なくとも1種であり、
前記水性ポリウレタン樹脂(a1)と前記水溶性高分子(a2)の配合比は、質量比で10:90〜60:40であり、
透過法によって前記バリア層(B)の赤外線吸収スペクトルを測定したとき、1490cm−1〜1659cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)と、1660cm−1〜1750cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上であることを特徴とするガスバリア性包装材料。
【請求項2】
前記支持体は、ポリオレフィンを含むことを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料に対しては、内容物の変質を防止することが求められている。例えば、食品用包装材料に対しては、タンパク質や油脂等の酸化や変質を抑制し、さらに、風味や鮮度を保持できることが求められている。また、無菌状態での取扱いが必要とされる医薬品用包装材料に対しては、内容物の有効成分の変質を抑制し、その効能を保持できることが求められている。
このような内容物の変質は、主として、包装材料を透過する酸素や水蒸気、あるいは、内容物と反応するような他のガスにより引き起こされる。そのため、食品や医薬品等の包装に用いられる包装材料に対しては、酸素や水蒸気等のガスを透過させない性質(ガスバリア性)を備えていることが求められている。
【0003】
このような要求に対し、従来、比較的ガスバリア性が高いとされる重合体(ガスバリア性重合体)で構成されるガスバリア性フィルムや、これを基材フィルムとして用いた積層体(積層フィルム)が用いられている。
従来、ガスバリア性重合体としては、ポリ(メタ)アクリル酸や、ポリビニルアルコールに代表される、分子内に親水性の高い高水素結合性基を含有する重合体が用いられてきた。これらの重合体からなる包装材料は、乾燥条件下において、非常に優れた酸素等のガスバリア性を示す。しかしながら、これらの重合体からなる包装材料は、高湿度条件下において、その親水性に起因して酸素等のガスバリア性が大きく低下するという問題や、湿度や熱水に対する耐性が劣るという問題があった。
【0004】
これらの問題を解決するために、基材上に、ポリカルボン酸系重合体層と多価金属化合物含有層とを隣接させて積層し、これら2つの層間で反応させることにより、ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を生成して、ガスバリア性包装材料とすることが知られている(例えば、特許文献1および2参照)。このようにして得られたガスバリア性包装材料は、高湿度下でも高い酸素ガスバリア性を有することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4373797号公報
【特許文献2】特許第5012895号公報
【特許文献3】特許第4765090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および2に記載されているガスバリア性包装材料は、ガスバリア性を発現させるために、ポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物を反応させて、ポリカルボン酸系重合体の多価金属塩を形成させる必要があるため、ガスバリア性包装材料を、レトルト処理を施したり、多湿な環境に長時間晒したりする必要があった。そのため、これらのガスバリア性包装材料は、レトルト処理を必要としない用途で使用した場合、必要とするガスバリア性が得られないという課題があった。
【0007】
この課題を解決するために、レトルト処理等を必要としないガスバリア性包装材料が知られている(例えば、特許文献3参照)。特許文献3に記載されているガスバリア性包装材料は、無機層上にガスバリア層が積層され、レトルト処理を施すことなく、ガスバリア性を発現することができる。しかしながら、プラスチックフィルムからなる支持体上に直接、ガスバリア層を形成する場合、支持体をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等に限定する必要がある。また、このガスバリア性包装材料は、無機層を形成するために蒸着装置が必要であるため、一般的なコーティング装置では作製できないという課題があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、レトルト処理等の高熱高圧処理を施すことなく、一般的なコーティング装置のみで製造が可能なガスバリア性包装材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、支持体と、該支持体の一方の面に設けられた接着層(A)、および、該接着層(A)上に形成されたバリア層(B)からなるガスバリア層と、を備え、前記接着層(A)は、水性ポリウレタン樹脂(a1)、水溶性高分子(a2)および水分散性ポリイソシアネート系硬化剤(a3)を含み、前記水溶性高分子(a2)は、ポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体の少なくとも1種であり、前記水性ポリウレタン樹脂(a1)と前記水溶性高分子(a2)の配合比は、質量比で10:90〜60:40であり、透過法によって前記バリア層(B)の赤外線吸収スペクトルを測定したとき、1490cm−1〜1659cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)と、1660cm−1〜1750cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上であることを特徴とするガスバリア性包装材料である。
【0012】
前記支持体は、ポリオレフィンを含んでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、レトルト処理等の高熱高圧処理を施すことなく、一般的なコーティング装置のみで製造が可能なガスバリア性包装材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のガスバリア性包装材料の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
「ガスバリア性包装材料」
本実施形態のガスバリア性包装材料は、支持体と、その支持体の一方の面に設けられた接着層(A)、および、接着層(A)上に形成されたバリア層(B)からなるガスバリア層と、を備え、接着層(A)は、水性ポリウレタン樹脂(a1)、水溶性高分子(a2)および硬化剤(a3)を含み、水性ポリウレタン樹脂(a1)と水溶性高分子(a2)の配合比は、質量比で10:90〜60:40である。
【0016】
本実施形態のガスバリア性包装材料において、支持体の一方の面に、接着層(A)とバリア層(B)が、この順に積層されて、接着層(A)とバリア層(B)がガスバリア層を形成している。
【0017】
[支持体]
支持体の形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、フィルム、シート、ボトル、カップ、トレー、タンク、チューブ等の形態が挙げられる。本実施形態においては、バリア層等を積層させる観点から、フィルムやシートが好ましい。
【0018】
支持体の厚さは、その用途等によっても異なるが、5μm〜5cmであることが好ましい。
フィルムやシートの用途では、支持体の厚さは、5μm〜800μmであることが好ましく、5μm〜500μmであることがより好ましい。
支持体の厚さが上記範囲内であれば、各用途における作業性および生産性に優れている。
【0019】
支持体の材質としては、例えば、プラスチック類、紙類、ゴム類等が挙げられる。これらの材質の中でも、支持体と接着層(A)との接着性の観点からプラスチック類が好ましい。
【0020】
プラスチック類の材質としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン系重合体、前記のポリオレフィン系重合体の共重合体、前記のポリオレフィン系重合体の酸変性物;ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール等の酢酸ビニル系共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート等のポリエステル系重合体、前記のポリエステル系重合体の共重合体;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6−ナイロン66共重合体、ナイロン6−ナイロン12共重合体、メタキシレンアジパミド・ナイロン6共重合体等のポリアミド系重合体、前記のポリアミド系重合体の共重合体;ポリエチレングリコール、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド等のポリエーテル系重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の塩素系重合体またはフッ素系重合体、前記の塩素系重合体またはフッ素系重合体の共重合体;ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系重合体、前記のアクリル系重合体の共重合体;ポリイミド系重合体、前記のポリイミド系重合体の共重合体;アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、塗料用に用いるエポキシ樹脂等の樹脂;セルロース、澱粉、プルラン、キチン、キトサン、グルコマンナン、アガロース、ゼラチン等の天然高分子化合物やそれらの混合物が挙げられる。
【0021】
また、このような支持体としては、支持体と接着層(A)との接着性の観点から、表面にコロナ処理、火炎処理、プラズマ処理等の表面活性化処理が施されたものであってもよい。
【0022】
[接着層(A)]
接着層(A)は、水性ポリウレタン樹脂(a1)、水溶性高分子(a2)および硬化剤(a3)を含む塗液Aから形成される。接着層は、支持体の一方の面に、前記の塗液Aを塗工し、乾燥させて形成することが好ましい。
【0023】
接着層(A)の厚さは、均一な塗膜を形成することができれば、特に限定されないが、0.01μm〜2μmであることが好ましく、0.05μm〜1μmであることがより好ましい。
接着層(A)の厚さが0.01μm以上の場合、均一な塗膜が得られやすく、支持体に対する密着性の観点で優れている。また、接着層(A)の厚さが2μm以下の場合、塗膜に柔軟性(可撓性)を保持させることができ、外的要因により塗膜に亀裂が生じるおそれがない。
【0024】
<水性ポリウレタン樹脂(a1)>
接着層(A)は、水溶性または水分散性を有する水性ポリウレタン樹脂(a1)を含有することで、支持体への濡れ性、密着性を発揮する。
水性ポリウレタン樹脂(a1)を構成するポリウレタン樹脂(アニオン性自己乳化型ポリウレタン樹脂)の酸基としては、カルボキシル基、スルホン酸基等が挙げられる。この酸基は、ポリウレタン樹脂の末端または側鎖に位置していてもよいが、少なくとも側鎖に位置している必要がある。この酸基は、通常、中和剤(塩基)により中和可能であり、塩基と塩を形成していてもよい。
なお、酸基は、水性ポリウレタン樹脂(a1)を構成するポリアミン化合物のアミノ基(イミノ基または第三級窒素原子)と結合可能である。
【0025】
ポリウレタン樹脂の酸価は、水溶性または水分散性を付与できる範囲で選択することができるが、通常、5mgKOH/g〜100mgKOH/gであり、10mgKOH/g〜70mgKOH/gであることが好ましく、15mgKOH/g〜60mgKOH/gであることがより好ましい。
【0026】
ポリウレタン樹脂は、通常、少なくとも剛直な単位(炭化水素環で構成された単位)と短鎖単位(例えば、炭化水素鎖で構成された単位)とを有している。すなわち、ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位は、通常、ポリイソシアネート成分、ポリヒドロキシ酸成分、ポリオール成分や鎖伸長剤成分(特に、少なくともポリイソシアネート成分)に由来して、炭化水素環(芳香族および非芳香族炭化水素環の少なくとも一方)を含んでいる。
ポリウレタン樹脂の繰り返し構成単位における炭化水素環で構成された単位の割合は、通常、10質量%〜70質量%であり、好ましくは15質量%〜65質量%であり、より好ましくは20質量%〜60質量%である。
【0027】
ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、適宜選択可能であるが、800〜1,000,000であることが好ましく、800〜200,000であることがより好ましく、800〜100,000であることがさらに好ましい。
なお、ポリウレタン樹脂の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0028】
水性ポリウレタン樹脂(a1)は、通常、中和剤を含み、上記のポリウレタン樹脂が水性媒体中に溶解あるいは分散した状態で形成される。
【0029】
水性媒体としては、水、水溶性溶媒、親水性溶媒、あるいは、これらの混合溶媒が挙げられる。水性媒体は、通常、水または水を主成分として含む水性溶媒である。
親水性溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;セロソルブ類;カルビトール類;アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。
【0030】
水性ポリウレタン樹脂(a1)は、水性媒体に上記のポリウレタン樹脂を溶解した水溶液、または、水性媒体に上記のポリウレタン樹脂を分散した水分散体のいずれの形態であってもよい。
水分散体において、分散粒子(ポリウレタン樹脂粒子)の平均粒径は、特に限定されず、例えば、20nm〜500nmであり、好ましくは25nm〜300nmであり、より好ましくは30nm〜200nmである。
【0031】
水性ポリウレタン樹脂(a1)の製造方法は、特に限定されず、アセトン法、プレポリマー法等、通常のポリウレタン樹脂の水性化技術が用いられる。
また、ウレタン化反応では、必要に応じて、アミン系触媒、錫系触媒、鉛系触媒等のウレタン化触媒を用いてもよい。
【0032】
水性ポリウレタン樹脂(a1)の製造方法としては、例えば、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトニトリル等のニトリル類等の不活性有機溶媒中、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、必要に応じて、ポリオール成分および鎖伸長剤成分の少なくとも一方と、を反応させる方法が挙げられる。
より具体的には、不活性有機溶媒(特に、親水性または水溶性の有機溶媒)中、ポリイソシアネート化合物と、ポリヒドロキシ酸と、ポリオール成分と、を反応させて、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを生成し、そのプレポリマーを中和剤で中和して水性媒体に溶解または分散した後、鎖伸長剤成分を添加して反応させ、有機溶媒を除去することにより、水性ポリウレタン樹脂(a1)を調製する。
【0033】
水性ポリウレタン樹脂(a1)と、後述する水溶性高分子(a2)との配合比((a1):(a2))は、質量比で10:90〜60:40であり、10:90〜50:50であることが最も好ましい。
水性ポリウレタン樹脂(a1)と水溶性高分子(a2)との配合比が10:90未満では、水性ポリウレタン樹脂(a1)由来の支持体への密着性が低下する。一方、水性ポリウレタン樹脂(a1)と水溶性高分子(a2)との配合比が60:40を超えると、接着層(A)に積層されるバリア層(B)との親和性が低下し、水溶液をはじいてしまう。そのため、接着層(A)上に、バリア層(B)を形成することができない。
【0034】
<水溶性高分子(a2)>
水溶性高分子(a2)は、常温で水に完全に溶解または微分散可能な高分子である。このような高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、酸化でんぷん、エーテル化でんぷん、デキストリン等のでんぷん類、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸またはそのエステル、塩類およびそれらの共重合体、スルホイソフタル酸等の極性基を含有する共重合ポリエステル、ポリヒドロキシエチルメタクリレートおよびその共重合体等のビニル系重合体、ウレタン系高分子、あるいは、これらの各種重合体のカルボキシル基等官能基変性重合体等が挙げられる。
【0035】
これらの高分子の中でも、接着層(A)に積層されるバリア層(B)との密着性の観点から、ポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体の少なくとも1種が好ましい。
本実施形態で用いられるポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体のケン化度は、65mol%以上であることが好ましい。ケン化度が65mol%未満であると、ポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体が水に溶解せずに、水性ポリウレタン樹脂(a1)と混合できないことがある。
【0036】
ポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体の重合度は、一般に100〜10000程度であるが、重合度が100よりも小さいポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体も、本実施形態のガスバリア性包装材料に適用することができる。
本実施形態で用いられるポリビニルアルコール系重合体およびその誘導体は、水溶性であれば特に限定されないが、重合度が高くなるに従い、粘度が増加するため、重合度は3500以下であることが好ましい。
【0037】
<硬化剤(a3)>
硬化剤(a3)は、水性ポリウレタン樹脂(a1)および水溶性高分子(a2)の少なくとも一方に反応性を有するものであれば特に限定されない。
硬化剤(a3)としては、特に、水分散性(水溶性)カルボジイミド、水溶性エポキシ化合物、水分散性(水溶性)オキサゾリドン化合物、水溶性アジリジン系化合物、水分散性ポリイソシアネート系硬化剤等が好ましく用いられる。特に、水性ポリウレタン樹脂(a1)を構成するポリウレタン樹脂の酸基へ良好な反応性を有することから、水分散性ポリイソシアネート系硬化剤が好ましく用いられる。
水分散性ポリイソシアネート系硬化剤に用いられるポリイソシアネート化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。水系コーティング剤中での反応を抑制し可使時間を長くするためには、脂環族ポリイソシアネートおよび脂肪族ポリイソシアネートが好ましく用いられる。
【0038】
脂環族ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネート化合物としては、例えば、ビス(イソシアネート)メチルシクロヘキサン(水添XDI)、メチレンビス(4,1−シクロヘキシレン)=ジイソシアネート(水添MDI)等が挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートは混合して用いてもよい。
【0039】
接着層(A)を形成する塗液Aの全固形分に対する硬化剤(a3)の含有量は、5質量%〜15質量%であることが好ましい。
硬化剤(a3)の含有量が5質量%未満では、支持体に対する接着層(A)の密着性が低下する。一方、硬化剤(a3)の含有量が15質量%を超えると、接着層(A)に積層されるバリア層(B)との密着性が低下する。
【0040】
<接着層(A)の塗液A>
接着層(A)は、塗液Aから形成される。
塗液Aは、水性ポリウレタン樹脂(a1)と、水溶性高分子(a2)と、硬化剤(a3)との複合物を含む液である。
【0041】
塗液Aに用いられる溶媒としては、特に制限されず、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の有機溶媒が挙げられる。
また、塗液Aの固形分濃度は、塗工適性の観点から、塗液Aの100質量%に対して、0.5質量%〜50質量%であることが好ましい。
【0042】
[バリア層(B)]
バリア層(B)は、少なくともポリカルボン酸系重合体(b1)の多価金属塩を含むことが好ましい。
バリア層(B)は、透過法によってバリア層(B)の赤外線吸収スペクトルを測定したとき、1490cm−1〜1659cm−1の範囲内(特に、1560cm−1)の吸光度の最大ピーク高さ(α)と、1660cm−1〜1750cm−1の範囲内(特に、1700cm−1)の吸光度の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上である。
バリア層(B)は、少なくともポリカルボン酸系重合体(b1)の多価金属塩を含む塗液Bから形成される。バリア層(B)は、接着層(A)上に、前記の塗液Bを塗工し、乾燥させて形成することが好ましい。
【0043】
塗液Bとしては、例えば、ポリカルボン酸系重合体(b1)と、多価金属化合物(b2)と、揮発性塩基(b3)または酸(b4)のいずれか一方と、溶剤とを含む混合物の溶液が用いられる。
この塗液Bを、接着層(A)上に塗工し、乾燥させてバリア層(B)が形成される。塗液Bを安定させるために、塗液Bに炭酸成分含有化合物(b5)を添加することもできる。
【0044】
また、塗液Bとしては、例えば、ポリカルボン酸系重合体(b1)と、多価金属化合物(b2)と、揮発性塩基(b3)または酸(b4)のいずれか一方と、溶剤とを含む混合物の分散液が用いられる。
この塗液Bを、接着層(A)上に塗工し、乾燥させてバリア層(B)が形成される。塗液Bに、分散剤や、バインダー樹脂等を添加することもできる。
【0045】
バリア層(B)の厚さは、均一な塗膜を形成することができれば、特に限定されないが、0.001μm〜1mmであることが好ましく、0.01μm〜100μmであることがより好ましく、0.1μm〜10μmであることがさらに好ましい。
バリア層(B)の厚さが0.001μm以上の場合、均一な塗膜が得られやすく、接着層(A)に対する密着性の観点で優れている。また、バリア層(B)の厚さが1mm以下の場合、後述する方法によるイオン架橋が速やかに形成され、十分な酸素ガスバリア性が得られる。
【0046】
<ポリカルボン酸系重合体(b1)>
ポリカルボン酸系重合体(b1)とは、分子内に2個以上のカルボキシル基を有する重合体である。このようなポリカルボン酸系重合体(b1)としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸の(共)重合体;エチレン性不飽和カルボン酸と他のエチレン性不飽和単量体との共重合体;アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、ペクチン等の分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類等が挙げられる。
これらのポリカルボン酸系重合体(b1)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0047】
エチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等が挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル等の飽和カルボン酸ビニルエステル類、アルキルアクリレート類、アルキルメタクリレート類、アルキルイタコネート類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0048】
このようなポリカルボン酸系重合体(b1)の中でも、得られるガスバリア性包装材料のガスバリア性の観点から、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸およびクロトン酸からなる群から選択される少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体、または、その重合体の混合物であることが好ましい。
また、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸およびイタコン酸からなる群から選択される少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位を含む重合体、または、その重合体の混合物であることが特に好ましい。
上記の重合体は、単独重合体を用いても、共重合体を用いてもよい。
上記の重合体において、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびマレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種の重合性単量体から誘導される構成単位が80mol%以上であることが好ましく、90mol%以上であることがより好ましい(ただし、全構成単位を100mol%とする)。
上記の重合体に、上記の構成単位以外の構成単位が含まれる場合には、その他の構成単位としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。
【0049】
ポリカルボン酸系重合体(b1)は、数平均分子量が2,000〜10,000,000であることが好ましい。
ポリカルボン酸系重合体(b1)の数平均分子量が2,000以上の場合、得られるガスバリア性包装材料は耐水性に優れ、水分によってガスバリア性や透明性が悪化する場合や、白化が生じる場合がない。また、ポリカルボン酸系重合体(b1)の数平均分子量が10,000,000以下の場合、塗工によってバリア層(B)を形成する際、粘度が高くなりすぎず、塗工性が損なわれ難い。
さらに、得られるガスバリア性包装材料の耐水性の観点から、このようなポリカルボン酸系重合体(b1)の数平均分子量は5,000〜1,000,000であることが好ましい。
なお、ポリカルボン酸系重合体(b1)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求めた、ポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0050】
<多価金属化合物(b2)>
多価金属化合物(b2)とは、金属イオンの価数が2以上の多価金属原子単体およびその化合物である。
多価金属の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等の遷移金属、アルミニウム等が挙げられる。
多価金属化合物(b2)の具体例としては、前記の多価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、無機酸塩、前記の多価金属のアンモニウム錯体や多価金属の2〜4級アミン錯体、あるいは、それら錯体の炭酸塩または有機酸塩等が挙げられる。有機酸塩としては、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、ステアリン酸塩、モノエチレン性不飽和カルボン酸塩等が挙げられる。無機酸塩としては、塩化物、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。
上記以外に、多価金属化合物(b2)としては、多価金属のアルキルアルコキシドが用いられる。
これらの多価金属化合物(b2)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記の多価金属化合物(b2)の中でも、本実施形態のガスバリア性包装材料のガスバリア性および製造性の観点から、2価の金属からなる金属化合物が好ましく用いられる。さらに好ましくは、多価金属化合物(b2)としては、アルカリ土類金属、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩(例えば、酢酸塩)や、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛のアンモニウム錯体、その錯体の炭酸塩が用いられる。最も好ましくは、多価金属化合物(b2)としては、マグネシウム、カルシウム、銅および亜鉛の酸化物、水酸化物、炭酸塩や、銅または亜鉛のアンモニウム錯体、その錯体の炭酸塩が用いられる。
【0052】
また、本実施形態のガスバリア性包装材料のガスバリア性を損なわない範囲で、1価の金属からなる金属化合物、例えば、ポリカルボン酸系重合体(b1)の1価金属塩を混合して、または、含まれたまま用いることができる。多価金属化合物(b2)の形態は、特に限定されない。
【0053】
多価金属化合物(b2)の含有量は、ポリカルボン酸系重合体(b1)の全てのカルボキシル基に対して0.2化学当量以上が好ましく、0.8化学当量以上、10化学当量以下であることがより好ましく、1化学当量以上、5化学当量以下であることがさらに好ましい。
0.2化学当量以上の多価金属化合物(b2)を加えることにより、バリア層(B)のバリア性や耐湿性を向上することができる。
【0054】
ここで、「全てのカルボキシル基」とは、反応に関与しなかったポリカルボン酸系重合体(b1)のカルボキシル基、および、ポリカルボン酸系重合体(b1)と多価金属化合物(b2)とが反応して生成するポリカルボン酸の多価金属塩となるカルボキシル基を含む。赤外線吸収スペクトルの測定より、ポリカルボン酸の多価金属塩が生成していることを確認できる。
【0055】
化学当量は、例えば、以下のようにして求めることができる。
ここでは、ポリカルボン酸系重合体(b1)がポリアクリル酸、多価金属化合物(b2)が酸化マグネシウムである場合を例示して、化学当量について説明する。
ポリアクリル酸の質量を100gとした場合、ポリアクリル酸の単量体単位の分子量は72で、単量体1分子当たり1個のカルボキシル基を有するため、ポリアクリル酸100g中のカルボキシル基の量は1.39molである。このとき、ポリアクリル酸100gに対する1当量とは、1.39molを中和する塩基の量である。したがって、ポリアクリル酸100gに対して、酸化マグネシウムを0.2当量添加する場合、0.278molのカルボキシル基を中和するために必要な量の酸化マグネシウムを添加すればよい。
【0056】
マグネシウムの価数は2価、酸化マグネシウムの分子量は40であるため、ポリアクリル酸100gに対する0.2当量の酸化マグネシウムの質量は、5.6g(0.139mol)である。本実施形態のガスバリア性包装材料は、透過法によって赤外線吸収スペクトルを測定したとき、1560cm−1の吸光度の最大ピーク高さ(α)と、1700cm−1の吸光度の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上であることが好ましい。
ここで、この赤外線吸収スペクトルの吸光度の最大ピーク高さの比(α/β)について説明する。
最大ピーク高さ(α)は、カルボキシル基の塩(−COO−)に帰属する1560cm−1のC=O伸縮振動の赤外線吸収スペクトルの吸光度の最大ピーク高さである。すなわち、通常、カルボン酸塩(−COO−)に帰属するC=O伸縮振動は、1500cm−1〜1600cm−1の赤外光波数領域に、1560cm−1付近に吸収極大を有する吸収ピークを与える。
【0057】
また、最大ピーク高さ(β)は、最大ピーク高さ(α)とは分離独立した赤外線吸収スペクトルの吸光度の最大ピーク高さであり、カルボキシル基(−COOH)に帰属する1700cm−1のC=O伸縮振動の赤外線吸収スペクトルの吸光度の最大ピーク高さである。すなわち、通常、カルボキシル基(−COOH)に帰属するC=O伸縮振動は、1600cm−1〜1800cm−1の赤外光波数領域に、1700cm−1付近に吸収極大を有する吸収ピークを与える。
本実施形態のガスバリア性包装材料の吸光度は、ガスバリア性包装材料中に存在する赤外活性を有する化学種の量と比例関係にある。したがって、赤外線吸収スペクトルの吸光度の最大ピーク高さの比(α/β)は、ガスバリア性包装材料中で多価金属化合物と塩を形成したカルボキシル基の塩(−COO−)と、遊離カルボキシル基(−COOH)との比を表す尺度として代用することができる。
【0058】
さらに、本実施形態のガスバリア性包装材料に、ガスバリア性を損なわない範囲で、一価の金属からなる金属化合物を添加した場合には、カルボン酸の一価金属(−COO−)に帰属するC=O伸縮振動は、1500cm−1〜1600cm−1の赤外光波数領域に、1560cm−1付近に吸収極大を有する吸収ピークを与える。したがって、この場合、赤外線吸収スペクトルの吸光度の吸収ピークには、カルボン酸の一価金属塩およびカルボン酸の多価金属塩に由来する2つのC=O伸縮振動が含まれる。このような場合にも、前記同様、赤外線吸収スペクトルの吸光度の最大ピーク高さの比(α/β)は、カルボキシル基の多価金属塩(−COO−)と、遊離カルボキシル基(−COOH)との比を表す尺度として代用することができる。
【0059】
赤外線吸収スペクトルの吸光度の最大ピーク高さの比(α/β)から、下記の式(1)で定義されるイオン化度を計算することができる。
(イオン化度)=Y/X (1)
(但し、式中、Xは、ガスバリア性包装材料1g中のポリカルボン酸系重合体(b1)の全てのカルボニル炭素(カルボキシル基およびカルボキシル基の塩に帰属する)のモル数である。Yは、ガスバリア性包装材料1g中のポリカルボン酸系重合体(b1)に含まれるカルボキシル基の塩に帰属するカルボニル炭素のモル数である。)
【0060】
イオン化度は、ポリカルボン酸系重合体(b1)の全ての、遊離カルボキシル基とカルボキシル基の多価金属塩の総数に対する、カルボキシル基の多価金属塩の数の割合であり、赤外線吸収スペクトルの吸光度の最大ピーク高さの比(α/β)と比較して、より厳密な化学種の比として求めることができる。
【0061】
後述するように、本実施形態のガスバリア性包装材料の赤外線吸収スペクトルの吸光度の最大ピーク高さの比(α/β)を測定することにより、本実施形態のガスバリア性包装材料のイオン化度が求められる。
赤外線吸収スペクトルの測定は、例えば、PERKIN−ELMER社製のFT−IR2000を用いて行うことができる。具体的には、試料フィルム(ガスバリア性包装材料)の赤外線吸収スペクトルを透過法、ATR法(減衰全反射法)、KBrペレット法、拡散反射法、光音響法(PAS法)等で測定し、1560cm−1の吸光度の最大ピーク高さ(α)および1700cm−1の吸光度の最大ピーク高さ(β)を計測し、吸光度の最大ピーク高さの比(α/β)を求めることができる。
【0062】
赤外線吸収スペクトルの測定は、簡便性の観点から透過法またはATR法が好ましい。赤外線吸収スペクトルの測定結果から、イオン化度を求めるには、予め作成した検量線を用いて、ガスバリア性包装材料のイオン化度を計算することができる。
ここで用いる検量線は、以下の手順で作成する。
ポリカルボン酸系重合体(b1)を予め既知量の水酸化ナトリウムで中和し、例えば、プラスチックフィルム基材上に塗工することにより、コーティングフィルム状の標準サンプルを作製する。こうして作製した、標準サンプル中のカルボキシル基(−COOH)およびカルボキシル基の塩(−COONa)に帰属するカルボニル炭素のC=O伸縮振動は、赤外線吸収スペクトルを測定することにより分離検出することができる。そこで、1560cm−1の吸光度の最大ピーク高さ(α)と、1700cm−1の吸光度の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)を求める。ここでは、ポリカルボン酸系重合体(b1)を予め既知量の水酸化ナトリウムで中和しているため、重合体中のカルボキシル基(−COOH)とカルボキシル基の塩(−COONa)とのモル比(数の比)は既知である。したがって、先ず、水酸化ナトリウムの量を変えて数種の標準サンプルを調製し、赤外線吸収スペクトルを測定する。
【0063】
次に、吸光度の最大ピーク高さの比(α/β)と既知のモル比との関係を回帰分析することにより、検量線を作成することができる。
その検量線を用いることにより、未知試料の赤外線吸収スペクトル測定の結果から、その試料中のカルボキシル基(−COOH)とカルボキシル基の塩(−COO−)とのモル比が求められる。
その結果から、ポリカルボン酸系重合体(b1)の全てのカルボキシル基のカルボニル炭素(カルボキシル基およびカルボキシル基の塩に帰属する)の総数に対する、カルボキシル基の塩に帰属するカルボニル炭素数の比(イオン化度)を求めることができる。
【0064】
なお、赤外線吸収スペクトルは、カルボキシル基の化学構造に由来し、塩の金属種による影響をほとんど受けない。代表的な赤外線吸収スペクトルのピーク比の測定条件例としては、ガスバリア性包装材料が、支持体と、その支持体上に形成されたガスバリア層とからなり、支持体が光を通さない場合、支持体からガスバリア層を分離して、ガスバリア層の赤外線吸収スペクトルを測定する。
支持体とガスバリア層とが一体の積層体であり、支持体が1560cm−1近傍の光および1700cm−1近傍の光を吸収しない場合、積層体のまま、赤外線吸収スペクトルを測定する。一方、支持体が1560cm−1近傍の光および1700cm−1近傍の光を吸収する場合、支持体からガスバリア層を分離して、ガスバリア層の赤外線吸収スペクトルを測定する。
【0065】
ATR法としては、KRS−5(臭ヨウ化タリウム)を用い、入射角45度、分解能4cm−1、積算回数30回での測定条件を挙げることができる。
FT−IRを用いた赤外線吸収スペクトル測定法については、例えば、田隅三生著、「FT−IRの基礎と実際」を参照できる。
【0066】
<揮発性塩基(b3)>
揮発性塩基(b3)としては、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モルフォリン、エタノールアミン等が挙げられる。これらの中でも、塗液安定性、ガスバリア性の観点から、アンモニアが好ましく用いられる。
ポリカルボン酸系重合体(b1)と多価金属化合物(b2)は水溶液中では、容易に反応し、不均一な沈殿を形成することがあるため、ポリカルボン酸系重合体(b1)と、多価金属化合物(b2)と、溶媒の水とからなる、均一な混合物を得るために、揮発性塩基(b3)を混合する。
【0067】
均一な混合物の分散液または溶液を得るために必要な揮発性塩基(b3)の含有量は、ポリカルボン酸系重合体(b1)の全てのカルボキシル基に対して1化学当量以上が好ましく、1化学当量以上、30化学当量以下であることがより好ましい。多価金属化合物(b2)が、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛の酸化物、水酸化物、炭酸塩である場合には、1化学当量以上の揮発性塩基(b3)を加えることにより、多価金属化合物(b2)の金属が揮発性塩基(b3)と錯体を形成し、ポリカルボン酸系重合体(b1)、多価金属化合物(b2)、揮発性塩基(b3)および溶媒の水からなる透明、均一な溶液が得られる。
【0068】
ポリカルボン酸系重合体(b1)と、多価金属化合物(b2)と、揮発性塩基(b3)または酸(b4)と、溶媒の水とからなる混合物の溶液からなる塗液Bは、水に、ポリカルボン酸系重合体(b1)、多価金属化合物(b2)、および、揮発性塩基(b3)または酸(b4)のいずれか一方を順次溶解することにより調製できる。
なお、水に、ポリカルボン酸系重合体(b1)、多価金属化合物(b2)、および、揮発性塩基(b3)または酸(b4)のいずれか一方を溶解させる順序は、特に限定されない。
塗液Bにおけるポリカルボン酸系重合体(b1)と多価金属化合物(b2)の含有量(ポリカルボン酸系重合体(b1)と多価金属化合物(b2)の含有量の合計)は、コーティング適性の観点から、0.1質量%〜50質量%であることが好ましい。
【0069】
ポリカルボン酸系重合体(b1)と、多価金属化合物(b2)と、揮発性塩基(b3)または酸(b4)のいずれか一方と、水とからなる混合物を、積層体上に塗工、乾燥することにより、バリア層(B)が得られる。
積層体上に塗工、乾燥することにより、ポリカルボン酸系重合体(b1)と、多価金属化合物(b2)と、揮発性塩基(b3)または酸(b4)のいずれか一方とからなる層中で、多価金属化合物(b2)は、粒子状、分子状、ポリカルボン酸系重合体(b1)との金属塩、および、ポリカルボン酸系重合体(b1)との金属錯体塩として存在する。
ここで金属錯体とは、コバルト、ニッケル、銅および亜鉛と、揮発性塩基(b3)との錯体を意味する。金属錯体としては、具体的に、亜鉛や銅のテトラアンモニウム錯体が挙げられる。
【0070】
<酸(b4)>
酸(b4)としては、塩酸、酢酸、硫酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等の無機酸、有機酸が用いられる。
【0071】
<炭酸成分含有化合物(b5)>
ポリカルボン酸系重合体(b1)と、多価金属化合物(b2)と、揮発性塩基(b3)または酸(b4)のいずれか一方と、溶剤とを含む混合物の分散液には、炭酸成分含有化合物(b5)が含まれていてもよい。
炭酸成分含有化合物(b5)は、多価金属化合物(b2)を、炭酸多価金属アンモニウム錯体の状態にして、ポリカルボン酸系重合体(b1)の全てのカルボキシル基に対して1化学当量以上の多価金属を含む均一な溶液を調製するために添加する。
【0072】
炭酸成分含有化合物(b5)としては、一般的に、正塩、酸性塩(炭酸水素塩)、塩基性塩(炭酸水酸化物塩)等の炭酸塩が挙げられる。
炭酸塩としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸水素塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸アンモニウム塩等が挙げられる。炭酸塩の具体例としては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸セシウム、炭酸ランタン、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル、炭酸ストロンチウム、アミノグアニジン炭酸塩、グアニジン炭酸塩等が挙げられる。また、これらの炭酸塩の無水塩、水和塩またはこれらの混合物等を用いることもできる。これらの中でも、ガスバリア性を損なわず、かつ、取扱いが容易であり、ポリカルボン酸系重合体(b1)と、多価金属化合物(b2)と、揮発性塩基(b3)または酸(b4)のいずれか一方と、溶剤とを含む混合物の分散液の安定性の観点から、炭酸アンモニウムまたは炭酸水素アンモニウムが好ましい。
これらの炭酸塩は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0073】
炭酸成分含有化合物(b5)の添加量は、多価金属化合物(b2)に対するモル比(炭酸成分含有化合物(b5)のモル数/多価金属化合物(b2)のモル数)で、0.05〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
多価金属化合物(b2)に対する炭酸成分含有化合物(b5)のモル比が0.05未満では、ポリカルボン酸系重合体(b1)の全てのカルボキシル基に対して1化学当量を超える量の多価金属塩を含む均一な溶液(塗液B)が得られ難い。一方、多価金属化合物(b2)に対する炭酸成分含有化合物(b5)のモル比が10を超えると、バリア層(B)の形成し難くなる。
【0074】
バリア層(B)を形成する塗液Bには、ポリカルボン酸系重合体(b1)、多価金属化合物(b2)、揮発性塩基(b3)または酸(b4)のいずれか一方、炭酸成分含有化合物(b5)、および、溶剤以外にも、ガスバリア性を損なわない範囲で、他の重合体、水以外の溶媒、一価の金属化合物、モンモリロナイト等に代表される無機層状化合物、各種添加剤等を適宜添加することができる。
【0075】
添加剤としては、可塑剤、樹脂、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、アンチブロッキング剤、膜形成剤、粘着剤、酸素吸収剤等が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、公知の可塑剤から適宜選択して用いることができる。可塑剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンオキサイド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、エリトリトール、グリセリン、乳酸、脂肪酸、澱粉、フタル酸エステル等が挙げられる。これらの可塑剤は、必要に応じて、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、これらの可塑剤の中でも、延伸性とガスバリア性の観点から、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、グリセリン、澱粉が好ましい。
【0076】
添加剤の添加量は、ポリカルボン酸系重合体(b1)の質量と添加剤の質量との比(ポリカルボン酸系重合体(b1):添加剤)で、70:30〜99.9:0.1であることが好ましく、80:20〜98:2であることがより好ましい。
【0077】
<バリア層(B)の塗液B>
バリア層(B)は、塗液Bから形成される。
塗液Bは、ポリカルボン酸系重合体(b1)と、多価金属化合物(b2)と、揮発性塩基(b3)または酸(b4)のいずれか一方と、溶剤とを含む混合物の溶液である。
【0078】
塗液Bに用いられる溶媒としては、特に制限されず、例えば、水、水と有機溶媒との混合溶媒等が用いられる。これらの溶媒の中でも、ポリカルボン酸系重合体(b1)の溶解性の観点から、水が最も好ましい。
水としては、精製された水が好ましく、例えば、蒸留水、イオン交換水等が用いられる。
【0079】
有機溶媒としては、炭素原子数1〜5の低級アルコールおよび炭素原子数3〜5の低級ケトンからなる群から選択される少なくとも1種の有機溶媒等を用いることが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0080】
また、水と有機溶媒との混合溶媒としては、上記の水や有機溶媒を用いた混合溶媒が好ましく、水と炭素原子数1〜5の低級アルコールとの混合溶媒がより好ましい。
なお、混合溶媒としては、通常、水が20質量%〜95質量%存在し、有機溶媒が80質量%〜5質量%含まれるものが用いられる(ただし、水と有機溶媒との合計を100質量%とする)。
【0081】
バリア層(B)は、ポリカルボン酸系重合体(b1)を含む層上に、多価金属化合物(b2)を含む層を隣接するように積層して形成することもできる。例えば、ポリカルボン酸重合体(b1)を含む層上に、多価金属塩と分散剤からなる、多価金属塩分散液を塗布し、乾燥させて、ポリカルボン酸重合体(b1)を含む層上に、多価金属塩の層を積層させる。その結果、ポリカルボン酸系重合体(b1)を含む層と、多価金属塩の層との界面で、ポリカルボン酸系重合体(b1)を含む層のカルボキシル基と、多価金属塩との架橋反応が生じ、1490cm−1〜1659cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)と、1660cm−1〜1750cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上のバリア層(B)が得られる。
【0082】
また、ポリカルボン酸系重合体(b1)は、そのカルボキシル基の一部が、予め塩基性化合物で中和されていてもよい。
塩基性化合物としては、多価金属化合物、一価金属化合物およびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種の塩基性化合物が好ましい。
ポリカルボン酸系重合体の有するカルボキシル基の一部を予め中和することにより、バリア層(B)の耐水性を向上させることができる。
カルボキシル基の中和度としては、バリア層(B)を形成する塗液Bの安定性の観点から、30mol%以下であることが好ましく、25mol%以下であることがより好ましい。
【0083】
多価金属塩分散液は、塗工性を向上するために、多価金属塩、分散剤の他に、バインダー樹脂等を含んでいてもよい。
【0084】
バリア層(B)は、ポリカルボン酸系重合体(b1)を含む層に、多価金属塩を含む溶液を噴霧するか、または、ポリカルボン酸系重合体(b1)を含む層を、多価金属塩を含む溶液に浸漬することにより形成することもできる。例えば、ポリカルボン酸重合体(b1)を含む層を形成した後、ポリカルボン酸系重合体(b1)を含む層を、多価金属塩を含む溶液に浸漬し、洗浄、乾燥させる。その結果、ポリカルボン酸系重合体(b1)を含む層の表面で、ポリカルボン酸系重合体(b1)を含む層のカルボキシル基と、多価金属塩との架橋反応が生じ、1490cm−1〜1659cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(α)と、1660cm−1〜1750cm−1の範囲内の吸光度の最大ピーク高さ(β)との比(α/β)が1以上のバリア層(B)が得られる。
【0085】
また、ポリカルボン酸系重合体(b1)は、そのカルボキシル基の一部が、予め塩基性化合物で中和されていてもよい。
塩基性化合物としては、多価金属化合物、一価金属化合物およびアンモニアからなる群から選択される少なくとも1種の塩基性化合物が好ましい。
ポリカルボン酸系重合体の有するカルボキシル基の一部を予め中和することにより、バリア層(B)の耐水性を向上させることができる。
カルボキシル基の中和度としては、バリア層(B)を形成する塗液Bの安定性の観点から、30mol%以下であることが好ましく、25mol%以下であることがより好ましい。
多価金属塩を含む溶液は、水溶液中での溶解性が高く、水溶液中でイオンとして存在する、酢酸塩、乳酸塩、塩化物、硫酸塩等の水溶性金属塩を用いるものが好ましい。また、水溶液以外に、金属化合物の分散液も用いることができる。
【0086】
<コーティング>
接着層(A)の塗液Aおよびバリア層(B)の塗液Bの塗工方法としては、特に限定されないが、例えば、キャスト法、ディッピング法、ロールコーティング法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、リバースコート法、スプレーコート法、キットコート法、ダイコート法、メタリングバーコート法、チャンバードクター併用コート法、カーテンコート法等が挙げられる。
また、接着層(A)の塗液Aおよびバリア層(B)の塗液Bの塗工と乾燥は連続的に行われるが、各塗液の乾燥後は、巻取り工程や養生工程を経てもよい。
【0087】
<乾燥>
接着層(A)の塗液Aおよびバリア層(B)の塗液Bは、それぞれ、塗工後に、乾燥により溶媒を除去することによって、それぞれ、接着層(A)およびバリア層(B)を形成する。
乾燥方法としては、特に限定されないが、例えば、熱風乾燥法、熱ロール接触法、赤外線加熱法、マイクロ波加熱法等の方法が挙げられる。
これらの乾燥方法は、単独または組み合わせて行ってもよい。
乾燥温度は、特に限定されないが、溶媒として、水や、水と有機溶媒との混合溶媒を用いる場合、通常、40℃〜160℃が好ましい。
また、乾燥の際の圧力は、通常、常圧または減圧下で行うことが好ましく、設備の簡便性の観点から常圧で行うことが好ましい。
【0088】
<酸素透過度の範囲>
本実施形態のガスバリア性包装材料は、温度30℃、相対湿度70%における酸素透過度が、通常、300cm(STP)/m・day・MPa以下であり、好ましくは200cm(STP)/m・day・MPa以下であり、より好ましくは100cm(STP)/m・day・MPa以下であり、特に好ましくは50cm(STP)/m・day・MPa以下である。
【0089】
<応用(ラミネーション)>
本実施形態のガスバリア性包装材料は、強度付与、シール性やシール時の易開封性付与、意匠性付与、光遮断性付与等の目的で、他の基材が積層されていてもよい。また、本実施形態のガスバリア性包装材料に、他の基材を積層した後、レトルト処理、ボイル処理および調湿処理からなる群から選択される少なくとも1種の処理を施してもよい。
他の基材としては、目的に応じて適宜選択されるが、通常、プラスチックフィルム類や紙類が好適に用いられる。また、このようなプラスチックフィルム類や紙類は、1種を単独で用いても、2種以上を積層して用いても、プラスチックフィルム類や紙類を積層して用いてもよい。
基材の形態としては、特に限定されず、例えば、フィルム、シート、ボトル、カップ、トレー、タンク、チューブ等の形態が挙げられる。これらの基材の中でも、ガスバリア性包装材料を積層させる観点から、フィルムやシートが好ましく、また、カップ成型前のシートや、扁平にしたチューブも好ましい。
本実施形態のガスバリア性包装材料と他の基材との積層方法としては、接着剤を用いてラミネート法により積層する方法が挙げられる。具体的なラミネート法としては、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出しラミネート法等が挙げられる。
【0090】
本実施形態のガスバリア性包装材料と他の基材との積層態様としては、特に限定されないが、製品としての取扱性の観点から、例えば、(a)ガスバリア性包装材料/ポリオレフィン、(b)ガスバリア性包装材料/ポリオレフィン(チューブ状)/ガスバリア性包装材料、(c)ガスバリア性包装材料/ナイロン/ポリオレフィン、(d)ガスバリア性包装材料/ポリオレフィン/紙/ポリオレフィン、(e)ポリオレフィン/ガスバリア性包装材料/ポリオレフィン、(f)ポリオレフィン/ガスバリア性包装材料/ナイロン/ポリオレフィン、(g)ポリエチレンテレフタレート/ガスバリア性包装材料/ナイロン/ポリオレフィン等が挙げられる。
また、これらの積層態様を繰り返し積層させることもできる。
【0091】
各積層体は、意匠性付与、光遮断性付与、防湿性付与等の観点より、印刷層や金属やケイ素化合物の蒸着層が積層されていてもよい。
ガスバリア性包装材料の積層面は、ガスバリア性の観点より、最外層に配置されていないことが好ましい。ガスバリア性包装材料の積層面が最外層に配置されると、バリア層等が削られ、ガスバリア性が低下する要因となる。
【0092】
本実施形態によれば、レトルト処理等の高熱高圧処理を施すことなく、一般的なコーティング装置のみで製造可能であり、長期にわたり安定したガスバリア性能を示すとともに、ラミネートフィルムを形成したときにラミネート強度が高いガスバリア性包装材料を提供することができる。
また、本実施形態のガスバリア性包装材料は、酸素等の影響により、劣化を受けやすい、食品、飲料、薬品、医薬品、電子部品等の精密金属部品のガスバリア性包装材料として好適に用いられる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0094】
[調製例1]
以下の手順で、塗液A1を調製した。
ポリビニルアルコール、水性ポリウレタン、硬化剤および2−プロパノールを、表1に示す質量および固形分濃度となるように配合し、塗液A1を調製した。
ポリビニルアルコールとしては、クラレ社製のポバールPVA117(鹸化度98%〜99%、重合度1700)を用いた。
水性ポリウレタンとしては、三井化学社製のポリウレタンディスパージョン タケラックWPB341を用いた。
硬化剤としては、三井化学ポリウレタン社製のタケネートA56(ジイソシアネート)を用いた。
2−プロパノールとしては、東京化成工業社製の2−プロパノールを用いた。
【0095】
【表1】
【0096】
[調製例2]
ポリビニルアルコール、水性ポリウレタン、硬化剤および2−プロパノールを、表2に示す質量および固形分濃度となるように配合した以外は調製例1と同様にして、塗液A2を調製した。
【0097】
【表2】
【0098】
[調製例3]
以下の手順で、塗液B1を調製した。
ポリカルボン酸、酸化亜鉛、アンモニア水、炭酸アンモニウムおよび2−プロパノールを、表3に示す質量および固形分濃度となるように配合し、塗液B1を調製した。
ポリカルボン酸としては、東亞合成社製のアロンA10−H(ポリアクリル酸)を用いた。
酸化亜鉛としては、東京化成工業社製の酸化亜鉛を用いた。
アンモニア水としては、和光純薬工業社製のアンモニア水(28%、和光一級)を用いた。
炭酸アンモニウムとしては、和光純薬工業社製の炭酸アンモニウム(試薬特級)を用いた。
2−プロパノールとしては、東京化成工業社製の2−プロパノールを用いた。
【0099】
【表3】
【0100】
[調製例4]
以下の手順で、塗液B2を調製した。
ポリアクリル酸アンモニウム塩、酸化マグネシウムおよび2−プロパノールを、表4に示す質量および固形分濃度となるように配合し、塗液B2を調製した。
ポリアクリル酸アンモニウム塩としては、東亞合成社製のアロンA−30を用いた。
酸化マグネシウムとしては、堺化学工業株式会社製のSMOを用いた。
2−プロパノールとしては、東京化成工業社製の2−プロパノールを用いた。
ポリアクリル酸アンモニウム塩、酸化マグネシウムおよび2−プロパノールの混合物を攪拌するには、以下の手順によるビーズミルを用いる手法を用いた。
水にポリアクリル酸アンモニウム塩を溶解した後、2−プロパノールを加えて撹拌した。その後、酸化マグネシウムを加えて撹拌した。
得られた液を、遊星ボールミル(フリッチュ社製のP−7)で、0.3mmφのジルコニアビーズを用いて、2時間分散処理した後、ビーズをふるい分けた。
【0101】
【表4】
【0102】
[調製例5]
以下の手順で、塗液B3を調製した。
ポリカルボン酸、酸化亜鉛、Si剤、蒸留水および2−プロパノールを、表5に示す質量および固形分濃度となるように配合し、塗液B3を調製した。
ポリカルボン酸としては、東亞合成社製のアロンA10−H(ポリアクリル酸)を用いた。
酸化亜鉛としては、東京化成工業社製の酸化亜鉛を用いた。
Si剤としては、信越シリコーン社製のKBE9007(3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン)を用いた。
2−プロパノールとしては、東京化成工業社製の2−プロパノールを用いた。
【0103】
【表5】
【0104】
[調製例6]
以下の手順で、塗液B4を調製した。
酸化亜鉛分散液、樹脂、硬化剤および酢酸エチルを、表6に示す質量および固形分濃度となるように配合し、塗液B4を調製した。
酸化亜鉛分散液としては、住友大阪セメント社製のZS303EA(酸化亜鉛分散液)を用いた。
樹脂としては、三井化学ポリウレタン社製のタケラックA525(ポリウレタン)を用いた。
硬化剤としては、三井化学ポリウレタン社製のタケネートA52(ジイソシアネート)を用いた。
酢酸エチルとしては、東京化成工業社製の酢酸エチルを用いた。
【0105】
【表6】
【0106】
[実施例1]
基材として、三井化学東セロ社製の二軸延伸ポリプロピレンフィルムU−1(厚さ20μm)を用いた。
基材の一方の面に、バーコーターwet6μmにより、塗液A1を塗布し、80℃のオーブンで乾燥させ、膜厚0.2μmの接着層(塗液A1層)を形成した。
次いで、基材の一方の面に形成された接着層上に、バーコーターwet12μmにより、塗液B1を塗布し、80℃のオーブンで乾燥させ、膜厚0.6μmのバリア層(塗液B1層)を形成し、基材/接着層/バリア層の順に積層された、実施例1のガスバリア性包装材料を得た。
【0107】
得られたガスバリア性包装材料を、HIRANO TECSEED社製のマルチコーターTM−MCにより、接着剤を介して、ポリプロピレンフィルムと貼り合わせ、ガスバリア性包装材料/接着剤/ポリプロピレンフィルムの順に積層された、実施例1のラミネートフィルムを得た。ここでは、ガスバリア性包装材料の積層面が、接着剤と接するように配置した。
得られたラミネートフィルムを、貼り合わせ後、40℃にて3日間養生した。
接着剤としては、三井化学ポリウレタン社製の2液硬化型接着剤、タケラックA620(主剤)/タケネートA65(硬化剤)を用いた。
ポリプロピレンフィルムとしては、東レフィルム加工社製のポリプロピレンフィルム、トレファンZK93KM(厚さ60μm)を用いた。
【0108】
[実施例2]
塗液A1の水性ポリウレタンを、第一工業製薬社製のポリウレタン水分散体 スーパーフレックス 500Mに変更して調製した塗液A3を、塗液A1の替わりに用いた以外は実施例1と同様にして、実施例2のガスバリア性包装材料を得た。
また、実施例1と同様にして、実施例2のガスバリア性包装材料を用いてラミネートフィルムを作製した。
【0109】
[実施例3]
塗液A1の水性ポリウレタンを、電気化学工業社製のデンカポバールB−24(鹸化度86%〜89%、重合度2400)に変更して調製した塗液A4を、塗液A1の替わりに用いた以外は実施例1と同様にして、基材/接着層/バリア層の順に積層された、実施例3のガスバリア性包装材料を得た。
また、実施例1と同様にして、実施例3のガスバリア性包装材料を用いてラミネートフィルムを作製した。
【0110】
[実施例4]
塗液A2を、塗液A1の替わりに用いた以外は実施例1と同様にして、基材/接着層/バリア層の順に積層された、実施例4のガスバリア性包装材料を得た。
また、実施例1と同様にして、実施例4のガスバリア性包装材料を用いて、ラミネートフィルムを作製した。
【0111】
[実施例5]
塗液B2を用いて膜厚0.6μmのバリア層(塗液B2層)を形成した以外は実施例1と同様にして、基材/接着層/バリア層の順に積層された、実施例5のガスバリア性包装材料を得た。
また、実施例1と同様にして、実施例5のガスバリア性包装材料を用いてラミネートフィルムを作製した。
【0112】
[実施例6]
基材の一方の面に形成された接着層上に、バーコーターにより、塗液B3を塗布し、乾燥させ、膜厚0.3μmのバリア層(塗液B3層)を形成し、このバリア層上に、バーコーターにより、塗液B4を塗布し、乾燥させ、膜厚0.3μmのバリア層(塗液B4層)を形成した以外は実施例1と同様にして、基材/接着層/バリア層/バリア層の順に積層された、実施例6のガスバリア性包装材料を得た。
また、実施例1と同様にして、実施例6のガスバリア性包装材料を用いてラミネートフィルムを作製した。
【0113】
[実施例7]
実施例1と同様にして、基材の一方の面に接着層を形成した。
次いで、基材の一方の面に形成された接着層上に、バーコーターにより、塗液B3を塗布し、乾燥させ、膜厚0.3μmのバリア層(塗液B3層)を形成し、基材/接着層/バリア層の順に積層された積層体を得た。
次いで、濃度10%、温度23℃の酢酸亜鉛水溶液に、積層体を20秒間浸漬した後、温度23℃の蒸留水に、積層体を10秒間浸漬して、積層体を洗浄した。
次いで、90℃に設定したオーブンに積層体を1分間静置して、積層体を乾燥させ、基材/接着層/バリア層/バリア層の順に積層された、実施例7のガスバリア性包装材料を得た。
また、実施例1と同様にして、実施例7のガスバリア性包装材料を用いてラミネートフィルムを作製した。
【0114】
[実施例8]
基材として、東レ社製の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム ルミラーP60(厚さ12μm)を用いた以外は実施例1と同様にして、基材/接着層/バリア層の順に積層された、実施例8のガスバリア性包装材料を得た。
また、実施例1と同様にして、実施例8のガスバリア性包装材料を用いてラミネートフィルムを作製した。
【0115】
[比較例1]
ポリビニルアルコールを用いなかった以外は調製例1と同様にして、塗液A5を調製した。
塗液A5を、塗液A1の替わりに用いた以外は実施例1と同様にして、基材/接着層/バリア層の順に積層された、比較例1のガスバリア性包装材料を得た。
また、実施例1と同様にして、比較例1のガスバリア性包装材料を用いてラミネートフィルムを作製した。
【0116】
[比較例2]
水性ポリウレタンを用いなかった以外は調製例1と同様にして、塗液A6を調製した。
塗液A6を、塗液A1の替わりに用いた以外は実施例1と同様にして、基材/接着層/バリア層の順に積層された、比較例2のガスバリア性包装材料を得た。
また、実施例1と同様にして、比較例2のガスバリア性包装材料を用いてラミネートフィルムを作製した。
【0117】
[比較例3]
塗液B3を用いて膜厚0.3μmのバリア層(塗液B3層)を形成した以外は実施例1と同様にして、基材/接着層/バリア層の順に積層された、比較例3のガスバリア性包装材料を得た。
また、実施例1と同様にして、比較例3のガスバリア性包装材料を用いてラミネートフィルムを作製した。
【0118】
[比較例4]
基材の一方の面に、バーコーターにより、塗液B1を塗布し、乾燥させ、膜厚0.6μmのバリア層(塗液B1層)を形成し、基材/バリア層の順に積層された、比較例4のガスバリア性包装材料を得た。
また、実施例1と同様にして、比較例4のガスバリア性包装材料を用いてラミネートフィルムを作製した。
【0119】
[比較例5]
酸化亜鉛を用いなかった以外は調製例3と同様にして、塗液B5を調製した。
塗液B5を、塗液B1の替わりに用いた以外は実施例1と同様にして、基材/接着層/バリア層の順に積層された、比較例5のガスバリア性包装材料を得た。
また、実施例1と同様にして、比較例5のガスバリア性包装材料を用いてラミネートフィルムを作製した。
【0120】
[評価]
(1)酸素透過度の測定
実施例1〜8および比較例1〜5のガスバリア性包装材料の酸素透過度を測定した。
ガスバリア性包装材料の酸素透過度は、Modern Control社製の酸素透過試験器OXTRANTM2/20を用いて、温度30℃、相対湿度70%の条件下で測定した。
測定方法は、ASTM F1927−98(2004)に準拠し、測定値は、単位cm(STP)/(m−day−MPa)で表記した。ここで、(STP)は酸素の体積を規定するための標準条件(0℃、1気圧)を意味する。
評価結果を表8に示す。
【0121】
(2)ラミネート強度の測定
実施例1〜8および比較例1〜5のラミネートフィルムを15mm幅の短冊状にカットし、引張試験機テンシロンにより、300mm/分の速度で、ポリプロピレンフィルムとガスバリア性包装材料の剥離角度が90°になるように剥離させて、ラミネート強度を測定した。結果を表8に示す。
【0122】
(3)塗液の塗工性
塗液A1〜塗液A6および塗液B1〜塗液B5を、基材や接着層に塗工する際の塗工性を目視により観察した。
塗工性の評価は3段階で行い、A:はじきやムラが生じていない、B:はじきやムラが部分的に見られる、C:全体にはじきやムラがあり、膜として成立しない、とした。
塗液A1〜塗液A6の塗工性の評価結果を表7、塗液B1〜塗液B5の塗工性の評価結果を表8に示す。
【0123】
【表7】
【0124】
【表8】
【0125】
表6の結果から、実施例1〜8のガスバリア性包装材料は、比較例1〜5のガスバリア性包装材料と比較すると、酸素透過度が非常に低く、ガスバリア性に優れていることが分った。
また、実施例1〜8のラミネートフィルムは、比較例1〜5のガスバリア性包装材料と比較すると、ラミネート強度が同等かそれ以上であることが分った。
また、実施例1〜8では、塗液の塗工性に優れ、一般的なコーティング装置のみでガスバリア性包装材料を製造可能であることが分った。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明のガスバリア性包装材料は、レトルト処理等の高熱高圧処理を施すことなく、一般的なコーティング装置のみで製造可能であるため、生産性に優れている。また、本発明のガスバリア性包装材料は、酸素透過度が非常に低く、ガスバリア性に優れているとともに、ラミネート強度が高いラミネートフィルムを形成することができる。