(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記底壁外周溝部(121b)は、前記サブタンク底壁(121)の前記燃料タンク(10)側の面に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料供給装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の燃料供給装置では、スプリングによって、サブタンクに対する燃料ポンプの組付け時の遊び(ガタ)に伴う振動が低減されて、燃料タンクに伝達される振動が低減されるものと推察される。特許文献1では、燃料ポンプは、サブタンク内に組付け(固定)され、サブタンクの底面が燃料タンクの底壁に押付けられているので、所詮は、燃料ポンプの振動は、サブタンクを介して燃料タンクに伝播されてしまう。
【0006】
ここで、スプリングによってサブタンクの底面が燃料タンクの底壁に押付けられるものにおいては、底面の外周部が剛性の高い部位となり、燃料ポンプの作動に伴って、底面の外周部が節となって、底面の全体が太鼓の皮のように振動する膜振動を発生させる。よって、このような膜振動を考慮した振動低減の対応が有用であると考えられる。
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、サブタンクの底面の膜振動の伝播を効果的に低減可能とする燃料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0009】
本発明では、燃料タンク(10)の上部開口(11a)を塞ぐ蓋部(110)と、
燃料タンク(10)の内部で蓋部(110)の下方に配置されて、燃料吐出用の燃料ポンプ(150)が設けられたサブタンク(120)と、
蓋部(110)とサブタンク(120)との間に設けられて、サブタンク(120)の底部を形成するサブタンク底壁(121)を、燃料タンク(10)の底壁(12)に押さえ付けるスプリング(117)と、を備える燃料供給装置であって、
サブタンク底壁(121)において、燃料ポンプ(150)の作動によって膜振動の発生する領域の外周部に沿って、溝形成された底壁外周溝部(121b)が設けられたことを特徴としている。
【0010】
この発明によれば、サブタンク底壁(121)に底壁外周溝部(121b)を設けることで、サブタンク底壁(121)の外周部に、底壁外周溝部(121b)の溝の深さ方向に薄肉となって残る薄肉部(121c)が形成されて、この薄肉部(121c)によって、サブタンク底壁(121)の大半の部分が支持される形となる。
【0011】
薄肉部(121c)は、サブタンク底壁(121)に比べて剛性の低い部位、即ち、バネ定数の小さい部位となり、また、サブタンク底壁(121)の大半の部分は、剛性が高く、質量の大きな部位となる。よって、サブタンク底壁(121)が膜振動する際には、薄肉部(121c)がバネとなり、また、サブタンク底壁(121)全体が、質量を持った部位となって、底壁形状を維持したような振動を発生させることになる。
【0012】
このような振動形態においては、薄肉部(121c)のバネ定数が小さいこと、および底壁121の質量が大きいことから、膜振動時の1次の固有周波数を低下させることができ、その結果、1次の固有周波数を燃料ポンプ(150)が作動される際の周波数領域よりも低くすることができる。つまり、燃料ポンプ(150)の周波数領域において、際立つ1次の固有周波数成分を周波数領域外となる低周波側にずらすことができ、膜振動による影響を低減することが可能となる。総じて、膜振動の伝播を効果的に低減可能とする燃料供給装置(100)を提供することが可能となる。
【0013】
尚、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の燃料供給装置に係る第1実施形態を、自動車の燃料タンク10に取り付けられる燃料供給装置100に適用した場合を例にして、
図1〜
図7に基づいて説明する。
【0017】
燃料供給装置100は、内燃機関等と共に車両に搭載されている燃料タンク10内に設置され、この燃料タンク10内に貯留された燃料を燃料タンク10外の内燃機関における燃料噴射装置へ供給する装置となっている。燃料供給装置100は、図示しないエンジンECUに接続され、燃料供給装置100に供給される電力を調整することにより内燃機関により消費される燃料消費量に応じて、吐出される燃料の量および燃料圧力が制御されるようになっている。ここで、燃料タンク10の天井壁11側を燃料供給装置100の上側、底壁12側を下側として、以下説明する。尚、この上下方向は、重力方向に沿っているものとする。
【0018】
燃料供給装置100は、
図1〜
図4に示すように、蓋部110、サブタンク120、ジェットポンプ130、サクションフィルタ140、燃料ポンプ150、燃料フィルタ160、残圧保持バルブ170、チェックバルブ180、およびセンダゲージ190等を備えている。ジェットポンプ130、サクションフィルタ140、燃料ポンプ150、燃料フィルタ160、残圧保持バルブ170、およびチェックバルブ180はサブタンク120の内部に収容され、また、センダゲージ190はサブタンク120の外側に設けられている。これら部材120、130、140、150、160、170、180、190は、ポンプモジュール120Aを形成している。
【0019】
蓋部110は、燃料タンク10の天井壁11に形成された開口部11aを塞ぐ部材であり、樹脂材によって形成されている。開口部11aは、本発明の上部開口に対応する。蓋部110は、扁平な円筒状の円筒状部111と、円筒状部111の上側に設けられて、径方向外側に突出する板状のフランジ部112とを有している。円筒状部111は、開口部11aに挿入され、またフランジ部112は、燃料タンク10の天井壁11に当接するように配設されて、開口部11aは、液密に閉塞されている。
【0020】
また、蓋部110には、燃料吐出管113、コネクタ114、支柱保持部115、支柱116、およびスプリング117等が設けられている。
【0021】
燃料吐出管113は、フランジ部112に一体的に形成された管である。燃料吐出管113は、蛇腹管113aによってチェックバルブ180の下流側と接続されており、燃料ポンプ150から吐出された燃料を、内燃機関の燃料噴射装置へ向けて吐出するようになっている。
【0022】
コネクタ114は、図示しない外部の電源、およびエンジンECUとの接続部である。コネクタ114には、リード線114a、およびリード線114bが設けられている。リード線114aは、燃料ポンプ150と電気的に接続されており、外部の電源からの電力が燃料ポンプ150に供給されるようになっている。また、リード線114bは、センダゲージ190と電気的に接続されており、センダゲージ190により検出された燃料タンク10内の燃料残量(燃料液面位)に係る検出信号がエンジンECUに出力されるようになっている。
【0023】
支柱保持部115は、支柱116を保持する筒状の部材であり、円筒状部111の外周側で互いに対向する位置に、サブタンク120側に向けて突出するようにして、2カ所設けられている。
【0024】
支柱116は、金属材よりなる円柱状の棒材であって、2カ所の支柱保持部115に対応するように2本設けられている。支柱116の一方側の端部は、支柱保持部115に固定されており、また、他方側の端部(先端部)は、サブタンク120側に向けて突出している。支柱116の他方側の端部は、サブタンク120に設けられた挿入部123に摺動可能に挿入されている。
【0025】
スプリング117は、蓋部110とサブタンク120とが互いに離間する方向に荷重を加える弾性部材である。スプリング117は、例えば、コイルスプリングが使用されて、2本の支柱116のうち、一方の支柱116の外周部に配置されている。スプリング117の長手方向の両端部は、それぞれ、支柱保持部115、およびサブタンク120に当接しており、サブタンク120は、スプリング117の荷重により燃料タンク10の底壁12に押し付けられるようになっている。
【0026】
サブタンク120は、樹脂材によって形成された有底筒状の容器であり、内部にジェットポンプ130、サクションフィルタ140、燃料ポンプ150、燃料フィルタ160、残圧保持バルブ170、およびチェックバルブ180等を収容すると共に、燃料の貯留室を形成している。
【0027】
サブタンク120の底の部分は、底壁121となっており、また、底壁121から立ち上がる筒状の壁は、側壁122となっている。底壁121は、本発明のサブタンク底壁に対応する。更に、底壁121において、燃料タンク10の底壁12と対向する面は、底面121aとなっている。本実施形態では、底壁121には、底壁外周溝部121bが形成されている。底壁外周溝部121bの詳細については、後述する。
【0028】
また、サブタンク120の側壁122の内周面の2カ所には、支柱116の他方側の端部が摺動可能に挿入される挿入部123が一体的に形成されている。そして、サブタンク120の内部には、燃料ポンプ150を保持するポンプ保持部124が設けられている。
【0029】
ジェットポンプ130は、燃料タンク10内の燃料をサブタンク120内へ吸引するポンプであり、サブタンク120の下側に設けられている。ジェットポンプ130には、サブタンク120の下側外部(燃料タンク10内の下側)から内部に繋がるポンプ流路が設けられている。燃料タンク10内の燃料は、この燃料の水頭圧によって、ポンプ流路からサブタンク120内に流入するようになっている。
【0030】
また、ジェットポンプ130には、残圧保持バルブ170において分流される余剰燃料が供給されて、この余剰燃料をポンプ流路内に噴射させるノズル部が設けられている。ノズル部から余剰燃料が噴射されると、余剰燃料の流速は増加されて、ポンプ流路内が負圧となる。よって、ジェットポンプ130は、この負圧によって、燃料タンク10内の燃料をポンプ流路に吸引して、サブタンク120内に供給するようになっている。
【0031】
サクションフィルタ140は、燃料タンク10内の燃料中の異物を除去するためのものであり、全体形状が扁平状に形成されて、サブタンク120の底壁121の上側に設けられている。サクションフィルタ140は、例えば、骨組部を成す樹脂製のフィルタフレームと、袋状で樹脂製の不織布から成るフィルタクロスとを有している。そして、フィルタフレームにフィルタクロスを覆うことにより、フィルタクロスの内部に空洞を確実に形成して燃料の濾過および吸い込み機能を果たすことができるようになっている。
【0032】
燃料ポンプ150は、燃料吐出用のポンプであり、図示しない電動モータによってインペラが回転駆動される電動式のポンプとなっている。燃料ポンプ150は、サブタンク120内に設けられたポンプ保持部124に保持されている。燃料ポンプ150は、全体形状が円柱状を成しており、円柱の軸線が上下方向を向くように配置されている。燃料ポンプ150の下端部には吸引部が、また上端部には吐出部151が設けられている。吸引部は、サブタンク120内に貯留された燃料を吸い込むための部位であり、サクションフィルタ140に接続されている。また、吐出部151は、昇圧された燃料を吐出する部位であり、燃料フィルタ160に接続されている。
【0033】
燃料ポンプ150は、サクションフィルタ140を介して、サブタンク120内の燃料を吸引し、昇圧して、昇圧した燃料を、燃料フィルタ160を介して残圧保持バルブ170側へ吐出するようになっている。燃料の吐出流量、および吐出圧力は、電動モータ、つまりインペラの回転数に応じて増減されるようになっている。
【0034】
また、燃料ポンプ150は、燃料を吸引して昇圧する際にインペラにて発生するベーパを所定流量以上の燃料と共に、昇圧の途中部位から燃料ポンプ150の外へ排出する機能を備えたベーパ燃料排出型のポンプとなっている。ベーパを含む燃料の流量は、吐出部151からの吐出流量の増減に関わらず、所定流量となるように設定されており、本来の燃料ポンプ150の吐出能力を確保したうえで、吐出効率低下となるベーパを効果的に排出できるようになっている。ベーパを含む燃料は、燃料ポンプ150の下端部に設けられたベーパ排出部から排出されるようになっている。
【0035】
燃料フィルタ160は、燃料ポンプ150の径方向外側に設けられ、燃料ポンプ150から吐出された燃料中の異物を除去するフィルタとなっている。燃料フィルタ160を通過した燃料は、残圧保持バルブ170に供給されるようになっている。
【0036】
残圧保持バルブ170は、燃料フィルタ160を通過した燃料の圧力を予め定められた所定圧力に調整するためのもの(レギュレータ)であり、燃料ポンプ150と並ぶようにして、サブタンク120の底壁121側に配置されている。残圧保持バルブ170は、吸入ポート、バルブ、吐出ポート、および排出ポート等を備えている。
【0037】
吸入ポートは、燃料ポンプ150から吐出される燃料を吸入する部位であり、吐出ポートは、圧力調整された燃料を必要燃料として、チェックバルブ180側へ吐出する部位である。吸入ポートと吐出ポートとの間には燃料通路が形成されて、この燃料通路にバルブが配置されている。バルブは、燃料ポンプ150から吐出される燃料の圧力が所定の圧力に達したら開弁するようになっている。バルブが開弁されると、燃料の一部は、余剰燃料として排出ポートから排出されて、ジェットポンプ130に供給されるようになっている。
【0038】
チェックバルブ180は、残圧保持バルブ170と隣接するように配置されて、残圧保持バルブ170の下流側に接続されている。更に、チェックバルブ180の下流側は、蛇腹管113aによって燃料吐出管113に接続されている。チェックバルブ180は、残圧保持バルブ170側から燃料吐出管113側への燃料の流通を許容し、燃料吐出管113側から残圧保持バルブ170側への燃料の流通を阻止する逆止弁となっている。
【0039】
センダゲージ190は、燃料タンク10内の燃料液面位を検出する液面検出装置である。センダゲージ190は、フロート191、アーム192、および可変抵抗器等を備えている。そして、燃料タンク10内の燃料液面の変位に伴ってフロート191が上下動し、このフロート191に連動してアーム192が揺動する。更には、アーム192の揺動に伴って、可変抵抗器の抵抗値が変化する。センダゲージ190は、抵抗値の変化を検出信号として、検出信号に対応する燃料の液面位を計測するようになっている。
【0040】
図3、
図4に示すように、本実施形態では、サブタンク120の底壁121には、底壁外周溝部121bが形成されている。
【0041】
底壁外周溝部121bは、底壁121において、燃料ポンプ150の作動によって膜振動の発生する領域の外周部に沿って形成された溝となっている。ここで、膜振動とは、サブタンク120のように、容器体の底壁121が燃料タンク10の底壁12に押付けられるものにおいては、サブタンク120の底部の外周部(側壁122に対応する部位)が剛性の高い部位となり、この剛性の高い外周部が節となって、節の内側となる底壁121の全体が太鼓の皮のように振動する現象である。
【0042】
本実施形態では、底壁外周溝部121bは、底壁121において、燃料タンク10側となる底面121aに設けられている。また、底壁外周溝部121bは、側壁122の内周面よりも内側となる領域の外周部(側壁122の内周面に近接する位置)に、リング状を成して、底面121a側からサブタンク120の内部側に向かってへこむ溝となっている。
【0043】
底壁外周溝部121bの幅はw、深さはdとなっている。底壁121の本来の板厚をt1としたときに、d<t1であり、底壁121には、底壁外周溝部121bの溝の深さ方向に薄肉となって残る薄肉部121cが形成されている。薄肉部121cの板厚をt2としたとき、当然のことながら、t2<t1となっている。
【0044】
よって、底壁121の大半の部分は、剛性が高く、質量の大きな部位として残っている。また、薄肉部121cは、底壁121の大半の部分に比べて剛性の低い部位、即ち、バネ定数の小さい部位となっている。そして、底壁121の大半の部分は、外周部において薄肉部121c(バネ定数の小さいバネ)によって支持された形となっている。
【0045】
次に、上記構成に基づく燃料供給装置100の作動および作用効果について説明する。
【0046】
空の燃料タンク10内に燃料が供給されると、供給された燃料の水頭圧によって、燃料タンク10内の燃料は、ジェットポンプ130のポンプ流路を通り、サブタンク120内に流入していく。
【0047】
燃料タンク10内に供給される燃料の液面位置がサブタンク120の上部位置よりも低い場合は、サブタンク120内には、燃料タンク10内の燃料液面と同一の位置まで燃料が流入する。また、燃料タンク10内に供給される燃料の液面位置がサブタンク120の上部位置よりも高い場合は、サブタンク120内は満杯となるように燃料が流入する。
【0048】
そして、燃料ポンプ150が作動されると、サブタンク120内の燃料は、サクションフィルタ140を通り、燃料ポンプ150の吸引部から吸引される。このとき、サクションフィルタ140によって、燃料中の異物が除去される。そして、吸引部から吸引された燃料は燃料ポンプ150のインペラで昇圧されて吐出部151から吐出される。尚、燃料ポンプ150のインペラで燃料が昇圧される際に発生するベーパは、所定流量の燃料と共に、ベーパ排出部から排出される。
【0049】
燃料ポンプ150から吐出された燃料は、燃料フィルタ160に至る。このとき、燃料フィルタ160によって、燃料ポンプ150から吐出された燃料中の異物が除去される。
【0050】
燃料フィルタ160を通過した燃料は、残圧保持バルブ170の吸入ポートから内部へ流入し、バルブによって所定圧力に調整されて、必要燃料として排出ポートから吐出される。そして、吐出された燃料は、チェックバルブ180、蛇腹管113aを通り、燃料吐出管113から内燃機関の燃料噴射装置へ供給される。
【0051】
また、残圧保持バルブ170によって燃料の圧力が調整される際に、余剰となった余剰燃料は、排出ポートから排出され、ジェットポンプ130のノズル部に供給される。ジェットポンプ130は、供給される余剰燃料をノズル部から噴射させて、ポンプ流路内を負圧して、燃料タンク10内の燃料をサブタンク120内へ吸引する。
【0052】
ここで、燃料ポンプ150が作動されると、電動モータの回転数、あるいは極数等に応じた周波数領域(
図5〜
図7中の対象範囲)において、振動が発生する。発生する振動の周波数領域は、本実施形態では、例えば、周波数幅350Hzとなる500〜850Hzの領域となる。燃料供給装置100において、サブタンク120の底壁121が、燃料タンク10の底壁12に押付けられるものにおいては、底壁121において上記で説明した膜振動が発生し、この振動が直接的に燃料タンク10に伝播されてしまう。
【0053】
しかしながら、本実施形態では、サブタンク120の底壁121には、底壁外周溝部121bが形成されている。そして、底壁外周溝部121bによって、底壁121には、薄肉部121cが形成されている。
【0054】
これにより、薄肉部121cによって、底壁121の大半の部分が支持される形となる。薄肉部121cは、底壁121に比べて剛性の低い部位、即ち、バネ定数の小さい部位となり、底壁121の大半の部分は、剛性が高く、質量の大きな部位となる。よって、底壁121が膜振動する際には、薄肉部121cがバネとなり、また、底壁121全体が、質量を持った部位となって、底壁形状を維持したような振動を発生させることになる。
【0055】
このような振動形態においては、薄肉部121cのバネ定数が小さいこと、および底壁121の質量が大きいことから、膜振動時の1次の固有周波数を低下させることができ、その結果、1次の固有周波数を燃料ポンプ150が作動される際の周波数領域よりも低くすることができる。つまり、燃料ポンプ150の周波数領域において、際立つ1次の固有周波数成分を周波数領域外となる低周波側にずらすことができ、膜振動による影響を低減することが可能となる。総じて、膜振動の伝播を効果的に低減可能とする燃料供給装置100を提供することが可能となる。
【0056】
底壁外周溝部121bの幅wと、薄肉部の板厚t2を、つまり、薄肉部121cの断面寸法を適宜設定することで、底壁121の膜振動時の1次の固有周波数が、燃料ポンプ150が作動される際の周波数領域よりも低くなるようにすることができる。
【0057】
図5〜
図7は、上記効果を定量的に確認した結果である。
図5は、燃料供給装置100の単体状態(燃料タンク10無し)における結果であり、また、
図6、
図7は、燃料供給装置100を燃料タンク10に組付けた状態での結果である。
【0058】
図5では、燃料ポンプ150作動時の、周波数に対するサブタンク120の底面121a中央における上下方向の振動加速度を示している。サブタンク120の底面121aの振動挙動において、1次の固有周波数が、燃料ポンプ150の周波数領域(対象範囲)よりも低い側に移動された。また、2次の固有周波数の低下は少なく、周波数領域への影響はなかった。
【0059】
また、
図6では、燃料ポンプ150作動時の、周波数に対する燃料タンク10の底壁12における上下方向の振動加速度を示している。本実施形態の底壁12の振動加速度は、底壁外周溝部121bを備えない比較品(全体接触品)に対して、対象範囲の加速度平均値が62%低減された。
【0060】
また、
図7では、底壁12とは異なる代表部位として、燃料ポンプ150作動時の、周波数に対する蓋部110における上下方向の振動加速度を示している。本実施形態の蓋部110の振動加速度は、底壁外周溝部121bを備えない比較品(全体接触品)に対して、対象範囲の加速度平均値が37%低減された。
【0061】
そして、本実施形態では、底壁外周溝部121bは、底壁121の燃料タンク10側の面に設けられている。これにより、サブタンク120の内部側における底壁121の形状を変更する必要がなく、燃料ポンプ150等を内部に設置する際の影響を受けることがない。
【0062】
(第2実施形態)
第2実施形態のサブタンク1201を
図8、
図9に示す。第2実施形態は、サブタンク1201の底壁121に補強用リブ121dが設けられる場合の、底壁外周溝部121bの例を示したものである。
【0063】
補強用リブ121dは、例えば、底壁121の剛性を上げるために、底壁121におけるサブタンク1201の内部側に設けられたリブとなっており、底壁121の中心を通り、対向する外周部に至るように直線状に設けられている。このような補強用リブ121dを設けると、サブタンク1201の底部においては、側壁122に対応する外周部と、補強用リブ121dに対応する直線部とが、膜振動発生時の節となり得る。
【0064】
よって、本実施形態では、このような補強用リブ121dを設けた際に、サブタンク1201の底部において、補強用リブ121dに対応して区画される領域ごとに、底壁外周溝部121bが設けられるようにしている。具体的には、
図8に示すように、補強用リブ121dによって底面121aは、左右2つの半円状の領域に区画された形となっているので、両半円状の領域に、それぞれ半円状の底壁外周溝部121bが設けられている。
【0065】
これにより、底壁121に設けられた補強用リブ121dに応じて発生し得る膜振動に対して、それぞれ振動低減が可能となる。
【0066】
尚、補強用リブ121dは、上記のように1本の設定に限定されるものではなく、複数本設定される場合も同様に適用可能である。
【0067】
(変形例1)
図10に示すように、底壁外周溝部121bは、底壁121のサブタンク1202の内部側の面(上面)に形成されるようにしてもよい。
【0068】
(変形例2)
また、
図11に示すように、底壁外周溝部121bは、底壁121の底面121aと、サブタンク1203の内部側の面(上面)との両者の面において、互いの溝部121bが重なる位置に形成されるようにしてもよい。
【0069】
(変形例3)
また、
図12に示すように、サブタンク1204において、底壁外周溝部121bは、周方向の途中で、溝の形成されない部位が設けられたものとしてもよい。
【0070】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0071】
本発明の燃料供給装置100の最小限度の構成は、蓋部110、スプリング117、サブタンク120、および燃料ポンプ150であり、他の、ジェットポンプ130、サクションフィルタ140、燃料フィルタ160、残圧保持バルブ170、チェックバルブ180、センダゲージ190のうち、少なくとも1つは、省略されたものであってもよい。
【0072】
上記各実施形態では、燃料供給装置100は、自動車の燃料タンク10に適用するものとしたが、例えば、自動二輪車の燃料タンク、他の内燃機関用の燃料タンク等に適用してもよい。