特許第6469903号(P6469903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6469903材料シートを曲げて成形物品とする方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6469903
(24)【登録日】2019年1月25日
(45)【発行日】2019年2月13日
(54)【発明の名称】材料シートを曲げて成形物品とする方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C03B 23/025 20060101AFI20190204BHJP
【FI】
   C03B23/025
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-8638(P2018-8638)
(22)【出願日】2018年1月23日
(62)【分割の表示】特願2016-39847(P2016-39847)の分割
【原出願日】2011年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-80108(P2018-80108A)
(43)【公開日】2018年5月24日
【審査請求日】2018年1月23日
(31)【優先権主張番号】10306317.8
(32)【優先日】2010年11月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ティエリイ エル ダノー
(72)【発明者】
【氏名】アルノード ドミニケ ドゥジェアン
(72)【発明者】
【氏名】アラン マル フレドホル
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ジェアン ピエル エルヴ
(72)【発明者】
【氏名】ロレン ジョーボ
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー ペスシエラ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ポワシィ
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−322353(JP,A)
【文献】 特開2002−104835(JP,A)
【文献】 特開昭63−021229(JP,A)
【文献】 特開昭55−085429(JP,A)
【文献】 特開2012−101975(JP,A)
【文献】 特開2005−231959(JP,A)
【文献】 特開昭54−061337(JP,A)
【文献】 米国特許第04156626(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再成形可能領域と再成形可能でない領域を有する材料シートを成形物品へと曲げるための装置であって、
前記材料シートの再成形可能領域が張り出すように前記材料シートを保持するための支持体であって、前記再成形可能領域が選択された形状に再成形された後も該再成形可能領域とは接触しない支持体、および、
前記材料シートが前記支持体上で保持されている間に、前記材料シートの再成形可能領域を、選択された粘度範囲に対応する選択された温度範囲に、局所的に加熱する加熱手段であって、熱源と、該熱源からの熱を前記材料シートの前記再成形可能領域上に集中させるための選択された部材とを含んでいる、加熱手段、
を備え、
前記熱を集中させる前記部材が、
(a)前記熱を前記材料シートの前記再成形可能領域上に反射する楕円ミラーを含む、光学部材、および、
(b)前記熱を前記材料シートの前記再成形可能領域上に集中させる開口を有した耐熱シールドを含む、シールド部材
から成る群より選択されたものである、
装置。
【請求項2】
前記熱源が抵抗型加熱器であることを特徴とする請求項1記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が引用されその全体が参照することにより本書に組み込まれる、2010年11月30日に出願された欧州特許出願公開第103063178号の優先権の利益を米国特許法第119条の下で主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、平坦なシートを成形物品に再成形する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
電子ディスプレイ業界では、高品質で薄型の成形されたガラスシート、特に平坦な領域と屈曲した領域とを組み合わせて備えているガラスシートへの関心が高まっている。このような成形されたガラスシートは、例えば、フラットスクリーンテレビのカバーとして用いられたり、他の用途において保護カバーとして使用されたりする需要がある。
【0004】
フラットガラスシートは、再成形して、成形ガラスシートにすることができる。フラットガラスシートを成形ガラスシートに再成形する種々の技術は周知であり、特に自動車用途の観点ではフロントガラスおよびサイドウィンドウなど、そして建築用途では建築用および商業用の非電子的なディスプレイのための湾曲したガラスなどがある。例えば、特許文献1(アンダーソン(Anderson)他、1992年3月3日)では、フラットガラスシートに凹所領域をプレスすることによって、車の窓ガラスとして使用することが意図された成形ガラスシートを作製する方法が開示されている。アンダーソン他の方法では、加熱器が、集中させた高温の熱をフラットガラスシートの表面上に導いて、フラットガラスシートの再成形領域の移行部分を、その熱軟化温度まで迅速に加熱する。ガラスの狭い帯状部分沿いを集中熱で加熱することによるガラスの破砕を防ぐために、集中熱を加える前にガラスシートを高温に事前加熱する。移行部分をその熱軟化温度まで加熱した後、再成形領域をプレス型の間に位置付け、かつプレス型と位置合わせする。次いで、型の一方を他方の型に向かって前進させ、型の間で再成形領域をプレスすることにより、フラットガラスシートを含む平面から外へと再成形領域を位置ずれさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,093,177号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アンダーソン他で開示された方法は、再成形領域内での著しい3次元的な変形を含み、かつフラットガラスシートの平面から再成形領域を位置ずれさせるプレス手段を含んでいる。このようなプロセスは再成形領域内において、粘度を大幅に減少させ、かつ著しいプレス力を加える必要がある。こういった条件下では、ガラスの表面状態が局所的に損傷されることは当業者には明らかである。アンダーソン他では、「損傷部分」が単に機械的な役割を有するものであり、また完全に取り付けられた製品では目につかない部分となるため、これは問題にならない。電子ディスプレイのカバーとして使用することが意図されている成形ガラスシートの場合には、こういった贅沢さを与えることはできない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様において、材料シートを曲げて成形物品とする方法は、材料シートを提供するステップ(ステップa)、材料シートの、再成形可能領域と再成形可能でない領域とを、第1粘度範囲に対応する第1温度範囲まで加熱するステップ(ステップb)、続いて材料シートの再成形可能領域を、第2粘度範囲に対応する第2温度範囲まで加熱するステップ(ステップc)、および、材料シートの再成形可能領域を選択された形状に再成形するステップであって、このときの再成形が、材料シートの再成形可能領域を垂下させるものと、再成形可能領域の外側または再成形可能領域の境界近傍で、材料シートに力を加えるものとのうちの少なくとも一方によるものであるステップ(ステップd)を含む。
【0008】
この方法の一実施の形態では、ステップcにおいて、第2温度範囲まで加熱される再成形可能領域に対する、材料シート中の第2温度範囲まで加熱される領域合計の割合が1.5以下であり、この領域合計は再成形可能領域と重複している。
【0009】
この方法の一実施の形態では、ステップcにおいて、第2温度範囲まで加熱される再成形可能領域に対する、材料シート中の第2温度範囲まで加熱される領域合計の割合が1.2以下であり、この領域合計は再成形可能領域と重複している。
【0010】
この方法の一実施の形態において、ステップaで提供される材料シートの厚さは、0.3mmから1.5mmまでの範囲内である。
【0011】
この方法の一実施の形態において、材料シートの熱膨張係数は5ppm超である。
【0012】
この方法の一実施の形態において、第1粘度範囲の下限は第2粘度範囲の上限よりも高い。
【0013】
この方法の一実施の形態において、第1粘度範囲の下限は6×109ポアズ(6×108Pa・s)超である。
【0014】
この方法の一実施の形態において、第2粘度範囲は108ポアズ(107Pa・s)から109ポアズ(108Pa・s)までである。
【0015】
この方法の一実施の形態において、ステップdは、再成形可能領域に真空を適用して再成形可能領域の垂下を助けることを含む。
【0016】
この方法の一実施の形態において、ステップcは、光学部材を用いて再成形可能領域上に放射熱を集中させることを含む。
【0017】
この方法の一実施の形態において、ステップcは、シールド部材を用いて再成形可能領域上に放射熱を集中させることを含む。
【0018】
この方法の一実施の形態において、材料シートの、再成形可能でない領域および再成形可能領域は隣接している。
【0019】
この方法の一実施の形態において、ステップaにおける材料シートは平坦であり、さらにステップdの後に、再成形可能でない領域は平坦なままである
この方法の一実施の形態において、選択された形状は曲げを含む。
【0020】
本発明の別の態様において、材料シートを成形物品へと曲げるための装置配置は、材料シートを保持するための支持体、および、材料シートが支持体上で保持されている間に、材料シートの再成形可能領域を、選択された粘度範囲に対応する選択された温度範囲に、局所的に加熱する加熱配置、を含む。この加熱配置は、熱源と、熱源からの熱を材料シートの再成形可能領域上に集中させるための、光学部材またはシールド部材とを含んでいる。
【0021】
この装置配置の一実施の形態において、光学部材は、熱を材料シートの再成形可能領域上に反射する、楕円ミラーを含む。
【0022】
この装置配置の一実施の形態において、シールド部材は、熱を材料シートの再成形可能領域上に集中させる開口を有した、耐熱シールドを含む。
【0023】
この装置配置の一実施の形態において、熱源は抵抗型加熱器である。
【0024】
前述の概要および以下の詳細な説明は、発明の例示であり、本明細書で請求される本発明の本質および特徴を理解するための概要または構成を提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、また本明細書に組み込まれかつその一部を構成する。図面は本発明の種々の実施形態を示し、そしてその説明とともに、本発明の原理および動作の説明に役立つ。
【0025】
以下は、添付の図面に含まれる図の説明である。これらの図は必ずしも原寸に比例したものではなく、さらに特定の特徴および特定の図は、明瞭および簡潔にするため、縮尺において、または概略的に、誇張して図示されていることがある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1a】材料シートの再成形可能領域の局所加熱を示した概略図
図1b】材料シートの再成形可能領域の局所加熱を示した概略図
図1c】材料シートの全体的な加熱を示した概略図
図2】材料シートの再成形可能領域を局所加熱するための加熱配置を示した概略図
図3】材料シートの再成形可能領域を局所加熱するための抵抗加熱配置を示した概略図
図4】集中放射加熱の温度分布を示した図
図5】集中放射加熱の温度分布を示した図
図6図2の集中放射加熱配置を用いて材料シートの再成形可能領域を局所加熱した後の、材料シートの熱プロファイルを示したグラフ
図7図2の集中放射加熱配置を用いて材料シートの再成形可能領域を局所加熱した後の、材料シートの熱プロファイルと粘度プロファイルとを示したグラフ
図8】90°曲げを有する成形物品の斜視図
図9】2つの90°曲げを有する成形物品の斜視図
図10】2つの45°曲げを有する成形物品の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のさらなる特徴および利点は以下に明記され、そしてある程度は、本明細書の説明から当業者には容易に明らかになるであろうし、あるいは本明細書において説明するように本発明を実施することにより認識されるであろう。
【0028】
一実施の形態において、成形物品を作製する方法は、粘弾性特性を有している材料のシートを提供するステップを含む。一実施の形態において、この材料は、ガラスまたはガラスセラミックなどのガラス含有材料である。一実施の形態において、この材料シートは薄く、例えばその厚さは0.3mmから1.5mmの範囲内である。一実施の形態において、この材料シートの熱膨張係数は5ppm超である。特定の厚さおよび熱膨張係数を有する、種々の種類のガラスを一実施の形態において使用することができる。適切なガラスの一例はGORILLAガラスであり、ニューヨーク州のコーニング社(Corning Incorporated, NY)からコード2317で入手可能である。いくつかの実施形態において、この適切なガラスは、イオン交換可能なアルカリ含有ガラスであることが望ましい。イオン交換可能なアルカリ含有ガラスは、Li+、Na+、またはこの両方など、小さいアルカリイオンを含む構造を有している。こういった小さいアルカリイオンは、イオン交換プロセス中に、K+などのより大きなアルカリイオンと交換され得る。適切なイオン交換可能なアルカリ含有ガラスの例としては、その内容がその全体を参照することにより本書に組み込まれる、全てコーニング社に譲渡された、米国特許出願第11/888213号明細書、同第12/277573号明細書、同第12/392577号明細書、同第12/393241号明細書、および同第12/537393号明細書に記載されているようなアルカリアルミノケイ酸ガラスが挙げられる。これらのアルカリアルミノケイ酸ガラスは、比較的低温で、少なくとも30μmの深さまでイオン交換可能である。前述のGORILLAガラスは、市販のイオン交換可能なアルカリ含有ガラスの一例である。
【0029】
一実施の形態において、材料シートは平坦な形状で提供される。ガラス含有材料のシートの場合、オーバーフローフュージョンダウンドロー法またはフロート法など、平坦なガラスを製造する任意の適切な方法を使用することができる。図1aでは、材料シート100が支持体102の上に置かれている。図1aの実施形態では、支持体102は平面的な表面104を有し、この表面上で材料シート100が支持されている。材料シート100は、材料シート100の一部が支持体102から張り出すように、すなわち片持ち梁状となるように、支持体102上に置かれている。材料シート100は、少なくとも1つの「再成形可能領域」106と、少なくとも1つの「再成形可能でない領域」108とを有している。再成形可能領域は、材料シート中の、3次元形状に成形される領域である。典型的には、この3次元形状は、特定の曲率半径を有する曲げを含む。再成形可能でない領域は、材料シート中の、3次元形状に成形されない残りの領域である。一般に、再成形可能領域は再成形可能でない領域と隣接している。
【0030】
図1aに示した実施形態において、再成形可能領域106は支持体102から張り出して、支持体102とは接触していない。しかしながら、支持体102に対して再成形可能領域106を他の配置にすることも可能である。例えば、図1bに示した実施形態では、再成形可能領域106は支持体102bの一部分102aに重なっている。この一部分102aは、再成形可能領域106が3次元形状に成形される前に、再成形可能領域106と一部分102aの表面との間で実質的に接触しないよう、丸みが付けられている。再成形可能領域106が3次元形状に成形されると、再成形可能領域106と一部分102aの表面との間で接触し得る。この事例において、一部分102aの表面103の材料は、再成形可能領域106と支持体102bの一部分102aとの間での高温での粘着を防ぐよう適切に選択することができる。図1aおよび1bに示した実施形態に加えて、再成形可能領域106を材料シート100の任意の位置に、成形される成形物品に必要とされるように設けることも可能であろう。
【0031】
材料シート100が支持体102上にある間に、再成形可能領域106および再成形可能でない領域108の両方、すなわち材料シート全体を、図1cに示したように、第1粘度範囲に対応する第1温度範囲まで加熱する。図1cでは、材料シート100を全体的に、すなわちその全体を加熱するために、加熱器109が使用されている。例えば、ガスバーナ、抵抗フィラメント、およびプラズマトーチなど、様々な種類の加熱器109を使用することができる。ガラス含有材料シート100の場合、第1温度範囲は、材料シートの変形または光学的な品質欠陥を十分に防ぐことができるような低い温度範囲である一方、引続き再成形可能領域106に局所加熱を加えたときに膨張の不一致によって材料シートが破損してしまうのを十分に防ぐことができるような高い温度範囲である。一実施の形態において、第1粘度範囲は6×109ポアズ(6×108Pa・s)超である。第1粘度範囲の上限は、1012ポアズ(1011Pa・s)でもよい。
【0032】
材料シート100を第1温度範囲まで加熱した後、再成形可能領域106を、第2粘度範囲に対応する第2温度範囲まで局所的に加熱する。一実施の形態において、第2粘度範囲の上限は第1粘度範囲の下限よりも低い。以下のさらなる説明は、材料シート100がガラス含有材料シートであるとの仮定に基づいたものである。一実施の形態において、第2粘度範囲の上限は109ポアズ(108Pa・s)である。一実施の形態において、第2粘度範囲は108ポアズ(107Pa・s)から109ポアズ(108Pa・s)である。一実施の形態において、第2温度範囲はガラス含有材料の成形温度であり、ガラス含有材料の軟化点未満であることが好ましく、ガラス含有材料の軟化点とアニール点との間であることがさらに好ましい。一実施の形態において、第2温度範囲は、ガラス含有材料の軟化点より少なくとも10℃低い。
【0033】
再成形可能領域106が第2粘度範囲である間、以下のことが起こる。すなわち(i)再成形可能領域106は3次元形状に再成形され、(ii)再成形可能でない領域108は、実質的に第1粘度範囲のままであり、さらに(iii)再成形可能でない領域108は、実質的に平坦なままである。再成形は、単に再成形可能領域106が重力により垂下できるものを含み得る。再成形は、再成形可能領域106が垂下し始める前、または再成形可能領域106が垂下している間のいずれかに、真空を用いて、すなわち再成形可能領域106に真空を加えることによって、再成形可能領域106の垂下を助けるものを含んでもよい。再成形は、図1a、図2、および図3に112で示されているような、材料シート100の再成形可能領域106の外側の領域で、あるいは図1bに112で示されているような、再成形可能領域106の境界近傍の領域で、材料シート100に力を加えるものでもよい。「境界近傍」に力を加えるものは、「境界位置」に力を加える可能性を含む。一般に、特に再成形可能領域106が第2温度範囲内にあるとき、再成形可能領域106(または、再成形可能領域106の品質領域)が、再成形可能領域106内に欠陥を生じさせる可能性のある物体と接触することを避けることが望ましい。
【0034】
再成形可能領域106を第2温度範囲に加熱している間、再成形可能領域106に加えられた熱が再成形可能領域106を超えて広がり得る可能性は十分にある。この事例において、熱が再成形可能領域106を超えて広がり得る程度は、制限されることが望ましい。一実施の形態において、再成形可能領域106に対する、材料シート100中の第2温度まで加熱される領域合計(例えば、図1aの107)の割合は1.5以下であり、この領域合計は再成形可能領域と重複している。別の実施形態において、再成形可能領域106に対する、材料シート100中の第2温度まで加熱される領域合計(例えば、図1aの107)の割合は1.2以下であり、この領域合計は再成形可能領域と重複している。熱が再成形可能領域106を超えて広がる程度を制限するために、再成形可能領域106に加えられる熱は集中させることが好ましい。この集中加熱を実現するための2つの加熱配置を以下で説明する。
【0035】
一実施の形態では、再成形可能領域106の局所加熱を実現するために、対流加熱が使用される。一実施の形態では、図1aに示したように、ガスバーナ110を用いて熱を再成形可能領域106上に導くことにより対流加熱を実現する。対流加熱のため、ガスバーナ110は再成形可能領域106に高い局所加熱率を与えることができる。2つの化学種の組合せに基づく既混合ガスをガスバーナに供給してもよい。ガス状化学種の組合せの例としては、限定するものではないが、水素と酸素、メタンと酸素、さらにメタンと空気が挙げられる。別の実施形態において、対流加熱は、加熱されたガスを再成形可能領域106上に導くことにより実現される。この加熱されたガスは、ガス状化学種を組み合わせたものでもよいし、あるいはこれらを組み合わせたものでなくてもよい。
【0036】
一実施の形態では、再成形可能領域106の局所加熱を実現するために、放射加熱が使用される。図1bおよび2は、集中放射加熱配置201を示したものである。図1bおよび2では、抵抗型加熱器200が、再成形可能領域106を加熱するために再成形可能領域106の上方に位置付けられている。抵抗型加熱器200により生成される放射エネルギーを最大限収集するために、高温の楕円ミラー202、すなわち楕円形状を有しかつ高温材料から作製されたミラーなど、1以上の光学部材を使用して、抵抗型加熱器200により生成された放射エネルギーを再成形可能領域106上に集中させる。ミラー202は2つの焦点を有している。1つの焦点が抵抗型加熱器200の位置に位置付けられ、かつ他方の焦点は再成形可能領域106上に、あるいは再成形可能領域106の表面に近接して、位置付けられる。ミラー202が抵抗型加熱器200から受けた放射エネルギーは、反射されて、再成形可能領域106の中心に集中する。優れた反射特性を得るために、高温で低放射率を呈する種々の材料をミラー202として使用することができる。例として、限定するものではないが、白金、または白金被覆耐火合金が挙げられる。
【0037】
図3は、集中放射加熱配置301を示したものである。抵抗型加熱器300は、高温シールドすなわち耐熱シールド306の断熱チャンバ302(断熱材料が304で示されている)内に包囲されている。一実施の形態においてシールド306は、金属製またはセラミック製の耐火材料から作製されている。抵抗型加熱器300からの熱は、再成形可能領域106の上方に位置付けられている耐熱シールド306内の開口308を通って、再成形可能領域106へと導かれる。開口308の形状は、再成形可能領域106の形状に一致するように選択してもよい。例えば、再成形可能領域106が長方形である場合、開口308も長方形の形としてもよい。上述した対流加熱で、このシールドの構想を使用することも可能であり得、すなわちこの場合、バーナまたは加熱されたガスによる熱を、適当な高温シールドすなわち耐熱シールドの開口を通じて再成形可能領域106に導く。
【0038】
図2、3の抵抗型加熱器200、300は、例えばヘレウス・ノーブルライト社(Hereaus Noblelight)の中赤外線加熱器(mid-IR heater)など、高速応答の中赤外線加熱器でもよく、この加熱器の抵抗部材は石英ガラスの外被内に包囲されているため、材料シートは抵抗部材による汚染から保護されることになる。
【0039】
図4および5は、2つの異なる楕円ミラー400、500を用いて4kW/mで30秒間放射加熱した後の、集中放射加熱配置(図1bおよび2に201で示したものに類似したもの)により得られた温度分布の例を示している。図6は、シートの再成形可能領域を図4の放射加熱配置を用いて30秒間加熱した後の、ガラス含有材料シートの熱プロファイル600を示したものである。熱プロファイル600の再成形可能領域に対応する部分を、ボックス602で示している。図7は、再成形可能領域を第2粘度範囲まで加熱した後の、ガラス含有材料シートの表面に沿った、ガラス含有材料シートの熱プロファイル700と対応する粘度プロファイル702とを示している。プロファイル700、702の再成形可能領域に対応する部分を、概して704で示している。
【0040】
支持体(図1a、1b、1c、2、および3の102)の材料は、材料シート100が加熱される温度まで耐え得るものであるべきであり、さらにこの温度で材料シートに粘着しないものでもあるべきである。図1a、1c、2、および3のように、再成形可能領域106が支持体102に接触しない第1の事例では、支持体の材料は単に、高温に耐えることができ、かつ第1温度範囲内で粘着しないようにできることが必要である。したがって、この第1の事例において支持体102に使用できるであろう材料の範囲はより幅広い。この第1の事例での支持体102に対する材料の例としては、限定するものではないが、ステンレス鋼、耐火合金、およびセラミックが挙げられる。図1bに示したような、再成形可能領域106が支持体102(102b)と接触し得る第2の事例では、支持体102(102b)に対する材料にはいくらか制約がある。再成形可能領域106に接触する可能性のある、支持体102bの一部分102aは、高温に耐えかつ第2温度範囲で粘着しないようにできるものであるべきである。この第2の事例において、一部分102aは、INCONEL718またはステンレス鋼などの高温材料から作製することができる。あるいは、支持体102bを異なった熱膨張挙動を有する材料から作る必要性を回避するために、支持体102bの一部分102aの表面を、第2温度範囲で用いるために選択された適切な高温の(非粘着性の)コーティングで被覆してもよい。
【0041】
再成形可能領域106を第2粘度範囲に対応する第2温度範囲まで加熱した後、再成形可能領域106は選択された3次元形状に局所的に再成形される。前述したように、再成形可能領域を再成形するには様々な方法がある。図1a〜3に示した例では、材料シートに112で示すように力を加え、選択された角度だけ再成形可能領域106において材料シートを屈曲させる。図1bでは、再成形可能領域106内において鋭い内側表面を有する曲げを形成しないように、あるいは、丸み付けされたエッジ103で再成形可能領域106内における曲げを制御できるように、支持体102bは、再成形可能領域106と接触するエッジの位置で、103で示したように丸み付けされる。
【0042】
図8は、上述の方法によって、再成形可能領域(106)の局所加熱に図1aの対流加熱を用いて成形された、成形物品800を示している。この成形物品は、再成形可能領域において半径2mmの90°曲げ802を有している。図9は、上述の方法によって、再成形可能領域の局所加熱に図2の集中放射加熱配置を用いて成形された、成形物品900を示している。この成形物品900は、2つの再成形可能領域において2つの半径5mmの90°曲げ902、904を有している。図10は、上述の方法によって、再成形可能領域の局所加熱に図3の集中放射加熱配置を用いて成形された、成形物品1000を示している。この成形物品は、2つの再成形可能領域において2つの半径30mmの45°曲げ1002、1004を有している。一般に、30°から90°の範囲内の曲げ角度を有した曲げを形成することができる。(説明のために図1aを用いると、曲げ角度は水平に対して測定される。すなわち、曲げ角度90°は支持体102に本質的に垂直な再成形可能領域106に対応することになり、また曲げ角度0°(または曲げ角度なし)は、支持体102に本質的に平行な再成形可能領域106に対応することになる。)
再成形可能領域106が成形された後、材料シート100を冷却してもよい。ガラス含有材料の場合、材料シート100を、ガラス含有材料の粘度がおよそ1013ポアズ(1012Pa・s)以上になる温度範囲まで典型的には冷却してもよい。成形された再成形可能領域を含む材料シートを、成形物品と称する。成形物品はアニールしてもよい。成形物品のエッジは、最終的なサイズまたは形状を得るために、仕上げ、トリミング、または輪郭形成を行ってもよい。成形物品にイオン交換プロセスを施してもよい。典型的には、イオン交換プロセスは、成形物品をアルカリ金属の塩を含む溶融浴中に浸漬させるものであり、このアルカリ金属のイオン半径は、成形物品のガラス含有材料内に含有されているアルカリ金属イオンの半径よりも大きい。溶融浴中の、より大きいアルカリ金属イオンが、成形物品のガラス含有材料内の、より小さいアルカリ金属イオンと置き換わり、成形物品の表面で、またはその表面近傍で、望ましい圧縮応力をもたらす。イオン交換の後、成形物品の表面を汚れ防止コーティングで保護してもよい。
【0043】
本発明を、限られた数の実施形態を参照してこれまで説明してきたが、本書で開示された本発明の範囲から逸脱しない他の実施形態を考案できることは、本開示から利益を得る当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、添付の請求項によってのみ限定されるべきである。
【符号の説明】
【0044】
100 材料シート
102 支持体
106 再成形可能領域
108 再成形可能でない領域
110 ガスバーナ
200 抵抗型加熱器
201 集中放射加熱配置
202 楕円ミラー
800、900、1000 成形物品
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10