特許第6444680号(P6444680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6444680基板の製造方法、多層反射膜付き基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及び転写用マスクの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6444680
(24)【登録日】2018年12月7日
(45)【発行日】2018年12月26日
(54)【発明の名称】基板の製造方法、多層反射膜付き基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及び転写用マスクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/60 20120101AFI20181217BHJP
   G03F 1/24 20120101ALI20181217BHJP
   G11B 5/84 20060101ALI20181217BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20181217BHJP
   C03C 17/36 20060101ALI20181217BHJP
   G02B 5/26 20060101ALN20181217BHJP
【FI】
   G03F1/60
   G03F1/24
   G11B5/84 A
   C03C15/00 B
   C03C17/36
   !G02B5/26
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2014-200661(P2014-200661)
(22)【出願日】2014年9月30日
(65)【公開番号】特開2016-72441(P2016-72441A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】折原 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】笑喜 勉
【審査官】 田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−183221(JP,A)
【文献】 特開2007−189081(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/084934(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/104009(WO,A1)
【文献】 特開2009−117782(JP,A)
【文献】 特開2013−062512(JP,A)
【文献】 特開2014−139258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC H01L 21/30、
21/027、
21/46、
21/304−21/304,631、
21/463、
G03F 1/00−1/92、
G11B 5/84−5/858、
C03C 15/00−23/00、
B24B 3/00−3/60、
21/00−39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素酸化物を含む材料からなる主表面を有する基板を準備する基板準備工程と、
触媒物質の加工基準面と前記主表面を接触又は接近させ、前記加工基準面と前記主表面との間に処理流体を介在させた状態で前記主表面と前記加工基準面とを相対運動させることにより、前記加工基準面上で生成される活性種と前記主表面との加水分解反応に基づいて前記主表面を触媒基準エッチングする工程と、を有する基板の製造方法において、
前記処理流体は、有機アルカリ水溶液を含むことを特徴とする基板の製造方法。
【請求項2】
前記有機アルカリ水溶液は、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)及び水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)のうちの少なくとも1つを含む水溶液であることを特徴とする請求項1に記載の基板の製造方法。
【請求項3】
前記処理流体は、前記基板に対して常態では実質的に溶解性を示さないことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板の製造方法。
【請求項4】
前記加工基準面は、多孔質表面を有し、該多孔質表面は前記触媒物質から形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一に記載の基板の製造方法。
【請求項5】
前記基板に50hPa以上の荷重を加えることを特徴とする請求項4に記載の基板の製造方法。
【請求項6】
前記基板は、マスクブランク用基板であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載の基板の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の基板の製造方法によって得られた基板の主表面上に、多層反射膜を形成することを特徴とする多層反射膜付き基板の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載の基板の製造方法によって得られた基板の主表面上、又は、請求項7に記載の多層反射膜付き基板の製造方法によって得られた多層反射膜付き基板の多層反射膜上に、転写パターン用薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のマスクブランクの製造方法によって得られたマスクブランクの転写パターン用薄膜をパターニングして、転写パターンを形成することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の製造方法、マスクブランク用基板の製造方法、このマスクブランク用基板を用いた多層反射膜付き基板の製造方法、このマスクブランク用基板又は多層反射膜付き基板を用いたマスクブランクの製造方法、及び、このマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスでは、高集積回路の高密度化、高精度化が一段と進められている。その結果、回路パターン転写に用いるマスクブランク用基板や転写用マスクに対し、一段の平坦化、平滑化、及び、より微細なサイズでの低欠陥化が求められている。
【0003】
例えば、半導体デザインルール1xnm世代以降(ハーフピッチ(hp)14nm、10nm、7nm等)で使用されるマスクブランクとして、EUV露光用の反射型マスクブランク、ArFエキシマレーザー露光用のバイナリーマスクブランク及び位相シフトマスクブランク、並びにナノインプリント用マスクブランクなどがあるが、これらの世代で使用されるマスクブランクでは、30nm級の欠陥(SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)が21.5nm以上34nm以下の欠陥)若しくは、それよりも小さいサイズの欠陥が問題となる可能性がある。このため、マスクブランクに使用される基板の主表面(すなわち、転写パターンを形成する側の表面)は、30nm級の欠陥が、極力少ない方が好ましい。また、30nm級の欠陥の欠陥検査を行う高感度の欠陥検査装置において、表面粗さはバックグランドノイズに影響する。すなわち、平滑性が不十分であると、表面粗さ起因の擬似欠陥が多数検出され、欠陥検査を行うことができない。このため、半導体デザインルール1xnm世代以降で使用されるマスクブランクに用いられる基板の主表面は、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.08nm以下の平滑性が求められている。
【0004】
また、近年、ハードディスクドライブ(HDD)においては、磁気記録媒体の記録容量が高密度化してきていることに伴い、磁気記録媒体に対する記録読取り用ヘッドの浮上量(フライングハイト)をより減少させたものとなっている。そのようなヘッドとして、DFH(Dynamic Flying Height)機構を搭載したヘッドも普及している。DFH機構は、磁気ヘッドに設けられた発熱素子の発熱によって磁気ヘッドが熱膨張し、磁気ヘッドが浮上面方向にわずかに突出するように動作させるものであり、これによりフライングハイトを一定に保つことができる。このようなDFH機構を搭載したヘッドは、フライングハイトが数nm程度であるため、磁気記録媒体を使用したときにヘッドクラッシュなどの不良が生じやすい。このような不良を減少するために、磁気記録媒体用基板の表面としては、平滑性が高く、実質的に突起のない低欠陥な表面が要求されている。
【0005】
磁気記録媒体用基板としては、アルミなどの金属基板があるが、金属基板に比べて塑性変形しにくく、基板主表面を鏡面研磨したときに、高い表面平滑性が得られるガラス基板が好適に用いられている。
【0006】
これまで、マスクブランク用基板や磁気記録媒体基板の主表面を、高平滑性で、低欠陥で、実質的に突起のない状態にするために、さまざまな加工方法が提案されているが、所望の特性を満たす主表面を有する基板を実現することは困難であった。
【0007】
近年、主表面について実質的に突起のない低欠陥で高平滑な状態が求められる基板の加工方法として、触媒基準エッチング(Catalyst Referred Etching:以下CAREとも言う)による加工方法が提案されている。触媒基準エッチング(CARE)加工では、触媒物質から形成される加工基準面に吸着している処理流体中の分子から水酸基が活性種として生成し、この活性種によって加工基準面と接近又は接触する基板表面上の微細な凸部が加水分解反応し、当該微細な凸部が選択的に除去されると考えられる。特許文献1には、金属触媒を用いた触媒基準エッチングによる加工方法が記載されている。
【0008】
特許文献1では、処理流体として用いる、純水又は超純水等の水の存在下で、触媒物質の加工基準面を、ガラスなどの固体酸化物からなる被加工物表面に接触又は接近させ、加工基準面と被加工物表面とを相対運動させて、加水分解による分解生成物を被加工物表面から除去し、被加工物表面を加工する固体酸化物の加工方法が記載されている(以降、当該固体酸化物の加工方法もCARE加工方法と称する)。触媒物質としては、金属元素を含み、当該金属元素の電子のd軌道がフェルミレベル近傍のものが用いられ、具体的な金属元素としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)が挙げられている。触媒物質としては、バルクである必要はなく、安価で形状安定性のよい母材の表面に、金属、あるいは遷移金属をスパッタリング等によって形成した薄膜であってもよい旨記載されている。また、触媒物質を表面に成膜する母材としては、硬質の弾性材でもよく、例えば、フッ素系ゴムを用いることができる旨記載されている。
また、特許文献1には、処理流体のpHは2〜12の範囲で調整することが好ましいこと、及び、そのアルカリ性領域への調整はKOHの添加で行うことが記載されている(同文献1の段落0031、0056参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2013/084934号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
CARE加工方法において、加工すべき基板と触媒との間に処理流体を介在させた状態で、その基板に加える荷重(以下、加工圧力とも言う)は、基板の用途に応じて、つまり、基板の主表面に許容される欠陥個数や平滑性に応じて、比較的広範囲に設定することが可能である。例えば、EUV露光用の反射型マスクブランク等の用途では、低欠陥で且つ高平滑の主表面を有する基板を用いる必要がある。
このような低欠陥で且つ高平滑の主表面を有する基板の製造に従来のCARE加工方法を適用することができるか否かの観点から、本発明者は、特許文献1に記載された、純水等の水やKOH等の無機アルカリ水溶液を処理流体として用いて加工した基板の表面粗さ等の性状を検討したところ、次のような問題点を見出した。
【0011】
先ず、処理流体として純水等の水を使用して得られた、加工後の基板の主表面の欠陥検査をしたところ、高感度の欠陥検査装置でしか観察できない程度の、凹欠陥となり得る微小スリーク傷が発生する場合があった。これは、CARE加工における加工圧力を印加することにより、加工すべき基板と触媒との間に介在する純水等からなる水膜が薄膜化するが、例えば100hPa以上の比較的高い加工圧力を印加すると、基板と触媒との間から純粋等の水が逃げて、その薄膜化した水膜が部分的に途切れる、水切れ現象が発生する場合があり、その水切れを起こした部分では、基板と触媒との間に水膜が介在しない状態で、基板と触媒が相対運動した結果、基板の主表面に微小スリーク傷が発生したと考えられる。
【0012】
次に、処理流体としてKOHやNaOH等の無機アルカリ水溶液を使用してCARE加工を行う場合、水切れ現象が発生しにくい。これは、KOHやNaOH等の無機アルカリ水溶液の粘性が上述した純水等の水よりも高いため、純水等の水の場合に水切れ現象を生じさせる程度の加工圧力を加えても、相対的に粘性の高い無機アルカリ水溶液は、基板と触媒との間から逃げにくいためであると考えられる。
また、一般に、表面がケイ素酸化物を含む材料よりなる基板をCARE加工すると、オルトケイ酸(HSiO)、メタケイ酸(HSiO)、メタ二ケイ酸(HSiO)等のケイ酸が生成されることが知られている。このようなケイ酸は、基板の材料とその組成が類似しているため、基板に残留したケイ酸を、その周りの基板表面に影響を及ぼさずに除去することが、非常に困難となる。このようなオルトケイ酸等は、KOHやNaOH等の無機アルカリ水溶液に溶解するため、オルトケイ酸等の除去が可能となる。
しかしながら、KOHやNaOH等の無機アルカリ水溶液を用いると、加工後の基板の主表面の粗さが悪化し、更に微小凸欠陥が検出されることを確認した。これは、KOHやNaOH等の無機アルカリ水溶液中に含まれるNaイオンやKイオンが、ケイ酸イオンと結合してケイ酸塩を形成するため、このケイ酸塩が微小異物として基板上に残留し、微小凸欠陥として検出されたと考えられる。
このように、従来のCARE加工方法では、上述したように、凹欠陥となり得る微小スリーク傷や微小表面荒れの発生をもたらし、更には微小凸欠陥が残留する可能性があるため、例えば、EUV露光用の反射型マスクブランク等、低欠陥で且つ高平滑の主表面を有する基板を用いる必要のある用途への適用に不利な面があった。
【0013】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、低欠陥で且つ高平滑の主表面を有する基板を製造することのできる基板の製造方法、多層反射膜付き基板の製造方法、マスクブランクの製造方法、及び、転写用マスクの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0015】
(構成1)
酸化物を含む材料からなる主表面を有する基板を準備する基板準備工程と、
触媒物質の加工基準面と前記主表面を接触又は接近させ、前記加工基準面と前記主表面との間に処理流体を介在させた状態で前記主表面と前記加工基準面とを相対運動させることにより前記主表面を触媒基準エッチングする工程と、を有する基板の製造方法において、
前記処理流体は、有機アルカリ水溶液を含むことを特徴とする基板の製造方法。
【0016】
(構成2)
前記有機アルカリ水溶液は、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)及び水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)のうちの少なくとも1つを含む水溶液であることを特徴とする構成1に記載の基板の製造方法。
【0017】
(構成3)
前記基板は、少なくとも前記主表面がケイ素酸化物を含む材料からなることを特徴とする構成1又は2に記載の基板の製造方法。
【0018】
(構成4)
前記加工基準面は、多孔質表面を有し、該多孔質表面は前記触媒物質から形成されていることを特徴とする構成1乃至3の何れか一に記載の基板の製造方法。
【0019】
(構成5)
前記基板に50hPa以上の荷重を加えることを特徴とする構成4に記載の基板の製造方法。
【0020】
(構成6)
前記基板は、マスクブランク用基板であることを特徴とする構成1乃至5の何れか一に記載の基板の製造方法。
【0021】
(構成7)
構成6に記載の基板の製造方法によって得られた基板の主表面上に、多層反射膜を形成することを特徴とする多層反射膜付き基板の製造方法。
【0022】
(構成8)
構成6に記載の基板の製造方法によって得られた基板の主表面上、又は、構成7に記載の多層反射膜付き基板の製造方法によって得られた多層反射膜付き基板の多層反射膜上に、転写パターン用薄膜を形成することを特徴とするマスクブランクの製造方法。
【0023】
(構成9)
構成8に記載のマスクブランクの製造方法によって得られたマスクブランクの転写パターン用薄膜をパターニングして、転写パターンを形成することを特徴とする転写用マスクの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
この発明に係る基板の製造方法によれば、触媒基準エッチングによる加工を行う際に、加工すべき基板と触媒物質の加工基準面との間に介在させる処理流体として有機アルカリ水溶液を用いるので、比較的高い荷重(加工圧力)を印加しても、水切れ現象の発生を抑制でき、これにより基板と加工基準面との相対運動時において、基板と加工基準面との間に常に処理流体を介在させた状態とすることができ、且つ、ケイ酸塩の生成を抑制でき、これにより基板の主表面の凹欠陥となり得る微小スリーク傷や微小表面荒れ、微小凸欠陥を抑制することができる。このため、低欠陥で高平滑な主表面を有する基板を提供することが可能となる。
【0025】
また、本発明に係る多層反射膜付き基板の製造方法によれば、上述した基板の製造方法により得られた基板を用いて多層反射膜付き基板を製造するので、低欠陥で高平滑な表面状態を維持し、所望の特性をもった多層反射膜付き基板を製造することができる。
【0026】
また、本発明に係るマスクブランクの製造方法によれば、上述した基板の製造方法により得られた基板または上述した多層反射膜付き基板の製造方法によって得られた多層反射膜付き基板を用いてマスクブランクを製造するので、低欠陥で高平滑な表面状態を維持し、所望の特性をもったマスクブランクを製造することができる。
【0027】
また、本発明に係る転写用マスクの製造方法によれば、上述したマスクブランクの製造方法により得られたマスクブランクを用いて転写用マスクを製造するので、低欠陥で高平滑な表面状態を維持し、所望の特性をもった転写用マスクを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】マスクブランク用基板に対して触媒基準エッチングによる局所加工を施す基板加工装置の構成を示す部分断面図である。
図2図1に示した基板加工装置の構成を示す平面図である。
図3図1及び図2に示した基板加工装置の触媒定盤の加工基準面の要部を模式的に示した断面図である。
図4】無機アルカリ水溶液(NaOH、KOH)と有機アルカリ水溶液(TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム)中に浸漬した基板について、浸漬水溶液の違いによる、当該基板の主表面の表面粗さを比較した試験の結果を相対的に示すグラフである。
図5】実施例1〜5及び比較例1、2についての各加工条件及び加工前後の評価の内容を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態に係る基板の製造方法、この基板を用いた多層反射膜付き基板の製造方法、この基板または多層反射膜付き基板を用いたマスクブランクの製造方法、及びこのマスクブランクを用いた転写用マスクの製造方法を、適時図を参照しながら、詳細に説明する。尚、図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付してその説明を簡略化ないし省略することがある。
【0030】
実施の形態1.
実施の形態1では、基板の製造方法及び基板加工装置について説明する。
【0031】
この実施の形態1では、酸化物を含む材料からなる主表面を有する基板を準備する基板準備工程と、触媒物質の加工基準面と基板の主表面を接触又は接近させ、加工基準面と主表面との間に処理流体を介在させた状態で、基板の主表面を触媒基準エッチングにより加工する基板加工工程とにより、基板を製造する。
以下、各工程を詳細に説明する。
【0032】
1.基板準備工程
基板の製造方法では、先ず、酸化物を含む材料からなる主表面を有する基板を準備する。
【0033】
準備する基板は、例えば、基板全体が酸化物を含む材料からなる基板や、主表面として用いる上面に酸化物を含む材料からなる薄膜が形成された基板や、主表面として用いる上面及び下面の両方に酸化物を含む材料からなる薄膜が形成された基板である。
薄膜が形成された基板は、酸化物を含む材料からなる基板本体の主表面として用いる上面や下面に、酸化物を含む材料からなる薄膜が形成された基板であってもよいし、酸化物を含む材料以外からなる基板本体の主表面として用いる上面や下面に、酸化物を含む材料からなる薄膜が形成された基板であってもよい。
【0034】
酸化物を含む材料からなる基板や基板本体の材料として、例えば、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、SiO−TiO系ガラス等のガラスや、ガラスセラミックスが挙げられる。また、酸化物を含む材料以外からなる基板本体の材料として、シリコン、カーボン、金属が挙げられる。
薄膜を形成する酸化物として、例えば、ケイ素酸化物、金属酸化物、合金酸化物が挙げられる。具体的には、ケイ素酸化物としては、シリコン酸化物(SiO、(x>0))や、金属とシリコンを含む金属シリサイド酸化物(MeSi、Me:金属、x>0、y>0、及びz>0)が挙げられる。また、金属酸化物としては、タンタル酸化物(TaO、(x>0))、ルテニウム酸化物(RuO(x>0))が挙げられる。また、合金酸化物としては、タンタルホウ素酸化物(TaOz、(x>0、y>0、及びz>0))、タンタルハフニウム酸化物(TaHf、(x>0、y>0、z>0)、タンタルクロム酸化物(TaCr、(x>0、y>0、及びz>0))が挙げられる。このような酸化物を含む材料からなる薄膜は、例えば、蒸着、スパッタリング、電気めっきによって形成することができる。
また、上述した酸化物には、本発明の効果を逸脱しない範囲で、窒素、炭素、水素、フッ素等の元素が含まれていてもよい。
準備する基板は、好ましくは、塑性変形しにくく、高平滑性の主表面が得られやすいガラス基板や、ガラス基板本体の主表面である上面や下面に、シリコン酸化物(SiO(x>0))からなる薄膜が形成された基板である。
【0035】
準備する基板は、マスクブランク用基板であっても、磁気記録媒体用基板であってもよい。マスクブランク用基板は、反射型マスクブランク、バイナリーマスクブランク、位相シフトマスクブランク、ナノインプリント用マスクブランクのいずれの製造に使用するものであってもよい。バイナリーマスクブランクは、遮光膜の材料が、MoSi系、Ta系、Cr系のいずれであってもよい。位相シフトマスクブランクは、ハーフトーン型位相シフトマスクブランク、レベンソン型位相シフトマスクブランク、クロムレス型位相シフトマスクブランクのいずれであってもよい。反射型マスクブランクに使用する基板材料は、低熱膨張性を有する材料である必要がある。このため、EUV(Extreme Ultra Violet)露光用の反射型マスクブランクに使用する基板材料は、例えば、SiO−TiO系ガラスが好ましい。また、透過型マスクブランクに使用する基板材料は、使用する露光波長に対して透光性を有する材料である必要がある。このため、ArFエキシマレーザー露光用のバイナリーマスクブランク及び位相シフトマスクブランクに使用する基板材料は、例えば、合成石英ガラスが好ましい。また、磁気記録媒体用基板に使用する基板材料は、耐衝撃性や強度・剛性を高めるために、研磨工程後に化学強化を行う必要がある。このため、磁気ディスク用基板に使用する基板材料は、例えば、ボロシリケートガラスやアルミノシリケートガラスなどの多成分系ガラスが好ましい。
【0036】
準備する基板は、固定砥粒や遊離砥粒などを用いて主表面が研磨された基板であることが好ましい。例えば、所定の平滑性、平坦性を有するように、以下のような加工方法を用いて主表面として用いる上面や下面を研磨しておく。尚、下面を主表面として用いない場合であっても、必要に応じて、所定の平滑性、平坦性を有するように、以下のような加工方法を用いて下面も研磨しておく。ただし、以下の加工方法はすべて行う必要はなく、所定の平滑性、平坦性を有するように、適宜選択して行う。
【0037】
表面粗さを低減するための加工方法として、例えば、酸化セリウムやコロイダルシリカなどの研磨砥粒を用いたポリッシングやラッピングがある。
平坦度を改善するための加工方法として、例えば、磁気粘弾性流体研磨(Magnet Rheological Finishing:MRF)、局所化学機械研磨(Local Chemical Mechanical Polishing:LCMP)、ガスクラスターイオンビームエッチング(Gas Cluster Ion Beam etching:GCIB)、局所プラズマエッチングを用いたドライケミカル平坦化法(Dry Chemical Planarization:DCP)がある。
【0038】
MRFは、磁性流体に研磨スラリーを混合させた磁性研磨スラリーを、被加工物に高速で接触させるとともに、接触部分の滞留時間をコントロールすることにより、局所的に研磨を行う局所加工方法である。
LCMPは、小径研磨パッド及びコロイダルシリカなどの研磨砥粒を含有する研磨スラリーを用い、小径研磨パッドと被加工物との接触部分の滞留時間をコントロールすることにより、主に被加工物表面の凸部分を研磨加工する局所加工方法である。
GCIBは、常温常圧で気体の反応性物質(ソースガス)を、真空装置内に断熱膨張させつつ噴出させてガスクラスタを生成し、これに電子線を照射してイオン化させることにより生成したガスクラスタイオンを、高電界で加速してガスクラスターイオンビームとし、これを被加工物に照射してエッチング加工する局所加工方法である。
【0039】
DCPは、局所的にプラズマエッチングし、凸度に応じてプラズマエッチング量をコントロールすることにより、局所的にドライエッチングを行う局所加工方法である。
上述した平坦度を改善するための加工方法によって損なわれた表面粗さを改善するために、平坦度を極力維持しつつ、表面粗さを改善する加工方法として、例えば、フロートポリッシング、EEM(Elastic Emission Machining)、ハイドロプレーンポリッシングがある。
【0040】
触媒基準エッチングによる加工時間を短くするため、準備する基板の主表面は、0.3nm以下、より好ましくは0.15nm以下の二乗平均平方根粗さ(RMS)を有することが好ましい。
【0041】
2.基板加工工程
次に、触媒物質の加工基準面と基板の主表面を接触又は接近させ、加工基準面と主表面との間に処理流体を介在させた状態で加工基準面と主表面とを相対運動させて、主表面を触媒基準エッチング(CARE)により加工する。
基板の上面及び下面の両面を主表面として用いる場合には、上面のCARE加工後に下面のCARE加工を行ってもよいし、下面のCARE加工後に上面のCARE加工を行ってもよいし、上面及び下面の両面のCARE加工を同時に行ってもよい。尚、下面を主表面として用いない場合であっても、必要に応じて、下面も触媒基準エッチングにより加工する。主表面として用いない下面にもCARE加工を行う場合には、主表面として用いる上面には欠陥品質の点で高い品質が要求されるため、下面の加工を行った後に、主表面として用いる上面の加工を行う方が好ましい。
【0042】
この場合、先ず、基板の主表面を、触媒物質からなる加工基準面に対向するように配置する。そして、加工基準面と主表面との間に処理流体を供給し、加工基準面と主表面との間に処理流体を介在させた状態で、基板の主表面を、加工基準面に接触又は接近させ、基板に所定の荷重(加工圧力)を加えながら、加工基準面と主表面とを相対運動させる。加工基準面と主表面との間に処理流体を介在させた状態で、加工基準面と主表面とを相対運動させると、加工基準面上に吸着している処理流体中の分子から生成した活性種と主表面が反応して、主表面が加工される。ここで、この反応は、基板表面が酸化物あるいは酸化物を含む場合、加水分解反応である。活性種は加工基準面上にのみ生成し、加工基準面付近から離れると失活することから、加工基準面が接触又は接近する主表面以外ではほとんど活性種との反応が起こらない。このようにして、主表面に対して触媒基準エッチングによる加工を施す。触媒基準エッチングによる加工では、研磨剤を用いないため、マスクブランク用基板Mに対するダメージが極めて少なく、新たな欠陥の生成を防止することができる。
尚、上記の加工基準面と主表面との、接触又は接近とは、いずれも、CARE加工における両面の相対運動時において、両面間に処理流体を介在させた状態で、加工基準面上で生じる加水分解反応を主表面に及ばせるために設定される両面間の距離関係をいう。
【0043】
加工基準面と主表面との相対運動は、加工基準面と主表面とが相対的に移動する運動であれば、特に制限されない。基板を固定し加工基準面を移動する場合、加工基準面を固定し基板を移動する場合、加工基準面と基板の両方を移動する場合のいずれであってもよい。加工基準面が移動する場合、その運動は、基板の主表面に垂直な方向の軸を中心として回転する場合や、基板の主表面と平行な方向に往復運動する場合などである。同様に、基板が移動する場合、その運動は、基板の主表面に垂直な方向の軸を中心として回転する場合や、基板の主表面と平行な方向に往復運動する場合などである。
基板に加える荷重(加工圧力)は、例えば、5hPa〜350hPaであり、好ましくは、50hPa〜250hPaである。例えば、100hPa以上の、加工圧力が比較的高い場合には、比較的低い場合と比べて、加工圧力を主表面に対して均一に印加し易くなるので、加工基準面と主表面との間に介在する処理流体(有機アルカリ水溶液)からなる液膜の薄膜化をより均一に行い易くなり、加工基準面と主表面との間への微小異物の侵入を抑制でき、且つ、相対運動する加工基準面や主表面の回転運動のフラツキを抑制できるので、主表面上の凹・凸欠陥個数を減らすことができる。また、加工圧力が比較的高い場合、その加工圧力を主表面に対して均一に印加し易くなるので、後述する所定の加工取り代も、主表面全体で均一にすることができる。
触媒基準エッチングによる加工における加工取り代は、例えば、5nm〜100nmである。基板の主表面に当該主表面から突出する突起が存在する場合、加工取り代は、突起の高さより大きい値にすることが好ましい。加工取り代を突起の高さより大きい値にすることにより、CARE加工により突起を除去することができる。
【0044】
加工基準面を形成する触媒物質としては、処理流体に対して基板表面を加水分解する活性種を生む材料であればよく、金属元素、好ましくは遷移金属元素を含む材料が好ましい。例えば、周期率表の4族、6族、8族、9族、10族、11族に属する元素のうちの少なくとも一つの金属やそれらを含む合金が、好ましくは、用いられる。具体的には、白金(Pt)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、及びオスミウム(Os)のうちの少なくとも一つの金属やそれらを含む合金、並びにこの合金に酸素(O)、窒素(N)、及び炭素(C)のうちの少なくとも一つの成分が含まれた合金化合物が挙げられる。上述した合金化合物として、例えば、上述した合金の酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、及び酸化窒化炭化物が挙げられる。このような合金や合金化合物を用いると、加工基準面の機械的耐久性や化学的安定性を向上させることができる。
【0045】
この触媒物質を含む触媒物質層は、多孔質からなるパッドの上に形成される。この多孔質パッドについては、その効果を含め、後述の基板表面創製手段のところで詳細に述べる。
【0046】
加工基準面の面積は、基板の主表面の面積よりも大きく、例えば、100mm〜10000mmである。この場合、基板の主表面全面を加工基準面に対向させて加工できるので、加工時間が短縮でき、また、加工基準面のエッジによる傷等の欠陥の発生を抑えることができる。
また、加工基準面の面積は、基板の主表面の面積より小さくても構わない。この場合、加工基準面を小型化することにより、基板加工装置を小型化できる他、高精度の加工を確実に行うことができる。
【0047】
処理流体は、基板に対して常態では溶解性をほとんど示さないもので、加水分解反応を誘起する有機アルカリ水溶液を含む。これが本発明の特徴点である。このような処理流体を使用することにより、基板が処理流体によって溶解せず、不必要な基板の変形を防止することができる。有機アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAH)及び水酸化テトラブチルアンモニウム(TBAH)の各水溶液を、単独で、又は、適宜混合して使用することができる。処理流体の媒体としては、水、脱イオン水、純水、又は、超純水等の水性媒体を使用することができる。処理流体のpHは、アルカリ性領域の範囲のうち、好ましくはpH9〜pH13であり、より好ましくはpH10〜pH11である。処理流体の使用時の温度は、処理流体の粘性の変化を考慮した上で、基板が変形等しない範囲で、10℃〜80℃の範囲で設定されることが好ましい。
尚、基板が、常態ではハロゲンを含む分子が溶けた溶液によって溶解しない場合、及び、有機アルカリ水溶液を含む処理流体により誘起される加水分解反応を阻害せず、結晶化等により固相化して基板上に残留し、除去されにくい性質を有しない場合には、その処理流体には、ハロゲンを含む分子が溶けた溶液を含めることもできる。また、有機アルカリ水溶液を含む処理流体には、基板由来等のケイ酸イオンの存在下で、基板上で微小異物(凸欠陥)となり得るケイ酸塩を生成するNaイオンやKイオンを処理流体中に供給する、例えば、NaOHやKOH等の無機アルカリ性水溶液や物質を含めることは基本的にできない。ただし、ケイ酸塩の形成量が問題にならず、基板表面の粗さを悪化させない程度であれば、NaOHやKOH等の無機アルカリ性水溶液を含んでいても構わない。
【0048】
基板の、少なくとも主表面がケイ素酸化物を含む材料からなる場合、上述した触媒物質を使用し、処理流体として有機アルカリ水溶液を使用することにより、触媒基準エッチングによる加工を行っても、従来の無機アルカリ水溶液に含まれるNaイオンやKイオンを含まないため、ケイ酸イオンの存在下で、ケイ酸塩を生成することがなく、そのケイ酸塩からなる微小異物が基板上に残留することがないので、基板の主表面に微小凸欠陥の発生を抑制することができる。
【0049】
図1及び図2は基板の主表面に対して触媒基準エッチングによる加工を施す基板加工装置の一例を示す。図1は基板加工装置の部分断面図であり、図2は基板加工装置の平面図である。尚、これ以降、図1及び図2に示す基板加工装置を用いて、基板Mの主表面として用いる下面M1をCARE加工する場合について説明するが、基板Mの上面M2も主表面として用いる場合には、下面M1と上面M2を入れ替えて、上面M2もCARE加工する。尚、上面M2を主表面として用いない場合であっても、必要に応じて、上面M2もCARE加工する。その場合には、上面M2のCARE加工後に下面M1のCARE加工を行う。
【0050】
基板加工装置1は、酸化物を含む材料からなる主表面を有する基板Mを支持する基板支持手段2と、触媒物質の加工基準面33を有する基板表面創製手段3と、加工基準面33と主表面との間に処理流体を供給する処理流体供給手段4と、加工基準面33と主表面との間に処理流体が介在する状態で、基板Mの主表面を加工基準面33に接触又は接近させる駆動手段5と、基板表面創製手段3を収容する円筒形のチャンバー6と、加工基準面33と基板Mの主表面とを相対運動させる相対運動手段7と、を備えている。
【0051】
基板支持手段2は、後に詳述する相対運動手段7によって回転駆動されるヘッドロッド20と、このヘッドロッド20の下端部に取り付けられ、且つ、下面M1を下方に向けた状態の基板Mを回転可能に支持する円柱状のヘッド部21と、このヘッド部21の下部に着脱自在に装着され、且つ、基板Mの上面M2を吸着し保持する略円盤状の真空チャック部22とを備えている。ヘッド部21は、後に詳述する相対運動手段7によってヘッドロッド20を回転駆動することで、チャンバー6内の水平面上で回転可能である(図1,2中の両矢印Bを参照)。真空チャック部22は、ヘッド部21の下面に形成された断面円形状の凹部(図示せず)と、その周辺部(図示せず)とから概略構成されている。真空チャック部22の凹部(図示せず)の底面には、外部の真空装置(図示せず)から延出する真空パイプ23の複数の分岐パイプ(図示せず)の各先端(図示せず)が開口している。複数の分岐パイプ(図示せず)の各開口端(図示せず)は、例えば、真空チャック部22の凹部(図示せず)の中心から放射状に配列した位置に配設されるが、これに限定されるものではない。ここで、基板Mがその上面M2を真空チャック部22の周辺部(図示せず)に接触させた状態で、真空装置(図示せず)を稼動させると、真空チャック部22の凹部(図示せず)と基板Mとの間に形成される内部空間は減圧され、この減圧で生じる吸引力によって基板Mを固定することが可能となる。
【0052】
また、ヘッド部21内には、真空チャック部22の上部にエア導入空間(図示せず)が形成され、このエア導入空間(図示せず)内に、エアチューブ(図示せず)を介してエアが供給されるように構成されている。真空チャック部22に吸着保持された基板Mの下面M1と触媒定盤31の加工基準面33との間に処理流体を介在させた状態で、エア導入空間(図示せず)内にエアが供給されて加圧されると、ヘッド部21が真空チャック部22を下方向に押圧することで、真空チャック部22に吸着保持された基板Mに対して真空チャック部22を介して、荷重(加工圧力)が加えられる。このため、エア導入空間(図示せず)は、基板Mに荷重(加工圧力)を加えるエアシリンダとして機能する。ヘッド部21内には、エア導入空間(図示せず)により基板Mに加えられる荷重を測定し、所定の荷重(加工圧力)を超えないようにエアバルブ(図示せず)をオン・オフして、エア導入空間(図示せず)によって基板Mに加えられる荷重(加工圧力)を制御するロードセル(図示せず)が設けられている。これらエア導入空間(図示せず)、エアバルブ(図示せず)及びロードセル(図示せず)は、基板Mに対して触媒基準エッチングによる加工を行うとき、基板Mに加える荷重(加工圧力)を制御する荷重制御手段(図示せず)を構成している。
【0053】
基板支持手段2は、チャンバー6内の上部位置に配置され、基板表面創製手段3は、チャンバー6内に配置される。チャンバー6は、後に詳述する相対運動手段7の軸部71をチャンバー6内に配置するために、チャンバー6の底部63の中央に形成された開口部61と、処理流体供給手段4から供給された処理流体を排出するために、チャンバー6の底部63の、開口部61より外周寄りに形成された排出口62とを備えている。図1では、排出口62から処理流体が排出される様子が矢印で示されている。
【0054】
基板表面創製手段3は、触媒定盤31を備えている。触媒定盤31は、相対運動手段7の軸部71内に設けられた触媒定盤取付部(図示せず)に取り付けられている。触媒定盤31は、表面が上方に向く定盤本体32と、この定盤本体32を覆うように定盤本体32の表面全面に形成される基材とその表面に触媒が被着された加工基準面33とを備えている。加工基準面33上の触媒物質は、その上方において、基板支持手段2によって支持された基板Mの下面M1と対向する。
【0055】
この加工基準面33は、多孔質基材(多孔質母材)上に触媒物質が被着されてなる多孔質構造を有している。この構造について、図3を用いて説明する。加工基準面33は、同図に示されるように、多孔質基材101の表面形状に沿って触媒物質層102が被着形成され、数多くの孔(開口)103が形成されていて、多孔質状になっている。尚、図3では、略円筒形状の孔を模式的に示しているが、孔の形状はこれに限られるものではなく、孔は、その径が途中で変化したもの、孔の軸方向が斜めになっている等の複雑な形状をしたものでも構わない。また、加工基準面33の表面には、大小様々の大きさをもつ孔(開口、空孔)が混在して形成されてもよく、その周りの表面部分は触媒物質層102が表面に露出した触媒基準加工面になっている。孔の形状も真円形、楕円形、及び不定形など、様々な形状を有していることが好ましい。これらの孔(開口)は、不規則に配列されていることが望ましい。また、一例では、加工基準面33上に仮想的に設定される四方グリッド格子(図示せず)から斜め方向に孔の重心位置がずれていたり、四方グリッド格子(図示せず)上に孔が存在していない部位(図示せず)があったり、単位格子内において追加的な孔(図示せず)が存在してもよい。このように孔を不規則に配列することにより、加工基準面33における特定の場所に力が集中することを抑制でき、基板加工時における力を分散させて平均化させることが可能となる。ここでは四方グリッド状の場合を説明したが、これに限らず、平行四辺形で構成される斜方グリッド状、六方系グリッド状、及びハニカム系グリッド状などであってもよく、これらのグリッドに規則的に孔が配列していないことが望ましい。
【0056】
この多数の孔群に処理流体が滞留させることができるため、触媒基準エッチングの際に、基板Mの主表面と加工基準面33の間に常に必要十分な処理流体を介在させることができる。また、この孔には、加工エッチングの際に発生した異物をトラップする性質があるため、この点においても低欠陥化の効果がある。
【0057】
孔の開口率について、本発明者が様々な開口率を設定して検討を行ったところ、面積比で20%以上80%以下の範囲にあると、表面を平滑にでき、欠陥も少なかった。また、多孔質表面の平均開口径は、0.1μm以上100μm以下の範囲にあると、表面を平滑にでき、欠陥も少なくなることがわかった。尚、平均開口径は多孔質表面の走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)観察像から測定し、平均化したものを平均開口径と定義した。
加工後の基板主表面の表面粗さと、欠陥(特に凹欠陥)の低減の観点から、孔の開口率は、好ましくは、面積比で20%以上70%以下、さらに好ましくは、25%以上60%以下、さらに好ましくは25%以上40%以下が望ましい。
また、同様に加工後の基板主表面の表面粗さと、欠陥(特に凹欠陥)の低減の観点から、多孔質表面の平均開口径は、好ましくは10μm以上80μm以下、さらに好ましくは、20μm以上70μm以下が望ましい。
【0058】
多孔質基材としては、欠け等による異物の発生源になり難く傷を発生させ難い点を考慮すると、弾性体材料が好ましい。ここで、モジュラスや圧縮変形度などで表現される弾性体の硬度の範囲が重要で、硬度が高いと基板表面に傷を発生させやすくなり、硬度が低いと加工レートが遅くなる。傷発生防止と加工レート確保の両立を図るため、多孔質基材、あるいはその上に触媒が形成された状態での多孔質触媒部の弾性体硬度は、ショアA硬度で90未満の範囲にあることが望ましい。多孔質触媒部の弾性体硬度の好ましい範囲は、ショアA硬度で50以下、さらに好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下が望ましい。
【0059】
多孔質基材の形成法としては、特に限定するものではないが、安価で汎用な手法であるとともに孔の配置が不規則になりやすい点において、発泡形成法が適している。また、この発泡法の多孔質基材としては、例えば、発泡ウレタンが汎用性もあって、適度な硬度も有しており、好適である。
【0060】
触媒定盤の全体形状は、特に制限されない。例えば、円盤、球、円柱、円錐、角錐の外形のものを使用することができる。加工基準面が形成される触媒定盤の部分の表面形状も、特に制限されない。例えば、平面、半球、丸みを帯びた形状のものを使用することができる。
【0061】
処理流体供給手段4は、チャンバー6の外側から内側に向かって延在する供給管41と、この供給管41の下端部先端に設けられ、加工基準面33に向けて処理流体を噴射する噴射ノズル42とを備えている。供給管41は、例えば、チャンバー6の外側に設けられた処理流体貯留タンク(図示せず)及び加圧ポンプ(図示せず)に接続されている。処理流体は、供給管41を通って噴射ノズル42に供給され、噴射ノズル42から加工基準面33上に供給される。尚、処理流体の供給方法としては、これに限定されるものではなく、基板M側から処理流体を供給してもよい。
【0062】
駆動手段5は、基板支持手段2のヘッドロッド20の上端に接続され、チャンバー6の周囲まで、真空チャック部22に吸着保持された基板Mの主表面と平行な方向に延びるアーム部51と、アーム部51のチャンバー6の周囲まで延びた端部を支え、真空チャック部22に吸着保持された基板Mの主表面と垂直な方向に延びる軸部52と、軸部52の下端を支持する土台部53と、チャンバー6の周囲に配置され、土台部53の移動経路を定めるガイド54とを備えている。アーム部51は、その長手方向に移動することができる(図1,2中の両矢印Cを参照)。軸部52は、その長手方向に移動することにより、アーム部51を上下動させることができる(図1中の両矢印Dを参照)。土台部53は、真空チャック部22に吸着保持された基板Mの主表面と垂直な方向の軸を回転中心として所定の角度だけ回転することにより、アーム部51を旋回させることができる(図1,2中の両矢印Eを参照)。ガイド54は、真空チャック部22に吸着保持された基板Mの隣り合う二辺と平行な方向(第1の方向と第2の方向)に配置され、土台部53のL字形の移動経路を形成する。土台部53は、第1の方向のガイド54に沿って移動することにより、アーム部51を第1の方向に移動させ(図2中の両矢印Fを参照)、第2の方向のガイド54に沿って移動することにより、アーム部51を第2の方向に移動させることができる(図2中の両矢印Gを参照)。このようなアーム部51の移動により、触媒定盤31の加工基準面33上の所定の位置に、真空チャック部22に吸着保持された基板Mの主表面を配置することができる。
【0063】
相対運動手段7は、駆動手段5のアーム部51に設けられ、基板支持手段2のヘッドロッド20を回転させる回転駆動手段(図示せず)を備えている。ヘッドロッド20が回転することにより、ヘッドロッド20を回転中心として、基板支持手段2の真空チャック部22に吸着保持された基板Mが回転することができる(図1,2中の矢印Bを参照)。
【0064】
また、相対運動手段7は、触媒定盤31が取り付けられる触媒定盤取付部(図示せず)を支え、開口部61を通ってチャンバー6の外部まで延在する軸部71と、軸部71を回転させる回転駆動手段(図示せず)とを備えている。軸部71は、触媒定盤31の加工基準面33に対して垂直な方向に延在し、回転駆動手段(図示せず)により、触媒定盤31の加工基準面33に対して垂直な方向の軸を回転中心として回転することができる(図1中の矢印Aを参照)。軸部71の回転中心の延長方向に、触媒定盤31の中心が位置する。軸部71が回転することにより、軸部71に支えられている触媒定盤取付部(図示せず)がその中心を回転中心として回転し、さらに、触媒定盤取付部(図示せず)に固定されている触媒定盤31がその中心を回転中心として回転する。
【0065】
加工取り代を設定どおりに確保するための制御方法としては、例えば、予め別に用意した基板Mに対して、種々の局所加工条件(加工圧力、回転数(触媒定盤、基板)、処理流体の流量)、加工時間と加工取り代との関係を求めておき、所望の加工取り代となる加工条件と加工時間を決定し、当該加工時間を管理することで、加工取り代を制御することができる。これに限定されるものではなく、加工取り代を設定どおりに確保できる方法であれば、種々の方法を選択してもよい。
【0066】
図1及び図2に示す基板加工装置を用いて、触媒基準エッチングによる加工を行う場合、先ず、基板Mを、主表面として用いる下面M1を下側に向け、上面M2を真空チャック22に吸着させて、保持する。
その後、アーム部51の長手方向移動(両矢印C)、アーム部51の旋回移動(両矢印E)、アーム部51の第1方向移動(両矢印F)、アーム部51の第2方向移動(両矢印G)により、基板Mの下面M1を、基板表面創製手段3の加工基準面33に対向するように配置する。
【0067】
その後、軸部71及びヘッドロッド20を所定の回転速度で回転させることによって、加工基準面33及び下面M1を所定の回転速度で回転させながら、噴射ノズル42から下面M1上に処理流体を供給し、下面M1と加工基準面33との間に処理流体を介在させる。その状態で、下面M1を、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、加工基準面33に接近させる。その際、荷重制御手段(図示せず)により、基板Mに加えられる荷重が所定の値に制御される。
その後、所定の加工取り代になった時点で、軸部71及びヘッドロッド20の回転並びに処理流体の供給を止める。そして、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、下面M1を、加工基準面33から所定の距離だけ離す。
【0068】
このような基板準備工程と基板加工工程とにより、基板Mが製造される。
【0069】
この実施の形態1の基板の製造方法によれば、触媒基準エッチングによる加工を行う際に、加工すべき基板Mと触媒物質の加工基準面33との間に介在させる処理流体として有機アルカリ水溶液を用いるので、比較的高い荷重(加工圧力)を印加しても、水切れ現象の発生を抑制でき、これにより基板Mと加工基準面33が相対運動する際には、基板Mと加工基準面33との間に常に処理流体を介在させた状態とすることができ、且つ、ケイ酸塩の生成を抑制でき、これにより基板Mの主表面の凹欠陥となり得る微小スリーク傷や微小表面荒れ、微小凸欠陥を抑制することができる。このため、低欠陥で高平滑な主表面を有する基板を提供することが可能となる。
また、この実施の形態1の基板の製造方法に用いた基板加工装置1によれば、基板支持手段2によって支持された基板Mを、駆動手段5と相対運動手段7との連係によってチャンバー6の内外へ移動させることが可能である。このため、基板支持手段2による基板Mの支持をチャンバー6の外部で行い、その基板Mを駆動手段5と相対運動手段7との連係によってチャンバー6の内部へ移動させ、触媒基準エッチングによる加工後に、その基板Mを駆動手段5と相対運動手段7との連係によってチャンバー6外の洗浄装置(図示せず)へ移動させることができる。このような一連の流れを、基板Mを基板支持手段2に支持させた状態で行うことができるので、特に、触媒基準エッチングによる加工後において、基板Mの主表面(特に、下面M1)への不純物の付着や傷の発生を防止することができる。
【0070】
尚、この実施の形態では、基板Mの主表面を、基板表面創製手段3の加工基準面33に上から押し当てるタイプの基板加工装置について本発明を適用したが、基板表面創製手段の加工基準面を、基板の主表面に上から押し当てるタイプの基板加工装置にも本発明を適用できる。
また、この実施の形態では、基板の片面を加工するタイプの基板加工装置について本発明を適用したが、基板の両面を同時に加工するタイプの基板加工装置にも本発明を適用できる。この場合、基板支持手段として、基板の側面を保持する部材であるキャリアを使用する。
また、この実施の形態では、チャンバーの外側から加工基準面に向かって処理流体を供給するタイプの基板加工装置について本発明を適用したが、基板表面創製手段に処理流体供給手段を設け、処理流体供給手段から処理流体を供給する場合や、基板支持手段に処理流体供給手段を設け、基板支持手段から処理流体を供給する場合にも本発明を適用できる。また、チャンバーに処理流体を貯め、処理流体中に基板表面創製手段と基板支持手段とを入れた状態で触媒基準エッチングによる加工を行う場合にも本発明を適用できる。
【0071】
また、この実施の形態では、加工基準面33と主表面の両方を回転させることにより加工基準面33と主表面とを相対運動させるタイプの基板加工装置について本発明を適用したが、それ以外の方法により、加工基準面33と主表面とを相対運動させるタイプの基板加工装置にも本発明を適用できる。
また、この実施の形態では、基板を一枚ごとに加工する枚葉式の基板加工装置について本発明を適用したが、複数枚の基板を同時に加工するバッチ式の基板加工装置にも本発明を適用できる。また、ここでは基板の主表面全面に亘って加工する場合を示したが、必要に応じて、予め定めた局部のみを加工する局部加工のみを行ってもよく、これらの加工を併用してもよい。
【0072】
実施の形態2.
実施の形態2では、多層反射膜付き基板の製造方法を説明する。
【0073】
この実施の形態2では、実施の形態1の基板の製造方法で説明した方法により製造した基板Mの主表面上に、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層反射膜を形成し、多層反射膜付き基板を製造するか、さらに、この多層反射膜上に保護膜を形成して、多層反射膜付き基板を製造する。
【0074】
この実施の形態2による多層反射膜付き基板の製造方法によれば、実施の形態1の基板の製造方法により得られた基板Mを用いて多層反射膜付き基板を製造するので、基板要因による特性の悪化を防止することができ、所望の特性をもった多層反射膜付き基板を製造することができる。
【0075】
EUVリソグラフィ用多層膜付き基板の場合は、基板表面のピットやバンプによる凹凸及び多層膜中の欠陥による位相欠陥に留意する必要がある。この位相欠陥の検査感度は、基板段階より多層膜成膜後の段階で検査した方が検査感度は高い。この際、基板表面に表面荒れがあって表面平滑度が低いと、多層膜成膜後の検査であっても、位相欠陥検査の時のバックグラウンドノイズとなって検査感度が低下してしまう。本発明の実施形態によれば、基板表面に加え、多層膜表面を含めて表面平滑度が高いため、位相欠陥検査感度を向上させることができ、位相欠陥管理品質の高い多層反射膜付き基板を製造することが可能となる。
【0076】
実施の形態3.
実施の形態3では、マスクブランクの製造方法を説明する。
【0077】
この実施の形態3では、実施の形態1の基板の製造方法で説明した方法により製造した基板Mの主表面上に、転写パターン用薄膜としての遮光膜を形成してバイナリーマスクブランクを製造し、又は転写パターン用薄膜としての光半透過膜を形成してハーフトーン型位相シフトマスクブランクを製造し、又は転写パターン用薄膜として光半透過膜、遮光膜を順次形成してハーフトーン型位相シフトマスクブランクを製造する。
【0078】
また、この実施の形態3では、実施の形態2の多層反射膜付き基板の製造方法で説明した方法により製造した多層反射膜付き基板の保護膜上に転写パターン用薄膜としての吸収体膜を形成し、又は多層反射膜付き基板の多層反射膜上に保護膜及び転写パターン用薄膜としての吸収体膜を形成し、さらに多層反射膜を形成していない裏面に裏面導電膜を形成して、反射型マスクブランクを製造する。
【0079】
この実施の形態3によれば、実施の形態1の基板の製造方法により得られた基板M又は実施の形態2の多層反射膜付き基板の製造方法によって得られた多層反射膜付き基板を用いてマスクブランクを製造するので、基板要因による特性の悪化を防止することができ、所望の特性をもったマスクブランクを製造することができる。
【0080】
実施の形態4.
実施の形態4では、転写用マスクの製造方法を説明する。
【0081】
この実施の形態4では、実施の形態3のマスクブランクの製造方法で説明した方法により製造したバイナリーマスクブランク、位相シフトマスクブランク、又は反射型マスクブランクの転写パターン用薄膜上に、露光・現像処理を行ってレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクにして転写パターン用薄膜をエッチング処理して、転写パターンを形成して転写用マスクを製造する。
【0082】
この実施の形態4によれば、実施の形態3のマスクブランクの製造方法により得られたマスクブランクを用いて転写用マスクを製造するので、基板要因による特性の悪化を防止することができ、所望の特性をもった転写用マスクを製造することができる。
【実施例】
【0083】
≪アルカリ水溶液の種類の違いによる基板表面粗さの比較試験≫
実施例を説明する前に、無機アルカリ水溶液(NaOH、KOH)と有機アルカリ水溶液(TMAH)中での低熱膨張ガラス基板の表面粗さを比較した結果について説明する。
先ず、比較試験前の二乗平均平方根粗さ(RMS)がほぼ同等の低熱膨張ガラス基板を3枚準備した。
pH11に調整したアルカリ水溶液(NaOH、KOH、TMAH)をそれぞれ同寸法のタンク内に収容し、各タンク内に上記低熱膨張ガラス基板を入れ、24時間、浸漬した。その後、各低熱膨張ガラス基板をタンクから取り出し、スピン洗浄機にかけ、脱イオン水で5分間、リンスし、乾燥させた。このようにして得られた各低熱膨張ガラス基板の主表面の表面粗さを、基板の中心の1μm×1μmの領域に対して、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した。3種類のアルカリ水溶液による表面粗さの比較を図4に示す。図4の縦軸は、比較試験後の二乗平均平方根粗さ(RMS)を任意単位で示している。
図4において、TMAHのRMSを基準とし、これを1とした場合、NaOHのRMSは、TMAHの約1.4倍、KOHのRMSは、TMAHの約1.7倍であった。
したがって、上述した比較試験により、有機アルカリ水溶液としてのTMAHは、無機アルカリ水溶液としてのNaOHやKOHと比べて、基板主表面の表面粗さの悪化を抑制できることを確認した。
【0084】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
尚、以下の実施例1〜5及び比較例1、2についての各加工条件及び加工前後の評価の内容を示す表を図5に示す。
【0085】
実施例1.
A.ガラス基板の製造
1.基板準備工程
主表面及び裏面が研磨された6025サイズ(152.4mm×152.4mm×6.35mm)のTiO−SiOガラス基板である低熱膨張ガラス基板を準備した。尚、TiO−SiOガラス基板は、以下の粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、超精密研磨加工工程、局所加工工程、及びタッチ研磨工程を経て得られたものである。
【0086】
(1)粗研磨加工工程
端面面取加工及び研削加工を終えたガラス基板を両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で粗研磨を行った。10枚セットを2回行い合計20枚のガラス基板の粗研磨を行った。尚、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨スラリー:酸化セリウム(平均粒径2〜3μm)を含有する水溶液
研磨パッド:硬質ポリシャ(ウレタンパッド)
粗研磨後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬し、超音波を印加して洗浄を行った。
【0087】
(2)精密研磨加工工程
粗研磨を終えたガラス基板を両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で精密研磨を行った。10枚セットを2回行い合計20枚のガラス基板の精密研磨を行った。尚、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨スラリー:酸化セリウム(平均粒径1μm)を含有する水溶液
研磨パッド:軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
精密研磨後、ガラス基板に付着した研磨砥粒を除去するため、ガラス基板を洗浄槽に浸漬し、超音波を印加して洗浄を行った。
【0088】
(3)超精密研磨加工工程
精密研磨を終えたガラス基板を再び両面研磨装置に10枚セットし、以下の研磨条件で超精密研磨を行った。10枚セットを2回行い合計20枚のガラス基板の超精密研磨を行った。尚、加工荷重、研磨時間は適宜調整して行った。
研磨スラリー:コロイダルシリカを含有するアルカリ性水溶液(pH10.2)
(コロイダルシリカ含有量50wt%)
研磨パッド:超軟質ポリシャ(スウェードタイプ)
超精密研磨後、ガラス基板を水酸化ナトリウムのアルカリ洗浄液が入った洗浄槽に浸漬し、超音波を印加して洗浄を行った。
【0089】
(4)局所加工工程
粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、超精密研磨加工工程後のガラス基板の主表面及び裏面の平坦度を、平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)を用いて測定した。平坦度測定は、ガラス基板の周縁領域を除外した148mm×148mmの領域に対して、1024×1024の地点で行った。ガラス基板の主表面及び裏面の平坦度の測定結果を、測定点ごとに仮想絶対平面に対する高さの情報(凹凸形状情報)としてコンピュータに保存した。仮想絶対平面は、仮想絶対平面から基板表面までの距離を、平坦度測定領域全体に対して二乗平均したときに最小の値となる面である。
その後、取得された凹凸形状情報とガラス基板に要求される主表面及び裏面の平坦度の基準値とを比較し、その差分を、ガラス基板の主表面及び裏面の所定領域ごとにコンピュータで算出した。この差分が、局所的な表面加工における各所定領域の必要除去量(加工取り代)となる。
【0090】
その後、ガラス基板の主表面及び裏面の所定領域ごとに、必要除去量に応じた局所的な表面加工の加工条件を設定した。設定方法は以下の通りである。事前にダミー基板を用いて、実際の加工と同じようにダミー基板を、一定時間基板移動させずにある地点(スポット)で加工し、その形状を平坦度測定装置(トロペル社製 UltraFlat200)にて測定し、単位時間当たりにおけるスポットでの加工体積を算出した。そして、単位時間当たりにおけるスポットでの加工体積と上述したように算出した各所定領域の必要除去量に従い、ガラス基板をラスタ走査する際の走査スピードを決定した。
その後、ガラス基板の主表面及び裏面を、基板仕上げ装置を用いて、磁気粘弾性流体研磨(Magnet Rheological Finishing:MRF)により、所定領域ごとに設定した加工条件に従い、局所的に表面加工した。尚、このとき、酸化セリウムの研磨粒子を含有する磁性研磨スラリーを使用した。
【0091】
その後、ガラス基板を、濃度約10%の塩酸水溶液(温度約25℃)が入った洗浄槽に約10分間浸漬させ、続いて、純水によるリンス、イソプロピルアルコール(IPA)による乾燥を行った。
【0092】
(5)タッチ研磨工程
局所加工工程によって荒れたガラス基板の主表面及び裏面の平滑性を高めるために、研磨スラリーを用いて行う低荷重の機械的研磨により微小量だけガラス基板の主表面及び裏面を研磨した。この研磨は、基板の大きさよりも大きい研磨パッドが張り付けられた上下の研磨定盤の間にキャリアで保持されたガラス基板をセットし、コロイダルシリカ砥粒(平均粒子径50nm)を含有する研磨スラリーを供給しながら、ガラス基板を、上下の研磨定盤内で自転しながら公転することによって行った。
その後、ガラス基板を、HF溶液に浸漬し、超音波を印加して洗浄を行った。
【0093】
2.基板加工工程
次に、図1及び図2に示す基板加工装置を用いて、タッチ研磨工程後のガラス基板の主表面に対して、触媒基準エッチングによる加工を施した。
【0094】
この実施例では、ステンレス鋼(SUS)製の円盤形状の定盤本体32と、定盤本体32を覆うように定盤本体32の表面全面に形成された発泡ウレタンパッドと、ガラス基板と対向する側のウレタンパッドの表面全面に形成されたPt(白金)からなる加工基準面33とを備えた触媒定盤31を使用した。ここで、触媒定盤の直径は600mmである。この発泡ウレタンパッドの硬度はショアA評価で3であり、柔らかい。このパッドにPtターゲットを用いてAr(アルゴン)ガス雰囲気中でスパッタリング成膜を行って触媒基準面33を形成した。成膜されたPtの膜厚は100nmである。触媒基準面33に形成された空孔は大きさにばらつきがあり、配置も格子配列上から外れた不規則配置となっている。ちなみに、この場合の空孔の平均開口径は32.5μmで、開口率(平均値)は30%であった。
加工条件は以下の通りである。
処理流体:水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(pH11)
軸部71の回転数(ガラス基板の回転数):10.3回転/分
触媒定盤取付部(図示せず)の回転数(触媒定盤31の回転数):10回転/分
加工圧力:150hPa
加工取り代:30nm
【0095】
まず、ガラス基板を、主表面を下方に向け、その裏面を真空チャック部22に吸着して保持した。
その後、アーム部51の長手方向移動(両矢印C)、アーム部51のスイング移動(両矢印E)、アーム部51の第1方向移動(両矢印F)、アーム部51の第2方向移動(両矢印G)により、ガラス基板の主表面が触媒定盤31の加工基準面33に対向するようにガラス基板を配置した。ガラス基板の配置位置は、ガラス基板及び触媒定盤31を回転させたときに、ガラス基板の主表面全体が、触媒定盤31の加工基準面33に接触又は接近することが可能な位置である。
【0096】
その後、ガラス基板を10.3回転/分の回転速度及び触媒定盤31を10回転/分の回転速度で回転させる。ここで、ガラス基板の回転方向と触媒定盤31の回転方向とが、互いに逆になるようにガラス基板及び触媒定盤31を回転させる。これにより、両者間に周速差をとり、触媒基準エッチングによる加工の効率を高めることができる。また、両者の回転数は、僅かに異なるように設定される。これにより、ガラス基板の主表面が触媒定盤31の加工基準面33上に対して異なる軌跡を描くように相対運動させることができ、触媒基準エッチングによる加工の効率を高めることができる。
【0097】
ガラス基板及び触媒定盤31を回転させながら、噴射ノズル42から触媒定盤31の加工基準面33上にTMAH水溶液を供給し、ガラス基板の主表面と加工基準面33との間にTMAH水溶液を介在させた。その状態で、ガラス基板の主表面を、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、触媒定盤31の加工基準面33に接触又は接近させた。その際、荷重制御手段(図示せず)によって、ガラス基板に加えられる荷重(加工圧力)が150hPaに制御された。
その後、加工取り代が30nmとなった時点で、ガラス基板及び触媒定盤31の回転及びTMAH水溶液の供給を止めた。そして、アーム部51の上下移動(両矢印D)により、ガラス基板の主表面を、触媒定盤31の加工基準面33から所定の距離だけ離した。
その後、真空装置(図示せず)の稼動を停止し、真空チャック部22からガラス基板を取り外した。
【0098】
その後、真空チャック部22から取り外したガラス基板を以下のように洗浄した。まず、純水洗浄を行ってガラス基板上に残留するTMAH水溶液を除去し、王水洗浄、塩酸洗浄、アルカリ洗浄を引き続いて行った後、純水によるリンス、乾燥を行った。
このようにして、ガラス基板を作製した。
【0099】
3.評価
触媒基準エッチングによる加工前後のガラス基板の主表面の表面粗さを、基板の中心の1μm×1μmの領域に対して、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した。
図5に示すように、加工前の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.157nmであった。
図5に示すように、加工後の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.047nmと良好であった。主表面の表面粗さは、触媒基準エッチングにより、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.157nmから0.047nmに向上した。
【0100】
触媒基準エッチングによる加工後のガラス基板の主表面の欠陥検査を、基板の周辺領域を除外した132mm×132mmの領域に対して、マスク/ブランク欠陥検査装置(Teron610:KLA−Tencor社製)を用いて行った。欠陥検査は、SEVD(Sphere Equivalent Volume Diameter)換算で21.5nmサイズの欠陥が検出可能な検査感度条件で行った。SEVDは、欠陥を半球状のものと仮定したときの直径の長さである。
図5に示すように、加工後の主表面の凹欠陥個数は5個、凸欠陥個数は6個と少なかった。
また、実施例1の方法により、ガラス基板を20枚作製したところ、全数、表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.049nm以下と良好であり、凹欠陥個数も7個以下、凸欠陥個数も8個以下と少なかった。
実施例1の方法により、低欠陥で高平滑な主表面を有するガラス基板が安定して得られた。
【0101】
B.多層反射膜付き基板の製造
次に、このようにして作製されたガラス基板の主表面上に、イオンビームスパッタ法により、シリコン膜(Si)からなる高屈折率層(膜厚4.2nm)とモリブデン膜(Mo)からなる低屈折率層(2.8nm)とを交互に、高屈折率層と低屈折率層とを1ペアとし、40ペア積層して、多層反射膜(膜厚280nm)を形成した。
その後、この多層反射膜上に、イオンビームスパッタ法により、ルテニウム(Ru)からなる保護膜(膜厚2.5nm)を形成した。
このようにして、多層反射膜付き基板を作製した。
【0102】
得られた多層反射膜付き基板についてEUV光(波長13.5nm)の反射率をEUV反射率測定装置により測定した。
ガラス基板主表面の高い平滑性により、保護膜表面も高い平滑性を保っており、反射率は64%と高反射率であった。
得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面の欠陥検査を、ガラス基板の欠陥検査と同様に行った。
加工後の保護膜表面の凹欠陥個数は8個、凸欠陥個数は9個と少なかった。位相欠陥検査も合わせて行ったが、高い平滑性を持つため、検査時のバックグラウンドノイズが少なく、高感度な位相欠陥検査を行うことができた。
実施例1の方法により、低欠陥で高平滑な保護膜表面を有する多層反射膜付き基板が得られた。
【0103】
C.反射型マスクブランクの製造
次に、このようにして作製された多層反射膜付き基板の保護膜上に、ホウ化タンタル(TaB)ターゲットを使用し、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N)ガスとの混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、タンタルホウ素窒化物(TaBN)からなる下層吸収体層(膜厚50nm)を形成し、さらに、下層吸収体膜上に、ホウ化タンタル(TaB)ターゲットを使用し、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O)ガスとの混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、タンタルホウ素酸化物(TaBO)からなる上層吸収体層(膜厚20nm)を形成することにより、下層吸収体層と上層吸収体層とからなる層吸収体膜(膜厚70nm)を形成した。
その後、多層反射膜付き基板の多層反射膜を形成していない裏面上に、クロム(Cr)ターゲットを使用し、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N)ガスとの混合ガス雰囲気中での反応性スパッタリングにより、クロム窒化物(CrN)からなる裏面導電膜(膜厚20nm)を形成した。
このようにして、低欠陥で高平滑な表面状態を維持したEUV露光用の反射型マスクブランクを作製した。
【0104】
D.反射型マスクの製造
次に、このようにして作製された反射型マスクブランクの吸収体膜上に、電子線描画(露光)用化学増幅型レジストをスピンコート法により塗布し、加熱及び冷却工程を経て、膜厚が150nmのレジスト膜を形成した。
その後、形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。
その後、このレジストパターンをマスクにして、吸収体膜のドライエッチングを行って、保護膜上に吸収体膜パターンを形成した。ドライエッチングガスとしては、塩素(Cl)ガスを用いた。
その後、残存するレジストパターンを剥離し、洗浄を行なった。
このようにして、低欠陥で高平滑な表面状態を維持したEUV露光用の反射型マスクを作製した。
【0105】
実施例2.
A.ガラス基板の製造
この実施例では、上面及び下面が研磨された6025サイズ(152.4mm×152.4mm×6.35mm)の合成石英ガラス基板を準備した。尚、合成石英ガラス基板は、上述の粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、超精密研磨加工工程を経て得られたものである。
それ以外は、実施例1と同様の方法により、ガラス基板を作製した。
【0106】
実施例1と同様に、触媒基準エッチングによる加工前後のガラス基板の主表面の表面粗さを測定した。
図5に示すように、加工前の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.127nmであった。
図5に示すように、加工後の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.045nmと良好であった。主表面の表面粗さは、触媒基準エッチングにより、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.127nmから0.045nmに向上した。
また、実施例1と同様に、触媒基準エッチングによる加工後のガラス基板の下面の欠陥検査を行った。
図5に示すように、加工後の主表面の凹欠陥個数は4個、凸欠陥個数は6個と少なかった。
また、実施例2の方法により、ガラス基板を20枚作製したところ、全数、表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.046nm以下と良好であり、凹欠陥個数も6個以下、凸欠陥個数も8個以下と少なかった。
実施例2の方法により、低欠陥で高平滑な主表面を有するガラス基板が安定して得られた。
【0107】
B.ハーフトーン型位相シフトマスクブランクの製造
次に、このようにして作製されたガラス基板の主表面上に、モリブデンシリサイド(MoSi)ターゲットを使用し、アルゴン(Ar)と窒素(N)と酸素(O)との混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、モリブデンシリサイド酸化窒化物(MoSiON)からなる光半透過膜(膜厚88nm)を形成した。ラザフォード後方散乱分析法で分析した光半透過膜の膜組成は、Mo:5原子%、Si:30原子%、O:39原子%、N:26原子%であった。光半透過膜の露光光に対する透過率は6%であり、露光光が光半透過膜を透過することにより生じる位相差は180度であった。
【0108】
その後、光半透過膜上に、クロム(Cr)ターゲットを使用し、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、クロム酸化炭化窒化物(CrOCN)層(膜厚30nm)を形成し、さらに、その上に、クロム(Cr)ターゲットを使用し、アルゴン(Ar)と窒素(N)との混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、クロム窒化物(CrN)層(膜厚4nm)を形成し、クロム酸化炭化窒化物(CrOCN)層とクロム窒化物(CrN)層との積層からなる遮光層を形成した。さらに、この遮光層上に、クロム(Cr)ターゲットを使用し、アルゴン(Ar)と二酸化炭素(CO)と窒素(N)とヘリウム(He)との混合ガス雰囲気中で反応性スパッタリングを行い、クロム酸化炭化窒化物(CrOCN)からなる表面反射防止層(膜厚14nm)を形成した。このようにして、遮光層と表面反射防止層とからなる遮光膜を形成した。
このようにして、低欠陥で高平滑な表面状態を維持したArFエキシマレーザー露光用のハーフトーン型位相シフトマスクブランクを作製した。
【0109】
C.ハーフトーン型位相シフトマスクの製造
次に、このようにして作製されたハーフトーン型位相シフトマスクブランクの遮光膜上に、電子線描画(露光)用化学増幅型レジストをスピンコート法により塗布し、加熱及び冷却工程を経て、膜厚が150nmのレジスト膜を形成した。
その後、形成されたレジスト膜に対し、電子線描画装置を用いて所望のパターン描画を行った後、所定の現像液で現像してレジストパターンを形成した。
その後、このレジストパターンをマスクにして、遮光膜のドライエッチングを行って、光半透過膜上に遮光膜パターンを形成した。ドライエッチングガスとしては、塩素(Cl)と酸素(O)との混合ガスを用いた。
【0110】
その後、レジストパターン及び遮光膜パターンをマスクにして、光半透過膜のドライエッチングを行って、光半透過膜パターンを形成した。ドライエッチングガスとしては、六フッ化硫黄(SF)とヘリウム(He)との混合ガスを用いた。
その後、残存するレジストパターンを剥離し、再度レジスト膜を塗布し、転写領域内の不要な遮光膜パターンを除去するためのパターン露光を行った後、このレジスト膜を現像してレジストパターンを形成した。
その後、ウェットエッチングを行って、不要な遮光膜パターンを除去した。
その後、残存するレジストパターンを剥離し、洗浄を行った。
このようにして、低欠陥で高平滑な表面状態を維持したArFエキシマレーザー露光用のハーフトーン型位相シフトマスクを作製した。
【0111】
尚、この実施例では、モリブデンシリサイド酸化窒化物(MoSiON)からなるからなる光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクや位相シフトマスクブランクについて本発明を適用したが、モリブデンシリサイド窒化物(MoSiN)からなる光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクや位相シフトマスクブランクについても、本発明を適用できる。また、単層の光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクや位相シフトマスクブランクに限らず、多層構造の光半透過膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクや位相シフトマスクブランクについても、本発明を適用できる。また、多層構造の遮光膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクや位相シフトマスクブランクに限らず、単層の遮光膜を有するハーフトーン型位相シフトマスクや位相シフトマスクブランクについても、本発明を適用できる。また、ハーフトーン型位相シフトマスクブランクや位相シフトマスクブランクに限らず、レベンソン型位相シフトマスクブランクや位相シフトマスクブランク、クロムレス型位相シフトマスクブランクや位相シフトマスクブランクについても、本発明を適用できる。
【0112】
また、この実施例では、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、超精密研磨加工工程を経て得られたガラス基板の主表面に対して、触媒基準エッチングによる加工を施す場合について本発明を適用したが、実施例1で行った局所加工工程およびタッチ研磨工程を経て得られたガラス基板の主表面に対して触媒基準エッチングによる加工を施す場合についても、本発明を適用することができる。
【0113】
実施例3.〜実施例5.
これら実施例3〜5では、上述の実施例1の基板加工工程でガラス基板に加えた荷重(加工圧力)を、それぞれ、100hPa、70hPa、50hPaとした以外は、実施例1と同様の方法により、ガラス基板、多層反射膜付き基板を作製した。
また、実施例1と同様に、上述の実施例3〜5について、ガラス基板を20枚作製したところ、全数、主表面の表面粗さは、図5に示すように、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.053nm以下と良好であった。欠陥個数についても、図5に示すように、実施例3の場合は、実施例1よりは劣るものの、実施例3での加工後の主表面の凹欠陥個数は8個、凸欠陥個数は5個と少なかった。実施例4の場合は、実施例3よりは劣るものの、実施例4での加工後の主表面の凹欠陥個数は10個、凸欠陥個数は4個と少なかった。実施例5の場合は、実施例4よりも劣るものの、実施例5での加工後の主表面の凹欠陥個数は14個、凸欠陥個数は5個と少なかった。
さらに、実施例3〜5によって得られた多層反射膜付き基板を使用し、実施例1と同様にして、EUV露光用の反射型マスクブランク、反射型マスクを作製した。
その結果、実施例3〜5のいずれも、低欠陥で高平滑な表面状態を維持したEUV露光用の反射型マスクブランク、EUV露光用の反射型マスクを得ることができた。
【0114】
また、実施例1、3〜5の加工後のガラス基板上の凹欠陥(ピット)個数から明らかなように、荷重(加工圧力)を、50hPa(実施例5)、70hPa(実施例4)、100hPa(実施例3)、150hPa(実施例1)とした場合、その荷重(加工圧力)が増加するに従って、凹欠陥(ピット)個数が減少することを確認できた。これは、ガラス基板と加工基準面との間に介在する有機アルカリ水溶液(TMAH水溶液)からなる液膜が荷重(加工圧力)の増加に伴って薄膜化され、その薄膜化した液膜が均一に維持された状態で、ガラス基板の主表面に対する触媒基準エッチングによる加工を行うことができるので、ガラス基板の主表面上の凹欠陥(ピット)個数を減らすことができ、低欠陥で高平滑な主表面を有するガラス基板を得ることができることを示していると考えられる。
【0115】
比較例1.
この比較例1では、実施例1の基板加工工程において処理流体として用いたTMAH水溶液に代えて、KOH(pH11)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、ガラス基板、多層反射膜付き基板を作製した。
【0116】
実施例1と同様に、触媒基準エッチングによる加工前後のガラス基板の主表面の表面粗さを測定した。
図5に示すように、加工後の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.071nmと不十分であった。
また、実施例1と同様に、触媒基準エッチングによる加工後のガラス基板の主表面の欠陥検査を行った。
図5に示すように、加工後の主表面の凹欠陥個数は24個、凸欠陥個数は81個と多かった。
また、比較例1の方法により、ガラス基板を20枚作製したところ、主表面の表面粗さが、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.060nm以上となり、また、凹欠陥個数も23個以上、凸欠陥個数も80個以上と多かった。
このように、比較例1は、実施例1よりも、加工後の主表面の二乗平均平方根粗さ(RMS)が悪く、KOHを用いることで生じるケイ酸塩が微小異物となって、凸欠陥個数が多いことが分かった。
このため、比較例1の方法により、低欠陥で高平滑な主表面を有するガラス基板は得られなかった。
【0117】
実施例1と同様に、得られた多層反射膜付き基板についてEUV光(波長13.5nm)の反射率を測定した。
ガラス基板主表面の不十分な平滑性により、保護膜表面の平滑性も不十分であり、反射率は63%と実施例1よりも低反射率であった。
また、実施例1と同様に、得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面の欠陥検査を行った。
保護膜表面の凹欠陥個数は30個、凸欠陥個数は86個と多かった。
比較例1の方法により、低欠陥で高平滑な保護膜表面を有する多層反射膜付き基板は得られなかった。
また、比較例1の方法により、低欠陥で高平滑な表面を有するEUV露光用の反射型マスクブランク及び反射型マスクは得られなかった。
【0118】
比較例2.
この比較例2では、荷重(加工圧力)を100hPaとした実施例3の基板加工工程において処理流体として用いたTMAH水溶液に代えて、純水を用いた以外は、実施例3と同様の方法により、ガラス基板、多層反射膜付き基板を作製した。
【0119】
実施例1の方法に準拠した実施例3と同様に、触媒基準エッチングによる加工前後のガラス基板の主表面の表面粗さを測定した。
図5に示すように、加工後の主表面の表面粗さは、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.052nmであった。
また、実施例1の方法に準拠した実施例3と同様に、触媒基準エッチングによる加工後のガラス基板の主表面の欠陥検査を行った。
図5に示すように、加工後の主表面の凹欠陥個数は311個、凸欠陥個数は114個と多かった。
また、比較例2の方法により、ガラス基板を20枚作製したところ、表面粗さが、二乗平均平方根粗さ(RMS)で0.050nm以上となり、また、凹欠陥個数も305個以上、凸欠陥個数も108個以上と多かった。
このように、比較例2は、実施例3と異なり、ガラス基板の主表面と触媒定盤31の加工基準面33との間で、水切れ現象が生じたため、凹欠陥個数、凸欠陥個数が多いことが分かった。
このため、比較例2の方法により、低欠陥で高平滑な主表面を有するガラス基板は得られなかった。
【0120】
実施例1の方法に準拠した実施例3と同様に、得られた多層反射膜付き基板についてEUV光(波長13.5nm)の反射率を測定した。
ガラス基板主表面の不十分な平滑性により、保護膜表面の平滑性も不十分であり、反射率は63%と実施例1よりも低反射率であった。
また、実施例1の方法に準拠した実施例3と同様に、得られた多層反射膜付き基板の保護膜表面の欠陥検査を行った。
保護膜表面の凹欠陥個数は322個、凸欠陥個数は123個と多かった。
比較例2の方法により、低欠陥で高平滑な保護膜表面を有する多層反射膜付き基板は得られなかった。
また、比較例2の方法により、低欠陥で高平滑な表面を有するEUV露光用の反射型マスクブランク及び反射型マスクは得られなかった。
【0121】
尚、上述した実施例では、反射型マスクブランク用基板や位相シフトマスクブランク用基板の主表面に対して、触媒基準エッチングによる加工を施す場合について本発明を適用したが、磁気記録媒体用のガラス基板、バイナリーマスクブランク、ナノインプリント用マスクブランクの主表面に対して、触媒基準エッチングによる加工を施す場合についても、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0122】
1…基板加工装置、2…基板支持手段、3…基板表面創製手段、4…処理流体供給手段、5…駆動手段、6…チャンバー、7…相対運動手段、8…荷重制御手段、20…ヘッドロッド、21…ヘッド部、22…真空チャック部、31…触媒定盤、32…定盤本体、33…加工基準面、41…供給管、42…噴射ノズル、51…アーム部、52…軸部、53…土台部、54…ガイド、61…開口部、62…排出口、63…底部、71…軸部、M…基板、M1…下面、M2…上面、101…多孔質基材、102…触媒物質、103…孔(開口)。
図1
図2
図3
図4
図5