特許第6428103号(P6428103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6428103
(24)【登録日】2018年11月9日
(45)【発行日】2018年11月28日
(54)【発明の名称】ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/02 20060101AFI20181119BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20181119BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20181119BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20181119BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20181119BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20181119BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20181119BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20181119BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20181119BHJP
【FI】
   C08L81/02
   C08K3/22
   C08K3/30
   C08K7/14
   C08K5/098
   C08L23/08
   C08L23/26
   C08K5/20
   C08L91/06
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-198405(P2014-198405)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-69459(P2016-69459A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春成 武
(72)【発明者】
【氏名】田中 保巳
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭58−008748(JP,A)
【文献】 特開昭59−181408(JP,A)
【文献】 特開昭60−008359(JP,A)
【文献】 特開2000−236305(JP,A)
【文献】 特開2000−290503(JP,A)
【文献】 特開2005−336229(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/046451(WO,A1)
【文献】 特開2008−007730(JP,A)
【文献】 特開2013−023587(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/155420(WO,A1)
【文献】 特開2013−076039(JP,A)
【文献】 特開2013−082792(JP,A)
【文献】 特開2014−084444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 81/00 − 81/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融温度310℃、加圧力100kgf/cmで圧縮成形した成形体の明度(L値)が70以上であり、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が50〜1000ポイズであるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100重量部に対し、酸化チタン,酸化亜鉛及び硫化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種以上の白色顔料(B)10〜50重量部、ガラス繊維(C)20〜40重量部並びに12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム及び/又は12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛である12−ヒドロキシステアリン酸金属塩(D)0.05〜2重量部を含んでなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項2】
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100重量部に対し、さらに、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体,エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体,エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体,エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体及び無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種以上の変性エチレン系共重合体(E)15〜40重量部を含んでなることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100重量部に対し、さらに、脂肪酸アミド系滑剤、カルナバワックスからなる群より選択される少なくとも1種以上の離型剤(F)0.1〜3重量部を含んでなることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項4】
JIS Z8715に準拠して測定した白色度指数Wが85以上を示すものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【請求項5】
シリンダー温度310℃、金型温度135℃で射出成形した際の成形体が、白色度指数Wが85以上を示すものであることを特徴とする請求項4に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造時における目やにを抑制することにより外装部品としての白色色調の向上を図ると共に、耐衝撃性、成形流動性にも優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものであり、さらに詳しくは、特にモバイルパソコンやタブレット、携帯電話など携帯端末機器の筐体等の電子・電気部品用途、又は自動車電装部品等の電気部品用途に有用なポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPSと略記することもある。)に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下、PASと略記することもある。)は、優れた機械的特性、熱的特性、電気的特性、耐薬品性を有し、多くの電気・電子機器部材や自動車機器部材、その他OA機器部材等、幅広く使用されている。
【0003】
PASは、ガラス繊維等の繊維状無機充填材、炭酸カルシウム、タルク等の粒状無機充填材を配合することにより、機械的強度、耐熱性、剛性等を大きく向上させることができる。しかしながら、PASは、他のエンジニアリングプラスチックに比較し白色色調に劣り、モバイルパソコンやタブレット、携帯電話など携帯端末機器の筐体等の電子・電気部品用途において、外装部品として使用することが制限される場合がある。
【0004】
PASの白色色調を改良するための技術として、PASに白色顔料等を配合することが知られている。例えばポリフェニレンサルファイド、ガラス製充填剤および顔料としてアナタース型二酸化チタンからなる樹脂組成物(例えば特許文献1参照。)、ポリアリーレンサルフィド、繊維状充填材および顔料として硫化亜鉛からなる樹脂組成物(例えば特許文献2参照。)、ポリアリーレンスルフィド 、シリカを含むポリアリーレンスルフィド樹脂組成物(例えば特許文献3参照。)等が提案されている。
【0005】
しかし、これらの無機充填材が配合されたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造する場合、溶融樹脂が押出機ダイス先端部から流出する際に、無機充填材の分散不良あるいは樹脂劣化等により、ダイリップなどに目やにと呼ばれる樹脂劣化物あるいは無機充填材の凝集体が付着し、堆積する場合がある。このように生じた目やには、ダイスの熱により劣化、変色を起し、ダイスから流出するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の表面に付着して製品外観を損ねるとともに、白色色調を悪化させるという課題の生じやすいものとなる。
【0006】
そして、PASの目やにを抑制するための技術として、フィラー供給後の樹脂温度を(Tm−40)℃以上(Tmは該熱可塑性樹脂の融点)に保持することを特徴とする熱可塑性樹脂組成物の製造方法(例えば特許文献4参照。)、金属製のダイ本体に設けられたノズルチップ取付用孔部を窒化珪素を主体とするセラミックで形成した樹脂成形用ダイ(例えば特許文献5参照。)等が提案されている。
【0007】
また、熱可塑性樹脂、金属水和物および目やに防止剤として12−ヒドロキシステアリン酸金属塩を含んでいてもよいことを特徴とする難燃性樹脂組成物(例えば特許文献6参照。)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−70624号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献2】特開平5−39417号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献3】特開平9−71723号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献4】特開平6−238655号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献5】特開平5−77305号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献6】特開2008−7730号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1〜3に提案された樹脂組成物においては、白色色調に優れる樹脂組成物が提案されているものの、更なる白色色調、耐衝撃性及び成形流動性の向上が望まれると共に、目やに、樹脂劣化については何等考慮がなされていないものであった。また、特許文献4、5の提案については、樹脂組成物としての改質、目やに防止剤の使用については考慮がなされていないものである。さらに特許文献6に提案された樹脂組成物については、PASは無論のこと、白色色調、耐衝撃性及び成形流動性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物について、何ら記載されていない。
【0010】
そこで、本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造時における目やにを抑制することにより外装部品としての白色色調の向上を図ると共に、耐衝撃性及び成形流動性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供することを目的とし、さらに詳しくは、モバイルパソコンやタブレット、携帯電話など携帯端末機器の筐体等の電子・電気部品用途に特に有用なポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のポリアリーレンスルフィド樹脂、ガラス繊維、特定の白色顔料及び12−ヒドロキシステアリン酸金属塩から構成され、特定の配合割合からなる樹脂組成物が、白色色調、耐衝撃性および成形流動性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となり得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、溶融温度310℃、加圧力100kgf/cmで圧縮成形した成形体の明度(L値)が70以上であり、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が50〜1000ポイズであるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100重量部に対し、酸化チタン,酸化亜鉛及び硫化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種以上の白色顔料(B)10〜50重量部、ガラス繊維(C)20〜40重量部並びに12−ヒドロキシステアリン酸金属塩(D)0.05〜2重量部を含んでなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に関するものである。
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、溶融温度310℃、加圧力100kgf/cmで圧縮成形した成形体の明度(L値)が70以上であり、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が50〜1000ポイズであるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100重量部に対し、酸化チタン,酸化亜鉛及び硫化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種以上の白色顔料(B)10〜50重量部、ガラス繊維(C)20〜40重量部並びに12−ヒドロキシステアリン酸金属塩(D)0.05〜2重量部を含んでなることにより、製造時における目やにを抑制すると共に、耐衝撃性及び成形流動性に優れるものとなる。
【0015】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成するポリアリーレンスルフィド樹脂(A)としては、溶融温度310℃、加圧力100kgf/cmで圧縮成形した成形体の明度(L値)が70以上であり、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が50〜1000ポイズであるポリアリーレンスルフィド樹脂であれば、一般にポリアリーレンスルフィド樹脂と称される範疇に属するものでよく、該ポリアリーレンスルフィド樹脂としては、例えばp−フェニレンスルフィド単位、m−フェニレンスルフィド単位、o−フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルフォン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ビフェニレンスルフィド単位からなる単独重合体又は共重合体を挙げることができ、該ポリアリーレンスルフィド樹脂の具体的例示としては、ポリ(p−フェニレンスルフィド)、ポリフェニレンスルフィドスルフォン、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリフェニレンスルフィドエーテル等が挙げられ、その中でも、特に耐熱性、強度特性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、ポリ(p−フェニレンスルフィド)であることが好ましい。
【0016】
そして、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)は、とりわけ白色度に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が得られることから、溶融温度310℃、加圧力100kgf/cmで圧縮成形した成形体の明度(L値)が70以上のものであり、好ましくは70以上90以下のものである。ここで、L値が70に満たないものである場合、得られる組成物は、白色色調に劣るものとなる。
【0017】
また、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)は、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が50〜1000ポイズのポリアリーレンスルフィド樹脂である。ここで、溶融粘度が50ポイズ未満のポリアリーレンスルフィド樹脂である場合、得られる組成物は、耐衝撃性に劣るものとなる。一方、溶融粘度が1000ポイズを越えるポリアリーレンスルフィド樹脂である場合、組成物を製造する際の目やに発生防止効果が発現されにくくなると共に、得られる組成物は成形流動性に劣るものとなる。
【0018】
該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の製造方法としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂の製造方法として知られている方法により製造することが可能であり、例えば極性溶媒中で硫化アルカリ金属塩、ポリハロ芳香族化合物を重合することにより得る事が可能である。その際の極性有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等を挙げる事ができ、硫化アルカリ金属塩としては、例えば硫化ナトリウム、硫化ルビジウム、硫化リチウムの無水物又は水和物を挙げる事ができる。また、硫化アルカリ金属塩としては、水硫化アルカリ金属塩とアルカリ金属水酸化物を反応させたものであってもよい。ポリハロ芳香族化合物としては、例えばp−ジクロロベンゼン、p−ジブロモベンゼン、p−ジヨードベンゼン、m−ジクロロベンゼン、m−ジブロモベンゼン、m−ジヨードベンゼン、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロジフェニルエーテル、4,4’−ジクロロジビフェニル等を挙げる事ができる。
【0019】
また、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)としては、直鎖状のもの、重合時にトリハロゲン以上のポリハロゲン化合物を少量添加して若干の架橋又は分岐構造を導入したもの、ポリアリーレンスルフィド樹脂の分子鎖の一部及び/又は末端を例えばカルボキシル基、カルボキシ金属塩、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基等の官能基により変性したもの、窒素などの非酸化性の不活性ガス中で加熱処理を施したものなどが挙げられ、さらにこれらポリアリーレンスルフィド樹脂の混合物であってもかまわない。また、該ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)は、酸洗浄、熱水洗浄あるいはアセトン、メチルアルコールなどの有機溶媒による洗浄処理を行うことによってナトリウム原子、ポリアリーレンスルフィド樹脂のオリゴマー、食塩、4−(N−メチル−クロロフェニルアミノ)ブタノエートのナトリウム塩などの不純物を低減させたものであってもよい。
【0020】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成する白色顔料(B)は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の白色色調を改良するものであり、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛からなる群より選択される少なくとも1種以上の白色顔料である。該白色顔料(B)の形状は、特に制限されず、例えば、球状等の等方性を示すものであってもよく、あるいは繊維状、紡錘状、棒状、針状、筒状、柱状、板状などの異方性を示すものであってもよい。さらに、該白色顔料(B)は、その表面が被覆処理されているもの、又はされていないもののいずれも用いることができ、表面が被覆処理される場合の表面被覆処理剤には特に制限はない。
【0021】
該白色顔料(B)の配合量としては、とりわけ白色色調に優れ、成形流動性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100重量部に対して、10〜50重量部である。ここで、白色顔料(B)が10重量部未満である場合、得られる組成物は白色色調に劣るものとなり好ましくない。また、白色顔料(B)が50重量部を越える場合、得られる組成物は成形流動性及び耐衝撃性に劣るものとなると共に、配合量の増加に対する白色色調の向上効果が著しく小さなものとなる。
【0022】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成するガラス繊維(C)は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の強度、耐衝撃性を改良するものであり、該ガラス繊維(C)としては、一般にガラス繊維と称するものであれば如何なるものを用いてもよい。該ガラス繊維の具体的例示としては、平均繊維径が6〜14μmのチョップドストランド、繊維断面のアスペクト比が2〜4の扁平ガラス繊維からなるチョップドストランド、ミルドファイバー、ロービング等のガラス繊維;シラン繊維;アルミノ珪酸塩ガラス繊維;中空ガラス繊維;ノンホーローガラス繊維等が挙げられ、その中でもとりわけ耐衝撃性と成形流動性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、繊維断面のアスペクト比が2〜4である扁平ガラス繊維からなるチョップドストランドであることが好ましい。繊維断面のアスペクト比が4であるチョップドストランドとしては、例えば(商品名)CSG−3PA 830(日東紡(株)製)、繊維断面のアスペクト比が2であるチョップドストランドとしては、(商品名)CSG−3PL 830(日東紡(株)製)等が挙げられる。これらのガラス繊維(C)は2種以上を併用することも可能であり、必要によりエポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物等の官能性化合物又はポリマーで、予め表面処理したものを用いてもよい。該ガラス繊維(C)の配合量としては、とりわけ強度特性と成形流動性のバランスに優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100重量部に対して、20〜40重量部である。ここで、ガラス繊維が20重量部未満である場合、得られる組成物は強度特性、耐衝撃性に劣るものとなる。一方、ガラス繊維が40重量部を越える場合、得られる組成物は成形流動性に劣るものとなる。
【0023】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成する12−ヒドロキシステアリン酸金属塩(D)は、該ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造時における目やにを抑制することにより、該ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の白色色調の向上を図るものであり、該12−ヒドロキシステアリン酸金属塩としては、例えば12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛等を挙げることができ、その中でも、とりわけ白色色調に優れ、成形加工性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛から選択される1種以上のものであることが好ましい。
【0024】
該12−ヒドロキシステアリン酸金属塩(D)の配合量としては、とりわけ白色色調に優れ、成形加工性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物となることから、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100重量部に対して、0.05〜2重量部である。ここで、12−ヒドロキシステアリン酸金属塩(D)が0.05重量部未満である場合、組成物の製造時における目やにを抑制する効果に乏しく、得られる組成物は白色色調に劣るものとなり好ましくない。また、12−ヒドロキシステアリン酸金属塩(D)が2重量部を越える場合、得られる組成物は成形加工性に劣るものとなると共に、配合量の増加に対する白色色調の向上効果が著しく小さくなる。
【0025】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、特に耐衝撃性が優れたものとなることから、さらに、変性エチレン系共重合体(E)を配合してなるものが好ましい。該変性エチレン系共重合体としては、エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体,エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体,エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−酢酸ビニル共重合体,エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体及び無水マレイン酸グラフト変性エチレン−α−オレフィン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種以上の変性エチレン系共重合体であることが好ましい。該変性エチレン系共重合体(E)の配合量としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100重量部に対して、15〜40重量部であることが好ましい。
【0026】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、特に成形加工性が優れたものとなることから、さらに、離型剤(F)を配合してなるものが好ましい。該離型剤(F)としては、脂肪酸アミド系滑剤、カルナバワックスから選択される1種以上のものであることが好ましく、該脂肪酸アミド系滑剤、カルナバワックスは市販のものが使用できる。該脂肪酸アミド系滑剤は、高級脂肪酸アミド、エチレンビスステアロアミド、高級脂肪酸及びジアミンからなる重縮合物などが挙げられ、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばステアリン酸、セバシン酸、エチレンジアミンからなる重縮合物である、(商品名)ライトアマイドWH−255(共栄社化学(株)製)等を挙げることができる。また、該カルナバワックスしては、一般にカルナバワックスと称するものであれば如何なるものを用いる事が可能であり、例えば(商品名)精製カルナバ粉末1号(日興リカ(株)製)等を挙げることができる。該離型剤(F)の配合量としては、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜3重量部であることが好ましい。
【0027】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、マイカ、シリカ、タルク、クレイ、硫酸カルシウム、カオリン、ワラステナイト、ゼオライト、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ガラスパウダー、ガラスバルーン、ガラスフレークが添加されたものであっても構わない。
【0028】
また、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアルキレンオキサイドオリゴマー系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤;酸化防止剤;熱安定剤;滑剤;紫外線防止剤;発泡剤などの通常の添加剤を1種以上添加するものであってもよい。
【0029】
さらに、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、例えば、エポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアルキレンオキサイド等の1種以上を混合して使用してなるものであってもよい。
【0030】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を製造する際の製造方法としては特に制限はなく、一般的な混合・混練方法として知られている方法を用いる事が可能であり、例えば全ての原材料を配合し溶融混練する方法;原材料の一部を配合した後で溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法;あるいは原材料の一部を配合後単軸又は二軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法、など、いずれの方法を用いてもよい。また、小量の添加成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加することで使用してもよい。そして、溶融混練を行う方法としては、従来から使用されている加熱溶融混練方法を用いることができ、例えば単軸又は二軸押出機、ニーダー、ミル、ブラベンダーなどによる加熱溶融混練方法が挙げられ、特に混練能力に優れた二軸押出機による溶融混練方法が好ましい。また、この際の混練温度は特に限定されるものではなく、通常260〜350℃の中から任意に選ぶことができる。
【0031】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、外装部品としての白色色調、耐衝撃性、成形加工に必要な成形流動性に優れる特性をあわせもつことを特徴とする。さらに、得られたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形機、押出成形機、圧縮成形機などを用いて任意の形状に成形することができ、特に射出成形には好適な樹脂組成物である。
【0032】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、とりわけ外装部品としての白色色調に優れたものとなることから、シリンダー温度310℃、金型温度135℃で射出成形した成形体とした際に、JIS Z8715に準拠して測定した白色度指数Wが85以上を示すものであることが好ましい。
【0033】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、外装部品としての白色色調、耐衝撃性、成形加工に必要な成形流動性に優れる特性をあわせもつことから、携帯端末機器の筐体等の電気・電子部品等に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造時における目やにを抑制することにより外装部品としての白色色調の向上を図ると共に、耐衝撃性、成形加工に必要な成形流動性に優れるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を提供するものであり、該ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物、モバイルパソコンやタブレット、携帯電話など携帯端末機器の筐体等の電子・電気部品用途等の電気部品用途に有用なものである。
【実施例】
【0035】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによりなんら制限されるものではない。
【0036】
実施例及び比較例において用いた、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)、白色顔料(B)、ガラス繊維(C)、12−ヒドロキシステアリン酸金属塩(D)、変性エチレン系共重合体(E)、離型剤(F)を以下に示す。
【0037】
<ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)>
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A−1)と記す。):溶融粘度350ポイズ、明度(L値)82。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A−2)と記す。):溶融粘度470ポイズ、明度(L値)78。
ポリ(p−フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A−3)と記す。):溶融粘度365ポイズ、明度(L値)60。
【0038】
<白色顔料(B)>
酸化チタン(B−1);石原産業株式会社製酸化チタン、(商品名)CR−60。
硫化亜鉛(B−2);Sachtleben製、(商品名)サクトリスHD。
酸化亜鉛(B−3);ハクスイテック株式会社製、酸化亜鉛1種。
【0039】
<ガラス繊維(C)>
ガラス繊維(C−1);日東紡株式会社製チョップドストランド、(商品名)CSG−3PA 830、繊維断面のアスペクト比4。
ガラス繊維(C−2);日東紡株式会社製チョップドストランド、(商品名)CSG−3PL 830、繊維断面のアスペクト比2。
【0040】
<12−ヒドロキシステアリン酸金属塩(D)>
12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(D−1);勝田化工株式会社製、(商品名)EMS−6P。
12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛(D−2);堺化学工業株式会社製、(商品名)SZ−120H。
【0041】
<変性エチレン系共重合体(E)>
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸グリシジルエステル−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(E−1)(以下、変性エチレン系共重合体(E−1)と記す。):住友化学(株)製、(商品名)ボンドファースト7M。
エチレン−α、β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸共重合体(E−2)(以下、変性エチレン系共重合体(E−2)と記す。):アルケマ(株)製、(商品名)ボンダインAX8390。
【0042】
<離型剤(F)>
脂肪酸アミド系滑剤(F−1)(以下、離型剤(F−1)と記す。);共栄社化学(株)製、(商品名)ライトアマイドWH−255。
カルナバワックス(F−2)(以下、離型剤(F−2)と記す。);日興リカ(株)製、(商品名)精製カルナバ粉末1号。
【0043】
<合成例1(PPS(A−1)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)1814g、粒状の苛性ソーダ(100%NaOH:和光純薬特級)8.7g及びN−メチル−2−ピロリドン3232gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、339gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2129g、N−メチル−2−ピロリドン1783gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、250℃にて2時間重合を行った。次いで、この系に250℃で蒸留水509gを圧入し、255℃まで昇温してさらに2時間重合反応を行った。重合終了後、室温まで冷却し、重合スラリーを遠心濾過器で固液分離した。ケーキを窒素気流下でN−メチル−2−ピロリドン、アセトンで順次3回繰り返し洗浄し、さらに、窒素気流下で0.2%塩酸、及び温水で順次洗浄した。得られたポリ(p−フェニレンスルフィド)を105℃で一昼夜乾燥することによって、溶融粘度が350ポイズのPPS(A−1)を得た。
<合成例2(PPS(A−2)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)1814g、粒状の苛性ソーダ(100%NaOH:和光純薬特級)8.7g及びN−メチル−2−ピロリドン3232gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、340gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2100g、N−メチル−2−ピロリドン1783gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、250℃にて2時間重合を行った。次いで、この系に250℃で蒸留水509gを圧入し、255℃まで昇温してさらに2時間重合反応を行った。重合終了後、室温まで冷却し、重合スラリーを遠心濾過器で固液分離した。ケーキを窒素気流下でN−メチル−2−ピロリドン、アセトンで順次2回繰り返し洗浄し、さらに、窒素気流下で0.2%塩酸、及び温水で順次洗浄した。得られたポリ(p−フェニレンスルフィド)を105℃で一昼夜乾燥することによって、溶融粘度が470ポイズのPPS(A−2)を得た。
<合成例3(PPS(A−3)の合成)>
攪拌機を装備する15リットルオートクレーブに、フレーク状硫化ソーダ(NaS・2.9HO)1854g、30%苛性ソーダ溶液(30%NaOHaq)48g及びN−メチル−2−ピロリドン3679gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に200℃まで昇温して、379gの水を留去した。190℃まで冷却した後、p−ジクロロベンゼン2140g、N−メチル−2−ピロリドン985gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて1時間重合させた後、25分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合後、減圧下で重合スラリーからN−メチル−2−ピロリドンを蒸留操作で回収した。最終到達温度は172℃で圧力は4.6kPaであった。得られたケーキに80℃の温水を加えスラリー濃度20%として洗浄し、再度、同様に温水を加え175℃まで昇温してポリ(p−フェニレンスルフィド)の洗浄を合計2回行った。得られたポリフェニレンスルフィドを105℃で一昼夜乾燥した。次いで、乾燥したポリフェニレンスルフィドをバッチ式ロータリーキルン型焼成装置に充填し、窒素雰囲気下で240℃まで昇温し、1時間の保持による硬化処理を行うことによって、溶融粘度が365ポイズのPPS(A−3)を得た。
【0044】
得られたポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の評価・測定方法を以下に示す。
【0045】
〜ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度測定〜
直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスター((株)島津製作所製、(商品名)CFT−500)にて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で溶融粘度の測定を行った。
【0046】
〜ポリアリーレンスルフィド樹脂の明度(L値)測定〜
ポリアリーレンスルフィド樹脂を溶融温度310℃、加圧力100kgf/cmの圧力で圧縮成形した後、冷却温度150℃で50mm×50mm×1mm厚の成形体とし、色彩色差計(スガ試験機(株)製、(商品名)SMカラーコンピューター)にて、室温下で明度(L値)の測定を行った。
【0047】
〜目やに〜
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の原材料をストランド用ダイスを装備した35mmφ2軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)に供給し、押出速度10kg/hrにて溶融ストランドとして押出した。また、シリンダー1〜7は270℃、シリンダー8は290℃、ダイスは300℃に設定した。そして、ダイリップに付着する目やにを観察し、変色した目やにが認められないものを〇、僅かでも変色した目やにが認められるものを×として判定した。
【0048】
〜ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の白色度指数W測定〜
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物をシリンダー温度310℃、金型温度135℃とした射出成形機(住友重機械工業(株)製、(商品名)SE−75S)によって射出成形し、70mm×70mm×2mm厚の成形体とし、色彩色差計(スガ試験機(株)製、(商品名)SMカラーコンピューター)にて、JIS Z8715に準拠し、白色度指数Wの測定を行った。白色度指数Wとして85を超えるものを実用上十分な値を示すと判断した。
【0049】
〜耐衝撃性の測定〜
ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を、シリンダー温度310℃、金型温度135℃とした射出成形機(住友重機械工業(株)製、(商品名)SE−75S)によってシャルピー衝撃強度測定用試験片を作製し、ノッチングマシーン((株)東洋精機製作所製、(商品名)A−3型)によりノッチを入れ、シャルピー衝撃試験機((株)東洋精機製作所製、(商品名)DG−CB型)を用いて、ISO179に準拠し測定を行った。シャルピー衝撃強度として12kJ/mを超えるものを実用上十分な値を示すと判断した。
【0050】
〜成形流動性の測定〜
射出成形機(住友重機械工業(株)製、(商品名)SE75S)に、深さ1mm、幅10mmの溝がスパイラル状に掘られた金型を装着し、次いで、シリンダー温度を310℃、射出圧力を190MPa、射出速度を最大、射出時間を1.5秒、及び金型温度を135℃に設定した該射出成形機のホッパーにポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を投入し、射出した。そして金型内のスパイラル状の溝を溶融流動した長さを成形流動性として測定した。成形流動性として150mmを超えるものを実用上十分な値を示すと判断した。
【0051】
〜成形加工性(金型汚染性)〜
70mm×70mm×2mm厚の成形体を、射出成形により連続して100個成形し、その後の金型キャビティー内に付着する汚染物の有無を観察した。汚染物が認められないものを○、僅かでも汚染物が認められるものを×として判定した。金型汚染性は、○である状態を金型汚染が無く、成形加工性に優れると判断した。
【0052】
実施例1
合成例1で得られたPPS(A−1)100重量部に対し、酸化チタン(B−1)20重量部、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(D−1)0.6重量部、変性エチレン系共重合体(E−1)20重量部及び離型剤(F−1)0.5重量部を予め均一に混合し、ストランド用ダイスを装備した35mmφ2軸押出機(東芝機械製、(商品名)TEM−35−102B)のホッパーに投入した。一方、ガラス繊維(C−1)をPPS(A−1)100重量部に対して30重量部となるように該2軸押出機のサイドフィーダーのホッパーから投入し、溶融混練してペレット化したポリ(p−フェニレンスルフィド)樹脂組成物(以下、PPS樹脂組成物と記す。)を作製した。得られたPPS樹脂組成物の、目やに、白色度指数W、成形流動性及び成形加工性を評価した。評価結果を表1に示す。
【0053】
得られたPPS樹脂組成物は、実用上十分な白色色調を有し、衝撃強度、成形加工性も良好であった。また、成形流動性も実用上十分な値を示した。
【0054】
実施例2〜9
PPS(A−1、A−2)、酸化チタン(B−1),硫化亜鉛(B−2),酸化亜鉛(B−3)、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(D−1),12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛(D−2)、変性エチレン系共重合体(E−1、E−2)及び離型剤(F−1、F−2)を表1に示す構成割合で配合して、ストランド用ダイスを装備した35mmφ2軸押出機のホッパーに投入し、ガラス繊維(C−1、C−2)を、表1に示す構成割合になるように2軸押出機のサイドフィーダーのホッパーに投入し、実施例1と同様の方法によりPPS樹脂組成物を作製し、実施例1と同様の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0055】
得られた全てのPPS樹脂組成物は、実用上十分な白色色調を有し、衝撃強度、成形加工性も良好であった。また、成形流動性も実用上十分な値を示した。
【0056】
【表1】
比較例1〜6
PPS(A−1、A−3)、酸化チタン(B−1),硫化亜鉛(B−2)、ガラス繊維(C−1)、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム(D−1)、変性エチレン系共重合体(E−1)及び離型剤(F−1)を表2に示す構成割合で配合して、ストランド用ダイスを装備した35mmφ2軸押出機のホッパーに投入し、ガラス繊維(C−1)を、表2に示す構成割合になるように、2軸押出機のサイドフィーダーのホッパーに投入し、実施例1と同様の方法によりPPS樹脂組成物を作製し、実施例1と同様の方法により評価した。評価結果を表2に示す。
【0057】
比較例1、比較例3により得られたPPS組成物は、耐衝撃性及び成形流動性において実用上十分な性能が得られなかった。比較例4により得られたPPS組成物は、溶融ストランドとして押出す際に、ダイスリップへの目やにの付着が認められ、白色色調においても実用上十分な性能が得られなかった。比較例2、比較例6により得られたPPS組成物は、白色色調において実用上十分な性能が得られなかった。比較例5により得られたPPS組成物は、成形後の金型に汚染物が認められ、成形加工性において実用上十分な性能が得られなかった。
【0058】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、外装部品としての白色色調と耐衝撃性、成形流動性に優れるものであり、特にモバイルパソコンやタブレット、携帯電話など携帯端末機器の筐体等の電気・電子部品用途、又は自動車電装部品等の電気部品用途に用いられる樹脂組成物として期待されるものである。