(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
最も外径が大きい部分である大径部と、前記大径部よりも外径が小さい部分と、軸線の方向に延びる軸孔と、を有するスパークプラグ用の筒状の絶縁体の製造方法であって、
前記絶縁体の前記大径部に対応する部分よりも前記軸線の方向の後端側の部分である後部成形部の外形と同じ形状の内面を有し前記内面によって空間を形成するとともに、前記内面のうち互いに異なる一部分を形成する複数の型部からなる後部成形型の前記空間内に、前記絶縁体の前記軸孔のうち前記後部成形部に形成される部分と同じ形状の外面を有する棒部を配置することと、
前記後部成形型の前記内面と前記棒部の前記外面との間に形成された空間へ材料を射出することによって前記後部成形部を成形することと、
前記後部成形型を前記複数の型部に分解することによって、前記後部成形部を離型することと、
を含み、
前記複数の型部は、前記後部成形型の前記内面のうち周方向に1周する第1部分内面を形成する第1型部と、前記第1型部よりも前記軸線の方向の先端側に配置され前記後部成形型の前記内面のうち前記周方向に1周する第2部分内面を形成する第2型部と、を含み、
前記後部成形部を離型することは、前記第1型部を前記後部成形部に対して前記後端側に向かって動かし始めることと、前記第1型部を動かし始めることよりも後に前記第2型部を前記後部成形部に対して前記後端側に向かって動かし始めることと、によって、前記後部成形型を前記複数の型部に分解することを含む、
スパークプラグ用の絶縁体の製造方法。
最も外径が大きい部分である大径部と、前記大径部よりも外径が小さい部分と、軸線の方向に延びる軸孔と、を有するスパークプラグ用の筒状の絶縁体を成形するための成形型であって、
前記絶縁体の前記大径部に対応する部分よりも前記軸線の方向の後端側の部分である後部成形部の外形と同じ形状の内面を有し前記内面によって空間を形成する後部成形型と、
前記絶縁体の前記軸孔のうち前記後部成形部に形成される部分と同じ形状の外面を有し、前記後部成形型の前記空間内に配置される棒部と、
を備え、
前記後部成形型は、前記後部成形型の前記内面のうち互いに異なる一部分を形成する複数の型部からなる、
成形型。
【発明を実施するための形態】
【0021】
A.第1実施形態:
A1.スパークプラグの構成:
図1は、スパークプラグの一実施形態の断面図である。図中には、スパークプラグ100の中心軸CLが示されている(「軸線CL」とも呼ぶ)。図示された断面は、中心軸CLを含む断面である。以下、中心軸CLに平行な方向を「軸線CLの方向」、または、単に「軸線方向」または「前後方向」とも呼ぶ。中心軸CLを中心とする円の径方向を、単に「径方向」とも呼び、中心軸CLを中心とする円の円周方向を「周方向」とも呼ぶ。中心軸CLに平行な方向のうち、
図1における下方向を先端方向Df、または、前方向Dfと呼び、上方向を後端方向Dfr、または、後方向Dfrとも呼ぶ。先端方向Dfは、後述する端子金具40から電極20、30に向かう方向である。また、
図1における先端方向Df側をスパークプラグ100の先端側と呼び、
図1における後端方向Dfr側をスパークプラグ100の後端側と呼ぶ。
【0022】
スパークプラグ100は、絶縁体10(「絶縁碍子10」とも呼ぶ)と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40と、主体金具50と、導電性の第1シール部60と、抵抗体70と、導電性の第2シール部80と、先端側パッキン8と、タルク9と、第1後端側パッキン6と、第2後端側パッキン7と、を有している。
【0023】
絶縁体10は、中心軸CLに沿って延びて絶縁体10を貫通する貫通孔12(以下「軸孔12」とも呼ぶ)を有する略円筒状の部材である。絶縁体10は、アルミナを焼成して形成されている(他の絶縁材料も採用可能である)。絶縁体10は、先端側から後方向Dfrに向かって順番に並ぶ、脚部13と、第1縮外径部15と、先端側胴部17と、第3縮外径部14と、鍔部19と、第2縮外径部11と、後端側胴部18と、を有している。鍔部19は、絶縁体10のうちの外径が最も大きい部分である(大径部19とも呼ぶ)。絶縁体10のうちの大径部19以外の部分の外径は、大径部19の外径よりも小さい。第1縮外径部15の外径は、後端側から先端側に向かって、徐々に小さくなる。絶縁体10の第1縮外径部15の近傍(
図1の例では、先端側胴部17)には、後端側から先端側に向かって内径が徐々に小さくなる第1縮内径部16が形成されている。第2縮外径部11の外径は、先端側から後端側に向かって、徐々に小さくなる。第3縮外径部14の外径は、後端側から先端側に向かって、徐々に小さくなる。図中には、絶縁体10の後部分10rの軸線CLの方向の範囲が示されている。後部分10rは、絶縁体10のうちの大径部19よりも後方向Dfr側の特定の部分である。
【0024】
図1に示すように、絶縁体10の軸孔12の先端側には、中心電極20が挿入されている。中心電極20は、中心軸CLに沿って延びる棒状の軸部27と、軸部27の先端に接合された第1チップ29と、を有している。軸部27は、先端側から後方向Dfrに向かって順番に並ぶ、脚部25と、鍔部24と、頭部23と、を有している。脚部25の先端(すなわち、軸部27の先端)に、第1チップ29が接合されている(例えば、レーザ溶接)。第1チップ29の少なくとも一部は、絶縁体10の先端側で、軸孔12の外に露出している。鍔部24の前方向Df側の面は、絶縁体10の第1縮内径部16によって、支持されている。また、軸部27は、外層21と芯部22とを有している。外層21は、芯部22よりも耐酸化性に優れる材料、すなわち、内燃機関の燃焼室内で燃焼ガスに曝された場合の消耗が少ない材料(例えば、純ニッケル、ニッケルとクロムとを含む合金、等)で形成されている。芯部22は、外層21よりも熱伝導率が高い材料(例えば、純銅、銅合金、等)で形成されている。芯部22の後端部は、外層21から露出し、中心電極20の後端部を形成する。芯部22の他の部分は、外層21によって被覆されている。ただし、芯部22の全体が、外層21によって覆われていても良い。また、第1チップ29は、軸部27よりも放電に対する耐久性に優れる材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属、タングステン(W)、それらの金属から選択された少なくとも1種を含む合金)を用いて形成されている。
【0025】
絶縁体10の軸孔12の後端側には、端子金具40の一部が挿入されている。端子金具40は、導電性材料(例えば、低炭素鋼等の金属)を用いて形成されている。
【0026】
スパークプラグ100の後方向Dfr側には、プラグキャップ400が装着される。プラグキャップ400は、例えば、凹部412を有する樹脂製のキャップ本体410と、凹部412内に固定された金属製の端子接続部材420と、凹部412を囲むようにキャップ本体410に固定されたリング状のゴム製のカバー430と、を有している。端子接続部材420には、図示しないプラグコードが接続されている。端子接続部材420は、端子金具40に接触することによって、プラグコードと端子金具40とを電気的に接続する。カバー430は、絶縁体10(特に後端側胴部18)の外周面と密着する。これにより、プラグキャップ400がスパークプラグ100から外れることが抑制される。また、外部から凹部412内への水の浸入が抑制される。
【0027】
絶縁体10の軸孔12内において、端子金具40と中心電極20との間には、電気的なノイズを抑制するための略円柱形状の抵抗体70が配置されている。抵抗体70は、例えば、導電性材料(例えば、炭素粒子)と、セラミック粒子(例えば、ZrO
2)と、ガラス粒子(例えば、SiO
2−B
2O
3−Li
2O−BaO系のガラス粒子)と、を含む材料を用いて形成されている。抵抗体70と中心電極20との間には、導電性の第1シール部60が配置され、抵抗体70と端子金具40との間には、導電性の第2シール部80が配置されている。シール部60、80は、例えば、抵抗体70の材料に含まれるものと同じガラス粒子と、金属粒子(例えば、Cu)と、を含む材料を用いて、形成されている。中心電極20と端子金具40とは、抵抗体70とシール部60、80とを介して、電気的に接続されている。
【0028】
主体金具50は、中心軸CLに沿って延びて主体金具50を貫通する貫通孔59を有する略円筒状の部材である。主体金具50は、低炭素鋼材を用いて形成されている(他の導電性材料(例えば、金属材料)も採用可能である)。主体金具50の貫通孔59には、絶縁体10が挿入されている。主体金具50は、絶縁体10の外周に固定されている。主体金具50の先端側では、絶縁体10の先端(本実施形態では、脚部13の先端側の部分)が、貫通孔59の外に露出している。主体金具50の後端側では、絶縁体10の後端(本実施形態では、後端側胴部18の後端側の部分)が、貫通孔59の外に露出している。
【0029】
主体金具50は、先端側から後端側に向かって順番に並ぶ、胴部55と、座部54と、変形部58と、工具係合部51と、加締部53と、を有している。座部54は、鍔状の部分である。胴部55は、座部54から中心軸CLに沿って前方向Dfに向かって延びる略円筒状の部分である。胴部55の外周面には、内燃機関の取付孔にねじ込むためのねじ山52が形成されている。座部54とねじ山52との間には、金属板を折り曲げて形成された環状のガスケット5が嵌め込まれている。
【0030】
主体金具50は、変形部58よりも前方向Df側に配置された縮内径部56を有している。縮内径部56の内径は、後端側から先端側に向かって、徐々に小さくなる。主体金具50の縮内径部56と、絶縁体10の第1縮外径部15と、の間には、先端側パッキン8が挟まれている。先端側パッキン8は、鉄製でO字形状のリングである(他の材料(例えば、銅等の金属材料)も採用可能である)。
【0031】
工具係合部51は、スパークプラグ100を締め付けるための工具(例えば、スパークプラグレンチ)と係合するための部分である。本実施形態では、工具係合部51の外観形状は、中心軸CLに沿って延びる略六角柱である。また、加締部53は、絶縁体10の第2縮外径部11よりも後端側に配置され、主体金具50の後端(すなわち、後方向Dfr側の端)を形成する。加締部53は、径方向の内側に向かって屈曲されている。加締部53の前方向Df側では、主体金具50の内周面と絶縁体10の外周面との間に、第1後端側パッキン6とタルク9と第2後端側パッキン7とが、前方向Dfに向かってこの順番に、配置されている。本実施形態では、これらの後端側パッキン6、7は、鉄製でC字形状のリングである(他の材料も採用可能である)。
【0032】
スパークプラグ100の製造時には、加締部53が内側に折り曲がるように加締められる。そして、加締部53が前方向Df側に押圧される。これにより、変形部58が変形し、パッキン6、7とタルク9とを介して、絶縁体10が、主体金具50内で、先端側に向けて押圧される。先端側パッキン8は、第1縮外径部15と縮内径部56との間で押圧され、そして、主体金具50と絶縁体10との間をシールする。以上により、主体金具50が、絶縁体10に、固定される。
【0033】
接地電極30は、本実施形態では、棒状の軸部37と、軸部37の先端部31に接合された第2チップ39と、を有している。軸部37の後端は、主体金具50の先端面57(すなわち、前方向Df側の面57)に接合されている(例えば、抵抗溶接)。軸部37は、主体金具50の先端面57から前方向Dfに向かって延び、中心軸CLに向かって曲がって、先端部31に至る。先端部31は、中心電極20の前方向Df側に配置されている。先端部31の表面のうち中心電極20側の表面に、第2チップ39が接合されている(例えば、レーザ溶接)。第2チップ39は、軸部37よりも放電に対する耐久性に優れる材料(例えば、イリジウム(Ir)、白金(Pt)等の貴金属、タングステン(W)、それらの金属から選択された少なくとも1種を含む合金)を用いて形成されている。中心電極20の第1チップ29と接地電極30の第2チップ39とは、火花放電のための間隙gを形成する。接地電極30は、間隙gを隔てて中心電極20の先端部と対向している。
【0034】
接地電極30の軸部37は、軸部37の表面の少なくとも一部を形成する外層35と、外層35内に埋設された芯部36と、を有している。外層35は、耐酸化性に優れる材料(例えば、ニッケルとクロムとを含む合金)を用いて形成されている。芯部36は、外層35よりも熱伝導率が高い材料(例えば、純銅)を用いて形成されている。
【0035】
A2.製造方法:
図2は、スパークプラグ100の製造方法の一例を示すフローチャートである。ステップS100では、絶縁体10が製造される。
図2のステップS100の右側には、ステップS100の詳細が示されている。本実施形態では、ステップS103で、未焼成の絶縁体が成形され、そして、ステップS106で、絶縁体が焼成される。なお、焼成前に、成形された絶縁体の形状を所定形状に加工してもよい(例えば、端部を研磨してもよい)。ステップS103の成形方法の詳細については、後述する。
【0036】
ステップS110では、スパークプラグ100の他の部材が準備される。具体的には、中心電極20と、端子金具40と、主体金具50と、棒状の接地電極30とが、公知の方法で製造される。また、シール部60、80のそれぞれの材料粉末と、抵抗体70の材料粉末とが、準備される。なお、ステップS100、S110による複数の部材の準備は、各部材毎に独立に行われる。
【0037】
ステップS120では、絶縁体10と中心電極20と第1シール部60と抵抗体70と第2シール部80と端子金具40とを有する組立体が作成される。組立体の製造方法としては、公知の方法を採用可能である。例えば、中心電極20、第1シール部60の材料、抵抗体70の材料、第2シール部80の材料を、絶縁体10の貫通孔12に、後方向Dfr側の開口12rから、この順番に挿入する。そして、絶縁体10を加熱した状態で端子金具40を開口12rから貫通孔12に挿入することによって、組立体を製造する。
【0038】
ステップS130では、主体金具50に棒状の接地電極30が接合される。そして、ステップS140では、主体金具50に組立体が固定される。具体的には、主体金具50の貫通孔59内に、先端側パッキン8と、ステップS120の組立体と、第2後端側パッキン7と、タルク9と、第1後端側パッキン6とが配置される。絶縁体10の第1縮外径部15と主体金具50の縮内径部56との間には、先端側パッキン8が介在される。そして、主体金具50の加締部53を内側に折り曲げるように加締めることによって、主体金具50と絶縁体10とが組み付けられる。
【0039】
ステップS150では、棒状の接地電極30が曲げられて、間隙gが形成される。ここで、間隙gの距離が所定の距離になるように、接地電極30が曲げられる。以上により、スパークプラグ100が完成する。
【0040】
図3、
図4、
図5は、未焼成の絶縁体を成形する工程(
図2:S103)の手順の例を示すフローチャートである。
図4は
図3の続きを示し、
図5は
図4の続きを示している。図中では、各ステップを示す箱の中に、各ステップで用いられる成形型の概略断面図が示されている。図中には、中心軸CLと方向Df、Dfrとが示されている。成形型に対する中心軸CLと方向Df、Dfrとの配置は、完成した絶縁体10に対する中心軸CLと方向Df、Dfrとの配置を成形型の中の成形済の絶縁体に適用して得られる配置と、同じである。各概略断面図は、中心軸CLを含む平面による断面の概略図である。以下、成形済かつ未焼成の絶縁体を「成形体」とも呼ぶ。また、成形型に対する中心軸CLに平行な方向を「成形型の前後方向」とも呼ぶ。
【0041】
ステップS200では、外型200を構成する複数の型部210、220、231、232が、組み合わされる。外型200は、絶縁体10の成形体の外周面を成形する成形型である。
図6は、外型200の分解斜視図である。本実施形態では、外型200は、前部成形型210と、前部成形型210の後方向Dfr側に配置される中部成形型220と、中部成形型220の後方向Dfr側に配置される後部成形型230と、を有している。以下、前部成形型210を「前型部210」とも呼び、中部成形型220を「中型部220」とも呼び、後部成形型230を「後型部230」とも呼ぶ。後型部230は、第1型部231と、第1型部231よりも前方向Df側に配置される第2型部232と、で構成されている。これらの4個の型部231、232、220、210は、この順番に、前方向Dfに向かって並んで配置される。
図6に示すように、4個の型部231、232、220、210は、いずれも、軸線CLの周りを1周する内周面(内面とも呼ぶ)を形成する。これらの型部231、232、220、210は、例えば、金属を用いて形成されている(他の材料も採用可能である)。
【0042】
外型200(
図3)の内面10oは、絶縁体10の成形体の外周面を成形する成形面である(「成形面10o」とも呼ぶ)。この成形面10oは、4個の型部231、232、220、210のそれぞれの内面を接続することによって、形成される。
図3では、外型200の成形面10oの各部分の符号として、絶縁体10の対応する部分の符号の末尾に文字「o」を付加した符号が、付されている。中型部220の内面19oは、大径部19の外周面を成形する。前型部210の内面は、大径部19よりも前方向Df側の部分の外周面を成形する。後型部230の内面は、大径部19よりも後方向Dfr側の部分の外周面を成形する。
【0043】
前型部210は、内面14o、17o、15o、13oを有している。これらの内面14o、17o、15o、13oは、前方向Dfに向かってこの順番に並ぶ、連続な内面である。内面14oは、中型部220の内面19oの前方向Df側に接続され、第3縮外径部14の外周面を成形する。内面14oの内径は、前方向Dfに向かって徐々に小さくなる。内面17oは、先端側胴部17の外周面を成形し、内面15oは、第1縮外径部15の外周面を成形し、内面13oは、脚部13の外周面を成形する。内面15oの内径は、前方向Dfに向かって徐々に小さくなる。
【0044】
後型部230は、内面18o、11oを有している。後型部230の内面18o、11oは、第1型部231の内面と第2型部232の内面とに分割されている。第1型部231は、内面18oの後方向Dfr側の部分である内面18o1を有している。第2型部232は、内面18oの前方向Df側の部分である内面18o2と、内面18o2の前方向Df側に接続された内面11oと、を有している。第1型部231の内面18o1は、後端側胴部18の後方向Dfr側の部分の外周面を成形する。第2型部232の内面18o2は、内面18o1の前方向Df側に接続され、後端側胴部18の前方向Df側の部分の外周面を成形する。第2型部232の内面11oは、第2縮外径部11の外周面を成形する。内面11oの内径は、前方向Dfに向かって徐々に大きくなる。内面11oの前方向Df側には、内面19oが接続される。
【0045】
以上説明した外型200の各内面の形状は、絶縁体10の成形体の対応する部分の外形と同じである。そして、ステップS200では、複数の型部231、232、220、210を組み合わせる(接続する)ことによって、各型部231、232、220、210の内面が接続されて、成形面10oが形成される。この成形面10oの形状は、絶縁体10の成形体の外形と同じである。成形面10oに囲まれる空間Siは、絶縁体10の成形体に対応する。なお、
図3、
図4では、組み合わされた複数の型部(例えば、型部231、232、220、210)の間の隙間が説明のために誇張して示されているが、実際には、その隙間は、絶縁体10の製造に影響を与えない程度に、十分に小さい。
【0046】
次のステップS210では、空間Si内に、棒部300が配置される。棒部300は、軸線CLに沿って延びる棒状の部材である。棒部300は、例えば、金属を用いて形成されている(他の材料も採用可能である)。棒部300の外面12iは、絶縁体10(
図1)の貫通孔12の内周面を成形する成形面である(「成形面12i」とも呼ぶ)。成形面12iの形状は、成形体の軸孔(絶縁体10の軸孔12に対応する)の内面の形状と同じである。このように、棒部300も成形型の一部である、ということができる。
【0047】
棒部300の外面12iは、3個の部分18i、16i、13iに区分される。第1外面18iは、絶縁体10の第1縮内径部16よりも後端方向Dfr側の部分の内周面を成形する。第2外面16iは、第1外面18iの前方向Df側に接続され、絶縁体10の第1縮内径部16の内周面を成形する。第2外面16iの外径は、前方向Dfに向かって徐々に小さくなる。第3外面13iは、第2外面16iの前方向Df側に接続され、絶縁体10の第1縮内径部16よりも前方向Df側の部分の内周面を成形する。
【0048】
ステップS210では、棒部300は、後方向Dfr側から、空間Si内に挿入される。外型200と棒部300とは、外型200の内面10oと棒部300の外面12iとによって挟まれる空間Sxと、空間Sxに連通し先端方向Df側に位置するリング状の第1開口OPfと、空間Sxに連通し後端方向Dfr側に位置するリング状の第2開口OPrと、を形成する。ステップS210では、更に、第2開口OPrを閉じる後端型290が、外型200の後方向Dfr側に配置される。空間Sxの形状は、絶縁体10の成形体の形状と、同じである。
【0049】
次のステップS220では、第1開口OPfに射出装置のノズル500が接続される。ノズル500は、第1開口OPfを通じて、材料を空間Sx内に射出する。このように、第1開口OPfは、ゲートとして用いられる。また、この射出によって、成形体10zが成形される。材料としては、例えば、アルミナと焼結助剤とを含む材料が、用いられる。成形体10z(すなわち、絶縁体10)を成形する成形型600は、外型200と棒部300と後端型290とを有している。
【0050】
図中には、成形体10zの後部成形部10zrの軸線CLの方向の範囲と軸孔12zとが示されている。後部成形部10zrは、絶縁体10(
図1)の後部分10rに対応する部分である。軸孔12zは、絶縁体10の軸孔12に対応する貫通孔である。後型部230の内面18o、11oは、後部成形部10zrの外形と同じ形状の部分を含んでいる。そして、空間Si内に配置された棒部300のうちの後部成形型230に囲まれる空間Sp(S200)内に位置する部分の外面12iは、絶縁体10の軸孔12のうち後部成形部10zrに形成される部分と同じ形状の部分を含んでいる。すなわち、後型部230の内面18o、11oと棒部300の外面12iとの間に挟まれる空間Srが、後部成形部10zrに対応する。
【0051】
図中には、後型部230の内面18o、11oのうち後部成形部10zrを成形する部分の軸線CLに平行な方向の長さLzr(すなわち、後部成形部10zrの軸線CLに平行な方向の長さLzr)が示されている。この長さLzrが長い場合には、
図1の後部分10rが長いので、端子金具40と主体金具50との間の距離が長くなる。従って、端子金具40から絶縁体10の外周面上を通って主体金具50へ至る意図しない放電を抑制できる。例えば、長さLzrが、30mm以上であることが好ましい。なお、スパークプラグ100が過剰に長くなることを抑制するためには、長さLzrが短いことが好ましく、例えば、長さLzrが60mm以下であることが好ましい。
【0052】
図中には、位置Poの近傍の拡大図が示されている。位置Poは、後部成形部10zrの前方向Df側の端の位置を示している(「先端位置Po」と呼ぶ)。先端位置Poは、軸線CLを含む平らな断面において、内面18oの直線部分のうちの最も内面11oに近い部分18Loと、内面11oの直線部分のうちの最も内面18oから遠い部分11Loと、を延長して得られる交点Poの位置である。長さLzrは、後部成形部10zrの軸線CLに平行な方向の長さ、すなわち、先端位置Poと、成形体10zの後方向Dfr側の端10zeと、の間の軸線CLに平行な方向の距離と、同じである。
【0053】
また、図中には、後型部230の内面18o、11oと棒部300の外面12iとの間の距離のうちの最小値Dmが示されている(「最小距離Dm」と呼ぶ)。スパークプラグ100の小型化のためには、絶縁体10の外径、ひいては、成形体10zの外径が細いことが好ましい。成形体10zの外径が細い場合、後部成形部10zrの肉厚、すなわち、最小距離Dmも小さくなる。ここで、最小距離Dmが、2.6mm以下であってよい。なお、後型部230の取り外しの際の後部成形部10zrの変形を抑制するためには、最小距離Dmが大きいことが好ましく、例えば、最小距離Dmが1.5mm以上であることが好ましい。また、成形体10zの後方向Dfr側の端部の角を面取りするために、第1型部231の内面18o1の後方向Dfr側の端部において、内径が後方向Dfrに向かって徐々に小さくなっていてもよい。この場合、最小距離Dmは、このような面取りのための部分を除いた残りの部分から特定される。例えば、最小距離Dmは、後型部230の内面18o、11oのうちの、後方向Dfr側の端からの軸線CLに平行な距離が3mm以下である後端部10zreを除いた残りの部分から、特定される。
【0054】
後型部230の構成として、最小距離Dmが2.6mm以下であり、かつ、長さLzrが30mm以上であるような構成を採用してもよい。この場合には、スパークプラグ100の小型化と、意図しない放電の抑制と、の両方を、容易に実現できる。この場合にも、後述するように、後型部230は複数の型部231、232に分解して成形体10zから取り外されるので、離型による後部成形部10zrの変形を抑制できる。ただし、最小距離Dmが2.6mmより大きくてもよい。また、長さLzrが30mm未満であってもよい。
【0055】
次のステップS230(
図4)では、後端型290と第1型部231とが成形体10zから取り外される。後端型290は、成形体10zに対して後方向Dfrに向かって動かされ、そして、成形体10zから取り外される。第1型部231は、成形体10zに対して後方向Dfrに向かって動かされ、そして、成形体10zから取り外される。次のステップS240では、第2型部232が、成形体10zに対して後方向Dfrに向かって動かされ、そして、成形体10zから取り外される。成形体10zに対して第2型部232を動かし始めることは、成形体10zに対して第1型部231を動かし始めた後に行われる。本実施形態では、第1型部231の全体が、成形体10zの後方向Dfr側の端10zeよりも後方向Dfr側に移動した後に、第2型部232が成形体10zに対して動かされる。
【0056】
なお、第1型部231と第2型部232とは、いずれも、後方向Dfrに向かって内径が大きくなる部分を有していない。従って、型部231、232を後方向Dfrに動かすことによって、成形体10zが変形することを抑制しつつ、型部231、232を成形体10zから取り外すことができる。
【0057】
次のステップS250では、前型部210を成形体10zに対して前方向Dfに向かって動かすことによって、前型部210を成形体10zから取り外す。前型部210は、前方向Dfに向かって内径が大きくなる部分を有していない。従って、前型部210を前方向Dfに動かすことによって、成形体10zが変形することを抑制しつつ、前型部210を成形体10zから取り外すことができる。
【0058】
次のステップS260(
図5)では、中型部220を成形体10zに対して前方向Dfに向かって動かすことによって、中型部220を成形体10zから取り外す。なお、中型部220を成形体10zに対して後方向Dfrに向かって動かしてもよい。次のステップS270では、棒部300を成形体10zに対して後方向Dfrに向かって動かすことによって、棒部300を成形体10zから取り外す。なお、本実施形態では、棒部300は、後方向Dfrに向かって外径が小さくなる部分を有していない。従って、棒部300を後方向Dfrに動かすことによって、成形体10zが変形することを抑制しつつ、棒部300を成形体10zから取り外すことができる。以上により、成形体10zから全ての成形型が取り外される。
【0059】
以上のように、材料の射出によって成形体10zが成形された後、後型部230を複数の型部231、232に分解することによって、成形体10zが離型される(
図4:S230、S240)。ここで、第1型部231は、後型部230の内面のうち周方向に一周する一部分を形成し、第2型部232は、第1型部231よりも前方向Df側で、後型部230の内面のうち周方向に一周する一部分を形成する。従って、第1型部231の取り外しと第2型部232の取り外しとを、別々に行うことができる。具体的には、第1型部231を後部成形部10zrに対して後方向Dfr側に向かって動かし始めた後に、第2型部232が後部成形部10zrに対して後方向Dfr側に向かって動かされる。従って、第1型部231と第2型部232とが一体となって後部成形部10zrに対して移動を開始する場合と比べて、移動を開始する型部と後部成形部10zrとの間の接触し得る最大面積を小さくできるので、移動を開始する型部から後部成形部10zrに力(例えば、摩擦力)が印加されることを抑制できる。この結果、離型による後部成形部10zrの変形を抑制できる。例えば、後部成形部10zrの一部が後方向Dfrに引っ張られ、後部成形部10zrの一部の密度が低下することを抑制できる。
【0060】
特に、第1型部231は、後型部230の内面18o、11oのうち、軸線CLに平行な方向の後方向Dfr側の一部の範囲に含まれる部分を形成する。第2型部232は、後型部230の内面18o、11oのうち、軸線CLに平行な方向の前方向Df側の一部の範囲に含まれる部分を形成する。このように、複数の型部231、232は、後型部230の内面18o、11oのうち、軸線CLに平行な方向の範囲が互いに異なる一部分を形成する。従って、第1型部231の移動を開始した後に第2型部232の移動を開始するという手順を、容易に実現できる。
【0061】
また、
図1で説明したように、絶縁体10の後端側胴部18には、プラグキャップ400のカバー430が装着される。仮に、
図1に示す断面において、軸線CLに対する後端側胴部18の外周面の傾き(後方向Dfrに向かって外径が小さくなるような傾き)が、大きい場合には、後端側胴部18とカバー430との密着性が低下し得る。後端側胴部18とカバー430との密着性が低下すると、後端側胴部18とカバー430との間に隙間が生じ、端子金具40からその隙間を通って主体金具50へ至る放電が生じる場合がある。このような意図しない放電を抑制するためには、軸線CLに対する後端側胴部18の外周面の傾きが小さいことが好ましい。このように小さい傾きを有する後端側胴部18を成形するためには、型部231、232(
図3)の内面の傾きが小さいことが好ましい。
【0062】
図3のステップS200に示す第1傾きd1a/d1bは、第1型部231の内面18o1の傾きを示し、第2傾きd2a/d2bは、第2型部232の内面18o2の傾きを示している。これらの傾きd1a/d1b、d2a/d2bは、軸線CLに平行な位置の変化d1b、d2bに対する軸線CLに垂直な位置の変化d1a、d2aの比率を示している。傾きd1a/d1b、d2a/d2bがゼロであることは、内面18o1、18o2が軸線CLに平行であることを示している。傾きd1a/d1b、d2a/d2bがゼロよりも大きいことは、内面18o1、18o2の内径が後方向Dfrに向かって小さくなることを示している。
【0063】
プラグキャップ400(ここでは、カバー430)と絶縁体10との密着性を高めるためには、これらの傾きd1a/d1b、d2a/d2bが小さいことが好ましい。例えば、第1傾きd1a/d1bが5/1000以下であることが好ましい。同様に、第2傾きd2a/d2bが5/1000以下であることが好ましい。このような構成を採用する場合であっても、上述したように、後型部230は複数の型部231、232に分解して成形体10zから取り外されるので、離型による後部成形部10zrの変形を抑制できる。
【0064】
なお、内面18o1のうちの5/1000以下の傾きを有する部分は、内面18o1の一部であってもよい。同様に、内面18o2のうちの5/1000以下の傾きを有する部分は、内面18o2の一部であってもよい。また、第1型部231の内面と第2型部232の内面との少なくとも一方において、全体に亘って傾きが5/1000を超えていても良い。いずれの場合も、後型部230は、後方向Dfrに向かって内径が大きくなる部分を有さずに、後方向Dfrに向かって内径が変化しない部分と、後方向Dfrに向かって内径が小さくなる部分と、の少なくとも一方のみを有することが好ましい。この構成によれば、後型部230の型部231、232を後方向Dfrに移動させることによって、後部成形部10zrの変形を抑制しつつ、型部231、232を容易に成形体10zから取り外すことができる。
【0065】
また、近年では、内燃機関の性能向上のために、スパークプラグ100に印加される電圧が高くなる傾向にある。電圧が高い場合には、端子金具40から絶縁体10(特に、後部分10r)の外周面上を通って主体金具50へ至る経路を通る放電が生じ易い。このような意図しない放電を抑制する構成としては、例えば、長い後部分10rを有する構成を採用可能である。
【0066】
図7は、後部分10rの長さの説明図である。図中には、絶縁体10の軸線CLを含む平面での断面図が示されている。図中の位置Pは、後部分10rの前方向Df側の端の位置を示している(「先端位置P」と呼ぶ)。図の下部には、先端位置Pの近傍の拡大図が示されている。先端位置Pは、以下のように特定される。軸線CLを含む断面上において、後端側胴部18の表面の直線部分のうちの最も第2縮外径部11に近い部分18Lと、第2縮外径部11の表面の直線部分のうちの最も後端側胴部18から遠い部分11Lと、を延長して得られる交点Pが、先端位置Pとして採用される。図中の長さLrは、後部分10rの軸線CLに平行な方向の長さ、すなわち、先端位置Pと、絶縁体10の後方向Dfr側の端10eと、の間の軸線CLに平行な距離である(「後部分長Lr」と呼ぶ)。
【0067】
後部分長Lrを長くすれば、端子金具40と主体金具50との間の距離が長くなるので、意図しない放電を抑制できる。例えば、後部分長Lrが30mm以上であることが好ましい。このような構成を採用する場合であっても、上述したように、後型部230は複数の型部231、232に分解して成形体10zから取り外されるので、離型による後部成形部10zrの変形を抑制できる。なお、後部分長Lrが長い場合には、スパークプラグ100が大きくなる。スパークプラグ100が過剰に大きくなることを抑制するためには、後部分長Lrが短いことが好ましく、例えば、後部分長Lrが60mm以下であることが好ましい。なお、後部分長Lrが30mm未満であってもよい。
【0068】
また、
図7中には、後部分10rの肉厚のうち最小の肉厚Tmが示されている。本実施形態では、軸孔12の内径は、絶縁体10の後方向Dfr側の開口12rを含む一部分12pにおいて、軸孔12の他の部分における内径よりも、若干大きい。従って、最小肉厚Tmは、この部分12pにおける肉厚である。なお、絶縁体10の後方向Dfr側の端部の角が面取りされてもよい。最小肉厚Tmは、後部分10rのうちの面取りされた部分を除いた残りの部分から特定される。例えば、最小肉厚Tmは、後部分10rのうちの、後方向Dfr側の端10eからの軸線CLに平行な距離が3mm以下である後端部10reを除いた残りの部分から、特定される。
【0069】
スパークプラグ100の小型化のためには、絶縁体10の径が細いことが好ましい。絶縁体10の径が細い場合には、後部分10rの最小肉厚Tmも小さくなる。ここで、最小肉厚Tmが2.6mm以下であってもよい。最小肉厚Tmが小さい場合には、後部成形部10zrから後型部230を取り外すときに後部成形部10zrが変形し易い。しかし、上述したように、後型部230は複数の型部231、232に分解して成形体10zから取り外されるので、離型による後部成形部10zrの変形を抑制できる。なお、後部成形部10zrの変形を抑制するためには、最小肉厚Tmが大きいことが好ましく、例えば、最小肉厚Tmが1.5mm以上であることが好ましい。なお、最小肉厚Tmが2.6mmを超えてもよい。
【0070】
ここで、最小肉厚Tmが2.6mm以下であり、かつ、後部分長Lrが30mm以上である構成を採用してもよい。この場合には、スパークプラグ100の小型化と、意図しない放電の抑制と、の両方を、容易に実現できる。この場合にも、後型部230は複数の型部231、232に分解して成形体10zから取り外されるので、離型による後部成形部10zrの変形を抑制できる。
【0071】
なお、
図3のS220で説明した長さLzrは、
図7の後部分長Lrに対応している。そして、
図3の長さLzrの上述した好ましい範囲は、
図7の後部分長Lrの上述した好ましい範囲に対応している。また、
図3のS220で説明した最小距離Dmは、
図7の最小肉厚Tmに対応している。そして、
図3の最小距離Dmの上述した好ましい範囲は、
図7の最小肉厚Tmの上述した好ましい範囲に対応している。
【0072】
B.第2実施形態:
図8は、外型の別の実施形態の分解斜視図である。
図3、
図6の外型200との差異は、後部成形型230が、後部成形型240に置換されている点だけである(「後型部240」と呼ぶ)。第2実施形態の外型200bは、前型部210と、中型部220と、後型部240と、を有している。前型部210と中型部220とは、
図3、
図6の前型部210と中型部220と、それぞれ同じである。後型部240は、第1実施形態の後型部230と同じ形状の内面を有している。後型部240は、第1型部241と、第2型部242と、で構成されている。これらの型部241、242は、軸線CLを含む平面で後型部240の全体を二等分して得られる2つの部分である。
【0073】
図9、
図10は、第2実施形態における成形体10zを成形する工程(
図2:S103)の手順の例を示すフローチャートである。
図10は、
図9の続きを示している。図中では、
図3〜
図5と同様に、各ステップを示す箱の中に、各ステップで用いられる成形型の概略断面図が示されている。
【0074】
ステップS200bでは、外型200bを構成する複数の型部210、220、241、242が、組み合わされる。組み合わされた外型200bは、第1実施形態の外型200と同じ形状の内面10oを形成する。
【0075】
次のステップS210bでは、内面10oに囲まれる空間Si内に、棒部300は配置される。そして、第2開口OPrを閉じる後端型290が、外型200の後方向Dfr側に配置される。これらの処理は、第1実施形態のステップS210(
図3)の処理と、同じである。
図9のステップS210bの箱内の下部には、軸線CLに垂直な断面が示されている。この断面は、後型部240と棒部300とを通る断面である。図示するように、第1型部241は、後型部240の内面のうち、周方向の半分の範囲内(ここでは、上半分の範囲内)の部分を形成し、第2型部242は、後型部240の内面のうち、周方向の残りの半分の範囲内(ここでは、下半分の範囲内)の部分を形成する。
【0076】
次のステップS220b(
図10)では、第1開口OPfに射出装置のノズル500が接続され、空間Sx内に材料が射出される。これにより、成形体10zが成形される。成形体10z(すなわち、絶縁体10)を成形する成形型600bは、外型200bと棒部300と後端型290とを有している。
【0077】
次のステップS230bでは、後端型290と後型部240とが成形体10zから取り外される。後端型290は、成形体10zに対して後方向Dfrに向かって動かされ、そして、成形体10zから取り外される。第1型部241と第2型部242とは、それぞれ、軸線CLに垂直、または、軸線CLに対して斜めに成形体10zから離れる方向に動かされ、そして、成形体10zから取り外される。
図10の例では、第1型部241は、上方向に向かって動かされ、第2型部242は、下方向に向かって動かされる。
【0078】
ステップS230bに続く処理は、
図4のステップS250以降の処理と同じである。以上により、成形体10zが成形される。
【0079】
このように、本実施形態では、第1型部241は、後型部240の内面18o、11oのうち、軸線CLを中心とする周方向の半分の範囲に含まれる部分を形成する。第2型部242は、後型部240の内面18o、11oのうち、軸線CLを中心とする周方向の残りの半分の範囲に含まれる部分を形成する。このように、これらの型部241、242は、後型部240の内面18o、11oのうち、周方向の範囲が互いに異なる一部分を形成している。従って、後型部240を構成する複数の型部241、242のそれぞれを、軸線CLに垂直、または、軸線CLに対して斜めに成形体10zから離れる方向に移動させることによって、取り外すことができる。このように、型部の内面が後部成形部10zrの外面と接触した状態で型部を後部成形部10zrの外面に沿って移動させることを省略しつつ、型部を成形体10zから取り外すことができる。従って、移動する型部から後部成形部10zrに力が印加されることを抑制できる。この結果、離型による後部成形部10zrの変形を抑制できる。
【0080】
C.外型の別の実施形態:
図11は、外型の別の実施形態を示す断面図である。
図11(A)〜
図11(C)は、軸線CLを含む平面での断面図を示し、
図11(D)、
図11(E)は、軸線CLに垂直な断面を示している。
【0081】
図11(A)の外型200cは、
図3の外型200のうち後型部230を後型部230cに置換して得られる外型である。この外型200cは、外型200の内面10oと同じ内面10oを形成する。後型部230cは、3個の型部231c、232c、232cで構成されている。後型部230cは、
図3の後型部230の内面18o、11oと同じ内面18o、11oを形成する。3個の型部231c、232c、232cは、前方向Dfに向かってこの順番に配置される。第1型部231cは、後型部230cの内面のうち周方向に一周する一部分を形成し、第2型部232cは、第1型部231cよりも前方向Df側で、後型部230cの内面のうち周方向に一周する一部分を形成し、第3型部233cは、第2型部232cよりも前方向Df側で、後型部230cの内面のうち周方向に一周する一部分を形成する。
【0082】
成形体が成形された後には、後型部230cを3個の型部231c、232c、233cに分解することによって、後型部230cが成形体から取り外される。ここで、第1型部231cが後方向Dfrに向かって動かされ、その後、第2型部232cが後方向Dfrに向かって動かされ、その後、第3型部233cが後方向Dfrに向かって動かされる。これにより、移動を開始する型部と後部成形部10zr(
図3)との間の接触し得る最大面積を小さくできるので、移動を開始する型部から後部成形部10zrに力(例えば、摩擦力)が印加されることを抑制できる。この結果、離型による後部成形部10zrの変形を抑制できる。
【0083】
図11(B)の外型200dは、
図3の外型200のうち中型部220と後型部230とを後型部230dに置換して得られる外型である。この外型200dは、外型200の内面10oと同じ内面10oを形成する。後型部230dは、2個の型部231、232dで構成されている。第1型部231は、
図3の第1型部231と同じである。第2型部232dの形状は、
図3の第2型部232と中型部220とを一体化して得られる形状と、同じである。
【0084】
第2型部232dは、後方向Dfrに向かって内径が大きくなる部分を有していない。従って、成形体が成形された後には、第1型部231を後方向Dfrに向かって動かし、その後、第2型部232dを後方向Dfrに向かって動かすことによって、後型部230dを成形体から取り外すことが可能である。この結果、離型による後部成形部10zr(
図3)の変形を抑制できる。
【0085】
図11(C)の外型200eは、前型部210eと、後型部230eと、を有している。後型部230eは、第1型部231と第2型部232eとで構成されている。第1型部231は、
図3の第1型部231と同じである。第2型部232eの形状は、
図3の中型部220の後方向Dfr側の一部分と第2型部232とを一体化して得られる形状と同じである。前型部210eの形状は、
図3の中型部220の残りの部分(後方向Dfr側の一部分)と前型部210とを一体化して得られる形状と同じである。この外型200eは、
図3の外型200の内面10oと同じ内面10oを形成する。
【0086】
第2型部232eは、後方向Dfrに向かって内径が大きくなる部分を有していない。従って、成形体が成形された後には、第1型部231を後方向Dfrに向かって動かし、その後、第2型部232eを後方向Dfrに向かって動かすことによって、後型部230eを成形体から取り外すことが可能である。この結果、離型による後部成形部10zr(
図3)の変形を抑制できる。
【0087】
また、前型部210eは、前方向Dfに向かって内径が大きくなる部分を有していない。従って、成形体が成形された後には、前型部210eを前方向Dfに向かって動かすことによって、容易に、成形体10zから前型部210eを取り外すことができる。
【0088】
図11(D)の後型部240fは、
図8、
図9の後型部240の代わりに利用可能な型部である。この後型部240fは、
図9の後型部240の内面18o、11oと同じ内面を形成する(図示省略)。
図8、
図9の後型部240との差異は、後型部240fが、周方向に並ぶ3個の型部241f、242f、243fで構成されている点だけである。3個の型部241f、242f、243fは、それぞれ、後型部240fの内面のうち、周方向の三分の一の範囲内の部分を形成する。
【0089】
図11(E)の後型部240gは、
図8、
図9の後型部240の代わりに利用可能な型部である。この後型部240gは、
図9の後型部240の内面18o、11oと同じ内面を形成する(図示省略)。
図8、
図9の後型部240との差異は、後型部240gが、周方向に並ぶ4個の型部241g、242g、243g、244gで構成されている点だけである。4個の型部241g、242g、243g、244gは、それぞれ、後型部240gの内面のうち、周方向の四分の一の範囲内の部分を形成する。
【0090】
図11(D)、
図11(E)の後型部240f、240gを成形体から取り外す場合には、後型部240f、240gを構成する複数の型部のそれぞれを、軸線CLに垂直、または、軸線CLに対して斜めに成形体から離れる方向に移動させればよい。これにより、型部の内面が後部成形部10zr(
図3)の外面と接触した状態で型部を後部成形部10zrの外面に沿って移動させることを省略しつつ、型部を成形体10zから取り外すことができる。従って、移動する型部から後部成形部10zrに力が印加されることを抑制できる。この結果、離型による後部成形部10zrの変形を抑制できる。
【0091】
D.変形例:
(1)
図3や
図11(A)〜
図11(C)の実施形態のように、後部分10rを成形する後部成形型が軸線CLの方向の範囲が互いに異なる複数の型部を有する場合、軸線CLの方向の範囲の区分数は、2(
図3)、3(
図11(A))に限らず、4以上であってもよい。いずれの場合も、複数の型部を成形体から取り外す方法としては、後方向Dfr側の型部から順番に後方向Dfrに向かって動かす種々の方法を採用可能である。ここで、移動を開始した型部の全体が成形体10zの後方向Dfr側の端10ze(
図4)よりも後方向Dfr側に移動した後に、次の型部の移動を開始することが好ましい。こうすれば、複数の型部を成形体10zを囲む状態で並行して移動させる場合と比べて型部を移動させる処理を簡素化できるので、移動する型部から後部成形部10zrに力が印加されることを抑制できる。ただし、移動を開始した型部の少なくとも一部が成形体10zの後方向Dfr側の端よりも前方向Df側に位置する状態で、次の型部の移動を開始してもよい。
【0092】
(2)
図9や
図11(D)、
図11(E)の実施形態のように、後部分10rを成形する後部成形型が周方向の範囲が互いに異なる複数の型部を有する場合、周方向の範囲の区分数は、2(
図9)、3(
図11(D)、4(
図11(E))に限らず、5以上であってもよい。複数の型部の間で周方向の範囲が互いに異なる場合、それら複数の型部を、軸線CLに平行な方向に移動させずに、軸線CLに垂直、または、軸線CLに対して斜めに移動させることによって、成形体10zから取り外すことが可能である。従って、絶縁体10の後部分10rが、外径が後方向Dfrに向かって増大する部分を含んでもよい。
【0093】
また、複数の型部の間で、1個の型部がカバーする周方向の範囲の大きさが異なっていても良い。いずれの場合も、1個の型部がカバーする周方向の範囲は、1周の半分以下であることが好ましい(すなわち、中心角が180度以下)。この構成によれば、型部を、軸線CLに垂直な方向、または、軸線CLに対して斜め方向に移動させる場合に、成形体10zが型部に引っ張られることを抑制できる。
【0094】
(3)
図3や
図11(A)〜
図11(C)の実施形態のように、後部分10rを成形する後部成形型が軸線CLの方向の範囲が互いに異なる複数の型部を有する場合に、さらに、軸線CLの方向の少なくとも一部の範囲を成形する型部が、周方向の範囲が互いに異なる複数の型部を有してもよい。例えば、
図3の第2型部232が、周方向の範囲が互いに異なる複数の型部に分割されてもよい。このような構成を採用すれば、移動する型部から後部成形部10zrに力が印加されることを更に抑制できる。
【0095】
(4)大径部19よりも前方向Df側の部分を成形する型部(例えば、前型部210(
図3)、210e(
図11(C)))が、複数の型部に分割されてもよい。この場合も、絶縁体10のうちの燃焼ガスに曝される部分、すなわち、先端側パッキン8に接触する第1縮外径部15から前方向Df側の部分(第1縮外径部15を含む部分)の外周面が、1個の型部によって成形されることが好ましい。この構成によれば、第1縮外径部15から前方向Df側の部分の外周面にパーティングライン等の微小な凸部が形成されることを抑制できるので、凸部に応力が集中することを抑制でき、また、凸部の温度が局所的に高くなることを抑制できる。従って、絶縁体10のうちの燃焼ガスに曝される部分(すなわち、温度が上昇し易い部分)の耐熱性を向上できる。
【0096】
(5)外型の複数の型部を成形体10zから外す順番としては、上記各実施形態の順番に代えて、他の種々の順番を採用可能である。例えば、前型部210、210eを外した後に、後型部230、230c、230d、230e、240、240f、240gを外してもよい。また、棒部300を外した後に、外型を外してもよい。いずれの場合も、離型による成形体10zの変形を抑制するためには、成形体10zに対して同時に移動を開始する型部の総数が1個であることが好ましい。
【0097】
(6)成形用の空間Sx内に材料を射出する方法としては、第1開口OPf接続されたノズル500から材料を空間Sx内に射出する方法に代えて、他の任意の方法を採用可能である。例えば、第1開口OPfを別の型部によって閉じて、第2開口OPrに接続されたノズルから空間Sx内に材料を射出してもよい。また、外型の型部(例えば、
図3の中型部220)に空間Sxに連通するゲートを設け、そのゲートから材料を射出してもよい。
【0098】
(7)成形型の構成としては、上記各実施形態の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、後端型290(
図3)が、外型(例えば、第1型部231)の一部であってもよい。また、後端型290が、棒部300の一部であってもよい。第1開口OPfを閉じる型部(「先端型」と呼ぶ)を用いる場合、先端型が、外型(例えば、先前型部210)の一部であってもよい。また、先端型が、棒部300の一部であってもよい。
【0099】
また、棒部300は、1つの連続な部材に代えて、複数の型部を接続することによって構成されてもよい。例えば、棒部300は、第3外面13iを有する部分と、第2外面16iから後方向Dfr側の外面を有する部分と、で構成されてもよい。複数の型部で構成される棒部300を成形体10zから取り外す場合には、成形体10zに対して一部の型部の移動を開始した後に、成形体10zに対して他の型部の移動を開始することが好ましい。
【0100】
(8)スパークプラグの構成としては、上記の構成に代えて、他の種々の構成を採用可能である。例えば、中心電極20の第1チップ29と接地電極30の第2チップ39との少なくとも一方を省略してもよい。また、絶縁体10の先端側の部分の全体が、主体金具50の貫通孔59の内部に配置されてもよい。また、中心電極20の形状としては、
図1で説明した形状とは異なる種々の形状を採用してもよい。また、接地電極30の形状としては、
図1で説明した形状とは異なる種々の形状を採用可能である。また、絶縁体10は、中心軸CLに沿って延びて絶縁体10を貫通する貫通孔12を有する略円筒状の部材としたが、これに限られず、絶縁体10は、先端部が閉塞された有底筒状の部材としてもよい。
【0101】
以上、実施形態、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。