(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
磁性部材(8)の表面(9)に当接可能に設けられ、前記磁性部材内の磁束密度を検出し、検出した磁束密度に応じた磁束密度信号を出力する複数の磁束密度検出部(21、22、23、24)と、
複数の前記磁束密度検出部の間に前記磁性部材の表面から離れる方向に並ぶよう設けられ、前記磁束密度検出部が当接可能な前記磁性部材の表面近傍の磁界強度を検出し、検出した磁界強度に応じた磁界強度信号を出力する複数の磁界強度検出部(31、32、33、34、37、39、72、74)と、
複数の前記磁界強度検出部が出力する複数の磁界強度信号に基づいて前記磁性部材内の磁界強度を算出可能な第一算出部(40、50、60)と、
前記第一算出部及び前記磁束密度検出部と電気的に接続し、前記第一算出部が算出する前記磁性部材内の磁界強度及び前記磁束密度検出部が検出する前記磁性部材内の磁束密度に基づいて前記磁性部材の磁気特性を算出する第二算出部(45)と、
複数の前記磁界強度検出部のうち少なくとも二つ以上の磁界強度検出部と前記第一算出部とを電気的に接続し、前記少なくとも二つ以上の磁界強度検出部が出力する複数の磁界強度信号の合成信号(S10、S201、S202)を前記第一算出部に送信する出力信号線(311、312、331、332)と、
を備えることを特徴とする磁気特性検出装置。
前記少なくとも二つ以上の磁界強度検出部は、磁界の変化に応じて誘起電圧が発生可能なコイル(32、34、37、39)を少なくとも一つ含み、かつ、ホール素子(31、33)または磁気抵抗素子を少なくとも一つ含み、
前記出力信号線は、前記コイルと前記ホール素子または前記磁気抵抗素子とに電気的に接続することを特徴とする請求項1に記載の磁気特性検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態による磁気特性検出装置を
図1〜
図3に基づいて説明する。
【0010】
最初に、磁気特性検出装置1の構成を
図1〜4に基づいて説明する。
磁気特性検出装置1は、 支持部10、磁束センサ20、磁界センサ30、電力供給線313、314、出力信号線311、312、「第一算出部」としての磁界強度算出部40、「第二算出部」としての磁気特性算出部45などを備える。磁気特性検出装置1は、例えば、自動車用電動機固定子など、磁性材料から形成される磁性部材8の局所における鉄損を磁束センサ20が検出する磁性部材8内の磁束密度と磁界センサ30が検出する磁性部材8内の磁界強度との関係に基づいて作成されるヒステリシスループの面積から算出する。
【0011】
支持部10は、第一支持部材11、第二支持部材12、第三支持部材13、可動部材14、コイルばね15などから形成されている。
【0012】
第一支持部材11は、支持部10において磁性部材8から最も離れた位置に設けられる略棒状の部材である。第一支持部材11は、磁性部材8側の中央に可動部材14の端部を往復移動可能に収納する収容穴111を有する。
【0013】
第二支持部材12は、第一支持部材11の径方向外側及び磁性部材8側に設けられる有底筒状の部材である。第二支持部材12は、第一支持部材11とともに可動部材14が往復移動可能に収容される収容空間100を形成する。第二支持部材12が磁性部材8側に有する底部には、磁束センサ20が挿通される複数の挿通孔121を有する。
【0014】
第三支持部材13は、第二支持部材12の底部の径方向外側及び磁性部材8側に設けられる有底筒状の部材である。第三支持部材13は、挿通孔121に連通可能に形成され磁束センサ20が挿通される複数の挿通孔131を有する。第三支持部材13の略中央であって複数の挿通孔131に囲まれる部位には、磁界センサ30を搭載する基材16が設けられている。
【0015】
可動部材14は、収容空間100に往復移動可能に収容されている。可動部材14は、軸部141、フランジ部142などから形成されている。軸部141の磁性部材8とは反対側の端部は、収容穴111の内壁に摺動しつつ収容穴111に収容されている。軸部141の磁性部材8側には、フランジ部142が設けられている
フランジ部142は、収容空間100の内径と同じ大きさを有している。これにより、可動部材14は、軸部141の外壁が収容穴111の内壁に摺動しつつ、かつ、フランジ部142の外壁が収容空間100の内壁に摺動しつつ往復移動する。フランジ部142の磁性部材8側の端面143は、磁束センサ20に当接可能に形成されている。
【0016】
コイルばね15は、軸部141の径方向外側に設けられている、コイルばね15の一端はフランジ部142の磁性部材8と反対側の端面に当接している、コイルばね15の他端は、第一支持部材11の磁性部材8側の端面に当接している。コイルばね15の付勢力は、第一支持部材11と可動部材14とを離間する方向に作用する。これにより、コイルばね15は、可動部材14を介して磁束センサ20を磁性部材8側に付勢可能である。
【0017】
磁束センサ20は、複数の探針から構成されている。第一実施形態では、磁束センサ20は、
図3に示すように、四つの「磁束密度検出部」としての探針21、22、23、24を有する。探針21、22、23、24は、磁性部材8の表面9と当接可能に設けられている。探針21、22、23、24は、磁性部材8と接触していないとき、先端が同一平面上で菱形の頂点に位置するよう設けられている。探針21、22、23、24は、信号線(
図1に示す信号線211、231など)によって磁気特性算出部45に電気的に接続されている。第一実施形態では、二つの探針21、23は、磁束密度の一方の成分(
図3に示す仮想線VL3方向の成分)を検出する。また、二つの探針22、24は、磁束密度の他方の成分(
図3に示す仮想線VL1方向の成分)を検出する。
【0018】
磁界センサ30は、ホール素子とコイルとから構成されている。第一実施形態では、「磁界強度検出部」としてのホール素子31、33と「磁界強度検出部」としてのコイル32、34とから構成されている。
【0019】
ホール素子31、33は、
図2、3に示すように、基材16の異なる表面にそれぞれ設けられている。
ホール素子31は、
図3に示すように、基材16の仮想線VL1に平行な表面上の基板161に搭載されている。ホール素子31には、ホール素子31に電力を供給する電力供給線313、314、及び、基板161上に形成されている出力信号線311、312と電気的に接続している。電力供給線313、314は、ホール素子31に対して磁性部材8の表面9に垂直な方向からホール素子31に接続している。また、出力信号線311、312は、ホール素子31に対して磁性部材8の表面9に平行な方向からホール素子31に接続している。
【0020】
ホール素子31は、電力が供給されると、ホール素子31が設けられている位置の磁界強度の一方の成分(
図3に示す仮想線VL3方向の成分)を検出する。ホール素子31は、検出した磁界強度に応じた磁界強度信号を出力信号線311、312を介して磁界強度算出部40に送信する。出力信号線311と出力信号線312とは、一部が重なるよう形成されている(
図2に示す領域315)。
【0021】
ホール素子33は、
図3に示すように、基材16の仮想線VL3に平行な表面上の基板162に搭載されている。ホール素子33には、ホール素子33に電力を供給する電力供給線、及び、基板162上に形成されている出力信号線331、332と電気的に接続している。ホール素子33の電力供給線は、ホール素子33に対して磁性部材8の表面9に垂直な方向からホール素子33に接続している。また、出力信号線331、332は、ホール素子33に対して磁性部材8の表面9に平行な方向からホール素子33に接続している。
【0022】
ホール素子33は、電力が供給されると、ホール素子33が設けられている位置の磁界強度の他方の成分(
図3に示す仮想線VL1方向の成分)を検出する。ホール素子33は、検出した磁界強度に応じた磁界強度信号を出力信号線331、332を介して磁界強度算出部40に送信する。出力信号線331と出力信号線332とは、一部が重なるよう形成されている(
図2に示す領域335)。
【0023】
二つのコイル32、34は、ホール素子31、33に対し磁性部材8とは反対側にホール素子31、33に並ぶよう配置されている。
コイル32は、ホール素子31の磁性部材8とは反対側に一定の間隔を空けて設けられている出力信号線311、312の一部から形成されている(
図2の二点鎖線32)。コイル32は、ホール素子31に比べ磁性部材8から離れた位置の二点鎖線32に囲まれた領域の磁界強度の一方の成分を検出し、当該検出した磁界強度に応じた磁界強度信号を出力する。コイル32が出力する磁界強度信号とホール素子31が出力する磁界強度信号とは、出力信号線311、312によって磁界強度算出部40に送信される。
【0024】
コイル34は、ホール素子33の磁性部材8とは反対側に一定の間隔を空けて設けられている出力信号線331、332の一部から形成されている(
図2の二点鎖線34)。コイル34は、ホール素子33に比べ磁性部材8から離れた位置の二点鎖線34に囲まれた領域の磁界強度の他方の成分を検出し、当該検出した磁界強度に応じた磁界強度信号を出力する。コイル34が出力する磁界強度信号とホール素子33が出力する磁界強度信号とは、出力信号線331、332によって磁界強度算出部40に送信される。
【0025】
磁界強度算出部40は、電源41、信号処理部42、演算部43などから構成されている。電源41は、ホール素子31、33と電気的に接続している。信号処理部42は、入力される信号の位相が検知可能な、いわゆる、二位相型ロックインアンプであって、出力信号線311、312、331、332及び基準信号線420と電気的に接続している。演算部43は、信号線421、422を介して信号処理部42と電気的に接続している。磁界強度算出部40は、ホール素子31、33、及び、コイル32、34が設けられている位置における磁界強度に基づいて磁性部材8内の磁界強度を算出する。磁界強度算出部40の作用の詳細は後述する。
【0026】
磁気特性算出部45は、信号線401を介して磁界強度算出部40と電気的に接続している。また、磁気特性算出部45は、信号線211、231を介して磁束センサ20と電気的に接続している。磁気特性算出部45は、磁界強度算出部40が出力する磁界強度信号及び磁束センサ20が出力する磁束密度信号に基づいてヒステリシスループを作成し磁性部材8の磁気特性を算出する。
【0027】
次に、磁気特性検出装置1の作用について、
図4、5に基づいて説明する。
【0028】
最初に、磁性部材8に所定値の外部磁場をかけ磁性部材8を磁化した後、当該外部磁場を取り除く。これにより、磁性部材8は、磁性部材8の磁気特性に応じて分極するため、磁性部材8内には磁界が形成される。
このとき、磁性部材8の表面9に当接している探針21と探針23、及び、探針22と探針24とには、磁性部材8内の磁束密度の変化によって誘起電圧が発生する。磁束センサ20は、探針21、22、23、24に発生している誘起電圧を磁束密度信号として磁気特性算出部45に出力する。
【0029】
また、磁性部材8内に磁界が形成されているとき、磁界強度算出部40の電源41がホール素子31、33に電力を供給する。電力が供給されたホール素子31、33は、ホール素子31、33が設けられている位置の磁界強度を検出し、出力信号線311、312、331、332を介して当該磁界強度に応じた電気信号を磁界強度算出部40の信号処理部42に出力する。また、コイル32、34は、コイル32、34が設けられている位置の磁界強度を検出し、出力信号線311、312、331、332を介して当該磁界強度に応じた電気信号を磁界強度算出部40の信号処理部42に出力する。このとき、出力信号線311、312は、コイル32が出力する磁界強度信号とホール素子31が出力する磁界強度信号との合成信号を送信する。また、出力信号線331、332は、コイル34が出力する磁界強度信号とホール素子33が出力する磁界強度信号との合成信号を送信する。
【0030】
信号処理部42では、出力信号線311、312、331、332が送信する磁界強度信号からホール素子31、33及びコイル32、34のそれぞれが検出した磁界強度に応じた磁界強度信号を分離する。ここでは、
図4に基づいて、出力信号線311、312が送信するホール素子31の磁界強度信号とコイル32の磁界強度信号との合成信号を例にして、信号処理部42における信号処理の方法を説明する。
図4に示すように、ホール素子31の磁界強度信号とコイル32の磁界強度信号との合成信号S10が信号処理部42に入力されると、信号処理部42では、合成信号S10に基準信号線420によって入力される基準信号を掛け合わせる。これにより、合成信号S10からホール素子31の磁界強度信号S11とコイル32の磁界強度信号S21とを分離する。分離された二つの磁界強度信号S11、S12は、演算部43に出力される。なお、
図4に示す合成信号S10、磁界強度信号S11、S12は、横軸に時間tを示し、縦軸に出力電圧Voutを示している。
【0031】
演算部43では、信号処理部42が出力する複数の磁界強度信号に基づいて磁性部材8内の磁界強度を算出する。ここでは、
図4に示した二つの磁界強度信号S11、S21に基づいて磁性部材8内の磁界強度を算出する方法を
図5に基づいて説明する。
【0032】
図5は、分極した磁性部材8内の磁界強度と磁性部材8の深さ方向の位置との関係を示す特性図である。
図5では、横軸に分極した磁性部材8近傍及び内部の磁界強度を示し、縦軸に磁性部材8の深さ方向の位置を示す。
図5の横軸では、磁性部材8の表面9を0とし、プラスの方向は、磁性部材8の外部側に表面9から離れる方向を示し、マイナスの方向は、磁性部材8の内部側に表面9から離れる方向を示す。
図5には、実際の磁界強度と磁性部材8の深さ方向との位置との関係を点線DL0で示す。磁性部材8内の磁界強度の真の値は、磁性部材8の表面9から磁性部材8の内部側の距離L0における磁界強度Ms0である。
【0033】
信号処理部42が出力するホール素子31の磁界強度信号S11及びコイル32の磁界強度信号S21は、磁性部材8の外部側に離れる方向において異なる位置、具体的には、ホール素子31の中心C31及びコイル32の中心C32の位置に対応する磁界強度となる(
図2参照)。ホール素子31の中心C31は、
図2に示すように、磁性部材8の表面9から距離L31の距離にあることから、
図5において、ホール素子31が検出した磁界強度M31は、距離L31にプロットされる(
図5中の点P31)。同様に、コイル32の中心C32は、
図2に示すように、磁性部材8の表面9から距離L32の距離にあることから、
図5において、コイル32が検出した磁界強度M32は、距離L32にプロットされる(
図5中の点P32)。
図5上にプロットした点P31と点P32とを結ぶ外挿線EL1に基づいて磁性部材8の表面9から磁性部材8の内部方向の距離L0における磁界強度Ms3を算出する。
演算部43では、上述したような演算を行い、磁性部材8内の磁界強度の一方の成分である磁界強度Ms3を算出する。演算部43では、ホール素子33及びコイル34においても同じように行い、磁性部材8内の磁界強度の一方の成分を算出する。演算部43は、算出した磁界強度を磁気特性算出部45に出力する。
【0034】
磁気特性算出部45は、磁性部材8にかける外部磁場の大きさを変更したときの探針21、22、23、24に発生している誘起電圧と演算部43が出力する磁界強度との組み合わせに基づいてヒステリシスループを形成する。磁気特性算出部45では、このヒステリシスループの大きさから磁性部材8の鉄損を求める。
【0035】
(a)第一実施形態による磁気特性検出装置1は、磁界強度を検出するホール素子31とコイル32及びホール素子33とコイル34とが磁性部材8から離れる方向に並ぶよう設けられている。ホール素子31及びコイル32には、ホール素子31の磁界強度信号S11とコイル32の磁界強度信号S21とを送信する出力信号線311、312が電気的に接続している。また、ホール素子33及びコイル34には、ホール素子33の磁界強度信号とコイル34の磁界強度信号とを送信する出力信号線331、332が電気的に接続している。すなわち、第一実施形態による磁気特性検出装置1では、二つの磁界強度を検出可能な構成は出力信号線を共有しており、二つの磁界強度信号の合成信号を一組の出力信号線によって演算部43に送信している。これにより、ホール素子及びコイルのそれぞれに出力信号線を設ける場合に比べ、出力信号線が形成される基板161、162の大きさを小さくすることができる。したがって、基板161の両側に位置する探針21と探針23との間の距離、及び、基板162の両側に位置する探針22と探針24との間に距離を短くすることができるため、磁束密度の空間分解能が向上し、磁性部材8の磁気特性の検出精度を向上することができる。
【0036】
(b)また、磁気特性検出装置1では、ホール素子31の出力信号線311、312の一部がコイル32を形成している。また、ホール素子33の出力信号線331、332の一部がコイル34を形成している。ホール素子の出力信号線の一部がコイルを形成する効果について、
図5に基づいて、磁界強度を検出可能な構成として二つのホール素子を備えた磁気特性検出装置と比較しつつ説明する。
【0037】
比較例の磁気特性検出装置では、ホール素子が磁性部材8から離れる方向に二つ並ぶよう設けられている。このため、ホール素子の大きさによっては、磁性部材8に近い側のホール素子の中心と磁性部材8から遠い側のホール素子の中心との間の距離が磁気特性検出装置1に比べ長くなる。具体的には、
図5に示すように、比較例の磁気特性検出装置において、磁性部材8に近い側のホール素子の中心を磁気特性検出装置1が備えるホール素子31の中心C31と同じ位置とし、磁性部材8から遠い側のホール素子の中心から磁性部材8の表面9までの距離を距離L32より長い距離L92とすると、比較例におけるホール素子の中心間の距離(L92−L31)は、第一実施形態のホール素子31の中心C31とコイル32の中心C32との距離(L32−L31)に比べ長くなる。このため、比較例において磁性部材8に近い側のホール素子が検出する磁界強度がプロットされる点P31と磁性部材8に遠い側のホール素子が検出する磁界強度がプロットされる点P92とを結ぶ外挿線EL9から磁界強度Ms9が求められる。
一方、ホール素子31の中心C31とコイル32の中心C32との距離(L32−L31)が距離(L92−L31)に比べ短い磁気特性検出装置1では、外挿線EL3から磁界強度Ms9に比べ磁界強度Ms0に近い値の磁界強度Ms3を算出する。
第一実施形態では、ホール素子31の出力信号線311、312、及び、ホール素子33の出力信号線331、332の一部をコイル32、34とすることによって磁性部材8の外部側に離れる方向における磁界強度の空間分解能が比較的向上するため、磁界強度の真の値に近い磁界強度を算出することができる。これにより、磁性部材8の磁気特性の検出精度をさらに向上することができる。
【0038】
(c)磁気特性検出装置1では、磁界強度を検出可能な構成としてホール素子31とコイル32との組み合わせ、及び、ホール素子33とコイル34との組み合わせを備えている。磁気特性検出装置1では、ホール素子31、33が出力する磁界強度信号の出力位相とコイル32、34が出力する磁界強度信号の出力位相とは異なるため、入力される信号の位相が検知可能なロックインアンプを用いて合成信号から容易にホール素子31、33の磁界強度信号とコイル32、34の磁界強度信号とを分離することができる。これにより、磁気特性検出装置1の構成を簡素にすることができる。
【0039】
(d)また、磁気特性検出装置1は、磁界強度を検出可能な構成としてコイルを備えているため、コイルに電力を供給する線が不要となる。これにより、磁気特性検出装置1の構成をさらに簡素にすることができる。
【0040】
(e)また、磁気特性検出装置1では、磁界強度を検出可能な構成としてコイルを備えているため、ホール素子の数を少なくしつつ磁性部材8の外部側に離れる方向の複数の位置における磁界強度を検出することができる。したがって、磁気特性検出装置1の部品点数を低減し、製造コストを低減することができる。
【0041】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態による磁気特性検出装置を
図6、7に基づいて説明する。第二実施形態は、磁界強度算出部の構成が第一実施形態と異なる。なお、第一実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0042】
第二実施形態による磁気特性検出装置は、支持部10、磁束センサ20、磁界センサ30、電力供給線313、314、出力信号線311、312、331、332、「第一算出部」としての磁界強度算出部50、磁気特性算出部45などを備える。
【0043】
磁界強度算出部50は、電源41、信号処理部52、演算部43などから構成されている。信号処理部52は、出力信号線311、312、331、332と電気的に接続している。磁界強度算出部50は、ホール素子31、33及びコイル32、34の位置における磁界強度に基づいて磁性部材8内の磁界強度を算出する。磁界強度算出部50は、信号線521、522を介して演算部43と電気的に接続している。磁界強度算出部50は、算出した磁性部材8内の磁界強度を演算部43に出力する。
【0044】
次に、第二実施形態による磁気特性検出装置の作用について、
図6、7に基づいて説明する。
【0045】
磁性部材8に外部磁場をかけ磁性部材8を磁化した後、当該外部磁場を取り除き磁性部材8内を分極する。このとき、第二実施形態による磁気特性検出装置では、電源41がホール素子31、33への電力の供給のオンオフを繰り返し、ホール素子31、33に電力をパルス供給する。信号処理部52では、電源41がホール素子31、33への電力の供給を停止しているときのホール素子31、33及びコイル32、34が出力する磁界強度信号に対する処理と、電源41がホール素子31、33へ電力を供給しているときのホール素子31、33及びコイル32、34が出力する磁界強度信号に対する処理とが異なる。
【0046】
電源41がホール素子31への電力の供給を停止しているとき、ホール素子31、33には電力が供給されないため、ホール素子31、33から磁界強度信号は出力されない。これにより、信号処理部52は、「第一工程」として、
図6に示すように、出力信号線311、312によって送信される合成信号S201は、コイル32が出力する磁界強度信号のみである。
【0047】
また、電源41がホール素子31へ電力を供給しているとき、出力信号線311、312によって送信される合成信号S202は、ホール素子31の磁界強度信号とコイル32の磁界強度信号の合成信号である。そこで、信号処理部52は、「第二工程」として、
図7に示すように、信号処理部52に入力される合成信号S202から電源41がホール素子31への電力の供給を停止しているときの磁界強度信号S221を差し引き、合成信号S202からホール素子31の磁界強度信号S211を分離する。なお、電源41のオンオフにおける信号処理部52の信号処理は、ホール素子33及びコイル34の組み合わせにおいても同様である。
信号処理部52は、ホール素子31、33の磁界強度信号、及び、コイル32、34の磁界強度信号を演算部43に出力する。演算部43では、第一実施形態と同じように、磁性部材8内の磁界強度を算出する。信号処理部52は、算出した磁界強度を磁気特性算出部45に出力する。
【0048】
第二実施形態では、電源41によるホール素子31、33への電力の供給を交互にオンオフすることによって信号処理部52におけるホール素子が検出した磁界強度に応じた電気信号とコイルが検出した磁界強度に応じた電気信号とを分離する。これにより、基準信号を用いることなく一組の出力信号線によって出力された合成信号から二つの磁界強度信号を分離することができる。したがって、第二実施形態は、第一実施形態の効果を奏するとともに、磁気特性検出装置の製造コストをさらに低減することができる。
【0049】
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態による磁気特性検出装置を
図8に基づいて説明する。第三実施形態は、磁界強度算出部の構成が第一実施形態と異なる。なお、第一実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0050】
第三実施形態による磁気特性検出装置は、支持部10、磁束センサ20、磁界センサ35、電力供給線313、314、出力信号線311、312、331、332、「第一算出部」としての磁界強度算出部60、磁気特性算出部45などを備える。
【0051】
磁界センサ35は、二つのホール素子31、33と二つの「磁界強度検出部」としてのコイル37、39とから構成されている。第三実施形態では、コイル37は、基材16の温度を検出可能な材料から形成されており、例えば、環境温度によって抵抗が変化する測温抵抗体として機能する。
【0052】
磁界強度算出部60は、電源41、信号処理部42、温度検出部64、演算部63などから構成されている。
【0053】
温度検出部64は、出力信号線311、312と電気的に接続している。すなわち、出力信号線311、312は、信号処理部42及び温度検出部54のそれぞれと電気的に接続している。温度検出部64は、出力信号線311、312が送信する信号に基づいて、ホール素子31及びコイル37が搭載されている基板161の温度を検出する。温度検出部64は、信号線641を介して基板161の温度に応じた信号を演算部63に出力する(
図9参照)。
【0054】
演算部63は、信号処理部42及び温度検出部64と電気的に接続している。演算部63は、信号処理部42が出力する複数の磁界強度信号及び温度検出部64が出力する基板161の温度に応じた信号に基づいて磁性部材8内の磁界強度を算出する。
【0055】
第三実施形態では、ホール素子31と同じ温度となる基板161の温度をコイル37によって検出する。これにより、基板161に搭載されているホール素子31の温度特性を考慮してホール素子31が設けられている位置における磁性部材8の磁界強度を算出することができる。したがって、第三実施形態は、第一実施形態の効果を奏するとともに、磁性部材8の磁気特性の検出精度をさらに向上することができる。
【0056】
また、磁界強度を検出可能な構成とは別異に基材16の温度を検出可能な構成を有する場合に比べ、基板161、162の体格を小さくすることができる。これにより、基板161の両側に位置する探針21と探針23との間の距離、及び、基板162の両側に位置する探針22と探針24との間に距離を第一実施形態と同じ程度とすることができる。
【0057】
(第四実施形態)
次に、本発明の第四実施形態による磁気特性検出装置を
図10に基づいて説明する。第四実施形態は、磁界センサの構成が第二実施形態と異なる。なお、第一実施形態と実質的に同一の部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0058】
第四実施形態による磁気特性検出装置は、支持部10、磁束センサ20、磁界センサ70、電力供給線313、314、723、724、出力信号線311、312、331、332、磁界強度算出部50、磁気特性算出部45などを備える。
【0059】
磁界センサ70は、複数のホール素子から構成されている。第四実施形態では、四つの「磁界強度検出部」としてのホール素子31、33、72、74から構成されている。
二つのホール素子72、74は、二つのホール素子31、33に対し磁性部材8から離れる方向にホール素子31、33に並ぶよう配置されている。
【0060】
ホール素子72は、基板161に搭載されている。ホール素子72には、ホール素子72に電力を供給する電力供給線723、724、及び、出力信号線311、312と電気的に接続している。ホール素子72は、電力が供給されると、ホール素子72が設けられている位置における磁界強度の一方の成分を検出する。ホール素子72は、出力信号線311、312を介して検出した磁界強度に応じた磁界強度信号を磁界強度算出部50に送信する。
【0061】
ホール素子74は、基板162に搭載されている。ホール素子74には、ホール素子74に電力を供給する電力供給線、及び、出力信号線331、332と電気的に接続している。ホール素子74は、電力が供給されると、ホール素子74が設けられている位置における磁界強度の他方の成分を検出する。ホール素子74は、出力信号線331、332を介して検出した磁界強度に応じた磁界強度信号を磁界強度算出部50に送信する。
【0062】
次に、第四実施形態による磁気特性検出装置の作用について説明する。
磁性部材8に外部磁場をかけ磁性部材8を磁化した後、当該外部磁場を取り除き磁性部材8内を分極する。このとき、第四実施形態による磁気特性検出装置では、電源41がホール素子31に電力を供給する一方、ホール素子72への電力の供給を停止する。これにより、信号処理部52には、ホール素子31の磁界強度信号のみが入力される。信号処理部52では、出力信号線311、312が送信する信号をホール素子31の磁界強度信号として演算部43に出力する。
【0063】
また、磁性部材8内を分極しているとき、第四実施形態による磁気特性検出装置では、電源41がホール素子31への電力の供給を停止する一方、ホール素子72に電力を供給する。これにより、信号処理部52には、ホール素子72の磁界強度信号のみが入力される。信号処理部52では、出力信号線311、312が送信する信号をホール素子72の磁界強度信号として演算部43に出力する。
演算部73では、信号処理部52が交互に送信する磁界強度信号に基づいて磁性部材8内の磁界強度を算出する。
【0064】
第四実施形態では、ホール素子31、72が出力する二つの磁界強度信号が出力信号線311、312によって磁界強度算出部50に送信可能となっている。電源41による電力の供給を一組のホール素子内で切り替えることによって磁性部材8の外部側に離れる方向の複数の位置における磁界強度を検出することができる。したがって、二つのホール素子のそれぞれに出力信号線を設ける場合に比べ、出力信号線が形成される基板161、162の大きさを小さくすることができ、磁束密度の空間分解能が向上するため、磁性部材8の磁気特性の検出精度を向上することができる。
【0065】
(他の実施形態)
第一〜三実施形態では、一組の磁界強度を検出可能な構成は、ホール素子とコイルとの組み合わせとした。磁気抵抗素子とコイルとの組み合わせであってもよい
【0066】
上述の実施形態では、二つの磁界強度を検出可能な構成を組み合わせ磁界強度の一つの成分を複数の位置において検出するとした(例えば、第一実施形態において、ホール素子31とコイル32との組み合わせやホール素子33とコイル34との組み合わせなど)。磁界の一つの方向の成分に対して三つ以上の磁界強度を検出可能な構成を有してもよい。
【0067】
第三実施形態では、コイルは、測温抵抗体として機能するとした。熱電対またはサーミスタ測温体として機能してもよい。
【0068】
第三実施形態では、二つのコイルのうち一つが測温抵抗体として機能するとした。複数のコイルがある場合、少なくとも一つのコイルが測温抵抗体として機能すればよい。
【0069】
第四実施形態では、二つのホール素子の組み合わせによって磁界強度の一つの方向の成分を検出するとした。しかしながら、磁界強度を検出可能な構成はこれに限定されない。二つの磁気抵抗素子の組み合わせであってもよいし、一つのホール素子と一つの磁気抵抗素子との組み合わせであってもよい。
【0070】
上述の実施形態では、磁気特性検出装置は、磁束密度の一つの方向の成分に対して二つの探針を備えることから、磁束密度の二つの方向の成分を検出するために四つの探針を備えるとした。また、磁界強度の一つの方向の成分に対して二つの磁界強度を検出可能な構成を備えることから、磁界強度の二方向の成分を検出するために四つの磁界強度を検出可能な構成を備えるとした。しかしながら、探針及び磁界強度を検出可能な構成はこれに限定されない。磁束密度の一つの方向の成分のみを検出するため二つの探針のみを備えてもよい。また、磁界強度の一つの方向の成分のみを検出するため二つの磁界強度を検出可能な構成を備えてもよい。
【0071】
上述の実施形態では、磁束密度検出部として複数の探針を備えるとした。しかしながら、磁束密度検出部の構成はこれに限定されない。
【0072】
以上、本発明はこのような実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲の種々の形態で実施可能である。